特許第6319074号(P6319074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6319074
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20180423BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H05K7/20 K
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-253035(P2014-253035)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-116327(P2016-116327A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏弘
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−130779(JP,A)
【文献】 特開2011−234586(JP,A)
【文献】 実開昭54−148472(JP,U)
【文献】 特開平8−65825(JP,A)
【文献】 特開2012−228019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−7/98
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞された箱体内に構成機器を収容してなる電力変換装置において、前記箱体の内部に、これを仕切り壁によって仕切って複数の区画室を形成し、この区画室の少なくとも1つは、外部から冷却空気の強制貫流の可能な構成とし、これと前記仕切り壁を介して隣接する区画室は、外部から冷却空気の強制貫流の不能な構成とし、前記冷却空気の強制貫流の可能な区画室内に、前記電力変換装置の冷却を必要とする構成機器を収容し、この区画室に収容された構成機器の電気的接続端子部を、前記仕切り壁を貫通して前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室内に露出させ、この冷却空気の強制貫流の不能な区画室内において前記構成機器の露出された接続端子部の相互間、および他の構成機器の接続端子部との間を接続導体により接続することにより前記構成機器相互の電気的接続を行うものとし、さらに前記仕切り壁を絶縁性薄板により構成し、また前記構成機器にはコンデンサが含まれ、前記仕切り壁には、前記コンデンサの電気的接続端子部を前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室内に露出させるための貫通部が設けられ、この貫通部には前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室側に切起こし部が設けられていることを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項2】
前記仕切り壁を、可撓性を有する絶縁性合成樹脂薄板により構成することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記可撓性を有する絶縁性合成樹脂薄板で構成された仕切り壁は、この仕切り壁および前記箱体のフレームの対応する箇所に設けた嵌合用切欠きを相互に嵌め合せて箱体のフレームに固定することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記箱体の上下に前記冷却空気の強制貫流の可能な区画室を形成し、その中間に前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室を形成し、前記各冷却空気の強制貫流の可能な区画室に収容された構成機器の接続端子部をそれぞれ仕切り壁を貫通して隣接する前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室内に露出させ、この冷却空気の強制貫流の不能な区画室内におい
て、前記接続端子部間を接続導体により接続することにより前記冷却空気の強制貫流の可能な区画室内に収容した構成機器の電気的接続を行うことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インバータ装置等の電力変換装置の構成機器を収容する箱体を備え、この箱体内に通風して内部の構成機器の冷却を行うようにした電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ等の電力変換装置は、一般に、整流回路を構成する半導体整流素子、インバータ回路を構成する半導体スイッチ素子および整流回路の出力部とインバータ回路の入力部との間に設けられる平滑コンデンサ等の主回路構成機器、およびインバータ回路の制御回路等を箱体に収容している。
【0003】
そして、特に、発熱量の大きい半導体素子やコンデンサ等の主回路構成機器は、温度上昇を抑制するために冷却する必要がある。このため、箱体の一方端から吸い込んだ冷却空気を箱体の他方端から排気するように、箱体内部に冷却空気を強制貫流して内部に収まった構成機器を冷却することが一般的に行われる。
【0004】
このように冷却空気により冷却を行うようにした電力変換装置は、従来から、例えば特許文献1に示されるようによく知られている。図8にこのような電力変換装置の従来例を示す。
【0005】
図8において、50は、電力変換装置の本体を構成する直方体状の箱体である。この箱体50の一方端に吸気口52が設けられ、対向する他端に排気口53が設けられている。箱体50の排気口53に対向して吸引ファンで構成された冷却ファン54が設けられる。また、この箱体50の内部には、電力変換装置を構成する半導体整流素子や、半導体スイッチ素子をモジュール化した半導体モジュール素子61、この半導体モジュール素子61に結合された放熱フィン付の冷却体62、直流電圧を平滑するためのコンデンサ63、半導体モジュール素子61をオンオフ制御する制御回路64、主回路導体や制御線の引き出しや接続を行うための端子台65等の構成機器が収容される。半導体モジュール素子61とコンデンサ63は、主回路接続導体66を介して接続される。ここには図示されないが、各構成機器は、適宜の支持具を介して箱体50または内部の支持フレームに固定される。
【0006】
このような電力変換装置においては、冷却ファン54を駆動することにより、吸気口52から外気が冷却空気として箱体50内に吸い込まれる。この冷却空気は、箱体内を貫流して排気口53から排気される。箱体50は1つの風洞として作用するので箱体に吸い込まれた冷却空気は箱体の内壁に案内され、排気口53に向かって貫流する。この貫流過程で冷却空気が内部に収容された各構成機器と接触して各構成機器を冷却する。これにより温度の上昇した冷却空気は冷却ファン54によって排気口53から外部へ排気される。
【0007】
外気に含まれる塵埃等はフィルタにより大部分が除かれて箱体内に吸気される。しかし、箱体内に吸気された冷却空気には、僅かではあるがフィルタを通過した微細な塵埃が含まれる。このため、電力変換装置を長期間運転すると、外気から吸い込んだ冷却空気が箱体内を貫流する過程で、これに含まれる微細な塵埃が各構成機器の表面に付着して堆積する。この塵埃が電気的に露出した構成機器の端子や、主回路接続導体66に付着すると絶縁が阻害されて短絡事故の原因となり、運転に支障が生じる。
【0008】
このため、箱体50の吸気口52には、防塵フィルタを取付けて、塵埃の吸込みを抑制することが行われる。しかし、塵埃の吸込みを完全に抑制することは困難である。したがって、各構成機器の絶縁距離を大きくとることにより対処するが、これでは、特に高い電圧で使用する電力変換装置が大形になるという問題がある。
【0009】
また、この種の電力変換装置においては、図9に示すように、箱体50の内部を金属板で構成された隔壁55で2つの区画室に仕切って構成機器を分けて収容し、各区画室内で冷却することが行われている。すなわち、一方の区画室51a内に発熱量の大きい半導体モジュール素子61に結合された冷却体62とコンデンサ63を収容し、他方の区画室51bに残りの構成機器や接続導体66等を収容する。そして、各区画室51a,51bには、それぞれ連通して、吸気口52a、52bおよび排気口53a、53bを設ける。排気口53a,53bには、それぞれ対向して冷却ファン54a、54bを設けている。
【0010】
各区画室の冷却ファン54a、54bの運転をすると、吸気口52a、52bから各区画室51a、51bに吸い込まれた外気が、冷却空気として各区画室を貫流して、排気口53a、53bから外部へ排出される。この過程で、冷却空気が各区画室に収容された構成機器と接触して各構成機器を冷却する。
【0011】
このように、箱体50を隔壁55により区画して形成された各区画室は小さく仕切られているので、それぞれの区画室に収容された構成機器に集中して冷却空気が流れるため、冷却効果を高めることができる。
【0012】
このような従来の電力変換装置は、箱体50の内部を仕切る隔壁55が鋼板等の金属板で構成されている。一方、接続端子の露出しているコンデンサ63は、接続端子と隔壁55との絶縁距離を確保する必要がある。そのため、コンデンサ63は、胴部の一部が隔壁55の上部へ突出され、コンデンサの胴部の一部が区画室51aの外に配置される。しかし、このようにすると、コンデンサの全体を均一に冷却することが困難となり、耐熱容量の大きいコンデンサを使用する必要が生じる。
【0013】
また、区画室51bも、冷却ファン54bにより吸い込んだ外気を内部に貫流させて冷却が行われる。そのため、長期間の運転中に、外気に含まれる微細な塵埃が、ここに収容された構成機器の表面に付着し、堆積する。半導体モジュール素子61とコンデンサ63を接続する主回路導体66や、コンデンサ63の接続端子は電気的に露出されているため、これらに微細な塵埃が堆積して絶縁障害を発生する恐れが高くなる。このため、絶縁処理が施されていない主回路導体や端子を含む区画室は、構成機器の十分な絶縁距離を確保する必要がある。その結果、電力変換装置が大形になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005-348533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明は、前記の従来装置における問題を解決して、構成機器、特にコンデンサの全体を均一に冷却することができ、露出された端子部および主回路接続導体部に塵埃の付着、堆積の少ない電力変換装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題を解決するため、この発明は、閉塞された箱体内に構成機器を収容してなる電力変換装置において、前記箱体の内部に、これを仕切り壁によって仕切って複数の区画室を形成し、この区画室の少なくとも1つは、外部から冷却空気の強制貫流の可能な構成とし、これと前記仕切り壁を介して隣接する区画室は、外部から冷却空気の強制貫流の不能な構成とし、前記冷却空気の強制貫流の可能な区画室内に、前記電力変換装置の冷却を必要とする構成機器を収容し、この区画室に収容された構成機器の電気的接続端子部を、前記仕切り壁を貫通して前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室内に露出させ、この冷却空気の強制貫流の不能な区画室内において前記構成機器の露出された接続端子部の相互間、および他の構成機器の接続端子部との間を接続導体により接続することにより前記構成機器相互の電気的接続を行うことを特徴とする。
【0017】
また、この発明においては、前記仕切り壁は、絶縁性薄板により構成するのが良く、絶縁性薄板としては、可撓性を有する合成樹脂薄板が適している。
【0018】
前記可撓性を有する合成樹脂薄板で構成された仕切り壁は、この仕切り壁および前記箱体のフレームの対応する箇所に設けた嵌合用切欠きを相互に嵌め合せて箱体のフレームに固定することができる。
【0019】
また、前記構成機器にはコンデンサが含まれ、前記仕切り壁には、このコンデンサの電気的接続端子部を前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室内に露出させるための貫通部が設けられる。そして、この貫通部には前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室側に切起こし部を設けることができる。
【0020】
さらに、前記箱体の上下に前記冷却空気の強制貫流の可能な区画室を形成し、その中間に前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室を形成し、前記各冷却空気の強制貫流の可能な区画室に収容された構成機器の接続端子部を、それぞれ仕切り壁を貫通して隣接する前記冷却空気の強制貫流の不能な区画室内に露出させ、この冷却空気の強制貫流の不能な区画室内において、前記接続端子部間を接続導体により接続することにより前記冷却空気の強制貫流の可能な区画室内に収容した構成機器の電気的接続を行う構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、箱体内に仕切り壁により仕切って形成された冷却空気の強制貫流の可能な区画室に電力変換装置の冷却を要する構成機器を収容し、この構成機器の電気的接続端子を、仕切り壁を貫通して、この仕切り壁を介して隣接する冷却空気の貫流されない構成の区画室内に露出させ、この冷却空気の強制貫流の不能な区画室において前記構成機器の露出された接続端子部相互間、および他の構成機器の接続端子部との間を接続導体により電気的に接続する。このように構成することで、露出され構成機器の接続端子部および接続導体が冷却空気の強制貫流の不能な区画室に収められることにより、長期の運転を経ても微細粉塵の付着堆積がほとんど生じない。したがって、箱体内で必要以上に絶縁距離を確保することなく絶縁性能を長期間安定に保つことができる。これは、装置の小型化に貢献する。
【0022】
また、仕切り壁を絶縁材で構成することにより、これを貫通する構成機器の接端子部との絶縁距離をほとんど考慮する必要がなくなる。そして、接続端子部だけを冷却空気の強制貫流の不能な区画室に設ければよい。さらに、冷却を必要とする構成機器の本体全体を冷却空気の強制貫流の可能な区画室内に収めることができるので、この構成機器の冷却効果を高めることができ、構成機器の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の電力変換装置の第1の実施例の概略構成を示す側面断面図。
図2】この発明の電力変換装置の第2の実施例の側面板を外した状態を示す側面図。
図3】この発明の電力変換装置の第2の実施例の側面板を外した状態の外観を示す斜視図。
図4】この発明の電力変換装置の第2の実施例の構成を示す側面断面図。
図5】この発明の電力変換装置の第2の実施例における仕切り壁と箱体フレームとの結合構造を拡大して示す部分斜視図。
図6】この発明の第2の実施例における仕切り壁の端子貫通部を拡大して示す部分斜視図。
図7】この発明の第2の実施例の応用例を示す側面断面図。
図8】電力変換装置の従来例を示す側面断面図。
図9】電力変換装置の他の従来例を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、この発明の電力変換装置の第1の実施例の概略構成示すものである。
【0026】
図1において、11は、電力変換装置の本体を構成する閉塞された箱体であり、通常、鋼板で形成される。箱体11内に、例えば合成樹脂製の絶縁性薄板で構成された仕切り壁15で仕切って2つの区画室16、17を形成する。
【0027】
区画室16は、対向する端面に開口を備え、冷却空気の強制貫流が可能な構成となっている。すなわち、その1つを箱体11内に外気を吸気する吸気口12とし、他方を箱体内から外気へ排気する排気口13とする。排気口13に対向して吸引ファンからなる冷却ファン14を取り付けることにより、吸気口12から外気が冷却空気として吸気される。この冷却空気は、区画室16の内部を強制貫流させて排気口13から排気される。これに対して、仕切り壁15を介して隣接する区画室17は、全周壁が閉じられ、冷却空気の強制貫流が不能な構成となっている。
【0028】
冷却空気を強制貫流させる構成とした区画室16には、電力変換装置の発熱量の大きい半導体整流素子や半導体スイッチ素子をモジュール化した半導体モジュール素子21の結合された放熱フィン付きの冷却体22や、コンデンサ23が収容される。半導体モジュール素子21の接続端子部21aは、仕切り壁に設けた貫通孔15aを貫通して隣接する区画室17内に露出される。同様に、コンデンサ23の接続端子部23aは、仕切り壁15に設けた貫通孔15bを貫通して区画室17に露出される。
【0029】
区画室17に露出した半導体モジュール素子21の接続端子21aおよびコンデンサ23の接続端子23aは、この区画室17内において、相互に接続導体26により接続される。
【0030】
区画室17には、その他に、半導体モジュール素子21のオンオフ制御等を行う制御回路24や、内外の電気的接続のために使用する端子台25等が収容される。
【0031】
このように構成した電力変換装置が運転中であるとき、冷却ファン14が駆動される。これにより、区画室16内には、矢印で示すように吸気口12から外気が冷却空気として吸気される。この冷却空気は、区画室16内を貫流して排気口13から外部へ排出される。このため、区画室16に収容されたコンデンサ23や半導体モジュール素子21の結合された冷却体22が、冷却空気により強制冷却され、温度上昇が抑えられる。
【0032】
このとき、区画室17は、冷却空気が強制貫流されない構成となっているため、外気が貫流されることはない。このため、長期間運転しても、区画室17内に収容された半導体モジュール素子およびコンデンサ23の接続端子部21a、23a、接続導体26、制御回路24や端子台25には、外気に含まれる微細粉塵の付着がほとんどなくなる。
【0033】
これにより、電力変換装置の主回路を構成する半導体モジュール素子21の接続端子部21a、コンデンサ23の端子部23aおよび接続導体26は、長期間安定して絶縁性能を保つことができる。
【実施例2】
【0034】
次に、図2図7に示すこの発明の電力変換装置の第2の実施例について説明する。
【0035】
図2および図3は、この発明の電力変換装置の側面板を外した状態の側面図および斜視図を示し、図4は側面断面図を示す。
【0036】
この第2の実施例は、本体を構成する箱体30の内部を、仕切り壁35と仕切り壁39とによって仕切って、3つの区画室36、37、38を形成している。ここでは、少なくとも、仕切り壁35は、可撓性を有する絶縁性の合成樹脂薄板で構成している。
【0037】
区画室36と38は、両端に吸気口または排気口となる開口32a,32b、33a,33bを有し、外部から冷却空気を強制貫流することが可能な構成となっている。区画室36と38の間に形成された区画室37は、少なくとも一端が閉塞され、外部から冷却空気を強制貫流することが不能な構成となっている。
【0038】
冷却空気の強制貫流が可能な構成とされた区画室36には、発熱量の大きい冷却を要する構成機器であるコンデンサ43や変圧器47が収容される。このコンデンサ43の接続端子43aは、絶縁性の仕切り壁35に設けた貫通孔を貫通して冷却空気の強制貫流が不能に構成された区画室37に露出する。
【0039】
区画室37には、冷却フィン付の冷却体に42に結合された半導体整流素子や半導体スイッチ素子をモジュール化した半導体モジュール素子41の接続端子が収容されている。この半導体モジュール素子41に結合された冷却体42は、仕切り壁39を貫通して冷却空気の強制貫流が可能に構成された区画室38内に収容されるようにする。
【0040】
半導体モジュール素子41とコンデンサ43はそれぞれの接続端子を主回路接続導体46によって区画室37内で電気的に接続する。
【0041】
箱体30の前面壁には交流電源に接続するための入力端子51および負荷に接続するための出力端子52が設けられる。入力端子51は保護用開閉器49を介して接続導体53により区画室37に引き込まれ、半導体モジュール素子41の電力変換回路の交流入力端となる接続端子41aに接続される。半導体モジュール素子41の電力変換回路の出力端となる接続端子41aは、接続導体54を介して出力端子52に接続される。
【0042】
区画室37には、さらに電力変換装置の出力を短絡してバイパスするためのバイパス用電磁開閉器48が収容されている。バイパス用電磁開閉器48は、接続導体56を介して電力変換回路の出力端となる半導体モジュール素子の接続端子41aに並列に接続される。
【0043】
このような主回路の電気的接続はすべて冷却空気の強制貫流が不能に構成された区画室37内で行われる。
【0044】
なお、図2から図4において、31aおよび31bは、箱体30を構成するベースフレームおよび支持フレームである。
【0045】
なお、区画室36と37を仕切る仕切り壁35は、絶縁性合成樹脂製薄板で構成することにより可撓性を持たせることができる。可撓性のある仕切り壁35は、固定用のねじを使用することなしに、簡単に箱体5に固定にすることができる。
【0046】
図5に、仕切り壁35と支持フレーム31bとの結合構造を示す。仕切り壁35の支持フレーム31bと結合する箇所にそれぞれ嵌合用の切欠き35cまたは嵌合用突起35dを設ける。そして支持フレーム31bの対応する箇所に嵌合用切欠き31cまたは嵌合用穴31dを設ける。仕切り壁35を箱体に取付ける際に、これを少し撓ませて嵌合用切欠き35cを支持フレーム31bの嵌合用切欠き31cに嵌め合せるとともに、嵌合用突起35dを嵌合用穴31dに嵌入する。これにより仕切り壁35が支持フレーム31bの嵌合用切欠き31cおよび嵌合用穴31dによって支持されるので、箱体30に安定に取付けることができる。
【0047】
さらに、仕切り壁35に設けるコンデンサ43の接続端子43aを貫通させるための貫通孔を設ける。この貫通穴は、図6(a)示すように、個々の接続端子43aに対応して個別に設けることができる。あるいは、図6(b)に示すように、1個のコンデンサの2個の接続端子43a、43aに共通の貫通孔35bに設けることができる。共通にした貫通孔35bには両端に切起こし35eを設けることにより、コンデンサ43の接続端子43aを貫通する際のコンデンサの位置決めが容易となる。また、切起こし35eの高さをコンデンサの接続端子43aの高さにすれば、接続導体26で切起こし35eを押さえることができるので、仕切り壁35をさらに安定に固定することができる。
【0048】
このように構成された電力変換装置1は、三相の各相毎に複数台を一組として、図7に示すように高圧盤10に多段に重ねて収容される。例えば、電力変換装置1の電圧定格が1kVである場合、各相毎に5台の電力変換装置1の出力端子を互いに直列接続して使用すると、6kVの電圧を出力することが可能となる。
【0049】
高圧盤10には、前面側にフィルタ10bで覆われた吸気口10aを設け、背面側に3個の電力変換装置1に共通に通風路10cを設ける。そして、通風路10cの天井壁を開口して、ここに吸引型の冷却ファン14を設ける。
【0050】
冷却ファン14を駆動することにより、前面の吸気口10aからフィルタ10bを通して外気が高圧盤10なに吸気される。吸気された外気がフィルタ10bを通過する過程でこれに含まれる粉塵の大部分は除かれる。しかし完全に粉塵を除くことはできないので吸気された外気に微細な粉塵が僅かに残る。
【0051】
高圧盤10に吸気された微細粉塵を僅かに含む外気は冷却空気として電力変換装置1および通風路10cを、矢印で示すように貫流する。
【0052】
電力変換装置1の箱体30の上、下に設けられた冷却空気の強制貫流が可能に構成された区画室36、38は、高圧盤10の通風路10cと連通している。したがって、冷却空気は、各電力変換装置1内の区画室36、38を貫流し、それぞれの区画室に収容された構成機器でコンデンサ43、変圧器47および半導体モジュール素子41の冷却体42を強制冷却する。
【0053】
しかし、区画室36、38に収容された構成機器には絶縁処理が施されているので、これらの表面に微細粉塵が付着しても絶縁障害は発生しない。
【0054】
一方、各構成機器の接続端子およびこれらの間を接続する接続導体46、53,54、56の収容された中間の区画室37は後端側が閉塞され、冷却空気の貫流が不能に構成されている。このため、この区画室37に収容された接続導体等には、外気中に含まれる微細粉塵が付着することはほとんどなくなる。この結果、電力変換装置1の主回路における粉塵堆積による絶縁障害の発生が抑制される。すなわち区画室37は、冷却空気の貫流を不能に構成することで、必要以上に大きな空間とすることなく電気的絶縁性能を維持することができる。
【0055】
この結果、この発明による電力変換装置は、外気を取り入れた冷却空気を貫流して強制冷却を行っても、絶縁障害なしに長期間安定して運転することができる。
【0056】
また、本体を構成する箱体内を仕切って区画室を構成する仕切り壁に、絶縁性合成樹脂薄板等の絶縁材製薄板を用いれば、コンデンサの先端の接続端子だけが貫通されるようにコンデンサの先端を仕切り壁に接近して配置することができる。これにより、コンデンサのほぼ全体を冷却空気の貫流が可能に構成された区画室36に収容することができる。そうすると、この区画室に収めてコンデンサ等の構成機器の全体を均一に冷却することが可能となり冷却効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0057】
11:箱体
12:吸気口
13:排気口
14:冷却ファン
15:絶縁性仕切り壁
16:冷却空気の強制貫流が可能な区画室
17:冷却空気の強制貫流が不能な区画室
21:半導体モジュール素子
21a:接続端子
22:半導体モジュール素子の冷却体
23:コンデンサ
23a:接続端子
24:制御回路
25:端子台
26:接続導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9