(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走査ミラーの前記角度を変更することには、前記基板の前記部分を横断して前記光のラインが走査される第1の時間間隔と前記走査ミラーが初期位置まで戻される第2の時間間隔とが含まれ、
さらに、前記第2の時間間隔中に前記基板の前記部分を横断して前記光のラインを走査するのを停止することを含む、請求項1に記載の方法。
前記基板の前記部分の前記光のラインを走査することが、照明ミラーの角度を変更してライン発生器からの光を前記基板の前記部分の上に反射することを含む、請求項1に記載の方法。
前記第1の1つ以上の画素行を露光し前記第1の1つ以上の画素行を読み出す複数の前記ステップの間、前記第1の1つ以上の画素行を暗状態に保つことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記カメラが、少なくとも第1の区分及び第2の区分を有する分割型読み出しセンサーを備え、前記光のラインを走査し読み出しする前記ステップが、前記分割型読み出しセンサーの各区分内で独立して実施される、請求項1に記載の方法。
前記光のラインは、カメラ内の画素が、蛍光発光に対応する波長を有する光によって露光される一方で、光のラインは蛍光励起に適した波長を有する、請求項1に記載の方法。
前記カメラが前記基板の前記部分の前記画像を収集している間に、前記基板を横断して前記光のラインを走査して前記画像により走査された第3の1つ以上の画素行を露光し続けながら前記第2の1つ以上の画素行を読み出すことをさらに含み、前記第3の1つ以上の画素行が前記第2の1つ以上の画素行とは異なる、請求項1に記載の方法。
前記ライン発生器から前記基板の一部分の上への前記光のラインを走査する照明ミラーを備え、前記走査ミラーは、前記光のラインが前記基板の一部分を横断して走査され前記基板が特定の方向に移動させられている間、前記照明ミラーと協調して移動するように構成される、請求項16に記載の撮像システム。
さらに、少なくとも(a)前記光のラインを前記照明ミラーから前記走査ミラーに反射して、前記基板の一部分を照明するため、及び、(b)前記対物レンズ構成要素により獲得され走査ミラーにより反射された光をカメラまで移行させるために作動するダイクロイックミラーを備える、請求項15に記載の撮像システム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示では、本発明をより完全に理解できるようにするための多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者にとって、本発明がこれらの具体的な詳細の1つ以上を伴わずに実施可能なものであることは明らかである。他のケースでは、当業者にとって周知の特徴及び手順は、本発明が不明瞭になるのを回避するため記載されていない。本開示は、例えば生化学材料及び他の生化学反応を観察しかつ/又は記録するのに使用されるオペレーションなどのさまざまな撮像及び/又は走査オペレーションを行なうために使用してよい走査照明用技術の実施形態について記載している。
概説
【0008】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムを作動させるための方法は、撮像システム内のデジタルカメラを用いて基板の一部分の画像を収集し、画像はカメラ内のセンサー素子の多数の画素行に跨っているステップと、カメラが基板の一部分の画像を収集している間に、基板の一部分を横断して光のラインを走査して
、画像が跨る第1の1つ以上の画素行を露光する
一方で、画像が跨る第2の1つ以上の画素行を暗状態に保つことと
、第1の1つ以上の画素行を読み出す
一方で、基板の一部分を横断して光のラインを走査し続けて、第2の1つ以上の画素行を露光することと、を含むステップを実施するステップと、を含む。
【0009】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムを作動させるための方法は、撮像システムの対物レンズ構成要素の下で基板を移動させることと、走査ミラーの角度を変更して、基板が移動している間、対物レンズ構成要素により獲得された基板の一部分の画像がカメラとの関係において静止状態に保たれているようにすることと、をさらに含む。一態様において、第1の1つ以上の画素行を読み出すことは、基板が対物レンズ構成要素の光学軸に対し垂直な方向に移動させられている間に実施される。別の態様において、走査ミラーの角度を変更することは、基板の一部分を横断して光のラインを走査することと協調して実施される。別の態様において、走査ミラーの角度を変更することには、基板の一部分を横断して光のラインが走査される第1の時間間隔と走査ミラーが初期位置まで戻される第2の時間間隔とが含まれ;方法には、さらに、第2の時間間隔中に基板の一部分を横断して光のラインを走査するのを停止することが含まれる。一部の態様において、第1の時間間隔は第2の時間間隔よりも大きい。
【0010】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムを作動させるための方法は、照明ミラーの角度を変更してライン発生器からの光を基板の一部分の上に反射することによって、基板の一部分の光のラインを走査することをさらに含んでいる。一態様において、照明ミラーの角度を変更することは、サーボ機構が照明ミラーを傾動させることを含む。別の態様において、方法はさらに、撮像システムの対物レンズ構成要素の下で基板を移動させることと、走査ミラーの角度を変更して、基板が移動している間、対物レンズ構成要素により獲得された基板の一部分の画像がカメラとの関係において静止状態に保たれているようにすることと、が含まれ、ここで、走査ミラーの角度を変更することは、照明ミラーの角度を変更することと協調して実施される。
【0011】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムを作動させるための方法は、第1の1つ以上の画素行を露光し第1の1つ以上の画素行を読み出す複数のステップの間で第1の1つ以上の画素行を暗状態に保つことをさらに含む。
【0012】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムを作動させるための方法は、少なくとも2つの区分を有する分割型読み出しセンサーを備えるカメラを作動させることを含み、光のラインを走査し読み出しするステップは、センサーの各区分内で独立して実施される。例えば、1つの態様において、1つ区分内で走査し読み出しするステップは、別の区分内で走査し読み出しするステップと並列で実施され、一方、別の態様においては、1つの区分内で走査し読み出しするステップは、別の区分内で走査し読み出しするステップと逆並列で実施される。
【0013】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムを作動させるための方法は、相関2重サンプリングモードで作動するように構成されたカメラを作動させることを含む。一部の実施形態において、読み出しステップは、ローリング読み出しモードで実施される。一部の実施形態において、カメラ内の画素が蛍光発光に対応する波長を有する光によって露光される一方で、光のラインは、蛍光励起に適した波長を有する。
【0014】
1つの好ましい実施形態において、カメラが基板の一部分の画像を収集している間に、撮像システムを作動させるための方法にはさらに、基板を横断して光のラインを走査して画像により走査された第3の1つ以上の画素行を露光し続けながら第2の1つ以上の画素行を読み出すことがさらに含まれ、ここで第3の1つ以上の画素行は第2の1つ以上の画素行とは異なるものである。一態様において、第3の1つ以上の画素行は、第1の1つ以上の画素行とは異なるものである。
【0015】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムを作動させるための方法には、フルフレームモードで作動する非CMOSカメラとCMOS(「相補型金属酸化膜半導体回路」)カメラのうちの1つを作動させることが含まれる。一部の実施形態において、カメラは、55%〜90%の範囲内の読み出し効率で作動している。一部の実施形態において、カメラは90%以上の読み出し効率で作動している。一部の実施形態において、カメラは、毎秒1000ライン〜1,000,000ラインの範囲内のライン速度で作動している。一部の実施形態において、カメラは、100,000〜100,000,000ピクセルの範囲内のカメラ画素数を有する。
【0016】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムを作動させるための方法は、さらに、位置決めステージが、対物レンズ構成要素の光学軸に対して垂直な方向で、毎秒100μm〜1,000mmの範囲内の速度で撮像システムの対物レンズ構成要素の下で基板を移動させることを含む。
【0017】
一部の実施形態において、撮像システムを作動させるための方法には、上に標的核酸が配置されたアレイを備えた基板を撮像することが含まれる。
【0018】
一つの好ましい実施形態において、撮像システムは、対物レンズ構成要素、ライン発生器、カメラ、位置決めステージ及び走査ミラーを備えている。ライン発生器は、位置決めステージ上に取付けられた(又は他の形で設置された)基板の一部分を横断して走査される光のラインを発生させる。位置決めステージは、対物レンズ構成要素の光学軸に対して実質的に垂直である特定の方向に基板を移動させる。カメラは、対物レンズ構成要素を通して基板の一部分の画像を収集する。走査ミラーは、光のラインが画像の一部分を横断して走査され基板が特定の方向に移動させられている間に位置決めステージと協調して移動し、こうして画像がカメラにより収集されている間カメラとの関係において画像を静止状態に保つ。
【0019】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムはさらに照明ミラーとコンピュータ論理とを含み、ここで画像は、カメラ内の多数の画素行に跨っており、ここでカメラが基板の一部分の画像を収集している間に、照明ミラーは基板の一部分を横断して光のラインを走査して
、画像が跨る第1の1つ以上の画素行を露光
する一方で、画像が跨る第2の1つ以上の画素行を暗状態に保ち、コンピュータ論理は
、第1の1つ以上の画素行を読み出す
一方で、照明ミラーが基板の一部分を横断して光のラインを走査し続けて、第2の1つ以上の画素行を露光する。
【0020】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムはさらに、ライン発生器から基板の一部分の上への光のラインを走査する照明ミラーを備え、ここで走査ミラーは、光のラインが基板の一部分を横断して走査され基板が特定の方向に移動させられている間、照明ミラーと協調して移動する。一態様において、撮像システムはさらに、照明ミラーの角度を変更して基板の一部分を横断して光のラインを走査する第1のサーボ機構、及び照明ミラーの角度に対する変更と協調して走査ミラーの角度を変更する第2のサーボ機構をさらに備える。一態様において、第2のサーボ機構は、基板の一部分を横断して光のラインが走査される第1の時間間隔の間、走査ミラーの角度を変更し、第2のサーボ機構は、基板の一部分を横断して光のラインが走査されていない第2の時間間隔の間、走査ミラーを初期位置に戻し、ここで第2の時間間隔は第1の時間間隔より短かい。
【0021】
1つの好ましい実施形態において、撮像システムはさらに、少なくとも(a)光のラインを照明ミラーから走査ミラーに反射して、基板の一部分を照明するため、及び、(b)対物レンズ構成要素により獲得され走査ミラーにより反射された光をカメラまで移行させるために作動するダイクロイックミラーを含む。
【0022】
好ましい実施形態において、撮像システムは、互いに独立して露光され読み出しされ得る少なくとも2つの区分を有する分割型読み出しセンサーを含むカメラを備える。
【0023】
一部の実施形態において、撮像システムは、フルフレームモードで作動する非CMOSカメラ及びCMOSカメラのうちの1つであるデジタルカメラを備えている。一部の実施形態において、カメラは、55%〜90%の範囲内の読み出し効率で作動する。一部の実施形態において、カメラは90%以上の読み出し効率で作動する。一部の実施形態において、カメラは、毎秒1000ライン〜1,000,000ラインの範囲内のライン速度で作動する。一部の実施形態において、カメラは、100,000〜100,000,000ピクセルの範囲内のカメラ画素数を有する。
【0024】
一部の実施形態において、撮像システムは、毎秒100μm〜1000mmの範囲内の速度で基板を移動させる位置決めステージを備える。
【0025】
一部の実施形態において、撮像システムは、上に標的核酸が配置されているアレイを備えた基板を撮像するように構成され作動する。他の実施形態において、基板は、撮像のための標的である多数の全く異なる特徴を備えている。
【0026】
1つの好ましい実施形態において、デジタルカメラを作動させる方法には、(a)物体を横断して薄いライトストリップを走査して、デジタルカメラの画像センサー内で画素を行毎に露光するステップと、(b)ステップ(a)での露光の後、ローリング読み出しモードで画素行を読み出しするステップとが含まれる。一部の態様において、画素の読み出しステップには、物体を横断して薄いライトストリップを走査するステップよりも長い時間がかかる。一部の態様において、画素は、露光と読み出しの間で暗状態に保たれる。一部の態様において、デジタルカメラは、少なくとも2つの区分を有する分割型読み出しセンサーを備え、ここでステップ(a)及び(b)が、センサーの各区分において独立して実施される。例えば、1つの区分内のステップ(a)及び(b)は、別の区分内のステップ(a)及び(b)内のステップ(a)及び(b)と並列して実施されてよく;別の例においては、1つの区分内のステップ(a)及び(b)が別の区分内のステップ(a)及び(b)と逆並列で実施されてよい。一部の態様では、カメラは、相関2重サンプリングモードが作動している。一部の態様では、薄いライトスプリットは、蛍光励起に適した波長を有し、一方で、画像センサー内の画素は蛍光発光に対応する波長を有する光により露光される。一部の態様において、薄いライトストリップは、一度に1つ以上の画素行を露光する。
【0027】
本明細書中及び添付のクレーム中で使用されているように、単数形態の「a」、「an」及び「the」は、文脈から明らかに別段の指示があるのでないかぎり、複数の指示対象も含んでいてよいという点が指摘される。したがって、例えば「付着部位(an attachment site)」に対する言及は、文脈から明らかに別段の指示があるのでないかぎり、複数のこのような付着部位を意味してよく、「配列決定方法(a method of sequence determination)」に対する言及は、当業者により使用されてよい複数の等価のステップ及び方法に対する言及を含んでいてよい。
【0028】
別段の定義がないかぎり、本明細書中で使用されている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書中で言及される全ての刊行物は、その刊行物中に記載されておりここに記載する発明と関連して使用される場合があると考えられる装置、調合物及び方法論を説明し開示する目的でその内容が参照により本明細書に援用されるものである。
【0029】
値の一範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限の間に介在する各々の値ならびに、この記載された範囲内の部分的範囲又は任意の他の記載された又は介在する値が、本発明の範囲内に包含されるものと理解される。このようなより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれてよく、同様に、記載された範囲内のいずれかの限界が特定的に除外される可能性があることを条件として、本発明の範囲内に包含される。記載された範囲が、限界の一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限界のいずれか又は両方を除外する部分的範囲も同様に、本発明の中に含まれる。
【0030】
選択された定義
「画像を収集する」及びその文法的等価物は、カメラ画素セットが活性化されいつでも画像の信号(例えば光)を収集し積算できる状態にあるカメラのオペレーションモードを意味する。例えば、カメラ画素は、活性化された場合、画素が光に露光されたならば光を収集する。カメラ画素が光に露光されない場合(例えば画素が暗状態にある場合)には、画素は、たとえ活性化されていつでも光信号を収集し積算できる状態にあったとしても、全く光を収集しない。
【0031】
「画像空間」とは、カメラ内の画素セットが網羅する部域を意味し、「画像空間画素」はカメラ画素を意味する。
【0032】
「論理」とは、1つ以上の計算装置の1つ以上のプロセッサ(例えばCPU)により実行された場合に、1つ以上の機能性を実施するため及び/又は、機械的装置(例えばサーボ又は同種のもの)の作動を制御する素子によって及び/又は他の論理素子によって使用される入力データ又は1つ以上の結果の形でデータを戻すために作動する、一組の命令を意味する。さまざまな実施形態及び実装において、1つ以上のプロセッサ(例えばCPU)により実行可能である1つ以上のソフトウェア構成要素として、特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又はフィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などの1つ以上のハードウェア構成要素として、又は1つ以上のソフトウェア構成要素及び1つ以上のハードウェア構成要素の任意の組合せとして、任意の所与の論理を実装してよい。任意の特定の論理のソフトウェア構成要素(単複)は、非限定的に、独立型ソフトウェアアプリケーションとして、クライアント−サーバーシステム内のクライアントとして、クライアント−サーバーシステム内のサーバーとして、1つ以上のソフトウェアモジュールとして、1つ以上の関数ライブラリとして、及び1つ以上の静的な及び/又は動的にリンクされたライブラリとして実装されてよい。実行中、任意の特定の論理の命令は、1つ以上のコンピュータプロセス、スレッド、ファイバー及び1つ以上の計算装置のハードウェア中にインスタンス化され得かつ非限定的にメモリー、CPUタイム、記憶空間及びネットワーク帯域を含んでいてよい計算リリースの割当てを受けることのできる他の任意の好適なランタイムエンティティとして、具体化されてよい。
【0033】
「物体空間」とは、物体(例えば基板)の部域を意味し、したがって「物体空間画素」とは、物体(例えば基板)上の部域の一単位を意味する。物体空間画素のサイズは、典型的に、画像空間画素(すなわちカメラ画素)のサイズ及び物体空間の画像を撮るためにカメラが使用された場合に適用される倍率によって決定される。倍率は、画像空間画素(すなわちカメラ画素)のサイズとカメラが観察する通りの画像空間画素に対応する物体空間部域の実際のサイズとの比率である。例えば、16×の倍率は、8μmの画素を用いるカメラが500nmの物体空間画素を観察できるようにする。さまざまな実施形態において、物体空間画素のサイズは、幅が100〜1000nmで長さが100〜1000nmであってよい。好ましい態様において、物体空間画素のサイズは300nm×300nm、より好ましくは500nm×500nm、さらに好ましくは620nm×620nmであってよい。アレイチップを使用する一部の実施形態において、物体空間画素のサイズは、アレイチップ上の付着部位のサイズと実質的に同じか又はそれよりもわずかに大きくなるように選択され、こうして、単一の離散的部位のみが物体空間画素に適合するようになっている。こうして、作動中、アレイチップ上の付着部位から発出されたエネルギー(例えば光)の強度を、単一のカメラ画素で確実に記録することが可能になる。
【0034】
「対物レンズ構成要素」とは、撮像システムにおいて、1つ以上のレンズを備え、電磁信号(例えば光信号)を増幅するように構成され作動する素子又は素子群を意味する。一部の実施形態において、対物レンズ構成要素は、大きい開口数(NA)(例えば0.95〜1.5の範囲内のNA)を有し、空気浸又は液浸(例えば水、油又は他の浸漬流体)を介して撮像を実施する。さまざまな実施形態において、対物レンズ構成要素は2mm〜25mmの範囲内の焦点距離を有していてよい。
【0035】
「ローリング読み出しモード」とは、カメラセンサー内の画素行が、一度に1行ずつ連続的に読み出されるオペレーションモードを意味する。
【0036】
標的核酸に関する「配列決定」(「シークエンシング」とも呼ばれる)とは、標的核酸内のヌクレオチドの配列に関する情報の決定を意味する。このような情報は、標的核酸の部分的及び/又は完全な配列情報の同定又は決定を含んでいてよい。配列情報は、変動する統計学的信頼性又は信頼度で決定され得る。一態様では、「シークエンシング」という用語は、標的核酸内の異なるヌクレオチドから出発した、標的核酸内の複数の隣接するヌクレオチドの同一性及び順序付けの決定を含む。
【0037】
「基板」とは、撮像のための標的である多数の全く異なる特徴を有する物体を意味する。例えば、一部の実施形態において、基板は、標的特徴として標的核酸が付着したビーズ又はウェルなどの表面を伴う非平面的構造を備えている。別の例において、一部の実施形態では、基板は、アレイチップを備えている。「アレイチップ」(「アレイ」、「マイクロアレイ」、又は単に「チップ」とも呼ばれる)は、表面、好ましくは(ただし排他的ではなく)平面的な又は実質的に平面的な表面を有し、標的核酸(例えば高分子)が標的特徴として付着された付着部位を担持する固相支持体を意味する。アレイチップ上では、付着部位は、秩序あるパターンで又はランダムな形で配置されていてよく、典型的には、標的核酸の付着のために好適である寸法(例えば長さ、幅そして場合によっては深さ又は高さ)を有するように構成される。こうして付着部位は空間的に画定され、他の部位とは重複していない。すなわち、付着部位は、アレイチップ上で空間的に離散化されている。付着部位に付着される場合、標的核酸は、アレイチップに対し共有的又は非共有的に結合されてよい。「ランダムアレイ」(又は「ランダムマイクロアレイ」)とは、標的核酸(又はそのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)の同一性をアレイチップ上のそれらの場所から同定できないもののシークエンシング、ハイブリッド形成解読プローブ又は同種のものなどのアレイに対する特定の作業によって決定し得るアレイチップを意味する(例えば米国特許第6,396,955号明細書、同6,544,732号明細書、同6,401,267号明細書、及び同7,070,927号明細書、国際公開第2006/073504号パンフレット及び同2005/082098号パンフレット、及び米国特許出願公開第2007/0207482号明細書及び同2007/0087362号明細書を参照のこと。同様に例えば、Schena Ed.2000,Microarrays:A Practical Approach,IRL Press,Oxfordなどの一部の従来のマイクロアレイ技術も精査されている)。基板の標的特徴のタイプ及び数は、異なる実装、作動状況及び利用分野において変動する場合がある。例えば、さまざまな実施形態において、アレイチップは、(a)100万〜150億の範囲内にある、(b)50%〜95%の範囲内又はそれ以上の付着部位の標的核酸占有率を結果としてもたらす、及び/又は(c)1μm
2あたり0.5〜10の範囲内又はそれ以上のアレイチップ上の平均標的核酸密度を結果としてもたらす数量でその上に多数の標的核酸を付着させてよい。さらに、一部の実施形態においては、基板を、フロースライド又はフローセルなどの流体デバイス上に配置してもよい。フロースライドは典型的に、環境に対し開放しており、基板を横断する液体の流量は主として重力によって決定される。一方、フローセルは典型的に環境からその基板を密封し、圧力駆動式システム(例えばさまざまなタイプのポンプ、バルブ、ライン及び他の流体連結部を備えたもの)によって使用されて流体フローセル内へそしてその外へと移動させる閉鎖された液体通路を提供する。概して、異なる実施形態及び実装において、基板は、撮像のための標的であるさまざまな異なる特徴を伴うさまざまな異なる装置の形で実施することができる。この理由から、この段落中で記述されている基板及びその特徴の例は、限定的な意味ではなくむしろ例示的意味合いで考慮されなければならない。
【0038】
「標的核酸」とは、シークエンシング、観察及び/又は他の研究の対象である遺伝子、調節要素、ゲノミックDNA、cDNA、RNA(mRNA、rRNA、siRNA、miRNA及び同種のものを含む)及びそれらのフラグメント由来の核酸を意味する。標的核酸は、試料由来の核酸又は増幅及び/又は複製反応(単複)の産物などの二次的核酸であってよい。このような産物の一例は、高分子である。核酸に関連して使用される「高分子」は、二次構造(例えばアンプリコン)を備えた直鎖核酸分子、分岐核酸分子及び相互作用する構造要素、例えば相補的配列、パリンドローム又は核酸内で3次元構造要素を発生させる他の配列インサートを伴う個別の配列の多数の別個のコピーを含めた、測定可能な3次元構造を有する核酸を意味する。
【0039】
移動する標的を走査するための撮像システム
一部の実施形態において、本明細書中に記載の撮像システムは、カメラを通して画像を移動させない高速カメラを使用することにより、連続的に移動する標的(例えば基板)を走査するように構成されている。例えば、一部の実施形態においては、DNAシークエンシング用の撮像システムを、CMOSカメラ又は科学的CMOS(sCMOS)カメラを用いて構成することができる。フルフレームカメラは、CCDアレイカメラと異なり、TDIモードでは作動できないことから、この作動上の制限の帰結として、画像は、獲得中、フルフレームカメラのセンサーアレイとの関係において移動してはならない。本明細書中に記載の撮像システムは、位置決めステージが対物レンズ構成要素の下で基板(例えばアレイチップ)を移動させている間、カメラ上で画像を静止状態に保持することのできる走査ミラー(及び/又は別の光学装置)を提供することによって、少なくとも部分的にこの作動上の制限に対処するものである。このようにして、本明細書中に記載の撮像システムは、フルフレームカメラ(例えばCMOSカメラ)の高速性、高解像度及び低コストという利点を達成しながら、これらのカメラの作動上の制限を克服する。このような撮像システムの例は、本明細書中に完全に記載されているかのごとくに全内容が参照により本明細書に援用されている、本明細書と同日に出願された「可動走査ミラーを伴う撮像システム」という題の米国仮特許出願第61/656,701号明細書中に記載されている。
【0040】
本明細書中に記載の撮像システムは、機械的に望ましい連続的なステージ運動の使用を保つものの、画像獲得中は、カメラのセンサーアレイとの関係において基板の画像をフリーズさせる。一部の実施形態において、これは、より重い位置決めステージに比べはるかに容易かつ精確に加速及び減速可能な、軽量のサーボ制御型走査ミラーを使用することによって達成される。走査ミラーの性能を監視しオンザフライで小さな画像位置補正を行なうための装置も同様に、一部の実施形態において、撮像システムの一部を成してよい。その結果として、本明細書中に記載の技術にしたがった撮像システムは、約50nmのアライメント精度を維持しながら、毎秒550メガピクセル(又はそれ以上)の画像データを獲得することができる。シークエンシング機械内において好適な生化学反応サブシステムと結合されて、このような撮像システムは、例えば毎日約100ヒトゲノム当量のデータのシークエンシングなどの非常に高いシークエンシングスループットを可能にする。
【0041】
一部の実施形態において、撮像システムは、対物レンズ構成要素、1つ以上のカメラ、可動式位置決めステージそして好ましくは(ただし排他的ではなく)チューブレンズ構成要素を備えた蛍光ベースのシステムである。これらの実施形態において、撮像システムは、基板(例えばアレイチップ)全体又はその一部分の画像を撮るように構成され作動し、ここで基板は位置決めステージ上に取付けられているか又は他の形で設置されており、カメラ(単複)により画像が撮られている間、運動している。本明細書中に記載の技術によると、このような撮像システムは、移動する基板の画像を獲得するために実際に高速であるカメラ(例えば、CMOSカメラ)を使用できるようにする。このシステムオペレーションモードを容易にするため、本明細書中に記載の技術は、対物レンズ構成要素とカメラ(単複)の間の光学経路内に配置される可動式(すなわち傾動可能な)走査ミラーを提供している。この構成要素配置は、従来の撮像システムとは対照的であり、従来のシステムでは光学経路に沿って完全に整列させられしたがって(従来の撮像システムでは望ましくないとみなされている効果を可動式構成要素が生成することを理由として)この光学経路の中央に可動構成要素を許容できない対物レンズ及びカメラが、この構成要素配置では概して使用されている。
【0042】
DNAシークエンシングのために使用される蛍光ベースの撮像システムは蛍光画像が薄暗いことを理由として、典型的に非常に低い光レベルを使用するという点も、指摘に値する。こうして、このような撮像システム内のカメラ(単複)及び光学素子は、画像獲得時間を最短に保つため、可能なかぎり効率の良いものであることが求められる。さらに、照明強度は、シークエンシングされつつある標的核酸に損傷を与え得る点より低いレベルにとどまらなければならない。これらの要因は、移動する標的核酸の撮像のための蛍光撮像システムを設計する際に考慮に入れる必要のある作用因子の一部である。
【0043】
高速カメラ及び移動する標的の撮像
一部の実施形態において、本明細書中に記載の撮像システムは、撮像中の基板が移動している間に静止画像の連続的露光を達成するために可動式走査ミラーと併せて高速カメラを使用するように構成されている。一部の実施形態において、カメラ画素のサイズ(長さ及び/又は幅)は5μm〜10μmの範囲内、好ましくは(ただし排他的ではなく)6〜8μmの範囲内にある。
【0044】
さまざまな実施形態において、本明細書中に記載の撮像システムは、例えばカメラを通して画像を移動させない非TDIカメラ及びフルフレームモードで作動する他のカメラ(TDIカメラを含む)などの高速カメラを使用することによって、連続的に移動する基板(例えばアレイチップ)を走査するように構成されている。CMOSカメラは、このようなカメラの1つの例示的部類である。CMOSカメラは典型的に、画素アレイを格納する集積回路で構成された画像センサーである能動画素センサー(APS)を使用し、ここで各画素は、光検出器と能動形増幅器を含んでいる。CMOSカメラの一例は、Fairchild Imaging、Milpitas、California製のSciMOS2051モデルである。SciMOS2051は、286MHzの読み出し及び2電子未満の典型的読み出し雑音で毎秒100フレームで5.5メガピクセルの画像を捕捉できる高速カメラである。
【0045】
好ましくは(ただし排他的にではなく)、カメラの高い速度は、一単位時間内にカメラから読み出し可能である画素行数を定義するカメラの1作動特性であるライン速度によって定義づけされる。カメラのライン速度は、以下の等式(1)に従って決定される。
【数1】
なお式中、「R
line」はカメラのライン速度、「P
readout-frequency」はカメラの画素読み出し周波数(例えば、一単位時間内に読み出し可能な画素の数)、「N
pixels-per-line」はカメラのセンサー行内の画素数である。例えば、286MHzの読み出し周波数及び1アレイセンサー行あたり2560ピクセルを有するカメラは、R
line=286MHz/2560≒10
5ライン/秒のライン速度を有すると考えられる。
【0046】
あるいは、高速カメラは、一単位時間内にカメラが露光できる画素数の観点から定義づけされてよい。例えば、カメラの速度は、カメラが撮ることのできる毎秒フレーム数及び視野内の画素数の数学的積により定義されてよい。こうして、毎秒100フレーム(fps)で走行する5.5メガピクセルの視野(例えば2560ピクセル×2160ピクセルの視野)を有するカメラは、毎秒550メガピクセルを露光することができる。こうして、このようなカメラは本明細書において「550」メガピクセルデジタルカメラと呼ばれる。このようなカメラの例としては、非限定的に、CMOS、sCMOS及び類似のカメラが含まれる。さまざまな実施形態において本明細書中に記載の撮像システムは、10メガピクセルから2500メガピクセルの範囲内のカメラを使用してよい。
【0047】
さまざまな実施形態において、撮像システムは、移動する基板を走査式に撮像するように構成されている。このような実施形態において、基板は典型的に、カメラが基板(又はその一部分)の画像を撮っている間に対物レンズ構成要素の下で基板を連続的に移動させることのできる1つ以上の機構(例えばモーター、アクチュエータなど)に結合された位置決めステージ上に取付けられる(又は他の形で設置される)。位置決めステージは、対物レンズ構成要素の光学軸に対して垂直な方向に沿って基板を移動させるように構成され作動する(これは、概して対物レンズの光学軸に沿って物体及び/又は対物レンズ全体を移動させる自動焦点タイプの機構の作動に対し直交するという点が指摘される)。
【0048】
本明細書中に記載の技術によると、ステージの運動は、充分な露光を提供する時間周期だけカメラ上に基板(又はその一部分)の画像を静止(安定)状態に保つような形で、走査ミラーの逆走査運動と協調させられる。換言すると、ステージが移動している間、その上に取付けられた基板の静止画像が、カメラに対し露光されている。露光周期中の画像の安定化は、対物レンズ構成要素とカメラの間の光学経路内の走査ミラーの運動(例えば傾動)によって提供される。こうして、走査ミラー及び位置決めステージは、撮像中の基板が連続的に運動している間に画像を静止/安定状態に保持するために、協調式の戻り走査オペレーションにおいて有効に結合される。
【0049】
撮像システムの好ましい実施形態においては、作動中、位置決めステージは、露光された画素の1つ以上の行をカメラから読み出すためにコンピュータシステムが論理を実行している間に、上に取付けられた基板を移動させている。同時に、同じ及び/又は異なるコンピュータシステムは、論理を実行して、位置決めステージのタイミングに走査ミラーのタイミングを同期させ、こうして走査ミラーが戻り走査しカメラ上の別の画像を静止状態に保ちこれによりカメラ画素の1つ以上の行の別のセットを露光する。
【0050】
このようなオペレーションモードでは、位置決めステージの速度は、以下の等式(2)に従って計算可能である。
【数2】
なお式中、「V
stage」はステージ速度、「S
pixel」は、物体空間画素のサイズ(例えば長さ又は幅)、「R
line」はカメラのライン速度(例えば画素行がカメラから読み出される速度)であり、「η」はカメラからの全読み出しの効率(例えば、進行中である他の露光に支障をきたすことなくカメラから読み出しを抽出できる時間の百分率又は分率で表わされるもの)である。例えば、さまざまな実施形態において、物体空間画素のサイズ(例えば長さ及び/又は幅)は、100nm〜1000nmの範囲内であり得、カメラのライン速度は毎秒10
3ライン〜10
6ライン(Hz)の範囲内であり得、カメラからの全読み出し効率は、10%〜55%、55%〜90%の範囲内又は90%超であり得る。したがって、さまざまな実施形態において、位置決めステージの速度は毎秒0.1mm〜1000mmの範囲内(又はそれ以上)であってよい。好ましい実施形態において、物体空間画素は620nmであり、カメラのライン速度は、毎秒10
5ライン(Hz)であり、カメラからの全読み出し効率は90%であり、これは毎秒約55.8mmのステージ速度を提供する。
【0051】
本明細書中に記載の技術によると、1つ以上の計算装置及び/又はそのさまざまな論理は、走査ミラー及び位置決めステージの協調運動を制御するように構成され作動する。こうして、一部の実施形態において、位置決めステージ(したがってその上に取付けられた基板)は、一定速度で移動するように構成され得、その場合、走査ミラーの戻り走査運動も同様に、好適な一定速度で行われる。他の実施形態において、位置決めステージを、一定でない速度で移動するように構成することができ、その場合、走査ミラーの戻り走査運動も同様に好適な一定でない速度で行われる。
【0052】
さまざまな実施形態において、位置決めステージの所与の所望される速度での運動を容易にするために、さまざまな機構を使用してよい。このような機構は、運動を発生させる1つ以上の構成要素(例えばリニアモーター、リードスクリュー、スクリューモーター、スピードスクリューなど)及び摩擦を低減させる1つ以上の構成要素(例えばさまざまなタイプの軸受)を備えていてよい。例えば、一部の実施形態は、位置決めステージを移動させるために空気軸受を伴う機構を提供してよい。空気軸受は、2つの表面間に非常に低い摩擦界面(例えば軸受隙間)を提供する圧搾空気の薄膜である。こうして、これらの実施形態において、位置決めステージの底面は、別の表面と直接接触した状態にはなく、むしろ空気軸受の隙間の上に懸吊されており、このため(空気は軸受空隙から常時漏出するものの)軸受の複数の面間に加えられる空気圧は位置決めステージの荷重を支持するのに充分なものである。本明細書中に記載されている撮像システム内でこのような空気軸受を使用することで、10〜20nmのアライメント許容誤差の範囲内でカメラ上に静止画像をロックすることが可能になる。別の例において、一部の実施形態は、数ミクロンの再現性を有する金属軸受(例えば玉軸受、円筒軸受、クロスローラー玉軸受など)を使用してよい。このような実施形態は典型的に、より大きいアライメント許容誤差(例えば20nm超の許容誤差)、位置決めステージのより低い速度を有し、かつ/又は物体空間画素あたり多数のカメラ画素を使用する場合があるにせよ、それでも一部の利用分野の状況においてはなお商業的に実行可能である。
【0053】
上述の等式(2)が示す通り、全カメラ読み出しの効率(「η」)は、撮像システムの全体的スループットを決定する1つのパラメータである。本明細書中に記載の技術によると、η=90%(又はそれ以上)の読み出し効率が、走査照明を使用することによって達成できる。
【0054】
走査照明を伴う撮像システム
一部の実施形態において、高速CMOSカメラは、低い読み出し雑音を達成するために相関2重サンプリングを使用し、スループットを高めるためにローリング読み出しモードを使用する。これらの作動モードに付随する技術的詳細は、移動する標的物体を走査する撮像システムと組合わされた場合、画像獲得技術に幾分かの制約を加える。例えば、ローリング読み出しモードにおいて、カメラは読み出しオペレーションを終了した直後に画像獲得を開始することができる。こうして、カメラを最大の能力及び/又は効率に保つためには、カメラから画像データが読み出される時間の分率を最大にすることが好ましい。しかしながら、移動する標的を撮像するために走査ミラーを使用する撮像システムにおいては、走査ミラーはその初期位置に戻る必要があり、このような「フライバック」時間中、カメラに投影される画像は安定していない。
【0055】
この問題に対処するため、本明細書中に記載されている技術は、カメラセンサーから画像データを読み出すことのできる時間の分率を最大にする走査照明の使用を提供する。例えば、一部の実施形態において、撮像システムは、光発生器と角度的に可動な照明ミラーとを備えており、ここでライン発生器は光のライン(例えば薄いストリップ)を生成し、照明ミラーは、標的が移動しているのと同じ軸に沿って、移動する標的(例えばアレイチップなどの基板)上で光のラインを走査する。「安定」画像時間中(例えば、走査ミラーがカメラとの関係において画像を静止状態に保持する時)、移動する標的を横断して光のラインが走査されて、露光されたばかりの画素行(単複)の前方にある1つ以上の画素行を露光する。こうして、撮像システムは、画素が露光された直後の画素行を連続的に読み出すことができ、これにより、カメラの容量及び効率は最大となる。安定時間が終了した後、走査ミラーがその初期位置に戻されるフライバック時間間隔中、光のラインは「オフ切替え」され(例えばスイッチ又は設計された開口による)、こうしてカメラ画素が不安定画像に露光されることが妨げられる。換言すると、光のラインが読み出し中の画素行(単複)よりも少なくともわずかに速く進むかぎり、そして露光時間が静止(及び/又は分解可能な)画像を獲得するのに充分なものであるかぎり、ほぼ90%〜95%の時間(さらには、走査ミラー及び照明ミラーの運動及びタイミングが精密に同期されている場合には最高100%の時間)カメラから画像データを読み出すことができる。例えば、走査ミラーが、走査ミラーサイクルの少なくとも90%の間(カメラ上で画像を静止状態に保持するならば例えば走査ミラーのフライバック時間がサイクルの10%未満である場合)、走査照明を使用するこの技術によりカメラは、少なくともη=90%の全読み出し効率で作動することができることになる。
【0056】
走査照明を伴う走査型撮像システムの例
図1Aは、好ましい実施形態に係る走査蛍光撮像システム100の略図である。
図1Aの撮像システムは、基板(例えばアレイチップ)が顕微鏡の対物レンズ構成要素の下を移動させられるにつれてカメラのセンサー上に基板の一部分の画像が一時的に定着されている間に基板を横断して光のラインを走査することによって基板の一部分を照明する。
【0057】
図1Aに示されている実施形態において、アレイチップ105は、例えばDNA高分子などの標的核酸を担持する。位置決めステージ110は、対物レンズ構成要素115との関係においてy方向にアレイチップ105を移動させる。位置決めステージ110は、高精度でコンピュータ制御式の空気軸受ステージである。対物レンズ構成要素115は、既製の対物レンズである。一部の実施形態において、対物レンズ構成要素は、カスタム設計の多素子光学構成要素であってよい。さらに、一部実施形態では、水浸式を用いて対物レンズ構成要素の開口数(NA)を増大させてよい。
【0058】
対物レンズ構成要素115及びチューブレンズ構成要素120は、アレイチップ105の一部分の画像をカメラ125のセンサーアレイ上に投影する。チューブレンズ構成要素120は、第2の拡大対物レンズとして機能する1つ以上のチューブレンズを備えた1つの素子又は素子群である。カメラ125は、好ましくは(ただし排他的ではなく)フルフレームモードで作動し、低い読み出し雑音、高解像度及び高撮像速度を特徴とするセンサーアレイを使用する高速CMOSカメラである。
【0059】
図1Aに示されている実施形態において、走査ミラー130は、サーボ回転機構(図示せず)により一定の角運動範囲内で傾動させられる軽量ミラーである。走査ミラー130が初期位置と最終位置の間で前後に傾動するにつれて、対物レンズ構成要素115の視野106内の部域は、画像107としてカメラ125上に撮像される。走査ミラー130の運動が位置決めステージ110の運動と協調されている場合、アレイチップ105上の固定部域(例えば視野106)は、ステージが移動している一方でカメラにより撮像される。走査ミラー130の回転(例えば
図1Aの平面に対して垂直な軸を中心とした回転)は、図中に示されたy軸方向で画像を走査する効果を有する。この結果は、走査ミラー130が内部に設置されている撮像システム100の視準を合わせた区分内での傾動がカメラ125の焦点面における横方向並進運動に対応することを理由として得られるものである。
【0060】
蛍光撮像のための照明は、照明光ライン108の形でライン発生器160により提供される。光のライン108は、ライン発生器160とダイクロイックビームスプリッター150との間の光学経路内に設置された照明ミラー140に向けられこれにより反射される。さまざまな実施形態において、ライン発生器は、例えば400nm〜800nmの範囲内の波長の光などの、シークエンシングにおいて使用可能なさまざまなフルオロフォアと適合性のあるさまざまな波長の光を発出することができる。
図1Aでは、ライン発生器160は、光源162(例えば1つ以上のレーザー又は他の照明源)、1つ以上の視準レンズ164、及び1つ以上の負シリンドリカルレンズ166を備えている。視準レンズ164は、光源162から発出された光を平行な光のビームに変え、負シリンドリカルレンズ166は平行ビームを光のラインの形に集束する。さまざまな実施形態において、このようにして生成される光のラインは、拡大後カメラ画素の1つ以上の行の長さ及び/又は幅に対応する長さ及び/又は幅を有するように構成されている。例えば、
図1Aの実施形態に関連して、照明光のライン108の長さ及び幅は、対応する曝露光のライン109がカメラ125のセンサー内で1つ以上の画素行に跨るようなものである。
【0061】
照明ミラー140は、サーボ回転機構(図示せず)により一定の角運動範囲内で傾動させられる軽量ミラーである。照明ミラー140が初期位置と最終位置の間で前後に傾動するにつれて、ライン発生器160により生成される照明光のライン108は、照明ミラーによりダイクロイックビームスプリッター150へとそして次に走査ミラー130へと反射され、今度は走査ミラーがそれを対物レンズ構成要素115を通してアレイチップ105上に反射する。ダイクロイックビームスプリッター150は照明波長では反射するが、蛍光発光波長では透過させる;こうして、ビームスプリッター150は、照明光のライン108を走査ミラー130へと反射し、蛍光曝露光のライン109をカメラ125に伝送する。一度に2つ以上のタイプの蛍光マーカーを調べる撮像システムにおいては、多数の照明源(例えば各々別個の光スペクトルを発出する多数のレーザー)及びダイクロイックビームスプリッターを使用してよいという点が指摘される。
【0062】
照明ミラー140は、位置決めステージ110がアレイチップ105を移動させているのと同じ方向(例えばy方向)でアレイチップ105を横断して照明ミラーの角運動が光のラインを有効に移動させることができるような形で照明光のライン108の光学経路内に位置づけされる。照明ミラー140の運動は、走査ミラー130及び位置決めステージ110の運動と同期されかつ/又は協調していることから、照明ミラーの運動により、照明光のライン108は、対物レンズ構成要素115の視野106の内部にあるアレイチップ105の一部分を横断して有効に移動させられるか又は走査されることになる。
【0063】
走査ミラー130の運動は位置決めステージ110の運動と協調していることから、アレイチップ105上の視野106により網羅される固定部域は、ステージが移動している間カメラ125によって撮像される(例えば、カメラ上に投影された画像107は安定している)。
図1Aの平面に対して垂直な軸を中心にして走査ミラー130を回転させることには、次のような効果がある:すなわち(1)(照明ミラー140の運動と協調して実施される)y方向でのアレイチップ105上への照明光のライン108の走査、及び(2)同じくy方向でのアレイチップ105の一部分の画像107の走査。
【0064】
作動中、カメラ125は、対物レンズ構成要素115の視野106内の部域の画像107を収集する(一部の実施形態においてはカメラがローリング読み出しモードで作動していてよく、一方他の実施形態ではフルフレームモードで作動していてよいという点が指摘される)。カメラ125により収集された画像107は、多数のカメラ画素行に跨っている(このような画像は本明細書において「2次元」画像とも呼ばれている)。光のライン108は一度にアレイチップ105の一部分の1本の小さいラインしか照明しないことから、任意の一時点において曝露光の対応するライン109は、画像107が跨っている画素の他の行(単複)を暗状態に保ちながら画像が跨っている1つ又は少数の画素行を露光するにすぎない(このような「暗状態」の画素は、まだ露光されていない画素であってもよいしあるいはすでに露光されているもののまだ読み出しされていない画素であってもよいという点が指摘される)。照明ミラー140、走査ミラー130及び位置決めステージ110の運動及びタイミングは、照明光のライン108が、カメラ125から現在読み出されている画素行(単複)の少なくともわずかに前に来るような形で、撮像システム100内のコンピュータ論理(図示せず)により協調され同期される。例えば、照明光のライン108による励起に応答してアレイチップ105上の標的核酸が発出する曝露光のライン109は、カメラを作動させるコンピュータ論理により現在読み出されている他の画素行(単複)の(少なくともわずかに)前方にあるカメラ125内の画素行(単複)を露光している。このようにして、他の画像データがカメラセンサーによって獲得されている間に、カメラから画像データを読み出し、こうして全体的カメラ読み出し効率ηを増大させることができる。
【0065】
一部の実施形態において、撮像システムは1つ以上の傾動プレートを備えていてよく、これらのプレートは、走査ミラーとカメラの間の光学経路内に位置づけされ、例えば画像の2方向での補正のために1つの傾動プレートをそして画像のy方向での補正のために1つの傾動プレートを使用することによって、カメラのセンサーアレイ上の画像の配置に対する小さい補正を行なうために使用可能である。傾動プレートは、およそ直径2.5cm、厚み3.5mmのガラス製であり得る。プレートは、高速かつ精確な動作のためサーボ回転機構上に取付けることができる。一例としてx方向を用いると、光が非垂直入射で傾動プレート内を通過する場合、その位置は、以下の等式(3)から求められる量Δxだけオフセットされる。
【数3】
なお式中、「t」はプレートの厚み、「n」は屈折率、「θ」は入射角である。以上で示した寸法のガラス板(n=1.5)の場合、5度の傾動が約100μmの横方向画像オフセットを生み出す。類似の関係が、y方向の傾動プレートについても適用できる。上記の等式(3)に基づいて、カメラのセンサーアレイとの関係における画像アライメントについての情報を用いて、x方向傾動プレート及び/又はy方向傾動プレートを駆動するフィードバック信号を提供することができる。このようなアライメント情報の1つの供給源は、カメラにより獲得された画像の分析結果である。y方向におけるアライメント情報の別の供給源は、走査ミラーの傾動角度を精確かつ高速に測定する1つ以上の角度センサーを使用して走査ミラーの性能を監視することによって得ることができる。一部の実施形態において、このような画像アライメント情報は、計算装置に送られ、計算装置は走査ミラー、チップ位置決めステージ、1つ以上の傾動プレートの作動そして好ましくは(ただし必ずしも必要ではないが)撮像中の基板を照明することに関与するあらゆる照明ミラー及び/又は照明源(単複)の作動を制御する論理を実行する。
【0066】
一部の作動状況及び利用分野において、撮像システムは、可動位置決めステージ及び/又は可動走査ミラーを使用することなく本明細書中に記載の走査照明のための技術を利用することができる。例えば1つの変形実施形態において、撮像システムは、不動の基板を横断して照明光のラインを走査するための可動照明ミラー及び基板の一部分の画像を収集するために作動するカメラを使用する。カメラは、他の一部の画素行(単複)がカメラセンサーから読み出されている間に一部の画素行(単複)を露光できるようにするモード(例えばローリング読み出しモード又はフルフレームモード)で作動する。基板は不動であり画像獲得中に移動しないことから、撮像システムは、カメラ上で画像を静止状態に保つために可動走査ミラーを利用する必要がない。照明ミラーの運動及び、カメラから画像を読み出すコンピュータ論理の作動は、(照明光のラインに応答して基板から反射される)曝露光のラインが、コンピュータ論理により現在カメラから読み出されている画素行(単複)の少なくともわずかに前方に来るような形で、協調され同期される。このような協調及びタイミング同期は、(非限定的に)充分な露光に必要な時間、基板を横断した照明光のラインの走査速度及び同種のものを含めた複数の要因によって左右される場合がある。このような要因は撮像システムの特定の用途によって大きく左右されることから、この変形実施形態において、本明細書に記載の走査照明のための技術は、たとえ撮像システムが移動する標的の撮像のために可動位置決めステージを利用しない場合でも、一部の作動状況においてカメラの全体的読み出し効率ηを増大させるためになおも使用可能である。
【0067】
したがって、角運動可能な照明及び走査ミラーを直線運動可能な位置決めステージと併用する実施形態(例えば
図1Aで図示された実施形態)は、制限的意味合いではなくむしろ例示的意味合いで考慮されるべきものである。
【0068】
走査オペレーションにおける協調及び同期
一部の実施形態において、撮像システムは、位置決めステージが顕微鏡の対物レンズ構成要素の下で基板(例えばアレイチップ)を移動させるにつれて可動走査ミラーがカメラ上に基板の一部分の画像を一時的に定着させる間に基板を横断して光のラインを走査するために可動照明ミラーを使用する。照明ミラーの運動は、それが対物レンズ構成要素の視野内にある基板の一部分を横断して照明光のラインを有効に移動又は走査させることができるようにする形で、走査ミラー及び位置決めステージの運動と協調される。
【0069】
1つの好ましい実施形態において、撮像システム内の1つ以上の計算装置は、カメラ画素の露光された行(単複)から画像データを読み出すオペレーションのタイミングを、照明ミラー、走査ミラー及び上に標的基板が取付けられている位置決めステージの運動と同期させるように構成され作動するコンピュータ論理を実行する。作動中、移動する照明ミラーにより反射された光のラインが基板を横断して移動する走査ミラーにより走査されるにつれて、計算装置が読み出し論理を実行して露光された画素の1つ以上の行をカメラから読み出す一方で、位置決めステージは上に取付けられた基板を移動させている。同時に、同じ及び/又は異なる計算装置は、照明ミラー、走査ミラー及び位置決めステージを移動させるシステム素子からの入力データを受信する協調論理を実行し、ここでこのような入力データの例としては、非限定的に、照明ミラーの現在の傾動角度を特定するデータ、走査ミラーの現在の傾動角度を特定するデータ及び位置決めステージの位置及び速度を特定するデータが含まれる。協調論理は次に、入力データを用いて、照明ミラー、走査ミラー及び位置決めステージの運動及びタイミングに何らかの補正が必要であるか否かを判定し、必要である場合には、このような運動を促進するシステム素子に対してあらゆる必要な補正項を送信する。
【0070】
このようにして、協調論理は、照明ミラー、走査ミラー、位置決めステージ及び読み出し論理の作動を同期する。この同期の結果として、走査ミラーは、同時に読み出し論理がすでに露光された画素行(単複)から画像データを抽出している一方で、基板を横断して照明光が走査されている間に、カメラとの関係において基板(又はその一部分)の画像を静止状態に保つことになる。一部の実施形態において、曝露光のラインが、現在読み出し中の画素行(単複)の前方にあることを協調論理が保証するかぎり、照明ミラー及び走査ミラーは必ずしも、走査ミラーがカメラ上で画像を静止状態に保つために必要とされる許容誤差と同程度に厳しい許容誤差で作動する必要はない。他の実施形態(例えば極めて高い画像システムスループットを必要とする実施形態)において、読み出し論理、照明ミラー及び走査ミラーの間のタイミングは、常時又はほぼ常時カメラから画像データを読み出すことができるよう保証するために極めて厳しい許容誤差内で同期されるかもしれない。例えば、一部のDNAシークエンシング実施形態において、撮像システムは、カメラにより獲得される画像を10〜15nmの精度でロックする必要があり、これには、照明ミラー、走査ミラー、位置決めステージ及び読み出し論理のそれぞれのタイミング間の高度の同期が求められる。
【0071】
画像データをカメラから抽出できる時間の分率を最大にするため、一部の実施形態において、照明ミラー、走査ミラー及び位置決めステージは、他の行(単複)が暗状態に保たれている間にカメラ内の1つ以上の画素行(単複)の露光を可能にするような形で協調される。露光が完了した時点で直ちに、計算装置は、読み出し論理を実行して、露光された画素行(単複)を読み出し、それと同時に撮像システムは基板の一部分を横断して光のラインを走査してカメラ内の他の画素行(単複)を露光し続ける。こうして、曝露光のラインが読み出し中の画素行(単複)の直前に常にあり、かつ画像データが他の画素行から読み出されている場合でさえ、カメラが常に少なくとも一部の画素行を露光している場合、カメラの全体的読み出し効率ηは最大/最適となる。
【0072】
本明細書中に記載の技術によると、照明は、標的基板を横断してラインの形で走査されていることから、曝露光のラインがその画素全体を掃引する時間間隔の間のみカメラ画素内で電荷が収集され積算される。残りの時間、画素は暗状態にあり、したがって、画素が直ちに積算を実行できる状態にあるにしても、いかなる電荷も積算しない。こうして、露光が完了した(例えば曝露光のラインが画素上を掃引した直後の)時点で直ちに、画素行により蓄積された電荷は、画素を行毎にローリングの形で読み出す読み出し論理を実行することによって読み出し可能である。
【0073】
走査ミラーフライバック
サーボ制御型ミラーを使用する実施形態において、照明ミラー及び走査ミラーの運動及びタイミングの間の同期は必ずしも厳しい許容誤差内にある必要はないが、照明ミラーは、走査ミラーの「安定した」時間間隔(例えば走査ミラーがカメラとの関係において画像を静止状態に保持する時間間隔)内にそのサイクル(例えばその初期位置からその最終位置まで)を完了する必要がある。例えば、移動する標的を撮像するために走査ミラーを使用する撮像システムにおいては、走査ミラーはその初期位置まで戻る必要があり、このような「フライバック」時間間隔中、カメラ上に投影される画像は安定していない;したがって、このような撮像システムが本明細書中に記載の走査照明を利用する場合、照明の走査を容易にするあらゆる構成要素(例えばサーボ制御型照明ミラー)は、あらゆるフライバック時間間隔に先立ってそのサイクルを完了している必要がある。例えば、移動する標的を撮像するために非TDI−作動式カメラを使用する撮像システムにおいて、走査ミラーフライバック間隔中にカメラ画素が露光されるべきではないが、すでに露光された画素を読み出すことは可能であるということフライバック時間間隔が暗示している。
【0074】
図1Bは、好ましい実施形態に係る走査ミラー角度タイミングの図表を示す。
【0075】
図1Bで、走査ミラーの傾動角度は、時間tとの関係においてプロットされている。周期170(「スキャン」とマークされているもの)中、ミラー角度は、時間と共に実質的に線形的に変化し、こうして移動する基板上の固定部域をカメラが検分できるようになっている。周期175(「フライバック」とマークされているもの)の間、走査ミラーは、新たな走査の準備として、その出発角度(例えば初期位置内)に復帰する。この挙動の1つの帰結は、フライバック時間間隔中に画像を獲得すべきではないという点である。しかしながら、走査ミラーフライバック中にカメラのセンサーを露光すべきではないものの、画像データはいつでもカメラから読み出されてよい。
【0076】
一部のDNAシークエンシング実施形態では、データの読み出しを停止するか又はスループットを減速させる理由が全くないことから、(例えばデジタルデータへの画像変換などの)データスループットを最大にするためにカメラから連続的に画像データが読み出される。しかしながら、このような実施形態においては、蛍光撮像光レベルが典型的に非常に弱いことから、画像がカメラから収集される走査時間間隔はなお、適切な信号対雑音比を増大させるのに充分な長さのものでなければならない。
【0077】
フライバック時間間隔の間、獲得中の画像は安定していないことから、撮像システムは撮像を停止すべきである。したがって、さまざまな実施形態において、さまざまな機構を使用して、フライバック時間間隔中のカメラに対する画像の露光を防止することができる。例えば、一部の実施形態では、撮像中の基板上に反射される照明光のラインを生成するライン発生器をオンオフ切替えするために、音響光学変調器(AOM)スイッチ(又は他のタイプの高速スイッチ)を使用してよい。他の実施形態では、照明光のラインの光学経路内に好適な絞りを設置することができ、ここで照明光のラインは、過剰走査できるものの、絞りは、視野の外側の光のラインを遮断することによってフライバック時間間隔中に光のラインが基板を照明するのを妨げる。さらに他の実施形態においては、照明光のラインの光学経路内に好適なシャッターを設置することができ、ここで、シャッターは露光間隔中開放状態に保たれ、走査ミラーフライバック時間間隔中閉鎖される。
【0078】
このようにして、本明細書中に記載の走査照明のための技術は、移動する標的を走査するために撮像システム内で使用される走査ミラーのフライバック時間間隔によってひき起こされることのあるカメラ読み出し効率の低下をことごとく回避できる。
【0079】
例示的走査オペレーション
図1Cは、
図1Aの好ましい実施形態に係る対物レンズ構成要素115の視野106内の物体空間部域の詳細である。
図1Cでは、陰影のある矩形180が、撮像システムの走査ミラーが中間位置にある場合にカメラのセンサーアレイ上で撮像される視野106内の部域を表わしている。矩形184及び182(破線の縁を伴う)は、それぞれ走査ミラーがその極限の初期位置及び最終位置にある場合にカメラのセンサーアレイ上で撮像される視野106内の部域を表わしている。
【0080】
作動中、対物レンズ構成要素は、y方向に間断なく移動している基板(例えばアレイチップ)上に焦点が合せられ、走査ミラーはその初期位置からその最終位置まで回転する。基板の速度がカメラ上で撮像される視野106の速度と同じである場合には、視野に対応する基板部分の画像はカメラとの関係において移動せず、こうして、カメラセンサー上への充分な露光を可能にする。
【0081】
しかしながら
図1Cに関連して、画像は、撮像された物体空間部域が矩形184により示される初期位置から矩形182により示される最終位置まで移動する時間中だけカメラとの関係において不動の状態にある。走査ミラーは、その極限最終位置に達した場合、次にその初期位置までフライバックしなければならない。フライバック時間間隔は走査ミラーサイクルの小さな分率しか占めないように構成され得るが、必要な場合には連続する撮像部域は隣接するかさらには重複していてよい。効率をさらに高めるためには、走査ミラーが撮像された各部域上で費やす時間の量を、カメラのフレームレートに相応するものにし、こうして、すでに撮像され視野の外にある他の物体空間部域についてカメラから画像データを読み出すことができるようになると同時に、カメラ上へと各々の物体空間部域の画像を露光するための充分な時間が可能となる。
【0082】
撮像上の問題を処理しやすい単位に分割するため、一部のアレイチップ実施形態において、アレイチップの付着部位は、ミクロンからミリメートルサイズのフィールドに分割される。(例えば、さまざまな態様において、典型的なフィールドは、320〜1600μm×320〜1600μm、500〜600μm×500〜600μm、さらには1.6mm×700μm)の範囲内のサイズのものであってよい)。典型的なアレイチップは、矩形の行列パターンに配置された数百又は数千ものフィールドに分割されてよい。(例えばフィールドの行及び列は、実質的にそれぞれ水平寸法と垂直寸法に沿って整列させられているトラック領域を含んでいてよい)。
【0083】
付着部位のフィールドを伴うこのような実施形態において、本明細書中に記載の技術は、アレイチップを部分毎に走査し撮像することを提供しており、ここで各々の部分は、長さの1つ以上のフィールドと幅の1つ以上のフィールドとに跨る列である。一実施例において、撮像システムは、対物レンズ構成要素の光学軸に対し実質的に垂直である平面及び/又は軸の中でy方向に沿って位置決めステージがアレイチップを移動させている間に(本明細書中に記載の通りの)走査照明を用いて走査する形でアレイチップを撮像する。この実施例において、撮像システムは、撮像中のフィールド(単複)の列の終りに達した時点で撮像を停止して、位置決めステージがアレイチップを復帰させてそれをフィールド(単複)の次の列の撮像のために位置づけすることができるようにする。別の実施例において、撮像システムは、位置決めステージが対物レンズ構成要素の光学軸に対して実質的に垂直である平面内で蛇行する形(例えばy軸に沿って)でアレイチップを前後に移動させている間に、(本明細書中に記載の通り)走査する形でアレイチップを撮像する。この実施例において、撮像システムは、位置決めステージがアレイチップを一方の方向に移動させている間にフィールド(単複)の1本の列を撮像し、その後位置決めステージがアレイチップを反対方向に復帰させている間にフィールド(単複)の次の/隣接する列を撮像する。換言すると、撮像システムは、連続する蛇行の形でフィールドの列を有効に横断することによって、アレイチップを撮像する。
【0084】
ローリング読み出しモード及びローリング露光モード
一部の実施形態において、撮像システムは、低い読み出し雑音を達成するために相関2重サンプリングモードで作動可能なCMOSカメラを使用する。さらに、このようなシステム内のカメラは、スループットを高めるためローリング読み出しモードで作動してもよい。
図2は、一実施形態に係るローリング読み出しモードでの例示的オペレーションの略図を示す。
【0085】
図2は、デジタルカメラの画像センサー205内の少数の画素行(例えば画素210)を示している。(例示を目的として、少数の画素列のみが
図2中に描かれている;しかしながら画素列はセンサー205の幅全体に沿って延びていること、すなわちセンサーは画素の行と列のグリッドであることが指摘される)。さまざまな実施形態において、カメラの画像センサーは、250〜10,000ピクセル行程度及び400〜10,000ピクセル列程度を含み、合計画素数が100,000個から1億個の範囲内となってよい。
【0086】
ローリング読み出しモードでは、画像データは、行毎のベースでカメラセンサーから読み出される。換言すると、1つの画素行全体に由来するデータが同時に読み出される。一例としては、
図2の行215由来の画像データが一度に読み出される。その後、隣接する画素行由来のデータが読み出される。本明細書中に記載されている技術によると、行はランダムに読み出されず、むしろセンサの上方又は下方に掃引又は「ローリング」する形で読み出される。例えば、
図2の2つの矢印は、次の2つの可能性を示唆している。すなわち、行215の後に読み出される次の画素行は、そのすぐ上で隣接する行又はそのすぐ下で隣接する行となる。ローリング読み出しモードは、グローバルシャッター又はスナップショットモードに比べて最高2倍のフレームレート増加を提供することができる。
【0087】
一部の実施形態において、低読み出し雑音を達成するための相関2重サンプリングの使用は、画像獲得が読み出しの直後に開始できることを意味している。例えば、カメラセンサー内の画素は、データを撮像するのに寄与する光の蓄積をデータが読み出された直後に開始することができる。しかしながら、いかなる光もカメラセンサーに入射しない(例えばカメラセンサーが暗状態にあり露光されていない)かぎり、画像雑音は増大しない。これらの作動上の詳細は、例えばフライバック時間間隔などの露光無駄時間を有する撮像システムにおいて相関2重サンプリング及びローリング読み出しモードを活用する新しい露光モードを導く。
【0088】
本明細書中に記載の技術によると、この新しい露光モードは、カメラセンサー内の1つの又はほんの少数の画素行に対応する(あらゆる撮像すべきもの、例えば基板の)物体空間部域を照明することに基づいており、ここで照明は物体空間部域上で走査されるか又は「ローリング」されている。この露光モードは、本明細書において「ローリング露光モード」と呼ばれている。こうして、一部の実施形態において、撮像システムはローリング露光モード(この場合、光のラインが撮像中の基板を横断して走査される)及びローリング読み出しモード(この場合、画素行が露光の直後に相次いで読み出される)の両方で作動する。露光及び読み出しオペレーションの間の暗状態の周期は、画像雑音を増大させない。この技術の基本的原理は、
図3に示されており、これは、ローリング露光モードとローリング読み出しモードの両方で作動させられているカメラの露光及び読み出し領域を示している。
【0089】
図3は、カメラセンサー305内の少数の代表的画素行を示している。(例示を目的として、
図3では少数の画素列しか描かれていない、しかしながら、画素列はセンサー305の幅全体に沿って延びていること、すなわちセンサーは画素の行及び列のグリッドであるということが指摘される)。陰影の入った行315が現在露光されている。すなわち行315中の画素は、画像データを記録している。ハッチングの入った行320は読み出し中である−すなわち、行320中の画像データは、計算装置へと伝送されてそれにより操作されるのに好適な電子ビットの形に変換されつつある。行315と行320の間の行325などの行は、暗状態にある。これらの行は、光の露光の間に光信号を蓄積し積算しているが、まだ読み出しされていない。暗状態で行325などの行にはそれ以上光も雑音も加えられることはない。行330及び335などの行内の画素は、画像データをいつでも収集できる(例えば光信号を蓄積及び積算するため)状態にある。露光及び読み出しオペレーションの方向との関係において、このような画素行は、現在の読み出し行(例えば行320)の後ろ及び現在の露光行(例えば行335)の前の両方に位置設定される。
【0090】
図3は、1本の行315だけが露光されているところを示しているが、実際には、少数の(例えば1本から約10本ほど)画素行が同時に露光されてよい。露光中の画素行は、撮像中の物体空間部域(例えば基板の一部分)を横断して走査される照明光のラインに対応している。したがって、顕微鏡の対物レンズを通して可視的な部域全体が一度に照明される従来の蛍光顕微鏡法とは異なり、本明細書中に記載の走査照明用の技術によると、照明される物体空間部域は、カメラセンサー内の1本だけ又は少数の画素行に対応している。さらに、読み出しオペレーションは、上述の通り、ローリング読み出しモードで一度に1本の行ずつ進められる。
【0091】
例えば、
図3に関連して、照明光のラインは、(「露光」の矢印により示されている)行315を含むカメラセンサーの露光部域に対応する物体空間部域を横断して走査される。カメラセンサーの読み出し部域(「暗状態」矢印により示されている)は、行320を含み、露光部域に追従する。一部の実施形態において、露光部域及び読み出し部域は、互いに異なる速度でセンサーを横断して「移動」してよい。
【0092】
露光及び読み出しタイミングの実施例
図4は、1つの好ましい実施形態に係る走査ミラー角度、露光タイミング及び読み出しタイミングの図表を示す。
【0093】
図1Bと同様に、
図4中の上の図表410は、時間tとの関係においてプロットされた走査ミラー角度を示す。
図4中の下の図表420は、露光/読み出しされた行数と時間tの関係のプロットを示す。画素行(例えばカメラセンサーの)は、「1」から「N」まで付番され、行「x」についての時間系列が、例示を目的として明示的にプロットされている。図表420の(破線に平行な)垂直スライスは、特定の時間間隔(例えば「走査」時間間隔又は「フライバック」時間間隔など)の間にどの画素行が露光又は読み出しされているかを示す。例えば行「x」について示されている図表420中の水平スライスは、特定の行についての露光、暗状態及び読み出し周期を示す。
【0094】
図4に示されているように、(カメラセンサーとの関係において画像を静止状態に保持する)走査ミラーの傾動角度は、「走査」間隔中、時間の線形関数であり;角度は、「フライバック」間隔中出発位置にリセットする。カメラセンサー行の露光及び読み出しは、センサーの一方の側(行「1」)から他方の側(行「N」)そして次に反対方向(行「N」から行「1」)に戻るように掃引する。これは最初は反直観的に思われるが、基板が撮像システムの対物レンズ構成要素に対し垂直な方向に移動していても走査ミラーがカメラセンサー上の基板(例えばアレイチップ)の一部分の画像を「フリーズする」ことを思い起こせば理解することができる。こうして、カメラは、一度にカメラ画素の1本(又は少数)の行に対応する物体空間部域を網羅する移動する光のラインによって照明される静止状態の物体を「見る」。読み出しオペレーションは、露光された画素行(単複)の数行後ろで、ローリング読み出しモードで行なわれる。
【0095】
図4は、「N」個の画素行を露光するために必要とされる時間が、その中に記憶された画像データを読み出すのに必要な時間より短かいことを示している。したがって、露光オペレーションは、利用可能な走査時間すなわち画像がカメラセンサーとの関係において静止状態にある全時間を使う。一方読み出しオペレーションは、実質的に連続的に行なうことができる(ただし、任意の所与の走査において最初の行についての露光時間が開始する前に発生する小さな遅延は除く)。
【0096】
図4は、単一の行についての露光周期、暗状態周期及び読み出し周期を示している。一例として行「x」を用いると、照明に対する曝露は「露光」時間周期432の間持続する。(蛍光撮像においては、物体が蛍光励起波長で露光され、一方で画素は蛍光発光波長で光を検出するということが指摘される)。「暗状態」時間周期434が露光周期に後続する。暗状態周期434中、信号も雑音も、行「x」の画素内に蓄積しない。行「x」の画素は、時間周期434の後に発生する「読み出し」時間周期436の間に読み出される。露光オペレーションと読み出しオペレーションの間の時間周期(例えば暗状態時間周期)は、露光オペレーションが読み出しオペレーションよりも高速で進むことから、曝露光のラインが物体を横断して移動するにつれて増大する。
図4に示されている通り、露光周期432、暗状態周期434及び読み出し周期436は、逆方向(例えば行「N」から行「1」に戻る方向)でセンサー行が(新たな画像のために)露光されるにつれて、次の走査ミラーサイクル中反復され、これは、撮像システムが蛇行する形で物体を横断することで物体(例えば基板)を走査するように構成されている場合に起こり得る。
【0097】
分割読み出しカメラセンサー
一部の実施形態において、撮像システムは、分割読み出しセンサーを有するカメラを備えている。分割読み出しセンサーは、互いに独立して露光され読み出しされ得る少なくとも2つの区分を有し、ここで1つの区分内での露光/読み出しオペレーションは、センサーの他の区分(単複)内での露光/読み出しオペレーションとの関係において並列で又は逆並列で実施可能である。本明細書中に記載の走査照明のための技術によると、このような実施形態において、分割読み出しセンサーの各区分は別個の光のラインで照明される。別個の光のラインは、さまざまな方法で生成可能である。例えば、別個の各センサー区分用に別個の光のラインを生成するために、別個のライン発生器を使用することができ、ここで同じ基板の異なる部分の上に光のラインを導くために偏光を使用することができる。別の実施例では、同じライン発生器由来の1本の光ビームを2つ以上の別個の光のラインに分割するために、さまざまな光学構成要素(例えばプリズム、半透鏡など)を使用することができる。
【0098】
図5は、1つの好ましい実施形態に係る分割読み出しカメラセンサーの略図を示す。
図5において、2160ピクセル×2560ピクセルのセンサーが、「区分1」及び「区分2」に分割されている。(
図5のセンサー内に示されている画素数は、Fairchild Imaging、Milpitas、CaliforniaのSciMOS2051カメラに対応し、単なる一例として使用されている。他のカメラは異なる寸法の分割読み出しセンサーを使用してよい)。センサーの各区分は、他の区分とは独立して読み出される。分割読み出しセンサーは、本明細書中に記載のローリング露光モード及びローリング読み出しモードを実施する異なる方法を導く。
【0099】
図6A及び6Bは、分割読み出しカメラセンサーを使用する1つの好ましい実施形態に係る露光及び読み出し領域の並列オペレーションの略図を示す。
図7A及び7Bは、分割読み出しカメラセンサーを使用する1つの好ましい実施形態に係る露光及び読み出し領域の逆並列オペレーションの略図を示す。
図6A、6B、7A及び7Bの各々は、カメラセンサー内の少数の代表的画素行を示す。例示を目的として、
図6A、6B、7A及び7Bの各々では、少数の画素列しか描かれていない。しかしながら、画素列が、描かれたセンサーの幅全体に沿って延びている、すなわちセンサーが画素の行と列のグリッドであることが指摘される。
【0100】
図6A及び6Bに示されているセンサーは、
図6A及び6Bのセンサーが2つの区分を有する分割読み出しセンサーであるという点を除いて、
図3に示されているセンサーと類似のものである。露光領域(「露光(EXPOSE)」とマークされたもの)と読み出し(「読み出し(READ)」とマークされたもの)の対(各区分につき一対ずつ)は、センサーの両方の区分内で同じ方向に移動する。例えば、露光及び読み出し領域の対は、
図6A内のセンサーの両方の区分において上から下へ、そして
図6B内のセンサーの両方の区分において下から上へ移動する。このオペレーションモードは、センサー区分の露光及び読み出し領域の対が同じ方向に移動することから、本明細書において「並列」と呼ばれている。
【0101】
図7A及び7Bに示されているセンサーは、
図6A及び6Bの分割読み出しセンサーと類似するものである。しかしながら、作動中、
図7Aおよび7Bのセンサー内の露光領域(「露光」とマークされたもの)及び読み出し領域(「読み出し」とマークされたもの)の対は、センサーの2つの区分内で反対方向に移動する。例えば、
図7Aは、露光及び読み出し領域の対がセンサーの2つの区分内で互いに向かって移動することを示し、一方
図7Bは、露光及び読み出し領域の対がセンサーの2つの区分において互いから離れるように移動することを示している。このオペレーションモードは、センサー区分内の露光及び読み出し領域の対が反対方向に移動することから、本明細書において「逆並列」と呼ばれている。
【0102】
一部の実施形態において、
図6A、6B、7A及び7B内に描かれた分割読み出しセンサーの各区分は、
図4に示されたタイミング図に類似する付随するタイミング図を有していてよい。さらに、
図7Aおよび7B内のセンサーの下部区分についてのタイミング図は、
図4に示されたタイミング図と類似であってよいが、行順序は、センサーの2つの区分内の露光/読み出しオペレーションの逆並列性を考慮に入れるべく、「1」から「N」ではなく「N」から「1」である。
【0103】
本開示中に記載の照明、露光及び読み出し技術は、無駄フライバック時間間隔を有する可動走査ミラーを用いた使用を見込んでいるものの、当業者であればこれらの技術がより広く応用可能なものであることを認識するものである。例えば、フルデューティサイクルには至らない限定されたあらゆる撮像システムが、本明細書中に記載の技術の恩恵を享受する場合がある。別の実施例において、本明細書中に記載の技術は、可動走査ミラーの代りに走査用に回転ポリゴンミラーを使用する撮像システム中に実装されてよい。
【0104】
本明細書中に記載の走査照明のための技術は、ローリング露光モード及びローリング読み出しモードで作動するデジタルカメラを使用し相関2重サンプリングを使用しかつ/又はフルデューティサイクル画像獲得をすることができない撮像システムにおいて有用である。1つの好ましい実施形態において、本明細書中に記載の技術は、蛍光ベースのDNAシークエンシング用に1つ以上のCMOSカメラを使用する撮像システムにおいて実装されてよい。この実施形態では、本明細書中に記載の技術は、一日に約100個のヒトゲノムデータ当量の全体的シークエンシングスループットに寄与する。
【0105】
例示的使用方法
図8は、一実施形態に係る基板を撮像するための例示的方法を示している。例示を目的として、
図8中の方法は、以下で撮像システムを含むシークエンシング機械によって実施されるものとして記述されている。しかしながら、この方法のステップはさまざまなタイプの装置および撮像システムにより実施可能であることが理解される。こうして、
図8中の方法は、任意の特定のタイプの機械または装置によって実施されることに限定されず、したがって、以下の方法記述は、制限的な意味合いではなくむしろ例示的意味合いで考慮されるべきものである。
【0106】
ステップ802では、カメラが基板の一部分の画像を収集し、ここで画像はカメラ内の多数の画素行に跨っている。一部の実施形態においては、位置決めステージが、対物レンズ構成要素の光学軸に対して垂直な平面内で対物レンズ構成要素の下で基板を移動させており、ここで基板は、撮像の標的である多数の全く異なる特徴を備えている。一部の態様において、基板は、上に標的核酸が配置されたアレイチップを備えており、シークエンシング機械には、それ自体カメラ、位置決めステージ及び対物レンズ構成要素を含む撮像システムが含まれている。カメラは、毎秒1000ライン〜1,000,000ラインの範囲内のライン速度を有するCMOSカメラであってよく、位置決めステージは毎秒100μm〜1000mmの範囲内の速度で基板を移動させてよい。一部の態様においては、基板が運動している間、サーボ機構は走査ミラーの角度を変更し、これにより対物レンズ構成要素が獲得する基板の一部分の画像は、カメラとの関係において静止状態に保たれる。一部の態様においては、シークエンシング機械の一部であるか又はそれに結合された計算装置が、位置決めステージと協調して走査ミラーのサーボ機構を制御する論理を実行する。例えば、論理は、位置決めステージの動作を表わすフィードバック制御情報を受信し、この情報を用いてサーボ機構に対する入力信号を調整し、このサーボ機構はそれ自体走査ミラーの角度を変更して、走査ミラーの運動及び/又はタイミングを位置決めステージの運動及び/又はタイミングと同期する。
【0107】
ステップ804では、カメラが基板の一部分の画像を収集している間に、撮像システムは連続的かつ同時にステップ806、808及び810を実施する(又は実施させる)。一部の態様において、カメラは、基板が位置決めステージにより移動させられている間に、基板の一部分の静止画像を収集する。
【0108】
ステップ806では、撮像システム及び/又はその計算装置は、撮像中の基板の一部分を横断して光のラインを走査し(又は走査させ)、それによって、画像が跨っている他の1つ以上の行を暗状態に保ちながら収集中の画像が跨っている1つ以上の画素行を連続的に露光する。一部の態様において、基板の一部分を横断する光のラインの走査は、移動する基板の一部分の画像をカメラとの関係において静止状態に保つ走査ミラーの運動と協調して実施される。例えば、撮像システムに結合されたまたはその一部である計算装置が、(ライン発生器から走査ミラーへと光のラインを反射する)照明ミラーを傾動させるサーボ機構と、走査ミラーを傾動させるサーボ機構とを協調させる論理を実行し、それにより走査ミラーのタイミングを照明ミラーのタイミングと同期して、移動する基板への光のラインの走査をひき起こす。
【0109】
ステップ808では、基板を横断して光のラインの走査が進む一方で、シークエンシング機械の一部であるか又はそれに結合されている計算装置が、すでに露光され現在はもう光を獲得していない画素行を連続的に読み出す論理を実行する。例えば、計算装置は、ローリング読み出しモードで一行ずつ露光された画素の行を読み出す論理を実行する。
【0110】
作動中、ステップ806及び808はステップ810で連続的に同期され、こうしてステップ808の読み出しオペレーションは、任意の特定の画素行がステップ806の露光オペレーションにより露光された直後(又はわずか後)にこの特定の画素行を読み出すことになる。このようにして、一部の画素行由来の画像データの抽出は、他の(異なる)画素行内の別の画像の獲得と同時に進行し、こうしてカメラ読み出し効率ひいては撮像システムの全体的スループットは増大する。例えば、一部の態様において、露光及び読み出しオペレーションのこの同期は、カメラが55%〜90%、90%〜95%、さらには95%超の読み出し効率で作動できるようにする。
【0111】
シークエンシングシステム及び計算装置
一部の実施形態において、DNA試料(例えば全ヒトゲノムを表わす試料又はエクソームを表わす試料)のシークエンシングは、シークエンシングシステムによって実施されてよい。
図9A及び9Bは、例示的シークエンシングシステムを示す。
【0112】
図9A及び9Bは、本明細書中に記載の好ましい実施形態に係るDNAシークエンシングを実施するように構成された例示的シークエンシングシステムのブロック図である。シークエンシングシステム900は、例えば、シークエンシング機械990などの1つ以上のシークエンシング機械、コンピュータシステム997などの1つ以上のコンピュータシステム、及びデータレポジトリ995などの1つ以上のデータレポジトリなどの多数のサブシステムを含むことができる。
図9Aに示された実施形態において、システム900のさまざまなサブシステムは、遠隔システム間の情報交換を容易にするように構成されたパケット交換又は他のタイプのネットワークインフラデバイス(例えばルーター、スイッチなど)を含んでいてよい1つ以上のネットワーク993上で通信接続されていてよい。
図9Bに示されている実施形態において、シークエンシングシステム900は、さまざまなサブシステム(例えばシークエンシング機械(単複)990、コンピュータシステム(単複)997、そして場合によってはデータレポジトリ995)が通信的かつ作動的に結合されデバイス内に内蔵された構成要素である、シークエンシングデバイスである。
【0113】
一部の作動状況下では、
図9A及び9B内に示された実施形態のデータレポジトリ995及び/又はコンピュータシステム(単複)997は、クラウド計算環境内で構成されていてよい。クラウド計算環境では、データレポジトリを備えた記憶デバイス及び/又はコンピュータシステムを備えた計算装置が、ユーティリティとしてかつオンデマンドで使用するために割当てられインスタンス化されてよい。こうして、クラウド計算環境は、インフラ(例えば物理的及びバーチャルマシン、ロー/ブロックストレージ、ファイヤウォール、ロード・バランサー、アグリゲータ、ネットワーク、ストレージクラスタなど)、プラットフォーム(例えば計算装置及び/又はオペレーティングシステムを含んでいてよいソリューションスタック、プログラミング言語実行環境、データベースサーバー、ウェブサーバー、アプリケーションサーバーなど)及び任意のストレージ関連及び/又は計算タスクを実施するのに必要なソフトウェア(例えばアプリケーション、アプリケーションプログラミングインターフェース、又はAPIなど)をサービスとして提供する。
【0114】
さまざまな実施形態において、本明細書中に記載の技術は、さまざまな構成及びフォームファクタで上述のサブシステム及び構成要素(例えばシークエンシング機械、コンピュータシステム及びデータレポジトリ)の一部又は全てを含むさまざまなシステム及び装置によって実施可能であることが指摘される。したがって、
図9A及び9Bに示された好ましい実施形態及び構成は、制限的意味合いではなくむしろ例示的意味合いで考慮されるべきものである。
【0115】
シークエンシング機械は、生体試料のフラグメントから誘導された標的核酸を含む1つ以上の基板を受取り、標的核酸上でシークエンシングを行なうように構成され作動する。シークエンシングを実施できる任意の好適な機械を使用してよく、ここでこのような機械は、非限定的にハイブリダイゼーションによるシークエンシング、ライゲーションによるシークエンシング、合成によるシークエンシング、単分子シークエンシングそして本明細書中に記載の撮像システムを使用することによりDNAからのシークエンシング読み出しを生成するのに好適な現在公知であるか又は今後開発される他の任意の技術を含めたさまざまなシークエンシング技術を使用してよい。さまざまな実施形態において、シークエンシング機械は、標的核酸をシークエンシングでき、ギャップを含んでいてもいなくてもよくかつメイトペア(例えばペアードエンド)読み出しであってもなくてもよいシークエンシング読み出しを生成することができる。
図9A及び9Bに示されているように、シークエンシング機械990は、基板(単複)992上にある標的核酸をシークエンシングし、シークエンシング読み出し994を得、このシークエンシング読み出しはデータレポジトリ995への(一時的及び/又は持続的)記憶及び/又は1つ以上のコンピュータシステム997による処理のために伝送される。本明細書中に記載の技術によると、シークエンシング機械990は、例えば
図1A内に示された撮像システムなどの撮像システム991を含む。
【0116】
図9A及び9Bを参照すると、データレポジトリ995は、ディスクアレイ(例えばSCSIアレイ)、ストレージクラスタ又は他の任意の好適なストレージ組織として構成されてよい1つ以上の記憶装置(例えばハードディスクドライブ、光ディスク、半導体ドライブなど)の上に実装されてよい。データレポジトリの記憶装置(単複)は、システム900の内部/内蔵構成要素としてか又は、(例えば
図9Bに示されているような)システム900に取付け可能な外部構成要素(例えば外部ハードディスク又はディスクアレイ)として構成され得、かつ/又は、例えばグリッド、ストレージクラスタ、ストレージエリアネットワーク(SAN)及び/又はネットワーク接続ストレージ(NAS)(例えば
図9Aに示されている通り)などの好適な形で通信相互接続されてよい。さまざまな実施形態及び実装において、データレポジトリは、ファイルとして情報を記憶する1つ以上のファイルシステムとして、データ記録の形で情報を記憶する1つ以上のデータベースとして、及び/又は他の任意のデータ記憶組織として、記憶装置上に実装されてよい。
【0117】
コンピュータシステム997は、汎用プロセッサー(例えば中央処理装置又はCPU)、メモリー及び、構成データ及び/又はオペレーティングシステム(OS)ソフトウェアと共に本明細書中に記載の技術及び方法の一部又は全てを実行することのできるコンピュータ論理999を備えた1つ以上の計算装置を含んでいてよい。例えば、本明細書中に記載の撮像に関与する方法(例えば画像位置補正、サーボ回転制御、走査ミラーの回転及び制御、照明ミラーの回転及び制御、チップ位置決めステージの移動及び同期、フィードバック制御、画像データ読み出しなど)のいずれも、方法のさまざまなステップを実施するための論理999を実行するように構成され得るプロセッサを含む計算装置によって、全面的又は部分的に実施可能である。さらに、方法ステップは、付番されたステップとして提示されているかもしれないが、本明細書中に記載の方法ステップは、同時に(例えば同じ計算装置上又は計算装置のクラスタ内で並列で実行する論理によって)又は異なる順序で実施可能である。コンピュータ論理999の機能性は、単一の統合モジュールとして(例えば統合論理の形で)実装されてよく、又はいくつかの追加の機能性を提供し得る2つ以上のソフトウェアモジュールの形に組合わされてもよい。
【0118】
一部の実施形態において、コンピュータシステム997は、単一の計算装置であってよい。他の実施形態において、コンピュータシステム997は、グリッド、クラスタ又はクラウド計算環境内で通信的及び/又は作動的に相互接続されてよい多数の計算装置を備えていてよい。このような多数の計算装置は、コンピューティングノード、ブレード、又は他の任意の好適なハードウェア構成などの異なるフォームファクターで構成されていてよい。これらの理由から、
図9A及び9Bのコンピュータシステム997は、制限的な意味合いよりもむしろ例示的な意味合いで考慮されるべきものである。
【0119】
図10は、シークエンシング機械(単複)及び/又はコンピュータシステム(単複)の一部として撮像に関与するさまざまな方法を実施するための命令を実行するように構成され得る例示的計算装置1000のブロック図である。
【0120】
図10において、計算装置1000は、バス1075などの1つ以上のシステムバスを介して直接または間接的に相互接続される複数の構成要素を備えている。このような構成要素としては、キーボード1078、永続的記憶域デバイス(単複)1079(例えば固定ディスク、半導体ディスク、光ディスク及び同種のもの)及び1つ以上のディスプレー装置(例えばLCDモニター、フラットパネルモニター、プラズマスクリーン及び同種のもの)を結合することのできるディスプレーアダプタ1082が含まれていてよいが、これらに限定されるわけではない。I/Oコントローラ1071に結合する周辺機器及び入出力(I/O)デバイスを、1つ以上のシリアルポート、1つ以上のパラレルポートそして1つ以上の汎用シリアルバス(USB)を含む(ただしこれらに限定されない)当該技術分野において公知の任意の数の手段により、計算装置1000に対して接続することができる。(ネットワークインタフェースカード及び/又はシリアルポートを含んでいてよい)外部インタフェース(単複)1081を使用して、計算装置1000をネットワーク(例えばインターネット又はローカルエリアネットワーク(LAN))及び/又は他の機械及び装置に接続することができる。外部インタフェース(単複)1081は、同様に、さまざまな外部装置から情報を受信できる一定数の入力インタフェースを含んでいてもよい。システムバス1075を介した相互接続は、1つ以上のプロセッサ(例えばCPU)1073が各々の接続された構成要素と通信しかつシステムメモリー1072及び/又は記憶装置(単複)1079からの命令を実行する(及びその実行を制御する)ことを可能にし、かつさまざまな構成要素間の情報交換を可能にする。システムメモリー1072及び/又は記憶装置(単複)1079は、プロセッサ(単複)1073によって実行される命令シーケンスならびに他のデータを記憶する1つ以上のコンピュータ可読非一時的記憶媒体として実施されてよい。このようなコンピュータ可読非一時的記憶媒体としては、ランダムアクセスメモリー(RAM)、読み出し専用メモリー(ROM)、電磁媒体(例えばハードディスクドライブ、半導体ドライブ、サムドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクなど)、光媒体、例えばコンパクトディスク(CD)またはデジタル多用途ディスク(DVD)、フラッシュメモリー及び同種のものが含まれるが、これらに限定されない。さまざまなデータ値及び他の構造化情報又は非構造化情報を、1つの構成要素又はサブシステムから別の構成要素又はサブシステムに出力することができ、ディスプレーアダプタ1082及び好適なディスプレーデバイスを介してユーザーに提示することができ、ネットワーク上で遠隔の装置又は遠隔のデータレポジトリまで外部インタフェース(単複)1081を通して送ることができ、あるいは、記憶装置(単複)1079上に(一時的及び/又は永久的に)記憶することができる。
【0121】
計算装置1000により実施される方法及び機能性のいずれも、モジュール式又は統合された形でハードウェア及び/又はコンピュータソフトウェアを用いる論理の形で実装可能であるという点を理解すべきである。実行された場合、このような論理は、本明細書中に記載の通りの撮像に関与するさまざまな方法(例えば画像位置補正、サーボ回転制御、走査ミラーの回転及び制御、照明ミラーの回転及び制御、チップ位置決めステージの移動及び同期、フィードバック制御、画像データ読み出しなど)を実施するように適応されている。
【0122】
配列決定
本明細書中に記載の撮像システムは、さまざまな生化学分析のために使用されてよい。このような分析の一例としては、未知の配列の標的核酸の配列決定がある。さまざまな実施形態において、本明細書中に記載の撮像システムを使用して核酸高分子の配列を決定するために、以下のものを含めた(ただしこれらに限定されない)さまざまなシークエンシング方法が使用されてよい。ハイブリダイゼーション法(例えば、米国特許第6,864,052号明細書、同6,309,824号明細書、及び同6,401,267号明細書に開示されているもの)、合成によるシークエンシング法(例えば米国特許第6,210,891号明細書;同6,828,100号明細書、同6,833,246号明細書;同6,911,345号明細書、Marguliesら(2005)、Nature 437:376〜380、及びRonaghiら(1996)、Anal.Biochem.242:84〜89)で開示されているもの)、ライゲーションに基づくもの(例えば米国特許第6,306,597号明細書及びShendureら(2005)、Science 309:1728〜1739)に開示されているもの)。これらの文献は、その教示について参照が指示されるものである。
【0123】
一部の実施形態において、基板(例えばアレイチップ)上に配置された標的核酸から発出される蛍光信号が、本明細書中に記載の技術にしたがってカメラのセンサーアレイ上にそれらを撮像することによって記録される。例えば、一部の撮像システムにおいて、センサーアレイ内の各画素は、別個の蛍光実験の結果を記録し、一方他の撮像システムにおいては、1回の実験につき2つ以上の画素が使用される。
【0124】
概して、生化学基板は、数百万回もの生化学実験を並行して実施できるようにする。この能力は、各実験を極小体積で実施し、これらの実験を密集させる技術の開発の結果としてもたらされている。例えば、一部の実施形態において、1つのアレイチップ上に規則的なパターンまたはランダムパターンで多数の付着部位を構成してよく、ここで付着部位の数は、好ましくは50億〜500億の範囲内にあり、より好ましくは100億〜150億の範囲内にあり、より一般的には、それらの間の任意の部分範囲内にある。規則的パターンを使用する実施形態において、任意の2つの隣接する付着部位の中心間のピッチは250nm〜1.5μmの範囲内にあってよい。作動中、高分子又は他の標的核酸が付着部位上に配置された時点で、さまざまな実施形態において、好ましくは付着部位の60%〜95%の単一分子占有率が提供される。さらに、さまざまな実施形態における収量(例えば、任意の所与の撮像ランにおいて信号を発出する高分子又は標的核酸の平均数)は、好ましくは、高分子又は標的核酸を保持する全ての付着部位の35%〜65%の範囲内にあってよい。
【0125】
一部の実施形態において、DNAシークエンシングには、DNA試料の化学的処理、生の配列フラグメントを得るための処理済み試料の物理的分析、及び計算アルゴリズムを用いた配列フラグメントの完全ゲノムへの集合が含まれる。DNAシークエンシングのための一部の方法において、計算作業が始まる前に生の配列データを増大させるため、多数の化学的処理及び物理的分析サイクルを使用してよい。
【0126】
このような実施形態において、蛍光撮像を使用して、異なる色の染料(例えば、赤、緑、青又は黄色)が各々1つの反応に対応するように生化学反応を設計することによってDNA塩基(A、C、G又はT)を同定する。次に各色についてのこのようなDNA実験の画像を、対物レンズ構成要素(例えば顕微鏡対物レンズ)を通して撮像してよい。観察される色は、特定の化学的処理ステップにおけるDNA塩基を示す。こうして、このような画像からのデータの抽出は、基板(例えばチップ)上で行なわれる数百万回さらには数十億回の生化学実験が発生させる蛍光の色の記録に依存している。
【0127】
一部の実施形態においては、本明細書中に記載の撮像システムを、例えばヒト個体のゲノムなどの全ヒトゲノムのDNAシークエンシングのために使用してよい。ヒトゲノムシークエンシングの商業的実行可能性は、一部には、DNAを迅速かつ精確にシークエンシングする能力によって左右される。本明細書中に記載の撮像システムは、多数の並列DNA実験(例えばアレイチップ上に高密度で配置されているもの)の処理をサポートし、迅速かつ精確なゲノムデータ獲得を容易にすることができるため、これらの基準を満たしている。
【0128】
本発明は、本発明の好ましい実施形態に関連して詳述される通り多くの異なる形の実施形態によって満たされるが、本開示は、本発明の原理の一例としてみなされるべきものであり、本発明を本明細書中で図示され記載されている具体的実施形態に限定するように意図されたものではないということが理解される。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、多くの変更を加えることができる。本発明の範囲は、本出願に由来するクレーム及びその等価物により測られるものである。要約及び名称は、該当する当局ならびに一般公衆が本発明の全体的内容を迅速に見極めることができるようにすることを目的としたものであるため、本発明の範囲を限定するものとみなされてはならない。以下のクレームでは、「手段」という用語が使用されているのでないかぎり、その中で列挙された特徴又は要素のいずれも、35U.S.C、第112条第6項に準じたミーンズ・プラス・ファンクション制約条件としてみなされるべきではない。
【0129】
例示的シークエンシングプラットフォーム
ヒトゲノムのDNAシークエンシングの一例は、California州Mountain viewのComplete Genomics,Inc.により商業的に開発された高精度コンビナトリアルプローブ−アンカーライゲーション(cPAL)である。cPALシークエンシング技術は、アレイチップ上でパターン化されたアレイ内に装填された自己集合DNAナノボール(「DNB」)から各塩基を独立して検定することに依存するものである。cPALシークエンシングにおける第1のステップは、DNBのランダムな取り合せを生化学的アレイチップに装填することである。DNBは、標的核酸(単複)を表わすDNAフラグメント及びアダプタの同じ配列の、シリーズの形で連鎖された多数のコピーを含むコンカテマーである。このようなコンカテマーの生成は、例えば、その全内容が参照により本明細書に援用され本明細書中に完全に記載されているRadoje Drmanacらにより2006年6月13日に出願された米国特許出願第11/451,691号明細書中に記載されている。DNBセットは、ヒトゲノム全体に集合的に跨ることができるDNAフラグメントを含むが、DNBが最初にアレイチップ上の付着部位に付着された時には、任意の特定のDNBがどこに行くかを制御することはできない。一方、DNBは、ひとたび付着部位に付着されたならば、後続する液体処理ステップ全体にわたりそこにとどまり、1つの部位から別の部位へと移動することはない。後続する処理ステップでは、さまざまな試薬及び緩衝液がアレイチップ上のDNB上で洗われ、DNBからの蛍光信号が蛍光撮像システムで記録される。
【0130】
より具体的には、cPALシークエンシング技術は、以下のステップの循環を含む。第1に、アンカーが、DNB内の第1のアダプタ(典型的には1つのアダプタの5’又は3’末端において直ちに)に対してハイブリッド形成させられる。その後、例えば蛍光染料で標識された例えば8−merのプローブの完全に変性したプローブ集団に対するアンカーとの酵素的ライゲーション反応が行なわれる。プローブは、例えば約6〜20塩基又は好ましくは約7〜12塩基の長さを有していてよい。任意の所与のサイクルにおいて、使用されている8−merプローブの集団は、その位置のうち1つ以上のものの同一性がその8−merプローブに付着したフルオロフォアの同一性と相関されるような形で組織される。例えば、7−merシークエンシングプローブが利用される場合、アダプタに直近の塩基を同定するための1組のフルオロフォア標識されたプローブは、以下の構造を有していてよい:3’−F1−NNNNNNAp、3’−F2−NNNNNNGp、3’−F3−NNNNNNCpおよび3’−F4−NNNNNNTp(式中、「p」はライゲーションのために利用可能なリン酸塩である)。さらに別の実施例において、アダプタに由来する標的核酸内への3つの塩基である塩基を同定するための1組のフルオロフォア標識された7−merプローブは、以下の構造を有していてよい。3’−F1−NNNNANNp、3’−F2−NNNNGNNp、3’−F3−NNNNCNNpおよび3’−F4−NNNNTNNp。(これらはカタログ化すべきゲノム配列ではなく、単に例示を目的とした構造例にすぎないということを理解すべきである)。リガーゼが問合せされた位置での相補性の有無を判別するかぎりにおいて、蛍光信号はその塩基の同一性を提供する。
【0131】
ライゲーション及び4色撮像を実施した後、アンカー8−merプローブ錯体は取り除かれ、新しいサイクルが開始される。T4DNAリガーゼを用いて、ライゲーション接合部から6個以上の塩基に至るまで精確な配列情報を得ることができ、アダプタ1個あたり少なくとも12の塩基対(bp)(5’末端と3’末端の両方から6個の塩基)、合計で4アダプタDNB1個あたり48bp、5−アダプタDNB1個あたり60bpなどにアクセスできることになる。
【0132】
所与のサイクルがどの位置を調べようとしているかに応じて、8−merプローブは異なる形で構造化される。具体的には、各々の8−merプローブ内部の単一の位置が、それを標識しているフルオロフォアの同一性と相関される。さらに、フルオロフォア分子は、ライゲーション接合部に標的化された末端との関係において8−merプローブの反対側の末端に付着されている。例えば、アンカーは、その3’末端が標的核酸に隣接するような形でハイブリッド形成されてよい。標的核酸内に1つの位置を問合せするため、縮重した8−merプローブの集団を使用してよく、ここでプローブは、アンカーにライゲートする8−merプローブの末端である8−merプローブの5’末端から5番目の核酸と相関している。8−merプローブは4個のフルオロフォアの1つで個別に標識され、ここでCy5のフルオロフォアはAと相関され、Cy3はGと相関され、テキサスレッドはCと相関され、FITCはTと相関される。(この例は、1サイクルあたり1つの単一塩基を問合せするために4つのフルオロフォアを使用することについて記述しているものの、1サイクルあたり8個又は16個以上のフルオロフォアを使用して、任意の一回のサイクル中に同定可能な塩基数を増大させてもよいということを認識すべきである)。
【0133】
所望されるシークエンシングの量、利用される標識のタイプ、各々のライブラリ構成体の中で使用される異なるアダプタの数、1サイクルあたりに問合せされている塩基数、アレイの表面に対するDNBの付着方法、所望されるシークエンシングオペレーション速度、信号検出アプローチ及び同種のものなどのさまざまな要因に基づいて、cPAL又は他のライゲーションによるシークエンシングアプローチの多くの異なる変形形態を選択してよい。
【0134】
縮重(例えば8−mer)プローブを、放射性部分、蛍光部分、比色部分、化学発光部分及び同種のものの直接的又は間接的付着を含めたさまざまな方法で標識することができる。DNAを標識し、DNAアダプタを構築するための方法の多くの包括的再精査が、本発明のオリゴヌクレオチドプローブの構築に適用可能な助言を提供している。このような再精査には、Kricka(2002),Ann.Clin.Biochem.39:114〜129、及びHaugland(2006);Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、10th Ed.(Invitrogen/Molecular Probes、Inc.、Eugene);Keller及びManak(1993)、DNA Probes、2nd Ed.(Stockton Press、New York、1993);及びEckstein(1991)、Ed.、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach(IRL Press、Oxford)及び同種のものが含まれる。
【0135】
1つの態様においては、オリゴヌクレオチドプローブのための標識として1つ以上の蛍光染料が使用される。米国特許第6,322,901号明細書、同第6,576,291号明細書;同第6,423,551号明細書、同第6,251,303号明細書;同第6,319,426号明細書;同第6,426,513号明細書、同第6,444,143号明細書;同第5,990,479号明細書、同第6,207,392号明細書、米国特許出願公開第2002/0045045号明細書、同第2003/0017264号明細書及び同種のものなどの、参照により本明細書に援用されている米国特許及び米国特許出願公開中で開示されている通り、量子ドットで標識を行なうこともできる。縮重プローブ内に容易に取込まれる市販の蛍光ヌクレオチド類似体としては、例えばカスケードブルー、カスケードイエロー、ダンシル、リサミンローダミンB、マリーナブルー、オレゴングリーン488、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、Cyフルオロフォア、Alexa Fluor(登録商標)フルオロフォア、BODIPY(登録商標)フルオロフォア及び同種のものが含まれる。FRETタンデムフルオロフォアも使用してよい。オリゴヌクレオチドを検出するための他の好適な標識としては、フルオロセイン(FAM)、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、ダンシル、ビオチン、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、ヘキサヒスチジン(6xHis)、ホスホル−アミノ酸(例えば、P−tyr、P−ser、P−thr)又は任意の他の好適な標識が含まれていてよい。
【0136】
本明細書中に記載の撮像システムを含むシークエンシングシステムにより、このようなシークエンシングサイクルの画像獲得を実施することができる。プログラミング言語(例えばC/C
++)で書かれたソースコードからコンパイルされる一連のバイナリを実行する計算装置(単複)によりデータ抽出を実施してよく、塩基呼び出し及び読み出しマッピングを一連のMatlab及び/又はPerlスクリプトにより実施してよい。例えば、以上に記載の例示的シークエンシング技術に従って、問合せすべき標的核酸内の各塩基について(例えば各DNBの各々の標的核酸部分の5’末端及び3’末端の両方から6個の塩基を読み込む12個の塩基について)、ハイブリダイゼーション反応、ライゲーション反応、撮像及びプライマストリッピング反応が実施される。所与の位置での流通装置上のアレイ内の各DNBの同一性を判定するため、生物学的シークエンシング反応を実施した後、各視野(「フレーム」)が、使用された4つの蛍光剤、例えば8−merに対応する4つの異なる波長で撮像される。各サイクル由来の画像は全て、サイクルディレクトリ内にセーブされ、ここで画像数は4×フレーム数(例えば4フルオロフォア技術が使用される場合)である。このとき、サイクル画像データを、下流側処理のために組織されたディレクトリ構造内にセーブしてもよい。
【0137】
データ抽出には典型的に、2つのタイプの画像データ、すなわちアレイ内の全てのDNBの位置を画定するための明視野像及び各シークエンシングサイクル中に獲得される蛍光画像セットが求められる。計算装置がデータ抽出ソフトウェアを実行して、明視野像を伴う全ての物体を同定し、次に各物体について、各シークエンシングサイクルについての平均蛍光値を計算する。任意の所与のサイクルについて、その塩基がA、G、CまたはTのいずれであるかを問合せするため異なる波長で撮られた4つの画像に対応する4つのデータ点が存在する。これらの生塩基呼び出しは統合され、(場合によっては不連続な)シークエンシング読み出しを各DNBについて生成する。これらのシークエンシング読み出しは次に、1つ以上の計算装置を含む1つ以上のコンピュータシステム上で実施可能なさまざまな技術及びアルゴリズムを使用することによって、基準ゲノムに対してマッチングされてよい。
【0138】
選択された生化学的定義
本明細書中に記載されているさまざまな実施形態は、当業者の技能の範囲内に入る有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学及び生化学が関与する従来の技術によって調製される試薬、緩衝液及び他の流体を使用してよい。このような従来の技術には非限定的に、ポリヌクレオチドのポリマーアレイ合成、ハイブリダイゼーション及びライゲーション、ならびに標識を用いたハイブリダイゼーションの検出が含まれていてよい。好適な技術の具体的例示は、本明細書中の実施例を参照することによって得られる。しかしながら、当然のことながら、他の同等の手順を使用することも可能である。このような手順は、例えば、その全てがあらゆるの目的のために全て参照により本明細書に援用されている、Greenら、Eds.(1999)、Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I〜IV);Weiner、Gabriel、Stephens、Eds.(2007)、Genetic Variation:A Laboratory Manual;Dieffenbach、Dveksler、Eds.(2003)、PCR Primer:A Laboratory Manual;Bowtell及びSambrook(2003)、DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual;Mount(2004)、Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis;Sambrook及びRussell(2006、Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual;並びにSambrook及びRussell(2002)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(以上全てCold Spring Harbor Laboratory Press);Stryer、L.(1995)Biochemistry(4th Ed.)W.H. Freeman、New York N.Y.;Gait、「Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach」1984、IRL Press、London;Nelson及びCox(2000)、Lehninger、Principles of Biochemistry 3rd Ed.、W.H.Freeman Pub.、New York、N.Y.;及びBergら、(2002)Biochemistry、5th Ed.、W.H.Freeman Pub.、New York、N.Y.、などの標準的な実習マニュアル中に見い出すことができる。
【0139】
「アダプター」とは、「アダプター要素」を含む工学処理された構成体を意味し、ここでライブラリ構成体内の標的核酸の内部に1つ以上のアダプターが散在していてよい。任意のアダプター内に含まれるアダプター要素又は特徴は、アダプターの使用に応じて大きく変動し得るが、典型的には、制限エンドヌクレアーゼ認識及び/又は切断のための部位、プライマー結合(例えばライブラリ構成体の増幅)又はアンカープライマーの結合(例えばライブラリ構成体内の標的核酸のシークエンシング)のための部位、ニッカーゼ部位、及び同種のものを含む。一部の態様において、アダプターは、1)約20〜約250ヌクレオチド、又は約40〜約100オリゴヌクレオチド、又は約60ヌクレオチド未満、又は約50ヌクレオチド未満の長さ;2)2つの「アーム」として標的核酸にライゲートされるための特徴;3)隣接する標的核酸(単複)のシークエンシングに使用するためのアダプターの5’及び3’末端における異なる及び全く異なるアンカー結合部位;及び4)1つ以上の制限部位、のうちの1つ以上を含むように工学処理されている。
【0140】
「アンプリコン」とは、ポリヌクレオチド増幅反応の産物を意味する。例えば、アンプリコンは、1つ以上の出発配列から複製されたポリヌクレオチドの集団であってよい。アンプリコンは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、線状ポリメラーゼ反応、核酸配列ベースの増幅、サークル依存性増幅及び同種の反応(例えば米国特許第4,683,195号明細書;4,965,188号明細書;同第4,683,202号明細書;同第4,800,159号明細書;同第5,210,015号明細書;同第6,174,670号明細書;同第5,399,491号明細書;同第6,287,824号明細書及び同第5,854,033号及び米国特許出願公開第2006/0024711号明細書参照)を含めた(ただしこれらに限定されない)さまざまな増幅反応によって生産されてよい。
【0141】
「サークル依存性増幅」又は「CDA」とは、円形鋳型の両方のストランドにアニールして鋳型の両方のストランドを表わす産物を生成し、結果として多重ハイブリダイゼーション、プライマー拡張及びストランド変位事象のカスケードをもたらすプライマーを用いた2本鎖円形鋳型の多重変位増幅を意味する。こうして、プライマー結合部位数の指数関数的増加が導かれ、その帰結として、生成される産物の量は経時的に指数関数的に増大する。使用されるプライマーは、ランダム配列のものであってよく(例えばランダムヘキサマー)、又は所望される産物の増幅のために選択するよう特異的配列を有していてよい。CDAは、一組のコンカテマー2本鎖フラグメントを結果としてもたらす。
【0142】
「サークル依存性複製」又は「CFR」とは、円形鋳型の同じストランドにアニールして鋳型の1つのストランドのみを表わす産物を生成するプライマーを用いた2本鎖円形鋳型の多重変位増幅を意味する。CDRでは、追加のプライマー結合部位は全く生成されず、産物の量は、時間と共に線形的に増大するだけである。使用されるプライマー(単複)はランダム配列のものであってよく(例えば1つ以上のランダムヘキサマー)、又は所望される産物の増幅のために選択するよう特異的配列を有していてよい。最終産物のさらなる修飾無く、CDRは多くの場合、タンデムで円形鋳型のストランドの多数のコピーを有する線形構成体、例えば鋳型のストランドの多数のコピーの線形コンカテマーを作り出す結果となる。
【0143】
「相補的」または「実質的に相補的」とは、ヌクレオチドまたは核酸間、例えば2本鎖DNA分子の2本のストランド間、又はオリゴヌクレオチドプライマーと一本鎖核酸上のプライマー結合部位との間の2重鎖の形成又はハイブリダイゼーション又は塩基対合を意味する。相補的ヌクレオチドは、概して、A及びT(又はA及びU)又はC及びGである。2つの1本鎖RNA又はDNA分子は、最適に整列され比較されかつ適切なヌクレオチド挿入又は欠失を伴う1つのストランドのヌクレオチドが、もう1つのストランドの少なくとも約80%、通常は約90%〜約95%、さらには約98%〜約100%と対合する場合に、実質的に相補的であると言われる。
【0144】
「2重鎖」とは、完全に又は部分的に相補的であり、そのヌクレオチドの全て又は大部分の間でワトソン・クリックタイプの塩基対合を受け、こうして安定した鎖体が形成されることになる。少なくとも2つのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを意味する。「アニーリング」及び「ハイブリダイゼーション」という用語は、安定した2重鎖の形成を意味するように互換的に用いられる。2重鎖に関して「完全にマッチした」というのは、2重鎖を構成しているポリ又はオリゴヌクレオチドストランドが、互いに2本鎖構造を形成し、こうして各ストランド内の全てのヌクレオチドがもう一方のストランド内のヌクレオチドとのワトソン・クリック塩基対合を受けるようになっていることを意味している。2つのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド間の2重鎖内の「ミスマッチ」は、2重鎖内のヌクレオチドの対がワトソン・クリック塩基対合を受けることができないことを意味している。
【0145】
「フルオロフォア」は、特異的吸収スペクトル内でエネルギーを吸収し異なる(ただし同等に特異的な)発出スペクトルでエネルギーを再発出する官能基を含む又はこの官能基で構成された分子を意味する。マーカーとして使用するための好ましいフルオロフォアとしては、フロオロセイン、カスケードブルー、ヘキサクロロ−フロオロセイン、テトラクロロ−フロオロセイン、TAMRA、ROX、FAM、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、4,4−ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸、4,4−ジフルオロ−5,p−メトキシフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸、4,4−ジフルオロ−5−スチリル−4−ボラ−3a,4−アジアザ−a−S−インダセン−プロピオン酸、6−カルボキシ−X−ローダミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、テキサスレッド、エオシン、4,4−ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸、4,4−ジフルオロ−5,p−エトキシフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン3−プロピオン酸及び4,4−ジフルオロ−5−スチリル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−S−インダセン−プトピオン酸、Massachusetts州WalthamのThermo Fisher Scientificから入手可能なDyLight Fluor系列及びOregon州EugeneのMolecular Probesから入手可能なAlexa Fluor系列が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0146】
「ハイブリダイゼーション」とは、2つの1本鎖ポリヌクレオチドが非共有的に結合して、安定した2本鎖ポリヌクレオチドを形成するプロセスを意味する。結果として得られる(そして通常は)2本鎖のポリヌクレオチドは、「ハイブリッド」又は「2重鎖」である。「ハイブリダイゼーション条件」には典型的には、約1M未満、より典型的には約500mM未満の塩濃度が含まれ、約200mM未満であってもよい。「ハイブリダイゼーション緩衝液」は5%SSPEなどの緩衝塩溶液又は当該技術分野において公知の他のこのような緩衝液である。ハイブリダイゼーション温度は、5℃という低いものであり得るが、典型的には22℃超、そしてより典型的には約30℃超、そして典型的には37℃超である。ハイブリダイゼーションは通常ストリンジェント条件下、例えばプローブがその標的サブ配列に対してハイブリッド形成するものの他の非相補性配列に対してはハイブリッド形成しない条件の下で実施される。ストリンジェント条件は配列に依存し、異なる状況の中で異なっている。例えば、フラグメントが長いと、短かいフラグメントに比べて特異的ハイブリダイゼーションのためにより高いハイブリダイゼーション温度が必要となる場合がある。相補的ストランドの塩基組成及び長さ、有機溶媒の存在、及び塩基ミスマッチ度を含めた他の要因がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼす場合があることから、複数のパラメータの組合せは、任意の1つのパラメータ単独の絶対尺度よりも重要である。概して、ストリンジェント条件は、定義されたイオン強度及びpHで特異的配列についてのTmよりも約5℃低くなるように選択される。ストリンジェント条件の例としては、約7.0〜約8.3のpH及び少なくとも25℃の温度で少なくとも0.01Mから1M以下のナトリウムイオン濃度(又は他の塩)という塩濃度が含まれる。例えば、対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションには、5×SSPE(pH7.4で750mMのNaCl、50mMのリン酸ナトリウム、5mMのEDTA)及び30℃の温度という条件が好適である。
【0147】
「ライゲーション」とは、鋳型駆動型反応において例えばオリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチドなどの2つ以上の核酸の末端間で共有結合又は連鎖を形成するプロセスを意味する。結合又は連鎖の性質は、大きく変動する場合があり、ライゲーションは酵素的に又は化学的に実施されてよい。本明細書中で使用されるライゲーションは、通常、酵素的に実施されて、1つのオリゴヌクレオチドの5’炭素末端ヌクレオチドと別のヌクレオチドの3’炭素の間のホスホジエステル連鎖を形成する。鋳型駆動型ライゲーション反応については、米国特許第4,883,750号明細書;同第5,476,930号明細書;同第5,593,826号明細書;及び同第5,871,921号明細書といった参考文献中に記載されている。
【0148】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、「オリゴ」又は本明細書中で使用される文法的等価物は、概して共に共有結合的に連鎖されている少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。ヌクレオチドは、核酸塩基(又は単に「塩基」)、5炭糖(例えばリボース又は2’−デオキシリボース)、そしてヌクレオチドの主鎖を形成する1〜3個のリン酸基で構成されている。同時に、塩基(例えばRNA内に見い出される塩基UとC、G、A、Tの4つの主要ヌクレオチド塩基のうちの1つ)と糖はヌクレオシドを構成する。ポリヌクレオチドは概してホスホジエステル結合を含むが、一部の場合において、代替的な主鎖、例えばホスホラミダイト、ホスホロジチオエート又はメチルホスホラミダイト連鎖、及びペプチド核酸主鎖及び連鎖を有する核酸類似体を含み入れてもよい。他の類似体核酸としては、ロックド核酸、正の主鎖及び非リボース主鎖を含む二環構造を伴うものが含まれる。
【0149】
「プライマー」とは、ポリヌクレオチド鋳型との2重鎖を形成した時点で、核酸合成の開始点として作用でき、拡張された2重鎖が形成されるように鋳型に沿ってその末端の1つから拡張され得る、天然又は合成のオリゴヌクレオチドを意味する。拡張プロセス中に加えられるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列により決定される。プライマーは通常、DNAポリメラーゼにより拡張される。
【0150】
「T
m」とは、2本鎖核酸分子の集団の半分が1本鎖へと解離された状態になる温度として一般に定義される用語である。核酸のT
mを計算するための等式は、当該技術分野において周知である。標準的参考文献により示されている通り、T
m値の単純な推定値は、核酸が0.5M以下のカチオン濃度を有する水溶液中にあり、(G+C)含有量が30%〜70%であり、「n」が塩基数であり、「m」が塩基対ミスマッチの百分率である場合、等式:T
m=81.5+16.6(log10[Na+])0.41(%[G+C])−675/n−1.0mにより計算されてよい(例えばSambrook Jら、「Molecular Cloning、A Laboratory Manual」、3rd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)を参照のこと)。他の参考文献には、Tmの計算のために構造的特性ならびに配列特性を考慮に入れたより高度の計算が含まれている(Anderson及びYoung(1985)、Quantitative Filter Hybridization、Nucleic Acid Hybridization、and Allawi and SantaLucia(1997)、Biochemistry 36:10581〜94も参照のこと)。
【0151】
本発明は、具体的実施形態を参考にしながら説明されてきた。当業者には、本明細書を参照した時点で他の実施形態が明らかになるものである。したがって、添付クレームにより示されている場合を除き、本発明を限定することは意図されていない。