(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施の形態>
本発明の実施の形態における回転電機100は、
図1の断面図に示すように、ステータ102、ロータ104、ケース106及び回転拘束機構108を含んで構成される。回転電機100は、例えば、インナーロータ型のブラシレスDCモータである。回転電機100では、ステータ102内に円柱形状のロータ104が配置される。ロータ104は、その外周面がステータ102の内周面に対して所定の空隙を介して配置される。また、ステータ102の外周部が及びロータ104は、ケース106内に配置される。
【0018】
ステータ102は、ステータコア10及びコイル12を含んで構成される。ステータコア10は、円筒形状を有し、例えば、薄い中空円盤状の電磁鋼板を重ね合わせて構成される。ステータコア10には、3相のコイル12が巻回され、コイル12に3相電流を流すことによってロータ104に対して回転磁界を与える。一方、ロータ104は、ロータコア20(20a,20b)及び永久磁石22(22a,22b)を含んで構成される。ロータコア20は、円柱形状を有し、例えば、その一部を薄い円盤状の電磁鋼板を重ね合わせて構成される。ステータ102によって生じた回転磁界は、ロータコア20に内蔵された永久磁石22による磁界と作用してロータ104に回転トルクを発生させる。ロータ104の回転トルクは回転軸24に伝達されて、回転軸24が回転駆動される。回転軸24は、例えば、エンジンや車輪等に機械的に結合され、エンジンと共に、又は独立して車輪に駆動力を与えるために用いられる。
【0019】
ロータコア20は、回転軸24の延設方向に沿って対向するように互いに非接触に配置された主ロータ20aおよび副ロータ20bとから構成される。主ロータ20aは回転軸24に固定される。回転軸24は、ケース106に対してベアリング30を介して配置され、回転軸24を回転中心としてケース106に対して回転可能とされる。副ロータ20bは、回転軸24に直接は固定されず、回転軸24を回転中心として主ロータ20aに共に副ロータ20bが回転する状態であり、回転拘束機構108を介して副ロータ20bの回転トルクを回転軸24に伝達するトルク伝達状態と、主ロータ20aに対して副ロータ20bが相対的に回転可能な状態であり、回転拘束機構108を介して副ロータ20bの回転トルクを回転軸24に伝達しないトルク非伝達状態とを切り替えることが可能される。副ロータ20bは、回転軸24に対してベアリング32を介して配置され、回転拘束機構108によってトルク非伝達状態にされているときは回転軸24に対して独立して回転可能とされる。
【0020】
主ロータ20aは、外周近傍の位置に形成された複数の磁石装着部に装着された永久磁石22aを備える。また、副ロータ20bは、外周側に偏寄した位置に形成された複数の磁石装着部に装着された永久磁石22bを備える。
【0021】
主ロータ20aに設けられた永久磁石22aは、
図2に示すように、主ロータ20aの周方向に沿って等間隔に配置される。本実施の形態では、1極が1対の2つの分割磁石に分割されてV字型に設けられており、主ロータ20aの周方向に沿って45°(電気角180°)の角度毎に1極ずつ永久磁石22aが配置される。また、周方向で隣り合う極同士では、永久磁石22aの磁極の向きが逆向きになるように設定されている。すなわち、外周側がN極とされた1対の永久磁石22aが装着され、それに隣り合う極では外周側がS極とされた1対の永久磁石22aが装着される。
【0022】
副ロータ20bに設けられた永久磁石22bは、
図3に示すように、主ロータ20aと同様に、周方向に沿って等間隔に配置される。本実施の形態では、1極が1対の2つの分割磁石に分割されてV字型に設けられており、副ロータ20bの周方向に沿って45°(電気角180°)の角度毎に1極ずつ永久磁石22bが配置される。また、周方向で隣り合う極同士では、永久磁石22bの磁極の向きが逆向きになるように設定されている。すなわち、外周側がN極とされた1対の永久磁石22bが装着され、それに隣り合う極では外周側がS極とされた1対の永久磁石22bが装着される。
【0023】
ここで、主ロータ20aにおける複数の永久磁石22aの径方向及び周方向での配置位置と、副ロータ20bにおける複数の永久磁石22bの径方向及び周方向での配置位置とは同一とすることが好適である。
【0024】
本実施の形態では、回転拘束機構108を作動させ、主ロータ20aと副ロータ20bとの相対的な回転位相をずらすことを可能とする。この状態において、ステータ102のコイル12に電流を流すことによって、主ロータ20aと副ロータ20bとを相対的に回転させる。これによって、主ロータ20aと副ロータ20bとにおいて同極の永久磁石22aと永久磁石22bとが回転軸24方向に重なり合う状態(同極対向状態)と、主ロータ20aと副ロータ20bとにおいて逆極の永久磁石22aと永久磁石22bとが回転軸24方向に重なり合う状態(逆極対向状態)と、を切り替えることができる。
【0025】
回転拘束機構108は、第1部材40、第2部材42、第3部材44及び電磁石46を組み合わせて構成される。回転拘束機構108は、主ロータ20aと副ロータ20bとの相対的な回転角を制限することによって、回転軸24を不必要に逆回転させないようにトルク伝達状態とトルク非伝達状態とを切り替える機能を発揮するために設けられる。
【0026】
第1部材40は、
図4の正面図及び裏面図並びに
図5の断面図に示すように、ほぼ円盤形状の部材で構成される。なお、
図5は、
図4のラインA−A及びラインB−Bに沿った断面図を示す。
【0027】
第1部材40は、中心部に回転軸24に嵌め合わされる中心穴50を有する。第1部材40は、中心穴50に回転軸24が貫通するように通されて、回転軸24と一体に回転するように回転軸24に固定される。なお、第1部材40を回転軸24と一体に構成してもよい。
【0028】
また、第1部材40には、表面から裏面を貫くように孔52a〜52dが設けられる。孔52a〜52dは、後述する第2部材42に軸62a〜62dが設けられる位置に対応して、軸62a〜62dがそれぞれ貫通できる大きさで設けられる。なお、本実施の形態では、4つの孔52a〜52dを設けた構成としたが、数はこれに限定されものではなく、第2部材42が第1部材40に対して回転軸24の方向に相対的に移動する際に機械的に十分に支持できるものであればよい。
【0029】
また、第1部材40には、爪部54a〜54dが設けられる。爪部54a〜54dは、第1部材40の裏面から突出した凸部である。爪部54a及び爪部54dは、孔52aと孔52dとの間に60°の間隔をもって配置される。爪部54b及び爪部54cは、孔52bと孔52cとの間に60°の間隔をもって配置される。なお、本実施の形態では、爪部54a〜54dは、それぞれ15°の角度の幅をもつ凸部とされているがこれに限定されるものではなく、後述する第3部材44が第1部材40に対して適切な角度範囲で回転することを許容すると共に、適切な角度範囲を超えて回転することを防止できるものであればよい。
【0030】
また、第1部材40の裏面には、凹部56が設けられる。本実施の形態では、凹部56は、中心穴50と同軸に、中心穴50よりも大きな径で設けられる。凹部56には、
図10の組立図に示すように、第1部材40と第2部材42との間に反発力を発生させるための弾性体48が配置される。
【0031】
第2部材42は、
図6の正面図及び裏面図並びに
図7の断面図に示すように、ほぼ円盤形状の部材42a,42bを2つ重ね合わせて構成される。なお、
図7は、
図6のラインC−C及びラインD−Dに沿った断面図を示す。
【0032】
部材42a,42bは、それぞれ円盤状の部材であり、その少なくとも一部が磁性材料によって構成される。部材42a,42bは、中心部に回転軸24に嵌め合わされる中心穴60a,60bを有する。部材42a,42bは、部材42aの裏面と部材42bの表面とを繋ぐ軸62a〜62dを備える。軸62a〜62dは、第1部材40に設けられた孔52a〜52dにそれぞれ対応する位置に設けられる。
図10に示すように、軸62a〜64dを孔52a〜52dに通した状態とすることによって、第1部材40と第2部材42とは、第1部材40と第2部材42とが回転軸24を中心として相対的に回転することなく一緒に回転し、第2部材42が第1部材40に対して回転軸24の方向に沿って相対的に移動できるように組み合わされる。
【0033】
また、第2部材42の部材42bの裏面には、爪部64a,64bが設けられる。爪部64a,64bは、部材42bの裏面から突出した凸部である。爪部64aは、軸62aと軸62dの間に配置される。爪部64bは、軸62bと軸62cの間に配置される。なお、本実施の形態では、爪部64aと爪部64bとは対称の位置、すなわち180°の角度で設けられる。また、爪部64aは、軸62aから15°の角度の位置から30°の幅の凸部とする。爪部64bは、軸62cから15°の角度の位置から30°の幅の凸部とする。ただし、これに限定されるものではなく、トルク非伝達状態において第3部材44が第1部材40に対して適切な角度で回転することを許容すると共に、トルク伝達状態において第3部材44が第1部材40に対して適切な角度で固定されるものであればよい。
【0034】
また、部材42bの表面には、凹部66が設けられる。本実施の形態では、凹部66は、中心穴60と同軸に、中心穴60よりも大きな径で設けられる。凹部66には、第1部材40と第2部材42との間に反発力を発生させるための弾性体48が配置される。
【0035】
第3部材44は、
図8の正面図及び裏面図並びに
図9の断面図に示すように、ほぼ円盤形状の部材で構成される。なお、
図9は、
図8のラインE−E及びラインF−Fに沿った断面図を示す。
【0036】
第3部材44は、中心部に回転軸24に嵌め合わされる中心穴70を有する。第3部材44は、中心穴70に回転軸24が貫通するように通されるが、トルク非伝達状態では回転軸24と一体に回転せず、トルク伝達状態では回転軸24と一体に回転するように配置される。なお、第3部材44は副ロータ20bと一体に構成してもよい。
【0037】
また、第3部材44の表面には爪部72a,72bが設けられる。爪部72a,72bは、第3部材44の表面から突出した凸部である。本実施の形態では、爪部72aと爪部72bとは対称の位置、すなわち180°の角度で設けられる。また、爪部72a,72bは、15°の幅の凸部とする。ただし、これに限定されるものではなく、トルク非伝達状態において第3部材44が第1部材40に対して適切な角度で回転することを許容すると共に、トルク伝達状態において第3部材44が第1部材40に対して適切な角度で固定されるものであればよい。
【0038】
電磁石46は、磁性材料の芯のまわりにコイルを巻回し、当該コイルに通電することによって磁力を発生させる。本実施の形態では、電磁石46に通電すると、
図10(a)に示すように、電磁石46からの磁力によって回転軸24の軸方向に沿って第2部材42が電磁石46側に吸引されてトルク非伝達状態となる。また、電磁石46への通電を止めると、
図10(b)に示すように、電磁石46からの磁力がなくなり、第1部材40と第2部材42との間に設けられた弾性体48の弾性力によって回転軸24の軸方向に沿って第2部材42が電磁石46の反対側に押されてトルク非伝達状態となる。
【0039】
以下、
図11を参照して、本実施の形態における回転電機100の作用を説明する。
図11は、第1部材40、第2部材42及び第3部材44を組み合わせた状態において
図4,
図6,
図8の周方向にラインG−Gに沿った断面図を示す。また、
図11には、主ロータ20aと副ロータ20bとにそれぞれ設けられた永久磁石22a,22bの極の位相を併せて示す。永久磁石22a,22bの極は、ステータコア10に対してN極が向いた極とS極が向いた極とを異なるハッチングで示している。
【0040】
上記のように、第1部材40と第2部材42とは、孔52a〜52dに軸62a〜62dが通されることによって、互いに一体に回転すると共に、回転軸24の軸方向に沿って相対的に移動可能に組み合わされる。また、第1部材40は、主ロータ20aと共に回転する回転軸24と共に第1部材40と第2部材42が回転するように回転軸24に固定される。一方、第3部材44は、爪部72a,72bが第2部材42の爪部64a,64bと向き合うように配置される。第3部材44は、副ロータ20bと共に回転するように副ロータ20bに固定される。また、第2部材42が第1部材40に対して回転軸24の軸方向に沿って相対的に移動可能であるため、第2部材42は第3部材44に対しても回転軸24の軸方向に沿って相対的に移動可能とされる。
【0041】
初期状態において、
図11(a)に示すように、主ロータ20aの永久磁石22aと副ロータ20bの永久磁石22bとは互いに逆極となっている状態とする。すなわち、主ロータ20aと副ロータ20bとにおいて逆極の永久磁石22aと永久磁石22bとが回転軸24方向に重なり合う状態となっている。
【0042】
また、電磁石46はオフ状態とされ、
図10(b)に示したように弾性体48の弾性力によって第2部材42が第3部材44に対して押し付けられている。このとき、第3部材44の爪部72aが第1部材40の爪部54bと第2部材42の爪部64bとの間に位置する。そして、第2部材42の爪部64bが第3部材44に対して押し付けられていることによって、第3部材44の爪部72aが第1部材40の爪部54bと第2部材42の爪部64bとの間に挟まれて、第1部材40と第3部材44とが回転軸24を回転中心として相対的に回転することなく一緒に回転するトルク伝達状態となる。第1部材40は主ロータ20aに固定されており、第3部材44は副ロータ20bに固定されているので、トルク伝達状態では副ロータ20bは主ロータ20aと一体となって回転する。したがって、副ロータ20bによって生ずるトルクが主ロータ20aによって生ずるトルクと共に回転軸24に伝達される。
【0043】
次に、電磁石46をオン状態とすることによって、
図10(a)に示したように磁性材を含んで構成される第2部材42が電磁石46側に吸引される。これによって、
図11(b)に示すように、第2部材42は、回転軸24の方向に沿って第3部材44から離れる方向に移動する。このとき、第3部材44の爪部72aは第1部材40の爪部54bと第2部材42の爪部64bとの間に位置するが、第2部材42の爪部64bと第3部材44の爪部72aとの係合状態が解放される。これによって、第3部材44の第1部材40に対する相対的な回転が第2部材42によって阻害されなくなり、第1部材40と第3部材44とが回転軸24を回転中心として相対的に回転可能なトルク非伝達状態となる。このとき、副ロータ20bは、主ロータ20a及び回転軸24とは独立しており、副ロータ20bによって生ずるトルクは回転軸24に伝達されない。
【0044】
トルク非伝達状態では、主ロータ20aと副ロータ20bとの相対的な回転速度の差に応じて主ロータ20aと副ロータ20bとが相対的に回転する。これに伴って、
図11(c)に示すように、第3部材44が第1部材40及び第2部材42に対して相対的に回転する。ただし、回転拘束機構108では、第1部材40に爪部54b,54cが設けられているので、
図11(d)に示すように、第3部材44の爪部72aが可動できる範囲は爪部54bと爪部54cとの間の範囲に限定される。
【0045】
図11(d)の状態において、電磁石46をオフ状態とすると、弾性体48の弾性力によって第2部材42が第3部材44に対して押し付けられる。第3部材44の爪部72aが第1部材40の爪部54cと第2部材42の爪部64bとの間に位置している状態で第3部材44の爪部72aが第1部材40の爪部54cと第2部材42の爪部64bとの間に挟まれ、第1部材40と第3部材44とが回転軸24を回転中心として相対的に回転することなく一緒に回転するトルク伝達状態となる。
【0046】
このとき、
図11(a)の逆極状態に対して主ロータ20aと副ロータ20bとは相対的に45°(電気角180°)だけ回転した状態、すなわち主ロータ20aと副ロータ20bとにおいて同極の永久磁石22aと永久磁石22bとが回転軸24方向に重なり合う同極状態となる。
【0047】
以上のように、本実施の形態における回転電機100では、電磁石46によって第2部材42を回転軸24方向に沿って移動させることによって、第1部材40と第3部材44とが回転軸24を回転中心として相対的に回転可能なトルク非伝達状態と、第1部材40と第3部材44とが回転軸24を回転中心として一緒に回転するトルク伝達状態と、を切り替えることができる。そして、トルク非伝達状態において、第1部材40及び第2部材42と第3部材44とを相対的に回転させることによって主ロータ20aと副ロータ20bとの回転位相を変更することで、主ロータ20aと副ロータ20bとを同極状態と逆極状態に切り替えることができる。
【0048】
例えば、エンジン始動時や車輌走行開始時において、主ロータ20aを副ロータ20bに対してエンジンの正回転方向に回転させることによって、主ロータ20aと副ロータ20bが逆極状態から同極状態とすることができる。
【0049】
また、第1部材40に設けられた爪部54a〜54dによって第3部材44の爪部72a,72bの相対的な回転許容範囲が最大で電気角180°(本実施の形態では45°)とされる。これによって主ロータ20aと副ロータ20bとが相対的な回転できる角度が限定されるので、主ロータ20aがエンジンや車輪等に対して不必要に逆回転することを防ぐことができる。
【0050】
なお、
図4,6,8,11に示すように、第2部材42の爪部64a,64b及び第3部材44の爪部72a,72bの周方向の端部をテーパ形状とすることが好適である。これによって、トルク非伝達状態において第1部材40及び第2部材42と第3部材44とを相対的に回転させる際に爪部64a,64bと爪部72a,72bの段差を吸収して相対的な回転をスムーズにすることができる。
【0051】
また、第1部材40の爪部54a〜54d、第2部材42の爪部64a,64b及び第3部材44の爪部72a,72bの当たり面に樹脂等を設けて、これらの部材同士が当った時に衝撃を緩和させるようにすることも好適である。これにより、第1部材40、第2部材42及び第3部材44の破損を防ぎ、接触時の音の発生を抑制したり音を小さくしたりすることができる。
【0052】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態における回転電機200は、
図12に示すように、回転拘束機構108に代えて回転拘束機構110を備える。回転拘束機構110は、回転拘束機構108と同様に第1部材41、第2部材43、第3部材45及びワンウェイクラッチ49を含んで構成される。
【0053】
第1の実施の形態の回転拘束機構108では、トルク非伝達状態において第1部材40の爪部54a〜54dによって第3部材44の爪部72a,72bの可動範囲を制限して主ロータ20aが不必要に逆回転することを防止した。一方、第2の実施の形態では、ワンウェイクラッチ49によって主ロータ20aが逆回転することを防止する構成としている。
【0054】
第1部材41は、
図13の正面図及び裏面図並びに
図14の断面図に示すように、ほぼ円盤形状の部材で構成される。なお、
図14は、
図13のラインA−A及びラインB−Bに沿った断面図を示す。
【0055】
第1部材41は、中心部に回転軸24に嵌め合わされる中心穴51を有する。第1部材41は、中心穴51に回転軸24が貫通するように通されて、回転軸24と一体に回転するように回転軸24に固定される。なお、第1部材41を回転軸24と一体に構成してもよい。
【0056】
また、第1部材41には、表面から裏面を貫くように孔53a〜53dが設けられる。孔53a〜53dは、後述する第2部材43に軸63a〜63dが設けられる位置に対応して、軸63a〜63dがそれぞれ貫通できる大きさで設けられる。なお、本実施の形態では、4つの孔53a〜53dを設けた構成としたが、数はこれに限定されものではなく、第2部材43が第1部材41に対して回転軸24の方向に相対的に移動する際に機械的に十分に支持できるものであればよい。また、第1部材41には、爪部55が設けられる。爪部55は、第1部材41の裏面の外周端に沿って突出した凸部である。爪部55は、第1部材41の裏面において全周に亘って設けられる。
【0057】
さらに、第1部材41の裏面には、凹部57が設けられる。本実施の形態では、凹部57は、中心穴51と同軸に、中心穴51よりも大きな径で設けられる。凹部57には、
図19の組立図に示すように、第1部材41と第2部材43との間に反発力を発生させるための弾性体48が配置される。
【0058】
第2部材43は、
図15の正面図及び裏面図並びに
図16の断面図に示すように、ほぼ円盤形状の部材43a,43bを2つ重ね合わせて構成される。なお、
図16は、
図15のラインC−C及びラインD−Dに沿った断面図を示す。
【0059】
部材43a,43bは、それぞれ円盤状の部材であり、その少なくとも一部が磁性材料によって構成される。部材43a,43bは、中心部に回転軸24に嵌め合わされる中心穴61a,61bを有する。また、本実施の形態では、部材43aの径は第1部材41の径と略同じされ、部材43bの径は部材43aよりも爪部55の幅だけ小さくされる。
【0060】
部材43a,43bは、部材43aの裏面と部材43bの表面とを繋ぐ軸63a〜63dを備える。軸63a〜63dは、第1部材41に設けられた孔53a〜53dにそれぞれ対応する位置に設けられる。
図19に示すように、軸63a〜63dを孔53a〜53dに通した状態とすることによって、第1部材41と第2部材43とは、第1部材41と第2部材43とが回転軸24を中心として相対的に回転することなく一緒に回転し、第2部材43が第1部材41に対して回転軸24の方向に沿って相対的に移動できるように組み合わされる。
【0061】
また、第2部材43の部材43bの裏面には、爪部65a〜65hが設けられる。爪部65a〜65hは、部材43bの裏面から突出した凸部である。爪部65a〜65hは、それぞれ45°(電気角180°)の間隔で配置される。ただし、これに限定されるものではなく、トルク非伝達状態において第3部材45が第1部材41に対して適切な角度で回転することを許容すると共に、トルク伝達状態において第3部材45が第1部材41に対して適切な角度で固定されるものであればよい。
【0062】
また、部材43bの表面には、凹部67が設けられる。本実施の形態では、凹部67は、中心穴61と同軸に、中心穴61よりも大きな径で設けられる。凹部67には、第1部材41と第2部材43との間に反発力を発生させるための弾性体48が配置される。
【0063】
第3部材45は、
図17の正面図及び裏面図並びに
図18の断面図に示すように、ほぼ円盤形状の部材で構成される。なお、
図18は、
図17のラインE−E及びラインF−Fに沿った断面図を示す。
【0064】
第3部材45は、中心部に回転軸24に嵌め合わされる中心穴71を有する。第3部材45は、中心穴71に回転軸24が貫通するように通されるが、トルク非伝達状態では回転軸24と一体に回転せず、トルク伝達状態では回転軸24と一体に回転するように配置される。なお、第3部材45は副ロータ20bと一体に構成してもよい。
【0065】
また、第3部材45の表面には爪部73a,73bが設けられる。爪部73a,73bは、第3部材45の表面から突出した凸部である。本実施の形態では、爪部73aと爪部73bとは対称の位置、すなわち180°の角度で設けられる。ただし、これに限定されるものではなく、トルク非伝達状態において第3部材45が第1部材41に対して適切な角度で回転することを許容すると共に、トルク伝達状態において第3部材45が第1部材41に対して適切な角度で固定されるものであればよい。
【0066】
本実施の形態では、電磁石46に通電すると、
図19(a)に示すように、電磁石46からの磁力によって回転軸24の軸方向に沿って第2部材43が電磁石46側に吸引されてトルク非伝達状態となる。また、電磁石46への通電を止めると、
図19(b)に示すように、電磁石46からの磁力がなくなり、第1部材41と第2部材43との間に設けられた弾性体48の弾性力によって回転軸24の軸方向に沿って第2部材43が電磁石46の反対側に押されてトルク非伝達状態となる。
【0067】
以下、
図20を参照して、本実施の形態における回転電機200の作用を説明する。
図20は、第1部材41、第2部材43及び第3部材45を組み合わせた状態において
図13,
図15,
図17の周方向に沿ったラインG−Gに沿った断面図を示す。また、
図20には、主ロータ20aと副ロータ20bとにそれぞれ設けられた永久磁石22a,22bの極の位相を併せて示す。
【0068】
上記のように、第1部材41と第2部材43とは、孔53a〜53dに軸63a〜63dが通されることによって、互いに一体に回転すると共に、回転軸24の軸方向に沿って相対的に移動可能に組み合わされる。また、第1部材41は、主ロータ20aと共に回転する回転軸24と共に第1部材41と第2部材43が回転するように回転軸24に固定される。一方、第3部材45は、爪部73a,73bが第2部材43の爪部65a〜65hと向き合うように配置される。第3部材45は、副ロータ20bと共に回転するように副ロータ20bに固定される。また、第2部材43が第1部材41に対して回転軸24の軸方向に沿って相対的に移動可能であるため、第2部材43は第3部材45に対しても回転軸24の軸方向に沿って相対的に移動可能とされる。
【0069】
また、本実施の形態では、主ロータ20aは副ロータ20bに対してワンウェイクラッチ49によって一方向のみに回転可能とされる。すなわち、ワンウェイクラッチ49は、一方向移動許容手段として機能し、回転軸24を回転中心として主ロータ20aを副ロータ20bに対して正方向には回転させ、逆方向には回転させないように作用する。ワンウェイクラッチ49は、ラチェット等としてもよい。本実施の形態では、主ロータ20a(第1部材41及び第2部材43)が副ロータ20b(第3部材45)に対して
図20の日左から右にのみ回転できるものとして説明する。
【0070】
初期状態において、
図20(a)に示すように、主ロータ20aの永久磁石22aと副ロータ20bの永久磁石22bとは互いに逆極となっている状態とする。すなわち、主ロータ20aと副ロータ20bとにおいて逆極の永久磁石22aと永久磁石22bとが回転軸24方向に重なり合う状態となっている。
【0071】
また、電磁石46はオフ状態とされ、
図19(b)に示したように弾性体48の弾性力によって第2部材43が第3部材45に対して押し付けられている。このとき、第3部材45の爪部73aは第2部材43の爪部65dと爪部65eとの間に位置し、爪部73aが爪部65eに当接した状態で維持される。これによって、第1部材41と第3部材45とが回転軸24を回転中心として相対的に回転することなく一緒に回転するトルク伝達状態となる。第1部材41は主ロータ20aに固定されており、第3部材45は副ロータ20bに固定されているので、トルク伝達状態では副ロータ20bは主ロータ20aと一体となって回転する。すなわち、副ロータ20bによって生ずるトルクが主ロータ20aによって生ずるトルクと共に回転軸24に伝達される。
【0072】
次に、電磁石46をオン状態とすることによって、
図19(a)に示したように磁性材を含んで構成される第2部材43が電磁石46側に吸引される。これによって、
図20(b)に示すように、第2部材43は、回転軸24の方向に沿って第3部材45から離れる方向に移動する。このとき、第3部材45の爪部73aは第2部材43の爪部65dと爪部65eとの間に位置に位置するが、第2部材43の爪部65eと第3部材45の爪部73aとの係合状態が解放される。これによって、第3部材45の第1部材41に対する相対的な回転が第2部材43によって阻害されなくなり、第1部材41と第3部材45とが回転軸24を回転中心として相対的に回転可能なトルク非伝達状態となる。
【0073】
この状態においてステータ102のコイル12に電流を流すことによって主ロータ20aと副ロータ20bとに回転速度の差を生じさせ、これによって主ロータ20aと副ロータ20bとが相対的に回転する。ただし、主ロータ20aと副ロータ20bとの相対的な回転方向はワンウェイクラッチ49によって制限されており、副ロータ20bは主ロータ20aに対して図中の右から左にのみ回転する。これに伴って、
図20(c)に示すように、第3部材45が第1部材41及び第2部材43に対して相対的に回転する。ここで、第3部材45の爪部73aが第2部材43の爪部65eを超えたタイミングで電磁石46をオフ状態とすることによって、弾性体48の弾性力によって第2部材42が第3部材44に対して押し付けられるが、第3部材45は爪部73aが第2部材43の爪部65fに当接するまで回転する。
【0074】
図20(d)の状態において、第3部材45の爪部73aが第2部材43の爪部65fに当接した位置で止り、第1部材41と第3部材45とが回転軸24を回転中心として相対的に回転することなく一緒に回転するトルク伝達状態となる。
【0075】
このとき、
図20(a)の逆極状態に対して主ロータ20aと副ロータ20bとは相対的に45°(電気角180°)だけ回転した状態、すなわち主ロータ20aと副ロータ20bとにおいて同極の永久磁石22aと永久磁石22bとが回転軸24方向に重なり合う同極状態となる。
【0076】
以上のように、本実施の形態における回転電機200では、電磁石46によって第2部材43を回転軸24方向に沿って移動させることによって、第1部材41と第3部材45とが回転軸24を回転中心として相対的に回転可能なトルク非伝達状態と、第1部材41と第3部材45とが回転軸24を回転中心として一緒に回転するトルク伝達状態と、を切り替えることができる。そして、トルク非伝達状態において、第1部材41及び第2部材43と第3部材45とを相対的に回転させることによって主ロータ20aと副ロータ20bとの回転位相を変更することで、主ロータ20aと副ロータ20bとを同極状態と逆極状態に切り替えることができる。
【0077】
また、ワンウェイクラッチ49を設けることによって、主ロータ20aと副ロータ20bとが相対的な回転できる方向が制限されるので、主ロータ20aがエンジンや車輪等に対して逆回転することを防ぐことができる。
【0078】
<変形例1>
上記第1の実施の形態では、電磁石46による吸引力のみを利用したが、電磁石46による反発力を利用するようにしてもよい。
【0079】
例えば、
図21に示すように、第2部材42の電磁石46に対向する位置に磁石80を設けることによって、電磁石46と磁石80との相互作用により第2部材42に対して吸引力及び反発力を作用させることができる。
【0080】
具体的には、第2部材42が電磁石46に対して吸引されている状態では、第2部材42は第3部材44の第1部材40に対する相対的な回転を阻害せず、第1部材40と第3部材44とが最大で電気角180°の回転が許容されるトルク非伝達状態となる。一方、第2部材42が電磁石46に反発している状態では、第2部材42は第3部材44の第1部材40に対する相対的な回転を阻害し、第1部材40と第3部材44とが一緒に回転するトルク伝達状態となる。
【0081】
また、第2の実施の形態においても同様の構成とすることができる。また、電磁石46によって第2部材42が吸引されている状態においてトルク伝達状態となり、反発している状態においてトルク非伝達状態となるような構成としてもよい。なお、当該構成を採用した場合、弾性体48は不要となる。
【0082】
<変形例2>
また、
図22に示すように、第2部材42に対して回転軸24の径方向に電磁石46を配置した構成としてもよい。また、第2の実施の形態及び上記変形例1においても同様の構成を採用することができる。
【0083】
この場合、第1及び第2の実施の形態並びに変形例1と同様に、電磁石46によって第2部材42に対して磁力を作用させることができるが、回転電機の回転軸24の方向に沿った装置のサイズを小さくすることができる。