(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。
図1及び
図2では、表示体10の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示体10の主面に垂直な方向をZ方向としている。
【0012】
この表示体10は、
図2に示すように、基材11と、第1光学効果層12と、反射性材料層13と、光透過層15と、第2光学効果層17とを含んでいる。第1光学効果層12と反射性材料層13との界面は、第1界面部IF1と、第2界面部IF2と、第3界面部IF3とを含んでいる。後述するように、第1界面部IF1には複数の凹部又は凸部が設けられており、第2界面部IF2には複数の溝が設けられている。
【0013】
以下では、第1界面部IF1のうち反射性材料層13によって被覆されている部分を第1領域と呼ぶ。また、第2界面部IF2のうち反射性材料層13によって被覆されている部分を第2領域と呼ぶ。そして、第3界面部IF3のうち反射性材料層13によって被覆されている部分を第3領域と呼ぶ。
【0014】
加えて、以下では、表示体10のうち第1領域に対応した部分を、表示部DP1と呼ぶ。また、表示体10のうち第2領域に対応した部分を、表示部DP2と呼ぶ。そして、表示体10のうち第3領域に対応した部分を、表示部DP3と呼ぶ。
【0015】
基材11は、典型的には、樹脂からなるシート又はフィルムである。この樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリルスチレン共重合体、又は塩化ビニルを使用する。基材11は、省略してもよい。
【0016】
第1光学効果層12は、基材11上に形成されている。第1光学効果層12は、典型的には、光透過性を有している。第1光学効果層12の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子線硬化性樹脂(以下、光硬化性樹脂ともいう)などの樹脂を使用する。第1光学効果層12の材料として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いると、原版を用いた転写により、一方の主面に、凹構造及び/又は凸構造を容易に形成することができる。
【0017】
光透過性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルスチレン共重合体、塩化ビニル及びポリメタクリル酸メチルが挙げられる。
【0018】
光透過性を有する熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、エポキシウレタン、シリコーン、エポキシ及びメラミン樹脂が挙げられる。
【0019】
光硬化性樹脂とは、紫外線及び電子線などの光の照射によって硬化する樹脂をいう。光の照射によってラジカル重合する代表的な樹脂としては、分子中にアクリロイル基を有するアクリル樹脂が挙げられ、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系若しくはポリオールアクリレート系のオリゴマー若しくはポリマー、単官能、2官能若しくは多官能重合性(メタ)アクリル系モノマー(例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート,ポリプロピレングリコールジアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリトリトールトリアクリレート又はペンタエリトリトールテトラアクリレート)又はそのオリゴマー若しくはポリマー、又はこれらの混合物が使用される。
【0020】
第1光学効果層12の材料として光硬化性樹脂を用いる場合、この層には、光重合開始剤を更に含有させてもよい。この光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1、及びアシルホスフィンオキサイドが挙げられる。但し、光重合開始剤は、100%反応するわけではなく、未反応のものが性能に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、光重合開始剤の添加量は、光硬化性樹脂に対して、例えば0.1〜7質量%、典型的には0.5〜5質量%の範囲内とし、未硬化部が残らない程度に留めることが好ましい。
【0021】
第1光学効果層12の一方の主面には、界面部IF1乃至IF3が設けられている。これら界面部IF1乃至IF3の構造及び光学特性に関しては、後で詳しく説明する。なお、第2界面部IF2及び第3界面部IF3の一方又は双方は、省略してもよい。
【0022】
反射性材料層13は、界面部IF1の少なくとも一部を被覆している。
図1及び
図2には、一例として、反射性材料層13が界面部IF1乃至IF3の全体を被覆している場合を描いている。
【0023】
反射性材料層13としては、例えば、アルミニウム、銀、錫、クロム、ニッケル、銅、金及びこれらの合金などの金属材料からなる金属又は合金層を使用することができる。この場合、反射性材料層13は、典型的には、真空製膜法を用いて形成する。真空製膜法としては、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法が挙げられる。反射性材料層13の厚みは、例えば、1nm乃至100nmの範囲内とする。
【0024】
反射性材料層13は、表示体10に、視認性がより優れた像を表示させる役割を担っている。また、反射性材料層13を設けることにより、第1光学効果層12の一方の主面に設けられた凹構造及び/又は凸構造の損傷を生じ難くすることも可能となる。
【0025】
光透過層15は、反射性材料層13と第2光学効果層17との間に介在している。光透過層15は、これら層間の密着性を向上させる役割を担っている。
【0026】
光透過層15は、光透過性を有しており、典型的には、透明である。光透過層15の材料としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、ブチラール樹脂及び塩素化プロピレン樹脂が挙げられる。光透過層15は、省略してもよい。
【0027】
第2光学効果層17は、界面部IF1のうち反射性材料層13によって被覆された第1部分の位置で、反射性材料層13を間に挟んで第1光学効果層12と向き合った部分を備えている。
図1及び
図2には、一例として、第2光学効果層17が反射性材料層13を間に挟んで第1光学効果層12の全体と向き合っている場合を描いている。
【0028】
第2光学効果層17は、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んでいる。
【0029】
第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、第2光学効果層17は、例えば、コレステリック構造を有する化合物を含んだ材料、又は、ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック構造を持たせたものを含んだ材料を用いて製造することができる。コレステリック液晶は、例えば、ネマチック液晶に添加するカイラル剤の量及び種類などを変化させることにより、そのヘリカルピッチ及び偏光面の捩じれ方向を変化させることが可能である。また、液晶分子の両末端に、アクリル基などの重合基を導入することもできる。こうすると、各液晶分子を配向させた後に、その配向を固定することが容易となる。
【0030】
第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、第2光学効果層17は、コレステリック液晶からなる層であってもよく、コレステリック液晶顔料を含んだ層であってもよい。
【0031】
第2光学効果層17がコレステリック液晶からなる層である場合、第2光学効果層17における光の散乱を、最小限に抑えることが可能となる。
【0032】
第2光学効果層17がコレステリック液晶顔料を含んだ層である場合、第2光学効果層17は、典型的には、コレステリック液晶の粉末と、透明なバインダとを含んでいる。この場合、例えば、ヘリカルピッチ及び偏光面の捩じれ方向などが互いに異なった複数のコレステリック液晶顔料を用いることにより、第2光学効果層17の光学特性を微調整することが可能となる。
【0033】
第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、第2光学効果層17を照明すると、第2光学効果層17は、円偏光性の選択反射光を射出し得る。なお、以下では、コレステリック液晶の配向軸が表示体10の主面に略平行であると仮定する。
【0034】
コレステリック液晶のヘリカルピッチをPとし、表示体10の主面に平行な軸を基準としたときの入射角をθとし、反射光の波長をλとすると、下式が成立することが知られている。
2P・sinθ=nλ(n=1,2,3,…)。
【0035】
この式によると、例えば、第2光学効果層17に対して垂直に白色光が入射した場合、即ちθ=90゜の場合、ヘリカルピッチPの2倍の波長の正反射光が、第2光学効果層17に対して垂直に射出される。
【0036】
例えば、ヘリカルピッチPが280nmのコレステリック液晶を用いた場合、第2光学効果層17は、緑色の色相に対応した光(波長λ=560nm)を射出し得る。或いは、ヘリカルピッチPが360nmのコレステリック液晶を用いた場合、第2光学効果層17は、赤色の色相に対応した光(波長λ=720nm)を射出し得る。このように、コレステリック液晶のヘリカルピッチPを変化させることにより、コレステリック液晶を含んだ第2光学効果層17の光学特性を変化させることができる。
【0037】
照明光の入射角θを次第に小さくすると、第2光学効果層17から射出される光の波長が次第に短くなり、最終的には、可視光の最短波長よりも短くなる。即ち、こうすると、射出光の色相が赤色から緑色、緑色から青色へと変化し、最終的には、射出光が視認できなくなる。例えば、ヘリカルピッチPが360nmのコレステリック液晶を用いた場合、入射角θを30゜(表示体10の主面の法線方向を基準とすると60゜)とすると、選択反射される光の波長は、360nmとなる。したがって、この場合、観察者は、第2光学効果層17に起因した視覚効果を視認することができないか又は視認することが極めて困難である。
【0038】
コレステリック液晶を含んだ第2光学効果層17は、例えば、以下のようにして形成する。
第1の方法では、まず、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、セロハン及びポリビニルアルコールなどの延伸フィルムを準備する。この延伸フィルムには、ラビング処理を施してもよい。次に、コレステリック液晶の原料を有機溶剤に溶解させた塗工液を準備する。次いで、この塗工液を、上記の延伸フィルム上に塗布する。その後、得られた塗膜を乾燥させる。これにより、延伸フィルム上で、液晶分子を配向させる。そして、この状態で紫外線を照射して、液晶分子の配向を固定する。このようにして、コレステリック液晶形成フィルムを得る。
【0039】
次に、被転写体、例えば第1光学効果層12又は反射性材料層13の一方の主面に、光透過性を有した接着剤を塗布する。そして、その上に、コレステリック液晶形成フィルムを貼り合わせる。次いで、延伸フィルムのみを剥がす。このようにして、被転写体、例えば第1光学効果層12又は反射性材料層13の一方の主面上に、コレステリック液晶を含んだ第2光学効果層17を形成する。
【0040】
第2の方法では、まず、第2光学効果層17を形成すべき主面、例えば第1光学効果層12又は反射性材料層13の一主面上に、光配向インキを塗布する。その後、その塗膜を乾燥させ、偏光性の紫外光を照射して、配向膜を形成する。次いで、コレステリック液晶の原料を有機溶剤に溶解させた塗工液を準備し、この塗工液を、上記の配向膜上に塗布する。その後、得られた塗膜を乾燥させ、液晶分子を配向させる。そして、この状態で紫外線を照射して、液晶分子の配向を固定する。このようにして、コレステリック液晶を含んだ第2光学効果層17を得る。なお、この場合、第2光学効果層17を形成すべき主面と光配向インキからなる配向膜との接着性が不十分である場合には、アンカー層を更に設けてもよい。
【0041】
なお、上では、配向膜を用いて液晶分子を配向させる方法について説明したが、液晶分子を配向させる方法は、これには限られない。例えば、液晶分子は、電場及び/又は磁場の印加又はせん断応力の印加によって配向させてもよい。
【0042】
また、上では、紫外線の照射によって液晶分子の配向を固定する方法について説明したが、液晶分子の配向を固定する方法は、これには限られない。例えば、液晶分子の配向は、液晶分子を含んだ層を急冷させることによって固定してもよい。これらの方法のうち、紫外線の照射によって液晶分子の配向を固定する方法がより好ましい。
【0043】
表示体10の製造コストの観点から、上記の第1及び第2の方法のうち、典型的には、第1の方法を採用する。
【0044】
第2光学効果層17がパール顔料を含んでいる場合、第2光学効果層17は、例えば、雲母などの層状物質の粉末、又は、これら層状物質を還元二酸化チタン及び酸化鉄などの被覆材料で被覆してなる粉末を含んでいる。或いは、この場合、第2光学効果層17は、後述する多層干渉膜を粉砕してなる粉末を含んでいてもよい。第2光学効果層17がパール顔料を含んでいる場合、第2光学効果層17は、典型的には、透明なバインダを更に含んでいる。
【0045】
第2光学効果層17がパール顔料を含んでいる場合、第2光学効果層17は、典型的には、印刷法又は塗布法により形成する。これら印刷法又は塗布法としては、公知の方法を採用することができる。
【0046】
第2光学効果層17が含み得る多層干渉膜は、屈折率が互いに異なった複数の層が積層されてなる。多層干渉膜を構成する各層は、例えば、金属薄膜、セラミクス薄膜又は有機ポリマー薄膜である。多層干渉膜は、例えば、屈折率が互いに異なった層の交互積層体を含んでいる。例えば、セラミクス薄膜又は光透過率を20乃至70%の範囲内とした金属薄膜と、有機ポリマー薄膜とを、所定の厚みで交互に積層させることにより、特定波長の可視光のみを吸収又は反射する多層干渉膜が得られる。
【0047】
以下に、多層干渉膜を構成する各層に採用可能な材料の例を挙げる。なお、以下において、化学式又は化合物名の後ろに記載した括弧内の数値は、各々の屈折率を表している。
【0048】
セラミクス:Sb
2O
3(3.0)、Fe
2O
3(2.7)、TiO
2(2.6)、CdS(2.6)、CeO
2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl
2(2.3)、CdO(2.2)、Sb
2O
3(2.0)、WO
3(2.0)、SiO(2.0)、Si
2O
3(2.5)、In
2O
3(2.0)、PbO(2.6)、Ta
2O
3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO
2(2.0)、MgO(1.6)、Si
2O
2(1.5)、MgF
2(1.4)、CeF
3(1.6)、CaF
2(1.3〜1.4)、AlF
3(1.6)、Al
2O
3(1.6)及びGaO(1.7)。
【0049】
金属:Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si、及びこれらの合金。
【0050】
有機ポリマー:ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)及びポリスチレン(1.60)。
【0051】
第2光学効果層17が多層干渉膜を含んでいる場合、第2光学効果層17は、膜厚、成膜速度、積層数及び光学膜厚などの制御が可能な公知の方法を用いて形成する。このような方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及び化学気相堆積法(CVD法)が挙げられる。なお、光学膜厚とは、屈折率と膜厚との積である。
【0052】
或いは、上記の多層干渉膜は、多層同時押し出しにより形成された多層フィルムであってもよい。この多層フィルムは、屈折率が互いに異なった複数のプラスチック薄膜の交互積層体である。これらプラスチック薄膜の各々は、プラスチック材料を含んでいる。これらプラスチック薄膜の各々は、必要に応じて、助剤を含んでいてもよい。
【0053】
この多層フィルムは、例えば、屈折率が互いに異なったプラスチック薄膜の交互積層体を含んでいる。これらプラスチック薄膜の材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(1.63)、ポリカーボネート(1.59)、ポリスチレン(1.59)、ポリエチレンテレフタレート(1.58)、ナイロン(1.53)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリメチルペンテン(1.46)、及びフッ素系ポリメチルメタクリレート(1.4)が挙げられる。多層フィルムとしては、ポリエチレンナフタレート(1.63)からなる薄膜とポリエチレンテレフタレート(1.58)からなる薄膜との交互積層体を用いることが特に好ましい。
【0054】
第2光学効果層17が多層干渉膜を含んでいる場合、第2光学効果層17がコレステリック液晶又はパール顔料を含んでいる場合と比較して、表示体10のクラック耐性がより高い。また、第2光学効果層17が多層干渉膜を含んでいる場合、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合と比較して、表示体10の耐光性がより高い。加えて、第2光学効果層17が多層干渉膜を含んでいる場合、第2光学効果層17がコレステリック液晶又はパール顔料を含んでいる場合と比較して、表示体10の製造コストがより低い。
【0055】
第2光学効果層17は、観察角度の変化により、その色彩が変化する。第2光学効果層17と第1光学効果層12と反射性材料層13との組合せに起因した光学特性については、後で詳しく説明する。
【0056】
図3は、
図1及び
図2に示す表示体の第2界面部に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。
図4は、
図1及び
図2に示す表示体の第1界面部に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。
【0057】
第2界面部IF2には、複数の溝14aを配置してなるレリーフ型回折格子が設けられている。溝14aの最小中心間距離は、後述する複数の凹部又は凸部14bの最小中心間距離と比較してより大きい。溝14aの最小中心間距離は、例えば、可視光の最短波長以上であり、典型的には、0.5μm乃至2μmの範囲内にある。また、溝14aの深さは、例えば0.05μm乃至1μmの範囲内にあり、典型的には0.05μm乃至0.3μmの範囲内にある。第2界面部IF2は、省略してもよい。
【0058】
なお、用語「回折格子」は、自然光などの照明光を照射することにより回折光を生じる構造を意味し、複数の溝14aを平行且つ等間隔に配置する通常の回折格子に加え、ホログラムに記録された干渉縞も包含することとする。また、溝14a又は溝14aに挟まれた部分を「格子線」と呼ぶこととする。
【0059】
第1界面部IF1には、複数の凹部又は凸部14bが設けられている。これら凹部又は凸部14bは、200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で二次元的に配置されている。凹部又は凸部14bは、典型的には、規則的に配置されている。凹部又は凸部14bの各々は、順テーパ形状を有している。凹部又は凸部14bの深さ又は高さは、通常は溝14aの深さよりも大きく、典型的には0.3μm乃至0.5μmの範囲内にある。凹部又は凸部14bの最小中心間距離に対する深さ又は高さの比(以下、アスペクト比ともいう)は、例えば、0.5乃至1.5の範囲内にある。
【0060】
第3界面部IF3は、平坦面である。第3界面部IF3は、省略してもよい。
【0061】
完成した表示体10から、第1界面部IF1に設けられた微細構造を正確に解析することは困難である。また、例え完成した表示体10から先の微細構造を解析できたとしても、この微細構造を含んだ表示体の偽造又は模造は難しい。回折格子の場合、レーザ光などを利用した光学的複製方法によって干渉縞として構造をコピーされることがあるが、第1界面部IF1の微細構造は、複製不可能である。
【0062】
以下、第1光学効果層12と反射性材料層13と第2光学効果層17との組合せに起因した光学効果について説明する。
【0063】
まず、表示部DP2の光学効果について説明する。
図5は、
図1及び
図2に示す表示体のうち第2界面部に対応した部分が示す光学効果を概略的に示す図である。
図5において、31aは照明光を示し、32aは正反射光又は0次回折光を示し、33aは1次回折光を示している。なお、
図5では、第1光学効果層12及び反射性材料層13の図示を省略している。
【0064】
回折格子を照明すると、回折格子は、入射光である照明光31aの進行方向に対して特定の方向に強い回折光33aを射出する。m次回折光の射出角βは、回折格子の格子線に垂直な面内で光が進行する場合、下記(1)式から算出することができる(m=0,±1,±2,…)。
【0065】
d=mλ/(sinα−sinβ) …(1)
この(1)式において、dは回折格子の格子定数を表し、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光、即ち透過光又は正反射光の射出角を表している。換言すれば、αの絶対値は、照明光の入射角と等しく、入射角とはZ軸に対して対称な関係である(反射型回折格子の場合)。なお、α及びβは、Z軸から時計回りの方向を正方向とする。
【0066】
最も代表的な回折光は、1次回折光33aである。(1)式から明らかなように、1次回折光33aの射出角βは、波長λに応じて変化する。即ち、回折格子は、分光器としての機能を有している。したがって、照明光が白色光である場合、回折格子の格子線に垂直な面内で観察角度を変化させると、観察者が知覚する色が変化する。
【0067】
また、ある観察条件のもとで観察者が知覚する色は、格子定数dに応じて変化する。
一例として、回折格子は、その法線方向に1次回折光33aを射出するとする。即ち、1次回折光33aの射出角βは、0°であるとする。そして、観察者は、この1次回折光33aを知覚するとする。このときの0次回折光32aの射出角をα
Nとすると、(1)式は、下記(2)式へと簡略化することができる。
【0068】
d=λ/sinα
N …(2)
(2)式から明らかなように、観察者に特定の色を知覚させるには、その色に対応した波長λと照明光31aの入射角|α
N|と格子定数dとを、それらが(2)式に示す関係を満足するように設定すればよい。例えば、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分を含んだ白色光を照明光31aとして使用し、照明光31aの入射角|α
N|を45°とする。そして、空間周波数(格子定数の逆数)が1000本/mm乃至1800本/mmの範囲内で分布している回折格子を使用するとする。この場合、回折格子をその法線方向から観察すると、空間周波数が約1600本/mmの部分は青く見え、空間周波数が約1100本/mmの部分は赤く見える。
【0069】
なお、回折格子は、空間周波数が小さいほうが形成し易い。そのため、通常の表示体では、回折格子の大多数は、空間周波数が500本/mm乃至1600本/mmの回折格子である。
【0070】
このように、或る観察条件のもとで観察者が知覚する色は、回折格子の格子定数d(又は空間周波数)で制御することができる。そして、先の観察条件から観察角度を変化させると、観察者が知覚する色は変化する。
【0071】
上記の説明では、光が格子線に垂直な面内で進行することを仮定している。この状態から表示体10の主面の法線を回転軸として格子線の方位を変えると、基準とする状態に対する格子線の角度(以下、方位角度ともいう)に応じて、一定の観察方向に対する格子定数dの実効値が変化する。その結果、観察者が知覚する色が変化する。逆に言えば、格子線の方位のみが異なる複数の回折格子を配置した場合、それら回折格子に異なる色を表示させることができる。また、方位角度が十分に大きくなると、一定の観察方向からは回折光が認識できなくなり、回折格子が無い場合と同様に見える。これを利用して、格子線の方位が大きく異なる2種類以上の回折格子を用いることにより、各々の格子線の方位に応じた方向から観察した際に、それぞれ独立した像を表示させることもできる。
【0072】
また、回折格子を構成している溝14aの深さを大きくすると、照明光31aの波長などにも依存して、回折効率が変化する。そして、画素に対する回折格子の面積比を大きくすると、回折光の強度はより大きくなる。
【0073】
したがって、第2界面部IF2が複数の画素を配列してなる場合、それら画素の一部と他の一部とで、溝14aの空間周波数及び/又は方位角度を異ならしめると、それら画素に異なる色を表示させることができ、また、観察可能な条件を設定することができる。そして、第2界面部IF2を構成している画素の一部と他の一部とで、溝14aの深さ及び/又は画素に対する回折格子の面積比の少なくとも1つを異ならしめると、それら画素の輝度を異ならしめることができる。それゆえ、これらを利用することにより、第2界面部IF2に、フルカラー像及び立体像などの像を表示させることができる。
【0074】
なお、ここで言う「像」は、色及び/又は輝度の空間的分布として観察できるものを意味する。「像」は、写真、図形、絵、文字及び記号などを包含している。
【0075】
第2光学効果層17のうち第2界面部IF2に対応した部分は、観察角度に応じて、異なった波長の光を射出する。しかしながら、第2界面部IF2のうち反射性材料層13で被覆されている部分から射出される回折光の強度は、第2光学効果層17の対応する部分が射出する光と比較して、その強度が遥かに高い。したがって、表示部DP2は、通常、回折格子が設けられた領域として観察される。
【0076】
次に、表示部DP1の光学効果について説明する。
図6は、
図1及び
図2に示す表示体のうち第1界面部に対応した部分が示す光学効果を概略的に示す図である。
図6において、31b及び31cは照明光を示し、32b及び32cは正反射光又は0次回折光を示し、33bは1次回折光を示している。なお、
図6では、第1光学効果層12及び反射性材料層13の図示を省略している。
【0077】
界面部IF1と界面部IF2とを併存させる場合、第1界面部IF1に設けられた複数の凹部又は凸部14bは、溝14aの最小中心間距離と比較してより小さい中心間距離で配置されている。そのため、凹部又は凸部14bが規則的に配列し、第1界面部IF1が回折光33bを射出したとしても、観察者は、回折光33bと、これらと同じ波長を有する第2界面部IF2からの回折光33aとを同時に知覚することはない。特に、溝14aの最小中心間距離、即ち回折格子の格子定数と、凹部又は凸部14bの中心間距離との差が十分に大きければ、波長の如何に拘らず、観察者は、第2界面部IF2からの回折光33aと第1界面部IF1からの回折光33bとを同時に知覚できない。但し、(1)式によって分かるように、高次の回折光(|m|≧2)が発生する場合、第2界面部IF2からの高次の回折光33aを視認可能な観察角度範囲で、第1界面部IF1からの回折光33bを視認できるようにすることも可能である。
【0078】
また、各凹部又は凸部14bは、順テーパ形状を有している。そのため、どの角度から観察しても、第1界面部IF1の正反射光の反射率は小さい。
【0079】
加えて、第1界面部IF1からの1次回折光33bの射出角が−90°より大きければ、表示体10の法線方向と観察方向とが為す角度を適宜設定することにより、観察者は、第1界面部IF1からの1次回折光33bを知覚することができる。それゆえ、この場合、表示部DP1が、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んだ層のみからなる部分とは異なることを、目視により確認することができる。
【0080】
上述した通り、凹部又は凸部14bの最小中心間距離は、200nm乃至500nmの範囲内にある。この最小中心間距離を小さくすると、界面部IF1から回折光を射出させることが困難となる場合がある。この最小中心間距離を大きくすると、第1界面部IF1から比較的小さな射出角度で射出される回折光の強度が、比較的大きくなる場合がある。
【0081】
なお、凹部又は凸部14bの最小中心間距離は、例えば、200nm乃至350nmの範囲内としてもよい。この場合、上記(1)式から明らかなように、第1界面部IF1は、青色に対応した波長を有する回折光が観察されやすい。したがって、例えば、第2界面部IF2が赤色に対応した波長を有する回折光を射出する場合には、両者の対照により、表示体10が真正品であることの確認がより容易になる。
【0082】
或いは、凹部又は凸部14bの最小中心間距離は、300nm乃至500nmの範囲内としてもよい。こうすると、凹部又は凸部14bが射出する1次回折光33bを観察できる角度範囲が比較的広くなる。即ち、こうすると、凹部又は凸部14bが設けられた真正品と、凹部又は凸部14bが設けられていない偽造品との判別を、より容易に行うことが可能となる。
【0083】
上で説明した通り、第1界面部IF1から射出される正反射光の反射率は小さい。また、第1界面部IF1から比較的小さな射出角度で射出される回折光の強度は、ゼロであるか又は極めて小さい。したがって、第1界面部IF1から射出される正反射光又は回折光が、第2光学効果層17のうち第1界面部IF1に対応した部分が射出する光に対して与える影響は、比較的小さい。それゆえ、表示部DP1では、第2光学効果層17に起因した光学効果を、観察者に極めて明瞭に視認させることができる。
【0084】
なお、第1界面部IF1は、凹部又は凸部14bの形状、深さ又は高さ、中心間距離、及び配置パターンの少なくとも1つが互いに異なった複数の領域を含んでいてもよい。この場合、これら複数の領域に対応した各部分で、互いに異なった光学効果を発揮させることができる。
【0085】
また、第1界面部IF1が複数の画素を配列してなる場合、それら画素の一部と他の一部とで、凹部又は凸部14bの形状、深さ又は高さ、中心間距離、及び配置パターンの少なくとも1つを異ならしめると、それら画素の反射率などを異ならしめることができる。それゆえ、これを利用することにより、第1界面部IF1で階調表示を行うことができる。
【0086】
また、この表示体10において、第2界面部IF2と第1界面部IF1とは同一面内にある。それゆえ、例えば、溝14aと凹部又は凸部14bとに対応した凹構造及び/又は凸構造を1枚の原版に形成し、この凹構造及び/又は凸構造を第1光学効果層12に転写することにより、溝14aと凹部又は凸部14bとを同時に形成することができる。したがって、原版に凹構造及び/又は凸構造を高精度に形成しておけば、第2界面部IF2と第1界面部IF1との位置ずれの問題を生じ得ない。また、微細な凹凸構造及び高精度の特徴は、高精細な像表示を可能とし、他の方法によって作られたものとの区別を容易にする。そして、真正品が極めて高精度に安定して製造できるという事実は、偽造品や模造品との区別を一層容易にする。
【0087】
次いで、表示部DP3の光学効果について説明する。
第3界面部IF3は、上述した通り、平坦面である。したがって、第3界面部IF3のうち反射性材料層13によって被覆された部分は、照明光を鏡面反射させる。この反射光の強度は、第2光学効果層17の対応する部分が射出する光と比較して、その強度が遥かに高い。したがって、表示部DP3は、通常、鏡面として観察される。
【0088】
図1及び
図2に示す表示体10は、照明光の入射角及び観察者の観察角度に応じて、極めて特殊な視覚効果を呈する。
【0089】
以下では、表示体10の法線方向を基準として、特定の照明光に対する正反射光の射出方向を含む角度範囲を「正の角度範囲」と呼び、上記特定の照明光の入射方向を含む角度範囲を「負の角度範囲」と呼ぶ。また、照明光は、白色光であるとする。
【0090】
まず、負の角度範囲のみから照明光を入射させ且つ正の角度範囲から表示体10を観察する場合を考える。この場合、上述した通り、表示部DP1は、第2光学効果層17に起因した光学効果を極めて明瞭に示す。即ち、表示部DP1は、観察角度に応じて異なった色彩を示す領域として視認される。また、この場合、表示部DP2は、通常、回折格子が設けられた領域として観察される。即ち、表示部DP2では、観察角度に応じて異なった波長の回折光が視認される。そして、この場合、表示部DP3は、通常、鏡面として観察される。即ち、表示部DP3では、正反射光が観察可能な角度から観察した場合に、照明光に対応した波長の光が視認される。このように、正の角度範囲から表示体10を観察した場合、表示体10は、観察角度に応じて異なった色彩を示す領域と、回折格子が設けられた領域と、鏡面が設けられた領域とを含んだものとして視認される。
【0091】
次に、負の角度範囲のみから照明光を入射させ且つ負の角度範囲から表示体10を観察する場合を考える。この場合、照明光の入射角度及び観察角度が深いとき、即ち入射角度及び観察角度の絶対値が大きいときには、観察者は、表示部DP1からの回折光を視認することができる。したがって、例えば、照明光の光源の位置と観察者の位置とを固定して、これらと表示体10とが為す角度を変化させていくと、表示部DP1において、視覚効果の不連続的な変化が生じる。具体的には、入射角度及び観察角度を深くしていくと、ある角度において、表示部DP1からの回折光が観察可能となる。
【0092】
続いて、蛍光灯が複数の箇所に設けられた室内などを想定して、照明光の光源が2つ以上存在する場合を考える。具体的には、その一例として、負の角度範囲から第1照明光を入射させる第1光源と、正の角度範囲から第2照明光を入射させる第2光源とが存在する場合を考える。この場合、例えば、第1及び第2光源の位置と観察者の位置とを固定して、これらと表示体10とが為す角度を変化させていくと、表示部DP1において、視覚効果の不連続的な変化が生じる。具体的には、観察角度が浅い場合には、表示部DP1は、第2光学効果層17に起因した連続的な色彩の変化を生じる。そして、入射角度及び観察角度を深くしていくと、ある角度を境として、表示部DP1からの回折光が観察可能となる。
【0093】
図1及び
図2に示す表示体10では、第1界面部IF1と第2界面部IF2とは、互いに隣接している。反射性材料層13は、第1界面部IF1と第2界面部IF2との境界を横切るようにして、これらの双方を被覆している。また、第2光学効果層17は、第1光学効果層12の界面部IF1及びIF2を含んだ主面への正射影が、第1界面部IF1と第2界面部IF2との境界を横切るようにして設けられている。
【0094】
第1界面部IF1と第2界面部IF2との境界は、電子線描画及びナノインプリントなどの手法により、高い精度で定めることができる。したがって、このような構成を採用すると、表示部DP1と表示部DP2との境界を、高い精度で定めることができる。したがって、こうすると、表示体10に、第1界面部IF1と第2界面部IF2との境界に対応した高精細なパターンを表示させることが可能となる。
【0095】
図1及び
図2に示す表示体10では、第1界面部IF1と第3界面部IF3とは、互いに隣接している。反射性材料層13は、第1界面部IF1と第3界面部IF3との境界を横切るようにして、これらの双方を被覆している。また、第2光学効果層17は、第1光学効果層12の界面部IF1及びIF3を含んだ主面への正射影が、第1界面部IF1と第3界面部IF3との境界を横切るようにして設けられている。
【0096】
第1界面部IF1と第3界面部IF3との境界は、電子線描画及びナノインプリントなどの手法により、高い精度で定めることができる。したがって、このような構成を採用すると、表示部DP1と表示部DP3との境界を、高い精度で定めることができる。したがって、こうすると、表示体10に、第1界面部IF1と第3界面部IF3との境界に対応した高精細なパターンを表示させることが可能となる。
【0097】
このように、表示体10は、極めて特殊な視覚効果を有している。そして、偽造を試みようとする者がこのような視覚効果を再現することは、不可能であるか又は極めて困難である。即ち、この表示体10は、高い偽造防止効果を有している。
【0098】
なお、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、第2光学効果層17は、円偏光性の選択反射光を射出し得る。また、本発明者らは、第1界面部IF1から射出される回折光が直線偏光性を有していることを見出している。したがって、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合には、これら偏光性の相違に基づいて、射出光の変化を追跡することも可能となる。即ち、この場合、表示体10は、コバート用の偽造防止媒体としても有用である。
【0099】
真正品であるか否かが不明である物品を、真正品と非真正品との間で判別する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、第1の操作として、入射角の絶対値が60゜未満である照明光で、表示体10を照明する。このとき、絶対値が60゜未満である角度範囲において、第2光学効果層17に起因した光学効果が観察されることを確認する。例えば、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合、この角度範囲に、第2光学効果層17からの選択反射光が射出されていることを確認する。
【0100】
次に、第2の操作として、入射角の絶対値が60゜以上且つ90゜未満である照明光で、表示体10を照明する。このとき、絶対値が60゜以上且つ90゜未満であり且つ上記の入射角と正負が等しい角度範囲において、第1界面部IF1に起因した光学効果が観察されることを確認する。即ち、この角度範囲において、第1界面部IF1からの回折光が観察されることを確認する。
【0101】
第1及び第2の操作の両方において、上記の光学効果が観察された場合、当該物品は真正品であると判断する。他方、第1及び第2の操作の一方又は両方において、上記の各光学効果が観察されなかった場合、当該物品は、非真正品であると判断する。
【0102】
なお、第2光学効果層17がコレステリック液晶を含んでいる場合には、以下のようにして、真正品と非真正品との間での判別を行ってもよい。即ち、第1の操作において、絶対値が60゜未満である角度範囲に円偏光が射出され、且つ、第2の操作において、絶対値が60゜以上且つ90゜未満であり且つ上記の入射角と正負が等しい角度範囲に直線偏光が射出された場合に、当該物品を真正品であると判断してもよい。この判断は、例えば、円偏光板及び直線偏光板などの偏光板を介して表示体10を観察することにより行うことができる。
【0103】
図7乃至
図10は、第1界面部に採用可能な凹部又は凸部の配置パターンの例を概略的に示す平面図である。
【0104】
図7では、凹部又は凸部14bの配列は、正方格子を形成している。この構造は、電子線描画装置やステッパなどの微細加工装置を用いた製造が比較的容易であり、凹部又は凸部14bの中心間距離などの高精度な制御も比較的容易である。
【0105】
図7では、凹部又は凸部14bの中心間距離をX方向とY方向とで等しくしているが、凹部又は凸部14bの中心間距離は、X方向とY方向とで異ならしめてもよい。即ち、凹部又は凸部14bの配列は、矩形格子を形成していてもよい。
【0106】
凹部又は凸部14bの中心間距離をX方向及びY方向の双方で比較的長く設定すると、Y方向に垂直な方向から表示体10を照明した場合とX方向に垂直な方向から表示体10を照明した場合との双方において第1界面部IF1から回折光を射出させることができ、且つ、前者と後者とで回折光の波長を異ならしめることができる。凹部又は凸部14bの中心間距離を、X方向及びY方向の一方で比較的長く設定し、他方で比較的短く設定すると、Y方向及びX方向の一方に垂直な方向から表示体10を照明した場合には第1界面部IF1から回折光を射出させ、Y方向及びX方向の他方に垂直な方向から表示体10を照明した場合には第1界面部IF1からの回折光の射出を防止できる。
【0107】
図8では、凹部又は凸部14bの配列は、三角格子を形成している。この構造を採用した場合、凹部又は凸部14bの中心間距離を適宜設定すれば、例えば、A方向から表示体10を照明したときには第1界面部IF1からの回折光の射出を防止し、B方向及びC方向から表示体10を照明したときには第1界面部IF1から回折光を射出させることができる。即ち、より複雑な視覚効果が得られる。
【0108】
図9では、凹部又は凸部14bは、不規則に配置されている。凹部又は凸部14bを不規則に配置した場合、第1界面部IF1からの回折光の射出が生じ難くなる。なお、この構造は、例えば、光の干渉を利用してスペックルの強度分布を記録することにより形成することができる。
【0109】
図10では、凹部又は凸部14bは、不規則に配置されているのに加え、大きさが不均一である。この構造を採用した場合、
図9の構造を採用した場合と比較して、第1界面部IF1からの回折光の射出がさらに生じ難くなる。
【0110】
図7乃至
図10に例示したように、凹部又は凸部14bの配置パターンには、様々な変形が可能である。そして、各配置パターンは、各々に固有の視覚効果を有している。それゆえ、凹部又は凸部14bの配置パターンが異なる複数の画素で第1界面部IF1を構成すると、より複雑な視覚効果を得ることができる。
【0111】
図11乃至
図13は、
図1及び
図2に示す表示体の第1界面部に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図である。
【0112】
図11乃至
図13に示す構造は、
図4に示す構造の変形例である。
図11乃至
図13に示す凹部又は凸部14bは何れも、順テーパ形状を有している。
【0113】
図4に示す構造では、凹部又は凸部14bは、円錐形状を有している。凹部又は凸部14bを円錐形状とする場合、凹部又は凸部14bは先端が尖っていてもよく、切頭円錐形状を有していてもよい。但し、凹部又は凸部14bを先端が尖った円錐形状とした場合、凹部又は凸部14bは第1界面部IF1に平行な面を有していないので、切頭円錐形状とした場合と比較して、第1界面部IF1の正反射光の反射率をより小さくすることができる。
【0114】
図11に示す構造では、凹部又は凸部14bは、四角錐形状を有している。凹部又は凸部14bは、三角錐形状などの四角錐形状以外の角錐形状を有していてもよい。この場合、特定条件で発生する回折光の強度を高くすることができ、観察をより容易にする。また、凹部又は凸部14bを角錐形状とする場合、凹部又は凸部14bは先端が尖っていてもよく、切頭角錐形状を有していてもよい。但し、凹部又は凸部14bを先端が尖った角錐形状とした場合、凹部又は凸部14bは第1界面部IF1に平行な面を有していないので、切頭角錐形状とした場合と比較して、第1界面部IF1の正反射光の反射率をより小さくすることができる。
【0115】
図12に示す構造では、凹部又は凸部14bは、半紡錘形状を有している。即ち、凹部又は凸部14bは、先端が丸みを帯びた円錐形状を有している。
図12に示す構造を採用した場合、
図4又は
図11に示す構造を採用した場合と比較して、原版への凸構造及び/又は凹構造の形成や原版から第1光学効果層12への凸構造及び/又は凹構造の転写がより容易である。
【0116】
図13に示す構造では、凹部又は凸部14bは、底面積が異なる複数の四角柱をその底面積が大きなものから順に積み重ねた構造を有している。なお、四角柱の代わりに、円柱や三角柱などの四角柱以外の柱状体を積み重ねてもよい。
【0117】
図13に示す構造を採用した場合、
図4、
図11又は
図12に示す構造を採用した場合ほど、第1界面部IF1の正反射光の反射率を小さくすることはできない。但し、
図13に示す構造を採用した場合、
図12に示す構造を採用した場合と同様、
図4又は
図11に示す構造を採用した場合と比較して原版への凸構造及び/又は凹構造の形成や原版から第1光学効果層12への凸構造及び/又は凹構造の転写がより容易である。
【0118】
このように、凹部又は凸部14bの形状は、第1界面部IF1の反射率に影響を及ぼす。それゆえ、凹部又は凸部14bの形状が異なる複数の画素で第1界面部IF1を構成すると、第1界面部IF1で階調表示を行うことができる。
【0119】
凹部又は凸部14bの最小中心間距離は、上述した通り、200nm乃至500nmの範囲内にある。この最小中心間距離を調整することにより、表示体10の視覚効果を調整することが可能となる。例えば、凹部又は凸部14bの最小中心間距離を400nm以下とすると、上記(2)式から明らかなように、可視光波長である400nm乃至700nmの範囲内の全ての波長について、照明光の入射角に拘らず、第1界面部IF1が法線方向へ回折光を射出するのを防ぐことができる。それゆえ、こうすると、表示部DP1における第2光学効果層17に起因した光学効果が、より明瞭に視認できるようになる。また、凹部又は凸部14bの中心間距離が異なる複数の画素で第1界面部IF1を構成すると、第1界面部IF1で階調表示を行うことができる。
【0120】
第1界面部IF1は、凹部又は凸部14bの深さ又は高さを大きくすると、例えば、それらの最小中心間距離の1/2以上とすると、第1界面部IF1から射出される反射光の強度を低くすることができる。それゆえ、こうすると、表示部DP1における第2光学効果層17に起因した光学効果が、より明瞭に視認できるようになる。また、凹部又は凸部14bの深さ又は高さが異なる複数の画素で第1界面部IF1を構成すると、第1界面部IF1で階調表示を行うことができる。
【0121】
第1界面部IF1は、凹部又は凸部14bの第1界面部IF1に平行な一方向についての寸法とこの方向についての凹部又は凸部14bの中心間距離との比を1:1に近づけると、第1界面部IF1から射出される反射光の強度がより低くなる。そして、凹部又は凸部14bの第1界面部IF1に平行な一方向についての寸法とこの方向についての間隔とを等しくした場合、第1界面部IF1から射出される反射光の強度は、最も低くなる。それゆえ、こうすると、表示部DP1における第2光学効果層17に起因した光学効果が、更に明瞭に視認できるようになる。また、先の比が異なる複数の画素で第1界面部IF1を構成すると、第1界面部IF1で階調表示を行うことができる。
【0122】
図1及び
図2に示す表示体10には、様々な変形が可能である。
図14は、一変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。
図14に示す表示体10は、反射性材料層13が第1界面部IF1の一部、第2界面部IF2の一部、及び第3界面部IF3の一部のみを被覆していることを除いては、
図1及び
図2に示す表示体と同様の構成を有している。
【0123】
以下では、第1界面部IF1のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分を第4領域と呼ぶ。また、第2界面部IF2のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分を第5領域と呼ぶ。そして、第3界面部IF3のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分を第6領域と呼ぶ。
【0124】
加えて、以下では、表示体10のうち第4領域に対応した部分を、表示部DP1’と呼ぶ。また、表示体10のうち第5領域に対応した部分を、表示部DP2’と呼ぶ。そして、表示体10のうち第6領域に対応した部分を、表示部DP3’と呼ぶ。
【0125】
図14に示す表示体10では、反射性材料層13は、第1界面部IF1の一部のみを被覆している。そして、第2光学効果層17は、第1界面部IF1のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分の位置で、第1光学効果層12と向き合った部分を備えている。
【0126】
表示部DP1’では、第1界面部IF1は、反射性材料層13によって被覆されていない。したがって、表示部DP1’は、第1界面部IF1が存在しない場合とほぼ同様の視覚効果を呈する。即ち、表示部DP1’が射出する回折光の強度は、ゼロであるか又は極めて小さい。また、表示部DP1’では、表示部DP1と比較して、第2光学効果層17に起因した視覚効果がやや不明瞭となる。そのため、上記の構成を採用すると、表示部DP1と表示部DP1’との間で、明るさ及び色彩などを互いに異ならせることができる。
【0127】
図14に示す表示体10では、反射性材料層13は、第2界面部IF2の一部のみを被覆している。そして、第2光学効果層17は、第2界面部IF2のうち反射性材料層13によって被覆されている部分と、第2界面部IF2のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分との双方の位置で、第1光学効果層12と向き合った部分を備えている。
【0128】
表示部DP2’では、第2界面部IF2は、反射性材料層13によって被覆されていない。したがって、表示部DP2’は、第1界面部IF2が存在しない場合とほぼ同様の視覚効果を呈する。即ち、第2界面部IF2のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分から射出される回折光の強度は、ゼロであるか又は極めて小さい。それゆえ、この回折光の強度は、第2光学効果層17の対応する部分が射出する光と比較して、その強度が遥かに低い。したがって、表示部DP2’は、通常、第2光学効果層17に起因した視覚効果を呈する領域として観察される。そのため、上記の構成を採用すると、表示部DP2と表示部DP2’との間で、明るさ及び色彩などを互いに異ならせることができる。
【0129】
図14に示す表示体10では、反射性材料層13は、第3界面部IF3の一部のみを被覆している。そして、第2光学効果層17は、第3界面部IF3のうち反射性材料層13によって被覆されている部分と、第3界面部IF3のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分との双方の位置で、第1光学効果層12と向き合った部分を備えている。
【0130】
表示部DP3’では、第3界面部IF3は、反射性材料層13によって被覆されていない。それゆえ、第3界面部IF3のうち反射性材料層13で被覆されていない部分から射出される反射光の強度は、ゼロであるか又は極めて小さい。即ち、この反射光の強度は、第2光学効果層17の対応する部分が射出する光と比較して、その強度が遥かに低い。したがって、表示部DP3’は、通常、第2光学効果層17に起因した視覚効果を呈する領域として観察される。そのため、上記の構成を採用すると、表示部DP3と表示部DP3’との間で、明るさ及び色彩などを互いに異ならせることができる。
【0131】
このように、界面部IF1乃至IF3の少なくとも1つについて、反射性材料層13によって被覆されている部分と、反射性材料層13によって被覆されていない部分とを共存させると、更に複雑な光学効果を達成することができる。即ち、こうすると、更に高い偽造防止効果を達成できる。
【0132】
図14に示す表示体10では、反射性材料層13は、第1光学効果層12の主面の一部のみを被覆している。このような反射性材料層13は、例えば、以下のようにして形成する。
【0133】
第1の方法では、まず、第1光学効果層12の一方の主面上に、水洗インキをネガパターンで印刷する。その上から、蒸着法及びスパッタリング法などを用いて、反射性材料からなる層を、全面に形成する。次いで、上記の水洗インキを水を用いて洗い流す。このようにして、反射性材料からなる層のうち水洗インキのパターン上に位置していた部分を除去する。このようにして、第1光学効果層12の一方の主面の一部のみを被覆した反射性材料層13を得る。
【0134】
第2の方法では、まず、第1光学効果層12の一方の主面の全体に、反射性材料からなる層を形成する。その後、この層の上に、マスク剤をポジパターンで印刷する。次いで、腐食剤を用いて、反射性材料からなる層のうちマスク剤によって被覆されていない部分を除去する。続いて、必要に応じて、マスク剤を除去する。このようにして、第1光学効果層12の一方の主面の一部のみを被覆した反射性材料層13を得る。
【0135】
第3の方法では、まず、第1光学効果層12の一方の主面の全体に、反射性材料からなる層を形成する。その後、反射性材料からなる層のうち除去したい部分に対して、高い強度のレーザビームを照射する。これにより、反射性材料からなる層の一部を選択的に破壊する。このようにして、第1光学効果層12の一方の主面の一部のみを被覆した反射性材料層13を得る。
【0136】
図15は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。
図15に示す表示体10は、第1光学効果層12が光透過性を有しており、光透過性基材21と、光吸収層23と、接着層25とを更に備えていることを除いては、
図14に示す表示体と同様の構成を有している。
【0137】
光透過性基材21としては、例えば、先に基材11について説明したもののうち、光透過性を有しているものを使用する。光透過性基材21は、典型的には、透明である。光透過性基材21は、省略してもよい。
【0138】
光吸収層23は、第1光学効果層12を間に挟んで第2光学効果層17と向き合っている。光吸収層23としては、例えば、黒色のインクからなる層を用いる。なお、ここで、「黒色」は、例えば、表示体10に法線方向から光を照射し、正反射光の強度を測定したときに、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が10%以下であることを意味する。
【0139】
或いは、光吸収層23として、磁気層を採用してもよい。即ち、光吸収層23は、磁性体を含んでいてもよい。この磁性体は、典型的には、粉末の形態で光吸収層23に含まれている。磁性体の粉末としては、例えば、酸化鉄粉末、酸化クロム粉末、コバルト粉末及びフェライト粉末並びにこれらの混合物が挙げられる。また、この場合、光吸収層23は、カーボンブラックなどの黒色顔料を更に含んでいてもよい。光吸収層23が含み得る磁性体の粉末としては、酸化鉄の粉末が好ましく、マグネタイトの粉末が特に好ましい。また、光吸収層23が磁性体の粉末を含んでいる場合、光吸収層23は、典型的には、透明なバインダを更に含んでいる。
【0140】
光吸収層23として磁気層を採用すると、表示体10の光学特性に基づいた真偽判定に加えて、磁気特性に基づいた真偽判定を行うことも可能となる。即ち、こうすると、表示体10の偽造防止効果を更に向上させることが可能となる。
【0141】
なお、
図15では、光吸収層23が、第1光学効果層12を間に挟んで第2光学効果層17と向き合っている場合を描いているが、光吸収層23の位置は、これには限られない。例えば、光吸収層23は、第1光学効果層12と第2光学効果層17との間に介在していてもよい。光吸収層23が第1光学効果層12と第2光学効果層17との間に介在している場合、第1光学効果層12は、光透過性を有していなくてもよい。
【0142】
また、
図15では、光吸収層23が第1光学効果層12を間に挟んで第2光学効果層17の全体と向き合っている場合を描いているが、光吸収層23の構成は、これには限られない。即ち、光吸収層23は、第1界面部IF1のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分の位置で、第1光学効果層12を間に挟んで第2光学効果層17と向き合っていてもよい。或いは、光吸収層23は、第1界面部IF1のうち反射性材料層13によって被覆されていない部分の位置で、第1光学効果層12と第2光学効果層17との間に介在していてもよい。
【0143】
接着層25は、光吸収層23と基材11との間に介在しており、これらを互いに接着させている。接着層25の材料としては、公知の材料を使用することができる。接着層25は、省略してもよい。
【0144】
図15に示す表示体10の表示部DP1’は、光吸収層23を含んでいる。この光吸収層23は、第2光学効果層17を透過した光を吸収する。それゆえ、この場合、表示部DP1’では、第2光学効果層17に起因した視覚効果を、明瞭に視認させることができる。
【0145】
図15に示す表示体10の表示部DP2’及びDP3’は、光吸収層23を含んでいる。この光吸収層23は、第2光学効果層17を透過した光を吸収する。それゆえ、表示部DP2’及びDP3’では、第2光学効果層17に起因した視覚効果を明瞭に視認させることが可能となる。
【0146】
したがって、照明光の入射角度及び観察角度が浅いときには、表示部DP1と表示部DP1’と表示部DP2’と表示部DP3’とは、ほぼ同一の光学効果を示す領域として観察される。しかしながら、照明光の入射角度及び観察角度が深いときには、
図14に示す表示体10について説明したように、表示部DP1では、比較的高い強度の回折光が観察される。他方、この場合、表示部DP1’乃至DP3’は、このような回折光を射出しない。それゆえ、この場合、表示部DP1と表示部DP1’乃至DP3’との組合せにより、潜像を形成することが可能となる。
【0147】
以上において説明した表示体10は、例えば、シールラベルなどの粘着ラベル、ストライプ転写箔及びスポット転写箔などの転写箔、又はスレッドの一部として使用してもよい。或いは、この表示体10は、ティアテープの一部として使用してもよい。
【0148】
図16は、本発明の一態様に係る粘着ラベルを概略的に示す断面図である。
図16に示す粘着ラベル100は、
図1及び
図2に示す表示体10と、表示体10上に設けられた粘着層30とを備えている。
【0149】
粘着層30は、基材11の主面うち、第2光学効果層17とは反対側の主面上に設けられている。粘着層30は、第1光学効果層12及び反射性材料層13を間に挟んで第2光学効果層17と向き合っている。粘着層30の材料としては、例えば、感圧接着剤を使用する。粘着層30は、例えば、この接着剤と溶媒との混合物を、グラビアコート、ロールコート、スクリーンコート及びブレードコートなどの方法により塗布することによって形成する。なお、粘着層30の厚みは、例えば1μm乃至10μmの範囲内とする。
【0150】
この粘着ラベル100は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、又は、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。
【0151】
なお、表示体10と粘着層30との間に脆性層を更に設けることにより、粘着ラベル100に貼替え防止機能を付与することもできる。これにより、更に高い偽造防止効果を達成できる。
【0152】
図17は、本発明の一態様に係る転写箔を概略的に示す断面図である。
図17に示す転写箔200は、
図1及び
図2に示す表示体10と、表示体10を剥離可能に支持した支持体層45とを備えている。
図17には、一例として、第2光学効果層17と支持体層45との間に剥離層43が設けられており、基材11の主面のうち第2光学効果層17とは反対側の主面上に接着層41が設けられている場合を描いている。
【0153】
支持体層45は、例えば、樹脂からなるフィルム又はシートである。支持体層45の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は塩化ビニル樹脂を使用する。
【0154】
剥離層43は、転写箔200を被転写体に転写する際の支持体層45の剥離を容易にする役割を担っている。剥離層43の材料としては、例えば、先にレリーフ構造形成層110の材料として挙げた樹脂を使用する。剥離層43は、パラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス及びシリコーンなどの添加剤を更に含んでいてもよい。なお、剥離層43の厚みは、例えば0.5μm乃至5μmの範囲内とする。
【0155】
接着層41の材料としては、例えば、反応硬化型接着剤、溶剤揮散型接着剤、ホットメルト型接着剤、電子線硬化型接着剤及び感熱接着剤などの接着剤を使用する。
【0156】
反応硬化性接着剤としては、例えば、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン及びアクリルウレタンなどのポリウレタン系樹脂、又は、エポキシ樹脂を使用する。
【0157】
溶剤揮散型接着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー樹脂及びウレタン樹脂などを含んだ水性エマルジョン型接着剤、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合樹脂及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂などを含んだラテックス型接着剤を使用する。
【0158】
ホットメルト型接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂及びポリウレタン樹脂などをベース樹脂として含んだものを使用する。
【0159】
電子線硬化型接着剤としては、例えば、アクリロイル基、アリル基及びビニル基などのビニル系官能基を1個又は複数個有したオリゴマーを主成分として含んだものを使用する。例えば、電子線硬化型接着剤として、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート又はポリエーテルメタクリレートと、接着付与剤との混合物を使用することができる。この接着付与剤としては、例えば、リンを含んだアクリレート若しくはその誘導体、又は、カルボキシ基を含んだアクリレート若しくはその誘導体を使用する。
【0160】
感熱接着剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴム系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を使用する。
【0161】
接着層41は、例えば、上述した樹脂を、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータなどのコータを用いて基材11上に塗布することにより得られる。
【0162】
この転写箔200は、例えば、ロール転写機又はホットスタンプによって、被転写体に転写される。この際、剥離保護層43において剥離を生じると共に、表示体10が、被転写体に、接着層41を介して貼付される。
【0163】
上述したように、表示体10は、優れた偽造防止効果を有している。したがって、表示体10を物品に支持させた場合、真正品であるこの表示体付き物品の偽造も困難である。また、この表示体10は上述した視覚効果を有しているため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0164】
図18は、表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図である。
図19は、
図18に示す表示体付き物品のXIX−XIX線に沿った断面図である。
図18及び
図19には、表示体付き物品の一例として、印刷物300を描いている。この印刷物300は、商品券であって、印刷物本体60を含んでいる。
【0165】
印刷物本体60は、基材61を含んでいる。基材61は、例えば、少なくとも表示体10に対応した部分が光透過性を有している紙である。基材61上には、印刷層61が形成されている。基材61の印刷層61が形成された面には、上述した表示体10が固定されている。表示体10は、例えば、粘着層又は接着層を介して貼り付けることにより、基材61に固定する。
【0166】
印刷物300は、表示体10を含んでいるため、その偽造は困難である。また、この印刷物300は、表示体10を含んでいるため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0167】
図18及び
図19に示す印刷物300が含んでいる表示体10は、以下の点を除いては、
図1及び
図2に示す表示体10と同様の構成を有している。まず、
図18及び
図19に示す印刷物300が含んでいる表示体10では、基材11を省略している。また、この表示体10では、第2光学効果層17は、第1光学効果層12を間に挟んで反射性材料層13と向き合っている。そして、この表示体10では、光透過層15が反射性材料層13と基材61との間に介在している。加えて、この表示体10では、第1光学効果層12の一方の主面に設けられている界面部及びこれらを被覆している反射性材料層13の構成が、
図1及び
図2に示す表示体10とは異なっている。
【0168】
図18及び
図19に示す印刷物300が含んでいる第1光学効果層12は、第1界面部IF1として、第1サブ領域IF1Aと、第2サブ領域IF1Bとを含んでいる。
図18及び
図19には、一例として、第1サブ領域IF1Aと第2サブ領域IF1Bとが隣接している場合を描いている。以下では、表示体10のうち第1サブ領域IF1Aに対応した部分を、表示部DP1Aと呼ぶ。また、表示体10のうち第1サブ領域IF1Bに対応した部分を、表示部DP1Bと呼ぶ。
【0169】
第1サブ領域IF1Aと、第2サブ領域IF1Bとでは、複数の凹部又は凸部14bの最小中心間距離が互いに異なっている。ここでは、一例として、第1サブ領域IF1Aに設けられた凹部又は凸部14bの最小中心間距離は300nmであり、第2サブ領域IF1Bに設けられた凹部又は凸部14bの最小中心間距離は400nmであるとする。
【0170】
上述した通り、第1界面部IF1は、反射率が小さい。そして、第1サブ領域IF1Aと第2サブ領域IF1Bとの反射率の差は、比較的小さい。したがって、照明光の入射角の絶対値が比較的小さい場合、例えば、入射角の絶対値が60゜未満である場合、第1サブ領域IF1Aと第2サブ領域IF1Bとの双方において、第2光学効果層17に起因した光学効果が極めて明瞭に観察される。したがって、この場合、表示部DP1Aと表示部DP1Bとは、互いに区別できないか、又は、互いに区別することが極めて困難である。
【0171】
他方、照明光の入射角の絶対値が比較的大きい場合、例えば、入射角の絶対値が60゜以上且つ90゜未満である場合、第1サブ領域IF1A及び第2サブ領域IF1Bの各々は、互いに異なった波長の回折光を射出する。例えば、上記の入射角の絶対値が60゜乃至70゜の範囲内であり、観察角度の絶対値が60゜乃至70゜の範囲内である場合、表示部DP1Aは緑色の領域として観察され、表示部DP1Bは赤色の領域として観察される。即ち、照明光の入射角の絶対値が比較的大きい場合、表示部DP1Aと表示部DP1Bとを互いから区別することが可能となる。
【0172】
即ち、上記のような構成を採用すると、表示部DP1Aと表示部DP1Bとの組合せにより、潜像を形成することが可能となる。それゆえ、こうすると、表示体10及び印刷物300の偽造防止効果を更に高くすることが可能となる。
【0173】
なお、
図18及び
図19には、表示体10を含んだ印刷物300として商品券を例示しているが、表示体10を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物は、株券などの他の有価証券であってもよい。
【0174】
或いは、表示体10を含んだ印刷物は、ID(identification)カード、磁気カード、無線カード及びIC(integrated circuit)カードなどのカードであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。これらの場合、基材61の材料としては、例えば、光透過性を有したプラスチックを使用する。
【0175】
図18及び
図19に示す印刷物300では、表示体10を基材61に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材61に支持させてもよい。
【0176】
例えば、基材61として紙を使用する場合、表示体10をこの紙の内部に埋め込んでもよい。この場合、例えば、表示体10をこの紙の内部に漉き込んでもよい。
【0177】
なお、このような構成を採用する場合、表示体10は、典型的には、スレッド状とするそして、このスレッド状に加工された表示体10の一方の主面上には、典型的には、ホットメルト型接着剤を塗布する。
【0178】
表示体10の紙の内部への埋め込みは、例えば、以下のようにして行う。
【0179】
まず、セルロース繊維と分散媒とからなる紙料を準備する。次に、二槽式円網抄紙機を用いて、この紙料を漉いてなる2つの未乾燥の繊維層を作製する。そして、これら2つの繊維層を重ね合わせる際に、これら繊維層の間に上記の表示体10を送り出す。その後、2つの繊維層と、それらの間に介在した表示体10との積層構造を乾燥処理に供する。次いで、必要に応じて裁断を行う。このようにして、内部に表示体10が埋め込まれた紙を得る。
【0180】
或いは、表示体10の紙の内部への埋め込みは、以下のようにして行ってもよい。
【0181】
例えば、この埋め込みは、長網抄紙機を用いて行ってもよい。具体的には、まず、セルロース繊維と分散媒とからなる紙料の流れの中に、分散媒中に分散させた上記の表示体10をノズルを介して導入する。このようにして、抄紙網上に形成される紙匹中に表示体10を埋め込む。その後、これを乾燥処理に供する。次いで、必要に応じて裁断を行う。このようにして、内部に表示体10が埋め込まれた紙を得る。
【0182】
基材61として紙を使用する場合、この紙は、表示体10に対応した位置の全体又は一部において開口させてもよい。
【0183】
図20は、表示体付き物品の他の例を概略的に示す平面図である。
図21は、
図20に示す表示体付き物品のXXI−XXI線に沿った断面図である。
【0184】
図20及び
図21に示す印刷物300が含んでいる表示体10は、基材11を省略していることと、第1光学効果層12の一方の主面に設けられている界面部及び反射性材料層13の構成が異なっていることとを除いては、
図15に示す表示体と同様の構成を有している。
【0185】
図20及び
図21に示す表示体付き物品は印刷物300であり、その基材61は、紙からなる。そして、この紙の内部には、表示体10が埋め込まれている。加えて、この紙の表示体10に対応した位置の一部には、開口APが設けられている。即ち、これら開口APの各々において、表示体10の一部が外界に露出している。このような構成を採用すると、表示体10が基材61から脱落し難くなる。加えて、開口APが設けられた位置においては、紙の光散乱性が表示体10の光学特性に与える影響を、最小限に抑えることができる。
【0186】
図20及び
図21に示す印刷物300は、表示部DP1と表示部DP2と表示部DP3と表示部DP3’とを含んでいる。
【0187】
上述した通り、第1界面部IF1は、反射率が小さい。また、表示部DP3’は、反射性材料層13を含んでおらず且つ光吸収層23を含んでいる。したがって、照明光の入射角の絶対値が比較的小さい場合、例えば、入射角の絶対値が60゜未満である場合、表示部DP1と表示部DP3’との双方において、第2光学効果層17に起因した光学効果が極めて明瞭に観察される。したがって、この場合、表示部DP1と表示部DP3’とは、互いに区別できないか、又は、互いに区別することが極めて困難である。
【0188】
他方、照明光の入射角の絶対値が比較的大きい場合、例えば、入射角の絶対値が60゜以上且つ90゜未満である場合、表示部DP1及び表示部DP3’のうち表示部DP1のみが、回折光に対応した色を表示する。即ち、照明光の入射角の絶対値が比較的大きい場合、表示部DP1と表示部DP3’とを互いから区別することが可能となる。
【0189】
即ち、上記のような構成を採用すると、表示部DP1と表示部DP3’との組合せにより、潜像を形成することが可能となる。それゆえ、こうすると、表示体10及び印刷物300の偽造防止効果を更に高くすることが可能となる。
【0190】
基材61の材料としては、紙以外の材料を使用してもよい。例えば、この材料として、少なくとも表示体10に対応した部分が光透過性を有している樹脂を使用してもよい。この場合、表示体10は、基材61の内部に埋め込んでもよい。或いは、基材61の少なくとも表示体10に対応した部分の光散乱性が小さい場合、例えばこの部分が透明である場合、基材61の裏面、即ち印刷層61が設けられている面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0191】
表示体付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体10を支持させてもよい。
【0192】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品としても使用することができる。
【実施例】
【0193】
<例1>
まず、支持体層45として、厚みが12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム;E5100、東洋紡績製)を準備した。また、下記の組成を有するインキを調製した。以下、このインキを「インキ1」と呼ぶ。
【0194】
光重合性ネマチック液晶(パリオカラーLC242、BASF製):100質量部;
カイラル剤(パリオカラーLC756、BASF製):4.8質量部;
重合開始剤(イルガキュア369、チバスペシャリティーケミカルズ製):5質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):200質量部。
【0195】
次に、インキ1を、上記の二軸延伸ポリエステルフィルム上に、5μmの厚みで塗布した。これを120℃の乾燥炉で乾燥させ、液晶分子を配向させた。次いで、この状態で、120W/cmの高圧水銀灯を500mJ/cm
2照射した。このようにして、コレステリック液晶を含んだ層を硬化させて、第2光学効果層17を得た。
【0196】
続いて、下記の組成を有するインキを調製した。以下、このインキを「インキ2」と呼ぶ。
【0197】
2液硬化性ウレタンインキ(K448、東洋インキ製造製):100質量部;
イソシアネート硬化剤(UR100B、東洋インキ製造製):10質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):10質量部。
【0198】
次いで、このインキ2を、グラビア法を用いて、第2光学効果層17の上に、2μmの厚みで塗布した。これを乾燥させた後、40℃で3日間に亘ってエージングした。このようにして、樹脂からなる層を得た。
【0199】
次に、凹構造及び/又は凸構造を備えたニッケル電鋳版を準備した。このニッケル電鋳版には、第1に、3000本/mmの空間周波数で二次元的に配列しており且つ各々が順テーパ形状を有した複数の凸部からなる領域を形成した。また、このニッケル電鋳版には、第2に、それぞれが500本/mm、1000本/mm及び1500本/mmの空間周波数を有した複数の溝からなる3つの領域を形成した。このニッケル電鋳版をシリンダロールに装着し、上記の樹脂からなる層に対して、熱圧エンボスを行った。このようにして、第1界面部IF1及び第2界面部IF2を備えた第1光学効果層12を得た。
【0200】
その後、第1光学効果層12の界面部IF1及びIF2が設けられた主面上に、真空蒸着法を用いて、アルミニウムを蒸着させた。このようにして、厚みが500Åの反射性材料層13を得た。
【0201】
続いて、下記の組成を有するインキからなる反応硬化型接着剤を準備した。以下、このインキを「インキ3」と呼ぶ。
【0202】
ポリエステル樹脂(バイロン240、東洋紡績製):100質量部;
ブロックイソシアネート(TPA−B80X、旭化成ケミカルズ製):2質量部;
溶剤(トルエン):100質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):100質量部。
【0203】
このインキ3からなる反応硬化型接着剤を、上記の反射性材料層13上に、マイクログラビア法を用いて、約10μmの厚みで塗布した。このようにして、接着層41を得た。
【0204】
以上のようにして、表示体10を備えた転写箔200を製造した。この転写箔200を、商品券の用紙に、160℃で10秒間の条件で熱圧着させた。これと同時に、支持体層45としてのPETフィルムを剥離した。このようにして、表示体10が転写された印刷物300を得た。
<例2>
下記の組成を有するインキを調製した。以下、このインキを「インキ4」と呼ぶ。
【0205】
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインA、日信化学製):100質量部;
コレステリック液晶粉末(ヘリコーンHC、SLM90120、LCPテクノロジー製):30質量部;
溶剤(トルエン):250質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):250質量部。
【0206】
次に、インキ1の代わりにインキ4を用いたことを除いては、例1と同様にして、表示体10を含んだ印刷物300を製造した。
<例3>
第2光学効果層17として、共押出し多層フィルム(テイジンテトロンフィルム、MLF−13.0、帝人デュポンフィルム製)を準備した。そして、この第2光学効果層17の上、インキ2を、グラビア法を用いて、2μmの厚みで塗布した。これを乾燥させた後、40℃で3日間に亘ってエージングした。このようにして、樹脂からなる層を得た。
【0207】
上記のニッケル電鋳版をシリンダロールに装着し、上記の樹脂からなる層に対して、熱圧エンボスを行った。このようにして、第1界面部IF1及び第2界面部IF2を備えた第1光学効果層12を得た。
【0208】
その後、第1光学効果層12の界面部IF1及びIF2が設けられた主面上に、真空蒸着法を用いて、アルミニウムを蒸着させた。このようにして、厚みが500Åの反射性材料層13を得た。
【0209】
続いて、インキ3からなる反応硬化型接着剤を、上記の反射性材料層13上に、マイクログラビア法を用いて、約10μmの厚みで塗布した。このようにして、粘着層30を得た。
【0210】
次いで、得られた積層体を、所定の抜き型で抜き取った。このようにして、表示体10を備えた粘着ラベル100を製造した。この粘着ラベル100を、商品券の用紙に、160℃で10秒間の条件で熱圧着させた。このようにして、表示体10が貼付された印刷物300を得た。
<例4>
下記の組成を有するインキを調製した。以下、このインキを「インキ5」と呼ぶ。
【0211】
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインA、日信化学製):100質量部;
パール顔料粉末(Iriodin231、メルク製):30質量部;
溶剤(トルエン):250質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):250質量部。
【0212】
次に、インキ1の代わりにインキ5を用いたことを除いては、例1と同様にして、表示体10を含んだ印刷物300を製造した。
<例5(比較例)>
第1光学効果層12の代わりに、それぞれが500本/mm、1000本/mm及び1500本/mmの空間周波数を有した複数の溝からなる3つの領域が設けられたニッケル電鋳版を用いて熱圧エンボスされた樹脂層を形成したことを除いては、例1と同様にして、表示体を含んだ印刷物を製造した。
<例6(比較例)>
まず、例1において述べたのと同様にして、支持体層としての2軸延伸PETフィルム上に、コレステリック液晶を含んだ層を形成した。
【0213】
次に、コレステリック液晶を含んだ層の上に、真空蒸着法を用いて、アルミニウムを蒸着させた。このようにして、コレステリック液晶を含んだ層の上に、厚みが500Åの金属層を形成した。
【0214】
次いで、下記の組成を有するマスクインキを調製した。以下、このインキを「インキ6」と呼ぶ。
【0215】
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインAL、日信化学製):100質量部;
ポリエチレンワックス(添加剤180、東洋インキ製造製):10質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):300質量部。
【0216】
上記の金属層の上に、インキ6を、グラビア法を用いて、2μmの厚みでパターン印刷した。このようにして、マスク層を得た。
【0217】
その後、得られた積層体を、50℃の2質量%水酸化ナトリウム水溶液に、5秒間に亘って浸した。このようにして、金属層のうちマスク層によって被覆されていない部分を除去した。
【0218】
次いで、光吸収性の磁気インキとして、下記の組成を有するインキを調製した。以下、このインキを「インキ7」と呼ぶ。
【0219】
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインAL、日信化学製):50質量部;
磁性体の粉末(JEM−H、三菱マテリアル電子化成製):50質量部;
分散剤(DISPERBYK−106、ビックケミー製):3質量部;
イソシアネート硬化剤(UR100B、東洋インキ製造製):30質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):300質量部。
【0220】
このインキ7を、金属層及び樹脂層の全面上に、グラビア法を用いて、4μmの厚みで塗布した。これを乾燥させた後、60℃で7日間に亘ってエージングした。このようにして、光吸収層を形成した。
【0221】
光吸収層の上に、インキ3からなる反応硬化型接着剤を、マイクログラビア法を用いて、約10μmの厚みで塗布した。このようにして、転写箔を得た。
【0222】
この転写箔を、商品券の用紙に、160℃で10秒間の条件で熱圧着させた。これと同時に、支持体層としてのPETフィルムを剥離した。このようにして、表示体を含んだ印刷物を得た。
<例7(比較例)>
例5について述べたのと同様にして、支持体層としてのPETフィルムと、コレステリック液晶を含んだ層と、エンボス加工された樹脂層との積層体を製造した。
【0223】
次いで、樹脂層のエンボス加工された主面上に、真空蒸着法を用いて、アルミニウムを蒸着させた。このようにして、コレステリック液晶を含んだ層の上に、厚みが500Åの金属層を形成した。
【0224】
上記の金属層の上に、インキ6を、グラビア法を用いて、2μmの厚みでパターン印刷した。このようにして、マスク層を得た。
【0225】
その後、得られた積層体を、50℃の2質量%水酸化ナトリウム水溶液に、5秒間に亘って浸した。このようにして、金属層のうちマスク層によって被覆されていない部分を除去した。
【0226】
次いで、インキ7を、金属層及び樹脂層の全面上に、グラビア法を用いて、4μmの厚みで塗布した。これを乾燥させた後、60℃で7日間に亘ってエージングした。このようにして、光吸収層を形成した。
【0227】
光吸収層の上に、インキ3からなる反応硬化型接着剤を、マイクログラビア法を用いて、約10μmの厚みで塗布した。このようにして、転写箔を得た。
【0228】
この転写箔を、商品券の用紙に、160℃で10秒間の条件で熱圧着させた。これと同時に、支持体層としてのPETフィルムを剥離した。このようにして、表示体を含んだ印刷物を得た。
<例8(比較例)>
支持体層として、厚みが12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム;E5100、東洋紡績製)を準備した。また、下記の組成を有するホログラムインキを調製した。以下、このインキを「インキ8」と呼ぶ。
【0229】
ホログラム粉末(ホログラムインキ#256、十条ケミカル製):20質量部;
アクリル樹脂(BR60、三菱レイヨン製):100質量部;
溶剤(トルエン):200質量部;
溶剤(メチルエチルケトン):200質量部。
【0230】
このインキ8を、上記のPETフィルム上に、3μmの厚みで塗布した。得られた塗膜を乾燥させた後、60℃で5日間に亘ってエージングし、これを硬化させた。このようにして、ホログラム粉末層を形成した。
【0231】
このホログラム粉末層の上に、インキ2を、グラビア法を用いて、2μmの厚みで塗布した。これを乾燥させた後、40℃で3日間に亘ってエージングした。このようにして、樹脂層を得た。
【0232】
次いで、例1で用いたのと同様のニッケル電鋳版を用いて、樹脂層の一方の主面にエンボス加工を施した。樹脂層のエンボス加工された主面上に、真空蒸着法を用いて、アルミニウムを蒸着させた。このようにして、コレステリック液晶を含んだ層の上に、厚みが500Åの金属層を形成した。
【0233】
続いて、この金属層上に、インキ3からなる反応硬化型接着剤を、マイクログラビア法を用いて、約10μmの厚みで塗布した。このようにして、転写箔を得た。
【0234】
この転写箔を、商品券の用紙に、160℃で10秒間の条件で熱圧着させた。これと同時に、支持体層としてのPETフィルムを剥離した。このようにして、表示体を含んだ印刷物を得た。
<評価>
例1乃至例8に係る印刷物の各々について、下記の項目を評価した。これら評価結果を、下記表1に纏める。
(パターン性)
印刷物を表示体の主面の法線方向から観察した場合に、パターン印刷されているように観察されるか否かを評価した。この評価は、以下の基準にしたがって行った。
【0235】
S:パターンが極めて明瞭に観察された場合。
A:パターンが明瞭に観察された場合。
C:パターンが観察されなかった場合。
(位置精度)
第1光学効果層又は樹脂層に設けられた凹構造及び/又は凸構造に基づいたパターンの位置と、印刷物を表示体の主面の法線方向から観察した場合に観察されるパターンの位置とが一致しているか否かを評価した。この評価は、以下の基準にしたがって行った。
【0236】
A:両パターンの位置が一致していた場合。
C:両パターンの位置が一致していなかった場合。
(パターン精度)
印刷物を表示体の主面の法線方向から観察した場合に、細かいデザイン及び文字などをパターン表示することができるか否かを評価した。この評価は、以下の基準にしたがって行った。
【0237】
A:細かいデザイン及び文字などをパターン表示することができた場合。
C:細かいデザイン及び文字などをパターン表示することができなかった場合。
(オバート視認性)
器具又は装置を用いることなしに、真偽判定を行うことができるか否かを評価した。この評価は、以下の基準にしたがって行った。
【0238】
A:器具又は装置を用いることなしに、真偽判定を容易に行うことができた場合。
B:器具又は装置を用いることなしに、真偽判定を行うことができた場合。
C:器具又は装置を用いないと、真偽判定を行うことができなかった場合。
(波長選択性)
特定の観察角度から観察した場合に、特定の波長の光のみを選択的に観察することができるか否かを評価した。この評価は、以下の基準にしたがって行った。
【0239】
A:特定の観察角度から観察した場合に、特定の波長の光のみを選択的に観察することができた場合。
C:特定の観察角度から観察した場合に、特定の波長の光のみを選択的に観察することができなかった場合。
(偏光変化)
表示体の観察方向を、表示体の主面の法線方向から次第に深くしていったときに、円偏光から直線偏光への偏光性の変化が生じるか否かを評価した。この評価は、以下の基準にしたがって行った。
【0240】
A:偏光性の変化が生じた場合。
C:偏光性の変化が生じなかった場合。
(コスト)
印刷物の製造に要するコストを評価した。この評価は、以下の基準にしたがって行った。
【0241】
S:製造コストが低い場合。
【0242】
A:製造コストが比較的低い場合。
C:製造コストが比較的高い場合。
(クラック耐性)
表示体のクラック耐性を、紙幣のしわもみ試験に使用するNBSクランプリングデバイス(IGTテスティングシステムズ製)を使用して評価した。
【0243】
A:外観上ほとんど変化がなかった場合
B:わずかにクラックが確認された場合。
【0244】
C:クラックが著しかった場合。
【0245】
【表1】
【0246】
表1から明らかなように、例1乃至例4では、高い偽造防止効果を達成することができた。
【0247】
更なる利益及び変形は、当業者には容易である。それゆえ、本発明は、そのより広い側面において、ここに記載された特定の記載や代表的な態様に限定されるべきではない。従って、添付の請求の範囲及びその等価物によって規定される本発明の包括的概念の真意又は範囲から逸脱しない範囲内で、様々な変形が可能である。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
200nm乃至500nmの範囲内の最小中心間距離で二次元的に配置されるとともに各々が順テーパ形状を有する複数の凹部又は凸部が設けられた第1界面部を含んだ第1光学効果層と、
前記第1界面部の少なくとも一部を被覆した反射性材料層と、
前記第1界面部のうち前記反射性材料層によって被覆された第1部分の位置で、前記第1光学効果層を間に挟んで前記反射性材料層と向き合っているか又は前記反射性材料層を間に挟んで前記第1光学効果層と向き合った部分を備え、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んだ第2光学効果層と
を具備した表示体。
[2]
前記反射性材料層は前記第1界面部の一部のみを被覆しており、前記第2光学効果層は、前記第1界面部のうち前記反射性材料層によって被覆されていない第2部分の位置で、前記第1光学効果層と向き合った部分を更に備えた[1]に記載の表示体。
[3]
前記第1光学効果層は光透過性を有しており、
前記第2部分の位置で前記第1光学効果層を間に挟んで前記第2光学効果層と向き合った光吸収層を更に具備した[2]に記載の表示体。
[4]
前記第2部分の位置で前記第1及び第2光学効果層間に介在した光吸収層を更に具備した[2]に記載の表示体。
[5]
前記光吸収層は磁性体を含んでいる[3]又は[4]に記載の表示体。
[6]
前記第1光学効果層は、前記第1界面部と隣り合い且つ前記複数の凹部又は凸部の前記最小中心間距離と比較してより大きな最小中心間距離で一次元的に配置された複数の溝が設けられた第2界面部、及び/又は、前記第1界面部と隣り合い且つ平坦面からなる第3界面部を更に含んでいる[1]に記載の表示体。
[7]
前記第1界面部と前記第2界面部及び/又は前記第3界面部とは互いに隣接しており、
前記反射性材料層は、前記第1界面部と前記第2界面部及び/又は前記第3界面部との境界を横切るようにして、前記第1界面部と前記第2界面部及び/又は前記第3界面部との双方を被覆しており、
前記第2光学効果層は、前記第1光学効果層の前記第1界面部並びに前記第2界面部及び/又は前記第3界面部を含んだ主面への前記第2光学効果層の正射影が前記境界を横切るようにして設けられている[6]に記載の表示体。
[8]
基材と、前記基材に支持された[1]に記載の表示体とを具備した表示体付き物品。
[9]
前記基材は紙であり、前記表示体は前記紙の内部に埋め込まれている[8]に記載の表示体付き物品。
[10]
前記表示体はスレッド状である[9]に記載の表示体付き物品。