特許第6317943号(P6317943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6317943
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】パイプインパイプ工法および管内足場
(51)【国際特許分類】
   E03F 3/06 20060101AFI20180416BHJP
   E04G 3/24 20060101ALI20180416BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20180416BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   E03F3/06
   E04G3/24 301Z
   F16L1/00 L
   E03B7/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-25426(P2014-25426)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-151735(P2015-151735A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000182937
【氏名又は名称】日鉄住金パイプライン&エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】柿木 健志
(72)【発明者】
【氏名】松本 博文
(72)【発明者】
【氏名】吉村 朗
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−087557(JP,U)
【文献】 特開2006−161966(JP,A)
【文献】 特開2004−232673(JP,A)
【文献】 米国特許第04095670(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 3/06
E03B 7/00
E04G 3/24
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に伸びて埋設された既設横管と該既設横管に接続されるとともに縦方向に伸びて埋設された既設縦管とを備える既設埋設管の内部に新設管材料を挿入して新たな管路を構築するパイプインパイプ工法であって、
前記既設横管の一部を取り込むように立坑を築造する立坑築造工程と、
前記既設横管の一部を切断して開口を形成する既設横管切断工程と、
前記開口から新設管材料及び足場材料を挿入する新設管材料等挿入工程と、
前記新設管材料等挿入工程で挿入された新設管材料を前記既設縦管の内部で底部から順に上方へ積み上げるとともに、積み上げた新設管材料の端部どうしを接合して新設縦管を構築する新設縦管構築工程と、
前記新設管材料等挿入工程で挿入された新設管材料を前記既設横管の内部で順に横方向につなげて配置するとともに配置した新設管材料の端部どうしを接合して新設横管を構築するとともに、構築した前記新設横管と前記新設縦管構築工程で構築した前記新設縦管とを接続する新設横管構築工程とを備え、
前記新設縦管構築工程において、前記足場材料により作られる管内足場を、前記新設管材料の内面に取り付けた突起に固定し、前記管内足場を利用して前記既設縦管内での前記新設管材料の積み上げ作業並びに前記新設管材料の端部どうしの接合作業を行なうことを特徴とするパイプインパイプ工法。
【請求項2】
前記新設管材料の内面に取り付けた突起は、当該新設管材料を前記既設縦管内に挿入するとき、当該新設管材料を吊り下げるための長尺部材を係止する係止部であることを特徴とする請求項1に記載のパイプインパイプ工法。
【請求項3】
新設管材料の内面に設けられた突起に固定される管内足場であって、
前記突起に固定されて中央部分に開口が形成された足場フレームと、
前記足場フレーム上に配置されて折り畳み可能とされ、折り畳まれた際に開放される前記開口を通して人を上下方向に通過させることが可能な足場本体と、を備え
前記足場本体は、相互の間に間隔をあけて左右両側にそれぞれ配置される側方固定足場部材と、前記側方固定足場部材の間に配置されて折り畳み可能な中央可動足場部材とを備えることを特徴とする管内足場。
【請求項4】
前記側方固定足場部材および前記中央可動足場部材は、網目状部材を備えることを特徴とする請求項3に記載の管内足場。
【請求項5】
前記中央可動足場部材が折り畳まれて起立状態とされた際に、該起立状態の傾斜角度を維持するストッパが設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の管内足場。
【請求項6】
前記足場フレームは、多分割構造であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の管内足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設埋設管の内部に新設管を挿入して新たな管路を構築するパイプインパイプ工法およびこのパイプインパイプ工法を実施する際に用いる管内足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道管路や農業用水道管路等の既設管路が老朽化した場合、既設管路内に新設管を挿入配置して新たな管路を形成するパイプインパイプ工法が知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
パイプインパイプ工法を行なう上で、既設管路中に鉛直方向に延びる既設縦管を有する場合には、一般に、図21図24に示す工法が採用されていた。
すなわち、既設縦管100を含めるように立坑101を築造する。立坑101は既設縦管に100の上端部100aにつながる上側の既設横管102の一部を含むように築造する(図21参照)。
次いで、既設縦管100及びこの既設縦管100につながる既設横管102の一部をそれぞれ撤去する。これら管の撤去に伴い、上側の既設横管102並びに下側の既設横管103にそれぞれ管開口102a、103aが形成される。その後、図示せぬ管材料投入箇所から新設管材料を投入し、下側の既設横管103内に新たな横管路105を構築する(図22参照)。
【0004】
一方、立坑101とは別の場所例えば工場等で、新設管材料104を鉛直方向につなげて立ち上がり管106を構築する。この立ち上がり管106を立坑101内に吊り込み、下側の新たな横管路105と接続する(図23参照)。この接続が完了した時点で、立ち上がり管106の上端開口から、作業員が新設管内に入り、接続部の内面塗装を行なう。
その後、あるいは前述の立ち上がり管106の内面塗装作業に並行して、立坑101を立ち上がり管106の上端近傍まで埋め戻す(図24参照)。
【0005】
上側の既設横管102に形成された管開口102aから、新設管材料104を投入し、既設横管102内に新たな横管路105を構築するとともに、この新たに構築した横管路105と前記立ち上がり管106の上端部とを、挿し管を用いて接続する。
その後、残りの立坑部分101aの埋め戻しを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−78142号公報
【特許文献2】特開2004−68340号公報
【特許文献3】特開2003−268967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように従来のパイプインパイプ工法では、既設管路中に鉛直方向に延びる既設縦管100を有する場合、既設縦管100が存する箇所並びにその近傍に既設縦管100全体を露出するための大型の立坑101を築造することが前提であり、例えば既設縦管100の上方に構築物が存する場合等、立坑101を築造することができない状況下では、実施することができない問題があった。
また、従来のパイプインパイプ工法では、廃土や既設縦管材料等の多量の産業廃棄物が生じてしまい、これら産業廃棄物を処理しなければならず、不経済であった。
【0008】
一方、特許文献2,3には、縦管につながる横管部分に縦管内に支持・吊り下げ用の装置を配置し、この装置に吊り支持される作業用足場に作業員が乗って縦管内のメンテナンスを行なう技術が提案されている。
このように縦管内で吊り支持される支持・吊り下げ用の装置を利用して、既設縦管内に新設縦管を構築することも考えられるが、支持・吊り下げ装置が既設管路内で大きなスペースを占めるため、既設管路内で新設管材料を運搬するに支障が出る。このため、前述した縦管内で吊り支持される、支持・吊り下げ用の装置を利用したパイプインパイプ工法は、実施することができなかった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、既設縦管全体を露出するための大型の立坑を築造する必要がなく、既設縦管の近傍に小型の立坑を築造するだけで足り、加えて、廃土、撤去管材料等の産業廃棄物の排出量を低減することができ、しかも、立坑築造位置にとらわれることなく既設縦管内に新設縦管を構築することが可能なパイプインパイプ工法およびこのパイプインパイプ工法を実施する際に用いる管内足場を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
請求項1の発明に係るパイプインパイプ工法は、横方向に伸びて埋設された既設横管と該既設横管に接続されるとともに縦方向に伸びて埋設された既設縦管とを備える既設埋設管の内部に新設管材料を挿入して新たな管路を構築するパイプインパイプ工法であって、前記既設横管の一部を取り込むように立坑を築造する立坑築造工程と、前記既設横管の一部を切断して開口を形成する既設横管切断工程と、前記開口から新設管材料及び足場材料を挿入する新設管材料等挿入工程と、前記新設管材料等挿入工程で挿入された新設管材料を前記既設縦管の内部で底部から順に上方へ積み上げるとともに、積み上げた新設管材料の端部どうしを接合して新設縦管を構築する新設縦管構築工程と、前記新設管材料等挿入工程で挿入された新設管材料を前記既設横管の内部で順に横方向につなげて配置するとともに配置した新設管材料の端部どうしを接合して新設横管を構築するとともに、構築した前記新設横管と前記新設縦管構築工程で構築した前記新設縦管とを接続する新設横管構築工程とを備え、前記新設縦管構築工程において、前記足場材料により作られる管内足場を、前記新設管材料の内面に取り付けた突起に固定し、前記管内足場を利用して前記既設縦管内での前記新設管材料の積み上げ作業並びに前記新設管材料の端部どうしの接合作業を行なうことを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明に係るパイプインパイプ工法によれば、新設縦管構築工程において、新設管材料等挿入工程で挿入された新設管材料を既設縦管の底部から順に上方へ積み上げるとともに、積み上げた新設管材料の端部どうしを接合して新設縦管を構築するものである。このように、既設縦管を利用して、その内部で新設縦管を構築するから、既設縦管全体を露出するための大型の立坑を築造することなく、新設縦管を構築することができる。
また、この新設縦管構築工程において、足場材料により作られる管内足場を、新設管材料の内面に取り付けた突起に固定し、既設縦管内での新設管材料の積み上げ作業並びに新設管材料の端部どうしの接合作業を行なうものであるから、管内足場が新設縦管の外周より外方へ出っ張ることがなく、しかも、積み上げてセットされた新設管材料に管内足場が固定されるので、この管内足場と、積み上げてセットされた新設管材料の上に新たに積み上げられる新設管材料とが干渉するおそれがなく、このため、積み上げてセットされた新設管材料の上に新たに積み上げられる新設管材料の運搬に何ら支障が出ない。
【0012】
請求項2の発明に係るパイプインパイプ工法は、前記新設管材料の内面に取り付けた突起は、当該新設管材料を前記既設縦管内に挿入するとき、当該新設管材料を吊り下げるための長尺部材を係止する係止部であることを特徴とする。
これにより、新設管材料を吊り下げるための長尺部材を係止する係止部と管内足場を固定するための突起とを兼用することができ、新設管材料の内部構造の簡素化が図れ、かつ設置後それら突起あるいは係止部の撤去作業が容易になる。
【0013】
請求項3の発明に係る管内足場は、新設管材料の内面に設けられた突起に固定される管内足場であって、前記突起に固定されて中央部分に開口が形成された足場フレームと、前記足場フレーム上に配置されて折り畳み可能とされ、折り畳まれた際に開放される前記開口を通して人を上下方向に通過させることが可能な足場本体と、を備え、前記足場本体は、相互の間に間隔をあけて左右両側にそれぞれ配置される側方固定足場部材と、前記側方固定足場部材の間に配置されて折り畳み可能な中央可動足場部材とを備えることを特徴とする。
これにより、足場本体を折り畳むことで、人(作業員)が当該管内足場を上下方向に移動することが可能となり、また、足場本体を広げてフラットにすることで、広い足場を確保することができ、作業性の向上が図れる。
また、作業員が側方固定足場部材に足を乗せた状態で、中央可動足場部材の折り畳み作業や逆に折り畳まれた中央可動足場部材を広げてフラットにする作業を行なうことができる。また、中央可動足場部材を折り畳んで、作業員が当該管内足場を上下方向に移動する際に、作業員が側方固定足場部材に足を乗せることができる。
【0015】
請求項に係る管内足場は、前記側方固定足場部材および前記中央可動足場部材が、網目状部材を備えることを特徴とする。
これにより、当該管内足場の通気性を確保することができ、作業中に新設縦管内で空気が淀むのを防止できる。
【0016】
請求項に係る管内足場は、前記中央可動足場部材が折り畳まれて起立状態とされた際に、該起立状態の上端部が前記新設管材料の内面に当接するのを規制する角度規制ストッパが設けられていることを特徴とする。
これにより、起立状態の中央可動足場部材が不用意に倒れて、新設縦管の内面に突き当たり同内面が損傷される事態を未然に防止できる。
【0017】
請求項に係る管内足場は、前記足場フレームが、多分割構造であることを特徴とする。 これにより、足場フレームを構成する個々の構成部材の軽量化並びに小型化を図ることができ、既設管路内でそれら足場フレームの構成部材を運搬する際、あるいはそれら構成部材を新設縦管に固定する際に有利になる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、既設縦管全体を露出するための大型の立坑を築造する必要がなく、既設縦管の近傍に小型の立坑を築造すれば足り、廃土、撤去管材料等の産業廃棄物の排出量を低減することができる。また、立坑築造位置にとらわれることなく既設縦管内に新設縦管を構築することが可能になる。
【0019】
請求項2の発明によれば、新設管材料を吊り下げるための長尺部材を係止する係止部と足場を固定するための突起とを兼用することができ、新設管材料の構成の簡素化が図れ、かつ設置後のそれら突起あるいは係止部の撤去作業が容易になる。
【0020】
請求項3の発明によれば、足場本体を折り畳むことで、作業員が当該管内足場を上下方向に移動することが可能となる。また、足場本体を広げてフラットにすることで、広い足場を確保することができ、作業性の向上が図れる。
【0021】
請求項4の発明によれば、作業員が側方固定足場部材に足を乗せた状態で、中央可動足場部材の折り畳み作業や逆に折り畳んである中央可動足場部材を広げてフラットにする作業を行なうことができ、また、中央可動足場部材を折り畳んで、作業員が当該管内足場を上下方向に移動する際に、作業員が側方固定足場部材に足を乗せることができる。つまり、中央可動足場部材を折り畳んだ際にも足場を確保することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、当該管内足場の通気性を確保することができ、作業中に新設縦管内で空気が淀むのを防止できる。
【0023】
請求項6の発明によれば、起立状態の中央可動足場部材が不用意に倒れて、新設縦管の内面に突き当たり同内面が損傷されるのを未然に防止できる。特に、新設管材料の内面に例えば耐食性塗装等が施されている場合に有用である。
【0024】
請求項7の発明によれば、足場フレームを構成する個々の構成部材の軽量化並びに小型化を図ることができ、既設管路内でそれら足場フレームの構成部材を運搬する際、あるいはそれら構成部材を新設縦管に固定する際に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
図2】本発明の実施形態のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
図3】本発明の実施形態のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
図4】本発明の実施形態のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
図5】本発明の実施形態のパイプインパイプ工法において縦管用の新設管材料を吊り支持する状態を示す一部断面図である。
図6】本発明の実施形態のパイプインパイプ工法において新設縦管に管内足場を取り付けた状態を示す一部断面図である。
図7】新設縦管に固定した管内足場を利用して作業を行なう状態を示す一部断面図である。
図8】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の正面図である。
図9】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の平面図である。
図10】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の底面図である。
図11】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の右側面図である。
図12】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の背面図である。
図13】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す開放時の平面図である。
図14】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す開放時の正面図である。
図15】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す開放時の底面図である。
図16】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す開放時の右側面図である。
図17】本発明の実施形態の管内足場の側方固定足場部材を示す平面図である。
図18】本発明の実施形態の管内足場の中央可動足場本体を示す平面図である。
図19】本発明の実施形態の管内足場の中央可動足場部材を示す側面図である。
図20】本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定する部分の拡大平面図である。
図21】従来のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
図22】従来のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
図23】従来のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
図24】従来のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1図4は本発明の実施形態のパイプインパイプ工法の工程説明用の断面図である。
本発明の実施形態のパイプインパイプ工法は、横方向に伸びて埋設された上下の既設横管1、2とそれら上下の既設横管1、2に接続されるとともに縦方向に伸びて埋設された既設縦管3とを備える既設埋設管4の内部に新設管材料5を挿入して新たな管路6を構築するものである。
【0027】
この実施形態のパイプインパイプ工法では、最初に、図1に示すように、上側の既設横管1の一部を取り込むように立坑10を築造する(立坑築造工程)。立坑10の直径は、新たな管路6を構築するための新設管材料5を吊り込んで挿入可能な大きさとする。
次いで、図2に示すように、上側の既設横管1の一部を切断し新設管材料等を挿入する開口1aを形成する(既設横管切断工程)。
この既設横管切断工程の前後またはこの工程と並行して、図示せぬ管材料投入箇所から横管用の新設管材料5Aを投入し、下側の既設横管2内に下側の新設横管11を構築する。
【0028】
次いで、上側の既設横管1に形成された開口1aから縦管用の新設管材料5B及び足場材料を挿入する(新設管材料等挿入工程)。縦管用の新設管材料5B及び足場材料については、後ほど詳しく説明する。
このとき、図5に示すように、新設管材料等挿入工程で挿入された縦管用の新設管材料5Bの内面に設けた係止部20に吊り上げ用の長尺部材21の先端を係止させて、既設縦管3の内部において縦管用の新設管材料5Aを吊り下げて支持し、この支持した新設管材料5Aを既設縦管3の底部から順に上方へ積み上げる。そして、積み上げた新設管材料5Bの端部どうしを、例えば溶接により接合して新設縦管12を構築する(新設縦管構築工程)。
【0029】
前記新設縦管構築工程の前後またはこの工程と並行して、上側の既設横管1に形成された開口1aから横管用の新設管材料5Aを既設横管1の内部に挿入する。挿入した新設管材料5Bを順に横方向につなげて配置するとともに、配置した新設管材料5Bの端部どうしを接合して上側の新設横管13を構築する。そして、この構築した上側の新設横管13と前記新設縦管構築工程で構築した前記新設縦管12の上端部とを接続する(新設横管構築工程)。
その後、立坑10の埋め戻しを行なう。
【0030】
ここで、図6図7に示すように、前記新設縦管構築工程においては、上側の既設横管1の開口1aから挿入された足場材料により作られる管内足場30を、新設管材料5Bの内面に設けた係止部20に着脱可能に固定し、既設縦管3内での新設管材料5Bの積み上げ作業並びに新設管材料5Bの端部どうしの接合作業を行なう。
図6図7に示すように、新設管材料5Bの内面には、必要に応じてタラップ22を取り付けても良い。
なお、新設縦管12の構築が完了した時点において、管内足場30を撤去し、同時に係止部20も取り外す。このとき、タラップ22は、メンテナンス用としてそのまま残す。
【0031】
次に、管内足場30を図8図17を参照して説明する。図8は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の正面図、図9は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の平面図、図10は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の底面図、図11は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の右側面図である。なお、管内足場の左側面図は右側面図とほぼ同様であるので、ここでは省略する。図12は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す閉塞時の背面図である。
また、図13は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す開放時(足場本体を折り畳んだ状態)の平面図、図14は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す開放時の正面図、図15は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す開放時の底面図、図16は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定した状態を示す開放時の右側面図である。
【0032】
管内足場30は、縦管用の新設管材料5Bの内面に設けられた係止部20に、ボルト30a等の固定手段によって着脱自在に固定される(図20参照)。
管内足場30は、係止部20に固定されて中央部分に開口31Aが形成された足場フレーム31と、足場フレーム31上に配置されて折り畳み可能とされ、折り畳まれた際に開放される開口31Aを通して人を上下方向に通過させることが可能な足場本体32とを備える(図10図15参照)。
【0033】
図10に示すように、足場フレーム31は、直線状の基部33Aと、この基部33Aの両端からそれぞれ45度の開き角度を持って外方へ傾斜して延びるとともに、基部33Aの半分の長さに設定された傾斜部33Bとからなる構成材33を4個、傾斜部33Bの端部同士を同軸状となるように接続して、全体として8角形をなすように構成したものである。つまり、足場フレーム31は4分割構造になっており、中央には開口31Aが形成されている。
【0034】
構成材33としては、この実施形態の場合、山形鋼を用いているが、これに限られることなく、他の形鋼、例えばI型鋼、あるいは溝形鋼を用いても、あるいは断面円状の棒部材を用いてもよい。また、この実施形態では、傾斜部33B(連結部)の先端にボルト接続用の平板33Cが取り付けられている。
なお、必要に応じて、図10に示すように、隣接する構成材33同士を補強部材34によって接合補強しても良い。
【0035】
足場本体32は、相互の間に間隔をあけて左右両側にそれぞれ配置される側方固定足場部材35と、側方固定足場部材35の間に配置されて折り畳み可能な中央可動足場部材36とを備え、図9図10に示すように、中央可動足場部材36がストレートに広げられたとき、全体として円状をなして、新設縦管12の内周に対応するように形成されている(閉塞状態)。
側方固定足場部材35と中央可動足場部材36は、それぞれ番線等の適宜固定手段によって足場フレーム31に固定される。
【0036】
図17は本発明の実施形態の管内足場の側方固定足場部材を示す平面図、図18は本発明の実施形態の管内足場の中央可動足場本体を示す平面図、図19は本発明の実施形態の管内足場の中央可動足場部材を示す側面図、図20は本発明の実施形態の管内足場を新設縦管に固定する部分の拡大平面図である。
図17に示すように、左右の側方固定足場部材35は、それぞれ平面視において略三日月状に形成されたものである。なお、図17では片方の側方固定足場部材35しか示していないが、他方の側方固定足場部材35も同様な構成である。
【0037】
図18に示すように、中央可動足場部材36は、ストレートに広げられたとき、左右両側が円弧状となるよう外方に張り出してなる略長方形のものである。中央可動足場部材36は、中央の平面視が長方形状とされた長方形部材36A、36Aと、図18においてそれらの左右側方に設けられた、略三日月状の部材36B、36Bとからなり、それら部材が互いに蝶番36Cで接続されて折り畳み可能になっている。なお、図15図16には、中央可動足場部材36が折り畳まれた状態(開放状態)を示す。
中央可動足場部材36を構成する長方形部材36A、36Aおよび三日月状の部材36B、36B並びに側方固定足場部材35は、外周のフレームに網目状部材37が溶接等の固定手段によって取り付けられた構造になっている。
【0038】
中央可動足場部材36を構成する長方形部材36Aの一方には、図15図16に示すように、当該中央可動足場部材36が折り畳まれて起立状態とされた際に、該起立状態の傾斜角度を維持するストッパ38が設けられている。これにより、折り畳まれて起立状態にある中央可動足場部材36が不用意に倒れて、その上端部が新設管材料5Bの内面に当接するのを予め防止している。
【0039】
管内足場30の使用方法について説明すると、図7の下側に示すように、中央可動足場部材36を広げてフラットにすることで、広い足場を確保することができ、例えば作業員Sは、広げられた中央可動足場部材36並びにこれと面一になる側方固定足場部材35上を足場して自由に利用することができる。
【0040】
一方、中央可動足場部材36を折り畳むことで、作業員Sは、足場フレーム31に形成された開口31Aを通して上下方向へ自由に通過することができる。なお、中央可動足場部材36が折り畳まれたときにも、側方固定足場部材35は、足場フレーム31上に載置された状態を維持されており、作業員Sは、この側方固定足場部材35を足場として利用することができる。
【0041】
以上説明したように本発明に係るパイプインパイプ工法によれば、新設縦管構築工程において、新設管材料等挿入工程で挿入された新設管材料5Bを既設縦管3の底部から順に上方へ積み上げるとともに、積み上げた新設管材料5Bの端部どうしを接合して新設縦管を構築する。このように既設縦管3を利用して、その内部で新設縦管12を構築するから、既設縦管3全体を露出するための大型の立坑を築造することなく、新設縦管を構築することができる。
【0042】
既設縦管3全体を露出するための大型の立坑を築造することなく、既設縦管3の近傍に小型の立坑10を築造すれば足り、加えて、既設縦管3は新設縦管12の外側に配置したままであるので、廃土並びに撤去管材料等の産業廃棄物の排出量を大幅に低減することができる。
また、立坑築造位置にとらわれることなく既設縦管3内に新設縦管12を構築することが可能であるので、既設縦管3の上方に構築物が存する場合等、既設縦管を含む立坑を築造することができない場合であっても、新設縦管12を構築することができる。
【0043】
また、この新設縦管構築工程において、足場材料により作られる管内足場30を、新設管材料5Bの内面に取り付けた係止部20に固定し、既設縦管3内での新設管材料5Bの積み上げ作業並びに新設管材料5Bの端部どうしの接合作業を行なうから、管内足場30が新設縦管12の外周より外方へ出っ張ることがなく、しかも、積み上げてセットされた新設管材料5Bに管内足場30が固定されるので、この管内足場30と、積み上げてセットされた新設管材料5Bの上に新たに積み上げられる新設管材料5Bとが干渉するおそれがない。このため、積み上げてセットされた新設管材料5Bの上に新たに積み上げられる新設管材料5Bの運搬に何ら支障が出ない。
【0044】
また、本実施形態では、縦管用の新設管材料5Bの内面に取り付けた突起は、当該新設管材料5Bを既設縦管3内に挿入するとき、当該新設管材料5Bを吊り下げるための長尺部材21を係止する係止部20であり、このように新設管材料5Bを吊り下げるための長尺部材21を係止する係止部20と管内足場30を固定するための突起とを兼用することができる。このため、縦管用の新設管材料5Bの内部構造の簡素化が図れ、かつ新設縦管12構築後のそれら突起あるいは係止部20の撤去作業が容易になる。
【0045】
また、本発明に係る管内足場30によれば、足場本体32が、相互の間に間隔をあけて左右両側にそれぞれ配置される側方固定足場部材35と、側方固定足場部材35の間に配置されて折り畳み可能な中央可動足場部材36とを備える構成であるので、作業員Sが側方固定足場部材35に足を乗せた状態で、中央可動足場部材36の折り畳み作業や逆に折り畳まれた中央可動足場部材36を広げてフラットにする作業を行なうことができる。また、中央可動足場部材36を折り畳んで、作業員が当該管内足場30を上下方向に移動する際に、作業員Sが側方固定足場部材35上に足を乗せることができる。
【0046】
また、側方固定足場部材35および中央可動足場部材36の主要部分を、網目状部材37によって構成しているので、管内足場30の通気性を確保することができ、新設縦管12の構築中に該新設縦管12内で空気が淀むのを防止できる。
【0047】
また、中央可動足場部材36が折り畳まれて起立状態とされた際に、該起立状態の傾斜角度を維持するストッパ38を設けており、これにより、折り畳まれて起立状態の中央可動足場部材36が不用意に倒れて、新設縦管12の内面に突き当たり同内面が損傷される事態を未然に防止できる。これは、特に、新設管材料5Bの内面に例えば耐食性塗装等が施されている場合に有用である。
【0048】
また、足場フレーム31を多分割構造としているので、足場フレーム31を構成する個々の構成材33の軽量化並びに小型化を図ることができ、既設縦管3内でそれら足場フレームの構成材33を運搬する際、あるいはそれら構成材33を新設縦管12に固定する際に有利になる。
【0049】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0050】
例えば、上記実施形態では、本発明にかかるパイプインパイプ工法を実施する上で、上側の既設横管1の一部を取り込むように立坑10を築造し、この立坑10を利用して既設縦管3内に新設縦管12を構築したが、これに限られることなく、下側の既設横管2の一部を取り込むように立坑を築造し、この立坑を利用して既設縦管3内に新設縦管12を構築してもよい。この場合、施工した新設縦管を上方へ持ち上げて、その下側に新設管材料を挿入する工法を採用すればよい。
【0051】
また、本発明に係る管内足場30は、新設管材料5Bの内面に設けた長尺部材21を係止するための係止部20に固定しているが、これに限られることなく、係止部20とは別に足場固定用の突起を設け、この突起に管内足場30を固定しても良い。
また、本発明に係る管内足場30は、足場本体32を、側方固定足場部材35と中央可動足場部材36と備える構成にしているが、これに限られることなく、足場本体32を全て折り畳み可能な構成にしてもよい。その場合、側方固定足場部材の機能は、足場フレームに持たしても良い。
【符号の説明】
【0052】
1、2 既設横管
3 既設縦管
5、5A、5B 新設管材料
10 立坑
1a 開口
11 下側の新設横管
12 新設縦管
13 上側の新設横管
20 係止部(突起)
30 管内足場
31A 開口
31 足場フレーム
32 足場本体
33 構成材
35 側方固定足場部材
36 中央可動足場部材
37 網目状部材
38 ストッパ
図1
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