(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側ハウジングは、当該外側ハウジングのコネクタ後側の面に形成されていると共に前記内側ハウジングが収容されるハウジング収容部と繋がるハウジング組込口と、前記ハウジング収容部に設けられた係止部と、を有しており、
前記内側ハウジングは、当該内側ハウジングが前記ハウジング組込口から前記ハウジング収容部に向けて押し込まれる際に弾性変形すると共に、前記係止部に到達すると弾性変形が解除されて前記係止部に係止される被係止部を有しており、
前記被係止部が前記係止部に係止されることで、前記内側ハウジングのコネクタ後方向の移動範囲が制限される、
請求項1に記載のコネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなコネクタには、以下の問題点がある。
すなわち、ハウジングが相手側ハウジングに嵌合するものであるため、ハウジングが相手側ハウジングに対してガタつくことがある。その場合、相手側ハウジングに保持された接続対象物と、ハウジングに保持された端子との接点で摺動(以下、「接点摺動」)が起こるおそれがある。
また、端子の他端に接続された電線(ハーネス)は可撓性を有するため、電線がバタつくことがあり、その場合、電線のバタつきの影響が端子に伝わって接点摺動が起こるおそれがある。
接点摺動が起こると、例えば、端子や接続対象物のめっきの剥がれが懸念される。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、相手側ハウジングとのガタつきや電線のバタつきによる接点摺動を抑制することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様に係るコネクタは、接続対象物を保持する相手側ハウジングに嵌合する外側ハウジングと、前記外側ハウジングに対して所定の可動域でコネクタ前後方向に移動可能となるように、前記外側ハウジングに収容される内側ハウジングと、前記外側ハウジングに収容される端子と、を備えるコネクタであって、前記端子は、先端部と、基端部と、前記先端部と前記基端部との間に位置するバネ部と、を有しており、前記先端部は、コネクタ前後方向に挿抜される前記接続対象物と接触する接触部と、前記内側ハウジングに保持される先端側被保持部と、を有しており、前記基端部は、電線と接続する電線接続部と、前記外側ハウジングに保持される基端側被保持部と、を有している。
【0008】
第一の態様に係るコネクタでは、端子が接続対象物と導通接続した状態で、外側ハウジングが相手側ハウジングに嵌合した状態となる。そのため、相手側ハウジングに対して外側ハウジングがコネクタ前後方向にがたつく可能性がある。
ここで、第一の態様に係るコネクタでは、端子の先端部が、コネクタ前後方向に挿抜される接続対象物と接触する接触部と、内側ハウジングに保持される先端側被保持部と、を有している。つまり、端子の先端部は、接続対象物と接触すると共に内側ハウジングに保持される。そして、先端部を保持する内側ハウジングが、外側ハウジングに対して所定の可動域でコネクタ前後方向に移動可能となる。
このため、外側ハウジングが相手側ハウジングに対してコネクタ前後方向にガタついた場合でも、内側ハウジングが、外側ハウジングに対してコネクタ前後方向に移動することで、接続対象物と接触部との接点摺動を抑制することができる。
【0009】
また、端子の基端部は、電線と接続する電線接続部と、外側ハウジングに保持される基端側被保持部と、を有している。つまり、端子の基端部は、電線と接続すると共に外側ハウジングに保持される。そのため、電線のバタつきによる影響が端子の基端部に伝わる。
ここで、第一の態様に係るコネクタでは、端子が、先端部と基端部との間に位置するバネ部を有している。
このため、電線がバタつき、端子を押し込んだりひっぱったりしても、基端部と先端部との間に位置するバネ部が弾性変形することで、電線のバタつきから端子の先端部が影響を受けることを抑制することができる。よって、電線のバタつきによる接点摺動を抑制することができる。
【0010】
第二の態様に係るコネクタは、第一の態様に係るコネクタにおいて、前記外側ハウジングは、当該外側ハウジングのコネクタ後側の面に形成されていると共に前記内側ハウジングが収容されるハウジング収容部と繋がるハウジング組込口と、前記ハウジング収容部に設けられた係止部と、を有しており、前記内側ハウジングは、当該内側ハウジングが前記ハウジング組込口から前記ハウジング収容部に向けて押し込まれる際に弾性変形すると共に、前記係止部に到達すると弾性変形が解除されて前記係止部に係止される被係止部を有しており、前記被係止部が前記係止部に係止されることで、前記内側ハウジングのコネクタ後方向の移動範囲が制限される。
【0011】
第二の態様に係るコネクタでは、コネクタの組立時、外側ハウジングのコネクタ後側の面に形成されたハウジング組込口からハウジング収容部に向けて内側ハウジングを押し込むことで、内側ハウジングを外側ハウジングに収容させることができる。
この際、内側ハウジングの被係止部は、一旦弾性変形し、ハウジング収容部に形成された係止部に到達すると、弾性変形が解消されて係止部に係止される。内側ハウジングの被係止部が外側ハウジングの係止部に係止されることで、内側ハウジングのコネクタ後方向の移動範囲が制限される(つまり、内側ハウジングが外側ハウジングから抜け止めされる)ようになっている。
【0012】
第三の態様に係るコネクタは、第一又は第二の態様に係るコネクタにおいて、前記基端側被保持部は、前記外側ハウジングに圧入されることで前記外側ハウジングに保持され、前記基端側被保持部は、当該基端側被保持部を圧入する際にコネクタ後方向からコネクタ前方向へ向けて押し込むための圧入肩部を有しており、前記基端側被保持部は、前記電線接続部と前記バネ部との間に位置している。
【0013】
第三の態様に係るコネクタでは、基端側被保持部は、外側ハウジングに圧入されることで外側ハウジングに保持される。ここで、基端側被保持部を外側ハウジングに圧入するためには、治具等によって端子を押し込む必要がある。
ここで、端子の電線接続部を押し込むことで圧入することが考えられる。しかし、電線接続部では治具等で押し込む際に押す部分(圧入肩部)が小さくなりやすく、また、電線接続部は電線にかしめた部分となるため平坦でないことがある。そのため、正確に圧入することが困難である。また、圧入により、かしめた部分が変形、損傷するおそれもある。
そこで、第三の態様に係るコネクタでは、電線接続部とバネ部との間に基端側被保持部が位置しており、この基端側被保持部が、当該基端側被保持部を圧入する際にコネクタ後方向からコネクタ前方向へ向けて押し込むための圧入肩部を有している。このため、基端側被保持部を適切に圧入することができる。
【0014】
第四の態様に係るコネクタは、第三の態様に係るコネクタにおいて、前記外側ハウジングは、前記基端部を収容する基端収容部の底面を貫通し、前記基端収容部と前記外側ハウジングの外部空間とを連通する治具挿入孔を有している。
【0015】
第四の態様に係るコネクタでは、基端側被保持部の外側ハウジングに対する圧入が容易である。
すなわち、第三の態様に係るコネクタでは、電線接続部とバネ部との間に基端側被保持部が位置しているので、基端側被保持部の圧入肩部を電線側から押し込もうとしても、電線接続部が邪魔になりやすい。そこで、第四の態様に係るコネクタでは、外側ハウジングが、基端部を収容する基端収容部の底面を貫通し、基端収容部と外側ハウジングの外部空間とを連通する治具挿入孔を有している。このため、治具挿入孔から治具等を挿入することで、電線接続部に邪魔をされずに、基端側被保持部の圧入肩部を押し込むことができる。
【0016】
第五の態様に係るコネクタは、第一〜第四の何れかの態様に係るコネクタにおいて、前記接触部の挿抜軸は、前記電線接続部の電線接続軸と略平行で、かつ、コネクタ前後方向に直交する方向の位置がずれている。
【0017】
第五の態様に係るコネクタは、接触部の挿抜軸が、電線接続部の電線接続軸と略平行で、かつ、コネクタ前後方向(つまり挿抜軸)に直交する方向の位置がずれているため、コネクタの前後寸法の拡大を抑制しつつバネ部の変形のしやすさを確保することができる。
【0018】
第六の態様に係るコネクタは、第五の態様に係るコネクタにおいて、前記バネ部は、前記接続対象物の挿入方向であるコネクタ後方向へ折り返された折返し部を含んで構成されている。
【0019】
第六の態様に係るコネクタでは、挿抜軸と電線接続軸との位置がずれていることに加えて、基端部から先端部へと延びるバネ部が、コネクタ後方向へ折り返された折返し部を含んで構成されている。このため、バネ部の変形しやすさをより一層確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明は、相手側ハウジングとのガタつきや電線のバタつきによる接点摺動を抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るコネクタ10について説明する。
【0023】
<コネクタ10>
図1に示すように、本実施形態のコネクタ10は、外側ハウジング70と、内側ハウジング60と、複数(6つ)の端子20と、を備える。内側ハウジング60に複数の端子20を組付け(
図2参照)、その後、端子20及び内側ハウジング60を外側ハウジング70に組付けることで、コネクタ10が組み立てられる(
図3参照)。
【0024】
<端子20>
以下、端子20について説明する。複数の端子20は、互いに同一の構成である。
図4は、複数の端子20のうちの1つの端子20を示す斜視図である。
図4には、電線80と接続した状態の端子20が示されている。
【0025】
以下の端子20についての説明では、
図4に示される矢印Xを端子前方向、矢印Yを端子幅方向一方側(左方向)、矢印Zを端子上方向として説明する。また、特記なく前後、上下、幅(左右)という語を用いる場合は、端子前後方向の前後、端子上下方向の上下、端子幅(左右)方向の幅(左右)を示すものとする。なお、コネクタ10が組み立てられた状態において、端子20の前後、左右、上下方向は、コネクタ10の前後、左右、上下方向と略一致する。
【0026】
端子20は、例えば、板材が打ち抜き加工された後、曲げ加工されることで形成される。端子20の材質は、例えば、銅合金などの導電性を有する材質である。
【0027】
端子20は、その一端から他端へ向けて、基端部30とバネ部40と先端部50とをこの順に有している。
【0028】
(基端部30)
基端部30は、端子20の後端20Bから前方へ向けて直線状に延びている。基端部30は、全体として幅方向両側が上方(板厚方向内面側)へ曲げられており、前後方向に直交する断面形状が上方に開放された略U字状または略C字状とされている。基端部30は、その一端側から他端側へ向けて、電線接続部31と基端側被保持部32とをこの順に有している。
【0029】
電線接続部31は、電線80と接続する部分である。電線接続部31は、電線80の被覆84に圧着する被覆圧着部31Aと、電線80の芯線82に圧着する芯線圧着部31Bと、を有している。
【0030】
また、電線接続部31は、芯線圧着部31Bの他端側に連続して形成された補強部31Cを有している。補強部31Cは、上方に向けて開放された断面U字形状となっており、電線接続部31を補強している。
【0031】
基端側被保持部32は、外側ハウジング70に保持される部分である。基端側被保持部32は、板厚方向を上下方向に向けた平板状とされており、幅方向両側に係止突起32Kが形成されている。
【0032】
電線接続部31と基端側被保持部32とを連結部33が前後方向に連結している。連結部33は、板厚方向を上下方向に向けており、前後方向に直線状に延びている。連結部33は、その一端から他端まで同一の幅寸法となっており、その幅寸法は、電線接続部31や基端側被保持部32の幅寸法よりも小さく、具体的には3分の1以下の寸法である。
【0033】
連結部33の他端(前端)は、基端側被保持部32の後端の幅方向中央部分に繋がっている。これにより、基端側被保持部32の後端には、左右一対の圧入肩部32Rが形成されている。左右一対の圧入肩部32Rは、連結部33を挟んで左右に形成されている。圧入肩部32Rは端子後方向を向いた面であり、圧入肩部32Rに治具等を当接させることで、基端側被保持部32を前方へ向けて適切に押し込むことができるようになっている。
【0034】
(バネ部40)
バネ部40は、他の部分と比較して容易に弾性変形するように構成されている。バネ部40が弾性変形することで、先端部50が基端部30に対して前後左右上下方向に相対移動できる。
【0035】
本実施形態のバネ部40は、一端側から他端側へ向けて、第一直線部41、傾斜部42、第一曲部43、第二直線部44及び第二曲部45をこの順に有している。バネ部40はその一端から他端まで同一の幅寸法であり、その幅寸法は、基端側被保持部32の幅寸法よりも小さく、具体的には3分の1以下の寸法である。
【0036】
第一直線部41は、基端側被保持部32の前端の幅方向中央部分から前方へ延出している。第一直線部41は、板厚方向を上下方向に向けており、一端から他端へ向けて前方向へ直線状に延びている。第一直線部41の延在方向は、端子前後方向と平行である。第一直線部41の他端側は、板厚方向内面側へ若干屈曲された屈曲部を介して、傾斜部42に繋がっている。
【0037】
傾斜部42は、板厚方向を略上下方向に向けており、一端から他端へ向けて前方向に対して若干上方へ傾いた方向(前方かつ上方の斜め方向)に直線状に延びている。傾斜部42の延在方向と端子前後方向との成す角度は、45度未満の角度とされ、本実施形態では略20度の角度とされている。傾斜部42の延在方向他端側は、第一曲部43に繋がっている。
【0038】
第一曲部43は、板厚方向内面側に曲げられており、前方へ凸の湾曲した形状となっている。第一曲部43は、その一端から他端までで延在方向を略160度方向転換している。第一曲部43の延在方向他端側は、第二直線部44に繋がっている。
【0039】
第二直線部44は、板厚方向を上下方向に向けており、一端から他端へ向けて後方向へ直線状に延びている。第二直線部44の延在方向は、端子前後方向と平行である。第二直線部44の延在方向他端側は、第二曲部45に繋がっている。
【0040】
第二曲部45は、板厚方向外面側に曲げられており、後方へ凸の形状となっている。具体的には、第二曲部45は、略90度曲げられた屈曲部45Cを2つ含んで構成されている。第二曲部45は、その一端から他端までで延在方向を略180度方向転換している。第二曲部45の延在方向他端側は、先端部50に繋がっている。
【0041】
(先端部50)
先端部50は、先端側被保持部51と、接触部52と、を有している。先端側被保持部51は、内側ハウジング60に保持される部分である。接触部52は、接続対象物94(
図8参照)と接触する部分である。
【0042】
先端側被保持部51は、前後方向に直交する断面形状が、左側に開放された略U字形状(略コの字形状)になっている。具体的には、先端側被保持部51は、下板部51Bと、下板部51Bの右端から上方へ延びる右板部51Rと、右板部51Rの上端から左側へ延びる上板部51Tと、から構成されている。このうち、下板部51Bの後端の幅方向中央部分にバネ部40が繋がっている。先端側被保持部51の幅寸法は、バネ部40の幅寸法よりも大きく、具体的には3倍以上の寸法である。
【0043】
先端側被保持部51の下板部51Bの左端及び上板部51Tの左端には、それぞれ、係止突起51Kが形成されている。
【0044】
接触部52は、一対の接触片部52Aを有している。一対の接触片部52Aは、それぞれ、先端側被保持部51の上板部51T及び下板部51Bの前端における幅方向中央から前方へ向けて延出している。一対の接触片部52Aが接続対象物94に対して上下方向から接触することで、端子20と接続対象物94とが導通接続する。
【0045】
<内側ハウジング60>
次に、内側ハウジング60について説明する。
【0046】
以下の内側ハウジング60についての説明では、矢印Xを内側ハウジング前方向、矢印Yを内側ハウジング幅方向一方側(左方向)、矢印Zを内側ハウジング上方向として説明する。また、特記なく前後、上下、幅(左右)という語を用いる場合は、内側ハウジング前後方向の前後、内側ハウジング上下方向の上下、内側ハウジング幅(左右)方向の幅(左右)を示すものとする。なお、コネクタ10が組み立てられた状態において、内側ハウジング60の前後、左右、上下方向は、コネクタ10の前後、左右、上下方向と略一致する。
【0047】
図1や
図2に示すように、内側ハウジング60は、端子20の先端部50が収容されると共に保持される先端収容部62を有する。先端収容部62は、端子20の数に応じて複数(6つ)設けられ、内側ハウジング60の幅方向に並んで形成されている。複数の先端収容部62は、互いに同一の構造である。
【0048】
図1に示すように、先端収容部62は、内側ハウジング60の後面60Rで後方に向けて開口した空間である。この開口部分を先端組込口という。端子20の先端部50を先端組込口から先端収容部62に差し込むことで、端子20の先端部50を内側ハウジング60の先端収容部62に収容させると共に保持させることができる(
図2参照)。
【0049】
図5は、内側ハウジング60を後方から見た拡大図である。
図6は、
図5の6−6線断面図である。なお、複数の先端収容部62のうち最も左側の先端収容部62に対応する端子20のみを省略している。
【0050】
図5や
図6に示すように、先端収容部62は、略直方体形状の空間であり、上壁62T、下壁62B、左壁62L、右壁62R及び前壁62Fを有する。
【0051】
前壁62Fには、接続対象物94が挿入される接続対象物挿入孔63が形成されている。接続対象物挿入孔63は、前壁62Fを前後方向に貫通しており、前後方向に直交する断面形状が矩形状である。
図7に示すように、接続対象物挿入孔63を前部と後部とに分けた場合の前部は、前方へ向かうに従い次第に拡大されたテーパ部63Fとなっている。
【0052】
図5や
図6に示すように、先端収容部62の左壁62Lには、右方向へ向けて突出した突出部62LDが形成されている。突出部62LDは、左壁62Lのうち上端部と下端部を除いた部分から右方向へ突出した略直方体形状の部分である。
図6に示すように、突出部62LDは、先端組込口(先端収容部62の後端)から前壁62Fまで、先端収容部62の前後方向全体に亘って形成されている。
図5に示すように、先端収容部62に端子20の先端部50が保持された状態では、突出部62LDの上側に、端子20の先端側被保持部51の上板部51Tの左端が配置され、突出部62LDの下側に、端子20の先端側被保持部51の下板部51Bの左端が配置される。
【0053】
図6に示すように、先端収容部62の右壁62Rには段差部64が形成されており、先端収容部62の幅寸法が段差部64を挟んだ前後で変化している。これにより、先端収容部62のおける段差部64よりも前側(前部62A)では幅寸法が小さくなっており、段差部64よりも後側(後部62B)では幅寸法が大きくなっている。
更に詳細には、段差部64は、先端収容部62の後部62Bの右壁62Rに対して垂直に接続した垂直面64Aと、先端収容部62の前部62Aの右壁62Rに斜めに接続した角面64Bと、から構成されている。角面64Bは、先端収容部62の前部62Aの右壁62Rと、垂直面64Aとの間を面取りしたような斜めの面となっている。
【0054】
また、先端収容部62に端子20の先端部50が収容された状態では、先端収容部62の後部62Bの右壁62Rに、先端側被保持部51の右板部51Rが接触している。他方、先端収容部62の後部62Bの左壁62Lに、先端側被保持部51の上板部51T及び下板部51Bの係止突起51Kが食い込んでいる。これにより、先端側被保持部51が内側ハウジング60に圧入されて保持されている。
【0055】
図1や
図5に示すように、内側ハウジング60の外形状は、幅方向に長い略直方体形状であるが、詳細には、内側ハウジング60の下部は、それ以外の部分(下部よりも上側部分)に対して幅寸法が大きく形成されている。換言すると、内側ハウジング60は、下部の幅広部60Bと、下部以外の一般幅部60Aと、から構成されている。
【0056】
また、内側ハウジング60は、後述する外側ハウジング70の係止部75(
図7、8参照)に係止される被係止部65を有している。
【0057】
本実施形態の被係止部65は、内側ハウジング60の上面60U側であって幅方向中央部分に形成されている。具体的には、
図2に示すように、内側ハウジング60の上面60Uには、その幅方向中央位置において下方へ窪んだ窪み部66が形成されている。そして、窪み部66の前後方向中間部分から被係止部65が突出している。
図7に示すように、被係止部65は、後方へ延びるバネ片部65Aと、バネ片部65Aの先端(後端)に形成された本体部65Bと、を備えている。本体部65Bは、バネ片部65Aや内側ハウジング60の上面60Uに対して上方へ突出するように形成されている。本体部65Bに下方向の荷重がかかることで、バネ片部65Aが弾性変形し、本体部65Bが下方向へ変位するようになっている。
【0058】
<外側ハウジング70>
次に、外側ハウジング70について説明する。
【0059】
以下の外側ハウジング70についての説明では、矢印Xを外側ハウジング前方向、矢印Yを外側ハウジング幅方向一方側(左方向)、矢印Zを外側ハウジング上方向として説明する。また、特記なく前後、上下、幅(左右)という語を用いる場合は、外側ハウジング前後方向の前後、外側ハウジング上下方向の上下、外側ハウジング幅(左右)方向の幅(左右)を示すものとする。なお、外側ハウジング70の前後、左右、上下方向は、コネクタ10の前後、左右、上下方向と一致する。
【0060】
図7や
図9に示すように、外側ハウジング70は、後方へ向けて開口した空間である収容部71を有している。外側ハウジング70の後面70Rの開口部分から収容部71の奥へ向けて、複数の端子20が組みつけられた内側ハウジング60を差し込むことで、コネクタ10が組み立てられる。
【0061】
図9に示すように、収容部71は、幅方向に繋がった収容上部72と、複数(6つ)の空間に区画された収容下部73と、から構成されている。
【0062】
(収容上部72)
図8や
図10に示すように、収容上部72には、内側ハウジング60が収容される。具体的には、
図7や
図8に示すように、内側ハウジング60は、収容上部72の後端のハウジング組込口72RRから差し込まれ、収容上部72の後部72Rを通過して、収容上部72の前部72Fに収容される。つまり、収容上部72の前部72Fが、内側ハウジング60が収容されるハウジング収容部72Fとなる。また、収容上部72の後部72Rが、内側ハウジング60が通過するハウジング通過部72Rとなる。
【0063】
図9や
図10に示すように、収容上部72を外側ハウジング70の後側から見た場合、その形状は、内側ハウジング60を後側から見た形状と略相似する形状となっている。すなわち、収容上部72は、内側ハウジング60の一般幅部60Aが通過すると共に収容される一般幅部72Aと、内側ハウジング60の幅広部60Bが通過すると共に収容される幅広部72Bと、から構成されている。
【0064】
収容上部72は、ハウジング組込口72RRの形状を保ちながら、前方に向かって形成されている。すなわち、収容上部72は、その前部であるハウジング収容部72F、その後部であるハウジング通過部72R、その後端であるハウジング組込口72RRのすべてにおいて略同一の断面形状(前後方向に直交する断面形状)となっている。但し、ハウジング組込口72RRには、内側ハウジング60を誘い込むためのテーパ面(面取りした形状の面)が形成されている。
【0065】
収容部71の前端には前壁71Fが形成されている。前壁71Fには、接続対象物94に対応する位置において、複数(6つ)の接続対象物挿入孔74が形成されている。接続対象物挿入孔74は、収容部71の前壁71Fを前後方向に貫通している。
図7に示すように、接続対象物挿入孔74を前部と後部とに分けた場合の前部は、前方に向かって次第に拡大するテーパ部74Fとなっている。
【0066】
図10に示すように、収容上部72の上下寸法と幅寸法は、共に、内側ハウジング60の外形状の寸法に対して若干大きく形成されている。これにより、ハウジング収容部72Fの上下寸法と幅寸法も、内側ハウジング60の外形状の寸法に対して若干大きくなっている。このため、内側ハウジング60は、外側ハウジング70に対して所定の可動域で上下方向及び幅方向に移動可能となっている。
【0067】
(係止部75)
また、
図7、8に示すように、収容上部72の前部(ハウジング収容部72F)には、係止部75が形成されている。係止部75は、ハウジング収容部72Fの上壁71U(の幅方向中央位置)を上下方向に貫通する孔である。
内側ハウジング60が外側ハウジング70に収容された状態では、係止部75内に内側ハウジング60の被係止部65の本体部65Bが配置される。このため、内側ハウジング60が後方へ移動すると、被係止部65の本体部65Bが係止部75に当接する。つまり、被係止部65が係止部75に係止されており、内側ハウジング60の後方向の移動範囲が制限されている。つまり、内側ハウジング60が外側ハウジング70から抜け止めされている。
【0068】
他方、内側ハウジング60が前方へ移動すると、内側ハウジング60が収容部71の前壁71Fに当接する。これにより、内側ハウジング60の前方向の移動範囲が制限されている。
【0069】
その結果、内側ハウジング60は、外側ハウジング70に対して所定の可動域で前後方向に移動可能となっている。
【0070】
図8、10に示すように、接続対象物94と接続されていない自由な状態(以下、自由状態という。)では、内側ハウジング60は、端子20によって、収容上部72内に浮遊させられた状態となる。換言すると、自由状態では、内側ハウジング60は、可動域における中間位置に位置し、上下左右前後の何れの方向にも移動可能となっている。
【0071】
(収容下部73)
図9に示すように、収容下部73は、幅方向に並んで形成された複数(6つ)の端子収容部73(収容下部73と同じ参照符号を用いる。)から構成されている。複数の端子収容部73は、互いに区画されており、互いに同一の構造である。
【0072】
端子収容部73は、上方の収容上部72側に開放されると共に前後方向に延びる空間であり、底壁73Uと左右一対の側壁73Sとを有する。
【0073】
図8に示すように、前後方向に延びる端子収容部73には、後方から前方へ向けて、電線80、端子20の電線接続部31、基端側被保持部32、バネ部40がこの順に配置される。
【0074】
端子収容部73の後部(電線配置部73C)には、電線80と電線接続部31が配置される。
図11は、
図8の11−11線断面図である。
図11に示すように、電線配置部73Cの上端部における幅寸法W1は、端子20の電線接続部31の幅寸法よりも小さく形成されており、電線接続部31は、電線配置部73Cの上端部よりも下側の部分に配置されるようになっている。また、電線配置部73Cの上端部の幅寸法W1は、バネ部40の幅寸法よりも大きく形成されている。これにより、電線配置部73Cの上端部は、バネ部40(の第二曲部45)が前後方向に通過可能になっている。
また、電線配置部73Cの下端部における幅寸法W2は、上下方向中間部の幅寸法W3よりも拡大されており、その幅寸法W2は、基端側被保持部32の係止突起32Kも含めた幅寸法よりも大きくなっている。これにより、電線配置部73Cの下端部は、電線接続部31よりも大きな幅寸法の基端側被保持部32が前後方向に通過可能になっている。
【0075】
端子収容部73の前後方向中間部(端子保持部73B)には、端子20の基端側被保持部32が保持される。
図12は、
図8の12−12線断面図である。
図12に示すように、端子保持部73Bの下端部の幅寸法W4は、電線配置部73Cの下端部の幅寸法W2(
図11参照)よりも縮小されており、その幅寸法W4は、基端側被保持部32の係止突起32Kも含めた幅寸法よりも小さくなっている。これにより、基端側被保持部32を端子保持部73Bの下端部に押し込むことで、端子保持部73Bの下端部における左右の側壁73Sに係止突起32Kが食い込むようになっている。このようにして、基端側被保持部32が外側ハウジング70に圧入される。
電線配置部73Cの下端部より上側の幅寸法W5は、バネ部40が前後方向に通過可能な寸法になっており、具体的には、電線配置部73Cの上端部の幅寸法W1と同一である。
【0076】
端子収容部73の前部(バネ配置部73A)には、端子20のバネ部40が配置される。バネ配置部73Aは、下端から上端まで、同一の幅寸法に形成されており、その幅寸法は、電線配置部73Cの下端部以外の幅寸法W5や電線配置部73Cの上端部の幅寸法W1と同一である。
【0077】
(治具挿入孔76)
図8に示すように、収容下部73の底壁73Uには、底壁73Uを上下方向に貫通する治具挿入孔76が形成されている。治具挿入孔76は、端子保持部73Bのすぐ後側かつ電線配置部73Cのすぐ前側に形成されている。
図13に示すように、端子保持部73Bに対して、端子20の基端側被保持部32をある程度圧入した状態で治具挿入孔76から治具を挿入することで、治具によって基端側被保持部32の圧入肩部32Rを押し込むことができるようになっている。
【0078】
(相手側ハウジング92との嵌合)
図14、15に示すように、外側ハウジング70は、接続対象物94を保持する相手側ハウジング92に嵌合するように構成されている。具体的には、外側ハウジング70の上面側に被係止部77が形成されており、相手側ハウジング92の嵌合口95に対して外側ハウジング70を前面側から差し込むことで、
図15に示すように、相手側ハウジング92に外側ハウジング70が嵌合する。これにより、複数の接続対象物94と複数の端子20とが導通接続する。
【0079】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0080】
本実施形態に係るコネクタ10では、端子20が接続対象物94と導通接続した状態で、
図15に示すように、外側ハウジング70が相手側ハウジング92と嵌合した状態となる。そのため、相手側ハウジング92に対して外側ハウジング70ががたつく可能性がある。
ここで、本実施形態に係るコネクタ10では、
図4に示すように、端子20の先端部50が、コネクタ前後方向に挿抜される接続対象物94と接触する接触部52と、内側ハウジング60に保持される先端側被保持部51と、を有している。つまり、端子20の先端部50は、接続対象物94と接触すると共に内側ハウジング60に保持される。そして、
図8や
図10に示すように、先端部50を保持する内側ハウジング60が、外側ハウジング70に対して所定の可動域でコネクタ前後、左右、上下方向に移動可能となる。
このため、外側ハウジング70が相手側ハウジング92に対してガタついた場合でも、内側ハウジング60が、外側ハウジング70に対して移動することで、接続対象物94と接触部52との接点摺動を抑制することができる。
【0081】
また、端子20の基端部30は、電線80と接続する電線接続部31と、外側ハウジング70に保持される基端側被保持部32と、を有している。つまり、端子20の基端部30は、電線80と接続すると共に外側ハウジング70に保持される。そのため、電線80のバタつきによる影響が端子20の基端部30に伝わる。
ここで、本実施形態に係るコネクタ10では、端子20が、先端部50と基端部30との間に位置するバネ部40を有している。
このため、電線80がバタつき、端子20を押し込んだりひっぱったりしても、基端部30と先端部50との間に位置するバネ部40が弾性変形することで、電線80のバタつきから端子20の先端部50が影響を受けることを抑制することができる。よって、電線80のバタつきによる接点摺動を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、
図7、8に示すように、コネクタ10の組立時、外側ハウジング70のコネクタ後側の面(後面70R)に形成されたハウジング組込口72RRからハウジング収容部72Fに向けて内側ハウジング60を押し込むことで、内側ハウジング60を外側ハウジング70に収容させることができる。
この際、内側ハウジング60の被係止部65は、一旦は弾性変形し(
図13参照)、ハウジング収容部72Fに形成された係止部75に到達すると、弾性変形が解消されて係止部75に係止される。内側ハウジング60の被係止部65が外側ハウジング70の係止部75に係止されることで、内側ハウジング60のコネクタ後方向の移動範囲が制限される(つまり、内側ハウジング60が外側ハウジング70から抜け止めされる)ようになっている。
【0083】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、基端側被保持部32は、外側ハウジング70に圧入されることで外側ハウジング70に保持される。ここで、基端側被保持部32を外側ハウジング70に圧入するためには、治具等によって端子20を押し込む必要がある。
ここで、端子20の電線接続部31を押し込むことで圧入することが考えられる。しかし、電線接続部31では治具等で押し込む際に押す部分(圧入肩部)が小さくなりやすく、また、電線接続部31は電線80にかしめた部分となるため平坦でないことがある。そのため、正確に圧入することが困難である。また、圧入により、かしめた部分が変形、損傷するおそれもある。
そこで、本実施形態に係るコネクタ10では、電線接続部31とバネ部40との間に基端側被保持部32が位置しており、この基端側被保持部32が、当該基端側被保持部32を圧入する際にコネクタ後方向からコネクタ前方向へ向けて押し込むための圧入肩部32Rを有している。このため、基端側被保持部32を適切に圧入することができる。
【0084】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、基端側被保持部32の外側ハウジング70に対する圧入が容易である。
すなわち、本実施形態に係るコネクタ10では、電線接続部31とバネ部40との間に基端側被保持部32が位置しているので、基端側被保持部32の圧入肩部32Rを電線80側から押し込もうとしても、電線接続部31が邪魔になりやすい。そこで、本実施形態に係るコネクタ10では、外側ハウジング70が、基端部30を収容する基端収容部(電線配置部73Cや端子保持部73Bを含む部分)の底面(底壁73U)を貫通し、基端収容部と外側ハウジング70の外部空間とを連通する治具挿入孔76を有している。このため、治具挿入孔76から治具等を挿入することで、電線接続部31に邪魔をされずに、基端側被保持部32の圧入肩部32Rを押し込むことができる。
【0085】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、
図8に示すように、接触部52の挿抜軸AX1が、電線接続部31の電線接続軸AX2と略平行で、かつ、コネクタ前後方向に直交する方向の位置がずれているため、コネクタ10の前後寸法の拡大を抑制しつつバネ部40の変形のしやすさを確保することができる。さらに、挿抜軸AX1と電線接続軸AX2とがずれた方向が、複数の端子20の列間方向(コネクタ幅方向)に直交する方向(コネクタ上下方向)であるため、コネクタ10の幅寸法の拡大も抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、挿抜軸AX1と電線接続軸AX2との位置がずれていることに加えて、基端部30から先端部50へと延びるバネ部40が、コネクタ後方向へ折り返された折返し部(第一曲部43、第二直線部44、第二曲部45)を含んで構成されている。このため、バネ部40の変形しやすさをより一層確保することができる。
【0087】
また、本実施形態では、「折返し部」のコネクタ前方向の端部(第一曲部43)が、端子20の接触部52における接点P(
図8参照)と同程度までコネクタ前側に延ばされているため、バネ部40の変形をより一層確保しやすい。さらに、端子20の「折返し部」のコネクタ後方向の端部(第二曲部45)が、内側ハウジング60よりも後側に配置される。このため、バネ部40の全長を更に長く設定できるので、バネ部40の変形しやすさを更に確保しやすい。
【0088】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、端子20の基端側被保持部32が外側ハウジング70に圧入されることで保持される例を説明したが、本発明はこれに限定されず、その他の保持方法を用いることもできる。また、端子20の先端側被保持部51が内側ハウジング60に圧入されることで保持される例を説明したが、本発明はこれに限定されず、その他の保持方法を用いることもできる。
【0089】
また、上記実施形態では、内側ハウジング60が外側ハウジング70に収容された状態で、内側ハウジング60が、外側ハウジング70に対して、コネクタ前後、左右、上下の方向に所定の可動域で移動可能とされる例を説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。内側ハウジングが外側ハウジングに対して少なくともコネクタ前後方向に移動可能であればよく、コネクタ上下方向やコネクタ左右方向では実質的に移動不能に構成されてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、挿抜軸AX1と電線接続軸AX2とのコネクタ上下方向の位置がずれている例を説明したが、本発明はこれに限定されず、コネクタ幅方向(複数の端子の列間方向)に位置がずれていてもよい。また、例えば、挿抜軸AX1と電線接続軸AX2とが実質的に一直線上に配置されていてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、端子保持部73Bに端子20の基端側被保持部32をある程度圧入した状態で治具挿入孔76から治具を挿入することで、治具によって基端側被保持部32の圧入肩部32Rを押し込むことができる例を説明した。しかし、例えば、治具挿入孔76を実施形態のものよりも後方へ向けて大きく形成することで、端子保持部73Bが全く圧入されていない状態でも、治具挿入孔76に挿入した治具により、基端側被保持部32の圧入肩部32Rを押し込むことができるように構成してもよい。
【解決手段】コネクタ10は、外側ハウジング70と、外側ハウジング70に対して所定の可動域でコネクタ前後方向に移動可能となるように、外側ハウジング70に収容される内側ハウジング60と、端子20と、を備える。端子20は、先端部50と、基端部30と、先端部50と基端部30との間に位置するバネ部40と、を有している。先端部50は、接続対象物94と接触する接触部52と、内側ハウジング60に保持される先端側被保持部51と、を有しており、基端部30は、電線接続部31と、外側ハウジング70に保持される基端側被保持部32と、を有している。