特許第6318687号(P6318687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6318687
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/16 20160101AFI20180423BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20180423BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20180423BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20180423BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20180423BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20180423BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20180423BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20180423BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20180423BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B60W20/16
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60K6/442ZHV
   B60K6/52
   F01N3/20 D
   F01N3/24 R
   F02D45/00 312B
   F02D45/00 312Q
   F02D45/00 314H
   F02D29/06 D
   F02D45/00 364A
   B60L11/14
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-30557(P2014-30557)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-208519(P2014-208519A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-65097(P2013-65097)
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】松村 航
(72)【発明者】
【氏名】園田 伸吾
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−320911(JP,A)
【文献】 特開2010−188935(JP,A)
【文献】 特開2002−130030(JP,A)
【文献】 特開平08−074625(JP,A)
【文献】 特開2006−249983(JP,A)
【文献】 特開2013−032710(JP,A)
【文献】 特開2010−036601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60W 10/00 − 20/50
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04 − 3/38
F01N 9/00 − 11/00
F02D 29/00 − 29/06
F02D 43/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求出力値に基づいてエンジンを間欠運転させて走行する車両のエンジン制御装置において、
前記車両の起動後初回の前記エンジン始動の際に、前記エンジンの排気系に設けられた触媒のウォームアップをするために、前記エンジンの吸気量の積算値が所定の積算値になるまで前記エンジンの出力値を所定のウォーアップ出力値として前記エンジンの作動を継続させるウォームアップ作動を実行するウォームアップ制御手段と、
前記ウォームアップ作動の終了に引き続き、前記エンジンの作動を所定の期間継続作動させる継続制御手段と、を備え、
前記継続制御手段は、
前記エンジンの要求出力値が前記所定のウォームアップ出力値よりも小さい所定のアイドリング出力値以上であるならば前記エンジンの出力値を前記要求出力値とし、前記要求出力値が前記所定のアイドリング出力値未満であるならば前記エンジンの出力値を前記アイドリング出力値とすることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記エンジンの冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記エンジンを始動する際の前記エンジンの冷却水の温度に基づいて前記エンジンの作動継続時間を設定する設定手段と、をさらに備え、
前記設定手段は、前記エンジンの始動時の前記冷却水の温度が高くなるに従って前記所定の期間を短くすることを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記エンジンで駆動されて発電する発電機を更に備え、
前記継続制御手段は、前記要求出力値が前記アイドリング出力値未満である際は、前記アイドリング出力値と前記要求出力値との差の出力で前記発電機を駆動して発電することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、或る条件の下に、モータにより走行するEV(electric vehicle)モードから、エンジンを動作させて走行するハイブリッド走行モードへの切り替えを禁止することが開示されている。
【0003】
すなわち特許文献1の技術は、エンジンの駆動を抑制することによって燃費の向上を図るものである。
【0004】
さて、エンジン触媒は、冷めた状態においては活性化しておらず、排気ガスを清浄化する能力が低下することが知られている。このため、エンジン触媒が活性化していない状況においてエンジンの出力を高めると、排気ガスにおける有害物質の含有量が増大してしまう恐れがある。
【0005】
ハイブリッド自動車では、エンジンを始動する必要が生じたとしても、短時間であれば、バッテリからの給電によってモータを駆動することにより、必要な出力を得ることができる。そこで、エンジン触媒の温度が低い状況などにおいてエンジンを始動した場合には、所定のウォームアップ期間において触媒ウォームアップモードを設定する。この触媒ウォームアップモードでは、エンジンの所要出力値に拘わらずにエンジンの出力値を所定の制限値とする。制限値は例えば、エンジン触媒が活性化していない状態でも、自動車排出ガス規制の基準を満たすことができるように定められる。
【0006】
ウォームアップ期間は、長すぎるとバッテリの消費が過剰となってしまう恐れがあるため、エンジン触媒を必要最小限に活性化させることができる程度に定められることが一般的である。このため、触媒ウォームアップモードによってエンジン触媒が十分に活性化される保証はない。
【0007】
ウォームアップ期間においてエンジンを動作させる必要が無くなった場合、ウォームアップ期間の終了と同時にエンジンを停止させ、EVモードに移行することになる。そしてこの後に、さらにエンジンを始動する必要が生じた場合には、改めてハイブリッド走行モードに移行する。このときに、エンジン触媒がある程度活性化していれば、触媒ウォームアップモードは設定されない。従って、エンジン触媒が十分に活性化されていない状況であるにも拘わらずに、エンジンの出力が所要出力値が得られるように増加されることがあり得る。そしてこのような状況においては、排気ガスにおける有害物質の含有量が増大してしまう恐れがある。
【0008】
一例としては図8に示すように、SOCが閾値THsoc以上であり、車両要求出力が低出力となり、かつ車速が閾値THspeed1以下となる期間P11においては、EVモードとなり、車速に拘わらずにエンジンは停止されている。なお、車両要求出力が高出力となる場合や、車速が閾値THspeed2以上となる場合では、SOCが閾値THsoc以上であってもエンジンを始動する。
【0009】
時点T11においては、車速が閾値THspeed2以上であり、かつSOCが閾値THsoc未満となっている。このために、エンジンが始動される。しかしながら、エンジン始動当初のウォームアップ期間P12においては、触媒ウォームアップモードに設定され、エンジンの出力値が制限値に制限される。
【0010】
時点T12においては、車速が閾値THspeed2未満になるが、ウォームアップ期間P12においては、エンジンは停止されない。
【0011】
時点T13においてウォームアップ期間P12が終了し、かつ車速が閾値THspeed2未満であるためにエンジンが停止される。
【0012】
時点T4においては、SOCが閾値THsoc未満のままであり、かつ車速が閾値THspeed2以上に上昇したことに応じて、エンジンが再始動される。この後は、所要出力値が得られるようにエンジンの出力値が制御される。
【0013】
以上のようなケースでは、ウォームアップ期間P12のみしかエンジンが動作しないので、エンジン触媒が十分に活性化されない恐れがあり、時点T14にてエンジンを再始動した際に排気ガスにおける有害物質の含有量が増大してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−29386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上の説明から明らかなように、最初のエンジン始動に伴うエンジンの動作期間がウォームアップ期間のみになってしまった場合には、エンジン触媒の活性化が不十分となり、エンジンを再始動した際に排気ガスにおける有害物質の含有量が増大してしまう恐れがあった。
【0016】
本発明は、排気ガスにおける有害物質の含有量を低減可能なエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載される発明のエンジン制御装置は、要求出力値に基づいてエンジンを間欠運転させて走行する車両のエンジンを制御するものであって、前記車両の起動後初回の前記エンジン始動の際に、前記エンジンの排気系に設けられた触媒のウォームアップをするために、前記エンジンの吸気量の積算値が所定の積算値になるまで前記エンジンの出力値を所定のウォーアップ出力値として前記エンジンの作動を継続させるウォームアップ作動を実行するウォームアップ制御手段と、前記ウォームアップ作動の終了に引き続き、前記エンジンの作動を所定の期間継続作動させる継続制御手段とを備え、前記継続制御手段は、前記エンジンの要求出力値が前記所定のウォームアップ出力値よりも小さい所定のアイドリング出力値以上であるならば前記エンジンの出力値を前記要求出力値とし、前記要求出力値が前記所定のアイドリング出力値未満であるならば前記エンジンの出力値を前記アイドリング出力値とする。
請求項2に記載される発明のエンジン制御装置では、請求項1の記載に加えて、前記エンジンの冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、前記エンジンを始動する際の前記エンジンの冷却水の温度に基づいて前記エンジンの作動継続時間を設定する設定手段と、をさらに備え、前記設定手段は、前記エンジンの始動時の前記冷却水の温度が高くなるに従って前記所定の期間を短くする。
請求項3に記載される発明のエンジン制御装置では、請求項1又は2の記載に加えて、前記エンジンで駆動されて発電する発電機を更に備え、前記継続制御手段は、前記要求出力値が前記アイドリング出力値未満である際は、前記アイドリング出力値と前記要求出力値との差の出力で前記発電機を駆動して発電する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排気ガスにおける有害物質の含有量を低減可能なエンジン制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジン制御装置を搭載した自動車の構成を示す図。
図2図1中のエンジン−ECUのブロック図。
図3図2中のCPUによる制御処理の一例を示すフローチャート。
図4図2中のCPUによる制御処理の一例を示すフローチャート。
図5】水温と禁止時間との関係の一例を示す図。
図6図2中のCPUによる制御処理の他の一例を示すフローチャート。
図7図1に示す自動車の動作変化の一例を示すタイムチャート。
図8】排気ガスにおける有害物質の含有量が増大してしまう恐れのある動作状況の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るエンジン制御装置を搭載した自動車を、図1〜7を用いて説明する。
【0021】
なお、本実施形態においてはプラグインハイブリッドタイプの自動車を例示するが、電動モータを動力源として走行するための電気システムとエンジンとを搭載する他の様々なタイプのハイブリッド自動車においても本発明を同様に実施が可能である。
【0022】
図1は自動車100の構成を示す図である。なお、自動車100は既存のプラグインハイブリッドタイプの別の自動車が備えるのと同様な多数の要素を備えるが、図1においてはそれらの要素のうちの一部の要素のみを示している。
【0023】
自動車100は、本体1、前輪2a,2b、後輪3a,3b、車軸4a,4b,5a,5b、伝達機構6,7、エンジン8、フロントモータ9、リアモータ10、発電機11、高圧バッテリ12、インバータ13,14,15、コンタクタ16a,16b,16c,17a,17b,17c、外部給電プラグ18、充電器19、パワースイッチ20、車速センサ21、排気管23、エンジン触媒24、温度センサ25、マフラ26、エンジン−ECU(electric control unit)27、フロントモータコントロールユニット(以下、FMCUと称する)28、リアモータコントロールユニット(以下、RMCUと称する)29、ジェネレータコントロールユニット(以下、GCUと称する)30、バッテリマネジメントユニット(以下、BMUと称する)31、OSS(one-touch start system)−ECU32、ETACS(electric time and alarm control system)−ECU33およびPHEV(plug-in hybrid electric vehicle)−ECU34を含む。
【0024】
本体1は、車台および車体などを含み、他の各要素を支持するとともに、乗員が搭乗するための空間(車室)を形成する。
【0025】
前輪2a,2bは、車軸4a,4bの端部にそれぞれ固定されている。後輪3a,3bは、車軸5a,5bの端部にそれぞれ固定されている。前輪2a,2bおよび後輪3a,3bは、それぞれ接地して本体1を支持するとともに、回転して本体1を移動させる。
【0026】
車軸4a,4bは、本体1と前輪2a,2bとの相対的な位置関係を所定の状態に維持するとともに、伝達機構6から伝達される回転力を前輪2a,2bへと伝達する。
【0027】
車軸5a,5bは、本体1と後輪3a,3bとの相対的な位置関係を所定の状態に維持するとともに、伝達機構7から伝達される回転力を後輪3a,3bへと伝達する。
【0028】
伝達機構6は、車軸4a,4bを個別に回転可能に支持する。伝達機構6には、エンジン8、フロントモータ9および発電機11のそれぞれの回転軸8a,9a,11aが個別に接続されている。伝達機構6は、ディファレンシャルギアを含む各種のギア、シャフトおよびクラッチなどを周知のように組み合わせて構成され、回転軸8aと車軸4a、4bとを接続する状態、回転軸8aと回転軸11aとを接続する状態、回転軸8aの回転力を車軸4a,4bおよび回転軸11aに分配して伝達する状態、回転軸9aと車軸4a,4bとを接続する状態、あるいは車軸4a,4bを自由に回転させる状態を選択的に形成する。
【0029】
伝達機構7は、車軸5a,5bを個別に回転可能に支持する。伝達機構7には、リアモータ10の回転軸10aが接続されている。伝達機構7は、ディファレンシャルギアを含む各種のギア、シャフトおよびクラッチなどを周知のように組み合わせて構成され、回転軸10aと車軸5a,5bとを接続する状態および車軸5a,5bを自由に回転させる状態を選択的に形成する。
【0030】
エンジン8は、燃料を利用して回転力を発生し、回転軸8aを回転する。エンジン8は、典型的には燃料としてガソリンを使用するものであるが、軽油などの別の燃料油やLPG(liquefied petroleum gas)などのガスのようなガソリン以外の燃料を利用するものでも良い。伝達機構6が回転軸8aと車軸4a,4bとを接続するとき、エンジン8は前輪2a,2bを回転させる。
【0031】
フロントモータ9およびリアモータ10は、電気エネルギを利用して回転力を発生し、回転軸9a,10aを回転する。伝達機構6が回転軸9aと車軸4a,4bとを接続するとき、フロントモータ9は前輪2a,2bを回転させる。伝達機構7が回転軸10aと車軸5a,5bとを接続するとき、リアモータ10は後輪3a,3bを回転させる。フロントモータ9およびリアモータ10には回転角センサ9b,10bがそれぞれ取り付けられている。回転角センサ9b,10bは、フロントモータ9およびリアモータ10の回転数をそれぞれ検出する。
【0032】
発電機(ジェネレータ)11は、回転軸11aの回転を利用して電磁誘導により発電する。伝達機構6が回転軸8aと回転軸11aとを接続するとき、発電機11はエンジン8が発生した回転力を利用して発電する。伝達機構6が車軸4a,4bと発電機11とを接続するとき、発電機11は車軸4a,4bの回転力を利用して発電する。
【0033】
高圧バッテリ(電池)12は、複数のバッテリセルを直列に接続してバッテリモジュールを形成してなり、これらバッテリセルのそれぞれが発生する直流電流を加算してフロントモータ9やリアモータ10を駆動するための高電圧の直流電力を発生する。
【0034】
インバータ13,14は、高圧バッテリ12が出力する直流電流を交流電流に変換する。インバータ13,14は、IGBTなどのスイッチング素子を有した周知の構成のものであって良い。インバータ13は、交流電流をフロントモータ9に供給することにより、フロントモータ9を動作させる。インバータ14は、交流電流をリアモータ10に供給することにより、リアモータ10を動作させる。インバータ13,14は、FMCU28およびRMCU29の制御の下に、スイッチング素子のスイッチング周波数や、出力する電流の電流値および周波数を変更する。
【0035】
インバータ15は、発電機11が発生する交流電流を直流電流に変換する。インバータ15が得た直流電流は、高圧バッテリ12へと供給される。
【0036】
コンタクタ16a,16b,16cは、高圧バッテリ12の正極とインバータ13,14,15との間に介挿されている。コンタクタ16a,16b,16cは、PHEV−ECU34の制御の下に高圧バッテリ12の正極とインバータ13,14,15との電気的接続をオン/オフする。
【0037】
コンタクタ17a,17b,17cは、高圧バッテリ12の負極とインバータ14,15,16との間に介挿されている。コンタクタ17a,17b,17cは、PHEV−ECU34の制御の下に高圧バッテリ12の負極とインバータ14,15,16との電気的接続をオン/オフする。
【0038】
外部給電プラグ18は、外部電源からの電力供給を受けるためのケーブルが必要に応じて接続できる。外部給電プラグ18は、ケーブルが接続されているときには、当該ケーブルと充電器19とを電気的に接続する。
【0039】
充電器19は、外部給電プラグ18に接続されたケーブルを介して外部電源から供給される電力により高圧バッテリ12を充電する。
【0040】
パワースイッチ20は、自動車100の動作状態(OFF状態、ACC状態、ON状態およびREADY状態など)を切り換えるためにユーザにより操作されるスイッチである。なお、READY状態は、走行システムを有効とし、走行を可能とする状態である。
【0041】
車速センサ21は、車軸5bの回転速度に基づいて車速を検出する。
【0042】
水温センサ22は、エンジン8の冷却水の温度を検出する。
【0043】
排気管23は、エンジン8で生じた排気ガスを本体1の後端へと導き、大気へと排出する。
【0044】
エンジン触媒24は、排気管23の途中に取り付けられ、排気管23を通る排気ガス中の有害成分を除去する。
【0045】
温度センサ25は、エンジン触媒24の温度を検出する。
【0046】
マフラ26は、排気管23の途中に取り付けられ、排気管23を通った排気ガスが大気へと排出される際に生じる音を低減する。
【0047】
エンジン−ECU27は、エンジン8の動作を制御する。つまりエンジン−ECU2は、エンジン制御装置に相当する。
【0048】
FMCU28は、PHEV−ECU34の制御の下に、所要の走行状態を得るべくフロントモータ9を駆動するようにインバータ13を制御する。
【0049】
RMCU29は、PHEV−ECU34の制御の下に、所要の走行状態を得るべくリアモータ10を駆動するようにインバータ14を制御する。
【0050】
GCU30は、発電機11での発電量の変化に拘わらずに高圧バッテリ12へと供給するのに適する直流電流が得られるようにインバータ15を制御する。
【0051】
BMU31は、電圧や残量など高圧バッテリ12の状態を管理する。
【0052】
OSS−ECU32は、ユーザがパワースイッチ20を操作した際に、認証通信を行った後に、各部の電源制御などを実施する。
【0053】
ETACS−ECU33は、自動車100に搭載されている各種の電装品を制御する。ETACS−ECU33の制御対象となる電装品は、例えば、図1では図示を省略しているヘッドライト、ドアミラー、ワイパー、ドアロック機構、室内照明器具およびセキュリティアラームなどである。ETACS−ECU33は、PHEV−ECU34と適宜に通信して必要な情報を取得しながら、予め定められた動作を実現するべく各種の電装品を制御する。一例としてETACS−ECU33は、車速が規定値以上になった際にドアミラーが格納状態であるならば、ドアミラーを自動的に展開する。
【0054】
PHEV−ECU34は、自動車100の走行に係わる各種の制御処理を行う。例えばPHEV−ECU34は、自動車100の走行状況に応じて、伝達機構6,7の状態を制御する。またPHEV−ECU34は、コンタクタ16a,16b,16c,17a,17b,17cの状態を制御する。一例としてPHEV−ECU34は、EV(electric vehicle)モードの駆動状態においては、伝達機構6をフロントモータ9の回転軸9aと車軸4a,4bとを接続する状態に、また伝達機構7をリアモータ10の回転軸10aと車軸5a,5bとを接続する状態にするとともに、コンタクタ16a,16b,16c,17a,17b,17cをいずれもオンとしておく。そして当該状態においてPHEV−ECU34は、図示しないアクセル開度センサが検出したアクセル開度に応じて、要求される走行出力を算出し、この走行出力を得るべくフロントモータ9、リアモータ10を動作させるようにFMCU28およびRMCU29に指示する。PHEV−ECU34はこのほか、既存の別のプラグインハイブリッド自動車で実現されているような各種の動作状態を必要に応じて形成するように各部を制御する。
【0055】
なお、エンジン−ECU27、FMCU28、RMCU29、GCU30、BMU31、OSS−ECU32およびPHEV−ECU34は、いずれも共通の通信ラインに接続されていて、適宜に通信して各種の制御に必要な情報を授受する。
【0056】
以上の各要素のうち、前輪2a,2b、後輪3a,3b、車軸4a,4b,5a,5b、伝達機構6,7、エンジン8、フロントモータ9、リアモータ10、発電機11、高圧バッテリ12、インバータ13,14,15、コンタクタ16a,16b,16c,17a,17b,17c、充電器19、FMCU28、RMCU29、GCU30、BMU31およびPHEV(plug-in hybrid electric vehicle)−ECU34は、走行システムの構成要素である。
【0057】
図2はエンジン−ECU27のブロック図である。なお、図2において図1に示される要素と同一の要素には同一の符号を付している。
【0058】
エンジン−ECU27は、CPU(central processing unit)27a、ROM(read-only memory)27b、RAM(random-access memory)27c、EEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)27d、インタフェースユニット(I/Fユニット)27eおよび通信ユニット27fを含む。そしてこれらの各要素は、バスライン27gにそれぞれ接続されている。
【0059】
CPU27aは、エンジン−ECU2が搭載するコンピュータの中枢部分に相当する。CPU27aは、ROM27bおよびRAM27cに記憶されたオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムに基づいて、エンジン8を制御するための情報処理を行う。
【0060】
ROM27bは、上記のコンピュータの主記憶部分に相当する。ROM27bは、上記のオペレーティングシステムを記憶する。ROM27bは、上記のアプリケーションプログラムを記憶する場合もある。
【0061】
RAM27cは、上記のコンピュータの主記憶部分に相当する。RAM27cは、CPU27aが各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶しておく、いわゆるワークエリアとして利用される。
【0062】
EEPROM27dは、CPU27aが各種の処理を行う上で使用するデータや、CPU27aでの処理によって生成されたデータを保存する。
【0063】
ROM27bまたはEEPROM27dに記憶されるアプリケーションプログラムの中には、後述する制御処理に関して記述した制御プログラムが含まれる。この制御プログラムがEEPROM27dに記憶される場合、エンジン−ECU27、エンジン−ECU27を含んだユニット、あるいは自動車100の譲渡は、一般的に上記の制御プログラムがEEPROM27dに記憶された状態にて行われる。しかし、エンジン−ECU27、エンジン−ECU27を含んだユニット、あるいは自動車100が上記の制御プログラムがEEPROM27dに記憶されない状態で譲渡されても良い。そして、別途に譲渡された制御プログラムが、EEPROM27dに書き込まれても良い。この場合の制御プログラムの譲渡は、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどのようなリムーバブルな記録媒体に記録して、あるいはネットワークを介して行うことができる。なお、上記の譲渡は、有償、無償を問わない。
【0064】
インタフェースユニット27eは、エンジン8、水温センサ22および温度センサ25を電気的に接続する。インタフェースユニット27eは、CPU27aの制御の下に、エンジン8を制御するための制御情報を出力する。インタフェースユニット27eは、水温センサ22および温度センサ25が出力した検出値をそれぞれ取り込んで、RAM27cに書き込む。
【0065】
通信ユニット27fは、CPU27aの指示の下にPHEV−ECU34と通信する。
【0066】
次に以上のように構成された自動車100の動作について説明する。
【0067】
例えば、図示しないブレーキペダルが踏み込まれた状態でパワースイッチ20が押されると、OSS−ECU32は自動車100をREADY状態とするべく各部を起動する。エンジン−ECU27も、このときに起動される。そしてこのようにエンジン−ECU27が起動されると、CPU27aはROM27bまたはEEPROM27dに記憶された制御プログラムに従って図3,4に示す制御処理を開始する。なお、以下に説明する処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
【0068】
ステップSa1においてCPU27aは、エンジン始動カウンタ(以下、ESCと称する)を「0」にクリアする。
【0069】
ステップSa2においてCPU27aは、PHEV−ECU34からエンジンについての始動要求がなされるか否かを確認する。そして始動要求がなされていないためにNOと判定したならばCPU27aは、ステップSa2に戻る。かくしてCPU27aは、ステップSa2において始動要求がなされるのを待ち受ける。そして始動要求がなされたならばCPU27aは、ステップSa3へ進む。
【0070】
ステップSa3においてCPU27aは、エンジン8を始動する。また、このときにCPU27aは、ESCの値を1つ増加する。
【0071】
ステップSa4においてCPU27aは、EV禁止制御を実施する条件が成立しているか否かを確認する。EV禁止制御条件は、車両が起動された後、初めてエンジンが始動されたか否かで判断する。そして、EV禁止制御条件が成立するためにYESと判定したならばCPU27aは、ステップSa5へと進む。
【0072】
ステップSa5においてCPU27aは、第1EV禁止制御として、エンジンの吸気量を積算し始める。エンジンの吸気量はエンジンの吸気系に取り付けられるエアフロセンサにより検出される。第1EV禁止制御は、エンジンの吸気量が所定の積算値になるまで継続される。また、所定の積算値はエンジンの水温に基づいて補正してもよい。
【0073】
ステップSa6においてCPU27aは、第2EV禁止モードを実施する。
【0074】
ステップSa7においてCPU27aは、ESCが「1」であるか否かを確認する。ESCは、制御処理が開始された直後にのみ、すなわち自動車100がREADY状態とされた直後にのみ、ステップSa1にてクリアされ、エンジンを始動する毎にステップSa3にて1つ増加される。このためESCは、自動車100がREADY状態とされてから最初にエンジン8が始動された場合に「1」とされる。そしてESCがこのように「1」であるためにステップSa7にてYESと判定したならばCPU27aは、ステップSa8へ進む。
【0075】
ステップSa8においてCPU27aは、水温センサ22により検出された水温に基づいて禁止時間を設定する。禁止時間は、EVモードへの移行を禁止する期間の長さを定めるものである。後述するように、EVモードへの移行を禁止する期間においては、エンジン8が継続的に動作することになる。従って禁止時間は、エンジン8を継続的に動作させる期間の長さである継続時間に相当する。そして、この継続時間を所定の第1期間とする。そしてCPU27aは、設定手段として機能している。
【0076】
図5は水温と禁止時間との関係の一例を示す図である。
【0077】
図5の例では、水温が温度WTa未満である場合には禁止時間は一定であるが、水温が温度WTa以上である場合には水温が高いほど、禁止時間は短い。このような関係を表したデータテーブルをROM27bまたはEEPROM27dに記憶しておく。そしてCPU27aは例えば、水温センサ22の検出値に応じてデータテーブルを参照して得られる値を禁止時間として設定する。
【0078】
ステップSa9においてCPU27aは、EV禁止タイマを起動する。EV禁止タイマはカウントダウンタイマであり、例えばCPU27aの別タスクの処理によるソフトウェアタイマにより実現できる。EV禁止タイマは、ステップSa8で設定した禁止時間に応じた初期値から一定時間毎にカウントダウンして行くことによって禁止時間が経過したタイミングにおいてカウント値がゼロになる。
【0079】
そしてこの後にCPU27aは、図4のステップSa10へ進む。なおCPU27aは、EV禁止制御条件が成立しないためにステップSa4にてNOと判定した場合にはステップSa5〜9をパスして、またESCが「1」以外であるためにステップSa7にてNOと判定した場合にはステップSa8,9をパスして、図4のステップSa10へ進む。つまり、READY状態とされてから最初にエンジン8が始動されたのではないならば、EV禁止タイマは動作しない。
【0080】
ステップSa10においてCPU27aは、エンジン8の動作の停止がPHEV−ECU34から要求されたか否かを確認する。なお、ステップSa6にてEVモードへの移行禁止を要求した状態にあっては、PHEV−ECU34はエンジン8の動作の停止を要求しない。そして、停止要求がなされていないためにNOと判定したならばCPU27aは、ステップSa11に進む。
【0081】
ステップSa11においてCPU27aは、第1EV禁止制御が動作しているか否かを確認する。そして第1EV禁止制御が動作しているためにYESと判定したならばCPU27aは、ステップSa12へ進む。
【0082】
ステップSa12においてCPU27aは、エンジン8の出力値を、PHEV−ECU34からの要求値に拘わらずに所定のウォームアップ出力値(制限値)とする。制限値は、例えば設計者などによって任意に定められる。ただし制限値は、エンジン触媒が活性化していない状態でも、排気管23から排出される排気ガスが自動車排出ガス規制の基準を満たすように定められるべきである。そしてこののちにCPU27aは、ステップSa10に戻る。
【0083】
かくして、第1EV禁止制御が起動されたならば、エンジン8の出力値が制限値に制限される。つまり、触媒ウォームアップモードでエンジン8が動作する。
【0084】
第1EV禁止制御が動作していないためにステップSa11にてNOと判定したならばCPU27aは、ステップSa13へ進む。
【0085】
ステップSa13においてCPU27aは、第2EV禁止制御が動作しているか否かを確認する。そして第2EV禁止制御が動作しているためにYESと判定したならばCPU27aは、ステップSa14へ進む。
【0086】
ステップSa14においてCPU27aは、要求値が所定の下限値(アイドリング出力値)未満であるか否かを確認する。下限値は、例えば設計者などによって任意に定められる。例えば下限値は、触媒ウォームアップモードの終了後のエンジン触媒24のさらなる活性化を図ることが可能な最小限の出力値に定められるため、下限値(アイドリング出力値)はウォームアップ出力値よりも小さな値としたほうがよい。そしてCPU27aは、要求値が下限値以上であるためにNOと判定したならばステップSa15に、また要求値が下限値未満であるためにYESと判定したならばステップSa16に進む。
【0087】
ステップSa15においてCPU27aは、エンジン8の出力値を、PHEV−ECU34からの要求値とする。そしてこののちにCPU27aは、ステップSa10に戻る。
【0088】
ステップSa16においてCPU27aは、エンジン8の出力値を、PHEV−ECU34からの要求値に拘わらずに下限値とする。そしてこののちにCPU27aは、ステップSa10に戻る。
【0089】
かくして、第2EV禁止制御が動作している状態においては、エンジン8の出力値は常に下限値以上とされる。つまり、エンジン8が停止することなく動作し続けることになる。そして、下限値以上の出力値が必要とされる状況においては、適宜に出力値が増加される。従ってこの動作モードは、触媒ウォームアップモードとは異なる。
【0090】
EV禁止タイマが動作していないためにステップSa13にてNOと判定したならばCPU27aは、ステップSa17へ進む。なお、CPU27aは、EV禁止タイマが起動されていない場合の他、禁止時間を計時し終えてそのカウント値が「0」になっている場合も、EV禁止タイマが動作していないと判定する。
【0091】
ステップSa17においてCPU27aは、PHEV−ECU34に対してEVモードへの移行禁止を要求している状態にあるか否かを確認する。そして、ステップSa6における要求を解除していないためにYESと判定したならばCPU27aは、ステップSa18へと進む。
【0092】
ステップSa18においてCPU27aは、PHEV−ECU34に対してEVモードへの移行禁止を解除する。そしてこの後にCPU27aは、ステップSa15へと進む。なお、PHEV−ECU34に対してEVモードへの移行禁止を要求していない状態にあるためにステップSa17にてNOと判定したならばCPU27aは、ステップSa18をパスしてステップSa15へ進む。
【0093】
かくして、EV禁止制御の動作していない状態においては、エンジン8の出力値は常に要求値とされる。
【0094】
そして、エンジン8の動作の停止がPHEV−ECU34から要求されたためにステップSa10にてYESと判定したならばCPU27aは、ステップSa19へ進む。
【0095】
ステップSa19においてCPU27aは、エンジン8の動作を停止する。そしてこののちにCPU2aは、図3中のステップSa2の待ち受け状態に戻る。
【0096】
本発明の制御処理の他の実施例について、図6を用いて説明する。
ステップSa101においてCPU27aは、エンジン始動カウンタ(以下、ESCと称する)を「0」にクリアする。
【0097】
ステップSa102においてCPU27aは、PHEV−ECU34からエンジンについての始動要求がなされるか否かを確認する。そして始動要求がなされていないためにNOと判定したならばCPU27aは、ステップSa102に戻る。つまり、CPU27aは、ステップSa102において始動要求がなされるのを待ち受ける。そして始動要求がなされたならばCPU27aは、ステップSa103へ進む。
【0098】
ステップSa103においてCPU27aは、エンジン8を始動する。また、このときにCPU27aは、ESCの値を1つ増加する。
【0099】
ステップSa104においてCPU27aは、EV禁止制御を実施する条件が成立しているか否かを確認する。EV禁止制御条件は、車両が起動された後、初めてエンジンが始動されたか否かで判断する。具体的には、ESC=1であるか否かを判定する。そして、EV禁止制御条件が成立している(ESC=1)と判定したならばCPU27aは、ステップSa105へと進む。
【0100】
ステップSa105においてCPU27aは、水温センサ22により検出されたエンジン水温からEV禁止時間(T)を設定する。EV禁止時間(T)は、図7のT3からT5までの時間に対応する。
【0101】
ステップSa106においてCPU27aは、第1EV禁止制御、すなわちウォームアップ作動を開始する。ここで、第1EV禁止制御手段(ウォームアップ制御手段)の実行時間(a)は、エンジンの吸入空気量の積算値が予め設定された積算値以上となるまでの時間である。実行時間(a)は、図7のT3からT4までの時間に対応する。実行時間(a)は、触媒がウォームアップされるために必要な時間である。
【0102】
第1EV禁止制御が実行されたとき、CPU27aは、エンジン8の出力値を、PHEV−ECU34からの要求値に拘わらずに所定のウォームアップ出力値(制限値)とする。制限値は、例えば設計者などによって任意に定められる。ただし制限値は、エンジン触媒が活性化していない状態でも、排気管23から排出される排気ガスが自動車排出ガス規制の基準を満たすように定められるべきである。
【0103】
このようにして、第1EV禁止制御が起動されたならば、エンジン8の出力値が制限値に制限される。つまり、触媒ウォームアップモードでエンジン8が動作する。
【0104】
ステップSa107においてCPU27aは、第1EV禁止制御を終了する。
【0105】
ステップSa108においてCPU27aは、第2EV禁止制御を開始する。ここで、第2EV禁止制御手段(継続制御手段)の実行時間(b)は、EV禁止時間(T)と第1EV禁止制御の実行時間(a)との差(T-a)として設定される。この実行時間(b)は、エンジンを間欠運転により停止させた場合であっても、その後、エンジンの始動要求があった際にエンジンをすぐに始動することができるようエンジンを十分に暖機することができる時間である。
【0106】
第2EV禁止制御が実行されたとき、CPU27aは、要求値が所定の下限値(アイドリング出力値)未満であるか否かを確認する。下限値は、例えば設計者などによって任意に定められる。例えば下限値は、触媒ウォームアップモードの終了後のエンジン触媒24のさらなる活性化を図ることが可能な最小限の出力値に定められるため、下限値(アイドリング出力値)はウォームアップ出力値よりも小さな値としたほうがよい。
【0107】
要求値が下限値以上である場合には、CPU27aは、エンジン8の出力値を、PHEV−ECU34からの要求値とする。
【0108】
要求値が下限値未満である場合には、CPU27aは、エンジン8の出力値を、PHEV−ECU34からの要求値に拘わらずに下限値とする。
【0109】
このようにして、第2EV禁止制御が動作している状態においては、エンジン8の出力値は常に下限値以上とされる。つまり、エンジン8が停止することなく動作し続けることになる。そして、下限値以上の出力値が必要とされる状況においては、適宜に出力値が増加される。従ってこの動作モードは、触媒ウォームアップモードとは異なる。
【0110】
ステップSa109においてCPU27aは、第2EV禁止制御を終了する。
【0111】
ステップSa110においてCPU27aは、EV禁止制御を解除する。
【0112】
図7は上述の制御処理の下での自動車100の動作変化の一例を示すタイムチャートである。
【0113】
時点T1にて自動車100がREADY状態に移行したのち、時点T2において自動車100が走行を開始しているが、当初はEVモードが適用されており、エンジン8は始動されない。
【0114】
時点T3において、エンジン8を始動する必要が生じている。ここではエンジン触媒24は冷えているため、EV禁止制御が起動されている。またREADY状態に移行したのちの最初のエンジン始動となるため、EV禁止タイマが起動されるとともに、EVモードへの移行が禁止されている。
【0115】
そして時点T3においてエンジン8が始動されるが、第1EV禁止制御が終了するまで、つまり、エンジン吸気量が所定の積算値になるまでの期間、出力値が制限値(アイドリング出力値)に制限される。つまり期間P1がウォームアップ期間である。
【0116】
時点T4において第1EV禁止制御が終了するが、EV禁止タイマの動作が継続中であるため、エンジン8は停止されない。そして時点T4から始まる期間P2においては、要求値が下限値以上となっているために、出力値が要求値まで上昇されている。
【0117】
期間P2に続く期間P3においては、要求値が下限値未満となっているために、出力値は下限値とされている。期間P3中の期間P4においては、要求値が「0」であり、従来であればエンジン8が停止される状況であるが、エンジン8は動作状態に維持されている。また、このエンジン8の動作状態を利用して、下限値(アイドリング出力値)と要求出力値との差のエンジン8の出力で発電機を駆動して発電させれば、単にエンジンを作動させるだけでなく発電も実行することができる。
【0118】
期間P3に続く期間P5においては、期間P2と同様な動作状態となっている。また期間P5に続く期間P6においては、期間P3と同様な動作状態となっている。
【0119】
時点T5においてEV禁止タイマのカウント値が「0」になっている。これにより、第1EV禁止制御および第2EV禁止制御のいずれもが動作しない状態となり、EVモードへの移行禁止が解除されている。そしてこの時点T5以後の期間P7においては、出力値は要求値とされている。期間P7中の期間P8においては特に、要求値が「0」となっていることに応じて、エンジン8が停止され、出力値も「0」となっている。
【0120】
以上の説明から明らかなように、CPU27aはウォームアップ制御手段および継続制御手段として機能している。
【0121】
このように本実施形態によれば、READY状態となって走行システムが起動された後に最初にエンジン8が始動された際には、それから禁止時間が経過するまで、つまりEV禁止制御が終了するまではエンジン8は停止されない。これにより、最初のエンジン始動に伴うエンジンの動作期間内にエンジン触媒24が十分に活性化され、エンジン8の再始動の際においても所期の通りに清浄化された排気ガスを排出することができる。
【0122】
そして本実施形態では、単に触媒ウォームアップモードの継続時間を延長している訳ではなく、第1EV禁止制御の終了後には、下限値を上回る出力値が適宜に得られるようにエンジン8が制御される。触媒ウォームアップモードの継続時間を延長した場合、エンジン8は、自動車100を走行させるための駆動力や、発電機11の駆動力を十分に出力することができないために、高圧バッテリ12のSOCの大幅な低下を来す恐れがある。しかしながら、本実施形態では、触媒ウォームアップモードの終了後には、自動車100を走行させるための駆動力や、発電機11の駆動力をエンジン8より十分に出力できるので、高圧バッテリ12からの電力の過度の取り出しは生じない。
【0123】
また本実施形態では、冷却水の水温に応じて、図5に示した関係で禁止時間を変更するので、エンジンの暖機に応じて触媒を活性させるための時間を設定することができ単に所定の時間だけ触媒を活性させる場合に比べて無駄な触媒活性を回避することができる。
【0124】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0125】
禁止時間は、冷却水の水温に拘わらずに一定としても良いが、冷却水の水温が高くなるに従って短くしたほうが上述したように好適である。
【0126】
禁止時間の長さは、エンジン触媒24の温度などの水温以外の条件に基づいて設定したり、それら複数の条件を考慮して設定しても良い。
【0127】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0128】
2a,2b…前輪、3a,3b…後輪、4a,4b,5a,5b…車軸、6,7…伝達機構、8…エンジン、9…フロントモータ、10…リアモータ、12…高圧バッテリ、13,14,15…インバータ、16a,16b,16c,17a,17b,17c…コンタクタ、20…パワースイッチ、21…車速センサ、22…水温センサ、23…排気管、24…エンジン触媒、25…温度センサ、27a…CPU、27b…ROM、27c…RAM、27d…EEPROM、27e…インタフェースユニット、27f…通信ユニット、34…PHEV−ECU、100…自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8