【実施例】
【0037】
以下に、実施例を例示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中における特性値の測定および評価は下記のようにおこなった。
【0038】
(1)繊維径
試料を20cm×20cmの大きさに切断し、網状構造体からランダムに10箇所から線状体を約5mm採集した。採集した線状体を輪切り方向で切断し、繊維断面を、光学顕微鏡を適当な倍率で観察することで、繊維径を測定した。(n=10の平均値)
【0039】
(2)中空率
試料を20cm×20cmの大きさに切断し、その試料よりランダムに20本の線状体を取り出した。線状体を輪切りにし、繊維軸方向に立てた状態でカバーガラスに載せ、光学顕微鏡で輪切り方向の繊維断面を観察し、繊維の外周面積(a)と中空面積(b)を算出した。中空率は次式により算出し、20本の平均値とした。
(中空率)=(b)/(a)(単位%)
この際、線状体の断面形状が中空形状のものを中空断面形状線状体と見なし、断面形状が中実断面形状線状体の場合は、中空断面形状線状体のみの平均値を求めた。
【0040】
(3)中空断面形状線状体存在率
試料を20cm×20cmの大きさに切断し、その試料よりランダムに50本の線状体を取り出した。線状体を輪切りにし、線状体の断面形状が中空形状の線状体の本数を中空断面形状線状体本数とし、中空断面形状線状体存在率を次式により算出した。
(中空断面形状線状体存在率)=(中空断面形状線状体本数)/50(単位%)
【0041】
(4)密度
網状構造体の線状部を約3mmの長さに切断し、超音波と真空引きによって十分脱気し、温度を30℃に制御した密度勾配管に静かに沈めて5時間後にフロートを基準にして密度を算出した(n=5の平均値)。
【0042】
(5)試料厚みおよび見かけ密度
試料を30cm×30cmの大きさに切断し、無荷重で24時間放置した後、高分子計器製FD−80N型測厚器にて4か所の高さを測定して平均値を試料厚みとする。試料重さは、上記試料を電子天秤に載せて計測する。また見掛け密度は、試料厚みから体積を求め、試料の重さを体積で除した値で示す(それぞれn=4の平均値)。
【0043】
(6)融点(Tm)
TAインスツルメント社製 示差走査熱量計Q200を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めた。
【0044】
(7)25%圧縮時硬度
試料を30cm×30cmの大きさに切断し、20℃±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した。20℃±2℃の環境下にあるオリエンテック社製テンシロンにてφ200mm、厚み3mmの加圧板を用いて測定を行った。該加圧板を用いて試料の中心部を10mm/minの速度で圧縮を開始し、荷重が5Nになる時の厚みを計測し、硬度計厚みとした。この時の加圧板の位置をゼロ点として、速度100mm/minで硬度計厚みの75%まで圧縮した後、速度100mm/minにて加圧板をゼロ点まで戻した。引き続き速度100mm/minで硬度計厚みの25%まで圧縮し、その際の荷重を25%圧縮時硬度とした。単位は、N/φ200mmである(n=3の平均値)。
【0045】
(8)軽量指数
軽量指数は、上記(7)で求めた25%圧縮時硬度(a:単位N/φ200)を、上記(5)で求めた見かけ密度(b:単位kg/m
3)で除すことで算出した。軽量指数の計算式は次の通りである。
軽量指数=a/b(n=3の平均値)。
【0046】
(9)引張強度
試料を網状構造体の引き取り方向(MD方向)と幅方向(TD方向)に対して、それぞれ長さ18cm×幅3cmの大きさに5つずつサンプリングし、電子天秤にて重量を測定した。重量を(c:単位g)とする。重量を測定したサンプルを、試長が10cmとなるようにチャックで把持し、クロスヘッド速度10cm/minにて完全に破壊する場合を除いて最大20cm引張試験を行い、最大強力を記録した。最大強力を(d:単位N)とする。この時、チャック部分から破壊が始まったり、チャックが滑ったりしたサンプルの試験結果は除外した。網状構造体の密度は、(4)より測定した密度(e:単位g/cm
3)を用いた。引張強度は、次の式により算出した。
引張強度={(d)×(e)×18}/{(c)×10
2}(単位MPa)(n=5の平均値)
上記の引張強度をMD方向とTD方向それぞれに対して測定し、引張強度の低い方を、引張強度とした。
【0047】
(10)極限粘度
温度135℃のデカリンにてウベローデ型毛細粘度管を用いて、種々の希薄溶液の比粘度を測定した。希薄溶液粘度の濃度に対するプロットから最小2乗近似で得られる直線の原点への外挿点より極限粘度を決定した。測定に際し、サンプルを約5mm長の長さにサンプルを分割又は切断し、ポリマーに対して1質量%の酸化防止剤(吉富製薬製、「ヨシノックス(登録商標) BHT」)を添加し、135℃で4時間攪拌溶解して測定溶液を調製した。使用する樹脂も、網状構造体を構成する連続線状体も同じ測定方法により測定した。
【0048】
<実施例1>
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、メタロセン化合物を触媒として、ヘキサン、ヘキセン、エチレンを公知の方法で重合し、エチレン・α−オレフィン共重合体とし、次いで酸化防止剤を1%添加混合練り込み後、ペレット化してポリオレフィン系熱可塑性エラストマーA−1とA−2を得た。ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーA−1は、ヘキセン共重合比率が5.2重量%、密度が0.911g/cm
3、融点が110℃、極限粘度が1.22dL/gであり、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーA−2は、ヘキセン共重合比率が5.0重量%、密度が0.911g/cm
3、融点が110℃、極限粘度が0.60dL/gであった。
エチレン酢酸ビニル共重合系熱可塑性エラストマーは、エチレン、ブテン、酢酸ビニルを公知の方法で重合し、エチレン酢酸ビニル共重合体として、次いで酸化防止剤を1%練り込み、ペレット化してエチレン酢酸ビニル共重合系熱可塑性エラストマーA−3を得た。エチレン酢酸ビニル共重合系熱可塑性エラストマーA−3は、酢酸ビニル共重合比率が5.8重量%、ブテン共重合比率が2.3重量%、密度が0.930g/cm
3、融点が96℃、極限粘度が1.02dL/gであった。
【0049】
幅方向1050mm、厚み方向の幅50mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径2mm、内径1.7mmでオリフィスランド長が0.45mmでL/D3.0のトリプルブリッジ中空形成性断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルを用いた。ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーA−1を紡糸温度220℃にて、単孔吐出量3.4g/minでノズルより下方に吐出させた。ノズル面と水面の距離を300mmとし、ノズル面から下方80mmの間は何も設置せず、ノズル面から80mmから160mmの間に保温筒を有し、160mmから水面までは何も設置しない条件とした。幅150cmのステンレス製エンドレスネットを平行に設置し、開口幅45mmで一対の引取りコンベアの一部が水面上に出るように配した。該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状体の両面を引取りコンベアで挟み込みつつ2.4m/minの速度で冷却水中へ引込み固化させると同時に両面をフラット化させた。得られた3次元網状構造体を所定の大きさに切断後、70℃熱風にて20分間乾燥熱処理した。
得られた網状構造体を構成する連続線状体は、断面形状が円形の中空断面形状、中空率が26%、中空断面形状線状体存在率が100%、繊維径が1.1mmであった。網状構造体の見かけ密度は0.039g/cm
3、表面が平坦化された厚みが44mm、25%圧縮時硬度が171N/φ200mm、軽量指数が4.38、引張強度0.33MPa、極限粘度1.20dL/gであった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。
得られた網状構造体は、本発明の要件を満たし、軽量性と引張強度に優れた網状構造体であった。
【0050】
<実施例2>
紡糸温度を230℃、単孔吐量を4.9g/min、引き取り速度を2.2m/min、ノズル面−冷却水距離を320mmにした。ノズル面から下方80mmの間は何も設置せず、80mmから160mmの間に保温筒を有し、160mmから水面までは何も設置しない条件とした以外、実施例1と同様にして網状構造体を得た。
得られた網状構造体を構成する連続線状体は、断面形状が円形の中空断面形状、中空率が22%、中空断面形状線状体存在率が100%、繊維径が1.1mmであった。網状構造体の見かけ密度は0.060g/cm
3、表面が平坦化された厚みが45mm、25%圧縮時硬度が310N/φ200mm、軽量指数が5.17、引張強度が0.60MPa、極限粘度1.18dL/gであった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。
得られた網状構造体は、本発明の要件を満たし、軽量性と引張強度に優れた網状構造体であった。
【0051】
<実施例3>
エチレン酢酸ビニル共重合系熱可塑性エラストマーA−3を用い、単孔吐出量を3.7g/min、引き取り速度を2.1m/min、ノズル面−冷却水距離を280mmにした。ノズル面から下方70mmの間は何も設置せず、70mmから150mmの間に保温筒を有し、150mmから水面までは何も設置しない条件とした以外、実施例1と同様にして網状構造体を得た。
得られた網状構造体を構成する連続線状体は、断面形状が円形の中空断面形状、中空率が30%、中空断面形状線状体存在率が100%、繊維径が1.2mmであった。網状構造体の見かけ密度は0.045g/cm
3、表面が平坦化された厚みが46mm、25%圧縮時硬度が204N/φ200mm、軽量指数が4.53、引張強度が0.51MPa、極限粘度0.98dL/gであった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。
得られた網状構造体は、本発明の要件を満たし、軽量性と引張強度に優れた網状構造体であった。
【0052】
<実施例4>
エチレン酢酸ビニル共重合系熱可塑性エラストマーA−3を用い、紡糸温度210℃、単孔吐出量を4.0g/min、引き取り速度を2.8m/minした以外、実施例1と同様にして網状構造体を得た。
得られた網状構造体を構成する連続線状体は、断面形状が円形の中空断面形状、中空率が28%、中空断面形状線状体存在率が100%、繊維径が0.9mmであった。網状構造体の見かけ密度は0.038g/cm
3、表面が平坦化された厚みが45mm、25%圧縮時硬度が187N/φ200mm、軽量指数が4.92、引張強度が0.72MPa、極限粘度1.01dL/gであった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。
得られた網状構造体は、本発明の要件を満たし、軽量性と引張強度に優れた網状構造体であった。
【0053】
<実施例5>
幅方向1050mm、厚み方向の幅50mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径4mm、内径3.6mmでオリフィスランド長が0.45mmでL/D2.3のトリプルブリッジ中空形成性断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルを用いた。ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーA−1を用い、紡糸温度210℃、単孔吐出量を2.1g/min、引き取り速度を1.4m/min、ノズル面−冷却水距離を160mmとし、保温筒は使用しなかった。
得られた網状構造体を構成する連続線状体は、断面形状が円形の中空断面形状、中空率が29%、中空断面形状線状体存在率が100%、繊維径が1.5mmであった。網状構造体の見かけ密度は0.041g/cm
3、表面が平坦化された厚みが45mm、25%圧縮時硬度が181N/φ200mm、軽量指数が4.92、引張強度が0.38MPa、極限粘度1.17dL/gであった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。
得られた網状構造体は、本発明の要件を満たし、軽量性と引張強度に優れた網状構造体であった。
【0054】
<比較例1>
単孔吐出量を2.1g/min、引き取り速度を0.8m/min、ノズル面−冷却水距離を260mm、ノズル面直下から80mmの長さの保温筒を有した以外は、実施例1と同様にして網状構造体を得た。
得られた網状構造体を構成する連続線状体は、断面形状が円形の中空断面形状、中空率が15%、中空断面形状線状体存在率が100%、繊維径が1.0mmであった。網状構造体の見かけ密度は0.070g/cm
3、表面が平坦化された厚みが45mm、25%圧縮時硬度が151N/φ200mm、軽量指数が2.16、引張強度が0.13MPa、極限粘度1.20dL/gであった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。
得られた網状構造体は、本発明の要件を満たさず、軽量性と引張強度に劣る網状構造体であった。
【0055】
<比較例2>
オリフィスの形状を外径1.2mmでオリフィスランド長が2.4mmのL/Dが2.0の中実形成性断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルを用いた。エチレン酢酸ビニル共重合系熱可塑性エラストマーA−3を用い、紡糸温度を210℃、単孔吐出量を2.3g/min、引き取り速度を0.8m/min、ノズル面−冷却水距離を260mmとしノズルと冷却水の間には保温筒を設置しない条件で網状構造体を得た。
得られた網状構造体を構成する連続線状体は、断面形状が円形の中空断面形状、中空率が0%、中空断面形状線状体存在率が0%、繊維径が0.9mmであった。網状構造体の見かけ密度は0.076g/cm
3、表面が平坦化された厚みが45mm、25%圧縮時硬度が314N/φ200mm、軽量指数が4.13、引張強度が0.14MPa、極限粘度0.96dL/gであった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。
得られた網状構造体は、本発明の要件を満たさず、軽量性と引張強度に劣る網状構造体であった。
【0056】
<比較例3>
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーA−2を用いた以外、実施例1と同様にして網状構造体を得た。
得られた網状構造体を構成する連続線状体は、断面形状が円形の中空断面形状、中空率が5%、中空断面形状線状体存在率が100%、繊維径が0.5mmであった。網状構造体の見かけ密度は0.040g/cm
3、表面が平坦化された厚みが43mm、25%圧縮時硬度が143N/φ200mm、軽量指数が3.58、引張強度が0.11MPa、極限粘度0.48dL/gであった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。
得られた網状構造体は、本発明の要件を満たさず、軽量性と引張強度に劣る網状構造体であった。
【0057】
【表1】