【実施例1】
【0025】
図1は、この発明の電力変換装置の第1の実施例の概略構成示すものである。
【0026】
図1において、11は、電力変換装置の本体を構成する閉塞された箱体であり、通常、鋼板で形成される。箱体11内に、例えば合成樹脂製の絶縁性薄板で構成された仕切り壁15で仕切って2つの区画室16、17を形成する。
【0027】
区画室16は、対向する端面に開口を備え、冷却空気の強制貫流が可能な構成となっている。すなわち、その1つを箱体11内に外気を吸気する吸気口12とし、他方を箱体内から外気へ排気する排気口13とする。排気口13に対向して吸引ファンからなる冷却ファン14を取り付けることにより、吸気口12から外気が冷却空気として吸気される。この冷却空気は、区画室16の内部を強制貫流させて排気口13から排気される。これに対して、仕切り壁15を介して隣接する区画室17は、全周壁が閉じられ、冷却空気の強制貫流が不能な構成となっている。
【0028】
冷却空気を強制貫流させる構成とした区画室16には、電力変換装置の発熱量の大きい半導体整流素子や半導体スイッチ素子をモジュール化した半導体モジュール素子21の結合された放熱フィン付きの冷却体22や、コンデンサ23が収容される。半導体モジュール素子21の接続端子部21aは、仕切り壁に設けた貫通孔15aを貫通して隣接する区画室17内に露出される。同様に、コンデンサ23の接続端子部23aは、仕切り壁15に設けた貫通孔15bを貫通して区画室17に露出される。
【0029】
区画室17に露出した半導体モジュール素子21の接続端子21aおよびコンデンサ23の接続端子23aは、この区画室17内において、相互に接続導体26により接続される。
【0030】
区画室17には、その他に、半導体モジュール素子21のオンオフ制御等を行う制御回路24や、内外の電気的接続のために使用する端子台25等が収容される。
【0031】
このように構成した電力変換装置が運転中であるとき、冷却ファン14が駆動される。これにより、区画室16内には、矢印で示すように吸気口12から外気が冷却空気として吸気される。この冷却空気は、区画室16内を貫流して排気口13から外部へ排出される。このため、区画室16に収容されたコンデンサ23や半導体モジュール素子21の結合された冷却体22が、冷却空気により強制冷却され、温度上昇が抑えられる。
【0032】
このとき、区画室17は、冷却空気が強制貫流されない構成となっているため、外気が貫流されることはない。このため、長期間運転しても、区画室17内に収容された半導体モジュール素子およびコンデンサ23の接続端子部21a、23a、接続導体26、制御回路24や端子台25には、外気に含まれる微細粉塵の付着がほとんどなくなる。
【0033】
これにより、電力変換装置の主回路を構成する半導体モジュール素子21の接続端子部21a、コンデンサ23の端子部23aおよび接続導体26は、長期間安定して絶縁性能を保つことができる。
【実施例2】
【0034】
次に、
図2〜
図7に示すこの発明の電力変換装置の第2の実施例について説明する。
【0035】
図2および
図3は、この発明の電力変換装置の側面板を外した状態の側面図および斜視図を示し、
図4は側面断面図を示す。
【0036】
この第2の実施例は、本体を構成する箱体30の内部を、仕切り壁35と仕切り壁39とによって仕切って、3つの区画室36、37、38を形成している。ここでは、少なくとも、仕切り壁35は、可撓性を有する絶縁性の合成樹脂薄板で構成している。
【0037】
区画室36と38は、両端に吸気口または排気口となる開口32a,32b、33a,33bを有し、外部から冷却空気を強制貫流することが可能な構成となっている。区画室36と38の間に形成された区画室37は、少なくとも一端が閉塞され、外部から冷却空気を強制貫流することが不能な構成となっている。
【0038】
冷却空気の強制貫流が可能な構成とされた区画室36には、発熱量の大きい冷却を要する構成機器であるコンデンサ43や変圧器47が収容される。このコンデンサ43の接続端子43aは、絶縁性の仕切り壁35に設けた貫通孔を貫通して冷却空気の強制貫流が不能に構成された区画室37に露出する。
【0039】
区画室37には、冷却フィン付の冷却体に42に結合された半導体整流素子や半導体スイッチ素子をモジュール化した半導体モジュール素子41の接続端子が収容されている。この半導体モジュール素子41に結合された冷却体42は、仕切り壁39を貫通して冷却空気の強制貫流が可能に構成された区画室38内に収容されるようにする。
【0040】
半導体モジュール素子41とコンデンサ43はそれぞれの接続端子を主回路接続導体46によって区画室37内で電気的に接続する。
【0041】
箱体30の前面壁には交流電源に接続するための入力端子51および負荷に接続するための出力端子52が設けられる。入力端子51は保護用開閉器49を介して接続導体53により区画室37に引き込まれ、半導体モジュール素子41の電力変換回路の交流入力端となる接続端子41aに接続される。半導体モジュール素子41の電力変換回路の出力端となる接続端子41aは、接続導体54を介して出力端子52に接続される。
【0042】
区画室37には、さらに電力変換装置の出力を短絡してバイパスするためのバイパス用電磁開閉器48が収容されている。バイパス用電磁開閉器48は、接続導体56を介して電力変換回路の出力端となる半導体モジュール素子の接続端子41aに並列に接続される。
【0043】
このような主回路の電気的接続はすべて冷却空気の強制貫流が不能に構成された区画室37内で行われる。
【0044】
なお、
図2から
図4において、31aおよび31bは、箱体30を構成するベースフレームおよび支持フレームである。
【0045】
なお、区画室36と37を仕切る仕切り壁35は、絶縁性合成樹脂製薄板で構成することにより可撓性を持たせることができる。可撓性のある仕切り壁35は、固定用のねじを使用することなしに、簡単に箱体5に固定にすることができる。
【0046】
図5に、仕切り壁35と支持フレーム31bとの結合構造を示す。仕切り壁35の支持フレーム31bと結合する箇所にそれぞれ嵌合用の切欠き35cまたは嵌合用突起35dを設ける。そして支持フレーム31bの対応する箇所に嵌合用切欠き31cまたは嵌合用穴31dを設ける。仕切り壁35を箱体に取付ける際に、これを少し撓ませて嵌合用切欠き35cを支持フレーム31bの嵌合用切欠き31cに嵌め合せるとともに、嵌合用突起35dを嵌合用穴31dに嵌入する。これにより仕切り壁35が支持フレーム31bの嵌合用切欠き31cおよび嵌合用穴31dによって支持されるので、箱体30に安定に取付けることができる。
【0047】
さらに、仕切り壁35に設けるコンデンサ43の接続端子43aを貫通させるための貫通孔を設ける。この貫通穴は、
図6(a)示すように、個々の接続端子43aに対応して個別に設けることができる。あるいは、
図6(b)に示すように、1個のコンデンサの2個の接続端子43a、43aに共通の貫通孔35bに設けることができる。共通にした貫通孔35bには両端に切起こし35eを設けることにより、コンデンサ43の接続端子43aを貫通する際のコンデンサの位置決めが容易となる。また、切起こし35eの高さをコンデンサの接続端子43aの高さにすれば、接続導体26で切起こし35eを押さえることができるので、仕切り壁35をさらに安定に固定することができる。
【0048】
このように構成された電力変換装置1は、三相の各相毎に複数台を一組として、
図7に示すように高圧盤10に多段に重ねて収容される。例えば、電力変換装置1の電圧定格が1kVである場合、各相毎に5台の電力変換装置1の出力端子を互いに直列接続して使用すると、6kVの電圧を出力することが可能となる。
【0049】
高圧盤10には、前面側にフィルタ10bで覆われた吸気口10aを設け、背面側に3個の電力変換装置1に共通に通風路10cを設ける。そして、通風路10cの天井壁を開口して、ここに吸引型の冷却ファン14を設ける。
【0050】
冷却ファン14を駆動することにより、前面の吸気口10aからフィルタ10bを通して外気が高圧盤10なに吸気される。吸気された外気がフィルタ10bを通過する過程でこれに含まれる粉塵の大部分は除かれる。しかし完全に粉塵を除くことはできないので吸気された外気に微細な粉塵が僅かに残る。
【0051】
高圧盤10に吸気された微細粉塵を僅かに含む外気は冷却空気として電力変換装置1および通風路10cを、矢印で示すように貫流する。
【0052】
電力変換装置1の箱体30の上、下に設けられた冷却空気の強制貫流が可能に構成された区画室36、38は、高圧盤10の通風路10cと連通している。したがって、冷却空気は、各電力変換装置1内の区画室36、38を貫流し、それぞれの区画室に収容された構成機器でコンデンサ43、変圧器47および半導体モジュール素子41の冷却体42を強制冷却する。
【0053】
しかし、区画室36、38に収容された構成機器には絶縁処理が施されているので、これらの表面に微細粉塵が付着しても絶縁障害は発生しない。
【0054】
一方、各構成機器の接続端子およびこれらの間を接続する接続導体46、53,54、56の収容された中間の区画室37は後端側が閉塞され、冷却空気の貫流が不能に構成されている。このため、この区画室37に収容された接続導体等には、外気中に含まれる微細粉塵が付着することはほとんどなくなる。この結果、電力変換装置1の主回路における粉塵堆積による絶縁障害の発生が抑制される。すなわち区画室37は、冷却空気の貫流を不能に構成することで、必要以上に大きな空間とすることなく電気的絶縁性能を維持することができる。
【0055】
この結果、この発明による電力変換装置は、外気を取り入れた冷却空気を貫流して強制冷却を行っても、絶縁障害なしに長期間安定して運転することができる。
【0056】
また、本体を構成する箱体内を仕切って区画室を構成する仕切り壁に、絶縁性合成樹脂薄板等の絶縁材製薄板を用いれば、コンデンサの先端の接続端子だけが貫通されるようにコンデンサの先端を仕切り壁に接近して配置することができる。これにより、コンデンサのほぼ全体を冷却空気の貫流が可能に構成された区画室36に収容することができる。そうすると、この区画室に収めてコンデンサ等の構成機器の全体を均一に冷却することが可能となり冷却効果を高めることができる。