(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に電極を有する被検査体を作業面上で保持し、前記電極とテスタとを電気的に接続する電気的接続装置であり、一方の面に前記テスタへの接続部が設けられ、他方の面に前記接続部に接続されたランド部が設けられた配線基板と、前記配線基板の前記被検査体側に配置されたプローブ基板とを備えた電気的接続装置に適用され、前記ランド部に一方の端部が接触し、他方の端部が前記被検査体側に突出するように前記プローブ基板に設けられるポゴピンであって、
前記電極への接触端子、および前記接触端子と間隔を空けて同軸上に設けられ前記ランド部に接触するプランジャ本体部からなるプランジャ部と、前記プランジャ部の外周側に設けられたバレル部とを備え、
前記バレル部は、前記接触端子の軸方向に伸縮自在に設けられた複数の弾性体および前記複数の弾性体の間に1以上の止め部材が設けられたバレル本体部を有し、
前記プランジャ部は、前記複数の弾性体がそれぞれ所定の長さだけ弾性圧縮したときに前記1以上の止め部材のうち対応する止め部材に接触するように設けられた1以上の止め受け部材を有する
ことを特徴とするポゴピン。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る電気的接続装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1である電気的接続装置を含む全体構造を示した図であり、
図2は、本発明の実施形態1である電気的接続装置により半導体ウェハ上のICの電気的試験前の状態を模式的に示した図であり、
図3は、本発明の実施形態1である電気的接続装置により半導体ウェハ上のICの電気的試験中の状態を模式的に示した図である。
【0024】
図1〜3に示すように、本発明の実施形態1である電気的接続装置1は、下面が平坦な取付け基準面となる平板状の支持部材(スティフナー)12と、支持部材12の取付け面に保持される円形平板状の配線基板14と、被検査体である半導体ウェハ28と配線基板14との間を電気的に接続する電気的接続部16とを備えており、ホルダ20により保持されている。
【0025】
ホルダ20は、プローバベース23に支持されており、電気的接続装置1を受けるようにクランク状の断面構造を有している。また、ホルダ20は、電気的接続装置1の支持部材12及び配線基板14を支持するための支持ピン20aを有している。
【0026】
支持部材12には、上下を貫通する貫通孔12bが設けられており、配線基板14には、上下を貫通する貫通孔14bが設けられている。そして、支持ピン20aが貫通孔12b及び貫通孔14bに嵌合することにより、支持部材12及び配線基板14がホルダ20に支持される。
【0027】
電気的接続装置1は、例えば、半導体ウェハ28に作り込まれた多数のIC(集積回路)の電気的試験のために、ICの接続端子である各接続パッド(電極)をテスタ11の電気回路に接続するのに用いられる。
【0028】
そのため、ICの接続端子である各接続パッド(電極)が設けられた半導体ウェハ28を上面に受けて、真空的に解除可能に吸着するチャックトップ21と、チャックトップ21を上下移動させるステージ機構22とを備えている。そして、ステージ機構22の上下移動により、半導体ウェハ28上のICを電気的接続装置1の電気的接続部16に接触させることで、テスタ11による電気的試験が実行される。
【0029】
また、チャックトップ21には、上面に載置された半導体ウェハ28を加熱又は冷却する熱源24を備えており、この熱源24により半導体ウェハ28が加熱又は冷却されると共に、熱源24の輻射熱により電気的接続部16が加熱又は冷却される。
【0030】
配線基板14は、全体的に円形板状の例えばポリイミド樹脂板からなり、上面(一方の面)には、テスタ11への接続配線12aが設けられている。
【0031】
また、
図2,
図3に示すように、配線基板14の下面(他方の面)には、電気的接続部16を介して半導体ウェハ28上のICと電気的に接続するための複数のランド部141が設けられている。
【0032】
支持部材12は、その取付け面を配線基板14の上面に当接させて配置される、例えばステンレス板からなる板状の枠部材を備えている。
【0033】
電気的接続部16は、円形平板状に形成されたプローブ基板18と、支持部材19とを備えており、プローブ基板18および支持部材19は、両端を当接して配置された接続支持部材17により固定されている。
【0034】
支持部材19には、板厚方向に形成された多数の貫通孔191が形成されており、プローブ基板18にも貫通孔191に対向する位置に多数の貫通孔181が形成されている。
【0035】
また、電気的接続部16には、貫通孔191と貫通孔181とを貫通して、ポゴピン100が多数設けられている。
【0036】
そして、
図2に示すように、ポゴピン100の上端部103(一方の端部)は、後述するポゴピン100の弾性力により、ランド部141に圧接しており、これにより、ポゴピン100は、配線基板14の対応するランド部に電気的に接続される。
【0037】
また、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)は、プローブ基板18の下面から下方(半導体ウェハ28側)に突出するようにプローブ基板18に取り付けられている。
【0038】
このとき、ポゴピン100の弾性力が強いと、ランド部141に対して十分に圧接されるので、適切にランド部141に電気的に接続されるが、その一方、ポゴピン100の弾性力でプローブ基板18が半導体ウェハ28側(下方)に湾曲することになる。これにより、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)から半導体ウェハ28までの距離にばらつきが生じ、ポゴピン100と半導体ウェハ28上のICとの間で電気的な接続不良が生じる場合がある。
【0039】
そのため、
図2に示すような、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においては、プローブ基板18が半導体ウェハ側(下方)に湾曲せず、かつポゴピン100の上端部103(一方の端部)がランド部141に電気的に接続可能なように、比較的弱い押圧力で圧接する必要がある。
【0040】
そして、
図3に示すように、ステージ機構22がチャックトップ21を上方(電気的接続部16側)へ移動すると、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)がチャックトップ21上に吸着された半導体ウェハ28に当接する。
【0041】
このとき、ポゴピン100の弾性力が弱いと、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接する際の押圧力が弱くなり、ポゴピン100と半導体ウェハ28上のICとの間で電気的な接続不良が生じる場合がある。
【0042】
そのため、
図3に示すような、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接した状態においては、ポゴピン100と半導体ウェハ28上のICとの間で電気的に接続可能なように比較的強い押圧力で圧接する必要がある。
【0043】
以上のように、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においては、ポゴピン100の弾性力は小さく、かつ、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接した状態においては、ポゴピン100の弾性力は大きくなるように、状態により変化させる必要がある。
【0044】
本発明の実施形態1である電気的接続装置1は、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においては、ポゴピン100の弾性力は小さく、かつ、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接した状態においては、ポゴピン100の弾性力が大きくなるように、状態により変化する構造を有している。
【0045】
図4は、本発明の実施形態1である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の構造を示した図である。(a)は、組み立て前であり、弾性圧縮を受けない自由状態におけるポゴピン100を示しており、(b)は、組み立て後であり、下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態におけるポゴピン100を示しており、(c)は、下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接した状態におけるポゴピン100を示している。
【0046】
図4(a)〜(c)に示すように、ポゴピン100は、プランジャ部110と、このプランジャ部110の側面の一部を覆うようにプランジャ部110の外周側に設けられたバレル部120とを備えている。
【0047】
プランジャ部110は、半導体ウェハ28上のICへ当接する下端部101(他方の端部)を含む接触端子111と、接触端子111と同軸に設けられ、配線基板14のランド部141に当接する上端部103(一方の端部)を含む円柱状のプランジャ本体部112とを有している。
【0048】
バレル部120は、下端部101(他方の端部)側でプランジャ部110に固定する固定部121と、接触端子111の軸方向に伸縮自在に設けられた第1の弾性コイル122と、接触端子111の軸方向に伸縮自在に設けられた第2の弾性コイル124と、第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124とを接続するバレル本体部123と、上端部103(一方の端部)側でプランジャ部110に固定する固定部125とを備えている。
【0049】
バレル本体部123は、中空円筒形状の内周に沿って突起状に設けられた止め部材127を有している。
【0050】
プランジャ部110の接触端子111は、止め部材127に接触しないように直径を小さくした小径部115と、止め部材127に接触するように直径を大きくした大径部116とを有している。小径部115と大径部116との接合部分は、軸から外周方向に傾斜する傾斜面が円周方向に設けられており、この接合部分が止め受け部材113となる。
【0051】
図4(b)に示すように、ポゴピン100をX1方向に押圧すると、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124が弾性圧縮する。これにより、止め受け部材113が止め部材127に接触し、この接触により、第1の弾性コイル122はそれ以上の弾性圧縮が制限される。
【0052】
そして、さらにポゴピン100をX1方向に押圧すると、
図4(c)に示すように、止め受け部材113が止め部材127に接触した状態で、第1の弾性コイル122は弾性圧縮することなく、第2の弾性コイル124が弾性圧縮する。
【0053】
このように、
図4(a)に示した弾性圧縮を受けない自由状態から、ポゴピン100をX1方向に押圧し、
図4(b)に示した止め受け部材113が止め部材127に接触するまでの間は、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124の両方が弾性圧縮する。
【0054】
そして、
図4(b)に示した止め受け部材113が止め部材127に接触した状態から、
図4(c)に示すように、さらにポゴピン100をX1方向に押圧した状態では、第1の弾性コイル122は、
図4(b)に示した状態と同一の長さだけ弾性圧縮され、第2の弾性コイル124のみがポゴピン100をX1方向に押圧した距離に応じて弾性圧縮する。
【0055】
図5は、本発明の実施形態1である電気的接続装置1のオーバードライブ値に対するポゴピンの弾性力を示している。ここで、オーバードライブ値とは、
図4(a)に示した弾性圧縮を受けない自由状態から、ポゴピン100をX1方向に押圧した距離のことをいう。
【0056】
図5に示すように、本発明の実施形態1である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の弾性力線203は、オーバードライブ値が“0” (μm)の状態、すなわち
図4(a)に示した弾性圧縮を受けない自由状態から、オーバードライブ値が“100”(μm)に達した状態、すなわち
図4(b)に示した止め受け部材113が止め部材127に接触した状態まで、傾きS1で上昇する。
【0057】
第1の弾性コイル122のバネ定数をk1とし、第2の弾性コイル124のバネ定数をk2とすると、第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124とは直列に接続されていることになるので、傾きS1は、k1・k2/(k1+k2)となり、このときの弾性力F1は下記の(数式1)で表される。ここで、xは、オーバードライブ値を示している。なお、ここでは、バネ定数k2はバネ定数k1より大きいものとする。
【0058】
F1=(k1・k2/(k1+k2))・x (数式1)
その後、本発明の実施形態1である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の弾性力線203は、オーバードライブ値が“100” (μm)に達した状態、すなわち
図4(b)に示した止め受け部材113が止め部材127に接触した状態から以降は、傾きS2で上昇する。
【0059】
このとき、
図4(a)に示した弾性圧縮を受けない自由状態での止め受け部材113から止め部材127までの距離をtとすると、止め受け部材113が止め部材127に接触した状態から以降の弾性力F2は下記の(数式2)で表される。ここで、K=k1・k2/(k1+k2)である。
【0060】
F2=k2・x+(K−k2)・t (数式2)
なお、比較のため、
図5における弾性力線201は、第1の弾性コイル122のみを有するポゴピンにおける弾性力を示しており、弾性力線202は、第2の弾性コイル124のみを有するポゴピンにおける弾性力を示しており、弾性力線205は、止め受け部材113や止め部材127を設けることなく単純に第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124とを直列に接続したポゴピンの弾性力を示している。
【0061】
オーバードライブ値が“100”(μm)に達するまでは、本発明の実施形態1である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の弾性力線203のばね定数は、k1・k2/(k1+k2)であるので、弾性力線201,202それぞれのばね定数より小さくなり、これにより、傾きが小さくなっている。そのため、
図2に示すような、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においては、ポゴピン100のオーバードライブ値が“100”(μm)未満となるようにポゴピン100をプローブ基板18に支持すればよい。これにより、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においては、ポゴピン100の弾性力を小さくできるので、プローブ基板18が半導体ウェハ28側(下方)に湾曲することを防止することができる。これにより、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)から半導体ウェハ28までの距離にばらつきが生じることなく、ポゴピン100と半導体ウェハ28上のICとの間で電気的に良好に接続することができる。
【0062】
さらに、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においても、ポゴピン100の弾性力によりランド部141に対して圧接されるので、適切にランド部に電気的に接続させることができる。
【0063】
一方、オーバードライブ値が“100” (μm)に達した後は、本発明の実施形態1である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の弾性力線203のばね定数は、第2の弾性コイル124のばね定数k2と同一になるので、弾性力線202と傾きが同一になっている。
【0064】
そのため、例えば、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)を半導体ウェハ28上のICに、4(gf)の弾性力で当接させたい場合には、
図5に示すように、ポゴピン100のオーバードライブ値が“170”(μm)になるように、ステージ機構22を上方(電気的接続部16側)へ移動すればよい。
【0065】
以上のように、本発明の実施形態に係る電気的接続装置1によれば、ポゴピン100は、半導体ウェハ28上のICへの接触端子111および接触端子111と同軸に設けられた円柱状のプランジャ本体部112を有するプランジャ部110と、プランジャ部110の外周側に設けられたバレル部120とを備え、バレル部120は、接触端子111の軸方向に伸縮自在に設けられた第1の弾性コイル122、第2の弾性コイル124、および第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124との間に止め部材127が設けられたバレル本体部123を有し、プランジャ部110は、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124がそれぞれ所定の長さだけ弾性圧縮したときに、止め部材127が接触する止め受け部材113を有しているので、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においては、ポゴピン100の弾性力は小さく、かつ、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接した状態においては、ポゴピン100の弾性力が大きくなるように、状態により変化させることができる。これにより、ランド部141とポゴピン100との間、およびポゴピン100と半導体ウェハ28上のICとの間の両方を電気的に良好に接続することができる。
【0066】
なお、本発明の実施形態1に係る電気的接続装置1では、バネ定数が小さい(バネ定数:k1)第1の弾性コイル122を下端部101側に配置し、バネ定数が大きい(バネ定数:k2)第2の弾性コイル124を上端部103側に配置したが、これに限らず、バネ定数が小さい(バネ定数:k1)第1の弾性コイル122を上端部103側に配置し、バネ定数が大きい(バネ定数:k2)第2の弾性コイル124を下端部101側に配置してもよい。
【0067】
また、本発明の実施形態1に係る電気的接続装置1では、バレル部120は、固定部121と、第1の弾性コイル122と、第2の弾性コイル124と、バレル本体部123と、固定部125とを備えているが、これらは製造したものを接続することにより製造してもよいし、一体成形により製造するようにしてもよい。
【0068】
一体成形により製造する場合、それぞれの接続箇所に接続部品が必要ないので、装置を簡素化でき、製造費用を削減できる。
【0069】
また、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124の螺旋方向は同一であっても逆方向であってもよい。
【0070】
ポゴピン100が
図4(a)に示したX1方向に押圧されると、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124が弾性圧縮される。このとき、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124の螺旋方向が同一である場合には、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124の弾性圧縮に伴い、接触端子111が軸を中心に回転する。
【0071】
例えば、半導体ウェハ28上のICの表面にアルミが用いられている場合、表面に酸化膜が形成されるため、ポゴピン100の接触端子111が半導体ウェハ28上のICに当接する際、この酸化膜を破る必要がある。第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124の螺旋方向が同一である場合には、ポゴピン100の接触端子111が回転しながら、半導体ウェハ28上のICに当接するので、表面に形成された酸化膜を破ることによって、より良好に電気的に接続することができる。
【0072】
このように、半導体ウェハ28上のICの表面に酸化膜が形成される場合、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124の螺旋方向が同一である方がより良好に電気的に接続することができる。
【0073】
その一方で、はんだなど半導体ウェハ28上のICの表面に酸化膜が形成されない場合、ポゴピン100の接触端子111を回転させる必要がないので、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124の螺旋方向を互いに逆方向になるように配置することができる。
【0074】
(実施形態2)
本発明の実施形態1である電気的接続装置1では、バネ定数が小さい(バネ定数:k1)第1の弾性コイル122と、バネ定数が大きい(バネ定数:k2)第2の弾性コイル124とを直列に配置したが、これに限らず、ばね定数が同一の弾性コイルを用いるようにしてもよい。
【0075】
本発明の実施形態2では、第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124のばね定数が同一である電気的接続装置1を例に挙げて説明する。なお、ばね定数以外は、本発明の実施形態1である電気的接続装置1と同一構成を有するので、説明を省略する。
【0076】
図6は、本発明の実施形態2である電気的接続装置1のオーバードライブ値に対するポゴピンの弾性力を示している。
【0077】
図6に示すように、本発明の実施形態2である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の弾性力線303は、オーバードライブ値が“0” (μm)の状態、すなわち
図4(a)に示した弾性圧縮を受けない自由状態から、オーバードライブ値が“100”(μm)に達した状態、すなわち
図4(b)に示した止め受け部材113が止め部材127に接触した状態まで、所定の傾きS3で上昇する。
【0078】
第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124のバネ定数をk3とすると、第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124とは直列に接続されていることになるので、傾きS3は、k3/2となり、このときの弾性力F3は下記の(数式3)で表される。ここで、xは、オーバードライブ値を示している。
【0079】
F3=(k3/2)・x (数式3)
その後、本発明の実施形態2のポゴピン100の弾性力202は、オーバードライブ値が“100” (μm)に達した状態、すなわち
図4(b)に示した止め受け部材113が止め部材127に接触した状態から以降は、所定の傾きS4で上昇する。
【0080】
このとき、止め受け部材113が止め部材127に接触した状態から以降の弾性力F4は下記の(数式4)で表される。
【0081】
F4=k3・x (数式4)
なお、比較のため、
図6における弾性力線301は、第1の弾性コイル122のみを有するポゴピンにおける弾性力を示しており、弾性力線302は、第2の弾性コイル124のみを有するポゴピンにおける弾性力を示している。第2の実施形態では、第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124のばね定数が同一であるので、弾性力線301,302と同一の直線となっている。弾性力線305は、止め受け部材113や止め部材127を設けることなく単純に第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124とを直列に接続したポゴピンの弾性力を示している。
【0082】
オーバードライブ値が“100”(μm)に達するまでは、本発明の実施形態2である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の弾性力線303のばね定数は、k3/2であるので、弾性力線301,302のばね定数より小さくなり、これにより、傾きが小さくなっている。そのため、本発明の実施形態1である電気的接続装置1と同様に、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においては、ポゴピン100の弾性力を小さくできるので、プローブ基板18が半導体ウェハ28側(下方)に湾曲することを防止することができる。これにより、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)から半導体ウェハ28までの距離にばらつきが生じることなく、ポゴピン100と半導体ウェハ28上のICとの間で電気的に接続することができる。
【0083】
さらに、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においても、ポゴピン100の弾性力によりランド部141に対して圧接されるので、適切にランド部141に電気的に接続させることができる。
【0084】
一方、オーバードライブ値が“100” (μm)に達した後は、本発明の実施形態2である電気的接続装置1は備えるポゴピン100の弾性力線303のばね定数は、第2の弾性コイル124のばね定数k3と同一になるので、弾性力線301,302と傾きが同一になっている。
【0085】
そのため、例えば、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)を半導体ウェハ28上のICに、3(gf)の弾性力で当接させたい場合には、
図6に示すように、ポゴピン100のオーバードライブ値が“200”(μm)になるように、ステージ機構22を上方(電気的接続部16側)へ移動すればよい。
【0086】
すなわち、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)を、半導体ウェハ28上のICに当接する際に必要な弾性力に応じて、第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124とのばね定数を決定すればよい。
【0087】
以上のように、本発明の実施形態2の電気的接続装置1によれば、本発明の実施形態1の電気的接続装置1と同様に、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接していない状態においては、ポゴピン100の弾性力は小さく、かつ、ポゴピン100の下端部101(他方の端部)が半導体ウェハ28上のICに当接した状態においては、ポゴピン100の弾性力が大きくなるように、状態により変化させることができる。これにより、ランド部141とポゴピン100との間、およびポゴピン100と半導体ウェハ28上のICとの間の両方を電気的に良好に接続することができる。
【0088】
(実施形態3)
本発明の実施形態1である電気的接続装置1では、第1の弾性コイル122と、第2の弾性コイル124との2つの弾性コイルを直列に配置したが、これに限らず、3つ以上の弾性コイルを用いるようにしてもよい。
【0089】
本発明の実施形態3では、3つの弾性コイルを備えた電気的接続装置1を例に挙げて説明する。なお、3つの弾性コイルのばね定数は、同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
図7は、本発明の実施形態3である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の構造を示した図である。
図7では、組み立て前であり、弾性圧縮を受けない自由状態におけるポゴピン100を示している。
【0091】
図7に示すように、ポゴピン100は、プランジャ部110aと、このプランジャ部110aの側面の一部を覆うようにプランジャ部110aの外周側に設けられたバレル部120aとを備えている。
【0092】
プランジャ部110aは、半導体ウェハ28上のICへ当接する下端部101(他方の端部)を含む接触端子111aと、接触端子111aと同軸に設けられ、配線基板14のランド部141に当接する上端部103(一方の端部)を含む円柱状のプランジャ本体部112とを有している。
【0093】
バレル部120aは、下端部101(他方の端部)側でプランジャ部110aに固定する固定部121と、接触端子111aの軸方向に伸縮自在に設けられた第1の弾性コイル122と、接触端子111aの軸方向に伸縮自在に設けられた第2の弾性コイル124と、接触端子111aの軸方向に伸縮自在に設けられた第3の弾性コイル132と、第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124とを接続するバレル本体部123と、第2の弾性コイル124と第3の弾性コイル132とを接続するバレル本体部131と、上端部103(一方の端部)側でプランジャ部110に固定する固定部125とを備えている。
【0094】
バレル本体部123には、中空円筒形状の内周に沿って突起状に設けられた止め部材127を有しており、バレル本体部131には、中空円筒形状の内周に沿って突起状に設けられた止め部材128を有している。
【0095】
プランジャ部110aの接触端子111aは、止め部材127,128に接触しないように直径を小さくした小径部115と、止め部材127,128に接触するように直径を大きくした大径部116とを有している。小径部115と大径部116との接合部分は、軸から外周方向に傾斜する傾斜面が円周方向に設けられており、この接合部分が止め受け部材113,114となる。
【0096】
そして、ポゴピン100をX1方向に押圧すると、第1の弾性コイル122、第2の弾性コイル124および第3の弾性コイル132が弾性圧縮する。これにより、止め受け部材113が止め部材127に接触し、この接触により、第1の弾性コイル122はそれ以上の弾性圧縮が制限される。
【0097】
さらにポゴピン100をX1方向に押圧すると、止め受け部材113が止め部材127に接触した状態で、第1の弾性コイル122は弾性圧縮することなく、第2の弾性コイル124および第3の弾性コイル132が弾性圧縮する。
【0098】
さらにポゴピン100をX1方向に押圧すると、止め受け部材114が止め部材128に接触し、この接触により、第2の弾性コイル124はそれ以上の弾性圧縮が制限される。
【0099】
さらにポゴピン100をX1方向に押圧すると、止め受け部材114が止め部材128に接触した状態で、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124は弾性圧縮することなく、第3の弾性コイル132のみが弾性圧縮する。
【0100】
このように、本発明の実施形態3である電気的接続装置1では、第1の弾性コイル122、第2の弾性コイル124および第3の弾性コイル132を直列に配置しているので、ポゴピン100の弾性力を3段階に切り替える必要がある場合に、有利な効果を奏することができる。
【0101】
なお、本発明の実施形態3である電気的接続装置1では、半導体ウェハ28上のICの表面に酸化膜が形成される場合、第1の弾性コイル122、第2の弾性コイル124および第3の弾性コイル132の螺旋方向は、交互に逆方向になるように設けてもよい。
【0102】
(実施形態4)
本発明の実施形態1である電気的接続装置1では、プランジャ部110の接触端子111に止め受け部材113を備えていたが、これに限らず、プランジャ部のプランジャ本体部に止め受け部材を備えるようにしてもよい。
【0103】
本発明の実施形態4では、プランジャ部のプランジャ本体部に止め受け部材を備えた電気的接続装置1を例に挙げて説明する。
【0104】
図8は、本発明の実施形態4である電気的接続装置1が備えるポゴピン100の構造を示した図である。
図8では、組み立て前であり、弾性圧縮を受けない自由状態におけるポゴピン100を示している。
【0105】
図8に示すように、ポゴピン100は、プランジャ部110bと、このプランジャ部110bの側面の一部を覆うようにプランジャ部110bの外周側に設けられたバレル部120bとを備えている。
【0106】
プランジャ部110bは、半導体ウェハ28上のICへ当接する下端部101(他方の端部)を含む接触端子111bと、接触端子111bと同軸に設けられ、配線基板14のランド部141に当接する上端部103(一方の端部)を含む円柱状のプランジャ本体部112bとを有している。
【0107】
バレル部120bは、下端部101(他方の端部)側でプランジャ部110bに固定する固定部121bと、接触端子111bの軸方向に伸縮自在に設けられた第1の弾性コイル122と、接触端子111bの軸方向に伸縮自在に設けられた第2の弾性コイル124と、第1の弾性コイル122と第2の弾性コイル124とを接続するバレル本体部123と、上端部103(一方の端部)側でプランジャ部110に固定する固定部125bとを備えている。
【0108】
バレル本体部123には、中空円筒形状の内周に沿って突起状に設けられた止め部材127を有している。
【0109】
プランジャ部110bのプランジャ本体部112bは、止め部材127に接触しないように直径を小さくした小径部115と、止め部材127に接触するように直径を大きくした大径部116とを有している。小径部115と大径部116との接合部分は、軸から外周方向に傾斜する傾斜面が円周方向に設けられており、この接合部分が止め受け部材113となる。
【0110】
そして、ポゴピン100をX1方向に押圧すると、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124が弾性圧縮する。これにより、止め受け部材113が止め部材127に接触し、この接触により、第1の弾性コイル122はそれ以上の弾性圧縮が制限される。
【0111】
さらにポゴピン100をX1方向に押圧すると、止め受け部材113が止め部材127に接触した状態で、第1の弾性コイル122は弾性圧縮することなく、第2の弾性コイル124が弾性圧縮する。
【0112】
このように、本発明の実施形態4である電気的接続装置1では、第1の弾性コイル122および第2の弾性コイル124が直列に配置され、プランジャ部110bのプランジャ本体部112bに止め受け部材113が備えられているので、本発明の実施形態1である電気的接続装置1が備える接触端子111と比較して、接触端子111bを小さく、すなわち接触端子111bの軸方向に短くすることができる。これにより、材料費を低減することができるので、製造コストを低減することができる。