(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1走行駆動部は、当該第1走行駆動部に対する前記走行制御信号が生成されていない状態において、内蔵する付勢体の付勢力により当該第1走行駆動部を制動するネガティブブレーキ機構を備え、
前記外部信号生成部は、前記外部走行制御信号として、前記第1走行体における前記ネガティブブレーキ機構の制動を解除する解除信号を生成自在に構成されている請求項1又は2に記載の走行設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、走行体に給電できなくなったことにより走行体が走行できなくなった場合に、救済用走行体から故障走行体に給電することで、故障走行体を走行させることができることが記載されている。
しかしながら、故障走行体が走行できなくなった原因が、故障走行体への電力の供給ができなくなったことではなく、制御部の故障が原因で故障走行体が走行できなくなった場合は、故障走行体に電力を供給するだけでは故障走行体を走行させることができない。
【0006】
そこで、第1走行体の制御部が故障した場合でも、その第1走行体を走行経路上の別の場所まで移動させることができる走行設備が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る走行設備は、走行経路を走行する走行体として第1走行体が設けられ、前記第1走行体が、当該第1走行体を走行駆動する第1走行駆動部と、前記第1走行駆動部に対する走行制御信号を生成して前記第1走行駆動部の駆動を制御する第1制御部と、を備えているものであって、
前記第1走行体とは別に、前記走行経路を走行する走行体として第2走行体が設けられ、
前記第2走行体は、当該第2走行体を走行駆動する第2走行駆動部と、前記第2走行駆動部に対する走行制御信号を生成して前記第2走行駆動部の駆動を制御する第2制御部と、を備え、前記第2走行体は、前記第1走行駆動部に対する外部走行制御信号を生成する外部信号生成部を備え、前記第1走行体に、前記外部走行制御信号を受信して当該外部走行制御信号を前記第1走行駆動部に伝達可能な第1接続部
と、前記走行経路に沿う自己の走行方向を変更操作する操向操作部とが設けられ、
前記第1制御部が、前記操向操作部の作動を制御するように構成され、前記外部信号生成部は、前記操向操作部の作動を制御する外部操向制御信号を生成自在に構成され、前記第2走行体に、前記外部信号生成部が生成する前記外部走行制御信号を送信可能な第2接続部が設けられ、前記第1接続部と前記第2接続部との間に着脱自在に接続されて、前記外部走行制御信号を送受信する接続体が備えられ
、前記接続体は、前記外部操向制御信号を送受信するように構成されている点を特徴とする。
【0008】
すなわち、第1走行体が、第1制御部における不具合によって走行経路を走行できない状態となった場合、当該第1走行体の第1接続部と第2走行体の第2接続部とを接続体で接続して、第2走行体の外部信号生成部が生成した外部走行制御信号を接続体を介して第1走行体に送信することで、第2制御部が生成した当該外部走行制御信号によって第1走行駆動部の駆動を制御することができる。
したがって、第1走行体の制御部が故障した場合でも、その第1走行体を走行経路上の別の場所まで移動させることができる。
【0009】
また、第1走行体に走行経路に沿う自己の走行方向を変更操作する操向操作部が設けられ、第1制御部が操向操作部の作動を制御するように構成されている場合において、第1制御部が故障する等して第1制御部による操向操作部の制御ができなくなった場合、第1走行体を適切な走行経路に沿って走行させることができなくなる虞がある。
【0010】
本特徴構成によれば、外部信号生成部が、操向操作部の作動を制御する外部操向制御信号を生成できるので、第1走行体において操向操作部に対する制御信号が生成できないという事態が発生した場合に、第1走行体の第1接続部と第2走行体の第2接続部とを接続体で接続して、接続体を介して第2走行体の外部信号生成部が生成した外部操向制御信号を第1走行体に送信することによって、第1走行体の操向操作部の作動を制御することができ、第1走行体を適切な走行経路に沿って走行させることができる。
【0011】
本発明に係る走行設備においては、前記走行経路に沿って前記第1走行体の走行を案内する案内レールが設けられ、前記第1走行体に、前記案内レールに案内される案内体が設けられ、前記走行経路が、前記第1走行体の走行先としての複数の走行経路に分岐する分岐部を有し、前記案内レールは、前記分岐部において前記複数の走行経路の夫々に対応する分岐案内レールに分岐するように構成され、前記操向操作部が、複数の前記複数の分岐案内レールのうち自己が案内される分岐走行レールを選択するように前記案内体の位置を切換え操作するように構成されていることが好ましい。
【0012】
すなわち、第1走行体が、案内体に案内されて案内レールに沿って走行するように構成され、分岐部において当該案内体の作動を操作することで、自己の走行方向を切換えるように構成されている場合には、第1制御部が故障する等して第1制御部による案内体の作動の制御ができなくなると、第1走行体を適切な走行経路に沿って走行させることができなくなる。
【0013】
本特徴構成によれば、第1走行体の第1接続部と第2走行体の第2接続部とを接続体で接続して、接続体を介して第2走行体の外部信号生成部が生成した外部操向制御信号を第1走行体に送信することによって、操向操作部の作動を制御して案内体の位置を切換えることができる。そのため、案内体を、複数の複数の分岐案内レールのうちの適切な分岐案内レールに案内される状態に操作することができる。したがって、第1走行体を適切な走行経路に沿って走行させることができる。
【0014】
本発明に係る走行設備においては、前記第1走行駆動部は、当該第1走行駆動部に対する前記走行制御信号が生成されていない状態において、内蔵する付勢体の付勢力により当該第1走行駆動部を制動するネガティブブレーキ機構を備え、前記外部信号生成部は、前記外部走行制御信号として、前記第1走行体における前記ネガティブブレーキ機構の制動を解除する解除信号を生成自在に構成されていることが好ましい。
【0015】
第1走行駆動部に対する走行制御信号が生成されていない状態において、内蔵する付勢体の付勢力により当該第1走行駆動部を制動するネガティブブレーキ機構を備えている場合、第1制御部の故障等により第1走行駆動部に対する走行制御信号が生成できなくなると、ネガティブブレーキ機構によって第1走行駆動部を制動する状態が継続してしまい、第1走行体を走行させることができなくなる。
【0016】
本特徴構成によれば、外部信号生成部が、外部走行制御信号として、第1走行体におけるネガティブブレーキ機構の制動を解除する解除信号を生成できるので、第1走行体において第1走行駆動部に対する走行制御信号が生成できないという事態が発生した場合に、第1走行体の第1接続部と第2走行体の第2接続部とを接続体で接続して、接続体を介して第2走行体の外部信号生成部が生成した解除信号を第1走行体に送信することによって、ネガティブブレーキ機構による制動を解除し、第1走行体が走行できるようにすることができる。
【0017】
本発明に係る走行設備においては、前記第1走行体及び前記第2走行体を一定の間隔を維持して互いに連結する連結体が着脱自在に備えられていることが好ましい。
【0018】
すなわち、第1走行体と第2走行体とを連結体で連結し、かつ、第1走行体の第1接続部と第2走行体の第2接続部とを接続体で接続して、第2走行体の外部信号生成部が生成した解除信号を接続体を介して第1走行体に送信する。これにより、第1走行体のネガティブブレーキ機構が解除される。このようにネガティブブレーキ機構が解除された状態で第2走行体の第2走行駆動部を駆動して第2走行体を走行させると、第1走行体を、第2走行体の走行駆動力によって走行させることができる。
このとき、第2走行体が第1走行体よりも走行方向前方となるようにして、第2走行体により第1走行体を牽引するようにしてもよいし、第2走行体が第1走行体よりも走行方向後方となるようにして、第2走行体により第1走行体を押し操作するようにしてもよい。
このように、第1走行体において第1走行駆動部の走行駆動力を発生させることができない場合においても、第2走行体の駆動力を用いて第1走行体を走行させることができる。
【0019】
本発明に係る走行設備においては、前記第1走行体が、搬送対象の物品を保持したまま走行可能な搬送用走行体であり、前記搬送用走行体が、前記物品を保持して昇降可能な昇降体と、当該昇降体を昇降駆動する昇降駆動部と、前記昇降駆動部の作動を制御する昇降制御部と、を備え、前記外部信号生成部は、前記第1走行体における前記昇降駆動部を駆動する外部昇降用制御信号を生成可能に構成され、前記接続体が、前記外部昇降用制御信号を送受信するように構成されていることが好ましい。
【0020】
すなわち、物品を保持して昇降可能な昇降体と昇降体を昇降駆動する昇降駆動部とを第1走行体に備え、昇降駆動部の作動が昇降制御部によって制御される場合、昇降制御部が故障するなどして昇降駆動部を作動させることができなくなると、物品が搬送用の位置としての高所に保持された状態のままとなる等の不都合が生じる虞がある。
本特徴構成によれば、第1走行体の第1接続部と第2走行体の第2接続部とを接続体で接続して、接続体を介して第2走行体の外部信号生成部が生成した外部昇降用制御信号を第1走行体に送信することによって、昇降駆動部の作動を制御しすることができ、物品を保持している昇降体を作業者の作業高さにまで下降移動させて物品を取り出すことができる。
【0021】
本発明に係る走行設備においては、前記走行体が複数設けられ、前記複数の走行体の夫々が、前記第1走行体として前記第1接続部を備え、かつ、前記第2走行体として前記第2接続部及び前記外部信号生成部を備えていることが好ましい。
【0022】
すなわち、複数の走行体の夫々が、第1走行体として第1接続部を備え、かつ、第2走行体として第2接続部及び外部信号生成部を備えているから、ある走行体の制御部が故障して当該走行体の走行や操向操作部による走行方向の変更操作、又は昇降駆動部による昇降体の昇降操作を行えない事態が生じた場合、当該走行体を第1走行体とし、他の走行体を第2走行体として、第2走行体としての走行体と第1走行体としての走行体とを接続体で接続して、第1走行体の走行や操向、又は昇降体の昇降を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて第1走行体及び第2走行体を備える走行設備を天井搬送設備に適用した実施形態を説明する。
天井搬送設備には、
図1及び
図2に示すように、天井から吊り下げられた走行レールR上を走行自在な走行車輪Wを備える走行部11と、走行部11から吊り下げ支持される本体部12とを備えた天井搬送車Vが設けられている。走行部11には、走行レールR上を転動する走行車輪W1と、その走行車輪W1を回転駆動する電力駆動式の走行モータM1とが設けられている。また、走行モータM1の回転出力を走行車輪W1に伝達する伝達軸を備えた伝達機構に、ネガティブブレーキ機構Nが備えられている。ネガティブブレーキ機構Nは、電力が供給されていない状態において、内蔵する付勢体の付勢力により伝達軸の回転を制動し、電力が供給されることにより制動状態が解除されるようになっている。
【0026】
また、走行部11には、走行レールRに沿って走行経路Tの分岐部分(
図3の点線Jで囲った箇所)に設けられる案内レールR2に案内される案内ローラW2が設けられている。案内ローラW2は、走行部11の走行方向視(
図2参照)で左右方向に移動自在に構成され、また、案内ローラW2の位置を左右方向における左側位置と右側位置とに切換え且つその位置に保持する電力駆動式の案内ローラソレノイドM2が設けられている。案内ローラW2は、上記左側位置に位置するときに走行部11の走行方向視で案内レールR2の左側面に当接し、上記右側位置に位置するときに走行部11の走行方向視で案内レールR2の右側面に当接するように構成されている。
【0027】
本体部12は、走行部11の走行方向の前後にカバー部12Cを備えている。カバー部12Cは、
図1に示すように、側面視(走行部11の走行方向と直交し且つ水平方向に沿う方向視)で下方に開口したC字状に形成されている。また。本体部12は、
図1及び
図2に示すように、物品B(本実施形態では、半導体基板を上下方向に複数積層して収容するFOUPと呼ばれる容器)を保持し且つ上下方向に昇降移動自在な昇降体13と、昇降体13を昇降駆移動させる電力駆動式の昇降駆動部M3を備え、昇降体13にて搬送対象の容器Bを保持したまま走行可能に構成されている。なお、昇降体13には、容器BとしてのFOUPの上端に備えられているフランジを把持するための把持部が備えられているが、この保持部については周知の構成を採用しているので、本実施形態では説明を省略する。
【0028】
また、カバー部12Cの上端部で且つカバー部12Cにおける走行部11の走行方向前端部と後端部との夫々には、後述する連結体Fの環状部分Frに係合する係合凸部Kが上方に突出する形態で設けられている。
さらに、カバー部12Cにおける走行部11の走行方向前方側側面及び後方側側面には、後述する接続体Dの接続プラグDpを接続するコネクタ部Cが設けられている。
【0029】
上記のような天井搬送車Vが走行する走行経路Tは、
図3に示すように、環状のメイン走行経路Tmと、そのメイン走行経路Tmの側方に設けられる環状のサブ走行経路Tsとを備えて構成され、メイン走行経路Tmとサブ走行経路Tsとの間は接続経路Tjで接続されている。メイン走行経路Tm及びサブ走行経路Tsにおける天井搬送車Vの走行方向は一方向に定められており、
図3の点線Jで囲った部分が、メイン走行経路Tmからサブ走行経路Tsに向う分岐部、又は、サブ走行経路Tsからメイン走行経路Tmに向う分岐部となる。
【0030】
なお、天井搬送車Vは、半導体基板を収納した容器Bを搬送対象の物品として、走行経路Tに沿って設けられる複数の処理装置Sの授受箇所(以降、ステーションSpと称する)の間で容器Bを搬送するように構成されている。処理装置Sは、半導体基板の製造途中での半製品等に対して所定の処理を行うように構成されている。
【0031】
図4に示すように、分岐部Jにおいては、一対の走行レールRの間に案内レールR2が設けられている。案内レールR2は、走行経路Tの分岐に対応して分岐案内レールR2aと分岐案内レールR2bとに分岐するように構成されている。
図4において、実線で記載している天井搬送車Vが分岐前、二点鎖線で記載している天井搬送車Vが分岐後を表している。
【0032】
天井搬送車Vを走行経路T1に向けて走行させる場合には、案内ローラソレノイドM2によって案内ローラW2をXL方向に移動させる。これにより、案内ローラW2は分岐案内レールR2bのXL側の面に当接して案内され、天井搬送車Vは走行経路T1に沿って走行する。また、天井搬送車Vを走行経路T2に向けて走行させる場合には、案内ローラソレノイドM2によって案内ローラW2をXR方向に移動させる。これにより、案内ローラW2は分岐案内レールR2aのXR側の面に当接して案内され、天井搬送車Vは走行経路T2に沿って走行する。
【0033】
すなわち、走行経路Tにそって走行レールR及び天井搬送車Vの走行を案内する案内レールR2が設けられている。また、走行経路Tが、天井搬送車Vの走行先としての複数の走行経路T(走行経路T1、T2)に分岐する分岐部Jを有し、案内レールR2は、分岐部Jにおいて複数の走行経路Tの夫々に対応する分岐案内レールR2a、R2bに分岐するように構成されている。
そして、天井搬送車Vには、案内レールR2に案内される案内体としての案内ローラW2が設けられ、案内ローラソレノイドM2が、複数の複数の分岐案内レールR2a、R2bのうち自己が案内される分岐案内レールR2a、R2bの何れかに対応する位置に案内ローラW2の位置を切換え操作することで自己の走行方向を変更操作する操向操作部として構成されている。
【0034】
次に、
図5を参照して、天井搬送車Vの制御構成を説明する。
天井搬送車Vには、走行レールRに沿って設けられた給電レールから非接触方式で集電する集電部E1、集電部E1にて集電した電力を当該天井走行車の角部の駆動用電力とすべく整流及び所定の電圧への昇降圧を行う電源基板E2、電波や光を用いて送信される搬送指令等の指令情報を受信する指令受信部G、走行モータM1、上述の案内ローラソレノイドM2、昇降駆動部M3、及びネガティブブレーキ機構N等が設けられている。また、天井搬送車Vには、上記指令情報に基づいて当該天井搬送車Vの各部の作動を制御する制御部Hが設けられている。
【0035】
制御部Hには電源基板E2が電気的に接続されて電力が供給されている。また、制御部Hには、マイクロコンピュータや演算装置等で構成された制御基板や、上述の走行モータM1、案内ローラソレノイドM2、昇降駆動部M3、及びネガティブブレーキ機構N等への電力の供給状態を切換えるためのリレーを備えた電力制御基板等を備えている。
また、制御部Hと指令受信部Gとが接続されており、制御部Hは指令受信部Gが受信した上位の管理装置からの作動指令情報を取得可能に構成されるとともに、天井搬送車Vの動作結果等の情報を、指令受信部Gを介して上位の管理装置に送信するようになっている。
【0036】
本実施形態では、制御部Hに、走行モータM1に対する駆動電力の供給状態の制御を行う走行モータ制御部H1、案内ローラソレノイドM2に対する駆動電力の供給状態の制御を行う案内ローラソレノイド制御部H2、昇降駆動部M3に対する駆動電力の供給状態の制御を行う昇降制御部H3、ネガティブブレーキ機構Nを解除するための電力の供給状態の制御を行うネガティブブレーキ制御部HNが備えられている。
走行モータ制御部H1と走行モータM1との間は、制御線L1で接続されている。同様に、案内ローラソレノイド制御部H2と案内ローラソレノイドM2との間は制御線L2で接続され、昇降制御部H3と昇降駆動部M3との間は制御線L3で接続され、ネガティブブレーキ制御部HNとネガティブブレーキ機構Nとの間は制御線LNで接続されている。
【0037】
また、走行部11の走行方向で前方側に位置するコネクタ部CFのコネクタ端子Q1と昇降制御部H3との間が外部制御線L3aで接続され、同様にコネクタ部CFのコネクタ端子Q2とネガティブブレーキ制御部HNとの間が外部制御線LNaで接続され、コネクタ部CFのコネクタ端子Q3と案内ローラソレノイド制御部H2との間が外部制御線L2aで接続されている。
さらに、走行部11の走行方向で後方側に位置するコネクタ部CRのコネクタ端子Q1は、外部制御線L3bを介して制御線L3における昇降制御部H3と昇降駆動部M3との間に接続され、コネクタ部CRのコネクタ端子Q2は、外部制御線LNbを介して制御線LNにおけるネガティブブレーキ制御部HNとネガティブブレーキ機構Nとの間に接続され、コネクタ部CRのコネクタ端子Q3は、外部制御線L2bを介して制御線L2における案内ローラソレノイド制御部H2と案内ローラソレノイドM2との間に接続されている。
【0038】
以下、
図6〜
図8に基づいて、上記のような天井搬送車Vにおいて、制御部Hに故障が発生する等して、ネガティブブレーキ機構N、案内ローラソレノイドM2、又は昇降駆動部M3等の作動が不可能になった場合(以下、天井搬送車Vが故障した場合と略称する)の救済方法について説明する。
本実施形態において、天井搬送車Vが故障した場合には、故障していない他の天井搬送車Vによって故障した天井搬送車Vを押し操作することで、故障した天井搬送車Vを修理用エリアに退避させる。このとき、故障した天井搬送車Vと、故障していない天井搬送車Vとを、同一直線状を走行している状態において一定の間隔を維持して互いに連結する為に、
図6に示すように、棒状体の両端に環状部分Frを備えた連結体Fを用いる。なお、連結体Fとしては、上記の棒状体だけでなく、後述する係合凸部Kと係合可能な孔部が形成された板状体等であってもよい。
【0039】
ある天井搬送車V(
図7における天井搬送車V1)が故障した場合には、
図7に示すように、走行方向後方側から、故障していない天井搬送車V2を接近させる。そして、
図6に示す連結体Fの一方の環状部分Frを、天井搬送車V2の前方側の係合凸部K(
図7の天井搬送車V2における係合凸部KF)に係合させるとともに、連結体Fの他方の環状部分Frを、天井搬送車V1の後方側の係合凸部K(
図7の天井搬送車V1における係合凸部KR)に係合させる。
すなわち、天井搬送車V1及び天井搬送車V2を一定の間隔を維持して互いに連結する連結体Fが着脱自在に備えられている。
【0040】
また、連結体Fによって天井搬送車V1と天井搬送車V2とを連結するとともに、天井搬送車V2の前方側のコネクタ部Cであるコネクタ部CFと天井搬送車V1の後方側のコネクタ部Cであるコネクタ部CRとの間を、接続体Dにて接続する。接続体Dは、両端のプラグ部DPに上記コネクタ部Cのコネクタ端子Q1、Q2、Q3に対応するコネクタを備えており、天井搬送車V2のコネクタ部CFにおけるコネクタ端子Q1、Q2、Q3を、天井搬送車V1のコネクタ部CRにおけるコネクタ端子Q1、Q2、Q3に電気的に接続するようになっている。
なお、連結体Fによる天井搬送車V1と天井搬送車V2との連結と接続体Dによる天井搬送車V1と天井搬送車V2との接続とは、連結体Fによる連結の方を先に行うことが好ましいが、接続体Dによる接続を先に行ってもよい。
また、接続体Dの両端のプラグ部DPの間は、カールコードとなっており、天井搬送車V1及び天井搬送車V2が曲線部を走行する場合や分岐部を走行する場合等において、天井搬送車V1のコネクタ部CRと天井搬送車V2のコネクタ部CFとの間の距離が多少変動したとしても許容できるようになっている。
【0041】
本実施形態において、複数設けられる天井搬送車Vの夫々が本発明における走行体に相当し、複数設けられる天井搬送車Vのうち故障した天井搬送車Vである天井搬送車V1が第1走行体に相当し、複数設けられる天井搬送車Vのうち故障していない(正常な)天井搬送車Vである天井搬送車V2が第2走行体に相当する。
そして、天井搬送車V1における走行モータM1及びネガティブブレーキ機構Nが第1走行駆動部に相当し、天井搬送車V1における制御部Hが第1制御部に相当する。
さらに、天井搬送車V2における走行モータM1及びネガティブブレーキ機構Nが第2走行駆動部に相当し、天井搬送車V2における制御部Hが第2制御部に相当する。
【0042】
図8に、天井搬送車V1のコネクタ部CRと天井搬送車V2のコネクタ部CFとを接続体Dによって接続した場合の制御構成を示す。
天井搬送車V1が故障し、天井搬送車V1のコネクタ部CRと天井搬送車V2のコネクタ部CFとを接続体Dによって接続すると、天井搬送車V1の案内ローラソレノイドM2に接続されている制御線L2は外部制御線L2bと電気的に接続され、天井搬送車V1のネガティブブレーキ機構Nに接続されている制御線LNは外部制御線LNbと電気的に接続され、昇降駆動部M3に接続されている制御線L3は外部制御線L3bと電気的に接続される。
【0043】
この状態において、天井搬送車V2の制御部Hにおける案内ローラソレノイド制御部H2から案内ローラソレノイドM2に対して出力される制御信号(具体的には案内ローラソレノイドM2の切換用電力)は、制御線L2を介して天井搬送車V2の案内ローラソレノイドM2に対して送信されると同時に、天井搬送車V2の外部制御線L2a及び天井搬送車V1の外部制御線L2bを介して天井搬送車V1の案内ローラソレノイドM2に対しても送信される。
また、同様に、天井搬送車V2の制御部Hにおけるネガティブブレーキ制御部HNからネガティブブレーキ機構Nに対して出力される制御信号(具体的にはネガティブブレーキ機構Nの制動の解除用電力)は、制御線LNを介して天井搬送車V2のネガティブブレーキ機構Nに対して送信されると同時に、天井搬送車V2の外部制御線LNa及び天井搬送車V1の外部制御線LNbを介して天井搬送車V1のネガティブブレーキ機構Nに対しても送信される。
さらに、天井搬送車V2の制御部Hにおける昇降制御部H3から昇降駆動部M3に対して出力される制御信号(具体的には昇降駆動部M3の作動用電力)は、制御線L3を介して天井搬送車V2の昇降駆動部M3に対して送信されると同時に、天井搬送車V2の外部制御線L3a及び天井搬送車V1の外部制御線L3bを介して天井搬送車V1の昇降駆動部M3に対しても送信される。
【0044】
そして、天井搬送車V2と天井搬送車V1とを接続して天井搬送車V1を走行させる場合には、まず、天井搬送車V2のネガティブブレーキ制御部HNが、天井搬送車V2のネガティブブレーキ機構Nの制動を解除するための解除用電力を出力する。このとき、天井搬送車V2の外部制御線LNa及び天井搬送車V1の外部制御線LNbを介して天井搬送車V1のネガティブブレーキ機構Nにも解除用電力が供給されるので、天井搬送車V1のネガティブブレーキ機構Nの制動も解除される。
本実施形態において、上記解除用電力が走行制御信号としての解除信号に相当する。つまり、天井搬送車V1は、解除信号が生成されていない状態において、内蔵する付勢体の付勢力により走行モータM1を制動するネガティブブレーキ機構Nを備え、天井搬送車V2の制御部Hは、外部走行制御信号として、天井搬送車V1におけるネガティブブレーキ機構Nの制動を解除する解除信号を生成自在に構成されている。
【0045】
また、天井搬送車V2と天井搬送車V1とを接続した状態で、分岐部Jにおいて天井搬送車V1の走行する経路を変更しなければならない場合には、天井搬送車V2の案内ローラソレノイド制御部H2が案内ローラソレノイドM2を切換作動させるための切換用電力を出力する。このとき、天井搬送車V2の外部制御線L2a及び天井搬送車V1の外部制御線L2bを介して天井搬送車V1の案内ローラソレノイドM2にも切換用電力が供給されるので、天井搬送車V1の案内ローラソレノイドM2と天井搬送車V2の案内ローラソレノイドM2との双方が同じ操向状態となるように切換えられる。
本実施形態において、天井搬送車V2の案内ローラソレノイド制御部H2が天井搬送車V1の案内ローラソレノイドM2に対して出力する切換用電力が外部操向制御信号に相当する。つまり、天井搬送車V1に、走行経路Tに沿う自己の走行方向を変更操作する案内ローラソレノイドM2が設けられ、天井搬送車V1の制御部Hが、天井搬送車V1の案内ローラソレノイドM2の作動を制御するように構成され、天井搬送車V2の制御部Hは、外部走行制御信号として、天井搬送車V1における案内ローラソレノイドM2の作動を制御する切換用電力を生成自在に構成され、接続体Dは、切換用電力を送受信するように構成されている。
【0046】
さらに、昇降体13にて保持している容器Bが搬送用の高所に位置している状態で天井搬送車V1が故障した場合には、天井搬送車V2の昇降制御部H3が昇降駆動部M3を下降作動させるための昇降用電力を出力する。このとき、天井搬送車V2の外部制御線L3a及び天井搬送車V1の外部制御線L3bを介して天井搬送車V1の昇降駆動部M3にも昇降用電力が供給されるので、天井搬送車V1の昇降駆動部M3を下降させることができる。
【0047】
本実施形態において、天井搬送車V1が、搬送対象の物品Bを保持したまま走行可能な搬送用走行体に相当し、当該天井搬送車V1が、物品Bを保持して昇降可能な昇降体13と、当該昇降体13を昇降駆動する昇降駆動部M3と、昇降駆動部M3の作動を制御する昇降制御部H3と、を備えている。
また、天井搬送車V2の昇降制御部H3が天井搬送車V1の昇降駆動部M3に対して出力する昇降用電力が外部昇降用制御信号に相当する。つまり、天井搬送車V2の制御部Hは、天井搬送車V1における昇降駆動部M3の作動を制御する昇降用電力を生成自在に構成され、接続体Dは、昇降用電力を送受信するように構成されている。
【0048】
すなわち、天井搬送車V2における制御部Hが、第1走行駆動部に対する外部走行制御信号、操向操作部の作動を制御する外部操向制御信号、及び、昇降駆動部M3の作動を制御する外部昇降用制御信号を生成する外部信号生成部に相当する。
【0049】
すなわち、走行経路Tを走行する走行体として天井搬送車V1が設けられ、天井搬送車V1が、当該天井搬送車V1を走行駆動する第1走行駆動部と、当該第1走行駆動部に対する走行制御信号を生成して第1走行駆動部の駆動を制御する制御部Hと、を備え、天井搬送車V1とは別に、走行経路Tを走行する走行体として天井搬送車V2が設けられ、天井搬送車V2は、当該天井搬送車V2を走行駆動する第2走行駆動部と、第2走行駆動部に対する走行制御信号を生成して第2走行駆動部の駆動を制御する制御部Hと、を備えている。
【0050】
本実施形態では、天井搬送車V1のコネクタ部CRが本発明の第1接続部に相当し、天井搬送車V2のコネクタ部CFが本発明の第2接続部に相当する。
つまり、天井搬送車V1に、外部走行制御信号を受信して当該外部走行制御信号を第1走行駆動部に伝達可能な第1接続部が設けられ、天井搬送車V2に、当該天井搬送車V2の制御部Hが生成する外部走行制御信号を送信可能な第2接続部が設けられている。
また、天井搬送車V1のコネクタ部CRと天井搬送車V2のコネクタ部CFとの間に着脱自在に接続されて、外部走行制御信号を送受信する接続体Dが備えられている。
【0051】
また、天井搬送車Vは、天井搬送車V1としての構成及び機能と天井搬送車V2としての構成及び機能との双方を備え、天井搬送車Vが故障した場合には天井搬送車V1として機能し、天井搬送車V1を救済すべく天井搬送車V1に接続体Dで接続された天井搬送車Vが天井搬送車V2として機能することになる。したがって、複数の天井搬送車Vの夫々が、天井搬送車V1として第1接続部を備え、かつ、前記第2走行体として前記第2接続部及び前記外部信号生成部を備えている。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、走行体が、搬送用走行体を天井から吊り下げ支持された走行レールRを走行する天井搬送車Vである構成を例示したが、走行体としては、走行経路Tに沿って走行するものであれば、上記のような構成に限定されるものではない。例えば、床面に設置されたレール上を走行する搬送用走行体としたり、仮想的に設定された走行ルートに沿って走行する搬送用走行体としてもよい。また、上記実施形態では、走行体として物品を搬送する搬送用走行体を例示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば検査機器を搭載して走行経路に沿って検査対象の検査を行う検査車両等の走行体としてもよい。
なお、搬送用走行体をスタッカークレーンとした場合には、上記実施形態における外部昇降用制御信号を、スタッカークレーンの昇降台を昇降させるための信号とすることになる。
【0053】
(2)上記実施形態では、外部信号生成部としての天井搬送車V2の制御部Hが、外部走行制御信号としての解除用電力、外部操向制御信号としての切換用電力、及び外部昇降用制御信号としての昇降用電力の3種類の信号を、接続体を介して天井搬送車V1に送信可能とする構成を説明したが、天井搬送車V2の制御部Hが天井搬送車V1に送信可能な信号を上記の3種類のうちの何れか1つ又は2つとしてもよい。
また、天井搬送車V2の制御部Hが天井搬送車V1に送信可能な信号を4種類以上としてもよい。この場合、コネクタ部Cのコネクタ端子を信号の種類の数だけ備えることになる。
また、上記実施形態では、天井搬送車V1のネガティブブレーキ機構Nの制動を解除する解除用電力を外部走行制御信号とする例を示したが、このような構成に限定されるものではなく、天井搬送車V1の走行モータM1を駆動させる駆動用電力を外部走行制御信号として出力する構成としてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、外部走行制御信号を、天井搬送車V1のネガティブブレーキ機構Nの制動を解除する解除用電力とし、外部操向制御信号を、天井搬送車V1の案内ローラソレノイドM2を切換作動させる切換用電力とし、又は天井搬送車V1の昇降駆動部M3を昇降作動させる昇降用電力とする例を示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、天井搬送車V1のネガティブブレーキ機構Nや案内ローラソレノイドM2や昇降駆動部M3を作動させるコントローラと制御部HとをUSBケーブルやLANケーブルで相互に接続しておき、制御部Hから上記コントローラに送信される論理信号を外部走行制御信号としてもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、天井搬送車V2を走行方向後方に位置させ、天井搬送車V1を前方に位置させて、天井搬送車V2によって天井搬送車V1を押し操作させて走行させる構成を例示したが、このような構成に限定されるものではなく、天井搬送車V2を走行方向前方に位置させ、天井搬送車V1を後方に位置させて、天井搬送車V2によって天井搬送車V1を牽引させて走行させるようにしてもよい。この場合、上記実施形態において天井搬送車V1及び天井搬送車V2を一定の間隔を維持して互いに連結する棒状体とした連結体Fを、ロープやチェーン等の索状体として構成してもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、外部信号出力部を天井搬送車V2の制御部Hにて共用する例を示したが、天井搬送車V2において、外部信号出力部用に別途制御部を備える構成としてもよい。