特許第6319454号(P6319454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6319454
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20180423BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180423BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20180423BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   H01L29/78 655B
   H01L29/78 652P
   H01L29/78 655F
   H01L29/78 652K
   H01L29/78 653C
   H01L29/78 652D
   H01L29/06 301F
   H01L29/06 301V
   H01L29/06 301G
   H01L29/06 301D
   H01L29/78 655C
   H01L29/78 658H
   H01L29/78 658E
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 656A
   H01L29/78 652H
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-555145(P2016-555145)
(86)(22)【出願日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2015077376
(87)【国際公開番号】WO2016063683
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-216872(P2014-216872)
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】大月 正人
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−525610(JP,A)
【文献】 特開2006−344779(JP,A)
【文献】 特開2006−269720(JP,A)
【文献】 特開2011−171552(JP,A)
【文献】 特開2013−138172(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/141181(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/157772(WO,A1)
【文献】 特開2013−247248(JP,A)
【文献】 特開2011−134861(JP,A)
【文献】 特開2010−219258(JP,A)
【文献】 特開2008−078282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面側に形成された超接合構造と、
前記半導体基板の裏面側において前記超接合構造と重なる位置に形成され、且つ、前記超接合構造の裏面側端部と接しないように形成されたフィールドストップ層と、
前記半導体基板に形成され、前記超接合構造と、前記フィールドストップ層の一部とを含む超接合型トランジスタ素子と、
前記半導体基板に形成され、前記フィールドストップ層の一部を含むIGBT素子と
を備え、
前記超接合型トランジスタ素子は、超接合型トランジスタ領域を含み、
前記IGBT素子は、IGBT領域を含み、
前記半導体基板は、前記超接合型トランジスタ領域と前記IGBT領域との境界部に、半導体装置への順電圧印加時において前記超接合型トランジスタ領域のn型カラムのキャリア量と前記IGBT領域のn型ベース層のキャリア量との中間のキャリア量を有する領域を有する
半導体装置。
【請求項2】
前記フィールドストップ層における不純物濃度分布は、前記半導体基板の最も裏面側に最大ピークを有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記フィールドストップ層は、プロトンを不純物として有する
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記フィールドストップ層における不純物濃度分布は、前記半導体基板の裏面側から前記半導体基板の表面側に向けて徐々に減少する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記フィールドストップ層は、セレンを不純物として有する
請求項1または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記超接合構造と前記フィールドストップ層との深さ方向における距離が20μm以下である
請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面側に形成された超接合構造と、
前記半導体基板の裏面側において前記超接合構造と重なる位置に形成され、且つ、前記超接合構造の裏面側端部と接しないように形成されたフィールドストップ層と、
前記半導体基板に形成され、前記超接合構造と、前記フィールドストップ層の一部とを含む超接合型トランジスタ素子と、
前記半導体基板に形成され、前記フィールドストップ層の一部を含むIGBT素子と
を備え、
前記半導体基板は、前記フィールドストップ層よりも裏面側にドレイン層を有し、
前記半導体基板は、前記フィールドストップ層と前記ドレイン層との間に、前記フィールドストップ層および前記ドレイン層とは異なる極性を有するフローティング領域を有する
半導体装置。
【請求項8】
前記超接合型トランジスタ素子は、超接合型トランジスタ領域を含み、
前記IGBT素子は、IGBT領域を含み、
前記半導体基板は、前記超接合型トランジスタ領域と前記IGBT領域との境界部に、ライフタイムキラーが注入されている欠陥領域を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体装置の製造方法であって、
前記半導体装置の製造方法は、
半導体基板に超接合構造を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面側において前記超接合構造と重なる位置であり、且つ、前記超接合構造の裏面側端部と接しないように、フィールドストップ層を形成する工程と、
前記半導体基板に、前記超接合構造と前記フィールドストップ層の一部とを含む超接合型トランジスタ素子と、前記フィールドストップ層の一部を含むIGBT素子とを形成する工程と
を備え、
前記超接合型トランジスタ素子は、超接合型トランジスタ領域を含み、
前記IGBT素子は、IGBT領域を含み、
前記半導体基板は、前記超接合型トランジスタ領域と前記IGBT領域との境界部に、前記半導体装置への順電圧印加時において前記超接合型トランジスタ領域のn型カラムのキャリア量と前記IGBT領域のn型ベース層のキャリア量との中間のキャリア量を有する領域を有する
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記超接合構造を形成する工程の後に、前記半導体基板の裏面側を研磨する工程をさらに備える
請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、超接合型MOSFETを有する半導体チップと、絶縁ゲートバイポーラトランジスタを有する半導体チップとを並列に接続していた(例えば、特許文献1参照)。なお、超接合(Super Junction)は、以下においてSJと略記する。また、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor)は、以下においてIGBTと略記する。また従来、p+コレクタ層を有するSJ‐MOSFET構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2014−130909号公報(米国特許出願公開第2014/184303号明細書)
[特許文献2] 特開2013−102111号公報(米国特許出願公開第2013/134478号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
しかしながら、特許文献1では、SJ‐MOSFETを有する半導体チップとIGBTを有する半導体チップとを配線により接続してモジュール化する。それゆえ、SJ‐MOSFETおよびIGBTを1つの半導体チップに形成する場合と比較して、モジュールを小型化することができない。また、特許文献2では、プロトンを有する空乏層緩和領域の上側縁がp型カラム層の底面とほぼ一致するように設けられる(図1、段落0055および段落0056)。これにより、ドナー化したプロトンとn−型ベース層とが接触するので、n−型ベース層のキャリアである電子がp型カラム層のキャリアである正孔よりも多くなり、キャリアのバランスが崩れる。従って、n−型ベース層とp型カラム層とにより空乏層が形成されにくい。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様においては、半導体基板と、超接合構造と、フィールドストップ層とを備える半導体装置を提供する。超接合構造は、半導体基板の表面側に形成されてよい。フィールドストップ層は、半導体基板の裏面側において超接合構造と重なる位置に形成され、且つ、超接合構造の裏面側端部と接しないように形成されてよい。
【0004】
フィールドストップ層における不純物濃度分布は、半導体基板の最も裏面側に最大ピークを有してよい。フィールドストップ層は、プロトンを不純物として有してよい。
【0005】
フィールドストップ層における不純物濃度分布は、半導体基板の裏面側から半導体基板の表面側に向けて徐々に減少してよい。フィールドストップ層は、セレンを不純物として有してよい。
【0006】
超接合構造とフィールドストップ層との深さ方向における距離は、20μm以下であってよい。半導体装置は、超接合型トランジスタ素子と、IGBT素子とを有してよい。超接合型トランジスタ素子は、半導体基板に形成されてよい。超接合型トランジスタ素子は、超接合構造と、フィールドストップ層の一部とを含んでよい。IGBT素子は、半導体基板に形成されてよい。IGBT素子は、フィールドストップ層の一部を含んでよい。
【0007】
半導体基板は、フィールドストップ層よりも裏面側にドレイン層を有してよい。半導体基板は、フィールドストップ層とドレイン層との間に、フローティング領域を有してよい。フローティング領域は、フィールドストップ層およびドレイン層とは異なる極性を有してよい。
【0008】
本発明の第2の態様においては、半導体基板に超接合構造を形成する工程と、フィールドストップ層を形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法を提供する。フィールドストップ層を形成する工程においては、半導体基板の裏面側において超接合構造と重なる位置であり、且つ、超接合構造の裏面側端部と接しないように、フィールドストップ層を形成してよい。また、半導体装置の製造方法は、超接合構造を形成する工程の後に、半導体基板の裏面側を研磨する工程をさらに備えてよい。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半導体装置200を半導体基板100の表面側から見た平面図である。
図2】半導体装置200のS1−S2断面図である。
図3】(a)SJ‐MOSFET部10のA1‐A2における不純物濃度、および、(b)IGBT部20のB1‐B2における不純物濃度を示す図である。
図4】(a)SJ‐MOSFET部10のA1‐A2における不純物濃度、および、(b)IGBT部20のB1‐B2における不純物濃度の他の例を示す図である。
図5】(a)エピタキシャル層120の形成工程、(b)不純物をドープしたエピタキシャル層122を多段形成する工程、ならびに、(c)エピタキシャル層124を形成する工程を示す図である。
図6】(d)表面構造形成工程および裏面研磨工程、(e)FS層72形成工程、ならびに、(f)裏面構造形成工程を示す図である。
図7】SJ‐MOSFET部10の変形例である半導体装置210の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、半導体装置200を半導体基板100の表面側から見た平面図である。半導体装置200は、半導体基板100を備える。半導体基板100には、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20が設けられる。半導体基板100には、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20をx‐y平面において囲むように耐圧構造部30が設けられる。
【0013】
本明細書において、x方向はy方向に垂直な方向である。z方向は、x方向およびy方向により規定される平面に垂直な方向である。z方向は、必ずしも重力の方向と平行でなくてよい。半導体基板100のx方向およびy方向の長さは、そのz方向の長さよりも十分に大きい。本明細書においては便宜的に、半導体基板100の+z側の面を表面と称し、その反対側の面を裏面と称する。x‐y平面は半導体基板100の表面および裏面に平行な面である。
【0014】
本例の半導体装置200は、それぞれx方向よりもy方向が長いSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20を有する。つまり、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20は、y方向に長いストライプ形状を有する。半導体装置200は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との間に境界部12を有する。
【0015】
半導体装置200は、x方向の端部にSJ‐MOSFET部10を有する。半導体装置200はx方向に沿って、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との繰り返し構造を有する。また半導体装置200は、x方向の反対側の端部に、SJ‐MOSFET部10を有する。つまり、半導体装置200は、x方向の両端部にはSJ‐MOSFET部10を有する。
【0016】
半導体装置200は、半導体基板100の表面に垂直なx‐z面で半導体装置200を切断した断面において、SJ‐MOSFET部10が挟む領域に、IGBT部20を有する。なお、SJ‐MOSFET部10が挟む領域とは、2つのSJ‐MOSFET部10によりx方向の両側が挟まれたIGBT部20が設けられる領域を意味する。
【0017】
SJ‐MOSFET部10は、1以上の超接合型トランジスタ領域を有する。また、IGBT部20は、1以上のIGBT領域を有する。ただし、SJ‐MOSFET部10は、超接合型トランジスタ領域のみを有しIGBT領域は有しない。また、IGBT部20は、IGBT領域のみを有し超接合型トランジスタ領域は有しない。
【0018】
本明細書において、超接合型トランジスタ領域は、超接合型トランジスタを構成する最小単位の領域を意味する。また、IGBT領域は、IGBTを構成する最小単位の領域を意味する。IGBT領域の耐圧は、超接合型トランジスタ領域の耐圧より高い。例えば、IGBT領域の耐圧は約700Vであり、超接合型トランジスタ領域の耐圧は約650Vである。なお、超接合型トランジスタ領域およびIGBT領域の詳細な構成については次図の説明において述べる。
【0019】
本明細書において、2以上の超接合型トランジスタ領域を有する超接合型トランジスタ領域の群をSJ‐MOSFET部10とする。また、1つの半導体基板100における複数のSJ‐MOSFET部10をまとめてSJ‐MOSFET素子11と称する。同様に、2以上のIGBT領域を有するIGBT領域の群をIGBT部20とする。また、1つの半導体基板100における複数のIGBT部20をまとめてIGBT素子21と称する。
【0020】
本例の半導体装置200は、x方向に沿ってSJ‐MOSFET部10とIGBT部20とを繰り返し有するので、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とはそれぞれ、半導体基板100の異なる場所に設けられる。具体的には、1以上のIGBT領域は、2以上の超接合型トランジスタ領域が挟む領域に設けられる。また、半導体基板100のx方向の両端部にはSJ‐MOSFET部10が設けられる。
【0021】
半導体装置200の電源をオンにして、超接合型トランジスタ領域のドレイン‐ソース間電圧(VDS)およびIGBT領域のコレクタ‐エミッタ間電圧(VCE)を徐々に上昇させると、所定の電圧値を境にして、IGBT領域を流れる電流(ICE)が超接合型トランジスタ領域を流れる電流(IDS)よりも多くなる。超接合型トランジスタ領域およびIGBT領域への負荷は、電流(ICEまたはIDS)と電圧(VDSまたはVCE)との積で決まる。それゆえ、当該所定の電圧値よりも高い電圧をかける場合、超接合型トランジスタ領域の負荷はIGBT領域の負荷よりも小さくなる。
【0022】
半導体装置200の電源をオフすると超接合型トランジスタ領域およびIGBT領域は逆バイアス状態となる。逆バイアス時において、オン状態での負荷が小さい方が破壊耐量は高くなる。所定の電圧値よりも高い電圧をかけたオン状態では、超接合型トランジスタ領域の負荷はIGBT領域の負荷よりも小さい。それゆえ、逆バイアス時において、超接合型トランジスタ領域の破壊耐量はIGBT領域の破壊耐量よりも高い。
【0023】
半導体基板100において、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とは電気的に並列に接続されている。超接合型トランジスタ領域は、逆回復時にダイオードとして機能する。超接合型トランジスタ領域が少な過ぎると、半導体装置200は逆回復時にハードリカバリー特性となる。そこで、ある程度のソフトリカバリー特性を得るべく、一定数の超接合型トランジスタ領域が必要となる。また、超接合型トランジスタ領域の数がIGBT領域の数よりも多すぎると、半導体装置200においてIGBTの特性が失われる。それゆえ、両者のバランスが求められる。
【0024】
半導体装置200は、超接合型トランジスタ領域が挟む領域に、2以上のIGBT領域を有するIGBT部20を有する。例えば、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20とにおいて、2つの超接合型トランジスタ領域と2つのIGBT領域とをそれぞれ設ける。なお、IGBT部20におけるIGBT領域の数とSJ‐MOSFET部10における超接合型トランジスタ領域の数との比は、製品の用途によって異なるが、1:1から3:1となることが好ましい。
【0025】
本例では、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを1つおきではなく、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを複数個おきに設ける。これにより、両者を1つおきに設ける場合と比較して境界部12の割合を減らすことができる。
【0026】
半導体基板100に超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを有する半導体装置200では、低電圧領域では超接合型トランジスタ領域の出力特性が得られ、かつ、高電圧ではIGBT領域の出力特性が得られることが好ましい。しかし、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを1つおきに交互に設ける構成では、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とが干渉し合うことにより異常な電圧‐電流特性(つまり、特性のとび)が発生し得る。それゆえ、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを1つおきに交互に設ける構成は望ましくない。本例では、2以上の超接合型トランジスタ領域を有するSJ‐MOSFET部10と2以上のIGBT領域を有するIGBT部20とを有するので、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを1つおきに交互に設ける構成と比較して、異常な電圧‐電流特性(特性のとび)を抑えることができる。
【0027】
図2は、半導体装置200のS1−S2断面図である。当該断面図における半導体装置200は、SJ‐MOSFET部10と、IGBT部20と、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との間にある境界部12と、耐圧構造部30とを有する。なお本例では、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型として記載する。しかし他の例においては、これを反転させて第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としてもよい。なお、特に元素および作成手法を明示しない限り、半導体基板100のn型およびp型は、周知の元素および周知の作成手法により形成することができる。
【0028】
SJ‐MOSFET部10は、半導体基板100の表面側に形成された超接合構造を有する。本明細書において超接合構造とは、超接合型トランジスタ領域14のx方向に隣接して繰り返して設けられるn型カラム54およびp型カラム56を意味する。
【0029】
SJ‐MOSFET部10は、2以上の超接合型トランジスタ領域14を有する。本例では、SJ‐MOSFET部10は5つの超接合型トランジスタ領域14を有する。ただし、図の見やすさを考慮して1つの超接合型トランジスタ領域14だけに符号を付している。超接合型トランジスタ領域14は、p型ベース層42、コンタクト領域44、ソース領域45、ゲート電極50、ゲート絶縁膜52、および、x方向に隣接するn型カラム54とp型カラム56とを含む。
【0030】
本例では、p型ベース層42はp−型不純物を有し、コンタクト領域44はp+型不純物を有し、ソース領域45はn+型不純物を有する。また、x方向に隣接するn型カラム54はn−型不純物を有し、p型カラム56はp−型不純物を有する。
【0031】
2つの隣接する超接合型トランジスタ領域14は、1つのn型カラム54または1つのp型カラム56を共有する。本例では、2つの隣接する超接合型トランジスタ領域14は、1つのn型カラム54を共有する。また、2つの隣接する超接合型トランジスタ領域14は、1つのゲート電極50およびゲート絶縁膜52を共有する。
【0032】
IGBT部20は、2以上のIGBT領域24を有する。図2に示す部分においては、IGBT部20は6つのIGBT領域24を有する。ただし、図の見やすさを考慮して1つのIGBT領域24だけに符号を付している。IGBT領域24は、p型ベース層42、コンタクト領域44、エミッタ領域46、ゲート電極50、ゲート絶縁膜52、および、n型ベース層40を含む。なお、エミッタ領域46はn+型不純物を有する。
【0033】
隣接する2つのIGBT領域24はn型ベース層40を共有する。また、隣接する2つのIGBT領域24は、1つのゲート電極50およびゲート絶縁膜52を共有する。
【0034】
なお、逆バイアス時において、超接合型トランジスタ領域14の耐圧をIGBT領域24の耐圧よりも低くするには、必要に応じて隣接するIGBT領域24のゲート電極50間の間隔を隣接する超接合型トランジスタ領域14のゲート電極50間の間隔より広くする。また、IGBT領域のn型ベース層40の不純物濃度を低くすることでもIGBT領域の耐圧を高くすることができる。
【0035】
(境界部12)本例の境界部12のn型ベース層40は、半導体装置200に順電圧を印加してオンさせる場合、SJ‐MOSFET部10のn型カラム54よりもキャリア量が多く、IGBT部20のn型ベース層40よりもキャリア量が少ない領域である。IGBT領域24のキャリアは正孔および電子であり、超接合型トランジスタ領域14のキャリアは電子のみである。それゆえ半導体装置200を順電圧で動作させる場合、IGBT領域24のキャリアの量は、超接合型トランジスタ領域14のキャリア量よりも多い。例えば、IGBT領域24のキャリア量は、超接合型トランジスタ領域14のキャリア量よりも一桁多い。
【0036】
逆バイアス時において、仮に境界部12が無くSJ‐MOSFET部10とIGBT部20とが接合して連続している場合には、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との境界部分のn型ベース層40は、キャリア量が急峻に変化する部分となる。この場合、境界部分のn型ベース層40には電界が強くかかるので、半導体装置200はブレークダウンして破壊される可能性がある。
【0037】
そこで、境界部12のn型ベース層40に、順電圧印加時においてn型カラム54のキャリア量とn型ベース層40のキャリア量との中間のキャリア量を有する領域を設ける。本例では、IGBT領域24と超接合型トランジスタ領域14との境界部12におけるドリフト領域としてのn型ベース層40に、ライフタイムキラーが注入されている欠陥領域58を有する。ライフタイムキラーが注入されているとは、製造工程において半導体基板100の表面側および/または裏面側から電子線、プロトン(H)またはヘリウム(He)を注入することにより、n型ベース層40に格子欠陥を有する欠陥領域58が形成されることを意味してよい。
【0038】
境界部12は、欠陥領域58を有するので、半導体装置200の逆バイアス時に、n型カラム54とn型ベース層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、逆バイアス時に境界部12のn型ベース層40での電界集中を防ぎ、半導体装置200が破壊されることを防ぐことができる。
【0039】
(表面構造)半導体基板100の表面側の構造は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20とで同じである。本例のゲート電極50は、トレンチ型のゲート電極である。ゲート電極50は、ゲート絶縁膜52により半導体基板100から電気的に絶縁される。p型ベース層42およびコンタクト領域44は2つのゲート電極50の間に設けられる。
【0040】
超接合型トランジスタ領域14では、コンタクト領域44とゲート電極50との間にソース領域45が設けられる。IGBT領域24では、コンタクト領域44とゲート電極50との間にエミッタ領域46が設けられる。
【0041】
絶縁層60はゲート電極50よりも表面側に設けられる。表面電極62は、絶縁層60よりも表面側に設けられる。表面電極62は、コンタクト領域44、ソース領域45およびエミッタ領域46のうち、少なくともコンタクト領域44に接する。
【0042】
境界部12の表面側の構造は、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20とほぼ同じである。ただし、境界部12とIGBT部20との間には、エミッタ領域46を設けない。これにより、境界部12がIGBT領域24として動作することを防止する。
【0043】
(裏面構造)n型層70は、IGBT部20においては、n型ベース層40に接して、n型ベース層40の裏面側に設けられる。また、n型層70は、SJ‐MOSFET部10においては、n型カラム54およびp型カラム56の超接合構造に接して、超接合構造の裏面側に設けられる。
【0044】
仮にn型層70を設けない場合、SJ‐MOSFET部10においてn型カラム54およびp型カラム56とFS層72とは直接接することとなる。FS層72はn+型でありn型カラム54はn−型であるので、n型カラム54とFS層72とが直接接すると、n型カラム54のキャリア量が増えることとなる。これにより、n型カラム54のキャリアである電子の量とp型カラム56とのキャリアである正孔の量のバランスが崩れることとなる。
【0045】
n型カラム54とp型カラム56とのキャリア量のバランスが崩れる場合は、逆電圧印加時にn型カラム54とp型カラム56とを完全空乏化することができない。そこで、n型カラム54とp型カラム56とのキャリア量のバランスを取るべくn型層70を設ける。本例においてn型層70は、n型カラム54と同じn−型であってよい。
【0046】
n型カラム54とp型カラム56とがそれぞれ同程度のキャリア量を有することにより電荷のプラスマイナス量が略等しくなる。これにより、逆電圧印加時にn型カラム54とp型カラム56とは完全空乏化される。従って、SJ‐MOSFET部10は逆電圧印加時の耐圧を向上させる。
【0047】
FS層72は、フィールドストップ(Field Stop)層である。FS層72はn型層70よりも裏面側に設けられる。FS層72は、半導体基板100の裏面側においてSJ‐MOSFET部10の超接合構造と重なる位置に形成され、且つ、超接合構造の裏面側端部と接しないように形成される。
【0048】
FS層72は、プロトン(H)またはセレン(Se)をドーズして熱処理することにより形成されてよい。本例のFS層72は、n+層である。FS層72は、半導体装置200に逆バイアス時に、空乏層がコレクタ層80に到達するのを防ぐ。なお、FS層72には、欠陥領域58の一部が形成される。
【0049】
コレクタ層80は、FS層72よりも裏面側に設けられる。つまり、コレクタ層80は、FS層72よりも裏面側に設けられる。コレクタ層80は、IGBT部20のコレクタ層として機能する。本例のコレクタ層80は、p+型の層である。
【0050】
ドレイン層82は、FS層72よりも裏面側に設けられる。ドレイン層82は、SJ‐MOSFET部10のドレイン層として機能する。本例のドレイン層82は、n+型の層である。
【0051】
図2より明らかであるが、本例の超接合型トランジスタ領域14は、n型層70の一部と、FS層72の一部と、ドレイン層82の一部と、裏面電極90の一部とを含む。また、IGBT領域24は、n型層70の一部と、FS層72の一部と、コレクタ層80の一部と、裏面電極90の一部とをさらに含む。
【0052】
(SJ‐MOSFET部10の動作)SJ‐MOSFET部10の動作を簡単に説明する。SJ‐MOSFET部10のゲート電極50に所定の電圧が印加されると、ゲート絶縁膜52とp型ベース層42との境界近傍に反転層が形成される。また、半導体装置200に順電圧が印加されている場合、ソース領域45には、ドレイン層82よりも高い所定の電圧が印加される。これにより、コンタクト領域44、ソース領域45、p型ベース層42に形成された反転層、n型カラム54、FS層72およびドレイン層82を順に通って、電子が表面電極62から裏面電極90へ流れる。
【0053】
(IGBT部20の動作)IGBT部20の動作を簡単に説明する。IGBT部20のゲート電極50に所定の電圧が印加される場合、ゲート絶縁膜52とp型ベース層42との境界近傍に反転層が形成される。また、半導体装置200に順電圧が印加されている場合、エミッタ領域46には、コレクタ層80よりも高い所定の電圧が印加される。これにより、エミッタ領域46からn型ベース層40に電子が供給され、コレクタ層80からn型ベース層40に正孔が供給される。これにより、裏面電極90から表面電極62へ電流が流れる。
【0054】
(耐圧構造部30)半導体装置200は、超接合型トランジスタ領域14のうち、最も外側の超接合型トランジスタ領域14の外側に設けた耐圧構造部30を備える。耐圧構造部30は、x‐y平面における内周部に設けられる第1耐圧部32と、x‐y平面における外周部に設けられる第2耐圧部34とを有する。第1耐圧部32は、ガードリング47を有する。本例のガードリング47はp+型である。ガードリング47は、n型領域48の表面側に設けられる。第1耐圧部32は、絶縁層60に設けられたスリットまたは穴を通じてガードリング47に接続するフィールドプレート64を有する。フィールドプレート64およびガードリング47は、x‐y平面においてSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20を囲んでリング状に設けられる。
【0055】
第1耐圧部32は、SJ‐MOSFET部10と同様に、n型カラム54およびp型カラム56の繰り返し構造を有する。n型カラム54およびp型カラム56は、n型領域48の裏面側端部からFS層72の表面側端部までに渡って存在する。n型カラム54およびp型カラム56の繰り返し構造により、半導体装置200の逆バイアス時、x‐y平面方向への空乏層の広がりを防ぐことができる。また、フィールドプレート64は、半導体基板100の表面に集まってきた表面電荷を収集するので、表面電荷に起因して半導体装置200の耐圧が変化することを防ぐことができる。
【0056】
第2耐圧部34は、第1導電型領域としてのn型領域48を有する。また第2耐圧部34は、第2導電型カラムとしてのp型領域49を有する。第2耐圧部34のn型領域48からFS層72までの間には、n型ベース層40が存在する。p型領域49は、n型ベース層40中に間隔を置いて設けられる。p型領域49の端部の深さは、超接合型トランジスタ領域14のp型カラム56の端部の深さよりも浅く設けられる。
【0057】
なお、p型カラム56の端部の深さとは、p型カラム56のFS層72近傍の端部におけるz座標を意味する。p型領域49の端部の深さとは、p型領域49の裏面側の端部におけるz座標を意味する。端部の深さが浅いとは、裏面側に位置する端部のz座標を比較した場合に、より表面側に位置することを意味する。
【0058】
第1耐圧部32におけるp型カラム56のピッチ幅P1と第2耐圧部34におけるp型領域49のピッチ幅P1とは、同じピッチ幅である。当該ピッチ幅P1は、SJ‐MOSFET部10におけるp型カラム56のピッチ幅P2よりも小さい。これにより、耐圧構造部30のピッチ幅P1をSJ‐MOSFET部10のピッチ幅P2と同じにする場合よりも、逆バイアス時における半導体基板100の端部への空乏層の広がりが抑えられるので、半導体装置200を高耐圧化することができる。
【0059】
また、p型領域49の端部の深さをp型カラム56の端部の深さよりも浅くすることにより、第2耐圧部34にはp型の領域に比べてn型の領域が大きくなる。それゆえ、半導体装置200の逆バイアス時空乏層が第1耐圧部32から第2耐圧部34に広がってきた場合に、当該空乏層にはn型ベース層40から電子を主とするキャリアが供給される。これにより、空乏層が半導体基板100のx方向端部に達するのを防ぐことができる。
【0060】
図3は、(a)SJ‐MOSFET部10のA1‐A2における不純物濃度、および、(b)IGBT部20のB1‐B2における不純物濃度を示す図である。横軸は厚みとしてのz方向の長さ(μm)を示し、両端の縦軸はともにn型およびp型の不純物濃度(cm−3)を示す。
【0061】
A1からA2までの長さおよびB1からB2までの長さは等しく、共に半導体基板100の厚みである。半導体装置200の耐圧に応じて、半導体基板100の厚みは調整される。半導体装置200の耐圧が600Vから1200Vである場合、半導体基板100の厚みは60μmから120μmとしてよい。
【0062】
SJ‐MOSFET部10のA1からA2にかけて順に、コンタクト領域44(p++型)、p型ベース層42(p−型)、p型カラム56(p−型)、n型層70(n−型)、FS層72(n+型)、ドレイン層82(n+型)が設けられる。n型カラム54とFS層72との間のn型層70は、FS層72の形成に用いる不純物の影響がない領域である。つまり、FS層72の形成に用いる不純物が拡散しない領域である。
【0063】
FS層72は、裏面側からの不純物ドーピングにより形成する。本例では、FS層72は、セレン(Se)を不純物として有する。FS層72における不純物濃度分布は、半導体基板100の裏面側から表面側に向けて徐々に減少するよう形成する。本例では、半導体基板100の裏面側からドープされたセレンを、ドープ後の熱処理により半導体基板100の表面側へ熱拡散させる。ドープされたセレンがn型カラム54に到達しないように熱処理温度および熱処理時間を制御する。熱処理は約900℃であってよく、熱処理時間は約2時間であってよい。これにより、ドープしたセレンが存在しないn型層70を形成する。
【0064】
n型層70の厚みは、n型カラム54およびp型カラム56の超接合構造とFS層72との深さ方向における距離である。深さ方向とは、z方向と平行な方向であればよく、超接合構造からFS層72への方向でもよく、FS層72から超接合構造への方向でもよい。n型層70の厚みは、基板の厚みに依らずに一定の厚みとしてよい。例えば、n型層70の厚みは20μm以下である。具体的には、n型層70の厚みは、20、15、10、9、5、‥3または1μmとしてよい。本例では、n型層70の厚みは3〜5μmである。
【0065】
なお、本例のFS層72を形成するための不純物として、リン(P)を用いることはできない。リンは裏面側からドープしても表面側まで深くドープできない。例えば、せいぜい裏面側から1.5μmまでしかドープすることができない。また、リンは熱処理によっても裏面側から表面側に深くドライブインさせることができない。それゆえ、リンを用いる場合には、n型層70の厚みが20μmよりも大きくなり、相対的にFS層72の厚みが小さくなる。一方、FS層72はn型層70よりも不純物濃度が高いことにより空乏層の拡がりを抑えることができるので、FS層72の機能を発揮させるためには可能な限りn型層70に近い位置にまでFS層72の不純物をドープする方がよい。したがって、FS層72の不純物としては、リンではなく前述のセレンまたはプロトンを用いるのが好適である。
【0066】
本例において、FS層72およびドレイン層82を合わせた厚みは約25μmである。ただし、半導体基板100の厚みに応じて、FS層72およびドレイン層82を合わせた厚みは適宜調節してよい。ドレイン層82は、FS層72に対してさらにn型不純物をドープすることにより形成する。
【0067】
IGBT部20のB1からB2にかけて順に、コンタクト領域44(p++型)、p型ベース層42(p−型)、n型ベース層40(n−型)、n型層70(n−型)、FS層72(n−型)、コレクタ層80(p+型)が設けられる。B1‐B2では、n型カラム54に代えてn型ベース層40を有する点、および、ドレイン層82に代えてコレクタ層80を有する点において、A1‐A2と異なる。他の点は、A1‐A2と同じである。n型ベース層40は、n型カラム54と同じn−型である。本例では、n型ベース層40の不純物濃度は、n型層70の不純物濃度と同じ合ってよい。
【0068】
図4は、(a)SJ‐MOSFET部10のA1‐A2における不純物濃度、および、(b)IGBT部20のB1‐B2における不純物濃度の他の例を示す図である。本例では、FS層72がプロトンを不純物として有する点で、図3の例とは異なる。他の点は、図3の例と同じである。
【0069】
FS層72は表面側から裏面側に向かって複数のピークを有する様に形成する。ただし、裏面側から表面側に向かって徐々にピーク値が小さくなるように形成する。本例では、FS層72における不純物濃度分布は、半導体基板100の最も裏面側に最大ピークを有する。これにより、FS層72は逆電圧印加時に十分なキャリアを供給できるともに、n型層70の近傍ではキャリア量を抑えることができる。なお本例では、3つの異なるz座標位置に不純物濃度のピークを有するが、ピークの数は3に限定されず、4以上としてもよい。
【0070】
複数回に分けて、加速電圧およびドープ量を調節することにより、複数のプロトンの不純物濃度ピークを有するFS層72を形成することができる。例えば、裏面側からドープする場合に、加速電圧をより高くすることによって、より表面側にプロトンをドープすることができる。例えば、加速電圧を1.0MeVとすると加速電圧を0.5MeVとする場合よりも表面側にプロトンをドープすることができる。本例における複数のピークを実現するべく、加速電圧は1.45MeVから0.4MeVの範囲で適宜選択してよく、不純物のドープ量は1E+12cm−2から3E+14cm−2の範囲で適宜選択してよい。
【0071】
図5および図6により、半導体装置200のSJ‐MOSFET部10、境界部12およびIGBT部20の製造方法を断面により説明する。図5は、(a)エピタキシャル層120の形成工程、(b)不純物をドープしたエピタキシャル層122を多段形成する工程、ならびに、(c)エピタキシャル層124を形成する工程を示す図である。
【0072】
図5(a)エピタキシャル層120の形成工程)まず、半導体基板110の表面側に接してエピタキシャル層120を形成する。本例において、半導体基板110およびエピタキシャル層120は共にn−型である。
【0073】
図5(b)不純物をドープしたエピタキシャル層122を多段形成する工程)次に、エピタキシャル層120の表面側から、p型不純物およびn型不純物をそれぞれ異なる場所に局所的にドープする。p型不純物はボロン(B)であってよく、n型不純物はリン(P)であってよい。
【0074】
その後、エピタキシャル層120の表面側にエピタキシャル層122を形成する。本例において、エピタキシャル層122は、エピタキシャル層120と同様にn−型である。エピタキシャル層122の形成後に、エピタキシャル層122の表面側から、p型不純物およびn型不純物をそれぞれ異なる場所に局所的にドープする。このとき、エピタキシャル層120およびエピタキシャル層122において、n型不純物およびp型不純物をそれぞれドープする位置のxおよびy座標は略一致させる。なおここで、ドープする位置のx座標およびy座標を略一致させるとは、不純物のドーピングに用いるマスク位置合わせ精度の誤差の範囲内であることを意味してよい。
【0075】
図5(c)エピタキシャル層124を形成する工程)その後、エピタキシャル層122の形成ならびにp型不純物およびn型不純物の局所的ドープを複数回繰り返す。その後、熱処理をすることにより、n型ベース層40、n型カラム54およびp型カラム56を有するエピタキシャル層124を形成する。これにより、半導体基板110にn型カラム54およびp型カラム56を有する超接合構造を形成する。
【0076】
図6は、(d)表面構造形成工程および裏面構研磨工程、(e)FS層72の形成工程、ならびに、(f)裏面構造形成工程を示す図である。図5の(c)の工程の次が、図6の(d)の工程である。
【0077】
図6(d)表面構造形成工程および裏面研磨工程)まず、表面側(+z側)および/または裏面側(−z側)からライフタイムキラーを導入して欠陥領域58を形成する。その後、ゲート電極50、ゲート絶縁膜52、p型ベース層42、コンタクト領域44、ソース領域45、エミッタ領域46、絶縁層60および表面電極62を含む表面構造を形成する。次に、半導体基板110の裏面側(−z側)を研磨する。なお、半導体基板110は当初の厚みの全てを研磨により除去しなくてもよい。つまり、研磨後において半導体基板110はその厚みを残してよい。なお、裏面研磨に起因する半導体基板100の厚みバラつきは、3〜5μmである。
【0078】
なお、SJ‐MOSFET部10を有するSJ‐MOSFETデバイスを形成する場合、上述の裏面研磨は行われない。SJ‐MOSFETデバイスは、IGBTデバイスのように半導体基板の厚みにより耐圧を調整するデバイスではないからである。SJ‐MOSFET部10を有する半導体装置200を形成する場合に研磨工程を有することは、本明細書における特徴の1つである。
【0079】
図6(e)FS層72の形成工程)次に、半導体基板110の裏面側において、n型カラム54およびp型カラム56の超接合構造およびn型ベース層40と重なる位置であり、且つ、超接合構造の裏面側端部と接しないように、FS層72を形成する。上述の様に、FS層72はセレンをドープすることにより、または、プロトンを複数回ドープすることにより形成してよい。
【0080】
図6(f)裏面構造形成工程)次に、IGBT部20の裏面側からFS層72にp型不純物をカウンタードープすることによりコレクタ層80を形成する。なお、コレクタ層80は、境界部12の裏面側にも設けてよい。また、SJ‐MOSFET部10の裏面側からFS層72にn型不純物をさらにドープすることによりドレイン層82を形成する。最後に、裏面電極90をコレクタ層80およびドレイン層82の裏面側に形成する。裏面電極90は、スパッタリング法により形成されたアルミニウム層であってよい。
【0081】
図7は、SJ‐MOSFET部10の変形例である半導体装置210の断面図である。本例では、半導体基板100は、FS層72とドレイン層82との間に、フローティング領域84を有する。当該フローティング領域84は、FS層72(n+型)およびドレイン層82(n+型)とは異なる極性であるp型不純物を有する。その他の点は、図1の例と同じである。
【0082】
p型のフローティング領域84を裏面電極90とコンタクトさせるとオン電圧が上昇する。それゆえ、p型のフローティング領域84は、裏面電極90とコンタクトさせない。なお、p型のフローティング領域84を裏面電極90とコンタクトさせなければ、p型のフローティング領域84をドレイン層82中にのみ設けてもよい。p型のフローティング領域84をFS層72とドレイン層82との間に設けることにより、逆回復時に高電圧が加わるとp型のフローティング領域84とドレイン層82で構成されるダイオードがアバランシェ降伏してホールが注入される。それゆえ、逆電圧印加時におけるIGBT部20のソフトリカバリー特性をさらに向上させることができる。
【0083】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0084】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0085】
10 SJ‐MOSFET部、11 SJ‐MOSFET素子、12 境界部、14 超接合型トランジスタ領域、20 IGBT部、21 IGBT素子、24 IGBT領域、30 耐圧構造部、32 第1耐圧部、34 第2耐圧部、40 n型ベース層、42 p型ベース層、44 コンタクト領域、45 ソース領域、46 エミッタ領域、47 ガードリング、48 n型領域、49 p型領域、50 ゲート電極、52 ゲート絶縁膜、54 n型カラム、56 p型カラム、58 欠陥領域、60 絶縁層、62 表面電極、64 フィールドプレート、70 n型層、72 FS層、80 コレクタ層、82 ドレイン層、84 フローティング領域、90 裏面電極、100 半導体基板、110 半導体基板、120 エピタキシャル層、122 エピタキシャル層、124 エピタキシャル層、200 半導体装置、210 半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7