(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6318295
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】係船ロープ掛け替え具及び係船ウインチ
(51)【国際特許分類】
B63B 21/16 20060101AFI20180416BHJP
B66D 1/36 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
B63B21/16
B66D1/36 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-183503(P2017-183503)
(22)【出願日】2017年9月25日
【審査請求日】2018年1月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515135745
【氏名又は名称】日本プスネス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】桑野 浩介
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭49−029905(JP,Y1)
【文献】
特開昭56−012294(JP,A)
【文献】
特開昭50−106368(JP,A)
【文献】
特開昭54−155599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/30、 1/72 − 1/76
B63B 21/00 − 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側に外側フランジを有するドラムと、該ドラムを係船ロープの格納部と引張部に分割し、前記係船ロープを前記格納部から前記引張部に掛け替えるための切欠きが設けられた仕切りフランジとを有する係船ウインチに取り付けられる係船ロープ掛け替え具であって、
前記格納部側の前記外側フランジに固定される外側固定部と、前記仕切りフランジに固定される仕切り側固定部と、前記外側固定部と前記仕切り側固定部との間に架け渡され、前記ドラムの回転に伴って前記格納部で巻き取られる前記係船ロープを前記切欠きに向かって移動させるガイド部とを有し、
前記ガイド部は、前記係船ロープの巻き取り方向に対して、上流側の前記外側固定部から下流側の前記仕切り側固定部に向かって傾斜していることを特徴とする係船ロープ掛け替え具。
【請求項2】
請求項1記載の係船ロープ掛け替え具において、前記外側固定部と前記ガイド部は、ピン嵌合により着脱自在に連結されることを特徴とする係船ロープ掛け替え具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の係船ロープ掛け替え具において、前記仕切り側固定部は、前記ガイド部と一体に設けられ、前記仕切りフランジを挟持するクランプ部を有することを特徴とする係船ロープ掛け替え具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の係船ロープ掛け替え具において、前記ガイド部は、前記ドラムを軸方向に見て、前記外側フランジの半径の0.9〜1.3倍の曲率半径を有することを特徴とする係船ロープ掛け替え具。
【請求項5】
両側に外側フランジを有するドラムと、該ドラムを係船ロープの格納部と引張部に分割し、前記係船ロープを前記格納部から前記引張部に掛け替えるための切欠きが設けられた仕切りフランジとを有し、請求項1〜4のいずれか1記載の係船ロープ掛け替え具が、前記格納部側の前記外側フランジと前記仕切りフランジとの間に着脱自在に取り付けられることを特徴とする係船ウインチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係船作業時に係船ロープをドラムの格納部から引張部に容易に掛け替えることができる係船ロープ掛け替え具及び係船ウインチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主に原油タンカー等の船舶に搭載される係船ウインチでは、基本的に、係船ロープを巻き取って格納するための格納部と、係船ロープを一層巻してテンション(張力)を掛けるための引張部(張力部)に分割されたドラム(スプリットドラム)が採用されている。
船舶の係船作業を行う場合、まず、ドラムから繰り出した係船ロープの先端を港湾の係船設備に引っ掛け、係船ウインチのドラムを回転させて係船ロープを格納部に巻き取って行く。そして、最終的に船舶を固定するために、係船ロープを格納部から引張部に掛け替え、一層分(例えば、5〜10巻き程度)巻き取ることにより、係船ロープにテンションを掛けている。これにより、1層目で定格能力を得られ、格納部に巻き取られた係船ロープに張力が掛かることはなく、格納部の下層の係船ロープに上層の係船ロープが食い込むことを防止して、係船ロープ間の摩擦による損耗の発生を防いでいる。このとき、ドラムを格納部と引張部に分割する仕切りフランジ(スプリットフランジ、分離フランジ)には、予め格納部と引張部を連通させる切欠きが設けられており、係船ロープを切欠きに通すことにより、格納部から引張部への掛け替え作業を行うことができる。
しかし、係船ロープとしてワイヤーロープを使用する場合、自重や復元力が大きいため、ロープフック等の道具を使用して、2〜3人がかりでロープを引っ張り、掛け替え作業を行わなければならず、オペレーターや作業指揮者を含めると、4〜5人の人員が必要であり、労力や手間がかかる作業となっていた。また、作業中に作業者がロープに巻き込まれたり、跳ね飛ばされたりする危険性や、足を滑らせて転倒する危険性もあった。
これに対し、例えば、特許文献1には、両側にフランジを備え、中心に回転軸を備える船舶用ドラムにおいて、中央に右切欠円盤及び左切欠円盤を設け、右切欠円盤と左切欠円盤の切欠端部を板で斜めに連結し、引張ドラム(引張部)と貯蔵ドラム(格納部)とを構成し、径が偏心的に漸次減少する案内溝を構成した船舶用ドラムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52−22760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、貯蔵ドラム側の右切欠円盤の切欠を通って案内溝に案内された後のロープを無理なく引張ドラム側に導くことを目的としたものである。従って、ロープの掛け替えを行う際には、人力でロープを引っ張り、右切欠円盤を乗り越えるようにして、ロープを切欠に通さなければならず、従来と同様の労力と手間を必要とし、省力性、作業性に欠けるという問題がある。また、構造が複雑で、専用のドラムを製造する必要があり、既存のドラムを有効に利用することができず、省資源性にも欠けるという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、既存の係船ウインチのドラムに簡単に取り付け可能で、係船ロープの掛け替え作業性を向上させることができる利便性に優れた係船ロープ掛け替え具、及びそれを備えることにより、人手を削減して係船ロープの掛け替え作業を容易に行うことができる省力性、安全性に優れた係船ウインチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る係船ロープ掛け替え具は、両側に外側フランジを有するドラムと、該ドラムを係船ロープの格納部と引張部に分割し、前記係船ロープを前記格納部から前記引張部に掛け替えるための切欠きが設けられた仕切りフランジとを有する係船ウインチに取り付けられる係船ロープ掛け替え具であって、
前記格納部側の前記外側フランジに固定される外側固定部と、前記仕切りフランジに固定される仕切り側固定部と、前記外側固定部と前記仕切り側固定部との間に架け渡され、前記ドラムの回転に伴って前記格納部で巻き取られる前記係船ロープを前記切欠きに向かって移動させるガイド部とを有
し、
前記ガイド部は、前記係船ロープの巻き取り(移動)方向に対して、上流側の前記外側固定部から下流側の前記仕切り側固定部に向かって傾斜している。
【0006】
第1の発明に係る係船ロープ掛け替え具において、前記外側固定部と前記ガイド部は、ピン嵌合により着脱自在に連結されることが好ましい。
【0007】
第1の発明に係る係船ロープ掛け替え具において、前記仕切り側固定部は、前記ガイド部と一体に設けられ、前記仕切りフランジを挟持するクランプ部を有することが好ましい。
【0008】
【0009】
第1の発明に係る係船ロープ掛け替え具において、前記ガイド部は、前記ドラムを軸方向に見て、前記外側フランジの半径の0.9〜1.3倍の曲率半径を有することが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る係船ウインチは、
両側に外側フランジを有するドラムと、該ドラムを係船ロープの格納部と引張部に分割し、前記係船ロープを前記格納部から前記引張部に掛け替えるための切欠きが設けられた仕切りフランジとを有し、第1の発明に係る係船ロープ掛け替え具が
、前記格納部側の前記外側フランジと前記仕切りフランジとの間に着脱自在に取り付けられる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る係船ロープ掛け替え具は、格納部側の外側フランジに固定される外側固定部と、仕切りフランジに固定される仕切り側固定部と、外側固定部と仕切り側固定部との間に架け渡され、ドラムの回転に伴って格納部に巻き取られる係船ロープを切欠きに向かって移動させるガイド部とを有するので、既存の係船ウインチに取り付けてドラムを回転させるだけで、人手によらず係船ロープを格納部から引張部に簡単に掛け替えることができ、作業性を向上させることができる。また、格納部側の外側フランジに固定される外側固定部と、仕切りフランジに固定される仕切り側固定部を有するので、係船ロープの掛け替えを行う時以外は取り外して、従来通り、格納部への係船ロープの巻き取り、及び格納部からの係船ロープの繰り出しを行うことができる。
【0012】
外側固定部とガイド部がピン嵌合により着脱自在に連結される場合、外側固定部を外側フランジに固定したまま、仕切り側固定部とガイド部を係船ウインチから取り外すことができ、着脱作業性に優れる。
仕切り側固定部がガイド部と一体に設けられ、仕切りフランジを挟持するクランプ部を有する場合、仕切り側固定部を介してガイド部を仕切りフランジに強固に固定することができるので、係船ロープの掛け替え時にガイド部に負荷がかかっても、係船ロープをガイド部に沿って切欠きまで確実に移動させることができ、動作の確実性に優れる。また、仕切り側固定部がクランプ部によって仕切りフランジに固定されるので、着脱を容易に行うことができる。
また、ガイド部が、係船ロープの巻き取り(移動)方向に対して、上流側の外側固定部から下流側の仕切り側固定部に向かって傾斜(ドラムの回転方向に対して、下流側の外側固定部から上流側の仕切り側固定部に向かって傾斜)している
ので、係船ロープをガイド部に沿って切欠きまでスムーズに移動させることができ、掛け替え動作の安定性に優れる。
ガイド部が、ドラムを軸方向に見て、外側フランジの半径の0.9〜1.3倍の曲率半径を有する場合、係船ロープがガイド部に沿って移動する際に、先に格納部に巻き取られている係船ロープと干渉し難く、掛け替え動作の確実性を向上させることができる。
【0013】
第2の発明に係る係船ウインチは、第1の発明に係る係船ロープ掛け替え具が着脱自在に取り付けられることにより、人手を必要とすることなく、係船ロープの掛け替え作業を容易に(自動的に)行うことができ、省力性、安全性に優れる。また、係船ロープ掛け替え具は、容易に着脱できるので、係船ロープの掛け替えを行う時以外の格納部での係船ロープの巻き取りや繰り出しの動作の妨げになることはなく、操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る係船ロープ掛け替え具を備えた係船ウインチの正面図である。
【
図2】(A)、(B)はそれぞれ同係船ロープ掛け替え具が取り付けられたドラムの一部破断側面図及び正面図である。
【
図3】(A)は同係船ロープ掛け替え具の外側固定部の拡大側面図であり、(B)は(A)のA−A線矢視断面図である。
【
図5】(A)、(B)はそれぞれ同係船ロープ掛け替え具が取り付けられたドラムの変形例の一部破断側面図及び背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
以下、
図1〜
図4を参照して、本発明の一実施の形態に係る係船ロープ掛け替え具10を備えた係船ウインチ11について説明する。
係船ウインチ11は、主に原油タンカー等の船舶に搭載され、係船作業に使用される。一般的な係船ウインチ11は、
図1に示すように、両側に外側フランジ12を有する2つのドラム13が左右勝手違いに配置された構成となっており、中央部の駆動モーター14と減速機15からなる駆動部16によって各ドラム13を回転させて、係船ロープ20の巻き取りと繰り出しを行う。なお、ドラム13に対して、係船ロープ20が進入してくる側を係船ウインチ11の正面とし、2つのドラム13の構成及び動作は左右勝手違いであるため、以下では、左側のドラム13について詳細を説明する。
【0016】
ドラム13は、幅方向中央部に設けられた仕切りフランジ21により、係船ロープ20の格納部22と引張部23に分割されている。なお、仕切りフランジ21には、
図2(A)に示すように、係船ロープ20を格納部22から引張部23に掛け替えるための切欠き24が180度対向位置に設けられている。そして、
図1、
図2(A)、(B)に示すように、係船ウインチ11には、ドラム13の外側フランジ12と仕切りフランジ21との間をそれぞれの外周側で斜めに連結する係船ロープ掛け替え具10が着脱自在に取り付けられている。係船ロープ掛け替え具10は、ドラム13の格納部22側の外側フランジ12に固定される外側固定部25と、仕切りフランジ21に固定される仕切り側固定部26を有しており、外側固定部25と仕切り側固定部26との間に丸パイプで形成されたガイド部27が傾斜して架け渡されている。なお、本実施の形態においては、ドラム13が
図2(A)の矢印aの方向に回転することにより、係船ロープ20が矢印bの方向に引っ張られ、ドラム13の下側で巻き取られており、これを下巻きという。仕切り側固定部26は、係船ロープ20の移動方向(巻き取り方向)に対していずれか1つの切欠き24の下流側(ドラム13の回転に対して切欠き24の上流側)に取り付けられる。これにより、係船ロープ掛け替え具10を取り付けた状態でドラム13を
図2(A)の矢印aの方向に回転させると、格納部22で巻き取られる係船ロープ20をガイド部27に沿って仕切りフランジ21側(
図2(B)の矢印cの方向)に移動させ、切欠き24まで案内することができる。そして、係船ロープ20は切欠き24を通過して自動的に格納部22から引張部23に掛け替えられ、引張部23に巻き取られて所定の張力を発生させることができる。
【0017】
外側固定部25の位置は、仕切り側固定部26(1つの切欠き24)の位置を基準にして決められるが、例えば、外側固定部25と仕切り側固定部26を直線で結んだ状態を正面から見た時に、水平面(ドラム13の回転軸)に対する傾斜角度が50度〜75度程度であることが好ましい。また、
図1、
図2(A)に示すように、ガイド部27が係船ロープ20の巻き取り(移動)方向に対して、上流側の外側固定部25から下流側の仕切り側固定部26に向かって(仕切りフランジ側が凸となる)円弧状に湾曲していることにより、係船ロープ20が途中で引っ掛かることなく、ガイド部27に沿ってスムーズに移動できる。なお、ドラム13を軸方向に見て、ガイド部27の曲率半径が、外側フランジ12の半径の0.9〜1.3倍程度であれば、係船ロープ20がガイド部27に沿って移動する際に、先に格納部22に巻き取られている係船ロープ20と干渉し難く、掛け替え動作の安定性、確実性が向上するが、これに限定されるものではない。特に、
図2(B)に示すように、ドラム13を軸方向に見て、ガイド部27が外側フランジ12の半径と同等以上の曲率半径を有する円弧状に湾曲している、つまり、ガイド部27が外側フランジ12の外側を通る円弧状に形成されている場合、係船ロープ20の干渉を確実に防止できる。
なお、係船ロープ掛け替え具10(外側固定部25、仕切り側固定部26、及びガイド部27)の材質としては、軽量で強度があり、防錆性に優れるステンレスが好適に用いられるが、これに限定されるものではない。例えば、表面に防錆処理を施した鉄等の金属やその他の合金を用いてもよい。
【0018】
次に、外側固定部25の詳細について説明する。
図3(A)、(B)に示すように、外側固定部25は、ドラム13の格納部22側の外側フランジ12の内側面に当接する当接片30と、当接片30と間隔を空けて対向配置された対向片31を有している。そして、対向片31にはクランプスクリュー32が進退自在に螺着されており、当接片30と対向片31の間に外側フランジ12の外周部を挟み込み、クランプスクリュー32を締め付けることにより、外側フランジ12に外側固定部25を固定することができる。このとき、外側固定部25の取付け位置に合わせて外側フランジ12に予めノック孔33を設けておき、当接片30に形成した挿通孔34からノックピン35を打ち込めば、外側固定部25の位置ずれを防止して強固に固定することができる。また、ガイド部27の一端側にはドラム13の回転中心軸と平行に嵌合ピン36が設けられており、外側フランジ12の外方に突出する当接片30の先端側には嵌合孔37が設けられている。よって、この嵌合ピン36を嵌合孔37に挿抜すること(ピン嵌合)により、外側固定部25に対してガイド部27を簡単に着脱することができる。
【0019】
係船ロープ掛け替え具10を取り付けた状態でドラム13を回転させた際に、格納部22で巻き取られる係船ロープ20は、
図2(B)の矢印cで示すように、ガイド部27の右側(仕切りフランジ21側)を下から上に向かって移動し、係船ロープ20からガイド部27を外側フランジ12側に押し付ける方向に力が加わるので、ドラム13の回転中心軸と平行に設けられた嵌合ピン36が嵌合孔37から抜けることはなく、外側固定部25でガイド部27を確実に支持することができる。
なお、本実施の形態では、ガイド部27に嵌合ピン36を設け、当接片30に嵌合孔37を設けたが、ガイド部に嵌合孔を設け、当接片に嵌合ピンを設けてもよい。
【0020】
次に、仕切り側固定部26の詳細について説明する。
図4に示すように、仕切り側固定部26は、一対の挟持片39、40が間隔を空けて対向配置された断面コ字形のクランプ部41を有している。そして、一方の挟持片40にクランプ螺子42が進退自在に螺着され、クランプ螺子42の頭部にクランプ螺子42を回転させるための操作用ハンドル43が設けられている。よって、一対の挟持片39、40の間に仕切りフランジ21の外周部(切欠き
24の角部)を挟み込み、操作用ハンドル43を回転させてクランプ螺子42を締め付けることにより、仕切りフランジ21に仕切り側固定部26を固定することができる。このとき、操作用ハンドル43を仕切りフランジ21の格納部側22に設けることにより、係船ロープ20をガイド部27に沿って移動させて引張部22に掛け替える際に、係船ロープ20が操作用ハンドル43に引っ掛かることがなく、掛け替え動作の確実性に優れる。
【0021】
なお、クランプ部41とガイド部27の端部は溶接等で連結、固定されており、これにより、仕切り側固定部26とガイド部27を一体化して、仕切り側固定部26でガイド部27を確実に保持できる。また、
図4に示すように、クランプ部41のガイド部27側の端部に、切欠き
24の上端側の端面に当接する当接部44が設けられている。これにより、係船ロープ20が、
図2(B)の矢印cで示すように、ガイド部27に沿って移動する際に、係船ロープ20からガイド部27をドラム13の回転方向(
図2(B)の矢印b)と反対の円周方向に回転させようとする力が加わっても、クランプ部41が移動することはなく、ガイド部27を所定位置に保持して、係船ロープ20を確実に切欠き
24までガイドすることができる。
係船ロープ20の巻き取りや繰り出しを行う際には、クランプ螺子42を緩めて仕切り側固定部26の固定を解除した後、仕切り側固定部26と共にガイド部27を嵌合ピン36を中心にドラム13の外方に回動させ、嵌合ピン36を外側固定部25の嵌合孔37から引き抜くことにより、外側固定部25のみを残して、仕切り側固定部26とガイド部27をドラム13から取り外すことができる。外側フランジ12に外側固定部25を取り付けたままでも係船ロープ20の巻き取りや繰り出しには支障がなく、次からのガイド部27の取り付け作業を簡素化できる。
【0022】
ここまで、ドラム13の下側で係船ロープ20が巻き取られる下巻きの場合について説明したが、変形例として、ドラム13の上側で係船ロープ20が巻き取られる上巻きの場合について、以下に説明する。
図5(A)、(B)においては、ドラム13が
図5(A)の矢印aの方向に回転することにより、係船ロープ20が矢印bの方向に引っ張られ、ドラム13の上側で巻き取られており、これを上巻きという。この
図5(A)、(B)に示した変形例は、
図2(A)、(B)と上下が反転して(仕切りフランジ21の切欠き24の位置が90度ずれて)おり、ドラム13の回転方向が逆転していることに対応して、係船ロープ掛け替え具10の取り付け方向を変更しているが、係船ロープ掛け替え具10の構造は同一である。また、仕切り側固定部26が、係船ロープ20の移動方向に対していずれか1つの切欠き24の下流側(ドラム13の回転に対して切欠き24の上流側)に取り付けられる点も同じである。よって、係船ロープ掛け替え具10を取り付けた状態でドラム13を
図5(A)の矢印aの方向に回転させると、格納部22で巻き取られる係船ロープ20をガイド部27に沿って仕切りフランジ21側(矢印cの方向)に移動させ、切欠き24まで案内することができる。そして、係船ロープ20は切欠き24を通過して自動的に格納部22から引張部23に掛け替えられ、引張部23に巻き取られて所定の張力を発生させることができる。なお、この場合も、2つのドラムを左右勝手違いに配置して係船ウインチを構成することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
上記実施の形態では、仕切りフランジに2つの切欠きが設けられている場合について説明したが、係船ロープ掛け替え具は、係船ロープをドラムの格納部から引張部に掛け替える際に、格納部に巻き取られる係船ロープを切欠きにガイドするためのものなので、1つの切欠きに対して取り付ければよく、切欠きの数や形状に関わらず適用することができる。
また、外側固定部及び仕切り側固定部の構造や固定方法は、適宜、選択することができる。例えば、外側フランジに貫通孔を設け、外側固定部を直接、螺子止め等により固定してもよい。また、上記実施の形態では、左右のドラムの間(中央部)に駆動部を設けた係船ウインチについて説明したが、係船ウインチの構造はこれに限定されるものではなく、例えば、左右いずれか一方の端部に駆動部を設けてもよい。
さらに、上記実施の形態では、ガイド部を正面視して外側固定部から仕切り側固定部に向かって円弧状に湾曲させる際に、仕切りフランジ側に膨らむ(仕切りフランジ側が凸となる)ように形成したが、係船ロープを切欠きに向かってスムーズに案内できる傾斜した形状であれば、適宜、選択することができる。例えば、外側フランジ側に膨らむ(外側フランジ側が凸となる)円弧状に湾曲させて形成してもよいし、円弧状以外の直線状や曲線状、或いは円弧と直線や曲線を組合せた形状に形成してもよい。
また、上記実施の形態では、棒状の操作用ハンドルを用いたが、操作用ハンドルはクランプ螺子を回転させることができればよく、その形状は、適宜、選択することができる。例えば、円形状や多角形状等に形成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
10:係船ロープ掛け替え具、11:係船ウインチ、12:外側フランジ、13:ドラム、14:駆動モーター、15:減速機、16:駆動部、20:係船ロープ、21:仕切りフランジ、22:格納部、23:引張部、24:切欠き、25:外側固定部、26:仕切り側固定部、27:ガイド部、30:当接片、31:対向片、32:クランプスクリュー、33:ノック孔、34:挿通孔、35:ノックピン、36:嵌合ピン、37:嵌合孔、39、40:挟持片、41:クランプ部、42:クランプ螺子、43:操作用ハンドル、44:当接部
【要約】
【課題】既存の係船ウインチのドラムに簡単に取り付け可能で、係船ロープの掛け替え作業性を向上させることができる利便性に優れた係船ロープ掛け替え具及びそれを備えることにより、人手を削減して係船ロープの掛け替え作業を容易に行うことができる省力性、安全性に優れた係船ウインチを提供する。
【解決手段】両側に外側フランジ12を有し、切欠き24が設けられた仕切りフランジ21によって係船ロープ20の格納部22と引張部23に分割されたドラム13を備えた係船ウインチ11に取り付けられる係船ロープ掛け替え具10であって、格納部22側の外側フランジ12に固定される外側固定部25と、仕切りフランジ21に固定される仕切り側固定部26と、外側固定部25と仕切り側固定部26との間に架け渡され、ドラム13の回転に伴って格納部22で巻き取られる係船ロープ20を切欠き24に向かって移動させるガイド部27とを有する。
【選択図】
図2