(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6318966
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
A61B6/00 300X
A61B6/00 300D
A61B6/00 310
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-163696(P2014-163696)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-36670(P2016-36670A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】奥村 皓史
(72)【発明者】
【氏名】早川 徹
【審査官】
田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−039332(JP,A)
【文献】
特開2011−041624(JP,A)
【文献】
実公昭47−034855(JP,Y1)
【文献】
特開平08−257019(JP,A)
【文献】
特開2011−068419(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0206934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線診断を行うX線診断装置であって、
滑車と、
前記滑車を保持する滑車保持手段と、
前記滑車からワイヤーで上下方向に移動自在に保持された上下移動手段と、
前記ワイヤーの前記上下移動手段側の一端とは逆側の他端で接続され、前記滑車を介して前記上下移動手段との重量バランスをとるためのカウンタウェイトと、
前記滑車を駆動するモータと、
前記滑車の回転を止めるブレーキと、
前記上下移動手段に対して着脱される着脱部品と
を備えるとともに、
前記着脱部品の着脱を検出する着脱検出手段と、
前記モータの回転を検出する回転検出手段と、
前記モータのトルクを調整するトルク調整手段と、
前記モータの回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出手段と
を備え、
前記着脱検出手段により着脱を検出した際に前記ブレーキを解除し、
ブレーキ解除時の前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのアンバランスによる前記滑車の回転に伴う前記モータの回転を前記回転検出手段が検出し、
前記回転検出手段により検出された前記モータの回転が停止するように前記トルク調整手段が前記モータのトルクを調整し、
前記トルク検出手段により検出された前記モータの回転が停止した際のトルクを前記モータに付与し続けることで、前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのバランスを保持する
ことを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
X線診断を行うX線診断装置であって、
滑車と、
前記滑車を保持する滑車保持手段と、
前記滑車からワイヤーで上下方向に移動自在に保持された上下移動手段と、
前記ワイヤーの前記上下移動手段側の一端とは逆側の他端で接続され、前記滑車を介して前記上下移動手段との重量バランスをとるためのカウンタウェイトと、
前記滑車を駆動するモータと、
前記滑車の回転を止めるブレーキと、
前記上下移動手段に対して着脱される着脱部品と
を備えるとともに、
前記モータの回転を検出する回転検出手段と、
前記モータのトルクを調整するトルク調整手段と、
前記モータの回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出手段と
を備え、
ブレーキ解除,ブレーキ操作の順に行い、
ブレーキ解除時の前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのアンバランスによる前記滑車の回転に伴う前記モータの回転を前記回転検出手段が検出し、
前記回転検出手段により検出された前記モータの回転が停止するように前記トルク調整手段が前記モータのトルクを調整し、
前記トルク検出手段により検出された前記モータの回転が停止した際のトルクを前記モータに付与し続けることで、前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのバランスを保持する
ことを特徴とするX線診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線診断装置において、
前記ブレーキが一時的に解除されたときの時間を監視するタイマーを備え、
前記タイマーによるブレーキ解除時の前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのアンバランスによる前記滑車の回転に伴う前記モータの回転を前記回転検出手段が検出することを特徴とするX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線診断を行うX線診断装置に係り、特に、バランスを保持する構造を有するX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、滑車からワイヤーで上下方向に移動自在に保持された固定部(上下移動手段)と、ワイヤーの固定部(上下移動手段)側の一端とは逆側の他端で接続され、滑車を介して固定部(上下移動手段)との重量バランスをとるための重り(カウンタウェイト)とを備え、固定部(上下移動手段)と重り(カウンタウェイト)とのバランスを保持する構造がある(例えば、特許文献1参照)。着脱部品として例えば平面検出ユニットを採用した場合において、平面検出ユニットが固定部に取り付けられて固定されているときに、固定部および平面検出ユニットと重りとの重量バランスが保たれる(すなわち、釣り合っている)ように重りが設定されている。したがって、平面検出ユニットを固定部から取り外すと、重量バランスが崩れて固定部が持ち上がってしまう。
【0003】
そこで、特許文献1:特開2011−041624号公報では、滑車(プーリ)径を変更することで回転トルクを変更して、バランスを保つように設計されている。具体的には、平面検出ユニットを固定部から取り外した場合に、重りの回転トルクが固定部のみの回転トルクに等しくなるように、重りが掛かっている滑車のプーリ径を小さくしている。その他にも、滑車を介してバランスを保持する機構として、カウンタウェイトを有した機構において、X線管を任意の高さに位置決めする装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−041624号公報
【特許文献2】特開平04−096736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1:特開2011−041624号公報の構成を有する従来例の場合には、次のような(i)〜(iv)の問題がある。すなわち、
(i)重りの回転トルクを調整するために回転体(滑車)の直径を変更する機構では、大きな回転体の直径の確保や直径変更機構を必要とするので、機構や装置自体が大きくなってしまう、
(ii)着脱される着脱部品(例えば平面検出器ユニット)の重量を事前に知る必要がある、
(iii)重量が互いに異なる複数種類の着脱部品(例えば平面検出器ユニット)に関して、例えばサイズ違いやメーカ違いなどにより着脱に対応することが構造上難しい(例えばプーリ径を何段階にも切り替えるのが難しい)、
(iv)個体差によって、バランスを微妙に保つことができない場合があり、バランスを正確に保つためには個体毎にキャリブレーションが必要となる、
といった問題が生じる。
【0006】
なお、上述した特許文献2:特開平04−096736号公報の場合には、重量バランスが崩れたときに、モータのトルクを与えるような機構について開示はなく、重量バランスが崩れたときの対策については講じられていない。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、(i)機構が大きくならない,(ii)(iii)着脱される着脱部品の重量や種類・数を事前に知る必要がなく,(iv)個体毎のキャリブレーションが不要なX線診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係るX線診断装置(「第1の発明」と呼ぶ)は、X線診断を行うX線診断装置であって、滑車と、前記滑車を保持する滑車保持手段と、前記滑車からワイヤーで上下方向に移動自在に保持された上下移動手段と、前記ワイヤーの前記上下移動手段側の一端とは逆側の他端で接続され、前記滑車を介して前記上下移動手段との重量バランスをとるためのカウンタウェイトと、前記滑車を駆動するモータと、前記滑車の回転を止めるブレーキと、前記上下移動手段に対して着脱される着脱部品とを備えるとともに、前記着脱部品の着脱を検出する着脱検出手段と、前記モータの回転を検出する回転検出手段と、前記モータのトルクを調整するトルク調整手段と、前記モータの回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出手段とを備え、前記着脱検出手段により着脱を検出した際に前記ブレーキを解除し、ブレーキ解除時の前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのアンバランスによる前記滑車の回転に伴う前記モータの回転を前記回転検出手段が検出し、前記回転検出手段により検出された前記モータの回転が停止するように前記トルク調整手段が前記モータのトルクを調整し、前記トルク検出手段により検出された前記モータの回転が停止した際のトルクを前記モータに付与し続けることで、前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのバランスを保持することを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]この発明に係るX線診断装置(第1の発明)によれば、着脱部品の着脱を検出する着脱検出手段を備えることで、着脱部品の着脱により上下移動手段とカウンタウェイトとの重量バランスが崩れたことを着脱検出手段により検出する。(滑車の回転を止める)ブレーキを解除した状態で、着脱検出手段により着脱を検出すると、上述した重量バランスが崩れたこと(すなわちアンバランス)により滑車が回転するのに伴って(滑車を駆動する)モータも回転する。そこで、モータの回転を検出する回転検出手段と、モータのトルクを調整するトルク調整手段とを備えることで、回転検出手段により検出されたモータの回転が停止するようにトルク調整手段がモータのトルクを調整する。さらに、モータの回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出手段を備え、トルク検出手段により検出されたモータの回転が停止した際のトルクをモータに付与し続けることで、上下移動手段とカウンタウェイトとのバランスを保持する。
【0010】
このように、着脱部品の何れかが着脱されても、上下移動手段とカウンタウェイトとのアンバランスが原因で移動をロックする必要がなくなり、アンバランス状態で移動を許可した際に上下移動手段が上下方向に勝手に移動して操作者や患者に危険を及ぼすことがなく、また軽い操作が可能になる。また、上下移動手段から着脱部品が着脱される場合に、着脱部品の重量や種類・数に応じた(モータの回転が停止するような)トルクに自在に調整することができるので、(ii)(iii)着脱される着脱部品の重量や種類・数を事前に知る必要がない。また、トルクを調整することでモータの回転が停止してバランスを保持するので、従来のような大きな回転体の直径の確保や直径変更機構が不要となり、(i)機構が大きくならない。また、個体差に依らずにトルクを調整することでモータの回転が停止してバランスを保持するので、(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。その結果、(i)機構が大きくならない,(ii)(iii)着脱される着脱部品の重量や種類・数を事前に知る必要がなく,(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。
【0011】
また、第1の発明とは別の発明に係るX線診断装置(「第2の発明」と呼ぶ)は、X線診断を行うX線診断装置であって、滑車と、前記滑車を保持する滑車保持手段と、前記滑車からワイヤーで上下方向に移動自在に保持された上下移動手段と、前記ワイヤーの前記上下移動手段側の一端とは逆側の他端で接続され、前記滑車を介して前記上下移動手段との重量バランスをとるためのカウンタウェイトと、前記滑車を駆動するモータと、前記滑車の回転を止めるブレーキと、前記上下移動手段に対して着脱される着脱部品とを備えるとともに、前記モータの回転を検出する回転検出手段と、前記モータのトルクを調整するトルク調整手段と、前記モータの回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出手段とを備え、ブレーキ解除,ブレーキ操作の順に行い、ブレーキ解除時の前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのアンバランスによる前記滑車の回転に伴う前記モータの回転を前記回転検出手段が検出し、前記回転検出手段により検出された前記モータの回転が停止するように前記トルク調整手段が前記モータのトルクを調整し、前記トルク検出手段により検出された前記モータの回転が停止した際のトルクを前記モータに付与し続けることで、前記上下移動手段と前記カウンタウェイトとのバランスを保持することを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]この発明に係るX線診断装置(第2の発明)によれば、第1の発明と相違して第1の発明の着脱検出手段を備えずに、ブレーキ解除,ブレーキ操作の順に行う。これにより、ブレーキ解除時には上下移動手段とカウンタウェイトとのアンバランスにより滑車が回転するのに伴って(滑車を駆動する)モータも回転する。そこで、第1の発明と同様にモータの回転を検出する回転検出手段と、モータのトルクを調整するトルク調整手段とを備えることで、回転検出手段により検出されたモータの回転が停止するようにトルク調整手段がモータのトルクを調整する。さらに、第1の発明と同様にモータの回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出手段を備え、トルク検出手段により検出されたモータの回転が停止した際のトルクをモータに付与し続けることで、上下移動手段とカウンタウェイトとのバランスを保持する。
【0013】
このように、第1の発明と相違してブレーキ解除時に上下移動手段とカウンタウェイトとのアンバランスにより滑車およびモータが回転しても、モータの回転が停止するようにトルクを調整して、当該調整されたトルクをモータに付与し続けることでバランスを保持する。よって、ブレーキ解除時でも上下移動手段とカウンタウェイトとのアンバランスが原因で移動をロックする必要がなくなり、第1の発明と同様にアンバランス状態で移動を許可した際に上下移動手段が上下方向に勝手に移動して操作者や患者に危険を及ぼすことがなく、また軽い操作が可能になる。また、ブレーキ解除時に着脱部品の重量や種類・数に応じた(モータの回転が停止するような)トルクに自在に調整することができるので、第1の発明と同様に(ii)(iii)着脱される着脱部品の重量や種類・数を事前に知る必要がない。また、第1の発明と同様にトルクを調整することでモータの回転が停止してバランスを保持するので、従来のような大きな回転体の直径の確保や直径変更機構が不要となり、(i)機構が大きくならない。また、第1の発明と同様に個体差に依らずにトルクを調整することでモータの回転が停止してバランスを保持するので、(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。その結果、(i)機構が大きくならない,(ii)(iii)着脱される着脱部品の重量や種類・数を事前に知る必要がなく,(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。
【0014】
第2の発明では、操作者がブレーキ解除の開始指令と同時に回転検出手段がモータの回転を検出するように指示すればよいが、ブレーキ解除の開始指令と回転検出手段によるモータの回転の検出との間にタイムラグが生じる場合がある。そこで、第2の発明において、ブレーキが一時的に解除されたときの時間を監視するタイマーを備え、タイマーによるブレーキ解除時の上下移動手段とカウンタウェイトとのアンバランスによる滑車の回転に伴うモータの回転を回転検出手段が検出するのが好ましい。このようなタイマーを備えることで、タイムラグを防止することができ、より精密にバランスの保持を制御することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るX線診断装置(第1の発明)によれば、着脱部品の着脱を検出する着脱検出手段と、モータの回転を検出する回転検出手段と、モータのトルクを調整するトルク調整手段と、モータの回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出手段とを備える。着脱検出手段により着脱を検出した際にブレーキを解除し、ブレーキ解除時の上下移動手段とカウンタウェイトとのアンバランスによる滑車の回転に伴うモータの回転を回転検出手段が検出する。そして、回転検出手段により検出されたモータの回転が停止するようにトルク調整手段がモータのトルクを調整する。そして、トルク検出手段により検出されたモータの回転が停止した際のトルクをモータに付与し続けることで、上下移動手段とカウンタウェイトとのバランスを保持する。その結果、(i)機構が大きくならない,(ii)(iii)着脱される着脱部品の重量や種類・数を事前に知る必要がなく,(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。
また、この発明に係るX線診断装置(第2の発明)によれば、モータの回転を検出する回転検出手段と、モータのトルクを調整するトルク調整手段と、モータの回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出手段とを備える。ブレーキ解除,ブレーキ操作の順に行い、ブレーキ解除時の上下移動手段とカウンタウェイトとのアンバランスによる滑車の回転に伴うモータの回転を回転検出手段が検出する。そして、回転検出手段により検出されたモータの回転が停止するようにトルク調整手段がモータのトルクを調整する。さらに、トルク検出手段により検出されたモータの回転が停止した際のトルクをモータに付与し続けることで、上下移動手段とカウンタウェイトとのバランスを保持する。その結果、(i)機構が大きくならない,(ii)(iii)着脱される着脱部品の重量や種類・数を事前に知る必要がなく,(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる
。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】X線撮影ユニットが立位X線撮影スタンドの場合での各実施例に係るX線診断装置の概略図である。
【
図2】実施例1に係るX線診断装置のX線撮影ユニットの概略図およびブロック図である。
【
図3】(a)はX線撮影ユニットが立位X線撮影スタンドの場合での上下移動部および着脱部品の一例であり、(b)はX線撮影ユニットおよびX線管ユニットが回診型の場合での上下移動部および着脱部品の一例である。
【
図4】実施例1、2に係るX線撮影ユニットの回転検出部,トルク調整部およびトルク検出部を構成するモータ制御回路の回路図である。
【
図5】実施例2に係るX線診断装置のX線撮影ユニットの概略図およびブロック図である。
【
図6】実施例3に係るX線診断装置のX線撮影ユニットの概略図およびブロック図である。
【実施例1】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、X線撮影ユニットが立位X線撮影スタンドの場合での各実施例に係るX線診断装置の概略図であり、
図2は、実施例1に係るX線診断装置のX線撮影ユニットの概略図およびブロック図であり、
図3(a)は、X線撮影ユニットが立位X線撮影スタンドの場合での上下移動部および着脱部品の一例であり、
図3(b)は、X線撮影ユニットおよびX線管ユニットが回診型の場合での上下移動部および着脱部品の一例であり、
図4は、実施例1、2に係るX線撮影ユニットの回転検出部,トルク調整部およびトルク検出部を構成するモータ制御回路の回路図である。後述する実施例2、3も含めて、本実施例1では、X線診断装置として、X線撮影を行う装置を例に採って説明する。
【0021】
X線撮影ユニットが立位X線撮影スタンドの場合には、
図1に示すように、X線診断装置1は、X線管ユニット2とX線撮影ユニット3と表示・操作ユニット4とを備えている。X線撮影ユニット3が立位X線撮影スタンドの場合には、X線管ユニット2はX線管懸垂ユニットで構成され、天井に沿って移動可能にX線管22を懸垂支持する。また、X線撮影ユニット3は、被検体Mを立位姿勢の状態でX線撮影を行う立位X線撮影スタンドで構成されている。X線管ユニット2,X線撮影ユニット3および表示・操作ユニット4は互いに通信ケーブル(図示省略)によって電気的に接続されており、この通信ケーブルによって、X線管ユニット2,X線撮影ユニット3および表示・操作ユニット4は互いに通信可能に構成される。X線診断装置1は、この発明におけるX線診断装置に相当する。
【0022】
X線撮影ユニット3が立位X線撮影スタンドの場合には、X線管ユニット2は、
図1に示すように、天井に沿って移動可能で上下に伸縮可能な支柱21と、その支柱21により支持され向きが調整可能なX線管22とを備えている。X線撮影ユニット3が立位X線撮影スタンドの場合には、X線撮影ユニット3は、
図1に示すように、被検体Mを立位姿勢で支持するように構成されている。X線撮影ユニット3の具体的な構成については、
図2や
図3で後述する。表示・操作ユニット4は、各ユニットを統括制御する、あるいは操作者が操作する操作卓41と、X線画像を表示するモニタ42とを備えている。
【0023】
X線撮影ユニット3が立位X線撮影スタンドの場合には、X線管ユニット2の支柱21は、天井に沿って敷設されたレールRに沿って移動可能である。
図1の紙面の奥行き方向にも沿ってレールRは敷設され、奥行き方向にも沿って支柱21は移動可能である。この支柱21は伸縮可能に構成され、この支柱21によってX線管22が支持されることにより、X線管22は水平/昇降移動可能である。また、X線管22は向きが調整可能である。したがって、X線撮影ユニット3の立位X線撮影スタンドの方に向けて、
図1に示すようにX線管22を水平/昇降移動させて向きを調整して、立位姿勢でX線撮影を行うことが可能である。なお、図示を省略するが、被検体Mを臥位姿勢で載置する臥位テーブル等を有した臥位テーブルユニットを配置した場合には、臥位テーブルユニットの臥位テーブルの方に向けて、X線管22を水平/昇降移動させて向きを調整して、臥位姿勢でX線撮影を行うことも可能である。
【0024】
表示・操作ユニット4の操作卓41は、中央演算処理装置(CPU)などの制御部や、操作者が操作するための入力部からなる。制御部は、上述した通信ケーブルを介して各ユニットを統括制御する。入力部は、操作者から入力したデータや命令を、上述した通信ケーブルを介して各ユニットに送り込むことで、各ユニットを操作する。表示・操作ユニット4のモニタ42は、上述した通信ケーブルを介して、後述するX線検出器37C(
図3(a)を参照)で得られたX線画像を表示するように構成されている。
【0025】
本実施例1では、X線撮影ユニット3は、
図2に示すように、滑車31と滑車保持部32(
図1も参照)と上下移動部33(
図1も参照)とカウンタウェイト34とモータ35とブレーキ36と着脱部品37とを備えている。さらに、X線撮影ユニット3は、着脱検出部38と回転検出部39とトルク調整部51とトルク検出部52とを備えている。滑車31は、この発明における滑車に相当し、滑車保持部32は、この発明における滑車保持手段に相当し、上下移動部33は、この発明における上下移動手段に相当し、カウンタウェイト34は、この発明におけるカウンタウェイトに相当し、モータ35は、この発明におけるモータに相当し、ブレーキ36は、この発明におけるブレーキに相当し、着脱部品37は、この発明における着脱部品に相当し、着脱検出部38は、この発明における着脱検出手段に相当し、回転検出部39は、この発明における回転検出手段に相当し、トルク調整部51は、この発明におけるトルク調整手段に相当し、トルク検出部52は、この発明におけるトルク検出手段に相当する。
【0026】
滑車31を滑車保持部32の上部に保持することにより、滑車保持手段32は滑車31を保持する。上下移動部33は、滑車31からワイヤーWで上下方向(
図1および
図3中の矢印の方向)に移動自在に保持されて構成されている。カウンタウェイト34は、ワイヤーWの上下移動部33側の一端とは逆側の他端で接続され、滑車31を介して上下移動部33との重量バランスをとるように構成されている。つまり、滑車31を介して上下移動部33およびカウンタウェイト34がワイヤーWで吊るされており、バランスを保持している。
【0027】
滑車31にはモータ35が接続されており、このモータ35によって滑車31を回転駆動する。また、滑車31の回転を止めるためにブレーキ36が設置されている。さらに、上下移動部33には着脱部品37が搭載されており、上下移動部33に対して着脱部品37が着脱される。この着脱部品37の着脱を着脱検出部38が検出する。
【0028】
滑車保持部32は、例えば金属製の支柱である。上下移動部33は、例えばX線撮影ユニット3が立位X線撮影スタンドの場合には、
図3(a)に示すようにブッキー部33Aであり、例えばX線撮影ユニット3およびX線管ユニット2が回診型の場合には、
図3(b)に示すようにX線管保持アーム33Bである。なお、回診型の場合には車輪付きの台車6に支柱からなる滑車保持部32が搭載される。
【0029】
カウンタウェイト34は、例えば鉛の塊である。後述する実施例2、3も含めて、本実施例1では、上下移動部33に着脱部品37が装着されたときに、上下移動部33および着脱部品37の重さが釣り合うようにカウンタウェイト34の重さを設定する。なお、着脱部品37が外されて上下移動部33のみのときに、上下移動部33のみの重さが釣り合うようにカウンタウェイト34の重さを設定してもよい。ただし、X線撮影時には、上下移動部33に着脱部品37が装着されていることが多く、上下移動部33のみの重さが釣り合うようにカウンタウェイト34の重さを設定すると、X線撮影時にブレーキ36によりロックしなければならない。よって、X線撮影時にブレーキ36によるロックをしないためには、上下移動部33および着脱部品37の重さが釣り合うようにカウンタウェイト34の重さを設定するのが好ましい。もちろん、X線撮影時に着脱部品37が外されて上下移動部33のみのときには、X線撮影時にブレーキ36によるロックをしないために、上下移動部33のみの重さが釣り合うようにカウンタウェイト34の重さを設定すればよい。
【0030】
モータ35は、例えばACサーボモータである。ブレーキ36は、例えば永久電磁石(永電磁石)である。着脱部品37は、例えばX線撮影ユニット3が立位X線撮影スタンドの場合には、
図3(a)に示すように、患者である被検体MがX線撮影時につかまるハンドル37A,散乱X線除去グリッド37BあるいはX線検出器37Cであり、例えばX線撮影ユニット3およびX線管ユニット2が回診型の場合には、
図3(b)に示すように、様々な情報を表示あるいは入力するためのタブレットPC37Dである。
【0031】
X線検出器37Cとしては、例えばフラットパネル型X線検出器やX線フィルムカセッテやIPカセッテなどである。被検体Mを透過したX線をX線検出器37Cが検出して、X線画像を出力して表示・操作ユニット4のモニタ42に送り込んで表示する。もしくはX線画像を印刷出力してもよい。着脱検出部38は、例えばマイクロスイッチなどの接触スイッチや、フォトセンサや磁気センサなどの非接触センサである。
【0032】
回転検出部39は、モータ35の回転を検出する。トルク調整部51は、モータ35のトルクを調整する。トルク検出部52は、モータ35の回転が停止した際のトルクを検出する。回転検出部39,トルク調整部51およびトルク検出部52は、モータ35を制御するための制御回路で構成されており、この制御回路は、例えば
図4に示すモータ制御回路で構成される。モータ制御回路としては、例えば「三菱製サーボアンプMR-J3シリーズ」を用いる。
【0033】
図4では、モータ制御回路は、位置アンプ(
図4ではPで表記),速度アンプ(
図4ではVで表記)および電流アンプ(
図4ではIで表記)が直列に接続され、電流アンプの下流にゲート・ドライブ、さらにトランジスタが接続されて構成されている。電流検出抵抗(
図4ではRで表記)を介してトランジスタはモータ(
図4ではMで表記)に接続され、モータは、タコ・ジェネレータ(
図4ではTGで表記)、さらにはポテンショメータ(
図4ではPOTで表記)に接続されている。ポテンショメータで検出された位置を位置アンプにフィードバック制御(位置フィードバック)し、タコ・ジェネレータで検出されたモータの速度(回転速度)を速度アンプにフィードバック制御(速度フィードバック)し、電流検出抵抗で検出された回転トルクに対応する電流を電流アンプにフィードバック制御(電流フィードバック)する。
【0034】
このように、
図4では、タコ・ジェネレータまたはポテンショメータが、回転検出部39に相当し、タコ・ジェネレータまたはポテンショメータによってモータ35(
図2を参照)の回転を検出する。トルク指令の電流アンプが、トルク調整部51に相当し、モータ35のトルクを調整する。電流検出抵抗が、トルク検出部52に相当し、モータ35の回転が停止した際のトルク(ここでは回転トルクに対応する電流)を検出する。
【0035】
図2に戻って、モータ35の制御について説明する。着脱部品37の着脱状態が変化した(装着された、あるいは外された)ことを着脱検出部38が検出するのと同時に、着脱状態の変化に伴って上下移動部33の重量が変化する。この重量変化により、上下移動部33とカウンタウェイト34との重量バランスが崩れたことを意味する。この重量バランスが崩れたことを着脱検出部38が検出し、この検出をトリガとしてブレーキ36を解除する。
【0036】
すると、重量バランスが崩れたこと(すなわちアンバランス)により上下移動部33は上あるいは下のいずれかに移動するので、滑車31が回転するのと同時にモータ35も回転する。すると、回転検出部39(
図4ではタコ・ジェネレータまたはポテンショメータ)がモータ35の回転を検出する。例えば、
図4の速度指令を0としておくと、モータ35は回転しないようにフィードバック制御され、回転しないためのトルクがトルク調整部39(
図4では電流アンプ)で瞬時に決定され、モータ35は静止する。すなわち、バランスが取れた(バランスを保持した)状態となる。この際のトルクをトルク検出部52(
図4では電流検出抵抗)で検出し、このトルクを次の着脱状態の変化まで保持しつつモータ35に付与し続けることで、上下移動部33とカウンタウェイト34とはバランスが保たれ、ブレーキ36が解除されても静止状態が保持される。
【0037】
本実施例1に係るX線診断装置1によれば、着脱部品37の着脱により上下移動部33とカウンタウェイト34との重量バランスが崩れたことを着脱検出部38により検出する。(滑車31の回転を止める)ブレーキ36を解除した状態で、着脱検出部38により着脱を検出すると、上述した重量バランスが崩れたこと(すなわちアンバランス)により滑車31が回転するのに伴って(滑車31を駆動する)モータ35も回転する。そこで、モータ35の回転を検出する回転検出部39と、モータ35のトルクを調整するトルク調整部51とを備えることで、回転検出部39により検出されたモータ35の回転が停止するようにトルク調整部51がモータ35のトルクを調整する。さらに、モータ35の回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出部52を備え、トルク検出部52により検出されたモータ35の回転が停止した際のトルクをモータ35に付与し続けることで、上下移動部33とカウンタウェイト34とのバランスを保持する。
【0038】
このように、着脱部品37の何れかが着脱されても、上下移動部33とカウンタウェイト34とのアンバランスが原因で移動をロックする必要がなくなり、アンバランス状態で移動を許可した際に上下移動部33が上下方向に勝手に移動して操作者や患者である被検体Mに危険を及ぼすことがなく、また軽い操作が可能になる。また、上下移動部33から着脱部品37が着脱される場合に、着脱部品の重量や種類・数に応じた(モータ35の回転が停止するような)トルクに自在に調整することができるので、(ii)(iii)着脱される着脱部品33の重量や種類・数を事前に知る必要がない。また、トルクを調整することでモータ35の回転が停止してバランスを保持するので、従来のような大きな回転体の直径の確保や直径変更機構が不要となり、(i)機構が大きくならない。また、個体差に依らずにトルクを調整することでモータ35の回転が停止してバランスを保持するので、(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。その結果、(i)機構が大きくならない,(ii)(iii)着脱される着脱部品33の重量や種類・数を事前に知る必要がなく,(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。
【0039】
本実施例1の場合には、モータ35およびその制御回路(回転検出部39,トルク調整部51およびトルク検出部52)を備えて構成すればよいだけなので、装置が小型であり、重量のそれぞれ異なる様々な部品(着脱部品33)が着脱されても問題なくバランスを常に保持することができる。これによって、操作者がブレーキ36を手動で解除した際にアンバランスにより上下移動部33が勝手に移動して操作者や患者に危険を及ぼす、あるいはアンバランスにより操作力が増加して負担が増えることもなく、アンバランス時でもモータ35がアンバランス分をサポートするのでロック解除することが可能となる。
【実施例2】
【0040】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図5は、実施例2に係るX線診断装置のX線撮影ユニットの概略図およびブロック図である。上述した実施例1と共通する箇所については、同じ符号を付して、その説明を省略するとともに、図示を省略する。また、X線撮影ユニットが立位X線撮影スタンドの場合には、本実施例2においても
図1や
図3(a)と同じ構成を有したX線診断装置であり、X線撮影ユニットおよびX線管ユニットが回診型には、本実施例2においても
図3(b)と同じ構成を有したX線診断装置である。
【0041】
上述した実施例1では着脱検出部38(
図2を参照)を備えていたのに対して、本実施例2では着脱検出部の代わりに、
図5に示すようにタイマー53を備えている。つまり、実施例1ではバランスを確認するトリガが着脱検出部38からの検出情報であったのに対して、本実施例2では、タイマー53でトリガをかけている(ブレーキ解除およびブレーキ操作を周期的に繰り返す場合にはタイマー53でトリガを周期的にかけている)点で相違する。タイマー53は、この発明におけるタイマーに相当する。
【0042】
なお、本実施例2においても、回転検出部39,トルク調整部51およびトルク検出部52は、モータ35を制御するための制御回路で構成されており、この制御回路は、例えば
図4に示すモータ制御回路で構成される。
【0043】
本実施例2では、必ずしも重量バランスを保持する(すなわち重さが釣り合う)必要はない。ブレーキ36によるブレーキ解除,ブレーキ操作の順に行う。ブレーキ解除およびブレーキ操作を複数回繰り返す場合には、ブレーキ36によるブレーキ解除およびブレーキ操作を周期的に繰り返す。ブレーキ解除およびブレーキ操作の繰り返し回数については特に限定されず、ブレーキ解除,ブレーキ操作の順にブレーキ解除およびブレーキ操作を1回のみ行ってもよいし、ブレーキ解除およびブレーキ操作を複数回繰り返し行ってもよい。
【0044】
ブレーキ解除の時間についても特に限定されない。ブレーキ解除の時間を例えば2秒程度に設定することで、上下移動部33が上あるいは下に移動せずに、かつブレーキ解除時でのアンバランスによりモータ35が回転し、その回転を回転検出部39が検出することができる。ただし、ブレーキ解除の時間が長すぎると、上下移動部33が上に移動して滑車31に衝突する、あるいは上下移動部33が下に移動して床面に衝突する。逆に、時間が短すぎるとモータ35の回転を回転検出部39が検出し難くなる。よって、上下移動部33やカウンタウェイト34や着脱部品37の重さ等に応じてブレーキ解除の時間を適宜に設定すればよい。
【0045】
タイマー53は、ブレーキ36が一時的に解除されたときの時間を監視する。そして、タイマー53によるブレーキ解除時の上下移動部33とカウンタウェイト34とのアンバランスによる滑車31の回転に伴うモータ35の回転を回転検出部39が検出する。このように、タイマー53でトリガをかける。
【0046】
モータ35の回転を回転検出部39が検出したら、上述した実施例1と同様に、モータ35は回転しないようにフィードバック制御され、回転しないためのトルクがトルク調整部39で瞬時に決定され、モータ35は静止する。すなわち、バランスが取れた(バランスを保持した)状態となる。この際のトルクをトルク検出部52で検出し、このトルクを次の着脱状態の変化まで保持しつつモータ35に付与し続けることで、上下移動部33とカウンタウェイト34とはバランスが保たれ、ブレーキ36が解除されても静止状態が保持される。
【0047】
ブレーキ解除,ブレーキ操作の順にブレーキ解除およびブレーキ操作を1回のみ行う場合には、ブレーキ解除時でのモータ35の回転を回転検出部39が検出して、モータ35が回転しないようにフィードバック制御し、回転しないためのトルクをトルク調整部39で決定し、各々のトルクを次の着脱状態の変化まで保持しつつモータ35に付与し続ける。一方、ブレーキ解除およびブレーキ操作を複数回繰り返し行う場合には、各々のブレーキ解除時でのモータ35の回転を回転検出部39がそれぞれ検出して、各々の検出毎にモータ35が回転しないようにフィードバック制御し、回転しないためのトルクをトルク調整部39で各々の検出毎にそれぞれ決定し、各々のトルクを次の周期まで保持しつつモータ35に付与し続ける。
【0048】
本実施例2に係るX線診断装置1によれば、上述した実施例1と相違して実施例1の着脱検出部38(
図2を参照)を備えずに、ブレーキ解除,ブレーキ操作の順に行う。これにより、ブレーキ解除時には上下移動部33とカウンタウェイト34とのアンバランスにより滑車31が回転するのに伴って(滑車31を駆動する)モータ35も回転する。そこで、実施例1と同様にモータ35の回転を検出する回転検出部39と、モータ35のトルクを調整するトルク調整部51とを備えることで、回転検出部39により検出されたモータ35の回転が停止するようにトルク調整部51がモータ35のトルクを調整する。さらに、実施例1と同様にモータ35の回転が停止した際のトルクを検出するトルク検出部52を備え、トルク検出部52により検出されたモータ35の回転が停止した際のトルクをモータ35に付与し続けることで、上下移動部33とカウンタウェイト34とのバランスを保持する。
【0049】
このように、実施例1と相違してブレーキ解除時に上下移動部33とカウンタウェイト34とのアンバランスにより滑車31およびモータ35が回転しても、モータ35の回転が停止するようにトルクを調整して、当該調整されたトルクをモータ35に付与し続けることでバランスを保持する。よって、ブレーキ解除時でも上下移動部33とカウンタウェイト34とのアンバランスが原因で移動をロックする必要がなくなり、実施例1と同様にアンバランス状態で移動を許可した際に上下移動部33が上下方向に勝手に移動して操作者や患者である被検体Mに危険を及ぼすことがなく、また軽い操作が可能になる。また、ブレーキ解除時に着脱部品37の重量や種類・数に応じた(モータ35の回転が停止するような)トルクに自在に調整することができるので、実施例1と同様に(ii)(iii)着脱される着脱部品33の重量や種類・数を事前に知る必要がない。また、実施例1と同様にトルクを調整することでモータ35の回転が停止してバランスを保持するので、従来のような大きな回転体の直径の確保や直径変更機構が不要となり、(i)機構が大きくならない。また、個体差に依らずにトルクを調整することでモータ35の回転が停止してバランスを保持するので、(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。その結果、(i)機構が大きくならない,(ii)(iii)着脱される着脱部品33の重量や種類・数を事前に知る必要がなく,(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。
【0050】
操作者がブレーキ解除の開始指令と同時に回転検出部39がモータ35の回転を検出するように指示すればよいが、ブレーキ解除の開始指令と回転検出部39によるモータ35の回転の検出との間にタイムラグが生じる場合がある。そこで、本実施例2において、ブレーキ36が一時的に解除されたときの時間を監視するタイマー53を備え、タイマー53によるブレーキ解除時の上下移動部33とカウンタウェイト34とのアンバランスによる滑車31の回転に伴うモータ35の回転を回転検出部39が検出するのが好ましい。このようなタイマー53を備えることで、タイムラグを防止することができ、より精密にバランスの保持を制御することができる。
【実施例3】
【0051】
次に、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。
図6は、実施例3に係るX線診断装置のX線撮影ユニットの概略図およびブロック図である。上述した実施例1、2と共通する箇所については、同じ符号を付して、その説明を省略するとともに、図示を省略する。また、X線撮影ユニットが立位X線撮影スタンドの場合には、本実施例3においても
図1や
図3(a)と同じ構成を有したX線診断装置であり、X線撮影ユニットおよびX線管ユニットが回診型には、本実施例3においても
図3(b)と同じ構成を有したX線診断装置である。
【0052】
上述した実施例1では着脱検出部38(
図2を参照)を備え、上述した実施例1、2では回転検出部39やトルク調整部51やトルク検出部52(
図2や
図5を参照)を備えていたのに対して、本実施例3では着脱検出部や回転検出部やトルク調整部やトルク検出部の代わりに、
図6に示すように荷重検出部54やタンク55やポンプ56を備えている。荷重検出部54は、この発明における荷重検出手段に相当し、タンク55は、この発明におけるタンクに相当し、ポンプ56は、この発明におけるポンプに相当する。
【0053】
荷重検出部54は、着脱部品37の着脱による重量変化を検出する。荷重検出部54は、例えばひずみゲージである。タンク55は、上下移動部33およびカウンタウェイト34に付随して重量変化を与えるように構成されており、流体を収容する。本実施例3では、流体として液体を例に採って説明する。
【0054】
タンク55は、2つのタンク55A,55Bから構成され、上下移動部33にタンク55Aを配置し、カウンタウェイト34にタンク55Bを配置している。上下移動部側のタンク55Aとカウンタウェイト側のタンク55Bとの間には管Tを配置しており、管Tを通して、タンク55内の液体をポンプ56は上下移動部側のタンク55A・カウンタウェイト側のタンク55B間で搬送する。管TはワイヤーWに沿って配置されている。
【0055】
タンク55は、例えばポリエチレン製のタンクである。ポンプ56は、例えばプランジャーポンプである。タンク55内に収容される液体は、例えばポリタングステン酸ナトリウム水溶液である。液体については、特に限定されないが、省スペース化を考慮すれば水よりも比重が重い液体を用いるのが好ましく、上述したポリタングステン酸ナトリウム水溶液が適している。
【0056】
荷重検出部54が着脱部品37の着脱による重量変化を検出した際に、ポンプ56を駆動させて2つのタンク55A,55B間で重量変化を相殺させる方向に液体を移動させることで、上下移動部33とカウンタウェイト34とのバランスを保持する。つまり、荷重検出部54で検出された重量変化に応じてポンプ56を動作させて、タンク55A,55B内の液体を、管Tを通して移動させることで重量バランスを維持する。
【0057】
本実施例3に係るX線診断装置1によれば、上述した実施例1と相違して実施例1の着脱検出部38(
図2を参照)を備えずに、上述した実施例1、2と相違して回転検出部39やトルク調整部51やトルク検出部52(
図2や
図5を参照)も備えずに、着脱部品37の着脱による重量変化を検出する荷重検出部54を備える。これにより、着脱部品37の着脱により上下移動部33とカウンタウェイト34との重量バランスが崩れたことを荷重検出部54により検出する。そこで、実施例1、2と相違して上下移動部33およびカウンタウェイト34に付随して重量変化を与えるタンク55と、タンク55内の流体(本実施例3では液体)を上下移動部側のタンク55A・カウンタウェイト側のタンク55B間で搬送するポンプ56とを備える。さらに、荷重検出部54が着脱部品37の着脱による重量変化を検出した際に、ポンプ56を駆動させて2つのタンク55A,55B間で重量変化を相殺させる方向に流体(液体)を移動させることで、上下移動部33とカウンタウェイト34とのバランスを保持する。
【0058】
このように、実施例1、2と相違して荷重検出部54で検出された重量変化に応じてポンプ56を動作させ、2つのタンク55A,55B間で重量変化を相殺させる方向に流体(液体)を移動させることでバランスを保持する。よって、実施例1と同様に着脱部品37の何れかが着脱されても、上下移動部33とカウンタウェイト34とのアンバランスが原因で移動をロックする必要がなくなり、アンバランス状態で移動を許可した際に上下移動部33が上下方向に勝手に移動して操作者や患者である被検体Mに危険を及ぼすことがなく、また軽い操作が可能になる。また、重量変化に応じて流体(液体)を移動させるので、実施例1、2と同様に(ii)(iii)着脱される着脱部品33の重量や種類・数を事前に知る必要がない。また、重量変化に応じて流体(液体)を移動させてバランスを保持するので、実施例1、2と同様に従来のような大きな回転体の直径の確保や直径変更機構が不要となり、(i)機構が大きくならない。また、個体差に依らずにそのときの重量変化に応じて流体(液体)を移動させてバランスを保持するので、実施例1、2と同様に(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。その結果、(i)機構が大きくならない,(ii)(iii)着脱される着脱部品33の重量や種類・数を事前に知る必要がなく,(iv)個体毎のキャリブレーションが不要となる。
【0059】
図6では、モータ35(
図2や
図5を参照)を備えない構成である。よって、滑車31を滑車保持部32の中に埋め込んで保持することも可能である。もちろん、滑車31を滑車保持部32の上部に保持してもよい。また、モータを備えて、モータの駆動により上下移動部33やカウンタウェイト34を補助的に移動させてもよい。
【0060】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0061】
(1)上述した各実施例では、X線診断装置として、X線撮影を行う装置を例に採って説明したが、X線撮影を行う装置に限定されない。ワイヤーやカウンタウェイトによりバランス(カウンターバランス)を保持する装置であって、X線診断を行う装置であれば、例えばX線撮影よりも弱い線量でX線を照射して複数のX線画像を逐次に取得して、各々のX線画像をリアルタイムに表示(動画表示)するX線透視を行う装置に適用してもよい。
【0062】
(2)上述した各実施例では、各実施例の構成は互いに独立した構成であったが、各実施例の構成を互いに組み合わせ構成してもよい。例えば実施例1、2を組み合わせて、実施例1のモード,実施例2のモードのいずれかを適宜選択してもよい。また、実施例1、3を組み合わせて、実施例1のモード,実施例3のモードのいずれかを適宜選択してもよい。また、実施例2、3を組み合わせて、実施例2のモード,実施例3のモードのいずれかを適宜選択してもよい。さらに、実施例1〜3を組み合わせて、実施例1のモード,実施例2のモードまたは実施例3のモードのいずれかを適宜選択してもよい。
【0063】
(3)上述した各実施例では、中央演算処理装置(CPU)などの制御部を、X線撮影ユニット3(
図2や
図5や
図6を参照)とは独立して備えたが、X線撮影ユニット3内に制御部を組み込んで備えてもよい。
【0064】
(4)上述した実施例2では、ブレーキが一時的に解除されたときの時間を監視するタイマーを備え、タイマーによるブレーキ解除時の上下移動手段とカウンタウェイトとのアンバランスによる滑車の回転に伴うモータの回転を回転検出手段(実施例2では回転検出部)が検出したが、必ずしもタイマーを備える必要はない。ブレーキ解除の開始指令と回転検出手段(回転検出部)によるモータの回転の検出との間にタイムラグが生じないのであれば、タイマーを備えずに、操作者がブレーキ解除の開始指令と同時に回転検出手段(回転検出部)がモータの回転を検出するように指示するように構成してもよい。
【0065】
(5)上述した実施例3では、タンク内の流体として液体を例に採り、水よりも比重が重い液体としてポリタングステン酸ナトリウム水溶液を用いたが、必ずしも流体としては液体である必要はなく、必ずしも液体として水よりも比重が重い液体を用いる必要はない。流体としては気体(空気や希ガスや窒素ガスなど)を用いてもよい。ただし、上述したように省スペース化を考慮すれば水よりも比重が重い液体を用いるのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、この発明は、立位X線撮影スタンドのX線撮影装置や、回診型X線撮影装置に適している。
【符号の説明】
【0067】
1 … X線診断装置
31 … 滑車
32 … 滑車保持部
33 … 上下移動部
34 … カウンタウェイト
35 … モータ
36 … ブレーキ
37 … 着脱部品
38 … 着脱検出部
39 … 回転検出部
51 … トルク調整部
52 … トルク検出部
53 … タイマー
54 … 荷重検出部
55 … タンク
56 … ポンプ