特許第6319085号(P6319085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6319085
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20180423BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20180423BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20180423BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20180423BHJP
   B32B 25/02 20060101ALI20180423BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B1/24 A
   H01B1/00 H
   H01B1/00 L
   H01B1/00 M
   H01B5/14 B
   B32B25/02
   B32B27/18 J
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-538026(P2014-538026)
(86)(22)【出願日】2014年7月3日
(86)【国際出願番号】JP2014067730
(87)【国際公開番号】WO2015005204
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-142356(P2013-142356)
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-143433(P2013-143433)
(32)【優先日】2013年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-176200(P2013-176200)
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-234511(P2013-234511)
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-234512(P2013-234512)
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-237549(P2013-237549)
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】今橋 聰
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−198425(JP,A)
【文献】 特開2010−254744(JP,A)
【文献】 特開2006−083249(JP,A)
【文献】 特開2007−173226(JP,A)
【文献】 特表2010−525526(JP,A)
【文献】 特開2010−163568(JP,A)
【文献】 特開2005−097499(JP,A)
【文献】 特開2012−166452(JP,A)
【文献】 特開2010−192296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00−1/24
5/00−5/16
B32B 25/02,27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびメルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を表面に有し、かつアスペクト比が10〜10000である導電材料(B2)であること、及び導電性ペーストの固形分中の樹脂(A)、金属粉(B1)、及び導電材料(B2)の各配合量がそれぞれ50〜80体積%、19〜49体積%、及び1〜10体積%であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびスルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理され、かつアスペクト比が10〜10000である導電材料(B2)であること、及び導電性ペーストの固形分中の樹脂(A)、金属粉(B1)、及び導電材料(B2)の各配合量がそれぞれ50〜80体積%、19〜49体積%、及び1〜10体積%であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項3】
樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびアスペクト比が10〜5000である金属ナノワイヤ(B2)であること、及び導電性ペーストの固形分中の樹脂(A)、金属粉(B1)、及び金属ナノワイヤ(B2)の各配合量がそれぞれ50〜80体積%、19〜49体積%、及び1〜10体積%であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項4】
硫黄原子を含有するゴム(A1)が、メルカプト基、スルフィド結合またはジスルフィド結合を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴムまたはシリコーンゴムから選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
ニトリル基を含有するゴム(A2)がアクリロニトリルブタジエン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
金属粉(B1)が、フレーク状金属粉、球状金属粉または凝集状金属粉であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
導電材料(B2)が、メルカプト基、アミノ基またはニトリル基を含有する芳香族化合物で表面処理されたカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
導電材料(B2)が、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されたカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項2に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
導電性フィラーとして平均粒径2〜100nmの金属ナノ粒子(B3)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項10】
金属粉(B1)および金属ナノ粒子(B3)が、主成分として銀および/または銅を含むことを特徴とする請求項9に記載の導電性ペースト。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて得られることを特徴とする導電性膜または導電性パターン。
【請求項12】
布基材上に請求項11に記載の導電性膜または導電性パターンを形成してなることを特徴とする導電性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮可能な電極や配線に好適な導電性膜を作製するための導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能エレクトロニクスのほとんどは、基本的に剛直で平面の形態で、シリコンやガリウム砒素などの単結晶無機材料を使用している。一方、フレキシブルな基板を用いた場合、配線の耐屈曲性が要求される。さらに、アクチュエーター電極や皮膚センサーなどの用途では、高い伸縮性を示す導電材料が望まれる。例えば、伸縮性の導電材料の膜を用いることによって、柔軟で曲線状である人体に密着して適合できるデバイスを開発することが可能となる。これらのデバイスの用途は、電気生理学的信号の測定から、先進治療のデリバリや、人と機械のインターフェースにまで及ぶ。伸縮性の導電材料の開発における解決方法の一つは、有機導電材料の使用であるが、これまでの材料はフレキシブルであるが、伸縮可能とは言えず、曲線状の表面を覆うことができない。そのために、性能や、複雑な集積回路への集積化に対する信頼性に欠ける。他の材料、例えば金属ナノワイヤやカーボンナノチューブなどの膜はある程度有望であるが、信頼性に欠け、かつ高価であるために開発は難しい。
【0003】
伸縮可能なフレキシブル配線を開発するアプローチとして、主として2つの方法が報告されている。
【0004】
1つは、波状構造を構築して、脆い材料でも伸縮性を持たせる方法である(非特許文献1参照)。この方法では、蒸着やメッキ、フォトレジスト処理などを行ってシリコーンゴム上に金属薄膜を作製する。金属薄膜は数%の伸縮しか示さないが、形状をジグザグ状または連続馬蹄状、波状の金属薄膜、または予め伸長したシリコーンゴム上に金属薄膜を形成することにより得られる皺状の金属薄膜などが伸縮性を示す。しかし、いずれも数10%伸長させると導電率が2桁以上低下する。また、シリコーンゴムは表面エネルギーが低いために、配線と基板との密着性が弱いので、伸長時に剥離し易いという欠点がある。従って、この方法では、安定した高い導電率と高い伸長性を両立するのが困難である。しかも、製造コストが高いという問題もある。
【0005】
もう一つは、導電材料とエラストマーの複合材料である。この材料の有利な点は、優れた印刷性と伸縮性である。電極や配線に使われている市販の銀ペーストは、高弾性率のバインダー樹脂に銀粉末が高充填配合されており、柔軟性に乏しく高弾性率である。伸長すると、クラックが発生し、著しく導電率が低下してしまう。そこで柔軟性を付与するために、バインダーとしてのゴムやエラストマーの検討、導電材料の充填度を下げるために、導電材料としてのアスペクト比が大きくて導電率の高い銀フレーク、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤなどの検討がなされている。銀粒子とシリコ−ンゴムの組合せ(特許文献1参照)、銀粒子とポリウレタンの組合せ(特許文献2参照)、カーボンナノチューブとイオン液体とフッ化ビニリデンの組合せ(特許文献3、4参照)などが報告されている。しかし、これらの組合せでも高導電率と高伸縮性の両立は難しいのが現状である。一方、ミクロンサイズの銀粉と、自己組織化した銀ナノ粒子で表面修飾したカーボンナノチューブおよびポリフッ化ビニリデンの組合せにより、印刷可能で高導電性でかつ伸縮可能な複合材料が報告されている(非特許文献2参照)。しかし、カーボンナノチューブの銀ナノ粒子による表面修飾は、製造が煩雑で、コストアップの要因となり好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−173226号公報
【特許文献2】特開2012−54192号公報
【特許文献3】WO2009/102077号公報
【特許文献4】特開2011−216562号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Jong−Hyun Ahn and Jung Ho Je,“Stretchable electronics:materials,architectures and integrations“J.Phys.D:Appl.Phys.45(2012)103001
【非特許文献2】Kyoung−Yong Chun,Youngseok Oh,Jonghyun Rho,Jong−Hyun Ahn,Young−Jin Kim,Hyoung Ryeol Choi and Seunghyun Baik,“Highly conductive,printable and stretchable composite films of carbon nanotubes and silver”Nature Nanotechnology,5,853(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものであり、その目的は、塗布または印刷可能であり、さらに伸縮可能で、しかも高導電率の導電性膜を実現することができる優れた導電性ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、以下の手段により上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(12)の構成からなる。
(1)樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびメルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を表面に有し、かつアスペクト比が10〜10000である導電材料(B2)であること、及び導電性ペーストの固形分中の樹脂(A)、金属粉(B1)、及び導電材料(B2)の各配合量がそれぞれ50〜80体積%、19〜49体積%、及び1〜10体積%であることを特徴とする導電性ペースト。
(2)樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびスルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理され、かつアスペクト比が10〜10000である導電材料(B2)であること、及び導電性ペーストの固形分中の樹脂(A)、金属粉(B1)、及び導電材料(B2)の各配合量がそれぞれ50〜80体積%、19〜49体積%、及び1〜10体積%であることを特徴とする導電性ペースト。
(3)樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびアスペクト比が10〜5000である金属ナノワイヤ(B2)であること、及び導電性ペーストの固形分中の樹脂(A)、金属粉(B1)、及び金属ナノワイヤ(B2)の各配合量がそれぞれ50〜80体積%、19〜49体積%、及び1〜10体積%であることを特徴とする導電性ペースト。
(4)硫黄原子を含有するゴム(A1)が、メルカプト基、スルフィド結合またはジスルフィド結合を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴムまたはシリコーンゴムから選ばれることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(5)ニトリル基を含有するゴム(A2)がアクリロニトリルブタジエン共重合体ゴムであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(6)金属粉(B1)が、フレーク状金属粉、球状金属粉または凝集状金属粉であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(7)導電材料(B2)が、メルカプト基、アミノ基またはニトリル基を含有する芳香族化合物で表面処理されたカーボンナノチューブであることを特徴とする(1)に記載の導電性ペースト。
(8)導電材料(B2)が、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されたカーボンナノチューブであることを特徴とする(2)に記載の導電性ペースト。
(9)導電性フィラーとして平均粒径2〜100nmの金属ナノ粒子(B3)をさらに含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(10)金属粉(B1)および金属ナノ粒子(B3)が、主成分として銀および/または銅を含むことを特徴とする(9)に記載の導電性ペースト。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて得られることを特徴とする導電性膜または導電性パターン。
(12)布基材上に(11)に記載の導電性膜または導電性パターンを形成してなることを特徴とする導電性積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性ペーストによれば、金属粉(B1)と導電材料(金属ナノワイヤ)(B2)が伸縮性の樹脂(A)中に均一に分散し、かつ金属粉(B1)と導電材料(金属ナノワイヤ)(B2)が良好な親和性を有する。従って、本発明の導電性ペーストによって形成された導電性膜は、有効な導電性のネットワークを形成するために高導電性であり、また導電材料(金属ナノワイヤ)(B2)の高いアスペクト比に起因して、伸長時にも導電性ネットワークが破断しないために、伸長時でもその高導電性を保持できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の導電性ペーストについて説明する。
本発明の導電性ペーストの第一実施形態は、樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびメルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を表面に有し、かつアスペクト比が10〜10000である導電材料(B2)であることを特徴とする。
【0012】
本発明の導電性ペーストの第二実施形態は、樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびスルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理され、かつアスペクト比が10〜10000である導電材料(B2)であることを特徴とする。
【0013】
本発明の導電性ペーストの第三実施形態は、樹脂(A)中に導電性フィラー(B)が均一に分散された導電性ペーストであって、樹脂(A)が、硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)であり、導電性フィラー(B)が、平均粒径0.5〜10μmの金属粉(B1)、およびアスペクト比が10〜5000である金属ナノワイヤ(B2)であることを特徴とする。
【0014】
樹脂(A)は、硫黄原子を含有するゴム(A1)またはニトリル基を含有するゴム(A2)またはそれら(A1)と(A2)の混合物である。樹脂(A)は、導電性フィラー(B)の均一な分散を実現するために、導電性フィラー(B)(金属粉(B1)および導電材料(金属ナノワイヤ)(B2))との良好な親和性が求められる。硫黄は、軌道相互作用が強い柔らかい塩基に相当し、柔らかい酸に分類される金属類との相性が良く、強い親和性を示す。また、ニトリル基も金属との高い親和性が知られている。導電材料(B2)自体は、凝集力が強く、高アスペクト比であるために分散し難いが、表面にメルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を導入することにより、分散性が向上する。また、メルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基の金属粒子への強い親和性のために、金属粉(B1)とも親和性が増して、金属粉(B1)とともに有効な導電性ネットワークを形成できる。導電材料(B2)自体は、表面をスルフィド結合やニトリル基を含有するゴムで処理することにより、分散性が向上する。また、硫黄およびニトリル基の金属への強い親和性のために、金属粉(B1)とも親和性が増して、金属粉(B1)とともに有効な導電性ネットワークを形成できる。金属ナノワイヤ(B2)自体は、凝集力が強く、高アスペクト比であるために分散し難いが、硫黄原子を含有するゴム(A1)やニトリル基を含有するゴム(A2)との強い親和性のために、分散工程で均一に分散して、金属粉(B1)とも親和性が増して、金属粉(B1)とともに有効な導電性ネットワークを形成できる。その結果、本発明の導電性ペーストは、高導電率であり、伸縮性があり、導電材料(金属ナノワイヤ)(B2)の高アスペクト比に起因して、伸長時にも高導電率を保持できる。金属粉(B1)は、平均粒径0.5μm〜10μmであり、フレーク状金属粉、球状金属粉または凝集状金属粉から選ばれる。それに加えて、さらに平均粒径が100nm以下の金属ナノ粒子(B3)を含むことができる。また、本発明の組成物の成分は溶剤に溶解または分散することができるので、塗布や印刷などのプロセスを用いて導電性膜や導電性パターンを形成できる。
【0015】
硫黄原子を含有するゴム(A1)は、硫黄を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されない。硫黄原子は、ポリマーの主鎖のスルフィド結合やジスルフィド結合、側鎖や末端のメルカプト基などの形で含有される。具体的には、メルカプト基、スルフィド結合またはジスルフィド結合を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴムまたはシリコーンゴムが挙げられる。特に、メルカプト基を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴムまたはシリコーンゴムが好ましい。特に好ましい例として、液状多硫化ゴムが挙げられ、これは東レ・ファインケミカル社から「チオコールLP」の商品名で市販されている。また、ゴム中に、ペンタエリスリトールテトラキス(S−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(S−メルカプトブチレート)、メルカプト基含有シリコーンオイルなどの硫黄含有化合物を配合しても良い。ゴム(A1)中の硫黄原子の含有量は10〜30重量%が好ましい。
【0016】
ニトリル基を含有するゴム(A2)は、ニトリル基を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されないが、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴムが好ましい。アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が多いと金属との親和性が増加するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。従って、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量は18〜50重量%が好ましく、28〜41重量%が特に好ましい。
【0017】
導電性ペースト中の樹脂(A)の配合量において、固形分中の体積%が小さいと、導電率は高くなるが、伸縮性が悪くなる。一方、体積%が大きいと、伸縮性は良くなるが、導電率は低下する。従って、導電性ペーストの固形分中の樹脂(A)の配合量は50〜80体積%であり、60〜75体積%が好ましい。なお、該固形分中の体積%は、ペーストに含まれる各成分の各固形分の質量を計測し、(各固形分の質量÷各固形分の比重)を計算して各成分の固形分の体積を算出することによって求めることができる。
【0018】
なお、本発明の導電性ペーストには、伸縮可能な導電性膜としての性能や塗布性や印刷性を損なわない範囲で他の樹脂が配合されていても良い。
【0019】
導電性フィラー(B)は金属粉(B1)及び導電材料(金属ナノワイヤ)(B2)である。金属粉(B1)は、形成される導電性膜や導電性パターンにおいて導電性を付与するために用いられる。
【0020】
金属粉(B1)としては、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミ粉、真鍮粉等の卑金属粉が好ましい。また、卑金属やシリカ等の無機物からなる異種粒子を銀等の貴金属でめっきしためっき粉、銀等の貴金属で合金化した卑金属粉等が挙げられる。これらの金属粉は、単独で用いてもよく、また、併用してもよい。これらの中で、銀粉および/または銅粉を主成分(50重量%以上)とするものが、高い導電性を示す塗膜を得やすい点および価格の点で特に好ましい。
【0021】
金属粉(B1)の好ましい形状の例としては、公知のフレーク状(リン片状)、球状、樹枝状(デンドライト状)、凝集状(球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状)などを挙げることができる。これらの中で、フレーク状、球状、凝集状の金属粉が好ましい。
【0022】
金属粉(B1)の粒子径は、微細パターン性を付与するという観点から、平均径が0.5〜10μmである。平均径が10μmより大きい金属粉を用いた場合には、形成されたパターンの形状が悪く、パターン化した細線の解像力が低下する可能性がある。平均径が0.5μmより小さくなると、大量配合すると、金属粉の凝集力が増加して印刷性が悪くなる場合があり、また高価であるためにコスト的に好ましくない。
【0023】
導電性ペースト中の金属粉(B1)の配合量は、導電率と伸縮性を考慮して決定される。固形分中の体積%が大きいと、導電率は高くなるが、ゴムの量が少なくなって伸縮性が悪くなる。体積%が小さいと、伸縮性は良くなるが、導電性ネットワークが形成し難くなって導電率は低下する。従って、導電性ペーストの固形分中の金属粉(B1)の配合量は19〜49体積%であり、25〜40体積%が好ましい。
【0024】
導電材料(B2)は、メルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を表面に有し、かつアスペクト比が10〜10000である。導電材料(B2)としては、カーボンナノチューブが好ましい。メルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を表面に有するカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの表面処理により製造される。処理すべきカーボンナノチューブは、上記範囲のアスペクト比を満たす限り特に限定されない。
【0025】
カーボンナノチューブは、2次元のグラフェンシートを筒状に巻いた構造を有し、層の数や先端部の形状によって、多層型、単層型、ホーン型に分けられる。また、グラフェンシートの巻き方によって、アームチェア型構造、ジグザグ型構造、カイラル型構造の3種に分けられる。本発明においては、多層型、単層型、ホーン型のいずれでも使用でき、どの層構造であっても良い。
【0026】
カーボンナノチューブの直径は0.5〜200nmであることが好ましい。カーボンナノチューブを使用する場合は、アスペクト比は20〜10000が好ましく、50〜1000が特に好ましい。
【0027】
カーボンナノチューブの表面にメルカプト基、アミノ基、またはニトリル基の官能基を導入する処理方法は従来から知られている。例えば、反応させて共有結合で導入する方法、疎水相互作用・水素結合を利用する方法、π―スタッキングを利用する方法、静電気相互作用を利用する方法が報告されている。いずれの方法によってもカーボンナノチューブ表面にメルカプト基、アミノ基、またはニトリル基を導入できる。この中で、π―スタッキングを利用する方法では、芳香族化合物はカーボンナノチューブ中のグラファイト構造とπ―スタッキングを生じて、カーボンナノチューブ表面に選択的に付着する。従って、メルカプト基、アミノ基、またはニトリル基を含有する芳香族化合物を用いれば、カーボンナノチューブの表面にメルカプト基、アミノ基、またはニトリル基を導入できる。メルカプト基を含有する芳香族化合物として、ベンジルメルカプタン、ベンゼンチオール、トリフェニルメタンチオール、アミノチオフェノール、2−フェニルエタンチオール、2−メルカプトーN−(2−ナフチル)アセトアミドなどが挙げられる。アミノ基を含有する芳香族化合物として、ベンジルアミン、N−(1−ナフチルメチル)アミン、1−(1−ナフチル)エチルアミンなどが挙げられる。ニトリル基を含有する芳香族化合物として、フェニルアセトニトリル、1−ナフチルアセトニトリルなどが挙げられる。
【0028】
具体的には、メルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を含有する芳香族化合物の溶液中で、カーボンナノチューブを超音波処理機などを用いて分散させると、分散したカーボンナノチューブ表面にメルカプト基、アミノ基、ニトリル基を含有する芳香族化合物が付着し、この分散液をろ過することにより、表面にメルカプト基、アミノ基、またはニトリル基を有するカーボンナノチューブが得られる。
【0029】
メルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を表面に有する導電材料(B2)、特にカーボンナノチューブは、金属粒子との親和性が高く、また硫黄原子を含有するゴム(A1)および/またはニトリル基を含有するゴム(A2)である樹脂(A)とも親和性が良いために、均一に分散して、金属粉(B1)とともに有効な導電性ネットワークを形成する。しかも、伸長時においても、導電性ネットワークの破断を抑制できるために導電性低下を防ぐことができる。
【0030】
メルカプト基、アミノ基、またはニトリル基から選ばれる基を表面に有し、アスペクト比が10〜10000の導電材料(B2)は、一般に高価であり、かつ多く配合しすぎると分散処理が困難になる。そのため、導電性ペーストの固形分中の導電材料(B2)の配合量は1〜10体積%であり、1.5〜6体積%が好ましい。
【0031】
カーボンナノチューブの表面に官能基を導入する処理方法は前述のように従来から知られている。従って、官能基を含有する芳香族化合物を用いれば、カーボンナノチューブの表面に官能基を導入できる。カーボンナノチューブ表面に導入された官能基と反応性基を含有するゴムを反応させることにより、カーボンナノチューブ表面にゴムを付着させることができる。
【0032】
反応の種類としては、グリシジル基とカルボキシル基の組み合わせ、グリシジル基とアミノ基の組み合わせ、イソシアナト基とヒドロキシ基の組み合わせ、イソシアナト基とアミノ基の組み合わせなどが挙げられる。
【0033】
具体的には、グリシジル基含有芳香族化合物を表面に付着させたカーボンナノチューブと、末端アミノ基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーを反応させる方法、グリシジル基含有芳香族化合物を表面に付着させたカーボンナノチューブと、末端カルボキシル基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーを反応させる方法、グリシジル基含有芳香族化合物を表面に付着させたカーボンナノチューブと、末端メルカプト基ポリスルフィドオリゴマーを反応させる方法、カルボキシル基含有芳香族化合物を表面に付着させたカーボンナノチューブと、末端グリシジル基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーを反応させる方法、アミノ基含有芳香族化合物を表面に付着させたカーボンナノチューブと、末端グリシジル基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーを反応させる方法などが挙げられる。
【0034】
グリシジル基含有芳香族化合物として、フェニルグリシジルエーテル、o−クレジルグリシジルエーテル、1−(グリシジルオキシ)ナフタレン、o−フェニルフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。カルボキシル基含有芳香族化合物として、1−ナフチル酢酸、2−ナフチル酢酸、2−ナフチロキシ酢酸などが挙げられる。アミノ基含有芳香族化合物として、N−(1−ナフチルメチル)アミン、1−(1−ナフチル)エチルアミンが挙げられる。
【0035】
末端アミノ基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーとして、HyproTM ATBNポリマー(Emerald Performance Materials社製)が、末端カルボキシル基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーとして、HyproTM CTBNポリマー(Emerald Performance Materials社製)が、末端グリシジル基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーとして、HyproTM ETBNポリマー(Emerald Performance Materials社製)が使用できる。
【0036】
末端メルカプト基ポリスルフィドオリゴマーとして、「チオコールLP」(東レ・ファインケミカル社製)が使用できる。
【0037】
具体的には、官能基を含有する芳香族化合物の溶液中で、カーボンナノチューブを超音波処理機などを用いて分散させると、分散したカーボンナノチューブ表面に官能基を含有する芳香族化合物が付着し、この分散液をろ過することにより、表面に官能基を有するカーボンナノチューブが得られる。得られたカーボンナノチューブを末端反応性ゴムオリゴマーの溶液中に再度分散させ、分散液を加熱して反応させることにより、ゴムが表面に付着したカーボンナノチューブが得られる。
【0038】
スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理され、アスペクト比が10〜10000である導電材料(B2)は、一般に高価であり、かつ多く配合しすぎると分散処理が困難になる。そのため、導電性ペーストの固形分中の導電材料(B2)の配合量は1〜10体積%が好ましく、1.5〜6体積%が特に好ましい。
【0039】
金属ナノワイヤ(B2)は、具体的には鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が挙げられ、導電性の観点から、銅、銀、白金、金が好ましく、銀、銅が特に好ましい。
【0040】
金属ナノワイヤ(B2)の形状は、アスペクト比が10以上であれば特に制限されないが、アスペクト比が大きすぎると取り扱いが困難となるので、アスペクト比は5000以下であり、1500以下が好ましい。
【0041】
金属ナノワイヤ(B2)の直径は、1nm〜1μmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましい。長さは、5μm〜1mmが好ましく、10μm〜500μmがより好ましい。長さが短すぎると、導電性に関する伸縮性が劣り、長すぎると、取り扱いが困難となり分散が困難になる可能性がある。
【0042】
金属ナノワイヤ(B2)は、公知の合成法で製造されることができ、例えば、溶媒中で硝酸銀を還元する方法で、エチレングリコール中で加熱しながら還元するポリオール還元法やクエン酸中で還元する方法などによって製造されることができる。
【0043】
金属ナノワイヤ(B2)は、金属粉(B1)とともに導電性ネットワークを形成し、その高いアスペクト比のために伸長時においても、導電性ネットワークが破断するのを防ぐ働きがある。ただし、一般に高価であり、多く配合しすぎると分散が困難となるので配合量はできるだけ少ないことが好ましい。固形分中で1〜10体積%であり、1.5〜6体積%が好ましい。
【0044】
本発明における導電性ペーストには、導電率の向上や印刷性の改良などの目的で、導電性フィラーとして金属ナノ粒子(B3)をさらに配合することができる。金属ナノ粒子(B3)は、導電性ネットワーク間での導電性付与の機能があるために導電率の向上が期待できる。また、印刷性改良のための導電性ペーストのレオロジー調節の目的にも配合することができる。金属ナノ粒子(B3)の平均粒径は2〜100nmが好ましい。具体的には、銀、ビスマス、白金、金、ニッケル、スズ、銅、亜鉛が挙げられ、導電性の観点から、銅、銀、白金、金が好ましく、銀及び/又は銅を主成分(50重量%以上)とするものが特に好ましい。
【0045】
金属ナノ粒子(B3)も一般に高価であるために、できるだけ少量であることが好ましい。導電性ペーストの固形分中の金属ナノ粒子(B3)の配合量は0.5〜5体積%が好ましい。
【0046】
本発明の導電性ペーストには、導電性および伸縮性を損なわない範囲で無機物を添加することができる。無機物としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブテン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等の各種炭化物;窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物;酸化チタン(チタニア)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物;二硫化モリブデン等の硫化物;フッ化マグネシウム、フッ化炭素等の各種フッ化物;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸;その他、滑石、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、ガラス繊維、雲母等を用いることができる。これらの無機物を添加することによって、印刷性や耐熱性、さらには機械的特性や長期耐久性を向上させることが可能となる場合がある。
【0047】
また、チキソ性付与剤、消泡剤、難燃剤、粘着付与剤、加水分解防止剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料を配合することができる。
【0048】
本発明の導電性ペーストに使用する有機溶剤は、沸点が100℃以上、300℃未満であることが好ましく、より好ましくは沸点が150℃以上、290℃未満である。有機溶剤の沸点が低すぎると、ペースト製造工程やペースト使用に際に溶剤が揮発し、導電性ペーストを構成する成分比が変化しやすい懸念がある。一方で、有機溶剤の沸点が高すぎると、低温乾燥工程が求められる場合(例えば150℃以下)において、溶剤が塗膜中に多量に残存する可能性があり、塗膜の信頼性低下を引き起こす懸念がある。
【0049】
このような高沸点溶剤としては、シクロヘキサノン、トルエン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、エクソン化学製のソルベッソ100,150,200、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ターピオネール、ブチルグリコールアセテート、ジアミルベンゼン(沸点:260〜280℃)、トリアミルベンゼン(沸点:300〜320℃)、n−ドデカノール(沸点:255〜259℃)、ジエチレングリコール(沸点:245℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点:145℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点:247℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点:255℃)、ジエチレングリコールモノアセテート(沸点:250℃)、トリエチレングリコールジアセテート(沸点:300℃)トリエチレングリコール(沸点:276℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:249℃)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:256℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:271℃)、テトラエチレングリコール(沸点:327℃)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:304℃)、トリプロピレングリコール(沸点:267℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:243℃)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(沸点:253℃)などが挙げられる。また、石油系炭化水素類としては、新日本石油社製のAFソルベント4号(沸点:240〜265℃)、5号(沸点:275〜306℃)、6号(沸点:296〜317℃)、7号(沸点:259〜282℃)、および0号ソルベントH(沸点:245〜265℃)なども挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が含まれてもよい。このような有機溶剤は、導電性ペーストが印刷などに適した粘度となるように適宜含有される。
【0050】
導電性ペースト中の有機溶剤の含有量は、導電性フィラーの分散方法や、導電性膜形成方法に適合する導電性ペーストの粘度や乾燥方法などによって決められる。本発明の導電性ペーストは、粉体を液体に分散させる従来公知の方法を用いることによって樹脂中に導電性フィラーを均一に分散することができる。例えば、金属粉、高アスペクト比の導電材料(金属ナノワイヤ)の分散液、樹脂溶液を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロールミル法、ボールミル法などで均一に分散することができる。これらの手段は、複数を組み合わせて使用することも可能である。
【0051】
本発明の導電性ペーストを基材上に塗布または印刷して塗膜を形成し、次いで塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させ乾燥させることにより、導電性膜または導電性パターンを形成することができる。
【0052】
導電性ペーストが塗布される基材は特に限定されないが、導電膜の伸縮性を生かすために、用途によって、可とう性または伸縮性のある基材が好ましい。可とう性基材の例として、紙、布、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミドなどが挙げられる。伸縮性の基材としては、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、SBSエラストマー、SEBSエラストマーなどが挙げられる。これらの基材は、折り目を付けることが可能で、面方向に伸縮可能であることが好ましい。その点でゴムやエラストマーからなる基材が好ましい。また、布を基材とすることは好ましい態様であり、織物(布帛)を基材とすることもできるが、編物(ニット)を基材とすることが伸縮性を付与できる点でより好ましい。
【0053】
導電性ペーストを基材上に塗布する工程は、特に限定されないが、例えば、コーティング法、印刷法、転写法などによって行うことができる。印刷法としては、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ディスペンス法、スキージ印刷などが挙げられる。
【0054】
導電性ペーストを塗布された基材を加熱する工程は、大気下、真空雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、還元性ガス雰囲気下などで行うことができる。加熱温度は20〜200℃の範囲で行い、要求される導電率や基材の耐熱性などを考慮して選択される。有機溶剤が揮散され、場合により加熱下で硬化反応が進行し、乾燥後の導電性膜の導電性や密着性、表面硬度が良好となる。
【0055】
伸縮可能な導電性膜に必要な伸長率は、使われる用途によって異なり、特に限定されるものではない。想定されるヘルスケア、ディスプレイ、太陽電池、PFIDなどの分野での配線、アンテナ、電極などの用途では、5%から80%程度の伸長率が望まれている。本発明の導電性ペーストを塗布または印刷して得られる伸縮可能な導電性膜において、例えば、80%伸長時での比抵抗は、自然状態(0%伸長時)の比抵抗に比べて10倍以下が望まれ、好ましくは5倍以下、さらに好ましくは2倍以下が望まれる。また、導電性膜を所定の割合だけ伸長させて、次に応力ゼロの状態に戻す操作を繰り返した場合の導電率の変化も重要である。例えば、10%伸長を1000回繰り返した後の比抵抗は、自然状態(0%伸長時)の比抵抗に比べて、10倍以下が好ましく、5倍以下が特に好ましい。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(表面にメルカプト基を有するカーボンナノチューブの作製)
50mgの多層カーボンナノチューブ(SWeNT MW100、SouthWest Nano Technologies社製、直径6〜9nm、長さ5μm、アスペクト比556〜833)を0.006mol/lの2−メルカプトーN−(2−ナフチル)アセトアミドのエタノール溶液100mlに添加し、超音波処理を30分間行った。PTFE膜を用いてろ過し、エタノールで数回洗浄した後、乾燥させて表面にメルカプト基を有するカーボンナノチューブ(CNT−A)を作製した。
【0058】
(表面にアミノ基を有するカーボンナノチューブの作製)
2−メルカプトーN−(2−ナフチル)アセトアミドの代わりに、N−(1−ナフチルメチル)アミンを用いる以外は、CNT−Aと同様の操作で表面にアミノ基を有するカーボンナノチューブ(CNT−B)を作製した。
【0059】
(表面にニトリル基を有するカーボンナノチューブの作製)
2−メルカプトーN−(2−ナフチル)アセトアミドの代わりに、1−ナフチルアセトニトリルを用いる以外は、CNT−Aと同様の操作で表面にニトリル基を有するカーボンナノチューブ(CNT−C)を作製した。
【0060】
実施例1A〜10A、比較例1A〜6A
樹脂をジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、この溶液に銀粒子(及び必要により銀ナノ粒子)と、無処理のカーボンナノチューブ(無処理CNT)または表面処理したカーボンナノチューブ(CNT−A〜C)を均一に分散した液を、各成分が表1,2に記載の固形分中の体積%となるように配合し、3本ロールミルにて混練して、導電性ペーストを得た。導電ペーストをガラス板の上にドロップキャスト法にて製膜し、150℃で30分間乾燥して、厚み100μmのシート状の導電性膜を作製した。導電性膜は、後述する方法で伸長率0%、20%、50%、80%時の比抵抗を評価した。また、10%伸長を1000回繰り返した後の導電性膜の比抵抗変化率を評価した。実施例1A〜10A、比較例1A〜6Aの導電性ペーストの組成とその評価結果を表1及び表2に示す。
【0061】
実施例11A
実施例1Aで作成した導電性ペーストを2WAYニット生地の上にドロップキャスト法で製膜し、120℃で30分間乾燥して、生地上に厚さ100μmのシート状の導電性膜を積層した導電性積層体を作成した。この導電性積層体を目視で評価したところ、クラック等の欠点のない均一な導電性膜が形成されており、基材からの剥がれも観察されなかった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1,2中の1)〜10)の詳細は以下の通りである。
1)銀粒子:凝集銀粉G−35(平均粒径5.9μm、DOWAエレクトロニクス社製)
2)表面にメルカプト基を有するカーボンナノチューブ
3)表面にアミノ基を有するカーボンナノチューブ
4)表面にニトリル基を有するカーボンナノチューブ
5)無処理CNT:SWeNT MW100(多層カーボンナノチューブ、直径6〜9nm、長さ5μm、アスペクト比556〜833、SouthWest Nano Technologies社製)
6)銀ナノ粒子:銀ナノ粒子乾粉2(平均粒径60nm、DOWAエレクトロニクス社製)
7)ニトリル基含有ゴムA:Nipol 1042(アクリロニトリル含量33.3重量%、日本ゼオン社製)
8)ニトリル基含有ゴムB:Nipol 1043(アクリロニトリル含量29.0重量%、日本ゼオン社製)
9)硫黄含有ゴム:チオコールLP−23(硫黄含量21.5%、東レファインケミカル社製)
10)ポリエステル:バイロンRV630(東洋紡社製)
【0065】
実施例1A〜10A及び比較例1A〜6Aの導電性膜の評価方法は以下の通りである。
[比抵抗の評価]
自然状態(伸長率0%)の導電性膜試験片のシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はシックネスゲージ SMD−565L(TECLOCK社製)を用い、シート抵抗はLoresta−GP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて試験片4枚について測定し、その平均値を用いた。
そして自然状態(伸長率0%)と同様にして、伸長率20%、50%、80%時の比抵抗を測定した。伸長率は以下の式により算出した。
伸長率(%)=(ΔL/L)×100
ここで、Lは試験片の標線間距離、ΔLは試験片の標線韓距離の増加分を示す。
また、10%伸長を1000回繰り返した後の比抵抗を測定し、比抵抗変化率を以下の式により算出した。
比抵抗変化率=(R1000―R)/R×100(%)
ここで、R1000は10%繰り返し伸長(1000回)後の比抵抗、Rは自然状態の比抵抗を示す。
【0066】
表1および表2の結果から明らかなように、実施例1A〜10Aの導電性ペーストは、自然状態の良好な導電性だけでなく伸長時でも高い導電性を維持することができ、繰り返し伸縮後も導電性の低下が小さい。一方、比較例1A〜6Aの導電性ペーストは、実施例1A〜10Aに比べて比抵抗が高いか、又は伸長により破断を招いており、繰り返し伸縮により導電性が低下する。
【0067】
(表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブの作製)
50mgの多層カーボンナノチューブ(SWeNT MW100、SouthWest Nano Technologies社製、直径6〜9nm、長さ5μm、アスペクト比556〜833)を0.006mol/lのo−フェニルフェニルグリシジルエーテルのエタノール溶液100mlに添加し、超音波処理を30分間行った。PTFE膜を用いてろ過し、エタノールで数回洗浄した後、乾燥させて表面にグリシジル基を有するカーボンナノチューブを作製した。
【0068】
次に、このカーボンナノチューブを、末端アミノ基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーであるHyproTM 1300×16ATBN(アクリロニトリル含量18重量%、アミン等量900、Emerald Performance Materials社製)のテトラヒドロフラン溶液中に添加し、超音波処理機により30分間分散処理を行った。さらに60℃に加熱し、1時間超音波処理を行った後、PTFE膜を用いてろ過し、テトラヒドロフランで数回洗浄した後、乾燥させて表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブ(CNT−A)を作製した。
【0069】
(表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブの作製)
末端アミノ基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーであるHyproTM 1300×16 ATBNの代わりに、末端カルボキシル基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーであるHyproTM 1300×8 CTBN(アクリロニトリル含量18重量%、酸価29、分子量3550、Emerald Performance Materials社製)を用いる以外は、CNT−Aと同様の操作で表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブ(CNT−B)を作製した。
【0070】
(表面にポリスルフィドオリゴマーを有するカーボンナノチューブの作製)
末端アミノ基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーであるHyproTM 1300×16ATBNの代わりに、メルカプト基末端ポリスルフィドオリゴマーであるチオコールLP−3(メルカプト含有量6.8重量%、東レファインケミカル社製)を用いる以外は、CNT−Aと同様の操作で表面にポリスルフィドオリゴマーを有するカーボンナノチューブ(CNT−C)を作製した。
【0071】
実施例1B〜10B、比較例1B〜6B
樹脂をジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、この溶液に銀粒子(及び必要により銀ナノ粒子)と、無処理のカーボンナノチューブ(無処理CNT)または表面処理したカーボンナノチューブ(CNT−A〜C)を均一に分散した液を、各成分が表3,4に記載の固形分中の体積%となるように配合し、3本ロールミルにて混練して、導電性ペーストを得た。導電ペーストをガラス板の上にドロップキャスト法にて製膜し、150℃で30分間乾燥して、厚み100μmのシート状の導電性膜を作製した。導電性膜は、後述する方法で伸長率0%、20%、50%、80%時の比抵抗を評価した。また、10%伸長を1000回繰り返した後の導電性膜の比抵抗変化率を評価した。実施例1B〜10B、比較例1B〜6Bの導電性ペーストの組成とその評価結果を表3及び表4に示す。
【0072】
実施例11B
実施例1Bで作成した導電性ペーストをテフロン(登録商標)シートの上にドロップキャスト法で製膜し、2WAYニット生地と貼り合わせて、120℃で30分間乾燥した後、テフロン(登録商標)シートを剥がし、生地上に厚さ100μmのシート状の導電性膜を積層した導電性積層体を作成した。この導電性積層体を目視で評価したところ、クラック等の欠点のない均一な導電性膜が形成されており、基材からの剥がれも観察されなかった。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
表3,4中の1)〜10)の詳細は以下の通りである。
1)銀粒子A:凝集銀粉G−35(平均粒径5.9μm、DOWAエレクトロニクス社製)
2)表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブ
3)表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブ
4)表面にポリスルフィドオリゴマーを有するカーボンナノチューブ
5)無処理CNT:SWeNT MW100(多層カーボンナノチューブ、直径6〜9nm、長さ5μm、アスペクト比556〜833、SouthWest Nano Technologies社製)
6)銀ナノ粒子:銀ナノ粒子乾粉2(平均粒径60nm、DOWAエレクトロニクス社製)
7)ニトリル基含有ゴムA:Nipol 1042(アクリロニトリル含量33.3重量%、日本ゼオン社製)
8)ニトリル基含有ゴムB:Nipol 1043(アクリロニトリル含量29.0重量%、日本ゼオン社製)
9)硫黄含有ゴム:チオコールLP−23(硫黄含量21.5重量%、東レファインケミカル社製)
10)ポリエステル:バイロンRV630(東洋紡社製)
【0076】
実施例1B〜10B及び比較例1B〜6Bの導電性膜の評価方法は以下の通りである。
[比抵抗の評価]
自然状態(伸長率0%)の導電性膜試験片のシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はシックネスゲージ SMD−565L(TECLOCK社製)を用い、シート抵抗はLoresta−GP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて試験片4枚について測定し、その平均値を用いた。
そして自然状態(伸長率0%)と同様にして、伸長率20%、50%、80%時の比抵抗を測定した。伸長率は以下の式により算出した。
伸長率(%)=(ΔL/L)×100
ここで、Lは試験片の標線間距離、ΔLは試験片の標線韓距離の増加分を示す。
また、10%伸長を1000回繰り返した後の比抵抗を測定し、比抵抗変化率を以下の式により算出した。
比抵抗変化率=(R1000―R)/R×100(%)
ここで、R1000は10%繰り返し伸長(1000回)後の比抵抗、Rは自然状態の比抵抗を示す。
【0077】
表3および表4の結果から明らかなように、実施例1B〜10Bの導電性ペーストは、自然状態の良好な導電性だけでなく伸長時でも高い導電性を維持することができ、繰り返し伸縮後も導電性の低下が小さい。一方、比較例1B〜6Bの導電性ペーストは、実施例1B〜10Bに比べて比抵抗が高いか、又は伸長により破断を招いており、繰り返し伸縮により導電性が低下する。
【0078】
実施例1C〜10C、比較例1C〜6C
樹脂をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させて、この溶液に銀粒子(及び必要により銀ナノ粒子)と、銀ナノワイヤを均一に分散したイソプロパノール溶液を、各成分が表5,6に記載の固形分中の体積%となるように配合し、3本ロールミルにて混練して、導電性ペーストを得た。導電性ペーストをガラス板の上にドロップキャスト法にて製膜し、150℃で30分間乾燥して、厚み100μmのシート状の導電性膜を作製した。導電性膜は、後述する方法で伸長率0%、20%、50%、80%時の比抵抗を評価した。また、10%伸長を1000回繰り返した後の導電性膜の比抵抗変化率を評価した。実施例1C〜10C、比較例1C〜6Cの導電性ペーストの組成とその評価結果を表5及び表6に示す。
【0079】
実施例11C
実施例1Cで作成した導電性ペーストをテフロン(登録商標)シートの上にドロップキャスト法で製膜し、丸編生地と貼り合わせて、120℃で30分間乾燥した後、テフロン(登録商標)シートを剥がし、生地上に厚さ100μmのシート状の導電性膜を積層した導電性積層体を作成した。この導電性積層体を目視で評価したところ、クラック等の欠点のない均一な導電性膜が形成されており、基材からの剥がれも観察されなかった。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
表5,6中の1)〜9)の詳細は以下の通りである。
1)銀粒子A:凝集銀粉G−35(平均粒径5.9μm、DOWAエレクトロニクス社製)
2)銀粒子B:フレーク銀粉FA−D−7(平均粒径3μm、DOWAエレクトロニクス社製)
3)銀粒子C:球状銀粉AG5−7F(平均粒径3μm、DOWAエレクトロニクス社製)
4)銀ナノワイヤ:NanoMeet NM−SNW70(直径70nm、長さ20〜80μm、アスペクト比286〜1143、2.5重量%イソプロパノール分散液、Beijing NanoMeet Technology社製)
5)銀ナノ粒子:銀ナノ粒子乾粉2(平均粒径60nm、DOWAエレクトロニクス社製)
6)ニトリル基含有ゴムA:Nipol 1042(アクリロニトリル含量33.3重量%、日本ゼオン社製)
7)ニトリル基含有ゴムB:Nipol 1043(アクリロニトリル含量29.0重量%、日本ゼオン社製)
8)硫黄含有ゴム:チオコールLP−23(硫黄含量21.5重量%、東レファインケミカル社製)
9)ポリエステル:バイロンRV630(東洋紡社製)
【0083】
実施例1C〜10C及び比較例1C〜6Cの導電性膜の評価方法は以下の通りである。
[比抵抗の評価]
自然状態(伸長率0%)の導電性膜試験片のシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はシックネスゲージ SMD−565L(TECLOCK社製)を用い、シート抵抗はLoresta−GP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて試験片4枚について測定し、その平均値を用いた。
そして自然状態(伸長率0%)と同様にして、伸長率20%、50%、80%時の比抵抗を測定した。伸長率は以下の式により算出した。
伸長率(%)=(ΔL0/L0)×100
ここで、L0は試験片の標線間距離、ΔL0は試験片の標線韓距離の増加分を示す。
また、10%伸長を1000回繰り返した後の比抵抗を測定し、比抵抗変化率を以下の式により算出した。
比抵抗変化率=(R1000―R)/R×100(%)
ここで、R1000は10%繰り返し伸長(1000回)後の比抵抗、Rは自然状態の比抵抗を示す。
【0084】
表5および表6の結果から明らかなように、実施例1C〜10Cの導電性ペーストは、自然状態の良好な導電性だけでなく伸長時でも高い導電性を維持することができ、繰り返し伸縮後も導電性の低下が小さい。一方、比較例1C〜6Cの導電性ペーストは、実施例1C〜10Cに比べて比抵抗が高いか、又は伸長により破断を招いていており、繰り返し伸縮により導電性が低下する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の導電性ペーストは、高い導電率と伸縮性を有することから、ゴムやエラストマー材料を利用した折り曲げ可能なディスプレイ、伸縮性LEDアレイ、伸縮性太陽電池、伸縮性アンテナ、伸縮性バッテリ、アクチュエーター、ヘルスケアデバイスや医療用センサー、ウエアラブルコンピュータなどの電極や配線などに好適に利用することができる。