(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視で、前記コンタクト開口の内側の前記第1導電型領域の不純物濃度は、前記トレンチゲートとの境界における前記第1導電型領域の不純物濃度よりも低い請求項5に記載の半導体装置。
平面視で、前記第1導電型領域と重なる前記トレンチ離間領域は、平面視で、当該第1導電型領域と隣接する前記第2導電型領域と重なる前記トレンチ離間領域と接続される
請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
(実施例1)
図1A〜
図1Dは、実施例1に係る半導体装置100の構造の概要を示す。
図1Aは、半導体装置100の平面図の一例を示す。
図1Bは、B−B'断面における半導体装置100の構造の一例を示す。B−B'断面は、平面視でn+ソース領域4に沿った断面である。
図1Cは、C−C'断面における半導体装置100の構造の一例を示す。C−C'断面は、n+ソース領域4以外の領域に沿った断面である。
図1Dは、D−D'断面における半導体装置100の構造の一例を示す。D−D'断面は、コンタクト開口領域9に沿った断面である。平面視とは、半導体装置100の基板の表面に垂直な方向から見た場合を指す。
【0010】
半導体装置100は、pコレクタ層1、ドリフト層2、pベース領域3、n+ソース領域4及びトレンチゲート7を備える。ドリフト層2、pベース領域3及びn+ソース領域4は、半導体基板13において形成される。本例の半導体装置100は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)である。半導体装置100の表面にはエミッタ電極10、裏面にはコレクタ電極11が形成される。
【0011】
トレンチ14は、平面視で、半導体基板13の表面に複数並んで、且つ、予め定められた方向に延伸して形成される。トレンチ14の内壁には、ゲート酸化膜6が形成される。また、トレンチゲート7は、ゲート酸化膜6によって周囲が覆われるようにトレンチ14に埋め込まれている。本明細書において、平面視で、トレンチゲート7が延伸する方向をトレンチ奥行方向と称する。また、平面視で、トレンチゲート7が延伸する方向と垂直な方向をトレンチ幅方向と称する。トレンチゲート7のピッチは、5μm以下であってよく、5μmよりも小さくてよく、好ましくは、2.4μm以下である。
【0012】
各々のpベース領域3は、ドリフト層2の表面に、一様に形成される。平面視では、トレンチ14の側壁に沿って、n+ソース領域4を挟んでトレンチ奥行方向に離間して形成される。一方、各々のn+ソース領域4は、平面視で、トレンチ幅方向に離間して形成される。また、pベース領域3とn+ソース領域4とは、平面視で、トレンチ奥行方向に交互に並んで形成される。n+ソース領域4は、トレンチ奥行方向の幅がマスク上で1μm以下に微細化されてよい。
【0013】
p型のトレンチ離間領域12は、トレンチ14に挟まれたドリフト層2の表面部のメサ領域に形成される。トレンチ離間領域12は、平面視で、トレンチゲート7のトレンチ奥行方向に延伸して形成されたp型半導体領域である。トレンチ離間領域12は、p型ドーパントの高濃度の拡散により形成されたコンタクト拡散領域5aの一部である。また、トレンチ離間領域12は、トレンチゲート7及びゲート酸化膜6から離間して形成される。
【0014】
トレンチ離間領域12は、n+ソース領域4とpベース領域3に挟まれるトレンチ離間埋込領域12aと、pベース領域3の表面に形成されたトレンチ離間表面領域12bを含む。トレンチ離間埋込領域12aは、隣接する2つのトレンチ離間表面領域12b同士を、n+ソース領域4の下面で接続する。これにより、隣接する2つのトレンチ離間表面領域12bは互いに電気的に接続される。トレンチ離間領域12の不純物濃度は、pベース領域3の不純物濃度よりも高濃度である。
【0015】
トレンチ離間埋込領域12aは、平面視で、n+ソース領域4内で、且つ、n+ソース領域4の裏面側に形成される。本明細書において、裏面側とは、半導体装置100のコレクタ電極11側を指す。トレンチ離間埋込領域12aは、コンタクト拡散領域5aがn+ソース領域4からpベース領域3にはみ出した領域である。トレンチ離間埋込領域12aの厚みは、隣接するトレンチ離間表面領域12bを電気的に接続できる程度の厚みを有すればよい。例えば、トレンチ離間埋込領域12aの厚みは、0.3μm以下であってよく、より好ましくは0.1μm以下である。
【0016】
また、
トレンチ離間領域12の深さは、トレンチ14の間隔の半分以下であってよい。なお、トレンチ14の間隔とは、トレンチ14と隣接するトレンチ14との最短距離を指す。また、トレンチ離間領域12の深さとは、イオン注入された表面からの拡散深さを指し、トレンチ離間領域12の最も裏面側の位置を指す。
【0017】
トレンチ離間表面領域12bは、平面視で、pベース領域3内に形成される。ここで、本例では、pベース領域3及びn+ソース領域4を形成してトレンチ離間領域12を拡散する。トレンチ離間埋込領域12aは、n+ソース領域4内でp型ドーパントを拡散して形成されるので拡散しにくい。一方、トレンチ離間表面領域12bは、pベース領域3内でp型ドーパントを拡散して形成するので拡散しやすい。そのため、トレンチ離間表面領域12bは、トレンチ離間埋込領域12aよりも深い位置まで拡散する。即ち、トレンチ離間埋込領域12aは、トレンチ離間表面領域12bよりも浅い。
【0018】
層間絶縁膜8は、n+ソース領域4及びpベース領域3上に形成される。層間絶縁膜8は、第1層間絶縁膜8a及び第2層間絶縁膜8bの2層に形成されてよい。例えば、第1層間絶縁膜8aは、高温酸化(HTO:High Temperature Oxide)膜である。また、第2層間絶縁膜8bは、ボロン・リン・シリケートガラス(BPSG:Boron Phosphorus Silicon Glass)膜であってよい。層間絶縁膜8には、エッチングにより、pベース領域3及びn+ソース領域4のいずれかにエミッタ電極10を接続するためのコンタクト開口領域9が設けられる。
【0019】
以上の通り、トレンチ離間領域12は、トレンチゲート7と離間して、トレンチ奥行方向に延伸する。これにより、トレンチ離間領域12は、n+ソース領域4の周辺において、正孔を引き抜く。よって、半導体装置100は、RBSOA耐量を向上できる。なお、RBSOAとは、IGBTのターンオフに伴うコレクタ・エミッタ間電圧とコレクタ電流の非破壊動作範囲を表す。非破壊動作範囲が広いIGBTは、逆バイアスに対する非破壊性能が高い。
【0020】
(比較例1)
図2A〜
図2Dは、比較例1に係る半導体装置500の構成の一例を示す。
図2Aは、半導体装置500の構成の平面図の一例を示す。
図2Bは、B−B'断面における半導体装置500の断面構造の一例を示す。
図2Cは、C−C'断面における半導体装置500の断面構造の一例を示す。
図2Dは、D−D'断面における半導体装置500の断面構造の一例を示す。比較例
1に係る半導体装置500は、p+コンタクト領域55を備える。本例の半導体装置500は、トレンチ離間領域12を有さない点で半導体装置100の構成と異なる。同一の符号を付した他の構成は、半導体装置100と同一の構成を示す。本例のトレンチゲート7のピッチは、2.4〜5.0μmである。
【0021】
比較例1は、トレンチ側壁に、pベース領域3よりも高濃度のp+コンタクト領域55が接触した場合である。p+コンタクト領域55は、高濃度のp型半導体領域であって、トレンチゲート7と離間せずに形成される。また、p+コンタクト領域55は、pベース領域3及びn+ソース領域4のいずれの領域にも形成される。p+コンタクト領域55は、平面視で、n+ソース領域4と同一の領域において、n+ソース領域4よりも裏面側に大きくはみ出して形成される。裏面側に大きくはみ出して拡散されることで水平方向にも拡散され、p+コンタクト領域55がトレンチゲート7に接するようになる。ゲート電極の閾値はトレンチ側壁のp型層の最高濃度で決まる。このため、pベース領域3で決まる値よりもゲート閾値が増加する。
【0022】
また、比較例1に係るp+コンタクト領域55は、n+ソース領域4と同時に拡散されるので、拡散深さを十分に制御できない。つまり、トレンチ離間領域12は、トレンチゲート7から離間するように制御することが困難となる。これにより、半導体装置500を微細化すると、p+コンタクト領域55は、トレンチ
幅方向への回り込みが生じる。また、p+コンタクト領域55のトレンチ
幅方向への回り込みが生じるとチャネル抵抗が増大するので、閾値電圧Vthの上昇、及びゲート電圧変化に対するコレクタ電流の変化率gfsの低下を抑制できない。
【0023】
以上の通り、比較例1に係る半導体装置500は、コンタクト開口領域9においてp+コンタクト領域55に周囲が囲まれたn+ソース領域4を有する。したがって、比較例1に係る半導体装置500は、微細化に伴う閾値電圧Vthの上昇、及びgfsの低下を抑制できない。
【0024】
(比較例2)
図3A〜
図3Dは、比較例
2に係る半導体装置500の構成の一例を示す。
図3Aは、半導体装置500の構成の平面図の一例を示す。
図3Bは、B−B'断面における半導体装置500の断面構造の一例を示す。
図3Cは、C−C'断面における半導体装置500の断面構造の一例を示す。
図3Dは、D−D'断面における半導体装置500の断面構造の一例を示す。本例の半導体装置500は、コンタクト拡散領域5aを有さない点で半導体装置100の構成と異なる。同一の符号を付した他の構成は、半導体装置100と同一の構成を示す。本例のトレンチゲート7のピッチは、2.4〜5.0μmの範囲内である。
【0025】
半導体装置500は、n+ソース領域4が形成された領域において、コンタクト拡散領域5aを有さない。即ち、比較例2に係る半導体装置500は、比較例1に係る半導体装置500と比べて、微細化によるトレンチ
幅方向へのp+コンタクト領域55の回り込みが生じにくい。よって、本例の半導体装置500は、トレンチ
幅方向へのp+コンタクト領域55の回り込みによる閾値電圧Vthの上昇がない。しかしながら、半導体装置500は、n+ソース領域4の下にコンタクト拡散領域5aが形成されないので、十分なRBSOA耐量を達成できない。また、n+ソース領域4及びpベース領域3の形成用のマスクパターンのばらつきにより、閾値電圧Vthが変動し、コレクタ・エミッタ飽和電圧VCE(sat)が上昇してしまう。
【0026】
図4は、比較例1に係る半導体装置500の製造工程の一例を示す。半導体装置500は、ステップS500〜ステップS509を用いて製造される。
【0027】
ステップS500において、チャネルドライブ工程によりチャネルを形成する。チャネルドライブ工程では、半導体装置500をアニールして、チャネル領域を拡散させる。
【0028】
ステップS501において、p+コンタクト領域55をパターニングする。p+コンタクト領域55のパターニングにより、p+コンタクト領域55上にイオン注入領域が開口されたパターンが形成される。その後、ステップS502において、p+コンタクト領域55には、p型ドーパントとしてボロンがイオン注入される。
【0029】
ステップS503において、n+ソース領域4をパターニングする。n+ソース領域4のパターニングにより、n+ソース領域4のイオン注入領域の開口された
パターンが形成される。その後、ステップS504において、n+ソース領域4にヒ素(As)をイオン注入する。
【0030】
ステップS505において、アニールにより、n+ソース領域4及びp+コンタクト領域55を同時に熱拡散させる。ステップS506において、層間絶縁膜8を形成する。ステップS507において、層間絶縁膜8をリフローする。ステップS508において、コンタクト開口領域9をパターニングし、Al−Siを材料とするエミッタ電極10を形成する。ステップS509において、裏面工程により、半導体基板13を裏面から研削して基板厚を薄くする。半導体基板13の裏面側の研削面にn型フィールドストップ層となる水素イオン注入と活性化及びpコレクタ層1となるボロンイオン注入と活性化を行う。最後に、pコレクタ層1の裏面側にコレクタ電極11を形成する。
【0031】
以上の通り、比較例1に係る半導体装置500の製造工程では、n+ソース領域4及びp+コンタクト領域55が同時に形成されるので、p+コンタクト領域55の拡散を十分に制御できない。したがって、比較例1に係る半導体装置500は、微細化に伴う閾値電圧Vthの上昇、及びgfsの低下を抑制できない。
【0032】
図5は、実施例1に係る半導体装置100の製造工程の一例を示す。チャネルの製造工程までは、一般的なトレンチゲート半導体の製造工程と同様である。本例の製造工程では、p+コンタクト領域のパターニングが不要である。
【0033】
ステップS100のチャネルドライブ工程では、チャネル深さ1.0〜3.0μmまで拡散させればよい。ドライブ時の温度は、1000℃〜1150℃であってもよい。ステップS101のn+ソース領域4のパターニング工程では、ステップS503と同様にn+ソース領域4のパターンを形成する。ステップS102のn型ドーパントのイオン注入工程では、n+ソース領域4にn型ドーパントがイオン注入される。n型ドーパントは、ヒ素(As)、リン(P)等の半導体プロセスで一般的に用いられるドーパントであってよい。
【0034】
ステップS103の層間絶縁膜8の形成は、ステップS506とほぼ同様の工程で実施してもよい。また、層間絶縁膜8は、異なる絶縁膜を積層させた2層構造であってよい。例えば、第1層間絶縁膜8aはHTOであり、第2層間絶縁膜8bはBPSGである。ステップS104の層間絶縁膜8のリフロー工程では、ステップS507のリフロー工程とほぼ同様の工程で実施してもよい。但し、ステップS104のリフロー工程では、ステップS10
2でイオン注入されたn型ドーパントが拡散される。BPSGのリフローの条件は、900℃〜1000℃である。すなわち、n+ソース領域4が深さ0.5μm以下になるまで拡散させればよい。
【0035】
ステップS105のコンタクトパターニング工程では、p+コンタクト領域55のイオン注入用のコンタクト開口領域9を形成する。コンタクト開口領域9は、コンタクト形成用のレジストにより形成されてよい。なお、p+コンタクト領域55のイオン注入用のパターニングとして、第1層間絶縁膜8a及び第2層間絶縁膜8bを用いる場合、別にコンタクト開口領域9用のパターニングをする必要がない。
【0036】
ステップS106のp型ドーパントのイオン注入工程では、コンタクト開口領域9にコンタクト拡散領域5aを形成するためのp型ドーパントをイオン注入する。本例のイオン注入は、低ドーズ量、且つ、低加速電圧により行われる。これにより、n+ソース領域4の裏面側にわずかにはみ出したトレンチ離間埋込領域12aを形成できる。p型ドーパントのイオン注入工程では、ボロン(B)がイオン注入される。例えば、p型ドーパントは、第1層間絶縁膜8a及び第2層間絶縁膜8b越しにイオン注入される。また、p型ドーパントは、コンタクト形成用のレジスト越しにイオン注入されてよい。
【0037】
ステップS107において、コンタクト注入領域5bをアニールすることによりコンタクト拡散領域5aを形成する。例えば、コンタクト拡散領域5aの拡散の条件は、ボロンの場合、800℃〜950℃で、例えば900℃であってもよい。例えば、n+ソース領域4以外のコンタクト拡散領域5aは、n+ソース領域4から0.2μm以内の深さとし、n+ソース領域4内のコンタクト拡散領域5aは、n+ソース領域4の深さとn+ソース領域4以外のコンタクト拡散領域5aの深さの間の0.2μm以内の深さにするように拡散させる。
【0038】
但し、トレンチ離間領域12の拡散条件は、半導体装置100の構造、トレンチゲート7のピッチ等に応じて適宜変更される。本例のp+コンタクト領域の拡散工程は、比較例2に係る製造工程のようにn+ソース領域4拡散用のアニール工程よりも後の工程である。したがって、本例の製造方法では、トレンチ離間領域12にn+ソース領域4をアニールする場合の熱履歴がかからないので、コンタクト注入領域5bの拡散を自由に調整できる。
【0039】
その後、ステップS108において、半導体基板13を裏面から研削して基板厚を薄くする。半導体基板13の裏面側の研削面にn型フィールドストップ層となる水素イオン注入もしくはリンイオン注入またはその両方と活性化、およびpコレクタ層1となるボロンイオン注入と活性化を行う。最後に、pコレクタ層1の裏面側にコレクタ電極11が形成される。なお、n型フィールドストップ層はセレンで形成されてもよい。この場合は、第1層間絶縁膜8aまたは第2層間絶縁膜8b形成後に裏面を研削し、研削面にセレンをイオン注入し、拡散温度は800℃〜950℃で、例えば900℃程度の温度で拡散させてもよい。またコンタクト拡散領域5aの拡散条件は、セレン拡散温度以上が好ましい。
【0040】
以上の通り、実施例1に係る半導体装置100の製造方法では、コンタクト拡散領域5aがコンタクト開口領域9を用いてインプラントされるので、コンタクト拡散領域5a用のマスクが不要となる。これにより、本例の製造方法は、実施例1に係る半導体装置100の製造工程を削減できる。
【0041】
また、コンタクト拡散領域5aは、n+ソース領域4の形成後に拡散されるので、大きさを制御できる。つまり、トレンチ離間領域12は、トレンチゲート7から離間するように制御できる。これにより、半導体装置100を微細化しても、コンタクト拡散領域5aは、トレンチ幅方向に回り込まない。よって、半導体装置100は、閾値電圧Vthの上昇及びgfsの低下を抑制できる。
【0042】
図6は、コンタクト注入領域5bの拡散工程の一例を示す。コンタクト注入領域5bは、n+ソース領域4の表面に低ドーズ量、且つ、低加速電圧によりイオン注入される。拡散されたコンタクト注入領域5bは、
図1Bに示したようなコンタクト拡散領域5aを形成する。例えば、コンタクト注入領域5bとしてボロンを注入する場合の加速電圧は、40keV以上150keV以下であっても、40keV以上100keV以下であっても、40keV以上80keV以下であってもよい。ボロンを注入する場合の加速電圧は、40keV以上60keV以下であることが好ましい。なお、コンタクト注入領域5b形成時のボロンのドーズ量は、例えば1e15〜3e15cm
−2であり、Asドーズ量から1/5程度のドーズ量が好ましい。
【0043】
また、イオン注入の条件は、半導体装置100の構造に応じて調節してよい。例えば、n+ソース領域4の中心が窪むほど、コンタクト注入領域5bの位置を浅くすることにより、トレンチゲート7に沿ったコンタクト拡散領域5aの拡散を防止できる。なお、コンタクト注入領域5bの拡散により、平面視で、コンタクト開口領域9の内側のn+ソース領域4の不純物濃度は、トレンチゲート7との境界におけるn+ソース領域4の不純物濃度よりも低くなる場合がある。
【0044】
(実施例2)
図7は、実施例2に係る半導体装置100の平面図の一例を示す。本例の半導体装置100は、平面図において市松模様状に配置されたn+ソース領域4を有する。即ち、トレンチ幅方向において、n+ソース領域4とトレンチ離間表面領域12bとがトレンチ14を挟んで交互に配置される。トレンチ奥行方向においては、n+ソース領域4とトレンチ離間表面領域12bとの間隔がそれぞれ等しくて良い。実施例2に係る半導体装置100では、実施例1に係る半導体装置100と比較して、n+ソース領域4及びトレンチ離間表面領域12bの分布が活性面内で均一である。これにより、実施例2に係る半導体装置では、オン電圧をさらに低減できる。
【0045】
図8は、実施例2に係る半導体装置100のB−B'断面の模式図である。このような断面は、例えば走査型静電容量顕微鏡法(SCM:Scanning Capacitance Microscopy)、走査型マイクロ波顕微鏡法(SMM:Scanning Microwave Microscope)等により観測可能である。SCM像により、半導体のキャリア濃度分布を観察できる。例えば、pベース領域3の深さは、1.0〜3.0μm程であり、トレンチ離間埋込領域12aの深さは0.5μm以下である。トレンチ離間埋込領域12aの深さ方向の厚さは、0.2μm以内であってもよい。また、トレンチゲート7のピッチは、2.4μm〜5.0μm程であってもよい。
【0046】
また、トレンチゲート7の上面(層間絶縁膜8と接する面)の最も深い位置よりも、トレンチ離間埋込領域12aの底面を深くしてもよい。これにより、n+ソース領域4下の正孔を、トレンチ離間埋込領域12aに集めやすくなり、トレンチ離間表面領域12bを通してコンタクト開口領域9からエミッタ電極10に流すことができる。その結果、クーロン力により電子に引き寄せられる正孔を、n+ソース領域4から離すことができるので、ラッチアップ耐量を向上させることができる。
【0047】
図9は、比較例2に係る半導体装置500のD−D'断面図を示す。本例の半導体装置500は、トレンチ奥行方向のマスクずれが生じた場合の構造を示す。n+ソース領域4用のマスク及びp+コンタクト領域55形成用のマスクのいずれか一方でもずれると、半導体装置500の構造にずれが生じる。本例のマスクのずれは、n+ソース領域4のトレンチ奥行方向の残り幅が大きくなる方向である。このように、n+ソース領域4のトレンチ奥行方向の幅が大きくなると、n+ソース領域4の裏面側に正孔が蓄積されやすくなるので、RBSOA耐量が低下する。また、トレンチ奥行方向のn+ソース領域4の残り幅が大きくなると、チャネル密度が増加するので、飽和電流Isatが増加して、半導体装置500の短絡耐量(SCSOA:Short Circuit Safe Opearating Area)が低下する。
【0048】
図10は、比較例2に係る半導体装置500のD−D'断面図を示す。本例のマスクのずれは、n+ソース領域4のトレンチ奥行方向の残り幅が小さくなる方向である。このように、n+ソース領域4のトレンチ奥行方向の幅が小さくなると、チャネル密度が低下するので、飽和電流Isatが低くなる。また、トレンチ奥行方向のn+ソース領域4の残り幅が小さくなると、n+ソース領域4へp+コンタクト領域55が拡散し、n+ソース領域4のコンタクト抵抗が上昇する。よって、半導体装置500は、トレンチ奥行方向のn+ソース領域4の残り幅が小さくなると、閾値電圧Vthが変動し、VCE(sat)が上昇する。
【0049】
図11は、実施例1に係る半導体装置100のD−D'断面図を示す。本例のn+ソース領域4のトレンチ奥行方向の長さは1μmである。
図11中の"H
+"は、正孔を示す。
【0050】
半導体装置100は、コンタクトマスクを用いて、n+ソース領域4にp型ドーパントがイオン注入される。また、トレンチ離間領域12を形成するためのインプラは、n+ソース領域4の中心に打たれる。したがって、半導体装置100は、n+ソース領域4のトレンチ奥行方向のマスクばらつきがない。なお、トレンチ幅方向のばらつきはあるものの、トレンチ奥行方向に対してはコンタクトマスク1枚だけ使用する。また、n+ソース領域4の奥行き方向がばらついてもトレンチ離間表面領域12bがトレンチ奥行き方向に依存せず、トレンチ幅方向に依存する。そのため、n+ソース領域4の特性による影響度は少ないことから、マスクによるばらつきを低減できる。
【0051】
なお、トレンチ離間埋込領域12aを浅くする場合、RBSOA耐量の低下が課題である。しかしながら、半導体装置100は、n+ソース領域4のトレンチ奥行方向の残り幅を1.4μm以下とすることにより、オフ時の正孔をトレンチ離間埋込領域12aに加えて、隣接するトレンチ離間表面領域12bに引き抜くことができる。これにより、半導体装置100は、トレンチ離間埋込領域12aを浅くしても、RBSOA耐量を満たすことができる。
【0052】
図12は、出来上がりのトレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離に対する閾値電圧Vthのばらつきを示す。閾値電圧Vthのばらつきは、出来上がりのトレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離を0.05μm間隔で縮小した時の実験結果から算出した。横軸は、出来上がりのトレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離(μm)を示し、縦軸は、閾値電圧Vth(V)を示す。なお、コンタクト幅を、トレンチ幅方向におけるコンタクト開口領域9の幅と定義する。
【0053】
出来上がりのトレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離を0.3μmにしても閾値電圧Vthの上昇を抑えられる。また出来上がりのトレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離を0.3μmから0.15μmまで近づけた場合でも、閾値電圧Vthの上昇を0.2Vに抑えることができる。よって、出来上がりのトレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離を0.3μm以上にすれば、プロセスによってコンタクト幅にばらつきが生じても閾値電圧Vthの変動を最小限に抑えられる。
【0054】
また、トレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離を0.15μm以上としても、閾値電圧Vthの増加を3%程度に抑えられるので、0.15μm以上であってもよい。0.15μmよりもさらに短いと、閾値電圧が例えば10%以上増加するようになる。一方、トレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離を1μmより大きくとすると、電子注入促進(IE:Injection Enhanced)効果が減少してオン電圧が増加するので、1μm以下が好ましい。
【0055】
以上により、トレンチゲート7のピッチを5μm以下、例えば2.4μm程度の微細化にもプロセスばらつきに影響されにくくすることができる。また2.4μm以下に関しても装置の精度、例えばプロセスバラつきを0.05μm以下に抑えるか、もしくはコンタクト幅を0.5μm以下まで縮小すれば、トレンチゲート7のピッチ2.4μm以下の作成が可能となる。この場合でも、トレンチゲート7からコンタクト拡散領域5aまでの距離は0.15μm以上1μm以下であってもよい。
【0056】
図13は、半導体装置100のRBSOA耐量の測定結果を示す。本例のRBSOA耐量の測定条件は、コレクタ・エミッタ電圧VCE=475V、ゲート・エミッタ電圧VGE=15V、ゲートオフ抵抗Rgoff=18ohm、L=50uH、温度Tc=150℃である。本例では、定格電流10Aの素子を用いる。
【0057】
半導体装置100は、n+ソース領域4のトレンチゲート7奥行方向の幅が1.4μm以下と短いので、正孔が隣のレンチ離間埋込領域12aに抜けていく。またトレンチ離間埋込領域12aにもn+ソース領域4の下にもボロンが拡散しているため、正孔がより引き抜かれやすい。よって、半導体装置100は、n+ソース領域4の奥行幅を1.4μm以下とし、且つ、トレンチ離間埋込領域12aが形成されることで、例えば定格電流の10倍電流を流しても破壊されず、10倍以上のRBSOA耐量を満たすことが可能となった。
【0058】
以上の通り、半導体装置100は、n+ソース領域4の拡散後、トレンチ離間領域12を拡散しているので、トレンチ離間領域12の熱履歴を抑制できる。これにより、トレンチ離間埋込領域12aを形成できる。また、コンタクト注入領域5bは、コンタクト開口領域9を用いてイオン注入されるので、コンタクト注入領域5b用のマスクを作製する必要がなくなり、且つ、製造工程が削減される。
【0059】
半導体装置100は、トレンチゲート7のピッチを5μm以下に微細化しても閾値電圧Vthの上昇、及びgfs低下を抑制できる。また、半導体装置100は、微細化しても、トレンチ離間領域12がトレンチゲート7から離間しているので、トレンチ
幅方向にp+ドーパントの回り込みに起因する閾値電圧Vthの上昇、及びgfs低下が問題とならない。さらに、半導体装置100は、n+ソース領域4のトレンチ奥行方向の残り幅を微細化することにより、RBSOA耐量を向上できる。したがって、トレンチゲート7のピッチを低減し、且つ、IE効果向上によりVCE(sat)を低減できる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0061】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。