特許第6319184号(P6319184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6319184
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20180423BHJP
   G01J 3/50 20060101ALI20180423BHJP
   G01N 21/956 20060101ALN20180423BHJP
【FI】
   G01N21/88 J
   G01J3/50
   !G01N21/956 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-102588(P2015-102588)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-217865(P2016-217865A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】藤原 忠幸
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−203664(JP,A)
【文献】 特開2004−93338(JP,A)
【文献】 特開平11−132962(JP,A)
【文献】 特開2009−74967(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0259861(US,A1)
【文献】 特開2004−144545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01J 3/00− 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜処理されたワークの検査画像を取得する画像取得装置と、
前記検査画像の各ドットについてHUE値を算出して前記HUE値の度数をプロットしたHUE値分布プロファイルを作成し、前記HUE値分布プロファイルの度数ピークの数が1つの場合に前記ワークを良品と判定し、複数の場合に前記ワークを不良と判定する判定装置と
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記判定装置が、前記検査画像から複数の色についてそれぞれ前記HUE値分布プロファイルを作成することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記判定装置が、
前記検査画像を複数の分割領域に分割し、
前記分割領域毎に前記HUE値分布プロファイルを作成し、
すべての前記分割領域において前記HUE値分布プロファイルの度数ピークの数が1つの場合に前記ワークを良品と判定し、
少なくとも1つの前記分割領域において前記HUE値分布プロファイルの度数ピークの数が複数の場合に前記ワークを不良と判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
成膜処理されたワークの検査画像を取得するステップと、
前記検査画像の各ドットについてHUE値を算出して前記HUE値の度数をプロットしたHUE値分布プロファイルを作成するステップと、
前記HUE値分布プロファイルの度数ピークの数が1つの場合に前記ワークを良品と判定し、複数の場合に前記ワークを不良と判定するステップと
を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項5】
前記検査画像から複数の色についてそれぞれ前記HUE値分布プロファイルを作成することを特徴とする請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記検査画像を複数の分割領域に分割するステップを更に含み、
前記分割領域毎に前記HUE値分布プロファイルを作成し、
すべての前記分割領域において前記HUE値分布プロファイルの度数ピークの数が1つの場合に前記ワークを良品と判定し、
少なくとも1つの前記分割領域において前記HUE値分布プロファイルの度数ピークの数が複数の場合に前記ワークを不良と判定する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を用いてワークに形成された膜の良否判定を行う検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルや半導体装置に使用される基板などのワークについて、ワークの画像を用いた外観検査が行われている(例えば、特許文献1参照)。画像を用いた外観検査には、種々の方法が採用されている。
【0003】
例えば、ワークに形成された膜の膜質や膜厚などの均一性について、成膜後のワークの色味によって良否判定が可能である。即ち、ワークのカラー画像から得られる各色の強度から画像のドット毎に色相(HUE)値を算出し、HUE値について度数をプロットしてHUE値分布プロファイルを得る。そして、得られたHUE値分布プロファイルの度数ピークの高さや幅を基準にして良否判定を行う。通常、膜が不均一である場合には、HUE値分布プロファイルの度数ピーク幅が広くなる。このため、度数ピーク幅が所定の幅以下である場合に、正常に成膜されたと判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−7952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークに膜が正常に成膜された場合におけるHUE値分布プロファイルの度数ピークの数は1つであり、複数の度数ピークが有る場合には不良と判定されるべきである。しかし、複数の度数ピークが近接して存在する場合には、複数の度数ピークが重なってHUE値分布プロファイル全体の度数ピーク幅が狭くなる。このとき、度数ピーク幅を用いて良否判定する場合に不良品が良品と判定され、良否判定の精度が低下するおそれがある。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、画像を用いてワークに形成された膜の良否判定を高精度に行う検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、(ア)成膜処理されたワークの検査画像を取得する画像取得装置と、(イ)検査画像の各ドットについてHUE値を算出してHUE値の度数をプロットしたHUE値分布プロファイルを作成し、HUE値分布プロファイルの度数ピークの数が1つの場合にワークを良品と判定し、複数の場合にワークを不良と判定する判定装置とを備える検査装置が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、(ア)成膜処理されたワークの検査画像を取得するステップと、(イ)検査画像の各ドットについてHUE値を算出してHUE値の度数をプロットしたHUE値分布プロファイルを作成するステップと、(ウ)HUE値分布プロファイルの度数ピークの数が1つの場合にワークを良品と判定し、複数の場合にワークを不良と判定するステップとを含む検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像を用いてワークに形成された膜の良否判定を高精度に行う検査装置及び検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る検査装置の構成を示す模式図である。
図2】良品のHUE値分布プロファイルの例を示す模式図である。
図3】不良品のHUE値分布プロファイルの例を示す模式図である。
図4】不良品のHUE値分布プロファイルの他の例を示す模式図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る検査装置の構成を示す模式図である。
図6】検査画像の例を示す模式図である。
図7図6に示した検査画像のHUE値分布プロファイルを示す模式図である。
図8】検査画像を分割した例を示す模式図である。
図9】異常領域を含まない分割領域のHUE値分布プロファイルを示す模式図である。
図10】異常領域を含む分割領域のHUE値分布プロファイルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(第1の実施形態)
図1に示す本発明の第1の実施形態に係る検査装置1は、ワーク100の色味によってワーク100に形成された膜の均一性を検査し、ワーク100の良否判定を行う。検査装置1は、成膜処理されたワーク100に検査光Lを照射する照明装置10と、検査光Lを照射されたワーク100を撮像してワーク100の検査画像を取得する画像取得装置20と、検査画像から作成したHUE値分布プロファイルを用いてワーク100の良否判定を行う判定装置30とを備える。
【0013】
判定装置30のプロファイル作成部31は、画像取得装置20によって取得されたカラーの検査画像から各種光についてHUE値を算出する。例えば、プロファイル作成部31によって、赤色(R)光、緑色(G)光及び青色(B)光の強度からHUE値が検査画像の各ドットについて算出され、色ごとにHUE値の度数をプロットしたHUE値分布プロファイルが作成される。
【0014】
判定装置30の判定部32は、各色のHUE値分布プロファイルについてHUE値の度数ピークを検出する。そして、度数ピークの数が1つであるか複数であるかを判別し、度数ピークの数が1つである場合にはワーク100は良品であると判定し、度数ピークの数が複数である場合にはワーク100は不良品であると判定する。
【0015】
なお、HUE値分布プロファイルのHUE値の総数は、画像取得装置20の分解能に応じて定まる。例えば、画像取得装置20の分解能が2048画素×2048画素である場合、HUE値の総数は2048×2048個である。画像取得装置20には、例えばCCD(電荷結合素子)カメラやCMOS(相補型金属酸化膜半導体)カメラなどを採用可能である。画像取得装置20が撮像した画像データDが検査画像として判定装置30に送信される。
【0016】
また、上記のように検査画像から複数の色についてそれぞれHUE値分布プロファイルを作成するためには、所望の色の検査画像が得られるような検査光Lを出射できる照明装置10を用意する。照明装置10には、例えば赤色(R)光、緑色(G)光及び青色(B)光を同時或いは個々に出力する発光ダイオード(LED)などを採用可能である。ワーク100に形成された膜の分布がHUE値の分布として表われやすいように検査光Lの波長は選択される。
【0017】
色味によってワーク100の良否判定を行う場合、ワーク100に形成された膜が均一である良品では検査画像の全域でHUE値がほぼ一定である。このため、図2に示すように、良品のHUE値分布プロファイルにおけるHUE値の度数ピークの数は1つであり、且つ度数ピークの幅は狭い。一方、ワーク100に形成した膜の膜厚や膜質が不均一である場合には、一般的には図3に示すように、HUE値分布プロファイルにおけるHUE値の度数ピークの幅Wが広くなる。このため、良品のHUE値分布プロファイルに基づいて度数ピークの幅Wの規定値を設定し、度数ピークの幅Wが規定値を超えた場合にワーク100を不良品であると判定することができる。
【0018】
しかしながら、複数の度数ピークが近接して存在し、これらの度数ピークが重なってHUE値分布プロファイル全体の度数ピーク幅が狭い場合がある。この場合に度数ピークの幅Wに基づいて良否判定すると、不良品であるワーク100が良品と誤って判定されるおそれがある。例えば図4に示すようにHUE値分布プロファイルに2つの度数ピークP1、P2が表われる場合であっても、2つの度数ピークを重ね合わせた全体の度数ピークの幅Wが所定の判定値よりも狭い場合に、不良品が良品と誤って判定される。
【0019】
これに対し、検査装置1は、HUE値分布プロファイルにおけるHUE値の度数ピークの数が複数であることから、図4に示すHUE値分布プロファイルを有するワーク100を不良品であると正しく判定する。
【0020】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る検査装置1によれば、精度の高い良否判定が可能である。その結果、不良品のワーク100が後工程に進むことが防止され、無駄な処理の実行を抑制することができる。したがって、検査装置1によって製造コストの削減及び品質向上を実現できる。
【0021】
なお、検査装置1は、HUE値分布プロファイルの度数ピークの数だけでなく、度数ピークの幅や位置、高さなどのパラメータを所定の判定値と比較することにより、総合的にワーク100の良否判定を行うことができる。例えば、度数ピークの数が1つであっても、度数ピークの幅が判定値よりも広い場合、度数ピークの高さが判定値よりも低い場合、度数ピークのHUE値が判定値の範囲にない場合の少なくともいずれかの場合に、判定部32がワーク100を不良品と判定する。
【0022】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る検査装置1は、図5に示すように、判定装置30が、検査画像を複数の分割領域に分割する分割部33を更に備える。その他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。図5に示した検査装置1では、それぞれの分割領域に関してHUE値分布プロファイルが作成され、度数ピークの数が検出される。
【0023】
ワーク100に形成した膜の膜厚や膜質などが異常である異常領域が、ワーク100の一部の領域に局在する場合がある。この場合には、異常領域に起因するHUE値分布プロファイルの度数ピークが、検査画像全体のHUE値分布プロファイルに表われないことがある。
【0024】
例えば、図6に示すようにワーク100の検査画像200の一部にのみ異常領域210が発生した場合を考える。このとき、図7に示すように、異常領域210に起因するHUE値分布プロファイルの度数ピークPfが全体の度数ピークPaに隠れてしまう場合がある。この場合には、ワーク100全体の度数ピークPaのみが検出され、異常領域210に起因する度数ピークPfが検出されない。したがって、ワーク100全体の度数ピークの数によって良否判定した場合に、検出される度数ピークの数は1つであり、ワーク100が良品であると誤って判定される。
【0025】
しかし、第2の実施形態に係る検査装置1によれば、上記のような誤判定を防止できる。以下に、図5に示した検査装置1による検査方法を説明する。
【0026】
まず、分割部33が、画像取得装置20によって取得された検査画像を複数の分割領域に分割する。例えば、図6に示した検査画像200を図8に示すように分割領域201〜分割領域204に分割する。
【0027】
次いで、プロファイル作成部31が、分割領域の各ドットについてHUE値を算出し、HUE値分布プロファイルを分割領域毎に作成する。つまり、分割領域201〜分割領域204のそれぞれについてHUE値分布プロファイルが作成される。
【0028】
そして、判定部32が、分割領域毎のHUE値分布プロファイルについてHUE値の度数ピークを検出し、度数ピークの数が1つであるか複数であるかを判別する。判定部32は、すべての分割領域においてHUE値分布プロファイルの度数ピークの数が1つである場合には、ワーク100は良品であると判定する。一方、少なくとも1つの分割領域においてHUE値分布プロファイルの度数ピークの数が複数である場合には、判定部32はワーク100が不良品であると判定する。なお、判定部32による良否判定はすべての分割領域で同時に行っても良いし、分割領域毎に順に行っても良い。
【0029】
図8に示した例では、異常領域を含まない分割領域201、分割領域202及び分割領域204については、図9に示すようにそれぞれの1つの度数ピークが検出される。しかし、異常領域を含む分割領域203については、図10に示すように複数の度数ピークが検出される。その結果、ワーク100は不良品として判定される。
【0030】
なお、図8に示したように、分割領域201〜分割領域204の外縁部は互いに重なり合うようにすることが好ましい。これにより、分割領域の境界における異常を確実に検出することができる。
【0031】
上記では検査画像を4つの分割領域に分割する場合を例示的に示したが、分割領域の数が4つに限られないことはもちろんである。分割領域の数が多いほど、小さな面積の異常領域や微小な不均一さを検出できる。一方、分割領域の数が多いほど検査時間が増大する。このため、許容可能な異常領域の面積や不均一さと処理時間とに応じて、分割領域の数を適宜設定すればよい。
【0032】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る検査装置1によれば、ワーク100の一部の領域にのみ異常領域が局在する場合においても、高い精度の良否判定が可能である。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0033】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0034】
以上の説明では、判定装置30が検査画像から複数の色についてそれぞれHUE値分布プロファイルを作成する例を示した。しかし、HUE値分布プロファイルを1つの色についてのみ作成してもよい。例えば膜厚や膜質の不均一さが表われ易い色についてのみHUE値分布プロファイルを作成することによって、良否判定に要する時間を短縮できる。
【0035】
上記のように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0036】
1…検査装置
10…照明装置
20…画像取得装置
30…判定装置
31…プロファイル作成部
32…判定部
33…分割部
100…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10