【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(表面にメルカプト基を有するカーボンナノチューブの作製)
50mgの多層カーボンナノチューブ(SWeNT MW100、SouthWest Nano Technologies社製、直径6〜9nm、長さ5μm、アスペクト比556〜833)を0.006mol/lの2−メルカプトーN−(2−ナフチル)アセトアミドのエタノール溶液100mlに添加し、超音波処理を30分間行った。PTFE膜を用いてろ過し、エタノールで数回洗浄した後、乾燥させて表面にメルカプト基を有するカーボンナノチューブ(CNT−A)を作製した。
【0058】
(表面にアミノ基を有するカーボンナノチューブの作製)
2−メルカプトーN−(2−ナフチル)アセトアミドの代わりに、N−(1−ナフチルメチル)アミンを用いる以外は、CNT−Aと同様の操作で表面にアミノ基を有するカーボンナノチューブ(CNT−B)を作製した。
【0059】
(表面にニトリル基を有するカーボンナノチューブの作製)
2−メルカプトーN−(2−ナフチル)アセトアミドの代わりに、1−ナフチルアセトニトリルを用いる以外は、CNT−Aと同様の操作で表面にニトリル基を有するカーボンナノチューブ(CNT−C)を作製した。
【0060】
実施例1A〜10A、比較例1A〜6A
樹脂をジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、この溶液に銀粒子(及び必要により銀ナノ粒子)と、無処理のカーボンナノチューブ(無処理CNT)または表面処理したカーボンナノチューブ(CNT−A〜C)を均一に分散した液を、各成分が表1,2に記載の固形分中の体積%となるように配合し、3本ロールミルにて混練して、導電性ペーストを得た。導電ペーストをガラス板の上にドロップキャスト法にて製膜し、150℃で30分間乾燥して、厚み100μmのシート状の導電性膜を作製した。導電性膜は、後述する方法で伸長率0%、20%、50%、80%時の比抵抗を評価した。また、10%伸長を1000回繰り返した後の導電性膜の比抵抗変化率を評価した。実施例1A〜10A、比較例1A〜6Aの導電性ペーストの組成とその評価結果を表1及び表2に示す。
【0061】
実施例11A
実施例1Aで作成した導電性ペーストを2WAYニット生地の上にドロップキャスト法で製膜し、120℃で30分間乾燥して、生地上に厚さ100μmのシート状の導電性膜を積層した導電性積層体を作成した。この導電性積層体を目視で評価したところ、クラック等の欠点のない均一な導電性膜が形成されており、基材からの剥がれも観察されなかった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1,2中の1)〜10)の詳細は以下の通りである。
1)銀粒子:凝集銀粉G−35(平均粒径5.9μm、DOWAエレクトロニクス社製)
2)表面にメルカプト基を有するカーボンナノチューブ
3)表面にアミノ基を有するカーボンナノチューブ
4)表面にニトリル基を有するカーボンナノチューブ
5)無処理CNT:SWeNT MW100(多層カーボンナノチューブ、直径6〜9nm、長さ5μm、アスペクト比556〜833、SouthWest Nano Technologies社製)
6)銀ナノ粒子:銀ナノ粒子乾粉2(平均粒径60nm、DOWAエレクトロニクス社製)
7)ニトリル基含有ゴムA:Nipol 1042(アクリロニトリル含量33.3重量%、日本ゼオン社製)
8)ニトリル基含有ゴムB:Nipol 1043(アクリロニトリル含量29.0重量%、日本ゼオン社製)
9)硫黄含有ゴム:チオコールLP−23(硫黄含量21.5%、東レファインケミカル社製)
10)ポリエステル:バイロンRV630(東洋紡社製)
【0065】
実施例1A〜10A及び比較例1A〜6Aの導電性膜の評価方法は以下の通りである。
[比抵抗の評価]
自然状態(伸長率0%)の導電性膜試験片のシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はシックネスゲージ SMD−565L(TECLOCK社製)を用い、シート抵抗はLoresta−GP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて試験片4枚について測定し、その平均値を用いた。
そして自然状態(伸長率0%)と同様にして、伸長率20%、50%、80%時の比抵抗を測定した。伸長率は以下の式により算出した。
伸長率(%)=(ΔL
0/L
0)×100
ここで、L
0は試験片の標線間距離、ΔL
0は試験片の標線韓距離の増加分を示す。
また、10%伸長を1000回繰り返した後の比抵抗を測定し、比抵抗変化率を以下の式により算出した。
比抵抗変化率=(R
1000―R
0)/R
0×100(%)
ここで、R
1000は10%繰り返し伸長(1000回)後の比抵抗、R
0は自然状態の比抵抗を示す。
【0066】
表1および表2の結果から明らかなように、実施例1A〜10Aの導電性ペーストは、自然状態の良好な導電性だけでなく伸長時でも高い導電性を維持することができ、繰り返し伸縮後も導電性の低下が小さい。一方、比較例1A〜6Aの導電性ペーストは、実施例1A〜10Aに比べて比抵抗が高いか、又は伸長により破断を招いており、繰り返し伸縮により導電性が低下する。
【0067】
(表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブの作製)
50mgの多層カーボンナノチューブ(SWeNT MW100、SouthWest Nano Technologies社製、直径6〜9nm、長さ5μm、アスペクト比556〜833)を0.006mol/lのo−フェニルフェニルグリシジルエーテルのエタノール溶液100mlに添加し、超音波処理を30分間行った。PTFE膜を用いてろ過し、エタノールで数回洗浄した後、乾燥させて表面にグリシジル基を有するカーボンナノチューブを作製した。
【0068】
次に、このカーボンナノチューブを、末端アミノ基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーであるHypro
TM 1300×16ATBN(アクリロニトリル含量18重量%、アミン等量900、Emerald Performance Materials社製)のテトラヒドロフラン溶液中に添加し、超音波処理機により30分間分散処理を行った。さらに60℃に加熱し、1時間超音波処理を行った後、PTFE膜を用いてろ過し、テトラヒドロフランで数回洗浄した後、乾燥させて表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブ(CNT−A)を作製した。
【0069】
(表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブの作製)
末端アミノ基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーであるHypro
TM 1300×16 ATBNの代わりに、末端カルボキシル基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーであるHypro
TM 1300×8 CTBN(アクリロニトリル含量18重量%、酸価29、分子量3550、Emerald Performance Materials社製)を用いる以外は、CNT−Aと同様の操作で表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブ(CNT−B)を作製した。
【0070】
(表面にポリスルフィドオリゴマーを有するカーボンナノチューブの作製)
末端アミノ基アクリロニトリルブタジエンオリゴマーであるHypro
TM 1300×16ATBNの代わりに、メルカプト基末端ポリスルフィドオリゴマーであるチオコールLP−3(メルカプト含有量6.8重量%、東レファインケミカル社製)を用いる以外は、CNT−Aと同様の操作で表面にポリスルフィドオリゴマーを有するカーボンナノチューブ(CNT−C)を作製した。
【0071】
実施例1B〜10B、比較例1B〜6B
樹脂をジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、この溶液に銀粒子(及び必要により銀ナノ粒子)と、無処理のカーボンナノチューブ(無処理CNT)または表面処理したカーボンナノチューブ(CNT−A〜C)を均一に分散した液を、各成分が表3,4に記載の固形分中の体積%となるように配合し、3本ロールミルにて混練して、導電性ペーストを得た。導電ペーストをガラス板の上にドロップキャスト法にて製膜し、150℃で30分間乾燥して、厚み100μmのシート状の導電性膜を作製した。導電性膜は、後述する方法で伸長率0%、20%、50%、80%時の比抵抗を評価した。また、10%伸長を1000回繰り返した後の導電性膜の比抵抗変化率を評価した。実施例1B〜10B、比較例1B〜6Bの導電性ペーストの組成とその評価結果を表3及び表4に示す。
【0072】
実施例11B
実施例1Bで作成した導電性ペーストをテフロン(登録商標)シートの上にドロップキャスト法で製膜し、2WAYニット生地と貼り合わせて、120℃で30分間乾燥した後、テフロン(登録商標)シートを剥がし、生地上に厚さ100μmのシート状の導電性膜を積層した導電性積層体を作成した。この導電性積層体を目視で評価したところ、クラック等の欠点のない均一な導電性膜が形成されており、基材からの剥がれも観察されなかった。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
表3,4中の1)〜10)の詳細は以下の通りである。
1)銀粒子A:凝集銀粉G−35(平均粒径5.9μm、DOWAエレクトロニクス社製)
2)表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブ
3)表面にアクリロニトリルブタジエンオリゴマーを有するカーボンナノチューブ
4)表面にポリスルフィドオリゴマーを有するカーボンナノチューブ
5)無処理CNT:SWeNT MW100(多層カーボンナノチューブ、直径6〜9nm、長さ5μm、アスペクト比556〜833、SouthWest Nano Technologies社製)
6)銀ナノ粒子:銀ナノ粒子乾粉2(平均粒径60nm、DOWAエレクトロニクス社製)
7)ニトリル基含有ゴムA:Nipol 1042(アクリロニトリル含量33.3重量%、日本ゼオン社製)
8)ニトリル基含有ゴムB:Nipol 1043(アクリロニトリル含量29.0重量%、日本ゼオン社製)
9)硫黄含有ゴム:チオコールLP−23(硫黄含量21.5重量%、東レファインケミカル社製)
10)ポリエステル:バイロンRV630(東洋紡社製)
【0076】
実施例1B〜10B及び比較例1B〜6Bの導電性膜の評価方法は以下の通りである。
[比抵抗の評価]
自然状態(伸長率0%)の導電性膜試験片のシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はシックネスゲージ SMD−565L(TECLOCK社製)を用い、シート抵抗はLoresta−GP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて試験片4枚について測定し、その平均値を用いた。
そして自然状態(伸長率0%)と同様にして、伸長率20%、50%、80%時の比抵抗を測定した。伸長率は以下の式により算出した。
伸長率(%)=(ΔL
0/L
0)×100
ここで、L
0は試験片の標線間距離、ΔL
0は試験片の標線韓距離の増加分を示す。
また、10%伸長を1000回繰り返した後の比抵抗を測定し、比抵抗変化率を以下の式により算出した。
比抵抗変化率=(R
1000―R
0)/R
0×100(%)
ここで、R
1000は10%繰り返し伸長(1000回)後の比抵抗、R
0は自然状態の比抵抗を示す。
【0077】
表3および表4の結果から明らかなように、実施例1B〜10Bの導電性ペーストは、自然状態の良好な導電性だけでなく伸長時でも高い導電性を維持することができ、繰り返し伸縮後も導電性の低下が小さい。一方、比較例1B〜6Bの導電性ペーストは、実施例1B〜10Bに比べて比抵抗が高いか、又は伸長により破断を招いており、繰り返し伸縮により導電性が低下する。
【0078】
実施例1C〜10C、比較例1C〜6C
樹脂をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させて、この溶液に銀粒子(及び必要により銀ナノ粒子)と、銀ナノワイヤを均一に分散したイソプロパノール溶液を、各成分が表5,6に記載の固形分中の体積%となるように配合し、3本ロールミルにて混練して、導電性ペーストを得た。導電性ペーストをガラス板の上にドロップキャスト法にて製膜し、150℃で30分間乾燥して、厚み100μmのシート状の導電性膜を作製した。導電性膜は、後述する方法で伸長率0%、20%、50%、80%時の比抵抗を評価した。また、10%伸長を1000回繰り返した後の導電性膜の比抵抗変化率を評価した。実施例1C〜10C、比較例1C〜6Cの導電性ペーストの組成とその評価結果を表5及び表6に示す。
【0079】
実施例11C
実施例1Cで作成した導電性ペーストをテフロン(登録商標)シートの上にドロップキャスト法で製膜し、丸編生地と貼り合わせて、120℃で30分間乾燥した後、テフロン(登録商標)シートを剥がし、生地上に厚さ100μmのシート状の導電性膜を積層した導電性積層体を作成した。この導電性積層体を目視で評価したところ、クラック等の欠点のない均一な導電性膜が形成されており、基材からの剥がれも観察されなかった。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
表5,6中の1)〜9)の詳細は以下の通りである。
1)銀粒子A:凝集銀粉G−35(平均粒径5.9μm、DOWAエレクトロニクス社製)
2)銀粒子B:フレーク銀粉FA−D−7(平均粒径3μm、DOWAエレクトロニクス社製)
3)銀粒子C:球状銀粉AG5−7F(平均粒径3μm、DOWAエレクトロニクス社製)
4)銀ナノワイヤ:NanoMeet NM−SNW70(直径70nm、長さ20〜80μm、アスペクト比286〜1143、2.5重量%イソプロパノール分散液、Beijing NanoMeet Technology社製)
5)銀ナノ粒子:銀ナノ粒子乾粉2(平均粒径60nm、DOWAエレクトロニクス社製)
6)ニトリル基含有ゴムA:Nipol 1042(アクリロニトリル含量33.3重量%、日本ゼオン社製)
7)ニトリル基含有ゴムB:Nipol 1043(アクリロニトリル含量29.0重量%、日本ゼオン社製)
8)硫黄含有ゴム:チオコールLP−23(硫黄含量21.5重量%、東レファインケミカル社製)
9)ポリエステル:バイロンRV630(東洋紡社製)
【0083】
実施例1C〜10C及び比較例1C〜6Cの導電性膜の評価方法は以下の通りである。
[比抵抗の評価]
自然状態(伸長率0%)の導電性膜試験片のシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はシックネスゲージ SMD−565L(TECLOCK社製)を用い、シート抵抗はLoresta−GP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて試験片4枚について測定し、その平均値を用いた。
そして自然状態(伸長率0%)と同様にして、伸長率20%、50%、80%時の比抵抗を測定した。伸長率は以下の式により算出した。
伸長率(%)=(ΔL0/L0)×100
ここで、L0は試験片の標線間距離、ΔL0は試験片の標線韓距離の増加分を示す。
また、10%伸長を1000回繰り返した後の比抵抗を測定し、比抵抗変化率を以下の式により算出した。
比抵抗変化率=(R
1000―R
0)/R
0×100(%)
ここで、R
1000は10%繰り返し伸長(1000回)後の比抵抗、R
0は自然状態の比抵抗を示す。
【0084】
表5および表6の結果から明らかなように、実施例1C〜10Cの導電性ペーストは、自然状態の良好な導電性だけでなく伸長時でも高い導電性を維持することができ、繰り返し伸縮後も導電性の低下が小さい。一方、比較例1C〜6Cの導電性ペーストは、実施例1C〜10Cに比べて比抵抗が高いか、又は伸長により破断を招いていており、繰り返し伸縮により導電性が低下する。