(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
より高レベルのより重質の原油の処理と併用した、輸送燃料のより厳しい環境規制により、精製所における水素の需要は、より多くの水素処理および水素化分解プロセスの必要性を満たすために増加することが予期される。現在、約95%の水素が、連続的ステップで、改質、水性ガスシフト(WGS)、および圧力吸着プロセスを採用する、天然ガスの大規模水蒸気改質によって供給されている。しかしながら、効率が、より小規模の運用については劣っている。したがって、化石燃料からのより小規模での水素生成は、燃料電池自動車の使用等の種々の新興用途の純度、経済性、および多用途性の要件を満たすように、さらなる開発を余儀なくさせる。
【0003】
過去10年の間、世界中でエネルギー供給の不足に関する懸念が増大してきた。水素を使用する燃料電池が、現在の上昇するエネルギー需要のために、潜在的に無公害の効率的な燃料を提供し得る。この種類の技術が、再生可能な水素源のために開発中である一方で、水素は、典型的には、水素が豊富なエネルギー担体の変換を通して商業的に生成される。
【0004】
したがって、化石燃料からの水素の生成のための費用効果的な方法が、ますます重要になりつつあり、より具体的には、一酸化炭素を含まない、低費用の純粋な水素の生成のための方法が必要とされる。
【0005】
炭化水素水蒸気改質(SR)、部分酸化(POX)、および自己熱改質(ATR)は、水素生成のための重要な公知のプロセスである。高分子量炭化水素の水蒸気改質は、天然ガスが利用可能ではない場所で、40年以上にわたって実践されてきた。しかしながら、高度に吸熱性のSRプロセスを発熱POXプロセスと組み合わせるため、より高い炭化水素のATRがSRより好ましい。これは、ATRが、SRよりも熱的に安定しており、熱中性条件に推進できることを意味する。加えて、ATRの開始は、SRよりも急速である。
【0006】
多くの市販触媒上の硫黄沈着は、コークス蓄積を誘発する傾向があり、(硫黄が燃料の芳香環の中に存在するため)市販燃料が完全には除去することができない硫黄を含有するため、これらの種類の市販触媒の使用は、典型的には、不要なコークス化および触媒の早期非活性化をもたらす。逆に、貴金属を有する触媒、特にRhベースの触媒は、硫黄に耐え、コークス沈着を防止し、それにより、合成ガスへの炭化水素の改質においてそれらをより活性にすることができる。しかしながら、貴金属ベースの触媒の有意な欠点は、非貴金属ベースの触媒と比較して、それらの有意に多額となる費用である。例えば、ロジウムの価格は、2007年の1グラムあたり平均約$16.77米ドルから2010年の1グラムあたり約$149.71まで、過去3年間でほぼ10倍上昇している。
【0007】
メタンの水蒸気改質が、水素の生成のための触媒反応の形態として典型的に使用される。メタンの水蒸気改質にニッケルまたは貴金属触媒のいずれかを利用する、従来の触媒システムは、約700℃以上の一次反応温度を必要とし、その後に、多くの一般的プロセスのための供給原料として使用することができる、合理的な純度(すなわち、95容量%を上回る)を伴う水素生成物を提供するように、かなり広範かつ高価な精製プロセスが続く。
【0008】
メタン以外の炭化水素、とりわけ油生成物の改質は、天然ガスの水蒸気改質と同様の反応で達成することができる。しかしながら、反応速度の違いおよび熱クラック(熱分解とも呼ばれる)の増加傾向により、好適な触媒を用いた、より高い炭化水素(すなわち、少なくとも2つの炭素元素が存在する炭化水素)のC−C末端結合の連続的破壊は、メタンよりも困難である。異なる反応速度および熱クラックに関係する問題を回避するために、通常、炭素除去が別個の予備改質器で行われるが、水素を生成するというこのオプションを、天然ガス改質よりも複雑かつ高価にする。
【0009】
水素はまた、ガス化または部分酸化によって、重油等の不揮発性炭化水素から生成することもできる。ガス化プロセスが、水素を生成するために約600℃以上の温度の蒸気を利用する一方で、炭素は、CO
2に酸化させられる。しかしながら、ガス化は、通常、水蒸気改質および部分酸化プロセスと比較して経済的ではない。比較すると、部分酸化は、水蒸気改質よりもかなり急速である。部分酸化では、炭化水素供給は、約1300℃から1500℃の間の温度の蒸気の存在下で、酸素とともに部分的に燃焼される。圧力は、プロセスの反応速度にほとんど影響を及ぼさず、通常、より小型の機器の使用および圧縮費削減を可能にするように、約2〜4MPaの圧力で行われる。空気が酸素源として使用されるとき、窒素が、結果として生じる水素ガス生成物から除去されなければならず、典型的には、酸化反応器に続いて別個の段階を必要とする。したがって、部分酸化は、燃料電池を装備した自動車等における小規模変換により好適である。本プロセスは、車内における改質のために、必要に応じて、停止および開始することができ、進行中であるとき、酸化プロセスとともに水蒸気改質を開始し得る、上昇した温度を提供することができる。これは、自己熱改質と呼ばれ、これまで記述された全ての反応を伴う。
【0010】
水性ガスシフト(WGS)反応は、一酸化炭素不純物を除去し、全体的な水素収率を増加させるために利用される一次触媒反応に続いて頻繁に使用される、代替的な水素生成技術である。WGS反応は、軽度に発熱性であり、したがって、より低い温度で熱力学的に有利である。しかしながら、反応速度は、より高い温度で優れている。したがって、最初に、熱交換器内で改質器からの改質生成物を約350℃から500℃の間の温度まで冷却し、次いで、好適なWGS触媒上で反応を行うことが一般的な実践である。次いで、結果として生じる改質物は、200℃から250℃の間の温度まで再び冷却され、低温指定WGS触媒上で反応させられる。しかしながら、これらのいくつかの変換および熱交換ステップが関与するため、本プロセスは、経済的に高価で高度に非効率的である。
【0011】
圧力スイング吸着(PSA)は、不純物を含有する流れから水素を分離する周知の確立された方法である。PSAは、不純な水素流を、非常に純粋な(99.9%)水素生成物流と、不純物および生成されたわずかな水素を含む排ガス流とに分離するために、通常は2つ以上である、複数の固体吸着剤床を採用する。実施例として、合成ガス(H
2およびCO)が、水素よりもむしろ不純物が吸着剤上に吸着される、1つの床に導入されてもよい。理想的には、完全装填が達成される直前に、この吸着剤床がオフラインに切り替えられ、第2の吸着剤床がオンラインにされる。装填床への圧力が、後に低減させられ、吸着された不純物(この場合は、主にCO
2)を低い圧力で解放する。典型的には、約15パーセントである、ある割合の入口水素が、排ガス中で失われる。PSAの有意な不利点は、低い排ガス圧が、システムを単一のWGS段階に本質的に限定することである。このようにして、水素分離システムを単一のWGS段階に限定することにより、CO変換の量ならびに水素回収の総量を減少させる。PSAはまた、部分的に、より高い資本および運用支出、ならびに休止時間の潜在的増加につながる、PSAの機械的複雑性により、膜の使用と比較して望ましくない。
【0012】
水素は、パラジウムまたはパラジウム合金等の水素透過性金属膜を通して生成および除去される。しかしながら、金属膜、特に、パラジウムまたはパラジウム合金は、非常に高価で、硫黄化合物に敏感であり、かつ触媒層とともに共焼結すること、または触媒層上で焼結することが困難である。加えて、そのようなデバイスは、WGS反応のみを使用して水素を生成する。
【0013】
別の種類の膜は、水素生成および精製用のいわゆるプロトンセラミック膜である。それは、より高い価値の生成物を生じるように、水素含有ガスまたは他の化合物を分離または分解するための単相および混合相ペロブスカイト型酸化プロトンセラミック膜の使用に基づく。しかしながら、これらの膜は、前述の欠点の多くを抱えている。
【0014】
したがって、単一のステップで液体炭化水素を高純度水素に変換することが可能である、膜反応器を開発することが極めて望ましい。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、種々の公知の触媒構造の弱点に対処するか、または弱点を低減させ、一酸化炭素を伴わずに水素源を提供する、方法および触媒構造を対象とする。本発明の実施形態は、層状複水酸化物(「LDH」)の熱分解、および自己熱改質反応を使用する液体炭化水素変換でのこれらの物質の挙動を用いて得られる、触媒混合金属酸化物の合成のための方法を含む。
【0016】
一実施形態では、本発明は、自己熱改質(ATR)触媒構造を構築するための方法を提供する。本方法は、塩基性pHを有する塩基性溶液を得ることと、酸性pHを有する酸性溶液を得ることと、塩基性溶液を用いた金属カチオンの共沈を通して、層状複水酸化物(LDH)前駆体を有するゾル・ゲルを作成するように、塩基性溶液を酸性溶液と混合することと、LDH前駆体が焼成物質を形成するよう少なくとも部分的に分解されるように、ある期間にわたって触媒焼結をもたらすであろう、500℃以上および焼結温度以下の熱分解温度でゾル・ゲルを加熱することと、ATR触媒構造を形成するように、約450℃から700℃の範囲内の温度で窒素上の水素の混合物を使用して、LDH前駆体内の層状結晶構造を崩壊させるために焼成物質に金属還元ステップ(すなわち、金属酸化物がその元素状態に還元される)を行うこととを含むことができる。一実施形態では、ATR触媒構造の多孔率は、約65〜70%である。一実施形態では、塩基性溶液は、アルカリ金属水酸化物と、アルカリ金属炭酸塩と、水とを含む。別の実施形態では、酸性溶液は、塩と、水とを含み、塩は、カチオンおよびアニオンから成り、カチオンは、マグネシウム、ニッケル、およびアルミニウムから成る。一実施形態では、ATR触媒構造は、全体を通して分散されたナノサイズ混合酸化物粒子を有し、ナノサイズ混合金属酸化物は、40〜300nmの範囲内の直径を有する。一実施形態では、LDHは、層状結晶構造を有する。一実施形態では、結果として生じる装置が、自己熱改質反応を介して液体炭化水素を水素に変換するよう動作可能であるように、ATR触媒構造を、ゾル・ゲル中で懸濁し、多孔質構造を有する管状担体に付加することができる。
【0017】
一実施形態では、ナノサイズ混合金属酸化物は、100〜300m
2/gの間の表面積を有する。一実施形態では、ナノサイズ混合金属酸化物は、ATR触媒構造の全体を通して均質的に分配される。別の実施形態では、ナノサイズ混合金属酸化物は、熱的に安定している。
【0018】
一実施形態では、塩基性溶液は、10から12の間のpH値を有する。塩基性溶液は、塩基性溶液が約12のpH値を有するように、Na
2CO
3とNaOHの混合物を含むことができる。別の実施形態では、金属カチオンは、高価値金属の欠如を有する。例示的な非限定的高価値金属は、白金、ロジウム、金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、レニウム、ルテニウム、および白金を含む。一実施形態では、酸性溶液は、約1.5Mの総カチオン濃度を有する。別の実施形態では、金属カチオンは、約20〜35モル%の間のアルミニウム濃度を有する。
【0019】
一実施形態では、LDHで金属還元ステップを行うことは、約450℃から700℃の範囲内の温度で行われる。一実施形態では、熱分解温度は、約500℃から600℃の範囲内である。一実施形態では、ATR触媒構造は、多孔質管状担体に取り込まれたときに、ATR反応の使用を通して、液体炭化水素を有する供給流から水素生成物流を生成するように動作可能である。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、以下のステップによる、自己熱改質(ATR)触媒を構築する方法を提供する。
a.10またはそれ以上のpHを有する塩基性溶液であって、水酸化物、好ましくは、アルカリ金属水酸化物と、炭酸ナトリウムと、水とを含む、塩基性溶液を調製すること。
b.酸性溶液が、塩の混合物を水と組み合わせることによって調製され、塩が、カチオンおよびアニオンから成り、カチオンが、マグネシウム、ニッケル、およびアルミニウムから成り、酸性溶液が、約1.5Mの総カチオン濃度を有する、7未満のpHを有する酸性溶液を調製すること。
c.ゾル・ゲルを形成するように動作可能な期間にわたって、酸性溶液および塩基性溶液をともに混合すること。
d.形成固体を形成するように、所定の期間にわたってゾル・ゲルを熟成させること。
e.略中性pHに達するまで、水で形成固体を洗浄および濾過すること。
f.乾燥固体を形成するように、所定の期間にわたって形成固体を乾燥させることと。
g.焼成物質を形成するように、所定の期間にわたって所定の温度で乾燥固体を焼成すること。
h.ナノサイズ混合金属酸化物が、約40〜約300nmの範囲内の直径を有する、ATR触媒構造であって、全体を通して分散されたナノサイズ混合酸化物粒子を有する、ATR触媒構造を形成するように、約450℃から約700℃の範囲内の温度で焼成物質を水素および窒素ガスの混合物と接触させることによって、焼成物質に金属還元ステップを受けさせること。
【0021】
別の実施形態では、アニオンは、硝酸塩を含むことができる。別の実施形態では、カチオンはさらに、高価値金属の欠如を含むことができる。一実施形態では、ステップ(a)の塩基性溶液は、塩基性溶液が約12のpHを有するように、所定量のNaOHをNa
2CO
3と組み合わせることによって調製することができる。別の実施形態では、ATR触媒構造は、多孔質管状担体に取り込まれたときに、ATR反応の使用を通して、液体炭化水素を有する供給流から水素生成物流を生成するように動作可能である。さらなる実施形態では、水素生成物流は、一酸化炭素を実質的に含まない。
【0022】
追加の実施形態では、本発明は、液体炭化水素から水素ガスを生成するために有用な自己熱改質(ATR)触媒構造を提供する。一実施形態では、ATR触媒構造は、支持構造と、支持構造の全体を通して均質的に分散されたナノサイズ混合金属酸化物とを含むことができる。ナノサイズ混合金属酸化物は、アルミニウムと、ニッケルと、マグネシウムとを含む、金属カチオンを有し、ナノサイズ混合金属酸化物は、約100〜300m
2/gの表面積を有し、ナノサイズ混合金属酸化物は、約40〜300nmの範囲内の直径を有する。一実施形態では、酸性溶液は、約1.5Mの総カチオン濃度を有することができる。別の実施形態では、溶液内の金属酸化物は、約20モル%から35モル%のアルミニウム濃度を有することができる。別の実施形態では、ATR触媒構造は、ATR反応の使用を通して、液体炭化水素を有する供給流から水素生成物流を生成するように動作可能である。さらなる実施形態では、水素生成物流は、一酸化炭素を実質的に欠くことができる。追加の実施形態では、ATR触媒構造はさらに、貴金属イオンの欠如を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、いくつかの実施形態に関連して説明されるであろうが、本発明をこれらの実施形態に限定するように意図されないことが理解されるであろう。それとは逆に、添付の請求項によって定義される本発明の精神および範囲内に含まれ得るような全ての代替案、修正、および同等物を対象とすることが意図される。
【0030】
ナノサイズ触媒は、反応活性を増加させ、選択性を向上させ、水素生成に向かう反応性を向上させ、望ましくないメタン化反応を最小限化するという点で、特に自己熱およびWGS反応において、それらの原寸対応物と比べて利点を提供する。
【0031】
改質プロセスの主な不利点である、(コークスとしての)炭素形成は、動力学的問題である。そのようなものとして、コークス生成は、可能な炭素種反応の代替案の相対的反応速度に依存する。反応機構は、大部分が、炭化水素の種類、動作条件、および触媒特性に依存している。例えば、触媒特性は、C−C切断に対して触媒上の水吸着・解離速度およびガス化速度を増加させることによって、反応機構に影響を及ぼすことができる。
【0032】
触媒特性は、概して、活性領域、金属粒径、金属分散、および還元性等の、それらの物理化学、組成、構造、およびテクスチャ性質によって判定される。これらの性質は、金属・担体相互作用に依存し、触媒合成の異なる段階で確立することができる。例えば、前駆体の物質組成、調製方法、および/または熱処理(焼成または還元)を変化させることにより、最適な性能のために触媒の所望の特性を提供することができる。
【0033】
本発明は、層状複水酸化物(LDH)の熱分解によって得られる、新規の混合金属酸化物を提供し、触媒の活性部位およびその環境、ならびに触媒テクスチャおよび安定性を制御する機会を提供する。LDHは、正電荷を持つ層と、層間領域中に位置する電荷平衡アニオンとを有する、独特な一種の層状物質である。典型的には、LDHは、濃縮アルカリ溶液を用いた金属塩の共沈によって合成することができる。LDHの調製のための代替的な方法は、ゾル・ゲル方法を通したものである。ゾル・ゲル方法によって調製されるLDHに起因する混合金属酸化物の熱処理は、混合金属酸化物構造中の元素間で相乗効果を実証する物質につながり、適切な活性化処理後に、合成段階中に金属・担体相互作用を制御する可能性とともに、担持金属触媒のような十分に分散した金属粒子を生じさせることができる。
【0034】
本発明の一実施形態では、改質反応に使用することができる新しい触媒構造が提供される。該触媒構造を調製する1つの発明方法では、ゾル・ゲル沈殿方法を使用して、いくつかの異なる種類のLDHを調製することができる。一実施形態では、一方が酸性であり、一方が塩基性である、2つの水溶液が調製される。ある実施形態では、ゾルは、塩基触媒である。酸性溶液は、好ましくは、マグネシウム塩、具体的には、所望のAl/(Ni+Mg+Al)比を使用して、硝酸塩、ならびにニッケルおよびアルミニウムに対する同物質の塩等の1つまたは複数の金属塩を含有する。酸性溶液のpHは、好ましくは、約4から約6の範囲内である。一実施形態では、酸性溶液中の金属塩の総カチオン濃度は、約1.5Mである。塩基性溶液は、約0.7のニッケル、マグネシウム、およびアルミニウムに対する炭酸イオンの比、および約12の合成のためのpHを維持するために、好適な量の水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを混合することによって得ることができる。
【0035】
溶液が調製された後、次いで、それらを大型混合デバイスの中へ添加し、ゾル・ゲルを形成するように、適切な期間にわたって、機械的撹拌に入れることができる。一実施形態では、適切な時間量は、金属酸化物の濃度を測定することによって判定される。一実施形態では、金属酸化物の95%濃度が容認可能である。95%以上の濃度で、好ましい量の反応物が消費されており、撹拌を停止することができる。一実施形態では、金属酸化物濃度を検証するために、ICP−AES分析を使用することができる。一実施形態では、この混合ステップは、最大で約5時間であり得る。混合ステップに続いて、得られたゾル・ゲルは、最大で約6時間、代替として、最大で約10時間、代替として、最大で約15時間、または15時間を上回り得る、適切な時間量にわたって、約50から75℃の間の温度で、代替として、約60℃の温度で、熟成するように放置される。熟成中、ゾル・ゲル内の液体の少なくとも一部分が蒸発する。一実施形態では、急速な成熟は、ゲル特性に悪影響を及ぼし得るため、好まれない。次いで、洗浄水が約7の中性pHを有するまで、結果として生じる固体を、蒸留水で濾過および洗浄することができる。水洗浄が、全ての望ましくない変換された反応物を除去するために望ましい。当業者であれば、中性pHが、約6.5から7.5の範囲内のpHを含むと理解するであろう。次に、結果として生じる洗浄固体LDH物質を、最大で約5時間、代替として、最大で約10時間、代替として、最大で約15時間であり得る、適切な時間量にわたって、約100℃で乾燥させることができる。一実施形態では、次いで、LDH物質を、最大で約5時間、代替として、最大で約8時間、代替として、最大で約12時間であり得る期間にわたって、最大で550°Cの温度で、代替として、約400℃から600℃の間の温度で、代替として、約400℃から500℃の間の温度で、代替として、約500℃から600℃の間の温度で、空気中で焼成することができる。結果として生じる固体生成物は、Ni/Mg/Alを含む混合金属酸化物の触媒前駆体である。水素への液体炭化水素の自己熱改質反応のために好適な担体金属触媒は、最大で約5時間である期間にわたって、約500℃、代替として、約400℃から550℃の間の温度で、水素を含み、かつ窒素も含むことができる、ガス混合物と接触させることによって、金属還元ステップ後にこれらの前駆体から得ることができる。一実施形態では、ガス混合物は、約5モル%の水素、代替として、約1〜10モル%の間の水素、代替として、約5〜10%の間、代替として、約5〜15%の間、代替として、約10〜20モル%の間の水素を含有する。
【0036】
金属酸化物還元ステップ中に、約300℃を上回る温度で、LDL構造が崩壊するであろうし、そして水素の存在下で、金属酸化物を、その元素状態に還元することができる。崩壊した構造が、XRDを使用して確認された(および
図1〜3に示される)。一般に、崩壊した構造は、出発物質に対して増加した密度、および所望の反応を受けるように触媒の中への反応物の拡散のために十分である多孔率を有する。ある実施形態では、崩壊した物質の多孔率は、約65〜70%の範囲内である多孔率を有する、出発物質と一致したままとなることができ、ひいては、所望の改質反応を促進することができる。
[触媒構造の実験的設計:]
【0037】
以下の合成パラメータが、本発明の実施形態による触媒構造を得るために調査された。
混合金属酸化物の形態での0.2から5の間のAl/Mgモル比
焼成温度:500℃〜600℃
還元温度:500℃
水素の濃度:5〜20モル%
ニッケル取り込み方法:マグネシウムおよびアルミニウムを同時に用いた共沈、またはAl−Mg担体上の含浸
【0038】
これらの物質の触媒特性への合成パラメータの影響を研究するために、異なる一連のサンプルが調製された。各異なるサンプルで、1つだけのパラメータが変更された。CP10Cとして識別された基準物質は、以下のパラメータを有した。
ニッケル含有量: 10重量%
カチオン比[Al/(Al+Mg+Ni)]: 0.20
焼成温度: 550℃
還元温度: 500℃
ニッケル取り込み方法: マグネシウムおよびアルミニウムを用いた共沈
【0039】
触媒挙動へのAl/Mg比の影響を判定するために、Al/Mg比が0.2から約5の間で変化させられた、いくつかの触媒が調製された。
【0040】
触媒挙動への焼成温度の影響を判定するために、焼成温度が約400℃から約800℃の間で変化させられた、いくつかの混合酸化物触媒が調製された。
【0041】
触媒挙動への還元温度の影響を判定するために、還元温度が約450℃から約700℃の間で変化させられた、いくつかの触媒が調製された。
【0042】
触媒挙動へのニッケル取り込み方法の影響を判定するために、共沈によって、および含浸によって、いくつかの触媒が調製された。「LO」と印付けられた触媒は、含浸によって調製され、「CP」と印付けられた触媒は、共沈によって調製された。
【0043】
物質のうちのそれぞれの結果および特性が、触媒活性を対応する構造性質と相関させるために、いくつかの異なる技法を使用して測定された。Quantachrome Autosorb−1C器具において液体窒素の温度で窒素物理吸着を採用したBET技法を使用して、触媒担体表面積が測定された。誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICPAES)によって、金属装填の割合が測定された。Cu−Κα放射線源(30KV/15mA)を採用したRigaku Miniflex回折計を使用して、X線回折(XRD)が実行された。サンプルの各状態(焼成、還元、使用済み)で存在した異なる相の平均粒径が、以下のように再現されるシェラーの式によって推定された。
【数1】
式中、Kは、形状因子であり、λは、X線波長であり、βは、ラジアン単位の最大強度の半分(すなわち、半値全幅)における線の広がりであり、θは、ブラッグ角であり、τは、規則(結晶性)ドメインの平均サイズである。
【0044】
全金属表面積、金属粒子のサイズ、および金属分散を推定することが可能である、昇温還元(TPR)によって検討される水素化学吸着等の、十分に確立された高度な分析技法を使用して、ニッケル表面積を測定することができる。
【0045】
昇温還元(TPR)が、50mL/分で流された5%H
2/N
2混合ガスを使用して実行され、水素消費を用いて焼成サンプルの還元性を研究するために使用された。TPR曲線から、最も効率的な還元条件を判定するために、最大曲線が現れる温度(ニッケル還元温度)を使用することができる。焼成および還元サンプルに対応するTPR曲線を比較することによって、還元の程度を推定することができる。昇温酸化(TPO)の分析によって、活性試験中のサンプル上のコークス形成を判定することができる。自己熱改質反応研究が、下降流固定床反応器触媒システム内で実行された。
【0046】
希釈を伴わずに、約30〜50メッシュのサイズの粒子を有する、約1グラムの触媒が使用された。試験された触媒は、約500℃の温度のH
2ガス流(5%)中で約5時間にわたって予備還元された。2つの熱電対が動作温度を制御し、第1の熱電対は、オーブンの中に位置付けられ、第2の熱電対は、触媒床の中心に位置付けられた。全ての反応物が反応器の最上部から導入された。空気が、酸素源として使用された。2つのHPLCポンプが、水および炭化水素を供給し、それらは反応領域に導入される前に混合されて蒸発させられた。圧力を読み取る精密計器と接続された背圧調節器によって、反応の圧力が維持された。通常は約45分かかった、反応器の内容物が選択された反応温度まで加熱された時点で、時間ゼロが測定された。いったん反応温度に達すると、試験の長さの全体を通して、ガスサンプルが、ガスサンプリングシステムを通して除去された。反応器からの流出物が、凝縮性蒸気を凝縮するように二重管凝縮器の中で冷却された。ガスおよび液体サンプルが、ガスクロマトグラフィによって分析された。
【0047】
自己熱改質反応が、以下のような異なる反応条件で調査された。
炭化水素供給: n−オクタン
反応温度: 500℃、550℃、および600℃
全圧力: 3バール
単位時間あたりの重量空間速度 (WHSV): 5000時間
−1
酸素/炭素 (モル比): 0.5
蒸気/炭素 (モル比): 3
【0048】
一般的な反応手順は、反応器に触媒を詰め込むこと、反応器の温度コントローラを起動すること、次いで、触媒還元に続いて、所望の温度条件を設定することを含んだ。試験が始まる約15分前に、蒸気が触媒床を通過させられた。これに続いて、水および炭化水素ポンプを伴う空気流量計が、確立された条件で一斉にオンにされた。
【0049】
各実験は、約8時間にわたって実行された。最初の2時間は、約500℃の温度で行われ、次いで、さらに2時間にわたって約600℃の温度まで上昇させられ、再度、2時間にわたって約700℃の温度まで上昇させられ、最終的に、最後の2時間にわたって約500℃の温度に戻った。30分ごとに、H
2、O
2、CH
4、CO、およびCO
2のモル濃度を判定するように、改質ガスサンプルが分析のために採取された。液体改質生成物の体積流量(ml/分)および密度(g/ml)も検査され、ガスクロマトグラフィ炎イオン化検出器(GC−FID)分析を通過させられた。
【0050】
2つの島津 GC−17Aガスクロマトグラフィ(GC)ユニットが、ATR反応から収集された生成ガスおよび液体改質物の組成を推定するために使用された。GCユニットは、熱伝導度(TCD)および炎イオン化(FID)検出器を装備した。具体的には、1/8インチ6フィートCarbosphere80/100充填カラムを使用して、H
2、O
2、N
2、CH
4、CO、およびCO
2の存在を評価するために、GC−TCDが使用された。100m×0.25mm ID BPI−PONA毛管カラムと連結されたGC−FIDを使用して、軽質および重質液体炭化水素が分析された。液体生成物識別も、DB−5カラムを装備した島津 GCMS−QP5050A質量分析計内で実行された。
【0051】
GC−TCD方法については、注入器は100℃で保持され、検出器温度は150℃であった。オーブン温度は、最初に、40℃の温度で5分間維持され、次いで、5℃/分の速度で120℃の温度まで上昇させられた。GC−FIDの場合、注入器は280℃で保持され、検出器温度は320℃であった。オーブン温度は、最初に、60℃の温度で5分間維持され、次いで、10℃/分の速度で280℃まで上昇させられた。
【0052】
図1を参照すると、焼成前の4つのサンプルのX線回折スペクトルが提供されている。サンプルLO1およびLO2が含浸によって調製され、サンプルCP1およびCP2が共沈によって調製された。サンプルは、約20.5重量%NiO、5.5重量%MgO、および75重量%Al
2O
3の組成を有した。サンプルは全て、約5〜15時間にわたって110℃で空気乾燥させられた。
図1に示されるX線回折スペクトルの積み重ねプロットで示されるように、各サンプルの個々のスペクトルは、比較的同様であり、したがって、10のpHであろうと12のpHであろうと、含浸および共沈を利用する合成方法が、類似結晶構造を有する物質を生成することを実証する。加えて、
図1はまた、異なる触媒合成条件での結晶化度とともに、異なるアルミニウム/マグネシウム結晶サイズのLDH構造も表示する。
【0053】
図3は、約20.5重量%NiO、約5.5重量%MgO、および約75重量%Al
2O
3の組成を有する、4つの焼成触媒サンプルのX線回折スペクトルを示し、サンプルは、約650℃の温度で約8時間にわたって焼成された。物質は、
図1に示される物質の焼成版に対応する。スペクトルは、サンプルLO2CおよびCP2Cの両方が、(LDH構造とは対照的に)混合金属酸化物に対応する、約38、46、および66でピークを有することを示す。サンプルCP2Cはまた、金属酸化物に対応する、約60でわずかなピークも含む。対照的に、サンプルLO1Cは、約38、42、46、63、および66でピークを有し、サンプルCP1Cは、約38、42、62、および66でピークを有するが、66でのピークは、より低い強度である。
【0054】
図1〜3に示される実験結果に基づいて、出願人等は、驚くべきことに以下のことを発見した。
(1)LDH物質の焼成/還元によって得られた触媒は、水素生成用の液体炭化水素の自己熱改質のための好適な触媒物質であることが判明した。これらの触媒物質は、基質の内側で安定しており、有利に高い表面積を有する、高度に分散した金属結晶または粒子を呈する。
(2)本発明の種々の実施形態に従って得られる触媒物質は、液体炭化水素、蒸気、および空気を、水素および二酸化炭素に変換するために、触媒膜で使用することができる。触媒活性試験は、いかなる一酸化炭素生成も伴わずに生成された大きいレベルの水素とともに、ほぼ完全な液体炭化水素変換を生じ、したがって、ATRおよびWGS複合反応の優れた均衡を示した。加えて、WGS反応が、メタン化反応より有利であり、低減した量のメタンガスを生成させた。また、コークス形成も低減させられ、これが全体的な触媒活性を向上させ、したがって、より長い実行時間につながる。
(3)共沈によって触媒物質に取り込まれたニッケルは、含浸方法よりも高度かつ微細に分散したニッケル粒子をもたらす。
(4)合成パラメータは、金属・担体相互作用に重要な影響を及ぼす。より強力な金属・担体相互作用が有益であるとき、触媒構造が向上させられる。加えて、触媒性能は、ニッケル粒径、ならびに選択された担体物質およびその性能に強力に結び付けられる。
【0055】
前述のように、パラジウムまたはパラジウム合金等の水素透過性金属膜を通して水素を生成し、後に除去するために、従来技術の触媒膜が使用された。しかしながら、これらの膜、具体的には、パラジウムまたはパラジウム合金は、高価で、硫黄化合物に敏感であり、かつ触媒層とともに焼結すること、または触媒層上で共焼結することが困難である。加えて、そのようなデバイスは、典型的には、WGS反応のみによって水素を生成した。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態は、ATR反応およびWGS反応の両方に有用な触媒を統合するとともに、パラジウムまたはパラジウム合金を含まない水素透過性膜を提供し、費用を削減する一方で、本プロセスの全体的なH
2収率を増加させる。一実施形態では、本明細書で説明されるATR構造は、ATR反応、WGS反応を行い、水素を除去するように動作可能である、触媒膜反応器(CMR)アセンブリに組み込むことができる。
【0057】
本発明の一実施形態では、油改質プロセスによる水素の生成のための方法は、従来技術のプロセスと比較して、液体油から高品質の水素を生成する全体的な費用を削減する。一実施形態では、本方法は、合成ガスを得るように処理される油供給の特性に応じて、ガス化、水蒸気改質、部分酸化、自己熱改質、または類似ステップを含むことができる。この合成ガスは、追加の水素ガスを生成するように切り替えられると、後続の清掃を必要とする。一実施形態では、効率を向上させるように、これらのステップのうちの1つ以上を組み合わせることができる。本発明のある実施形態では、これらの必要性を解決するのに役立つことができる、膜分離および触媒反応器等の追加の新規技術が開発されている。加えて、本発明のいくつかの実施形態はまた、CO
2等の不要な生成物を除去して、消耗した油貯留部からの強化された油回収等の二次プロセスで使用することができる、1つの流れを熱的に提供するように動作可能である。
【0058】
一実施形態では、(ガソリン、灯油、ディーゼル、石油コークス、重質残油、および同等物等の)油の代替的な炭化水素源から水素を生成するための方法は、一酸化炭素、二酸化炭素、および水素を含むガス混合物を生成するように、最初に油を酸素および/または蒸気と反応させるステップを伴う。次いで、一酸化炭素は、追加の水素およびCO
2を生成するように蒸気と反応することができる。最終的に、混合物からCO
2を除去することによって、または混合物から水素を除去することによってのいずれかで、水素およびCO
2を分離することができる。水素ガスの少なくとも一部分の除去は、有利に反応平衡を生成物側に向かって偏移させ、反応温度の低下および減少した量の蒸気の使用を可能にするであろう。随意的な清掃ステップも採用することができるが、CO汚染をごくわずかにするように、そのような汚染を制御することができる。例えば、実質的に一酸化炭素を含まない水素を作り出し、0.001%ほども低いCOの濃度を得ることができる。ある実施形態では、生成される水素の全てを除去することができる。
【0059】
本発明の実施形態に従って構築されるCMRアセンブリについて本明細書で説明されるような、反応および分離プロセスの組み合わせは、水蒸気改質およびWGS平衡反応から水素ガスを除去するステップにより、より低い温度での改質反応のより高い変換を提供する。したがって、使用される供給油組成に応じて、工学プロセスの一部としての膜反応器は、WGS反応および並行水素分離とともに、1ステップ改質および/または部分酸化を可能にすることができる。従来技術のプロセスと違って、本明細書で説明される触媒を装備したCMRアセンブリは、水素透過のための駆動力としての役割を果たす、膜にわたる水素分圧差の増加により、高圧動作から利益を享受する。例えば、透過側の圧力は、大気圧または真空下であり得る。保持側へのより高い圧力が印加されたとき、膜にわたる圧力差は、水素が膜を透過するための駆動力としての役割を果たす。圧力差が高くなるほど、より大量の水素が膜を透過する。当業者であれば、使用される膜の機械的性質が、保持側に印加することができる圧力に関する実用限界を生成するであろうことを理解するであろう。
【0060】
本発明の別の実施形態は、高純度水素への液体石油炭化水素燃料の変換のための触媒被覆シリカ膜を製造する方法を開示する。本実施形態は、水素に対して高度に透過性である活性シリカ層で覆われた外面を含む、膜管を提供するステップを含む。ロジウム、白金、ニッケル、ルテニウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、少なくとも1つの金属を含むことができる、混合金属酸化物触媒を、膜管のアルミナ骨格の細孔内に沈着させることができる。使用中に、空気、蒸気、および液体炭化水素が、膜を通して輸送され、金属部位と密接に接触している。触媒膜の活性化に続いて、供給成分が、ATRおよびWGS反応の組み合わせを通して反応し、水素を形成する。CMRアセンブリの外面上に沈着された水素透過性膜を通した生成混合物からの水素ガスの分離によって、高純度水素を生成することができる。本発明のある実施形態は、液体石油炭化水素燃料からの水素生成にいくつかの利益をもたらす。これらの改善として、約500℃〜550℃の間のはるかに低い動作温度で、ほぼ100%まで順反応に有利に働く反応平衡の推移の結果として、液体炭化水素の高変換、生成される水素の高モル収率、残留メタンの低モル収率、および低触媒非活性化を含むことができる。水素への液体石油炭化水素のこの1ステップ変換の典型的な水素純度は、約96〜99%モル濃度、代替として、少なくとも約97%モル濃度、代替として、少なくとも約98%モル濃度、または代替として、約97〜99%の間のモル濃度に及ぶことができる。
【0061】
一実施形態では、本発明の実施形態によるCMRアセンブリは、水素に対して選択的に透過性であり得、膜の透過側の水素が豊富な透過生成物流、および二酸化炭素が豊富な生成保持物を生成することができる。CMRアセンブリは、約99重量%水素を上回る、水素が豊富な透過生成物流を生成するために使用することができる。CMRアセンブリは、一実施形態では、金属をドープしたシリカである、外側水素輸送および分離層を有する、複合セラミック材料であり得る。CMRアセンブリはまた、1つ以上の内側触媒層から成ることもできる。ATRおよびWGS反応は、CMRアセンブリの内側金属層上で起こり、生成された水素は、外側金属ドープシリカ層を通して輸送および除去することができる。
【0062】
一実施形態では、金属触媒は、水素および酸化炭素(COおよびCO
2)への炭化水素燃料の変換を触媒することが可能である。一実施形態では、触媒は、ニッケル、ルテニウム、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、および/またはイリジウム等の金属のうちの1つ以上を含むことができる。
【0063】
CMRアセンブリは、管状担体を包囲し、一対の高温材料シェルの間に位置付けられる、ステンレス鋼容器を含むことができる。一実施形態では、高温材料シェルは、密閉、マニホールド、膨張支援、触媒反応のための分離領域、加圧原料の送達、膜の支持、および生成ガスの除去を提供するのに役立つことができる。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、ステンレス鋼容器は、316グレードステンレス鋼で構築された。例示的実施形態では、1.3マイクロメートルの平均細孔径および0.55の近似多孔率とともに、約10mmの外形および約8mmの内径を有する、円筒α−アルミナ管が、膜用のセラミック管担体として使用された。活性触媒部位および膜分離細孔の調製のために、以下の手順が採用された。
【0065】
最初に、α−アルミナセラミック管が、約5〜10重量%ベーマイトの範囲内の濃度を有する、ベーマイトゾル・ゲルに浸された。ドリップ乾燥によって過剰なベーマイトを除去した後、セラミック管が、室温で数時間、次いで、約110℃で最大約10時間にわたって、自然対流によって乾燥させられた。その後に続いて、アルファおよびガンマ相への元のα−アルミナ構造の2相性分布をもたらす、約500℃の温度での焼成が行われた。焼成ステップ中に、硝酸塩および他のガス状酸化物が、蒸発させられ、活性金属および支持構造の金属酸化物形態に変換された(例えば、NiO、MgO、およびAl
2O
3)。使用された物質について、好ましい焼成温度は、500℃から800℃の間であった。800℃以上の温度で、金属酸化物構造は、その触媒活性を多大に低減させた、濃密な低表面積物質に変化したことが発見された。触媒金属活性部位を管状構造に導入するために、セラミック管が、適切な濃度で、ニッケル、ルテニウム、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせ等の金属種の塩を含有する、溶液に浸された。乾燥および焼成ステップが後に行われ、セラミック管状構造の芯内の均一な金属分布をもたらした。最終ステップは、均等な厚さおよび均一な細孔径の水素透過性層を生成するように、シリカコロイドゾル・ゲルで金属装填触媒セラミック管の外面をドープすることであった。一実施形態では、最終膜にピンホールをもたらし得る大きな細孔を除去するように、このプロセスを数回繰り返すことができる。一実施形態では、管が最初に最大で約180℃の温度まで加熱され、次いで、後に、ゾルを含有する濡れた布と迅速に接触させられた、高温被覆方法によって、シリカコロイドゾルがセラミック管上に被覆された。この高温被覆方法は、ゾルをより迅速に乾燥させるのに役立ち、ゾルが細孔に深く浸透することを防止した。触媒膜は、細かく切断し、次いで、走査電子顕微鏡法(SEM)、窒素吸着、多孔度測定、および水素吸着によって特徴付けることができる。
【0066】
シリカ膜の水熱安定性を検査するために、蒸気および液体炭化水素のいくつかの異なるモル比を使用して、安定性実験が約500℃で実行された。水素に対するセラミック管の透過性選択性が、定期間隔で測定された。一般に、湿度による透過特性の非常に遅い下降が観察された。典型的には、高温で、シリカが蒸気と相互作用し、物質の緻密化を引き起こす。実験で使用された温度範囲(例えば、約500℃から約600℃の間)内で、膜は、その透過性質のいかなる大幅な変化も示さなかった。加えて、500℃から550℃の温度範囲内の液体炭化水素変換への炭化水素に対する水(蒸気)のモル比の影響は、約3:1よりも大きい、または代替として、約2:1から約3:1の間の蒸気対炭化水素モル比等の高い蒸気対炭化水素モル比で、変換が強化されたことを示した。炭化水素供給は、ATR反応ステップを通して、蒸気および空気と非常に効果的に反応した。ATR反応中に生成されたわずかなCOは、後に、WGS反応において蒸気と反応し、増加した水素収率につながった。膜による水素の原位置除去は、これらの反応の両方の変換をさらに強化した。加えて、WGS反応によるCO除去の速度の強化は、いわゆるブードワ反応によって引き起こされるコークス沈着を低減させることができる。
【0067】
図4では、CMRアセンブリ10は、ステンレス鋼容器12と、シェル14と、セラミック管20と、供給流入口30と、保持物出口40と、スイープ流入口50と、透過物出口60とを含む。液体炭化水素、蒸気、および酸素源を含む、供給流(図示せず)は、供給流入口30を通ってCMRアセンブリ10に進入する。次いで、供給流は、セラミック管20の中へ移動し、そこでATRおよびWGS反応の両方を受け、それにより、水素および二酸化炭素を形成する。セラミック管20の透過性膜を透過する水素は、スイープ流入力50を通って進入し、透過物出力60から退出する、窒素、アルゴン、蒸気、およびそれらの組み合わせ等のスイープガスによって除去される。
【0068】
図5は、セラミック管20が、2つの別個の層で管内に沈着されたATR層22およびWGS層24を有する、実施形態を示す。当業者であれば、ATR触媒およびWGS触媒も同一の層内に配置できることを認識するであろう。
図2に示される実施形態では、供給流は、セラミック管20に進入し、そこでATR層22の中に配置されたATR触媒と反応する。この反応は、供給流中の炭化水素、酸素、および蒸気を、水素ガスおよび一酸化炭素ガスに変換する。一酸化炭素は、二酸化炭素および追加の水素ガスを形成するように、追加の蒸気およびWGS層24の中に配置されたWGS触媒と反応することができる。次いで、水素ガスは、γ−アルミナ層26の細孔を通って、次いで、膜28を通って半径方向外向きに進行する。二酸化炭素ガスは、膜28を透過することができず、膜28の保持側のセラミック管20から退出する。変換されていない炭化水素および二酸化炭素は、
図4の保持物出口40を通ってセラミック管20から退出する。
【0069】
図6は、線6−6に沿った
図5に示されるようなセラミック管20の軸方向図である。
[CMRアセンブリの実験的設計:]
【0070】
100mm長さおよび10mm内径の市販アルミナ管(Noritake,Japanから入手された)が、CMRアセンブリに使用された。管は、約30%の多孔率および約0.5〜1μmの平均細孔径を有する、α−アルミナを含む。約4nmの細孔径を有するγ−アルミナ層が、管の外面上に配置された。溶液を形成するように120gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を600gエタノールの中で混合することによって、金属をドープしたゾル・ゲルが調製された。次いで、14.84g硝酸コバルト六水和物(Co(No
3)
2・6H
2O)を51.77gの30%水性H
2O
2の中で溶解させることによって、酸性溶液が合成された。後に、氷で冷却した槽の中で約3時間撹拌することによって、両方の溶液がともに積極的に混合された。次いで、1分の制御された浸漬時間を使用して、管が安定Si−Co−O溶液で外部から被覆され、2cm/分の速度で引き出された。次いで、0.7℃/分の加熱速度および冷却速度で、約600℃にて約4時間にわたって、焼結が実行された。
【0071】
アルミナ管の内部領域が、5〜10重量%の範囲内のアルミニウムの濃度を有する、ベーマイト溶液を含むゾル・ゲルで湿潤させられた。過剰な溶液が拭き取られ、管が約110℃の温度で数時間にわたって乾燥させられ、次いで、約500℃の温度で約8時間にわたって焼かれ、2相性分布を有するγ−およびα−アルミナの入口管壁をもたらした。後に、この管の内層が、クロロ白金酸および塩化ロジウム溶液(それぞれ、0.5重量%白金および2.5重量%ロジウム)に浸され、その後に続いて、γ−およびα−アルミナ細孔を覆って活性金属粒子を微細に分散するように、乾燥、焼成、および水素下還元が行われた。
【0072】
一実施形態では、クロロ白金酸および塩化ロジウム溶液の調製のために、以下の手順が使用された。TEOSが、以下に従って、金属溶液、水、およびエタノールとともに混合された。
TEOS: 0.9部分
Pt-Rh: 0.5〜2.5部分
水: 4部分
HNO
3: 0.01部分
エタノール: 10部分
その後、結果として生じる溶液が、室温で約12時間にわたって加水分解された。適切な量の硝酸の0.1M溶液を添加した後、溶液が、コロイドゾル溶液に変換するように室温で約5時間にわたって放置され、次いで、膜管の内壁を被覆するために使用された。
【0073】
約1μmの厚さを有する、シリカ金属をドープした水素分離相が、膜管の外壁上で形成された。約65%の金属分散を有する、内部高度分散Rh−Pt触媒層が、ATRおよびWGS反応が膜管の内壁の中で同時に起こるために、触媒層としての役割を果たすように2相性層(α−およびγ−アルミナを含む)上で含浸された。
CMRアセンブリの実験結果:
【0074】
上記で説明され、
図4〜6で示されるCMRアセンブリ、および市販の自己熱触媒(Sud Chemieによって提供されるFCR−71D自己熱触媒)を使用して、一式の初期実験が行われた。1グラムの市販の触媒が、500℃の温度、3バールの圧力、1:2の酸素:炭素比、3:1の蒸気:炭素比、および市販ガソリンの炭化水素供給といった、触媒選択中に固定床反応器(FBR)で試験された類似実験条件下で使用された。
図7は、膜の保持および透過側の両方の端部における全ガス生成物分布を示す。透過側の水素濃度は、92重量%ほども高いことが観察された。水素の77重量%回収が得られ、残りの生成物流は、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、および変換されていない酸素の混合物であった。約98%の市販ガソリンの全変換が、達成された。
【0075】
固定床反応器システムを使用して、およびCMRアセンブリを使用したときに生成された水素収率が比較され、
図8で見ることができる。
図8に示されるように、CMRアセンブリを利用する本発明の実施形態は、反応平衡の条件の推移により、固定床反応器と比べて明確な利点を提供する。
【0076】
図9および10では、温度が550℃まで上昇させられた。顕著に、CMR反応器は、固定床動作と比較して(約15%多い)水素のより高い選択性を有した。加えて、
図9および10を比較することによって示されるように、CMR動作は、固定床反応器と比較してメタンの生成を約40%低減させた。
【0077】
図11は、温度(500℃および550℃)の関数として、固定床動作およびCMR動作に対する生成物流中の水素、一酸化炭素、およびメタンの平均濃度の比較を示す。固定床反応器およびCMR動作の両方を比較すると、増加した量の水素が、550℃の動作温度で生成されるよりも500℃の動作温度で生成される。加えて、上昇した温度で、生成されるメタンにおける還元が非常に重要である。反応の保持側で、COの分析は、両方の動作に対してほぼ同一の値を実証する。
【0078】
シリカ膜および保持物を通した水素分離の強度が、
図7〜9に関して上記で提供されるのと同一の反応パラメータを使用して、600℃でCMRおよびFBR反応器の両方について検査された。実験は、約6.5時間にわたって行われたが、完了後、膜を通して、および黒鉛密閉を通して漏出が観察された。
図12は、温度および使用された反応器の種類の関数として比較される、水素選択性の結果の比較を表す。
図12に示されるように、水素は、500℃および550℃の温度での熱力学的平衡条件を上回る量で生成される。加えて、CMRおよび固定床反応器の両方は、上昇した温度とともに減少した水素選択性を示す。
【0079】
図13および14は、メタンおよび一酸化炭素に対する2つの反応器の選択性を比較する。CMR動作を使用するとき、メタン収率は、FBRの値と比較して有意に低減させられる。この挙動は、CMRデバイスを使用する際に、水素がシリカ膜を通して継続的に除去されており、ひいては、より多くの一酸化炭素を消費させるため、燃料の熱クラック反応およびメタン化を引き起こすブードワ反応が阻害されるという事実に起因し得る。一方で、2つの動作モード間の一酸化炭素収率は、事実上、不変のままである。そのようなものとして、CMR動作は、水素の収率を増加させ、メタンの収率を低減させ、一酸化炭素生成にごくわずかな影響を及ぼす。
【0080】
表Iは、反応温度の関数としてのガソリン変換、生成される全水素、および膜を通して回収される水素の割合の比較を提示する。上昇した反応温度は、膜からの水素回収に有利に働くが、全水素収率が減少した。
【表1】
【0081】
図15は、2種類の反応器に対する触媒非活性化のレベルを示す。
図15に示されるように、触媒表面上の炭素沈着は、FBR動作と比較して、CMR動作に対してより低い。加えて、触媒表面上の炭素沈着は、CMR動作の温度とほぼ無関係であり、温度が約500℃から約600℃まで上昇させられるにつれて、炭素沈着がほぼ100%増加したFBR動作と対照的である。
【0082】
コークス沈着選択性は、CMRおよびFBRを使用したコークス触媒の昇温酸化(TPO)分析を示す、
図16で見ることができる。結果は、CMR動作で使用された触媒からのコークス沈着が、主に触媒の担体部位を覆い、それにより、金属活性部位を清潔かつ非活性化を含まない状態にすることを示す。一方で、FBRは、担体部位上、また金属部位上でも、および金属・担体部位の近傍で沈着を示す。このコークス沈積は、FBR動作中に見出された高メタンおよび軽質不飽和炭化水素によって反映されるように、水素を生成する反応連鎖を断ち切ることができる。
【0083】
図17および18は、膜サンプルCMR−1の透過物および保持物に対するガス選択性を示す。この場合、透過物における水素純度は、約95モル%を上回った。メタン化反応が抑制され、WGS反応が強化されることの指示である、比較的少量のCOおよびメタンが生成された。
【0084】
図19および20は、膜サンプルCMR−2の透過物および保持物に対するガス選択性を示す。CMR−2は、CMR−1に類似する物理的特性を有する管であり、再現性を示すために使用された。CMR−1と同様に、CMR−2は、約90モル%の透過物における高い水素純度を示した。CMR−2はまた、メタン化反応が抑制され、WGS反応が強化されることの指示である、良好な膜安定性、ならびにCOおよびメタンの非常に低い生成も示した。
【0085】
図21および22は、膜サンプルCMR−3の透過物および保持物に対するガス選択性を示す。CMR−3は、CMR−1およびCMR−2に類似する物理的特性を有する管であるが、異なる供給業者からのものであり、再現性を示すために使用された。CMR−1およびCMR−2と同様に、CMR−3の使用は、約90モル%の透過物における高い水素純度をもたらした。CMR−3はまた、メタン化反応が抑制され、WGS反応が強化されることの指示である、良好な膜安定性、ならびにCOおよびメタンの非常に低い生成も示した。
【0086】
図23〜25は、CMR−1、CMR−2、およびCMR−3といった3つの膜のうちのそれぞれの透過物および保持物上の水素純粋濃度を示す。
図23〜25は、CMR−1が透過物と保持物との間の水素純度の最大差を有することを示し、CMR−1が、
図26および27で示される、最高水素回収率(すなわち、約82%)を伴う膜であることを示す。
【0087】
構築されるようなCMRアセンブリの種々の代替的な用途がある。例えば、触媒クラッカーオフガス、水素化脱硫ガス等の精製所ガス流から水素を除去するための水素抽出器として、膜システムを使用することができる。他の用途はまた、水素化、脱水素化、燃料電池、および同等物を含むことができる。
【0088】
水素透過選択性シリカ層を改質触媒層と一体化させることによって、液体炭化水素燃料を水素に改質するための効率的な小型CMRアセンブリが示されている。本システムは、典型的には、従来の固定床改質プロセスの場合よりも比較的低い動作温度および低い蒸気対炭素モル比で、液体炭化水素の改質において増加した性能を示す。プロセス効率は、かなりの程度まで、種々のプロセスパラメータに依存する。最適化条件下で、触媒層と一体化した水素透過性シリカ膜を採用するCMRアセンブリを通した生成物流からの継続的な水素除去の結果として、平衡変換レベルからほぼ30%の向上が達成された。本システムは、典型的には、改質またはWGS触媒のいずれかが詰め込まれている、従来の水素透過性膜反応器の有望な代替案を提供する。
【0089】
「第1」または「第2」等の用語の使用は、厳密に指標目的のためであり、動作の順序を暗示しない。
【0090】
本発明は、その具体的実施形態と併せて説明されているが、前述の説明を踏まえて、多くの代替案、修正、および変形例が、当業者に明白となるであろうことが明確である。したがって、添付の請求項の精神および広範囲内に入るものとして、全てのそのような代替案、修正、および変形例を包含することが意図される。本発明は、開示される要素を好適に備え、それらから成り、または本質的に成ってもよく、かつ開示されていない要素がない場合に実践されてもよい。