(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体装置の逆回復時のアノードおよびカソードの電極間電圧が、逆回復時の印加電圧の半分の値になった場合に、前記アノード領域と前記半導体基板のn型領域との境界から広がる空乏層の前記半導体基板の裏面側の端部に応じた位置に、前記第1のピークを有する
請求項3または4に記載の半導体装置。
前記局所ライフタイムキラーが存在する領域は、前記半導体装置の定格逆電圧が印加された場合に、前記アノード領域と前記半導体基板のn型領域との境界から広がる空乏層と接しない位置に形成される
請求項6に記載の半導体装置。
n型の半導体基板と、前記半導体基板の表面側に形成されたp型のアノード領域と、前記半導体基板の裏面側においてプロトンをドナーとして形成されたn型のフィールドストップ領域と、前記フィールドストップ領域よりも前記半導体基板の裏面側に形成されたn型のカソード領域とを備える半導体装置を製造する製造方法であって、
前記フィールドストップ領域における深さ方向の前記ドナーの濃度分布が、第1のピークと、前記第1のピークよりも前記半導体基板の裏面側において前記第1のピークよりも濃度の低い第2のピークとを有するように、前記半導体基板の裏面側からプロトンを注入するプロトン注入段階と、
前記半導体基板をアニールして前記プロトンを拡散させることで、前記アノード領域および前記カソード領域の間における少なくとも一部の領域におけるキャリアライフタイムを、前記アノード領域おけるキャリアライフタイムよりも長くし、前記ドナーの濃度分布が前記第1のピークを示す深さ位置における前記キャリアライフタイムを、前記カソード領域におけるキャリアライフタイムよりも長くするライフタイムアニール段階と
を備える製造方法。
前記ライフタイムアニール段階において、前記アノード領域および前記カソード領域の間における少なくとも一部の領域におけるキャリアライフタイムを、前記カソード領域におけるキャリアライフタイムよりも長くする
請求項9から13のいずれか一項に記載の製造方法。
前記ライフタイムアニール段階において、前記アノード領域よりもキャリアライフタイムが長い領域を、前記ドナーの濃度分布が前記第1のピークを示す位置よりも前記半導体基板の表面側に延伸させる
請求項9から16のいずれか一項に記載の製造方法。
前記アノード領域および前記カソード領域の間における少なくとも一部の領域におけるキャリアライフタイムが、前記カソード領域におけるキャリアライフタイムよりも長い
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記アノード領域よりもキャリアライフタイムが長い領域が、前記ドナーの濃度分布が前記第1のピークを示す位置よりも、30〜40μm、前記半導体基板の表面側に延伸している
請求項4に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の概要を示す図である。
図1は、半導体装置100の断面の模式図を示している。本例における半導体装置100は、例えばIGBT等の高耐圧スイッチと並列に設けられる還流ダイオード(FWD)として用いられる。本例の半導体装置100は、n−型の半導体基板10、絶縁膜22、アノード電極24およびカソード電極32を備える。また、半導体基板10の表面側にはp+型のアノード領域が形成され、裏面側にはフィールドストップ領域(FS領域40)と、n+型のカソード領域30とが形成される。
【0015】
半導体基板10は、例えばシリコン基板である。絶縁膜22は、半導体基板10の表面を覆うように形成される。ただし、絶縁膜22は、アノード領域20を露出させる開口を有する。絶縁膜22は、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコン等の絶縁物で形成される。アノード電極24は、絶縁膜22の開口に露出したアノード領域20上に形成される。アノード電極24は、例えばアルミニウム等の金属で形成される。
【0016】
FS領域40は、プロトン(水素イオン)をドナーとして形成されたn型領域である。FS領域の不純物濃度(本例ではドナー濃度)は、半導体基板10の不純物濃度よりも高い。カソード領域30は、FS領域40よりも半導体基板10の裏面側に形成される。カソード領域30は、例えばリン等をドナーとして形成されたn+型領域である。カソード領域30の不純物濃度は、半導体基板10の不純物濃度およびFS領域40の不純物濃度のいずれよりも高い。カソード電極32は、半導体基板10の裏面に形成されて、カソード領域30と接続される。このような構成により、半導体装置100はダイオードとして機能する。
【0017】
図2は、半導体装置100の断面模式図と、FS領域40におけるキャリア濃度分布を示す図である。
図2における半導体装置100の断面模式図では、絶縁膜22、アノード電極24およびカソード電極32を省略している。また、
図2に示す濃度分布において横軸は、FS領域40の裏面側端部からの深さ位置を示し、縦軸はキャリア濃度を示す。当該キャリア濃度は、FS領域40に注入されたプロトンによるドナー濃度に対応する。
【0018】
図2に示すように、FS領域40における深さ方向のドナー濃度分布は、複数のピークを有する。ピークとは、例えば極大値を指す。本例のFS領域40のドナー濃度分布には、第1のピーク、第2のピーク、第3のピーク、第4のピークが存在する。第1のピークは、FS領域40において、半導体基板10の裏面側(カソード側)から見て最も深い位置に存在する。本明細書においては、半導体基板10の裏面側(カソード側)からの距離がより大きい場所をより「深い位置」と称し、距離がより小さい場所をより「浅い位置」と称する。
【0019】
第2のピークは、第1のピークよりも浅い位置に存在する。また、第2のピークにおけるドナー濃度は、第1のピークにおけるドナー濃度よりも低い。第3のピークは、第2のピークよりも浅い位置に存在する。本例では、第3のピークにおけるドナー濃度は、第2のピークにおけるドナー濃度および第1のピークにおえるドナー濃度のいずれよりも高い。第3のピークにおけるドナー濃度は、第2のピークにおけるドナー濃度および第1のピークにおけるドナー濃度の少なくとも一方よりも低くてもよい。
【0020】
第4のピークは、第3のピークよりも浅い位置に存在する。本例では、第4のピークは、FS領域40において最も浅い位置に存在する。第4のピークは、カソード領域30と隣接する位置に設けられてよく、離れた位置に設けられてもよい。複数のピークは、FS領域40の深さ方向において等間隔に設けられてよく、不等間隔に設けられてもよい。本例では、第4のピークにおけるドナー濃度は、他のピークのいずれのドナー濃度よりも高い。
【0021】
つまり本例では、FS領域40において、半導体基板10の裏面側から離れるほどピークの濃度が低くなるが、最も深い位置における第1のピークの濃度が、直前の第2のピークの濃度よりも高くなる。このように、第1のピークの濃度を、第2のピークの濃度よりも高くすることで、半導体基板10の深さ方向におけるキャリアライフタイムの分布を適切に制御することができる。
【0022】
例えば、半導体基板10においては、電子線等を照射することでキャリアライフタイムを制御する。電子線等の照射により、半導体基板10を形成するシリコン結晶等の原子間の結合が切れて結晶欠陥が発生する。これにより、キャリアライフタイムが短くなる。なお電子線等を照射すると、半導体基板10の全体においてほぼ均等にキャリアライフタイムが短くなってしまう。
【0023】
一方、プロトンは、結合が切れた原子を終端して上述した結晶欠陥を修復する。つまりプロトンは、キャリアライフタイムを回復させる機能を有する。このため、半導体基板10に注入するプロトンの濃度分布を制御することで、キャリアライフタイムの分布を制御することができる。
【0024】
図3は、半導体基板10の深さ方向におけるキャリアライフタイムの分布例を示す模式図である。
図3において横軸は半導体基板10の深さ方向における位置を示し、縦軸はキャリアライフタイムを示す。ただし
図3に示す分布例は模式的なものであり、半導体基板10の厚みおよびFS領域40の厚みは、
図2の例と一致していない。例えば、
図3においては、FS領域の第1のピークは、アノード領域20およびカソード領域30の中央近傍に位置している。
【0025】
図2に示したような濃度分布となるようにプロトンを注入した後にアニール等でプロトンを拡散させると、拡散したプロトンにより結晶欠陥が水素終端されてキャリアライフタイムが回復する。本例では、FS領域40の最も深い位置に注入されるプロトンの濃度が高いので、
図3に示すように、半導体基板10の表面および裏面よりも、半導体基板10の中間部分のキャリアライフタイムが長くなる。
【0026】
つまり、アノード領域20およびカソード領域30の間における少なくとも一部の領域におけるキャリアライフタイムが、アノード領域20およびカソード領域30におけるキャリアライフタイムのいずれよりも長くなる。なお、このようなキャリアライフタイムの分布となるように、注入するプロトンの濃度分布を制御する。本例では、
図2に示した第1のピークを示す深さ位置におけるキャリアライフタイムが、アノード領域20およびカソード領域30におけるキャリアライフタイムのいずれよりも長くなる。
【0027】
このようなキャリアライフタイムの分布を有することで、後述するように、逆回復電流のピーク電流Irpおよびテール電流を小さくして逆回復損失を低減することができ、且つ、逆回復電圧の時間変化率dV/dtを小さくして緩やかな逆回復を実現することができる。
【0028】
なお、プロトンが半導体基板10の表面側に拡散するため、
図3に示すように、アノード領域20よりもキャリアライフタイムが長い領域が、FS領域40の最深部における第1のピークを示す位置よりも半導体基板10の表面側に延伸する。当該領域の延伸量は、
図4において後述するように、第1のピーク位置から30〜40μm程度と見積もられる。当該延伸量を考慮して、第1のピークの深さ位置を決定することが好ましい。
【0029】
図4は、半導体装置100のリーク電流波形の一例を示す図である。
図4において横軸はアノードカソード間の逆電圧を示し、縦軸はリーク電流を示す。また、比較例として、FS領域40を形成していない半導体装置のリーク電流波形を破線で示す。FS領域40を形成した本例の半導体装置100は、FS領域40を形成していない半導体装置に比べて、概ねリーク電流が低減している。
【0030】
本例の半導体装置100は、逆電圧が200〜300V程度までは、逆電圧に対する漏れ電流増加の傾きが大きい。逆電圧を更に大きくすると、電流の傾きは小さくなる。電流の傾きの減少は、電圧の増加によって広がった空乏層が、プロトンによりキャリアライフタイムが回復した領域に入ったためと考えられる。
【0031】
逆電圧Vと空乏層幅Wの関係は、以下の式で与えられる。
【数1】
ただし、Vbiはビルトイン電圧、N
Aはアクセプタ濃度、N
Dはドナー濃度、εは半導体基板10の誘電率、qは電荷を示す。上式より、電流の傾きが変化する変化点の電圧に対応する空乏層幅Wを算出すると、50〜60μm程度となる。第1のピークは、半導体基板10の裏面から30μm程度の位置にある。また、半導体基板10の厚みは110μm程度である。従って、
図3において説明したように、プロトンは第1のピークの位置から半導体基板10の表面側に30μm程度拡散していると見積もられる。
【0032】
図5は、半導体装置100の製造方向の一例を示す図である。まず、基板準備段階S300において、半導体基板12を準備する。半導体基板12は、後述する研削段階S320において裏面を研削することで半導体基板10として機能する。つまり、半導体基板12は、半導体基板10と同一の材料で形成され、且つ、半導体基板10よりも厚い。半導体基板12および半導体基板10の基板比抵抗は、70〜90Ωcm程度であってよい。
【0033】
次に表面側形成段階S310において、半導体基板12の表面側の素子構造を形成する。本例では、半導体基板12の表面にアノード領域20、絶縁膜22およびアノード電極24を形成する。また、素子構造を形成した後に、素子構造を保護する保護膜を形成してもよい。当該保護膜は、半導体装置100を製造した後に除去してよい。厚い半導体基板12を用いて表面側の構造を形成するので、表面側形成段階S310において半導体基板12の割れ等が発生する可能性を低減できる。
【0034】
次に研削段階S320において、半導体基板12の裏面側を研削して、半導体基板10を形成する。研削後の半導体基板10の厚みは、半導体装置100の定格電圧等によって定める。本例において半導体基板10の厚みは、100〜130μm程度である。
【0035】
次にカソード領域形成段階S330において、半導体基板10の裏面にカソード領域30を形成する。S330においては、リン等のn型不純物を半導体基板10の裏面側からイオン注入する。不純物をイオン注入した後、カソード領域30を形成すべき領域を例えばレーザアニールして、不純物イオンを活性化させてドナー化する。これにより、カソード領域30を形成する。
【0036】
次にFS領域形成段階S340において、FS領域40を形成すべき領域にプロトンを注入する。S340においては、
図2に示したように、FS領域40における深さ方向におけるプロトンの濃度分布が複数のピークを有するように、FS領域40にプロトンを注入する。なお、当該複数のピークのうち、最も半導体基板10の表面側の第1のピークは、第1のピークよりも半導体基板10の裏面側にある第2のピークよりも大きい。これにより、FS領域40を形成する。なお、本例におけるプロトンの加速電圧および注入量の条件範囲は以下である。括弧内は1つの実施例となる値である。これにより、
図2の例と同様の濃度分布を形成する。
第1のピーク:1〜4MeV(1.5MeV)、3E12〜3E13cm
−2(1E13cm
−2)
第2のピーク:0.8〜3MeV(1Mev)、1E12〜1E13cm
−2(7E12cm
−2)
第3のピーク:0.6〜2MeV(0.8MeV)、3E12〜3E13cm
−2(1E13cm
−2)
第4のピーク:0.2〜1MeV(0.4MeV)、3E13〜1E15cm
−2(3E14cm
−2)
また、本例におけるFS領域40の各ピーク濃度および裏面からの深さの好ましい範囲は以下である。括弧内は1つの実施例となる値である。また、第2のピーク、第3のピーク、第4のピークは、それより奥のピークにおけるプロトンの通過領域に形成されるので、通過領域のドナー化の影響を受けて、ドナー濃度がかさ上げされる。そのため、例えば第1のピークのプロトンの注入量と、第3のピークのプロトンの注入量を同じとしても、第3のピークは、第1のピークよりもドナー濃度が増加する。第1および第2のピークのプロトンの通過領域のドナー濃度が追加されるからである。
第1のピーク:2E14〜2E15cm
−3(9E14cm
−3)、15〜150μm(30μm)
第2のピーク:1E14〜1E15cm
−3(5E14cm
−3)、10〜100μm(15μm)
第3のピーク:3E14〜3E15cm
−3(2E15cm
−3)、5〜50μm(10μm)
第4のピーク:3E14〜3E16cm
−3(5E15cm
−3)、1.5〜15μm(3μm)
【0037】
なお、第1のピークの位置は、半導体装置100の耐圧クラスに応じて定めてよい。上述したように、プロトンは半導体基板10の表面側に向かって一定の距離だけ拡散する。半導体基板10の表面側においてプロトンが拡散しない領域をどれだけ残したいかは、半導体装置100の耐圧クラスに応じて定まるので、プロトンの拡散距離を考慮して第1のピークの位置を定めてよい。例えば1700V耐圧の半導体装置100における第1のピークの位置は、1200V耐圧の半導体装置100における第1のピークの位置よりも深い。また、600V耐圧の半導体装置100においては、1200V耐圧の半導体装置100よりも浅い位置に第1のピークを設ける。
【0038】
次にライフタイム制御段階S350において、半導体基板10の裏面側からライフタイムキラーを照射する。S350においては、例えば電子線を半導体基板10の裏面側から照射する。ライフタイムキラーは電子線に限定されないが、当該ライフタイムキラーによって低下させたキャリアライフタイムを、プロトンにより回復できるものを用いる。S350においては、ライフタイムキラーを照射した後に、半導体基板10をアニールする。これによりプロトンが半導体基板10内を拡散して、一部の領域のキャリアライフタイムが回復し、
図3に示したようなキャリアライフタイム分布となる。
【0039】
次にカソード電極形成段階S360において、半導体基板10の裏面側にカソード電極32を形成する。カソード電極32の形成後に、カソード電極32の熱処理を行ってもよい。これにより、半導体装置100を製造できる。
【0040】
図6は、FS領域形成段階S340およびライフタイム制御段階S350の一例を示す図である。本例のFS領域形成段階S340は、プロトン注入段階S342およびプロトンアニール段階S344を有する。また、ライフタイム制御段階S350は、ライフタイムキラー照射段階S352およびライフタイムアニール段階S354を有する。
【0041】
プロトン注入段階S342においては、上述したようにFS領域40を形成すべき領域にプロトンを注入する。そして、プロトンアニール段階S344において、半導体基板10をアニールする。半導体基板10をアニールすることで、半導体基板10内に過剰に存在するプロトンを放出させることができる。プロトンアニール段階S344におけるアニール温度は例えば300〜500℃程度、アニール時間は例えば0.5時間〜10時間程度である。
【0042】
そして、プロトンアニール段階S344の後に、ライフタイムキラーを照射して(S352)、ライフタイムアニールを実施する(S354)。ライフタイムアニール段階S354におけるアニール温度は例えば300〜500℃程度、アニール時間は例えば0.5時間〜10時間程度である。本例では、80kGyの電子線を照射する。本例では、プロトン注入段階S342とライフタイムキラー照射段階S352との間に、半導体基板10をアニールするプロトンアニール段階S344を備え、プロトンアニール段階S344において過剰なプロトンを半導体基板10から放出しているので、ライフタイムアニールにより適度なプロトンが拡散する。これにより、プロトンが拡散した領域のキャリアライフタイムが回復する。このため、ライフタイムキラー照射によるアノード領域20側およびカソード領域30側のキャリアライフタイムの低減と、プロトン拡散によるアノード領域20およびカソード領域30の間の領域におけるキャリアライフタイムの回復とを両立することができる。
【0043】
図7は、FS領域形成段階S340およびライフタイム制御段階S350の他の例を示す図である。本例では、FS領域形成段階S340は、プロトンアニール段階S344を有さない。他は、
図6に示した例と同一である。
【0044】
図8は、プロトンアニールを実施して製造した半導体装置100と、プロトンアニールを実施せずに製造した半導体装置100のリーク電流波形を比較する図である。プロトンアニールを実施せずに、プロトン注入およびライフタイムキラー照射の後にライフタイムアニールした場合、ライフタイムアニール時にプロトンが多量に残存しており、ライフタイムキラー照射により形成した結晶欠陥をほぼすべて回復してしまう。このため、
図8に示すようにライフタイムキラー照射の効果がなくなる。一方、プロトン注入後、および、ライフタイムキラー照射後のそれぞれにおいて個別にアニールを実施すると、ライフタイムキラーアニール時におけるプロトンの残存量を適切に制御することができる。このため、キャリアライフタイムの分布制御が容易となる。
【0045】
図9は、キャリアライフタイム分布の他の例を示す図である。本例では、
図3に示した分布に比べて、カソード領域30におけるキャリアライフタイムを低減している。本例の半導体装置100は、半導体基板10の裏面側に、キャリアライフタイムを短くする局所ライフタイムキラーが注入されている。本例において局所ライフタイムキラーは、ヘリウムである。後述するように、カソード領域30側のキャリアライフタイムを下げることでテール電流を小さくすることができるの、逆回復損失を低減することができる。
【0046】
ただし、半導体装置100に逆電圧を印加した時に広がる空乏層が、局所ライフタイムキラーが存在する領域まで広がると、漏れ電流が大きく増加してしまう。このため、局所ライフタイムキラーが存在する領域は、半導体装置100の定格逆電圧が印加された場合に、アノード領域20と半導体基板10のn型領域との境界から広がる空乏層と接しない深さ位置に形成されることが好ましい。また、局所ライフタイムキラーが存在する領域は、半導体装置100に降伏電圧が印加された場合に、アノード領域20と半導体基板10のn型領域との境界から広がる空乏層と接しない深さ位置に形成されてもよい。
【0047】
図10は、半導体装置100に逆電圧を印加したときにおける、空乏層の端部位置の一例を示す図である。なお
図10では、不純物のドープ濃度分布を合わせて示している。また、
図10においては、逆電圧が400V、600V、800V、1000V、1100V、1200Vの場合の空乏層端部の、半導体基板10の裏面からの距離を示している。
【0048】
例えば逆電圧として1200Vが印加された場合、空乏層は半導体基板10の表面から裏面に向かって広がり、空乏層端が裏面から4μmの位置まで達する。本例の構成において定格逆電圧が1200Vの場合、局所ライフタイムキラーは、例えば半導体基板10の裏面から2.5μmよりも深い位置には注入および拡散されないことが好ましい。
【0049】
なお、このように半導体基板10の裏面から浅い位置に局所ライフタイムキラーを注入した場合、局所ライフタイムキラーの注入位置とプロトン注入の第4のピーク位置とが重なる。ヘリウム照射により発生した結晶欠陥は、電子線照射と同様にプロトンによる欠陥回復の影響を受ける。このため、局所ライフタイムキラーの注入量は、当該領域におけるプロトンの注入量に応じて調整することが好ましい。
【0050】
図11は、局所ライフタイムキラーとしてのヘリウムの照射量と、半導体装置100の順方向電圧との関係の一例を示す図である。なお、ヘリウムを照射しない場合の順方向電圧は、1.5〜1.6V程度であった。
【0051】
本例では、第4のピークにおけるプロトンの注入量は、3E14cm
−2である。これに対して、
図11に示すように、ヘリウムの照射量が1E12cm
−2より小さい範囲では、ヘリウムを照射しない場合に比べて順方向電圧の増加が見られない。これは、ヘリウムの照射量がプロトンの注入量に比べて小さすぎて、ヘリウム照射による欠陥が、ほぼ全てプロトンにより水素終端されてしまったためと考えられる。従って、局所ライフタイムキラーの注入量は、プロトンの注入量の1/300以上であることが好ましい。局所ライフタイムキラーの注入量は、プロトンの注入量の1/150以上であってよく、1/100以上であってもよい。また、局所ライフタイムキラーの注入量は、プロトンの注入量の1/3以下であることが好ましい。
【0052】
図12は、逆回復時におけるアノードカソード間電圧およびアノード電流の時間波形の一例を示す図である。半導体装置100においては、
図12に示したピーク電流値Irpおよびテール電流を小さくすることで逆回復損失を低減できる。また、アノードカソード間電圧の傾きdV/dtを大きくすることで、逆回復を緩やかにすることができる。
【0053】
図13は、半導体基板10を深さ方向に7分割して、それぞれの領域のキャリアライフタイムを変更したときの、順方向電圧とdV/dtとの関係を示す図である。
図13に示した例では、デバイスシミュレーションにより当該関係を算出した。一般に、キャリアライフタイムを短くすると、順方向電圧Vfは上昇する関係にある。
【0054】
図14Aは、半導体基板10の表面から、1/7までの深さまでの領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノードカソード間電圧V
KAの時間波形との関係を示している。
図14Bは、半導体基板10の表面から、1/7までの深さまでの領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノード電流I
Aの時間波形との関係を示している。なお、
図14Aから
図20Bにおいては、Vf=1.66V、1.70V、1.80V、1.90V、2.00Vの例を示している。各図においてVf=1.66Vおよび2.00Vのグラフを矢印で指し示しているが、Vf=1.70V、1.80V、1.90Vのグラフは、Vf=1.66Vおよび2.00Vのグラフの間に、Vfの大きさの順番に並んでいる。
【0055】
図15Aは、1/7から2/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノードカソード間電圧V
KAの時間波形との関係を示している。
図15Bは、半導体基板10の表面から、1/7から2/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノード電流I
Aの時間波形との関係を示している。
【0056】
図16Aは、2/7から3/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノードカソード間電圧V
KAの時間波形との関係を示している。
図16Bは、半導体基板10の表面から、2/7から3/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノード電流I
Aの時間波形との関係を示している。
【0057】
図17Aは、3/7から4/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノードカソード間電圧V
KAの時間波形との関係を示している。
図17Bは、半導体基板10の表面から、3/7から4/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノード電流I
Aの時間波形との関係を示している。
【0058】
図18Aは、4/7から5/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノードカソード間電圧V
KAの時間波形との関係を示している。
図18Bは、半導体基板10の表面から、4/7から5/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノード電流I
Aの時間波形との関係を示している。
【0059】
図19Aは、5/7から6/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノードカソード間電圧V
KAの時間波形との関係を示している。
図19Bは、半導体基板10の表面から、5/7から6/7までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノード電流I
Aの時間波形との関係を示している。
【0060】
図20Aは、6/7から半導体基板10の裏面までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノードカソード間電圧V
KAの時間波形との関係を示している。
図20Bは、6/7から半導体基板10の裏面までの深さ領域のキャリアライフタイムを変更したときの順方向電圧Vfと、アノード電流I
Aの時間波形との関係を示している。
【0061】
図13から
図20Aから、下記が理解できる。
・半導体基板10の表面(アノード側表面)から3/7までの領域は、順方向電圧Vfの変動はIrpへの影響が大きい。一方、順方向電圧Vfが高くなってもdV/dtは下がる傾向にある。このため、当該領域においては、Irpを小さくするためにキャリアライフタイムが短いことが好ましい。
・半導体基板10の表面から見て3/7から5/7までの領域は、順方向電圧Vfの変動はdV/dtへの影響が大きい。このため、緩やかなdV/dtを実現するために当該領域のキャリアライフタイムは長い方が好ましい。
・半導体基板10の表面から見て5/7から半導体基板10の裏面(カソード側表面)までの領域は、順方向電圧Vfの変動はテール電流への影響が大きい。このため、テール電流を小さくするためにはキャリアライフタイムは短い方がよい。一方、キャリアライフタイムを短くしすぎるとカソード側のキャリアが減少しすぎて、逆回復時に電圧、電流の発振現象を引き起こす場合がある。このため、当該領域のキャリアライフタイムは、3/7から5/7までの領域よりも短く、半導体基板10の表面から3/7までの領域よりも長くてよい。
【0062】
なお、上記の現象は以下のようにも理解できる。逆回復時には、アノード領域20側から空乏層が広がる。空乏層の領域に存在していたキャリアが吐き出されて逆回復電流になる。従って、半導体基板10の表面側のキャリアが多いと、最初に流れる電流のピークIrpが高くなりやすい。
【0063】
また、空乏層の拡大が止まった状態で、空乏層と半導体基板10の裏面との間の領域に存在するキャリアはテール電流として流れる。このため、半導体基板10の裏面側のキャリアが多いと、テール電流が大きくなりやすい。
【0064】
また、半導体装置100がIGBT等の還流ダイオードとして用いられているような場合、IGBT等が半導体装置100から所定の電流を引き込む。このとき、半導体基板10に多くのキャリアが存在していたほうが、空乏層がゆっくり広がっても当該電流をIGBT等に供給することができる。一方、キャリアが少ないと、当該電流を供給するために空乏層がはやく広がることになり、逆回復電圧の傾きdV/dtが大きくなる。このため、空乏層が拡大していく途中の半導体基板10の中ほどのキャリアが多いと、逆回復電圧の傾きdV/dtは小さくなる。
【0065】
また、第1のピークは、半導体装置100の逆回復時のダイオードの電極間電圧が、印加電圧の半分の値になった場合に、上述した空乏層の半導体基板10の裏面側の端部に応じた位置に設けられることが好ましい。一般的に、逆回復時の印加電圧は、素子耐圧の半分程度に設定されることが多い。例えば1200V耐圧の素子では、印加電圧600Vで逆回復させる。逆回復時にdV/dtが最も大きくなるのは、アノードカソード間電圧が、当該印加電圧の半分となったときである。当該アノードカソード間電圧のときに空乏層が進展している位置に、第1のピークを配置することで、dV/dtを効率よく緩和することができる。
【0066】
本例の半導体装置100は、プロトンを注入してFS領域40を形成しつつ、当該プロトンを拡散させることでキャリアライフタイムを回復させる。本例では、
図2等に示したようなプロトンの分布を有するので、
図3または
図9に示したように、半導体基板10の中間でピークを有するキャリアライフタイムの分布を形成することができる。当該キャリアライフタイムの分布により、
図13から
図20Aにおいて説明したように、小さいピーク電流Irp、小さいテール電流、および、緩やかな逆回復電圧の傾きdV/dtを実現することができる。
【0067】
図21は、他の実施形態に係る半導体装置200の構成例を示す図である。本例の半導体装置200は、逆並列に接続されたIGBT素子140とFWD素子150とが一体に形成されたRC−IGBT装置である。半導体装置200は、半導体基板10、絶縁膜122、エミッタアノード電極124およびコレクタカソード電極132を備える。
【0068】
半導体基板10は、表面側に形成されたp型領域120を有する。また、半導体基板10は、半導体基板10の表面からp型領域120を貫通して形成された複数のトレンチ104を有する。それぞれのトレンチ104の半導体基板10の裏面側における先端は、p型領域120の端部よりも突出している。それぞれのトレンチ104は、半導体基板10の表面からp型領域120を貫通して形成されたトレンチゲート102を有する。また、それぞれのトレンチゲート102と、それぞれの半導体層とは、絶縁膜103により絶縁される。
【0069】
また、トレンチ104により分離された複数のp型領域120のうち、IGBT素子140に対応するp型領域120の一部には、n+型領域106およびp+型領域108が形成される。n+型領域106は、p型領域120の表面において、トレンチ104と隣接して設けられる。p+型領域108は、p型領域120の表面において、n+型領域106により挟まれて設けられる。
【0070】
また、複数のp型領域120のうち、FWD素子150に対応するp型領域120は、
図1から
図20Bにおいて説明したアノード領域20として機能する。なお、FWD素子150に対応するp型領域120にも、n+型領域106およびp+型領域108が形成されていてもよい。
【0071】
それぞれのp型領域120には、エミッタアノード電極124が接続される。p型領域120にn+型領域106およびp+型領域108が形成されている場合、エミッタアノード電極124は、n+型領域106およびp+型領域108の双方に接続する。n+型領域106およびp+型領域108が形成されていない場合、エミッタアノード電極124はp型領域120に接続される。
【0072】
また、エミッタアノード電極124とトレンチゲート102とは、絶縁膜122により絶縁される。それぞれのトレンチゲート102は、図示していないゲート電極に接続される。トレンチゲート102に電圧が印加されることで、n+型領域106および半導体基板10の間のp型領域120に縦方向のチャネルが形成される。
【0073】
半導体基板10は、裏面側に形成されたFS領域40を備える。FS領域40は、
図1から
図20Bにおいて説明したFS領域40と同一の構造および特性を有する。また、FS領域40の裏面のうち、IGBT素子140に対応する領域にはp型のコレクタ領域130が形成され、FWD素子150に対応する領域にはn型のカソード領域30が形成される。コレクタ領域130およびカソード領域30の裏面には、共通のコレクタカソード電極132が形成される。
【0074】
本例のようなRC−IGBT型の半導体装置200においても、
図1から
図20Bにおいて説明したように、FS領域40におけるプロトン注入濃度を調整して、キャリアライフタイムを制御することは有効である。
【0075】
図22は、半導体装置200の製造方法の一例を示す図である。まず、
図5の例と同様に半導体基板12を準備する。次に表面素子構造形成段階S402において、半導体基板12の表面側の素子構造を形成する。本例では、半導体基板12の表面に、p型領域120、トレンチ104、n+型領域106、p+型領域108、n型領域110、および、絶縁膜122を形成する。
【0076】
次に表面電極形成段階S404においてエミッタアノード電極124を形成する。次に、裏面研削段階S406において半導体基板12の裏面を研削する。次に裏面拡散層イオン注入段階S408において、コレクタ領域130およびカソード領域30に対応する半導体基板10の裏面の領域に、それぞれp型不純物イオンおよびn型不純物イオンを注入する。次に裏面レーザアニール段階S410において、p型不純物イオンおよびn型不純物イオンを注入した領域をレーザアニールすることでコレクタ領域130およびカソード領域30を形成する。次に、表面保護膜形成段階S412において、半導体基板10の表面に保護膜を形成する。
【0077】
次に、プロトン注入段階S412およびプロトンアニール段階S414においてFS領域40を形成する。プロトン注入段階S412およびプロトンアニール段階S414は、
図6におけるプロトン注入段階S342およびプロトンアニール段階S344と同一である。これにより、
図2に示したようなプロトンの濃度分布を有するFS領域40を形成する。
【0078】
次に、ライフタイムキラー照射段階S416およびライフタイムアニール段階S418において、キャリアライフタイムを制御する。ライフタイムキラー照射段階S416およびライフタイムアニール段階S418は、
図6におけるライフタイムキラー照射段階S352およびライフタイムアニール段階S354と同一である。これにより、
図3または
図9に示したようなキャリアライフタイム分布を実現する。
【0079】
そして、裏面電極形成段階S420において、コレクタカソード電極132を形成する。これにより半導体装置200が製造される。
【0080】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0081】
図23は、FS領域40におけるキャリア濃度分布の他の例を示す図である。
図23において横軸はFS領域40の裏面側端部からの深さ位置を示し、縦軸はキャリア濃度を示す。当該キャリア濃度は、FS領域40に注入されたプロトンによるドナー濃度に対応する。
【0082】
図23に示すように、FS領域40における深さ方向のドナー濃度分布は、複数のピークを有する。本例においても、
図2の例と同様に、第1のピーク、第2のピーク、第3のピーク、第4のピークが存在する。ただし本例において、FS領域40の裏面側端部に最も近い第4のピークを除く第1から第3のピークは、裏面端部からの距離が大きいほどキャリア濃度が大きい。つまり、第1のピークは、第2のピークおよび第3のピークよりもキャリア濃度が大きく、第2のピークは第3のピークよりもキャリア濃度が大きい。
【0083】
FS領域40は、p+型のアノード領域20およびn−型の半導体基板10の境界から広がる空乏層が、カソード領域30まで到達することを防ぐ。空乏層は、最大で、複数のピークのうちの最も裏面端部に近いピークまで広がってよい。
【0084】
本例では、第1から第3のピークの濃度が、基板表面側から裏面側に向かって徐々に減少する。また、最も小さいピーク濃度は、
図2の例に比べて大きい。このため、逆回復電圧の傾きdV/dtを小さくすることができる。
【0085】
図24は、半導体基板10の深さ方向における不純物濃度分布の一例を、ヘリウム分布および水素分布とともに示す図である。
図24においては、p型およびn型の不純物濃度を合わせて示している。本例では、半導体基板10の表面から数μm程度の深さまで、高濃度のp型のアノード領域20が形成される。アノード領域20の端部から、55μm程度の深さまでドリフト領域としてのn−型領域が形成され、55μm程度移行の深さに、FS領域40およびカソード領域30が形成されている。
【0086】
また
図24においては、比較例300の不純物濃度を点線で示している。本例の半導体装置100のFS領域40において、最も半導体基板10の表面に近い不純物濃度のピークが、比較例300における当該ピークよりも大きくなっている。
【0087】
また、本例の半導体装置100では、半導体基板10の表面側のキャリアライフタイムを制御するために、半導体基板10の表面からヘリウムイオンを照射している。本例では、ヘリウムイオンの平均飛程をRp、ヘリウムイオンの飛程分布の半値幅をΔRpとする。
【0088】
半導体基板10の表面から照射したヘリウムイオンの飛程のピーク位置(すなわち、半導体基板10の表面から深さRpの位置)は、FS領域40のドナー濃度分布のピークのうち、最も半導体基板10の表面側のピークから40μmの範囲に配置されてよい。ピークからの距離は、ピークの極大点よりも基板表面側において、ドナー濃度が当該ピークの極大値の半分となる位置から計測してよい。
【0089】
このような構成により、ヘリウムイオンを照射したことにより生じた空孔に起因するダングリングボンドが、FS領域40の当該ピークから拡散した水素により所定量終端される。このため、ヘリウムおよび空孔に起因する漏れ電流を低減することができる。また、
図3に示したキャリアライフタイム分布を容易に実現できる。
【0090】
なお、ヘリウムイオンの飛程分布の半値位置Rp−ΔRpを、FS領域40のドナー濃度分布の当該ピークから40μmの範囲内としてもよい。これにより、より効率よく漏れ電流を低減することができる。ただし、ヘリウムイオンの分布位置は、これらの範囲に限定されない。ヘリウムイオンの飛程のピーク位置Rpが、FS領域40のドナー濃度分布の当該ピークから40μm以上離れていても、当該ピークから拡散する水素は少なくなるものの、ある程度漏れ電流を低減することができる。
【0091】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。