(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6318580
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】有機溶剤回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20180423BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20180423BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20180423BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20180423BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20180423BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20180423BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20180423BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01D53/26 220
B01J20/20 B
B01J20/18 B
B01J20/10 D
B01J20/34 B
B01J20/28 A
B01D53/02
B01J20/34 F
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-243701(P2013-243701)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-100754(P2015-100754A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 武将
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 勉
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−132582(JP,A)
【文献】
特開平02−090921(JP,A)
【文献】
特開2013−128905(JP,A)
【文献】
特開2007−044595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01D 53/26−53/28
B01D 53/34−53/85
B01J 20/00−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸着材により有機溶剤含有ガスから有機溶剤を吸着除去し、清浄ガスを排出すると共に、一方で吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着して有機溶剤含有濃縮ガスを排出する吸着濃縮処理装置と、
第2吸着材により前記有機溶剤含有濃縮ガスから有機溶剤を吸着除去すると共に、一方で吸着した有機溶剤をキャリアガスにより脱着し、冷却凝縮して液化回収する有機溶剤回収装置とから構成されるシステムであって、
前記吸着濃縮処理装置に導入する加熱ガスを除湿手段で除湿することを特徴とする有機溶剤回収システム。
【請求項2】
前記吸着濃縮処理装置の第1吸着材が、疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子、活性炭含有ハニカム状吸着素子および活性炭素繊維から選ばれた少なくとも1つを含有する請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項3】
前記有機溶剤回収装置の第2吸着材が、活性炭素繊維、粒状活性炭、球状活性炭、疎水性シリカゲル、活性炭含有ハニカム状吸着素子および疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子から選ばれた少なくとも1つを含有する請求項1または2に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項4】
前記有機溶剤回収装置で有機溶剤を吸着除去した後の吸着出口ガスが前記吸着濃縮処理装置の吸着入口ガスに混合されるように通風される請求項1から3のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項5】
前記有機溶剤回収装置で有機溶剤を吸着除去した後の吸着出口ガスが前記除湿手段の除湿前気体として通風される請求項1から3のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項6】
前記除湿手段が吸着材によって気体中水分の吸着と脱着を連続的に実施して除湿する除湿装置である請求項1から5のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項7】
前記除湿装置で吸着した水分が除湿装置脱着用の加熱ガスによって脱着され、前記除湿装置脱着用の加熱ガスが前記吸着濃縮処理装置から排出される清浄ガスまたは除湿処理後のガスのいずれか一部を加熱したガスである請求項6に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項8】
前記有機溶剤回収装置がキャリアガスを循環するように通流される循環経路と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を液化凝縮して回収する凝縮器と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を吸着および脱着する第3吸着材とを備え、
前記第3吸着材から排出された高温の状態または低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節する第2吸着材脱着用ヒーターをさらに含み、前記有機溶剤含有濃縮ガスと、前記第2吸着材脱着用ヒーターによって高温の状態にあるキャリアガスとを、時間的に交互に前記第2吸着材に接触させることにより、有機溶剤を前記有機溶剤含有濃縮ガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させ、
前記凝縮器は、前記第2吸着材から排出された高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節することによって有機溶剤を凝縮させ、
前記凝縮器から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態および低温の状態のいずれかに時間的に交互に温度調節する第3吸着材用温度調節器をさらに含み、前記第3吸着材用温度調節器にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスと、前記第3吸着材用温度調節器にて温度調節されて低温の状態にあるキャリアガスとを、時間的に交互に前記第3吸着材に接触させることにより、有機溶剤を低温の状態にあるキャリアガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させ、
前記第3吸着材用温度調節器は、前記第2吸着材から有機溶剤を脱着させる脱着処理期間の初期段階において、前記凝縮器から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節し、前記第2吸着材から有機溶剤を脱着させる脱着処理期間の後期段階において、前記凝縮器から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節する請求項1から7のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項9】
前記第3吸着材が活性炭素繊維、粒状活性炭、球状活性炭、活性炭含有ハニカム状吸着素子および疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子から選ばれた少なくとも1つを含有する請求項8に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項10】
前記キャリアガスが、不活性ガスである請求項1から9のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれる有機溶剤含有ガスを連続的に吸着と脱着を行い処理する吸着濃縮処理装置で高濃度かつ小風量の有機溶剤含有濃縮ガスに濃縮処理した後、さらに吸着と脱着を行い処理する有機溶剤回収装置で有機溶剤含有濃縮ガスから有機溶剤を吸着除去し、吸着した有機溶剤をキャリアガスによって脱着した後、冷却凝縮して液化回収するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有害大気汚染物質に対する排出濃度規制の強化に伴い、有機溶剤含有ガス処理装置の需要が高まっている。中でも有機溶剤を液化回収する有機溶剤回収装置は、有機溶剤を燃焼して無害化する燃焼装置より二酸化炭素排出量が少なく、また回収した有機溶剤を再利用できる等の利点がある。最近では回収した有機溶剤の高品質化や排水処理工程の簡略化を目的とした低排水量の有機溶剤回収装置が望まれている。
【0003】
従来の前記有機溶剤回収装置は、吸着材で有機溶剤含有ガス中の有機溶剤を吸着除去する吸着工程と、キャリアガスによって吸着材に吸着された有機溶剤を脱着する脱着工程を設け、この吸着工程と脱着工程を交互に行う切替え手段または連続的に行う手段を設けて構成されている。
【0004】
前記有機溶剤回収装置の例として、吸着材に活性炭素繊維を用い、有機溶剤含有ガス中の有機溶剤の吸着と脱着を交互に切り替え行う二対の吸着層を設け、加熱した窒素ガスを使用して有機溶剤を脱着して冷却凝縮し、液化回収する装置が特許文献1に提案されている。また、特許文献2では、吸着材に球状活性炭を用いて有機溶剤を吸着する吸着部と、該吸着部を経て移動層を形成しながら流動的に下降する吸着材に対し加熱した窒素ガスを向流接触させることによって有機溶剤を脱着する脱離部とを備え、脱着した有機溶剤を冷却凝縮し、液化回収する装置が提案されている。
【0005】
しかしながら、有機溶剤含有ガスの湿度が高い場合、従来のシステムでは有機溶剤と共にガス中の水分も吸着材で吸着されるため、回収される凝縮液中の排水量が多くなる傾向がある。排水量が多い場合、有機溶剤として再利用するために蒸留処理や脱水処理の設備が別途必要となり、精製には大量のエネルギーを費やさなければならない問題があった。
【0006】
特許文献3では吸着材にハニカム状吸着素子を用いて有機溶剤含有ガス中の有機溶剤を吸着除去し、一方では加熱ガスによる脱着で得られた有機溶剤含有濃縮ガスを冷却凝縮することで液化回収するシステムにおいて、前期加熱ガスを除湿処理することで回収される有機溶剤の排水量を低減できるシステムが提案されている。しかしながら、そのシステムではモノエタノールアミンやN−メチル−2−ピロリドン等の比較的高沸点で蒸気圧の低い有機溶剤でしか適応できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2011−281746号公報
【特許文献2】特願2008−258542号公報
【特許文献3】特願2005−229857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、有機溶剤含有ガスを第1の吸着材で吸着除去し、一方で吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着して得られた有機溶剤含有濃縮ガスを再び第2の吸着材で吸着除去し、吸着した有機溶剤をキャリアガスによって脱着した後、冷却凝縮して液化回収するシステムにおいて、冷却凝縮によって回収される排水量を低減し、回収される有機溶剤の精製に必要な設備またはエネルギーを削減することができる有機溶剤回収システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.第1吸着材により有機溶剤含有ガスから有機溶剤を吸着除去し、清浄ガスを排出すると共に、一方で吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着して有機溶剤含有濃縮ガスを排出する吸着濃縮処理装置と、
第2吸着材により前記有機溶剤含有濃縮ガスから有機溶剤を吸着除去すると共に、一方で吸着した有機溶剤をキャリアガスにより脱着し、冷却凝縮して液化回収する有機溶剤回収装置とから構成されるシステムであって、
前記吸着濃縮処理装置に導入する加熱ガスを除湿手段で除湿することを特徴とする有機溶剤回収システム。
2.前記吸着濃縮処理装置の第1吸着材が、疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子、活性炭含有ハニカム状吸着素子および活性炭素繊維から選ばれた少なくとも1つを含有する上記1に記載の有機溶剤回収システム。
3.前記有機溶剤回収装置の第2吸着材が、活性炭素繊維、粒状活性炭、球状活性炭、疎水性シリカゲル、活性炭含有ハニカム状吸着素子および疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子から選ばれた少なくとも1つを含有する上記1または2に記載の有機溶剤回収システム。
4.前記有機溶剤回収装置で有機溶剤を吸着除去した後の排気ガスが前記吸着濃縮処理装置の吸着入口ガスに混合されるように通風される上記1から3のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
5.前記有機溶剤回収装置で有機溶剤を吸着除去した後の吸着出口ガスが前記除湿手段の除湿前気体として通風される上記1から3のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
6.前記除湿手段が吸着材によって気体中水分の吸着と脱着を連続的に実施して除湿する除湿装置である上記1から5のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
7.前記除湿装置で吸着した水分が除湿装置脱着用の加熱ガスによって脱着され、前記除湿装置脱着用の加熱ガスが前記吸着濃縮処理装置から排出される清浄ガスまたは除湿処理後のガスのいずれか一部を加熱したガスである上記6に記載の有機溶剤回収システム。
8.前記有機溶剤回収装置がキャリアガスを循環するように通流される循環経路と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を液化凝縮して回収する凝縮器と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を吸着および脱着する第3脱着材とを備え、
前記第3脱着材から排出された高温の状態または低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節する第2吸着材脱着用ヒーターをさらに含み、前記有機溶剤含有濃縮ガスと、前記第2吸着材脱着用ヒーターによって高温の状態にあるキャリアガスとを、時間的に交互に前記第2吸着材に接触させることにより、有機溶剤を前記有機溶剤含有濃縮ガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させ、
前記凝縮器は、前記第2吸着材から排出された高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節することによって有機溶剤を凝縮させ、
前記凝縮器から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態および低温の状態のいずれかに時間的に交互に温度調節する第3吸着材用温度調節器をさらに含み、前記第3吸着材用温度調節器にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスと、前記第3吸着材用温度調節器にて温度調節されて低温の状態にあるキャリアガスとを、時間的に交互に前記第3吸着材に接触させることにより、有機溶剤を低温の状態にあるキャリアガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させ、
前記第3吸着材用温度調節器は、前記第2吸着材から有機溶剤を脱着させる脱着処理期間の前記段階において、前記凝縮器から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節し、前記第2吸着材から有機溶剤を脱着させる脱着処理期間の後期段階において、前記凝縮器から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節する上記1から7のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
9.前記第3吸着材が活性炭素繊維、粒状活性炭、球状活性炭、活性炭含有ハニカム状吸着素子および疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子から選ばれた少なくとも1つを含有する上記8に記載の有機溶剤回収システム。
10.前記キャリアガスが、不活性ガスである上記1から9のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機溶剤回収システムは、第1吸着材により有機溶剤含有ガスから有機溶剤を吸着除去し、清浄ガスを排出すると共に、一方で吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着して有機溶剤含有濃縮ガスを排出する吸着濃縮処理装置と、第2吸着材により前記有機溶剤含有濃縮ガスから有機溶剤を吸着除去すると共に、一方で吸着した有機溶剤をキャリアガスによって脱着し、冷却凝縮して液化回収する有機溶剤回収装置から構成されるシステムにおいて、前記吸着濃縮処理装置に導入される加熱ガスを除湿する除湿手段を設けることで、液化回収される有機溶剤中の排水量を著しく低減でき、蒸留処理や脱水処理といった有機溶剤の精製に必要なエネルギーの低減や精製工程そのものを省略することができる。また、液化回収される有機溶剤中の排水量を低減することで、有機溶剤の酸化や加水分解等による品質低下を抑制することができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である有機溶剤回収システムのフロー図例である。
【
図2】本発明の一実施形態である有機溶剤回収システムの有機溶剤回収装置のフロー図例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでいう有機溶剤とは、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、O−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、フロン−112、フロン−113、HCFC、HFC、臭化プロピル、ヨウ化ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ビニル、プロピオン酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、炭酸ジエチル、蟻酸エチル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アニソール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、O−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アクリロニトリル、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、イソノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、テトラデカン、デカリン、ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン、1, 3, 5−トリメチルベンゼン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシド等のいずれかまたはそれらの混合物を指す。
【0013】
以下、本発明を詳細に示す。
本発明は第1吸着材により有機溶剤含有ガスから有機溶剤を吸着除去し、清浄ガスを排出するとともに、一方で吸着した有機溶剤を加熱ガスにより脱着して有機溶剤含有濃縮ガスを排出する吸着濃縮処理装置と、第2吸着材により前記有機溶剤含有濃縮ガスから有機溶剤を吸着除去するとともに、一方で吸着した有機溶剤をキャリアガスによって脱着し、冷却凝縮して液化回収する有機溶剤回収装置から構成されるシステムにおいて、前記吸着濃縮処理装置の脱着入口側に除湿手段を設けることが好ましい。前記吸着濃縮処理装置の吸着出口側に除湿手段を設けた場合、除湿された水分に有機溶剤が含有され、有機溶剤含有ガスまたは有機溶剤含有排水として系外に排出される恐れがある。前記吸着濃縮処理装置の脱着入口ガスを除湿することで、このような問題はなくなり、前記有機溶剤含有濃縮ガスの湿度が効率よく低減され、前記有機溶剤回収装置の第2吸着材の水分吸着量を低減でき、キャリアガスによって脱着した後に凝縮器で液化回収される有機溶剤中の排水量を著しく低減することができる。また、前記吸着濃縮処理装置の脱着入口ガスを除湿することで第1吸着材の脱着効率が向上し、吸着濃縮処理装置の除去効率が向上する効果も得られる。
【0014】
本発明の有機溶剤回収システムに使用される第1吸着材は、疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子、活性炭含有ハニカム状吸着素子または活性炭素繊維から選ばれた少なくともひとつを用いることが好ましい。さらに好ましくは、極めて水分吸着率の低い疎水性ゼオライトを60〜85重量%の含有率で含有したハニカム状吸着素子を用いることである。これにより、有機溶剤含有濃縮ガスへの水分の以降を著しく低減することができる。
【0015】
本発明の有機溶剤回収システムに使用される第2吸着材は、活性炭素繊維、粒状活性炭、球状活性炭、疎水性シリカゲル、活性炭含有ハニカム状吸着素子および疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子から選ばれた少なくともひとつを用いることが好ましい。さらに好ましくは、水分吸着率が低く、高濃度の有機溶剤含有ガスに対して高除去率を示す活性炭素繊維を用いることである。
【0016】
本発明の有機溶剤回収システムにおいて、前記有機溶剤回収装置で有機溶剤を吸着除去した後の吸着出口は、前記吸着濃縮処理装置の吸着入口ガスに混合されるように通風されることが好ましい。前記吸着濃縮処理装置の吸着入口ガスに混合されることで、前記有機溶剤回収装置の除去率が低い場合に前記吸着濃縮処理装置で再度前記有機溶剤回収装置の吸着出口ガスを吸着除去できるため、別途排ガス処理装置を設ける必要をなくすことができる。
【0017】
本発明の有機溶剤回収システムにおいて、前記有機溶剤回収装置で有機溶剤を吸着除去した後の吸着出口ガスは、前記除湿手段の除湿前ガスとして通風されることが好ましい。前記有機溶剤回収装置の吸着出口は既に除湿された低湿度ガスのため、前記除湿手段の除湿前ガスとして通風されることで、前記有機溶剤含有濃縮ガスの湿度を著しく低減することができる。
【0018】
本発明の有機溶剤回収システムにおいて、前記除湿手段は湿度を低減できる手段であれば特に限定されるものではないが、吸着材によって水分の吸着と脱着を連続的に実施して除湿する除湿装置であることが好ましい。水分吸着のみを実施する除湿材処理では短期間で水分が飽和吸着し、前記吸着濃縮処理装置の湿度を安定して低減できないためである。中でもハニカム状除湿素子を使用して水分を吸着し、一方で吸着した水分を脱着して、吸湿と脱着を連続的に実施する除湿装置が好ましい。それは、ハニカム状構造であることから圧力損失が低く、また水分吸着熱及び脱着加熱持の熱移動により高温・低湿度のガスを安定して前記吸着濃縮処理装置の脱着入口に供給できるからである。
【0019】
本発明の有機溶剤回収システムにおいて、前記除湿装置の脱着用加熱ガスには前記吸着濃縮処理装置から排出される清浄ガスまたは除湿処理後のガスのいずれかを加熱して使用されることが好ましい。前記除湿装置の脱着用加熱ガスに前記吸着濃縮処理装置から排出される清浄ガスを使用する場合、除湿装置で除湿するガスの風量は前記吸着濃縮処理装置の脱着入口に供給される風量だけでよく、前記除湿装置を省スペースに設計できる。また前記除湿装置の脱着用加熱ガスに除湿処理後のガスを使用した場合、前記吸着濃縮処理装置の脱着入口に供給される風量に、前記除湿装置の脱着入口に供給される風量を加えた風量を除湿装置で除湿しなければならないが、除湿処理後のガスを前記除湿装置の脱着入口に使用することで、除湿装置の脱着効率が向上する効果が得られる。
【0020】
本発明の有機溶剤回収システムに使用される第3吸着材は、活性炭素繊維、粒状活性炭、球状活性炭、疎水性シリカゲル、活性炭含有ハニカム状吸着素子および疎水性ゼオライト含有ハニカム状吸着素子から選ばれた少なくともひとつを用いることが好ましい。さらに好ましくは、水分吸着率が低く、高濃度の有機溶剤含有ガスに対して高除去率を示す活性炭素繊維を用いることである。
【0021】
本発明の有機溶剤回収システムのキャリアガスは不活性ガスであることが好ましい。低沸点で蒸気圧の高い有機溶剤を回収する場合、第2吸着材からキャリアガスによって脱着されるガス濃度が溶剤の爆発限界の下限値を上回る可能性があるため、不活性ガスを用いることで安全性を確保することができる。
【実施例】
【0022】
本発明における有機溶剤回収システムの特性の測定法は次の通りである。
【0023】
(吸着ハニカムに含まれる吸着材の含有重量比率)
吸着ハニカムに含まれる吸着材の含有重量比率(重量)=(a/A)×100
ここでaは吸着材ハニカムの吸着率(重量%)、Aは吸着材単体の吸着率(重量%)
【0024】
(ハニカム状吸着素子の水分吸着率)
吸着試験用U時間に吸着素子を入れ、そこに温度35℃±0.5℃、23℃DPに調整した空気を60分間通気させ、吸着素子の重量増加を測定する。水分吸着率qは次式で求める。
q(重量%)=P/S×100
ここでPは吸着ハニカムの増量(g)、Sは吸着ハニカムの乾燥重量(g)
【0025】
(除去効率)
除去効率ηは次式にて求まる。
η(%)=(I−O)/I×100
ここでIは処理ガス入口濃度(ppm)、Oは処理ガス出口濃度(ppm)
【0026】
以下、本発明の実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システムのシステム構成について、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
<実施例>
第1吸着材101として平均細孔径5.5ÅでSi/Al比が1000以上のZSM−5型ゼオライトを75質量%含有したハニカム状吸着素子を作製した。次にこのハニカム状吸着素子の35℃、23℃DPの水分吸着率を測定した結果、水分吸着率が極めて低い疎水性ゼオライトの効果により約2.0質量%と低い結果であった。この第1吸着剤101を吸着濃縮処理装置100に適用させ、吸着濃縮処理装置吸着部102と吸着濃縮処理装置脱着部103に分け、一方でエタノール1000ppmのガスを1000Nm
3/minの風量で通気してエタノールを97%の除去効率で除去した。エタノールが吸着除去された吸着濃縮処理装置吸着出口ガスL2は清浄ガスとして排気されるが、この吸着濃縮処理装置吸着出口ガスL2のうち、250Nm
3/minの風量を除湿装置300に導入し、21℃DPのガスを8℃DPまで除湿した。除湿後のガスは吸着濃縮処理装置脱着用ヒーター104で130℃まで加熱され、これを吸着濃縮処理装置脱着部103に導入して第1吸着材に吸着されたエタノールを連続的に脱着してエタノール含有濃縮ガスを得た。この時、第1吸着材に吸着された水分も一緒に脱着されるため、エタノール含有濃縮ガスの露点は21℃DPであった。
【0028】
次に、このエタノール含有濃縮ガスを有機溶剤回収装置200に導入し、第2吸着材A201に通気させてエタノールを97%の除去効率で除去した後、有機溶剤回収装置吸着出口ガスL8は吸着濃縮処理装置吸着入口ガスL1に戻され、再び第1吸着材101で処理されるようにした。有機溶剤回収装置200の第2吸着材201、202および第3吸着材206には東洋紡株式会社製の活性炭素繊維「K−FILTER」を使用した。第2吸着材A201で吸着工程を行っている間、第2吸着材B202では第2吸着材脱着用ヒーター208で120℃に加熱されたキャリアガスを第2吸着材脱着入口ガスL11として通気し、脱着工程を行った。第2吸着材B202から脱着されたエタノールを含む第2吸着材脱着出口ガスL12は凝縮器203で10℃に凝縮され、凝縮液を回収した。また脱着工程の初期は、凝縮器203から排出された未濃縮のエタノールを含む低温の状態にある凝縮器出口ガスL13を第3吸着材脱着用ヒーター205で120℃に加熱して第3吸着材206に通気した。この時、第3吸着材206に吸着されていたエタノールが脱着され、エタノールを含むキャリアガスが第3吸着材206から排出された。第3吸着材206から排出されたエタノールを含むキャリアガスは第2吸着材脱着用ヒーター208で120℃に加熱され、第2吸着材の脱着入口ガスL11として循環供給された。
【0029】
続く脱着工程の後期では凝縮器203から排出された未濃縮のエタノールを含む低温の状態にある凝縮器出口ガスL13を第3吸着材吸着入口ガスL14に通気し、第3吸着材206に通気した。この時にキャリアガスに含まれるエタノールが第3吸着材206で吸着除去され、エタノール濃度が低減されたキャリアガスが第3吸着材206から排出された。第3吸着材206から排出された低濃度のキャリアガスは第2吸着材脱着用ヒーター208で120℃に加熱され、第2吸着材B202に循環供給された。この脱着工程の後期により、第2吸着材B202が高効率に脱着される。吸着材B202の脱着工程がすべて完了した後、今度は第2吸着材A201が脱着工程、第2吸着材B202が吸着工程を行うように切り替えた。このように、吸着工程と脱着工程を交互に切り替え行うことで、エタノール含有濃縮ガスを連続的に吸着処理した。吸着工程と脱着工程の2工程で1サイクルとし、合計10サイクル実施した後、凝縮液中の排水量を測定したところ、18.2kg/hrと少なく、凝縮液のエタノール純度も88重量%と高い良好な結果が得られた。
【0030】
<比較例>
吸着濃縮処理装置の吸着出口ガスL2のうち、250Nm
3/minの風量を除湿装置300へ介さずに21℃DPのまま吸着濃縮処理装置脱着用ヒーター104で130℃まで加熱し、吸着濃縮処理装置脱着部103に導入して第1吸着材に吸着されたエタノールを連続的に脱着してエタノール含有濃縮ガスを得たこと以外は実施例と同様の処理を行った。その結果、有機溶剤回収装置の吸着入口ガスL7の露点は32℃DPであり、回収された凝縮液の排水量は実施例と比べて、3.5倍の62.8kg/hrであった。凝縮液のエタノール純度も58重量%と低い結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の有機溶剤回収システムは、沸点100℃以下の低沸点溶剤であっても低コストで排水量を著しく少なくし、回収される有機溶剤の濃度を高くする効果があり、産業界に寄与することが大いに期待できる。
【符号の説明】
【0032】
100 吸着濃縮処理装置
101 第1吸着材
102 吸着濃縮処理装置吸着部
103 吸着濃縮処理装置脱着部
104 吸着濃縮処理装置脱着用ヒーター
200 有機溶剤回収装置
201 第2吸着材A
202 第2吸着材B
203 凝縮器
204 セパレータ
205 第3吸着材脱着用ヒーター
206 第3吸着材
207 キャリアガス循環ファン
208 第2吸着材脱着用ヒーター
209 第3吸着材用温度調節器
300 除湿装置
301 除湿装置吸着部
302 除湿装置脱着部
303 除湿装置脱着用ヒーター
L1 吸着濃縮処理装置吸着入口ガス
L2 吸着濃縮処理装置吸着出口ガス
L3 除湿装置吸着入口ガス
L4 除湿装置吸着出口ガス
L5 吸着濃縮処理装置脱着入口ガス
L6 有機溶剤含有濃縮ガス
L7 有機溶剤回収装置吸着出口ガス
L8 除湿装置脱着入口ガス
L9 除湿装置脱着出口ガス
L10 第2吸着材脱着入口ガス
L11 第2吸着材脱着出口ガス
L12 凝縮器の出口ガス
L13 第3吸着材吸着入口ガス
L14 第3吸着材脱着用ヒーター入口ガス
L15 第3吸着材脱着入口ガス
L16 第3吸着材出口ガス
V201 第2吸着槽A自動下ダンパー
V202 第2吸着槽B自動下ダンパー
V203 第2吸着槽A自動上ダンパー
V204 第2吸着槽B自動上ダンパー
V205 第2吸着槽A脱着入口弁
V206 第2吸着槽B脱着入口弁
V207 第3吸着材吸着入口弁
V208 第3吸着材脱着入口弁