(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを具備する、波長5nm以上15nm以下の光を露光光とするリソグラフィに用いられる反射型フォトマスクであって、前記吸収体膜には回路パターンが形成され、前記回路パターンが形成されている領域の外側には、前記多層反射膜及び吸収体膜が除去されて前記基板が露出する遮光領域が形成され、前記遮光領域の前記基板が露出している部分には、微細凹凸パターンからなるモスアイ構造体が形成されており、前記モスアイ構造体の凹凸パターンの互いに隣接する頂部の間隔は、150nm〜300nmの波長帯域の光の反射を抑制するように設計されたことを特徴とする反射型フォトマスク。
前記微細凹凸パターンからなるモスアイ構造体を形成する工程は、微細機械加工方法、レーザ加工方法、及びフォトリソグラフィのいずれかにより行うことを特徴とする請求項6に記載の反射型フォトマスクの製造方法。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体デバイスの微細化に伴い、フォトリソグラフィ技術の微細化に対する要求が高まっている。既に、リソグラフィの露光も従来の波長が193nmのArFエキシマレーザー光を用いた露光から、波長が13.5nmのEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外線)領域の光を用いた露光に置き換わりつつある。
【0003】
EUV露光用のフォトマスク(EUVフォトマスク)は、EUV領域の光に対してほとんどの物質が高い光吸収性をもつため、従来の透過型のフォトマスクとは異なり、反射型のフォトマスクである(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ガラス基板上にモリブデン(Mo)層及びシリコン(Si)層を交互に積層した多層膜からなる光反射膜を形成し、その上にタンタル(Ta)を主成分とする光吸収体により回路パターンを形成した反射型のフォトマスクに関する技術が開示されている。
【0004】
また、EUV光は前記の通り光の透過を利用する屈折光学系が使用できないことから、露光機の光学系も反射型となる。このため、透過型のビームスプリッターを利用した偏向が不可能である。従って、反射型フォトマスクでは、フォトマスクへの入射光と反射光が同軸上に設計できないという欠点があり、このため、EUVフォトマスクの光軸を6度程度傾けて、フォトマスクへ入射した光の反射光を半導体基板に導く手法が採用されている。
【0005】
このようにEUVフォトマスクの光軸を傾斜させると、フォトマスクパターンに対する光の入射方向に依存して半導体基板上でのフォトマスクを通しての配線パターンがフォトマスクパターンとは異なる線幅となるという射影効果と呼ばれる問題が生ずることが指摘されている。そこで、この射影効果を抑制ないし軽減するために、フォトマスクパターンを形成している吸収膜の膜厚を薄膜化することが提案されている。
【0006】
しかし、このような吸収膜の薄膜化によると、EUV光を吸収するのに必要な光の減衰量が不足するため、半導体基板への反射光が増加し、半導体基板上に塗布されたレジスト膜を過度に感光させてしまうという問題が発生する。さらに半導体基板ではチップを多面付で露光するため、隣接するチップの境界領域において多重露光が発生する。
【0007】
このような問題を解決するために、反射型フォトマスクの吸収膜から多層反射膜までを掘り込んだ溝を形成することや、回路パターン領域の吸収膜の膜厚よりも厚い膜を形成することや、反射型フォトマスク上にレーザ照射もしくはイオン注入することで多層反射膜の反射率を低下させることにより、露光光源波長に対する遮光性の高い遮光領域を設けた反射型フォトマスクが提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかしながら、反射型フォトマスク上にレーザ照射もしくはイオン注入することで遮光領域を形成する場合、多層反射膜以外によるレーザ光もしくはイオンの損失があるため、この損失分を考慮したレーザ光もしくはイオンを照射しなくてはならない。また、多層反射膜以外の膜にはレーザ光もしくはイオンの照射によるダメージが生じ、吸収膜の露光光源波長の吸収率の低下が懸念される。
【0009】
一方、EUV光源は、アウトオブバンド(Out of Band)と呼ばれる真空紫外線から近赤外線領域にかけての波長の光を放射することが知られている。これらの波長の光は本来不要なものであり、ウェハ上に塗布されたレジストを感光させてしまうという問題がある。
【0010】
そのため、反射型マスクの吸収膜から多層反射膜までを掘り込んだ溝を遮光領域として形成した場合、入射するアウトオブバンドの光が、多層反射膜の形成された面とは異なるもう一方の基板面に形成された導電膜から反射され、それがウェハ上のレジストを感光させてしまうという問題が生じる場合がある。
【0011】
光学材料を用いる分野において、光学材料の表面における反射を抑制するため、光がある物質から他の物質に入射した場合、この2つの物質間に屈折率の差があると、入射した光の一部が反射する。このとき、この反射は2つの物質間の屈折率の差が大きいほど大きくなる。反射を抑制するための物質の表面加工手法として、入射光の波長よりも短い微細構造パターンを有する構造体(モスアイ(蛾の目)構造体)を材料表面に形成する手法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0012】
例えば、空気側からある物質中に光が入射する際、物質表面に入射した光に対応する微細構造パターンを形成すると、反射率が低下する。このとき、微細構造パターンを、先のとがった錐形(円錐、四角錘、多角錘など)の形状にすると、空気と物質間との屈折率が緩やかに変化するようになり、反射率はさらに低下し、また、反射率の低い光の波長帯域の広帯域化、高視野角化が得られることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
一般に、空気側からの可視光の反射を抑制するモスアイ構造体には、100〜200nm程度のサイズの微細構造パターンが要求される。この様な微細構造パターンの形成には、これに対応する微細構造パターンの形成技術が必要である。
【0014】
上述したモスアイ構造体の製造方法として、ピラー形状をエッチングすることによりモスアイ構造を形成する方法などが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る反射型フォトマスクの製造に用いられる反射型フォトマスクブランクス10a,10bの断面図であり、より具体的には、EUV光を用いた露光に使用するフォトマスク用のブランクスである。このEUV光の波長は、例えば13.5nmである。
【0028】
図1に示すフォトマスク用ブランクスでは、基板11の一面上に、多層反射膜12、保護膜13、及び吸収膜14が形成されている。
図1(a)では、吸収膜14は単層であり、(b)では吸収膜14は積層である。基板11の多層反射膜12とは反対面側には、裏面導電膜15が形成されている。多層反射膜12、保護膜13、吸収膜14、裏面導電膜15は、公知のスパッタリング法を用いて形成することができる。
【0029】
基板11の材料としては、後述する凹凸パターンを形成する工程において、用いる微細パターン形成方法における加工特性を備えている材料が望ましい。そのような材料として、石英(SiO
2)を主成分とし、酸化チタン(TiO
2)を含む材料等が挙げられる。例えば、公知のリソグラフィ技術及び公知のエッチング技術を用いて凹凸パターンを形成する場合、石英ガラスを用いるのが望ましい。
【0030】
多層反射層12は、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つEUV光での屈折率差が大きい材料が用いられる。また、EUV光に対して60%程度の反射率を達成できるように設計された、例えば、厚さ2〜3nmのモリブデン(Mo)層とシリコン(Si)層を交互に40〜50ペア積層した積層膜を用いることができる。MoやSiは、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つMoとSiのEUV光での屈折率差が大きいので、SiとMoの界面での反射率を高く出来るために好適に用いられる。
【0031】
保護層13は、単層構造もしくは積層構造となっており、前記多層反射膜12上に単層構造で形成される場合には、ルテニウム(Ru)またはシリコン(Si)のいずれかを含む材料で形成され、前記多層反射膜12上に積層構造で形成される場合には、前記多層反射膜12の最上層がルテニウム(Ru)の酸化物、窒化物、酸窒化物やシリコン(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成される。
【0032】
また、保護層13は、酸やアルカリに対する洗浄耐性を有する材料である必要があり、例えば、厚さ2〜3nmのルテニウム(Ru)あるいは厚さ10nm程度のシリコン(Si)を用いることができる。保護層13がRuにより構成される場合は、吸収層14の加工におけるストッパー層やマスク洗浄における薬液に対する保護層としての役割を果たしている。なお、Ruからなる保護層13の下の多層反射層12の最上層はSi層となる。
【0033】
保護層13がSiにより構成される場合は、吸収層14との間に、緩衝層を設ける場合もある。緩衝層は、吸収層14のエッチングやパターン修正時に、緩衝層の下に隣接する多層反射層12の最上層であるSi層を保護するために設けられ、例えば、クロムの窒素化合物(CrN)により構成することが出来る。
【0034】
前記吸収膜14は、単層構造もしくは積層構造となっており、前記保護膜13上に単層構造で形成される場合、即ち、
図1(a)に示す吸収層14は、EUVに対して吸収率の高いタンタル(Ta)及びその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料で形成される。例えば、タンタルホウ素窒化物(TaBN)、タンタルシリコン(TaSi)、タンタル(Ta)や、それらの酸化物(TaBON、TaSiO、TaO)を用いることが出来る。
【0035】
前記保護膜13上に積層構造で形成される場合、
図1(b)に示す2層構造の吸収層14は、上層として波長190〜260nmの紫外光に対して反射防止機能を有する低反射層を設けたものである。低反射層としては、タンタル(Ta)の酸化物、窒化物、酸窒化物やシリコン(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれかを含む材料を用いることが出来る。低反射層は、マスクの欠陥検査機の検査波長に対して、コントラストを高くし、検査性を向上させるためのものである。吸収層14の膜厚は、通常、50〜70nmである。
【0036】
基板11の裏面に形成される導電膜15は、導電性があれば良く、クロム(Cr)またはタンタル(Ta)のいずれかの金属もしくはその酸化物、窒化物、酸窒化物のいずれか、または、導電性のあるその他の金属材料を含む材料で形成される。一般にはCrNが用いられる。導電膜15の膜厚は、通常、20〜30nmである。なお、導電膜15を設けないマスクブランクとしてもよい。
【0037】
図2は、
図1で示した反射型フォトマスクブランクスス10を用いて製造された露光用反射型フォトマスクを示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。この反射型フォトマスクは、回路パターンAの外側に、吸収膜14、保護膜13、及び多層反射膜12の一部を矩形枠状に掘り込み、基板11が露出した遮光領域(遮光溝)Bを形成した構造を有する。
【0038】
遮光領域Bにおける基板11の露出面には、微細凹凸パターンからなるモスアイ構造体16が設けられている。この微細凹凸パターンは、段差を有するものであれば良く、その形状、配列は、モスアイ構造体として機能するパターンであれば良い。例えば、ドットパターンの配列が良い。なお、モスアイ構造体として機能するパターンとは、同一形状のパターンが周期的に配置されるため、広範囲の波長、あらゆる入射角の光の反射を低減させることが可能なパターンである。
【0039】
また、凹凸パターン16の頂部の間隔は、設計事項であり、反射を抑制する光の波長に対応して決定することが望ましい。例えば、除去すべきアウトオブバンドの波長は、150nm〜300nm程度であり、これはウェハ上のレジストが感光する波長に相当する。つまり、隣接する凹凸パターン16の頂部の間隔は、100nm以上150nm未満であるのが望ましい。また、隣接する凹凸パターン16の頂部の間隔は、均一でもよいが、間隔がこの範囲内で適度に分散していれば、不揃いであってもよい。不揃いとすることにより、微細構造パターンの間隔の幅に変化をもたせることができ、微細構造パターンの間隔に対応する波長帯域において、その波長帯域の光の反射を抑制することができる。さらに、モスアイ構造体の凹凸のアスペクト比が1.0以上あれば、反射防止に十分な効果を発揮し、1.5以上であるとなお好ましい。
【0040】
微細凹凸パターン16の形状は、円錐状や角錐状が好ましく、先端が平らな場合はその部分において反射が起こるため、先端が精鋭であり、深さ方向になだらかに広がるものであることが好ましい。
【0041】
凹凸パターン16の形成方法としては、所望する微細構造パターンに合わせて、適宜公知のパターニング方法を選択して良い。例えば、公知の微細機械加工方法、レーザ加工方法などを用いても良い。特に、精度良く凹凸パターンを形成できる点で、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いることが好ましい。以下に示す反射型フォトマスクの製造例及び実施例では、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、モスアイ構造体を構成する凹凸パターン16を形成している。
【0042】
図2に示す反射型フォトマスクの製造プロセスを
図3及び
図4〜
図10に示す。
図3は製造工程のフローチャートを、
図4〜
図10は製造プロセスを工程順に示す断面図である。
【0043】
まず、
図1に示すブランクススの吸収膜14に回路パターンAと遮光領域Bを形成するプロセスについて説明する。
図4(a)に示すように、ブランクススを用意し、
図4(b)に示すように、吸収膜14の上に、紫外線または電子線に反応を示す化学増幅系や非化学増幅系レジスト21を塗布する(工程S1)。次いで、
図4(c)に示すように、増幅系レジスト21に所定の回路パターンAと遮光領域Bを描画する(工程S2)。
【0044】
その後、
図5(a)に示すように、アルカリ溶液などで現像を行い(工程S3)、レジストパターン21aを形成する。そして、
図5(b)に示すように、レジストパターン21aをマスクとして用いて、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いたガスプラズマによるエッチングを行い(工程S4)、次いで、
図5(c)に示すように、不要なレジストパターン21aを酸素プラズマによる灰化や硫酸やオゾン水などの酸化薬液による分解、ないしは有機溶剤などで溶解除去する(工程S5)。その後、必要に応じて、酸・アルカリ系薬品やオゾンガスや水素ガスなどを溶解した超純水や有機アルカリ系薬品、界面活性剤などによる洗浄処理(工程S6)と遠心力を利用したスピン乾燥(工程S7)を行う。以上により、吸収膜14に回路パターンAと遮光領域Bが形成された。
【0045】
次に、保護膜13と多層反射膜12に遮光領域Bを形成するプロセスについて説明する。
図6(a)に示すように、上記のマスクに紫外線または電子線に反応を示すレジスト22を塗布する(工程S8)。次いで、
図6(b)に示すように、遮光領域Bを露光または電子線で描画する(工程S9)。そして、前記と同じく、
図6(c)に示すように、現像してレジストパターン22aを形成する(工程S10)。そして、
図7(a)に示すように、レジストパターン22aをマスクとして用いて保護膜13及び多層反射膜12のエッチングを行い(工程S11)、遮光領域Bを形成する。このエッチング工程(工程S11)では、まずフッ素系ガスプラズマを用いて保護膜13を選択的に除去する。多層反射膜12の選択的除去は、保護膜13と同じくフッ素系ガスプラズマを用いるか、もしくは塩素ガス系プラズマを用いて行う。
【0046】
次いで、
図7(b)に示すように、レジストパターン22aを除去し(工程S12)、洗浄し(工程S13)、乾燥(工程S14)を行い、基板11が露出する遮光領域Bを形成する。
【0047】
次に、基板11の遮光領域Bにドットパターンを形成するプロセスについて説明する。
図7(c)に示すように、以上のようにして得られた構造に紫外線または電子線に反応を示すレジスト23を塗布する(工程S15)。このとき、レジスト23は、吸収膜14上と、遮光領域B内に露出する基板11上に形成される。次に、
図8(a)に示すように、遮光領域B内に露出する基板11上のレジスト23にドットパターンの配列状に露光または電子線で描画する(工程S16)。その後、現像(
図8(b):工程S17)して、遮光領域B内に露出する基板11上にレジストドットパターン23aを形成し、このレジストドットパターン23aをマスクとして用いて、露出する基板11をエッチングし(
図8(c):工程S18)、遮光領域B内に露出する基板11にドットパターン31を形成する。次いで、
図9(a)に示すように、レジスト23及びレジストドットパターン23aを除去し(工程S19)、洗浄し(工程S20)、乾燥する(工程S21)。
【0048】
次に、遮光領域B内に露出する基板11のドットパターン31をモスアイ構造体とする。まず、
図9(b)に示すように、以上のようにして得られた構造に紫外線または電子線に反応を示すレジスト24を塗布する(工程S22)。このとき、レジスト24は、吸収膜14上と、遮光領域B内に露出する基板11上に形成される。
【0049】
次に、
図9(c)に示すように、遮光領域B内に露出する基板11上のレジスト24の全面に露光または電子線で描画する(工程S23)。上述と同様に現像すると、
図10(a)に示すように、遮光領域B内の基板11上のレジスト24が除去され、レジストパターン24aが形成される。(工程S24)。次いで、レジストパターン24aをマスクとして用いてエッチング(工程S25)を行うことにより、
図10(b)に示すように、遮光領域B内に露出する基板11の表面のドットパターン31の凸部を先鋭化させ、パターン凹部の深さをより深くすることができ、その結果、モスアイ構造体16が形成される。次いで、
図10(c)に示すように、レジストパターン24aの除去(工程S26)、洗浄(工程S27)、乾燥(工程S28)を行い、反射型フォトマスク100が完成する。
【0050】
なお、以上の実施形態では、吸収膜14に回路パターンAを形成した後に、基板11が露出する遮光領域B及びモスアイ構造体16を形成したが、基板11が露出する遮光領域B及びモスアイ構造体16を形成した後に、吸収膜14に回路パターンAを形成することも可能である。
【0051】
本実施形態によれば、遮光領域B内に基板11が露出している部分は、微細構造パターンにより光学特性を示すモスアイ構造体16が形成されていることにより、EUV及びアウトオブバンドの反射を除去することができ、ウェハ上にあるチップの境界領域における多重露光を防止することが可能である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の反射型フォトマスクの製造方法の実施例を説明する。
図1は、本実施例で用いた反射型フォトマスクブランクス10a,10bである。これらの反射型フォトマスクブランクス10a,10bでは、基板11の上に、波長13.5nmのEUV光に対して反射率が64%程度となるように設計されたMo層とSi層の40ペアの多層反射膜12が、その上に2.5nm厚のRuの保護膜13が、更にその上に70nm厚のTaSiからなる吸収膜14が、順次形成されている。
【0053】
まず、反射型フォトマスクブランクス10a,10bの表面に、ポジ型化学増幅レジスト21(FEP171:富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ製)を300nmの膜厚に塗布し(
図4(b):工程S1)、電子線描画機(JBX9000:日本電子製)によって描画(
図4(c):工程S2)した後、110℃で10分間のプリベークを行い、更にスプレー現像(SFG3000:シグマメルテック製)して、レジストパターン21aを形成した(
図5(a):工程S3)。
【0054】
次いで、ドライエッチング装置を用いて、CF
4プラズマとCl
2プラズマにより、吸収層14をエッチングした後(
図5(b):工程S4)、レジストパターン21aを剥離し(
図5(c):工程S5)、表面を洗浄し(
図5(c):工程S6)、乾燥(
図5(c):工程S7)することで、吸収膜14に回路パターンAを有する構造を作製した。回路パターンAは、寸法200nmの1:1のライン&スペースパターンをマスク中心に配置したものである。パターン領域の大きさは、10cmx10cmとした。
【0055】
次に、上記回路パターンAを有する構造の遮光領域を形成する工程を行った。この構造の上にi線レジスト22を500nmの膜厚で塗布し(
図6(a):工程S8)、そこへi線描画機(ALTA3000:アプライドマテリアル社製)により描画し(
図6(b):工程S9)、現像(
図6(c):工程S10)を行うことにより、後に遮光領域となる領域を抜いたレジストパターン22aを形成した。このときレジストパターン22aの開口幅は5mmとし、マスク中心部に10cmx10cmの回路パターンAから3mmの距離に配置した。
【0056】
その後、CHF
3プラズマを用いた下記の条件での垂直性ドライエッチングにより、上記レジストの開口部の吸収層14と多層反射層12を貫通・除去した(
図7(a):工程S11)。
【0057】
ドライエッチング装置内の圧力:50mTorr
ICP(誘導結合プラズマ)パワー:500W
RIE(反応性イオンエッチング)パワー:2000W
CHF
3:流量20sccm
処理時間:6分。
【0058】
次いで、レジストパターン22aを剥離し(
図7(b):工程S12)、洗浄し(
図7(b):工程S13)、乾燥し(
図7(b):工程S14)、遮光領域Bを形成した。
【0059】
次に、全面にポジ型化学増幅レジスト23(FEP171:富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ製)を300nmの膜厚で塗布した(S15)。このとき、レジスト23は、吸収膜14上と、遮光領域B内に露出する基板11上に形成された。そして、遮光領域B内に露出する基板11上のレジスト23に、ドットパターンの配列状に電子線描画機(JBX9000:日本電子製)によって描画(
図8(a):工程S16)した後、110℃で10分間のプリベークおよびスプレー現像(SFG3000:シグマメルテック製)により、前記レジスト23の基板11上の部分にレジストパターン23aを形成した(
図8(b):工程S17)。
【0060】
次いで、ドライエッチング装置を用いて、CF
4プラズマとCl
2プラズマによりエッチングし(
図8(c):工程S18)、遮光領域B内に露出する基板11の面にドットパターン31を形成した。その後、レジストを剥離し(
図9(a):工程S19)、洗浄し(
図9(a):工程S20)、乾燥(
図9(a):工程S21)した。
【0061】
次いで、全面にi線レジスト24を500nmの膜厚で塗布した(
図9(b):工程S22)。このとき、レジスト24は、吸収膜14上と、遮光領域B内に露出する基板11上に形成される。このレジスト24の遮光領域B内に露出する基板11上の部分にi線描画機(ALTA3000:アプライドマテリアル社製)により描画(
図9(c):工程S23)した。これを上述と同様に現像し、遮光領域B内の基板11上のレジスト24を除去し、レジストパターン24aを形成した。(
図10(a):工程S24)。
【0062】
次いで、レジストパターン24aをマスクとして用いてエッチングすると(
図10(b):工程S25)、遮光領域B内に露出する基板11の表面のドットパターン31の凸部が先鋭化し、パターン凹部の深さがより深くなり、モスアイ構造体16が形成された。次いで、レジストパターン24aの除去(
図10(c):工程S26)、洗浄(
図10(c):工程S27)、乾燥(
図10(c):工程S28)を行い、反射型フォトマスク100が完成した。
【0063】
以上説明した実施例にて作製した反射型マスク100に対し、光学式膜厚計を用いて、波長を変化させて光を照射し、その反射率を求めたところ、
図11に示す結果を得た。遮光領域内に露出する基板表面にモスアイ構造体が形成されていない従来の反射型マスクについて求めた反射率も併せて
図11に示す。
【0064】
図11から、従来の反射型マスクでは、アウトオブバンドの波長150nm〜300nmにおける反射率が0.7〜0.9であるのに対し、本実施例にて作製した反射型マスク100では、アウトオブバンドの波長150nm〜300nmにおける反射率がほぼゼロであることがわかる。
【0065】
以上のように、本実施例によれば、遮光領域Bの基板11が露出している部分は、微細構造パターンにより光学特性を示すモスアイ構造体16が形成されていることにより、EUV及びアウトオブバンドの反射を除去することができ、ウェハ上にあるチップの境界領域における多重露光を防止することが可能となった。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを具備する、波長5nm以上15nm以下の光を露光光とするリソグラフィに用いられる反射型フォトマスクであって、前記吸収体膜には回路パターンが形成され、前記回路パターンが形成されている領域の外側には、前記多層反射膜及び吸収体膜が除去されて前記基板が露出する遮光領域が形成され、前記遮光領域の前記基板が露出している部分には、微細凹凸パターンからなるモスアイ構造体が形成されていることを特徴とする反射型フォトマスク。
[2]
前記モスアイ構造体の互いに隣接する凹凸パターンの頂部の間隔が一定であることを特徴とする項1に記載の反射型フォトマスク。
[3]
前記モスアイ構造体の互いに隣接する凹凸パターンの頂部の間隔が不揃いであることを特徴とする項1に記載の反射型フォトマスク。
[4]
前記モスアイ構造体の凹凸パターンの互いに隣接する頂部の間隔が100nm以上150nm以下であることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の反射型フォトマスク。
[5]
前記モスアイ構造体の凹凸パターンの凹凸のアスペクト比が1以上であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載の反射型フォトマスク。
[6]
前記モスアイ構造体の凹凸パターンの頂部は先鋭化されていることを特徴とする項1〜5のいずれかに記載の反射型フォトマスク。
[7]
基板上に、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを積層したマスクブランクスを準備する工程、
前記多層反射膜及び吸収体膜を選択的に除去して、回路パターンが形成されている領域又は回路パターンの形成予定領域の外側に前記基板が露出する遮光領域を形成する工程、及び
前記遮光領域の前記基板が露出している部分に、微細凹凸パターンからなるモスアイ構造体を形成する工程を具備する、波長5nm以上15nm以下の光を露光光とするリソグラフィに用いられる反射型フォトマスクの製造方法。
[8]
前記微細凹凸パターンからなるモスアイ構造体を形成する工程は、微細機械加工方法、レーザ加工方法、及びフォトリソグラフィのいずれかにより行うことを特徴とする項7に記載の反射型フォトマスクの製造方法