特許第6318076号(P6318076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6318076
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】鉄塔の解体方法及び鉄塔の解体装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20180416BHJP
【FI】
   E04G23/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-230866(P2014-230866)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-94734(P2016-94734A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】水谷 亮
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−136340(JP,A)
【文献】 特開2014−129714(JP,A)
【文献】 特開2003−105978(JP,A)
【文献】 特開2011−201691(JP,A)
【文献】 特開2002−220945(JP,A)
【文献】 特開平09−012274(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00369938(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E04H 12/00−12/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部の上端に位置する頂部とを備える鉄塔の解体方法において、
前記頂部と前記本体部とを切り離す工程と、
切り離した前記頂部を前記本体部の上方で支持する工程と、
前記本体部の上端から下方に向かって前記本体部を解体すると共に、前記頂部を下方に移動させる工程と、
下方に移動させた前記頂部を解体する工程と、
を備える鉄塔の解体方法。
【請求項2】
請求項1に記載の解体方法で用いられる鉄塔の解体装置であって、
前記本体部から切り離された前記頂部を前記本体部に対して上方に移動させ、移動させた前記頂部を支持する支持部材と、
前記支持部材に支持された前記頂部と前記本体部との間で水平方向に移動可能な吊り下げ部を有し、解体された前記本体部の鉄材を前記吊り下げ部に吊り下げて下方に移動させるクレーン部材と、
を備える鉄塔の解体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の解体方法で用いられる鉄塔の解体装置であって、
前記本体部と前記頂部との間に設置され、前記本体部に対して前記頂部を上方に移動させるクライミング装置と、
前記頂部の下部で水平方向に移動可能な吊り下げ部を有し、解体された前記本体部の鉄材を前記吊り下げ部に吊り下げて下方に移動させるクレーン部材と、
を備える鉄塔の解体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ等を有する頂部を備えた鉄塔を解体する鉄塔の解体方法、及び鉄塔の解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002−220945号公報には、頂部にアンテナを備えた鉄塔を解体する解体装置と、この解体装置を用いた鉄塔の解体方法とが記載されている。この解体装置は互いに独立に鉄塔に装着されるベースステージと上部ステージとを備えており、ベースステージと上部ステージとの間には上下に油圧ジャッキが介在している。上部ステージは、ベースステージを鉄塔に支持させた状態で油圧ジャッキを伸長させることにより上昇可能となっており、ベースステージは、上部ステージを鉄塔に支持させた状態で油圧ジャッキを縮小させることにより上昇可能となっている。上記公報に記載された解体方法では、このような解体装置を用いて、鉄塔の頂部のアンテナから順次下方に向かって鉄塔の解体が進められる。
【0003】
特開2010−242362号公報には、アンテナ用鉄塔を有する建物上部躯体と、展望床を有するSRC造の建物下部躯体とを備えた鉄塔の解体方法が記載されている。この解体方法では、建物下部躯体の展望床を支持架台として利用すると共に、建物上部躯体をジャッキダウンすることにより、建物上部躯体を、その下方から順次解体している。解体作業は、建物上部躯体を囲む架設フレームに設けられたセンターホールジャッキによって、建物上部躯体を切断しながら下降させることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−220945号公報
【特許文献2】特開2010−242362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄塔の頂部のアンテナから順次下方に向かって鉄塔の解体を行う方法では、最初に鉄塔の頂部でアンテナを解体するため、頂部の解体の作業を安全に行うことが難しいという問題がある。また、鉄塔の解体に伴い建物上部躯体をジャッキダウンによって順次下降させる方法では、地震に対する転倒防止の設備、及び大掛かりなジャッキダウン等の設備が必要であるという問題がある。
【0006】
本発明は、頂部の解体の作業を安全に行うことができると共に、大掛かりな設備を不要とすることができる鉄塔の解体方法及び鉄塔の解体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鉄塔の解体方法は、本体部と、本体部の上端に位置する頂部とを備える鉄塔の解体方法において、頂部と本体部とを切り離す工程と、切り離した頂部を本体部の上方で支持する工程と、本体部の上端から下方に向かって本体部を解体すると共に、頂部を下方に移動させる工程と、下方に移動させた頂部を解体する工程と、を備える。
【0008】
本発明に係る鉄塔の解体方法では、鉄塔の頂部と本体部とを切り離し、切り離した頂部を支持した状態で本体部を下方に向かって順次解体していく。そして、本体部の上端から下方に向かって順次本体部の解体を行い、頂部を下方に移動させた後に頂部の解体を行う。このように、頂部をより低い位置で解体させるので、頂部の解体の作業を安全に行うことができる。また、一般的に、鉄塔の横断面積は下方に向かうに従って大きくなる。そこで、本発明に係る解体方法では、本体部の上端から下方に向かって解体を進めているので、鉄塔の横断面積が小さい部分から大きい部分に向かって解体を進めていくこととなる。このように横断面積が小さい本体部の上端から下方に向かって解体作業を進めていくので、大掛かりなジャッキ装置等の設備を不要とすることができる。
【0009】
本発明に係る鉄塔の解体装置は、上述した解体方法で用いられる鉄塔の解体装置であって、本体部から切り離された頂部を本体部に対して上方に移動させ、移動させた頂部を支持する支持部材と、支持部材に支持された頂部と本体部との間で水平方向に移動可能な吊り下げ部を有し、解体された本体部の鉄材を吊り下げ部に吊り下げて下方に移動させるクレーン部材と、を備える。
【0010】
本発明に係る鉄塔の解体装置では、頂部を本体部に対して上方に移動させた状態で支持する支持部材と、解体された本体部の鉄材を下方に移動させるクレーン部材とを備えており、支持部材とクレーン部材とを用いることによって解体作業を進めることができる。従って、大掛かりなジャッキ装置等を不要とすることができる。また、この解体装置では、本体部を上から順次解体し、クレーン部材によって鉄材を下方に移動させるだけで解体作業を進めることができるので、解体の作業を簡単に行うことができる。更に、この解体装置では、本体部を上から順次解体すると共に頂部を下方に移動させ、その後頂部の解体を行うことができる。従って、頂部の解体作業をより低い位置で行うことができるので、頂部の解体作業を安全に行うことができる。
【0011】
本発明に係る別の鉄塔の解体装置は、上述した解体方法で用いられる鉄塔の解体装置であって、本体部と頂部との間に設置され、本体部に対して頂部を上方に移動させるクライミング装置と、頂部の下部で水平方向に移動可能な吊り下げ部を有し、解体された本体部の鉄材を吊り下げ部に吊り下げて下方に移動させるクレーン部材と、を備える。
【0012】
本発明に係る別の鉄塔の解体装置では、本体部と頂部との間に介在するクライミング装置と、解体した鉄材を下方に移動させるクレーン部材とを備えており、クライミング装置とクレーン部材とを用いることによって解体作業を進めることができる。従って、大掛かりなジャッキ装置等を不要にすることができる。この解体装置では、本体部の上端から順次解体を進めると共に、鉄材をクレーン部材によって下方に移動させるだけで解体作業を進めることができる。よって、解体の作業を簡単且つ安全に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、頂部の解体の作業を安全に行うことができると共に、大掛かりな設備を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は第1実施形態に係る鉄塔の解体方法及び解体装置を適用させる鉄塔の一例を示す側面図である。(b)は(a)のB−B線断面図である。(c)は(a)のC−C線断面図である。
図2】第1実施形態に係る鉄塔の解体方法を説明する側面図である。
図3】第1実施形態に係る鉄塔の解体装置を示す側面図である。
図4】第2実施形態に係る鉄塔の解体方法を説明する側面図である。
図5】第2実施形態に係る鉄塔の解体装置を示す側面図である。
図6】第3実施形態に係る鉄塔の解体方法を説明する側面図である。
図7】第4実施形態に係る鉄塔の解体方法を説明する側面図である。
図8】第5実施形態に係る鉄塔の解体方法を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る鉄塔の解体方法及び鉄塔の解体装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1(a)に示されるように、本実施形態に係る鉄塔1は例えば建物の屋上Sに設置された電波塔であり、鉄塔1の頂部2にはアンテナ3が設けられている。頂部2は、例えば、アンテナ3を支持する頂部フレーム2aと、頂部フレーム2aから下方に延びる4本の柱部2bと、頂部フレーム2aの下方で各柱部2bを接続する頂部フレーム2cとを備えている。
【0017】
鉄塔1は、屋上Sに設置された本体部4と、本体部4の上端に位置する頂部2とを備えている。本体部4は、屋上Sに設置される下部躯体5と、下部躯体5の上部に位置する上部躯体6とによって構成されている。図1(b)及び図1(c)に示されるように、例えば、下部躯体5の横断面は八角形となっており、上部躯体6の横断面は四角形となっている。下部躯体5の横断面の中央部分には四角形状の孔部5aが形成されており、上部躯体6の横断面の中央部分にも同様の孔部6aが形成されており、これらの孔部5a,6aは上下に連通している。また、上部躯体6の上端に頂部2が設けられている。
【0018】
次に、図2及び図3を参照しながら鉄塔1を解体する解体装置10について説明する。なお、図2では、便宜上一部の図示を簡略化している。解体装置10は、下部躯体5の孔部5a及び上部躯体6の孔部6aに順次継ぎ足される支柱であるマスト(支持部材)11と、マスト11の上端に取り付けられるウォールクレーン(クレーン部材)12とを備える。
【0019】
最上部に位置するマスト11は、頂部2が本体部4から切断された状態で、頂部2の頂部フレーム2cを押し上げて支持している。マスト11と本体部4との間には倒れ止め部材13が設けられており、この倒れ止め部材13によってマスト11が孔部5a,6a内で倒れないように保持される。また、最上部に位置するマスト11における頂部2と本体部4との間の部分には、ウォールクレーン12が取り付けられる。
【0020】
ウォールクレーン12は、マスト11に着脱自在となっており、例えば水平方向に延びるビーム12aと、垂直材12bと、斜め材12cとを備えている。ビーム12aには、吊り下げ部14がビーム12aに沿って移動自在に支持されている。吊り下げ部14は、屋上Sにまで下方に延ばすことが可能なワイヤロープ14aを備えており、ワイヤロープ14aの下端に解体した本体部4の鉄材Fが吊り下げられる。
【0021】
次に、解体装置10を用いて鉄塔1を解体する方法について説明する。まず、図2(a)に示されるように、下部躯体5の孔部5aにマスト11を挿入し、孔部5a内で複数のマスト11が積み上がるようにマスト11を継ぎ足して押し上げていく。積み上がったマスト11が上部躯体6の孔部6aに達し、最上部のマスト11が頂部2の頂部フレーム2cに達するときに、頂部2と本体部4(上部躯体6)との切り離しを行う(頂部と本体部とを切り離す工程)。
【0022】
図2(b)に示されるように、頂部2と本体部4との切り離しが終わった後にはマスト11の継ぎ足しを継続し、最上部のマスト11で頂部フレーム2cを上方に押し上げる。このとき、本体部4に対して頂部2が押し上げられるので、本体部4と頂部2との間に隙間Aが形成される。このように、最上部のマスト11によって、切り離した頂部2を本体部4の上方で支持する(頂部を支持する工程)。
【0023】
次に、図2(c)に示されるように、最上部のマスト11にウォールクレーン12を設置する。具体的には、ウォールクレーン12の垂直材12bをマスト11の柱材に沿わせた状態で垂直材12bをマスト11に取り付け、ウォールクレーン12のビーム12aが隙間Aで水平方向に延び鉄塔1の外方に突出するように、ウォールクレーン12の設置を行う。
【0024】
そして、本体部4(上部躯体6)の上端から下方に向かって上部躯体6の解体を進める。すなわち、上部躯体6の切断及び解体を行い、解体した上部躯体6の鉄材Fを順次吊り下げ部14に吊り下げて屋上Sに降ろしていく。この上部躯体6の解体に伴ってマスト11も上から順次降ろしていき、頂部2を下方に移動させる(頂部を下方に移動させる工程)。
【0025】
そして、図2(d)に示されるように、上部躯体6の解体が完了した後には、下部躯体5の上端から下方に向かって下部躯体5の解体を進める。このとき、上記同様に、下部躯体5の切断及び解体を行い、解体した下部躯体5の鉄材Fを順次吊り下げ部14に吊り下げて降ろしていき、頂部2を下方に移動させる。このように下部躯体5を解体させながら頂部2を下方に移動させた後には、アンテナ3と頂部2の解体を行い、屋上Sに設置したクレーンによって頂部2及びアンテナ3を撤去する(頂部を解体する工程)。
【0026】
以上のように、本実施形態に係る鉄塔1の解体方法では、頂部2と本体部4とを切り離し、切り離した頂部2をマスト11で支持した状態で本体部4を下方に向かって順次解体していく。そして、本体部4の上端から下方に向かって順次本体部4の解体を行い、頂部2を下方に移動させた後に頂部2の解体を行う。このように、頂部2をより低い位置で解体させるので、頂部2の解体の作業を安全に行うことができる。
【0027】
また、本実施形態の解体方法では、昇降する部分は解体装置10及び頂部2のみであるため、大掛かりなジャッキ装置等の設備を不要とすることができる。
【0028】
また、本実施形態に係る解体装置10では、頂部2を本体部4に対して上方に移動させた状態で支持するマスト11と、解体された本体部4の鉄材Fを下方に移動させるウォールクレーン12とを備えており、マスト11とウォールクレーン12とを用いることによって解体作業を進めることができる。従って、大掛かりな設備を不要とすることができる。また、解体装置10では、本体部4を上から順次解体し、ウォールクレーン12によって鉄材Fを下方に移動させるだけで解体作業を進めることができるので、解体の作業を簡単に行うことができる。
【0029】
更に、解体装置10では、ウォールクレーン12が、孔部5a,6a内を通るマスト11から鉄塔1の外側に延びるように配置される。従って、屋上Sにおける鉄塔1の外側にクレーンを配置した場合と比較して、クレーンの作業半径を小さくすることができる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、図4及び図5を参照しながら第2実施形態に係る解体装置20について説明する。なお、図4では、便宜上一部の図示を簡略化している。また、以下では上述した記載と重複する説明を省略する。解体装置20は、本体部4の上端4aと頂部2の下端2dとの間に設置されるクライミング装置21と、頂部2(頂部フレーム2c)の下部で水平方向に移動可能な吊り下げ部24を有するシャトルクレーン(クレーン部材)22とを備えている。
【0031】
クライミング装置21は、例えば、本体部4の上端4aと頂部2の下端2dとの間に接続される本体部21aと、本体部21aに沿って上下に伸縮可能なクライミングシリンダ21bとを備えている。クライミングシリンダ21bの伸長によって頂部2が本体部4に対して押し上げられ、クライミングシリンダ21bの縮小によって頂部2が本体部4に対して下げられる。
【0032】
シャトルクレーン22は、例えば、円形レール22aと、円形レール22aに沿って水平面上で旋回する直線状のガーダ22bとを備えている。ガーダ22bは、円形レール22aの径方向に伸縮自在となっており、頂部2の内外を移動可能となっている。ガーダ22bには、吊り下げ部24がガーダ22bに沿って移動自在に支持されている。吊り下げ部24は、吊り下げ部14と同様のワイヤロープ24aを備えており、ワイヤロープ24aの下端に解体した鉄材Fが吊り下げられる。
【0033】
次に、解体装置20を用いて鉄塔1を解体する方法について図4を参照して説明する。まず、頂部2と本体部4(上部躯体6)の切り離しを行う(頂部と本体部とを切り離す工程)。そして、頂部2の下端2dと本体部4の上端4aとの間にクライミング装置21を設置し、クライミング装置21によって切り離した頂部2を支持する(頂部を支持する工程)。このように本体部4の上方で頂部2を支持している状態において、頂部フレーム2cの下部にシャトルクレーン22を設置する。具体的には、シャトルクレーン22の円形レール22aが水平面に沿うと共にガーダ22bが頂部2の内外で移動可能となるようにシャトルクレーン22の設置を行う。
【0034】
そして、第1実施形態と同様に、本体部4(上部躯体6)の上端から下方に向かって上部躯体6及び下部躯体5の解体を進め、頂部2を下方に移動させ(頂部を下方に移動させる工程)、その後、頂部2の解体を行う(頂部を解体する工程)。
【0035】
以上、第2実施形態に係る解体方法では、頂部2と本体部4とを切り離し、切り離した頂部2をクライミング装置21で支持した状態で本体部4を下方に向かって解体していく。よって、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、解体装置20では、本体部4の上端4aと頂部2の下端2dの間に介在するクライミング装置21と、解体した鉄材Fを下方に移動させるシャトルクレーン22とを備えており、クライミング装置21とシャトルクレーン22とを用いることによって解体作業を進めることができる。従って、大掛かりな装置を不要とすることができる。
【0036】
更に、解体装置20では、本体部4の上端4aから順次解体を進めて、鉄材Fをシャトルクレーン22によって下方に移動させるだけで解体作業を進めることができる。従って、解体の作業を簡単に行うことができる。また、解体装置20では、本体部4の解体を下方に向かって進めると共に頂部2を下方に移動させ、頂部2を下方に移動させた状態で頂部2の解体を行う。従って、頂部2の解体作業をより低い位置で行うので、頂部2の解体作業を安全に行うことができる。
【0037】
(第3実施形態)
次に、図6を参照しながら第3実施形態に係る解体装置30及び解体方法について説明する。第3実施形態に係る解体装置30は、フロアクライミング方式を採用している点で第1実施形態と異なっている。すなわち、解体装置30のマスト31は、下部躯体5の水平材である鉄骨5bに支持されながら徐々に引き上げられた支持部材である。
【0038】
解体装置30を用いて鉄塔1を解体する方法については、まず、下部躯体5の孔部5aにマスト31を挿入し、孔部5a内でマスト31を鉄骨5bに支持させながら数段ずつ引き上げていく。引き上げられたマスト31が上部躯体6の孔部6aに達し、マスト31の上端が頂部2の頂部フレーム2cに達するときに、頂部2と本体部4との切り離しを行う(頂部と本体部とを切り離す工程)。図6(b)に示されるように、頂部2と本体部4との切り離しが終わった後には、マスト31を更に引き上げてマスト31で頂部フレーム2cを上方に押し上げる。このようにして第1実施形態と同様、マスト31によって、切り離した頂部2を本体部4の上方で支持する(頂部を支持する工程)。
【0039】
その後は、第1実施形態と同様、図6(c)に示されるように、マスト31の上端にウォールクレーン12を設置し、本体部4の上端から下方に向かって上部躯体6の解体を進める。これに伴い、マスト31を下げていき、頂部2も下方に移動させる(頂部を下方に移動させる工程)。そして、図6(d)に示されるように、下部躯体5の解体を進めて頂部2を下方に移動させた後には、頂部2及びアンテナ3の解体を行う(頂部を解体する工程)。以上のように、第3実施形態に係る解体方法では、頂部2と本体部4とを切り離し、切り離した頂部2をマスト31で支持した状態で本体部4を下方に向かって解体していくので第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0040】
(第4実施形態)
続いて、図7を参照しながら第4実施形態に係る解体装置40及び解体方法について説明する。第4実施形態に係る解体装置40は、第3実施形態のマスト31に代えて、分割された複数(例えば4本)のマスト41を用いている点で第3実施形態と異なっている。
【0041】
第4実施形態のマスト41は、マスト31よりも細くなっており、例えば、複数のマスト41を連結させたときの太さがマスト31の太さと同一になっている。このように、マスト41を細くすることにより、下部躯体5の孔部5a又は上部躯体6の孔部6aに階段やブレース等が存在していたとしても、孔部5a,6aを通してマスト41を引き上げることが可能となる。
【0042】
解体装置40を用いて鉄塔1を解体する方法については、まず、下部躯体5の孔部5aに一本目のマスト41を挿入し、孔部5a内でマスト41を鉄骨5bに支持させながら数段ずつ引き上げていく。次いで、図7(a)に示されるように、一本目のマスト41と同様、二本目のマスト41を挿入して引き上げていき、全てのマスト41が上部躯体6の孔部6aに達し、マスト41の上端が頂部2の頂部フレーム2cに達するときに、複数のマスト41を連結させる。
【0043】
その後は、図7(b)に示されるように、第3実施形態と同様、頂部2と本体部4との切り離し、並びに、引き上げられた複数のマスト41による頂部2の引き上げ及び支持を行う。そして、図7(c)及び図7(d)に示されるように、ウォールクレーン12の設置、上部躯体6の上方からの解体、及び頂部2の下方への移動を進め、その後頂部2及びアンテナ3の解体を行う。このように、第4実施形態に係る解体方法では、頂部2と本体部4とを切り離し、切り離した頂部2を複数のマスト41で支持した状態で本体部4を下方に向かって解体していくので第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
(第5実施形態)
次に、図8を参照しながら第5実施形態に係る解体装置50及び解体方法について説明する。第5実施形態に係る解体装置50は、分割された複数のマスト群51を用いている点で第1実施形態と異なっている。すなわち、複数のマスト群51は第1実施形態のマスト11に相当する。
【0045】
マスト群51は、複数のマスト51aが継ぎ足され積み上げられていくことによって構成される。マスト51aは、第4実施形態のマスト41と同様、マスト11より細くなっている。従って、下部躯体5の孔部5a又は上部躯体6の孔部6aに階段やブレース等が存在していたとしても、孔部5a,6aを通してマスト51aを継ぎ足し、積み上げていくことが可能となる。
【0046】
解体装置50を用いて鉄塔1を解体する方法については、まず、下部躯体5の孔部5aにマスト51aを挿入し、孔部5a内で複数のマスト51aが積み上がるようにマスト51aを継ぎ足していく。そして、図8(a)に示されるように、最上部のマスト51aが頂部2の頂部フレーム2cに達することによって一本目のマスト群51を形成する。
【0047】
次いで、図8(b)に示されるように、一本目のマスト群51と同様、二本目のマスト群51を形成し、全てのマスト群51が上部躯体6の孔部6aに達し、マスト群51の上端が頂部2の頂部フレーム2cに達するときに、複数のマスト群51を連結させる。そして、頂部2と本体部4との切り離し、及び複数のマスト群51による頂部2の支持を行う。
【0048】
その後は、図8(c)及び図8(d)に示されるように、第4実施形態と同様、ウォールクレーン12の設置、本体部4の上方からの解体、頂部2の下方への移動、及び頂部2の解体を行う。このように、第5実施形態に係る解体方法では、頂部2と本体部4とを切り離し、切り離した頂部2を複数のマスト群51によって支持した状態で本体部4を下方に向かって解体していく。従って、第3実施形態及び第4実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、本発明の特許請求の範囲に示した要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、解体装置として、ウォールクレーン12やシャトルクレーン22が用いられる例について説明したが、これらのクレーン以外のクレーン部材を用いることも可能である。更に、クライミング装置についても、上述したクライミング装置21に限定されず、種々のクライミング装置を用いることが可能である。
【0051】
また、上記実施形態では、屋上Sに設置された電波塔である鉄塔1について説明した。しかしながら、鉄塔の形態は上記実施形態に限定されず、形状、大きさ、構造又は設置位置が鉄塔1とは異なっていてもよい。すなわち、本発明に係る解体方法及び解体装置は、鉄塔1以外の種々の鉄塔に適用させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…鉄塔、2…頂部、2a,2c…頂部フレーム、2b…柱部、3…アンテナ、4…本体部、4a…上端、5…下部躯体、5a,6a…孔部、5b…鉄骨、6…上部躯体、10,20,30,40,50…解体装置、11,31,41,51a…マスト(支持部材)、12…ウォールクレーン(クレーン部材)、13…倒れ止め部材、14,24…吊り下げ部、21…クライミング装置、22…シャトルクレーン(クレーン部材)、51…マスト群、F…鉄材、S…屋上。
図1
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図8