特許第6319512号(P6319512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6319512
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20180423BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B25C1/06
   B25C1/04
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-509403(P2017-509403)
(86)(22)【出願日】2016年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2016055840
(87)【国際公開番号】WO2016158130
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-70534(P2015-70534)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-187004(P2015-187004)
(32)【優先日】2015年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堀 賢志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎一郎
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/037299(WO,A1)
【文献】 特開2012−240193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C1/06
B25C1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に設けられた第1圧力室と、前記ケーシング内に動作可能に設けられて前記第1圧力室の圧力を変化させる動作部材と、前記第1圧力室の圧力に応じた打撃力を発生する打撃子と、を備えた打込機であって、前記ケーシング内に設けられた第2圧力室と、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを接続する第1通路と、前記第1通路を開閉する第1バルブと、を有し、前記第1バルブは、前記第1圧力室の圧力が所定値よりも高い場合に、前記第1通路を開いて前記第1圧力室の圧力を低下させ、前記第1圧力室の圧力が所定値以下である場合に、前記第1通路を閉じる、打込機。
【請求項2】
前記打撃子は、前記動作部材に固定されている、請求項1記載の打込機。
【請求項3】
前記第1圧力室と前記第2圧力室とを接続する第2通路と、前記第1通路が閉じられている状態で、前記第2通路を開閉する第2バルブと、を有する、請求項1または2記載の打込機。
【請求項4】
前記第1圧力室と前記第2圧力室とを仕切る隔壁が設けられ、前記第1バルブ及び前記第2バルブは、前記隔壁に設けられている、請求項3記載の打込機。
【請求項5】
前記第2バルブは、前記第1圧力室の圧力が前記第2圧力室の圧力以上であると前記第2通路を閉じ、前記第1圧力室の圧力が前記第2圧力室の圧力未満であると前記第2通路を開く、請求項4記載の打込機。
【請求項6】
作業者の操作力で前記第2バルブを動作させる操作部材が設けられ、前記第2バルブは、前記操作部材に操作力が加わると前記第2通路を閉じ、前記操作部材に加わる操作力が解除されると前記第2通路を開く、請求項4記載の打込機。
【請求項7】
前記ケーシングは、前記動作部材を動作可能に支持するシリンダと、前記シリンダに固定された第1壁部材と、前記第1壁部材に固定された第2壁部材と、を有し、前記隔壁は、前記第1壁部材と前記第2壁部材との間に介在され、前記第1圧力室は、前記シリンダ内から前記第1壁部材内に亘って形成され、前記第2圧力室は、前記第2壁部材内に形成されている、請求項6記載の打込機。
【請求項8】
前記第1バルブが前記第1通路を開閉する前記所定値を変更可能である、請求項1または2記載の打込機。
【請求項9】
前記所定値を変更する調整機構を備えている、請求項8記載の打込機。
【請求項10】
前記第1バルブは、前記第1通路を開閉する弁体を有し、前記調整機構は、前記弁体に付勢力を与えて前記弁体で前記第1通路を閉じる付勢部材を有し、前記弁体は、前記第1圧力室の圧力を受けて前記付勢部材の付勢力に抗して動作して前記第1通路を開く、請求項9記載の打込機。
【請求項11】
前記調整機構は、前記付勢部材から前記弁体に与える付勢力を変更して、前記第1バルブが前記第1通路を開閉する前記所定値を変更する、請求項10記載の打込機。
【請求項12】
前記調整機構は、前記付勢部材の付勢力を調整するダイヤルを有する、請求項10または11記載の打込機。
【請求項13】
前記調整機構は、前記付勢部材の付勢力を調整するモータを有する、請求項10または11記載の打込機。
【請求項14】
前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁体を動作させて前記第1通路を開くレバーが設けられている、請求項10記載の打込機。
【請求項15】
前記動作部材に伝達する動力を発生するモータと、前記モータの動力を前記動作部材の動作力に変換する動力変換機構と、を備えている、請求項1〜11のいずれか1項記載の打込機。
【請求項16】
前記動力変換機構は、前記モータの動力で回転する回転部材と、前記回転部材に設けられた第1係合部と、前記打撃子に設けられた第2係合部と、を有し、前記動作部材は、前記第1係合部が前記第2係合部に係合した状態で前記回転部材が回転すると前記第1圧力室の圧力を上昇させ、前記打撃子は、前記第1圧力室の圧力が上昇した後に前記第1係合部が前記第2係合部から離れると、前記第1圧力室の圧力に応じた打撃力を発生する、請求項12記載の打込機。
【請求項17】
前記モータは、電力が供給されて動力を発生する電動モータであり、前記ケーシング、前記モータ及び前記動力変換機構を収容する打込機本体と、前記打込機本体に取り付けられ、かつ、前記打撃子により打撃される止具を収容するマガジンと、前記打込機本体に設けられ、かつ、前記電動モータに電力を供給する電源装置が着脱される装着部と、を備える、請求項13または15記載の打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力室の圧力で打撃子に打撃力を加える打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力室の圧力で打撃子に打撃力を加える打込機が知られており、その打込機が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された打込機は、釘を対象物に打ち込む。打込機は、ハウジング内に設けたシリンダと、シリンダ内に往復動可能に収容したピストンと、ピストンに固定されたドライバブレードと、シリンダ内に設けたベローズと、を備えている。
【0003】
ベローズは伸縮可能であり、ベローズの第1端部は、ピストンに接続され、ベローズの第2端部は、ハウジングに固定されている。ベローズ内に圧縮空気が封入されて圧力室が形成されている。また、打込機は、ハウジング内に設けたモータと、モータから回転力が伝達されるギヤ列と、ギヤ列から回転力が伝達されて回転するカムと、を備えている。カムは、ピストンに係合及び離脱する突起を有する。
【0004】
特許文献1に記載された打込機は、モータの回転力がギヤ列を経由してカムに伝達される。突起がピストンに係合している間は、カムの動力でピストンが下死点から上死点に向けて移動する。ピストンが下死点から上死点に向けて移動する間、ベローズが圧縮されて圧力室の圧力が上昇する。ピストンが上死点に到達すると、突起がピストンから離脱して、カムの動力はピストンに伝達されなくなる。すると、圧力室の圧力に応じた打撃力がドライバブレードに加わり、ドライバブレードは釘を対象物に打ち込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−69289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された打込機は、温度が変化すると圧力室の圧力が変化する。その結果、温度の変化により打撃力が変化する問題があった。
【0007】
本発明の目的は、温度が変化した場合に打撃力の変化を抑制できる打込機を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、打撃力を調整可能な打込機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態の打込機は、ケーシング内に設けられた第1圧力室と、前記ケーシング内に動作可能に設けられて前記第1圧力室の圧力を変化させる動作部材と、前記第1圧力室の圧力に応じた打撃力を発生する打撃子と、を備えた打込機であって、前記ケーシング内に設けられた第2圧力室と、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを接続する第1通路と、前記第1通路を開閉する第1バルブと、を有し、前記第1バルブは、前記第1圧力室の圧力が所定値よりも高い場合に、前記第1通路を開いて前記第1圧力室の圧力を低下させ、前記第1圧力室の圧力が所定値以下である場合に、前記第1通路を閉じる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の打込機は、温度が変化しても打撃力が変化することを抑制できる。
【0011】
本発明の打込機は、第1圧力室の圧力を変更して、打撃子の打撃力を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の打込機の実施の形態1を示す正面断面図である。
図2図1に示す打込機の部分的な側面断面図である。
図3図1に示す打込機の部分的な側面断面図である。
図4】(A),(B)は、打込機の動作を示す模式的な断面図である。
図5】(A),(B)は、打込機の動作を示す模式的な断面図である。
図6】打込機に設けた逆止弁を示す模式的な断面図である。
図7】本発明の打込機の実施の形態2を示す正面断面図である。
図8図7に示す打込機の要部を示す正面断面図である。
図9図7に示す打込機の要部の変更例を示す正面断面図である。
図10】(A)は、図9に示す打込機に対応する操作パネルの模式図、(B)は、図9に示す打込機の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態である打込機を、図面を参照して説明する。
【0014】
(実施の形態1) 図1に示す打込機10は、打込機本体11と、打込機本体11に着脱されるバッテリ12と、打込機本体11に着脱されるマガジン13と、を有する。打込機本体11は、中空のハウジング14と、ハウジング14に連続するノーズ部15と、ハウジング14に連続するモータケース16と、ハウジング14に連続するグリップ17と、グリップ17及びモータケース16に連続する装着部18と、を有する。さらに、打込機本体11は、モータケース16と装着部18とを接続した接続部85を有する。さらに、打込機10は、モータケース16内に収容した電動モータ19及び減速機22と、を有する。
【0015】
ノーズ部15は射出口23を備え、ブレード21は射出口23内に往復移動可能に配置されている。マガジン13は、複数の釘24を収容しており、釘24を1本づつ射出口23へ供給する。さらに、グリップ17にトリガ49が設けられている。
【0016】
バッテリ12は、収容ケースと、収容ケース内に収容した複数の電池セルと、を有する。電池セルは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セルは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池等を用いることができる。バッテリ12は直流電源であり、バッテリ12は、装着部18へ取り付けること、及び装着部18から取り外すこと、ができる。
【0017】
電動モータ19は、モータケース16に固定されたステータ25と、モータケース16内に回転可能に設けられたロータ26と、を備えている。電動モータ19は、バッテリ12の電力でロータ26が回転する。減速機22は、入力部材及び出力部材を備えている。減速機22は、入力部材の回転速度に対する出力部材の回転速度は低い。ロータ26は、減速機22の入力部材に連結されている。減速機22の出力部材に連結された回転軸27が設けられており、回転軸27に円板形状のプレート28が設けられている。回転軸27及びプレート28は、軸線A1を中心として回転可能である。回転軸27を回転可能に支持する軸受51が設けられている。電動モータ19及び減速機22及び回転軸27は、軸線A1を中心として同心状に配置されている。プレート28は、図2及び図3のように複数のピン29を有する。複数のピン29は、プレート28の回転方向に間隔をおいて配置されている。
【0018】
ハウジング14内にシリンダ30が設けられている。シリンダ30は円筒形状であり、シリンダ30は、ボス部32によって径方向に位置決め固定されている。さらに、シリンダ30を中心線B1に沿った方向に位置決めするホルダ33が、ハウジング14内に設けられている。打込機10を正面視した図1において、中心線B1と軸線A1とが直角に配置されている。また、図2のように、シリンダ30を側面視すると、軸線A1と中心線B1とは交差していない。
【0019】
ハウジング14内にダンパ34が固定されている。ダンパ34は、シリンダ30の開口端に配置されている。具体的には、シリンダ30の2つの開口端のうち、モータケース16に近い方の開口端にダンパ34が配置されている。ダンパ34は、ゴム状弾性体により一体成形されている。ダンパ34は、中心線B1を中心として環状に形成されており、ダンパ34は軸孔35を備えている。
【0020】
ピストン31は、シリンダ30内で中心線B1に沿った方向に動作可能であり、ピストン31の外周面にシール部材36が取り付けられている。また、ブレード21は軸形状であり、ブレード21の長手方向の端部がピストン31に固定されている。ブレード21は、中心線B1に沿って配置され、かつ、軸孔35内で移動可能である。ブレード21は、中心線B1に沿った方向にラック37を備えている。ラック37は、凹部と凸部とを交互に配置したものである。プレート28が回転すると、ピン29はラック37に噛み合うこと、またはラック37から離脱すること、が可能である。ダンパ34は、軸孔35の内面から外側へ伸びた切り欠き52を有する。ラック37は、ブレード21が動作すると切り欠き52へ進入可能である。
【0021】
ノーズ部15にプッシュロッド38が設けられている。プッシュロッド38は、ノーズ部15に対して中心線B1に沿った方向に所定の範囲で移動可能である。プッシュロッド38は圧縮バネの力で中心線B1に沿った方向に押されて停止している。具体的には、プッシュロッド38は、圧縮バネの力でシリンダ30から離れる向きに押されている。プッシュロッド38を物体に押し付けると、プッシュロッド38は、圧縮バネの力に抗してシリンダ30に近づく向きで移動し、プッシュロッド38はストッパに接触して停止する。
【0022】
ハウジング14内に壁部材39,40が設けられている。壁部材39は、外筒部39Aと、外筒部39Aの内側に連続する環状のフランジ39Bと、フランジ39Bの内周端に連続する内筒部39Cと、を有する。壁部材40は、円筒部40Aと、円筒部40Aに連続する円板部40Bと、を有する。外筒部39Aと円筒部40Aとの間に隔壁41が介在されている。壁部材39及び壁部材40及び隔壁41は、共に中心線B1に沿った方向に位置決め固定されている。また、壁部材39は、シリンダ30の開口端に固定されている。
【0023】
壁部材39及び壁部材40及び隔壁41は、共に金属材料、例えばアルミニウムにより構成されている。シリンダ30内から壁部材39内に亘って圧縮室42が形成され、壁部材40内に圧力調整室43が形成されている。隔壁41は、圧縮室42と圧力調整室43とを気密に仕切る。圧縮室42及び圧力調整室43は、共にハウジング14の外部に対して気密である。圧縮室42及び圧力調整室43に、圧縮性流体である空気が封入される。ピストン31は、圧縮室42の圧力を受ける。ケーシング62は、シリンダ30及び壁部材39,40によって構成されている。
【0024】
隔壁41と円筒部40Aとの接触箇所をシールするシール部材73が設けられ、隔壁41と外筒部39Aとの接触箇所をシールするシール部材74が設けられている。また、内筒部39Cは、シリンダ30の外周に取り付けられ、内筒部39Cとシリンダ30との間をシールするシール部材75が設けられている。
【0025】
図2のように、隔壁41にリリーフバルブ44が設けられている。リリーフバルブ44は、圧縮室42と圧力調整室43とを接続する通路45と、通路45を形成する弁座と、通路45を開閉する弁体と、弁体を弁座に押し付けるバネと、を備えている。リリーフバルブ44は、圧縮室42の圧力Pが所定値Pmax以下であると通路45を閉じる。リリーフバルブ44は、圧縮室42の圧力Pが所定値Pmaxよりも高いと通路45を開く。
【0026】
所定値Pmaxは、打込機10で使用される最大長さの釘24を打込むために必要な圧力である。よって、リリーフバルブ44の設定圧力は、所定値Pmaxと等しいか、または、所定値Pmaxよりも僅かに大きい値に設定されている。
【0027】
隔壁41に通路46が設けられており、通路46は、圧縮室42と圧力調整室43とをつなぐ。通路46を開閉する逆止弁47が、圧縮室42に設けられている。逆止弁47は、金属製の板バネであり、逆止弁47は、固定要素48を用いて隔壁41へ固定されている。逆止弁47は、圧縮室42の圧力と圧力調整室43の圧力との関係に応じて、自動的に通路46を開閉する。逆止弁47は、圧縮室42の圧力が圧力調整室43の圧力以上であると通路46を閉じる。また、逆止弁47は、圧縮室42の圧力が圧力調整室43の圧力未満であると通路46を開く。つまり、逆止弁47は、圧力調整室43の空気が圧縮室42へ流れる向きで通路46を開き、圧縮室42の空気が圧力調整室43へ流れる向きで通路46を閉じる。圧縮室42及び圧力調整室43は、共にハウジング14の外部から密閉され、かつ、常時、大気圧を超える圧力である。隔壁41にストッパ50が取り付けられている。ストッパ50は、固定要素48により隔壁41へ固定されている。ストッパ50は、逆止弁47の弾性変形を規制する。
【0028】
さらに、打込機本体11内に、プッシュロッド38が物体に押し付けられたことを検知する押し付け検知センサと、トリガ49が操作されたことを検知するトリガスイッチと、プレート28の回転角度を検出する角度検出センサと、が設けられている。さらに、打込機本体11内に、押し付け検知センサ、トリガスイッチ、角度検出センサの信号を処理して、電動モータ19を回転及び停止するコントローラが設けられている。
【0029】
次に、打込機10の使用例を説明する。トリガ49が操作されておらず、トリガスイッチがオフされていると、電動モータ19は停止している。また、ピストン31は、図2のように、圧縮室42の圧力を受けてダンパ34に接触して停止している。つまり、ピストン31は下死点で停止している。
【0030】
コントローラは、プッシュロッド38が物体に押し付けられたこと、かつ、トリガスイッチがオンされていること、を検出すると、電動モータ19を一方向に所定角度回転してピン29がラック37から外れた後に、電動モータ19を停止する。電動モータ19の回転力は、減速機22を経由して回転軸27に伝達される。プレート28は、図2で反時計回りに回転する。プレート28が回転すると、ピン29がラック37に噛み合い、プレート28の回転力は、ブレード21の動作力に変換される。このため、ピストン31は下死点から上死点に向けて移動し、圧縮室42の圧力が上昇する。
【0031】
ピストン31が、図3のように上死点に到達し、全てのピン29がラック37から離れると、コントローラは電動モータ19を停止する。コントローラは、電動モータ19が回転を開始した時点から停止させるまでの回転角度を予め記憶している。ピン29がラック37から外れると、ピストン31を上昇させる力が解除され、圧縮室42の圧力に応じた打撃力が発生し、その打撃力がブレード21に加わる。ブレード21は釘24を対象物に打ち込み、ピストン31は、図2のように圧縮室42の圧力でダンパ34に押し付けられた位置、つまり、下死点で停止する。
【0032】
作業者は、釘24を対象物へ打ち込んだ後、トリガスイッチをオンした状態で、プッシュロッド38を物体から離す。作業者が、再度、プッシュロッド38を物体へ押し付けると、電動モータ19が一方向に所定角度回転してピン29がラック37から外れた後に、電動モータ19が停止する。このため、打込機10は前述と同様の動作を行い、釘24が対象物へ打ち込まれ、電動モータ19が停止する。以後、作業者は上記操作を繰り返し、釘24を順次、対象物へ打ち込む。
【0033】
リリーフバルブ44の動作及び逆止弁47の動作は、図4及び図5に示されている。まず、打込機10を使用する作業場の気温が低い場合を説明する。ピストン31が、図4(A)のように下死点にあると、圧縮室42の圧力及び圧力調整室43の圧力は、同じ圧力P0である。ピストン31が下死点から上死点に向けて移動すると、圧縮室42の圧力Pは上昇する。ピストン31が移動を開始してから、図4(B)のように上死点に到達するまでの間、圧縮室42の圧力Pが所定値Pmax以下であると、リリーフバルブ44は、ピストン31の位置に関わりなく、常時、通路45を閉じている。
【0034】
なお、ピストン31が上死点に到達した時点における圧縮室42の圧力Pは、低温時でも釘24を対象物に打ち込むために必要な初期圧力である。圧縮室42の圧力Pは、圧縮室42の最大容積、ピストン31の受圧面積、ピストン31のストローク等の条件に基づいて設定可能である。
【0035】
さらに、打込機10を使用する作業場の気温が高くなった場合を説明する。ピストン31が上昇を開始してから上死点に到達するまでの間に、圧縮室42の圧力Pが所定値Pmaxよりも高いと、リリーフバルブ44は通路45を開く。すると、図5(A)のように、圧縮室42の空気は圧力調整室43へ流れ、圧力調整室43の圧力は上昇する。つまり、圧力調整室43の圧力P2は、下記式で表される。
【0036】
P2=P0+△P ここで、P0は、圧力が上昇する前における圧力調整室43の圧力であり、△Pは、圧力調整室43で上昇した分の圧力である。
【0037】
そして、リリーフバルブ44は、圧縮室42の圧力が所定値Pmax以下になると、通路45を閉じる。つまり、圧縮室42の圧力Pは、所定値Pmaxと等しくなる。なお、逆止弁47は、圧縮室42の圧力Pが、圧力調整室43の圧力P2以上であると通路46を閉じている。
【0038】
リリーフバルブ44が通路45を閉じた後、ピストン31が下死点に向けて移動して、圧縮室42の圧力Pが、圧力調整室43の圧力P2未満になると、逆止弁47は図5(B)のように通路46を開く。すると、圧力調整室43の空気が圧縮室42へ流れ、圧力調整室43の圧力が低下する。そして、逆止弁47は、圧縮室42の圧力と圧力調整室43の圧力とが同じになると、通路46を閉じる。
【0039】
このように、リリーフバルブ44は、圧縮室42の圧力Pが所定値Pmaxよりも高い場合に通路45を開く。つまり、リリーフバルブ44は、圧縮室42の圧力上昇を抑制する。所定値Pmaxは、圧縮室42の圧力と、ブレード21に加わる打撃力と、の関係に基づいて、求められる値である。圧縮室42の圧力は、ピストン31の動作位置の他、気温により変化する。気温が相対的に高くなれば、圧縮室42の圧力も相対的に高くなり、かつ、ブレード21に加わる打撃力も相対的に高くなる。そして、所定値Pmaxは、ブレード21に過大な打撃力が加わらないように、実験またはシミュレーションを行って設定した値である。
【0040】
このため、気温が変化しても、ピストン31が上死点に到達した時点における圧縮室42の圧力変動を抑制できる。つまり、ブレード21に加わる打撃力は、気温に関わりなく略同じとなる。言い換えれば、低温時においては、打撃力を確保でき、高温時に過大な打撃力がブレード21に加わることを防止できる。したがって、ブレード21に加わる打撃力の安定化と、ブレード21の耐久性の向上と、を両立できる。
【0041】
また、ピストン31が図2に示すように下死点に停止した状態で打込機10が保管されており、気温が高温状態から低温状態になった場合、逆止弁47を介して圧縮室42の圧力と圧力調整室43の圧力とを同じにすることができる。このため、外気温が高い時に打込機10を使用した後に保管し、外気温が低い時に打込機10を使用する場合であっても、ピストン31が図3に示すような上死点に到達した時点で、圧縮室42の圧力Pを、一定の所定値Pmaxにすることができる。外気温が高い時の例は夏季であり、外気温が低い時の例は冬季である。
【0042】
逆止弁の他の例が、図6に示されている。逆止弁53は、壁部材39または壁部材40に設けられている。通路54が壁部材40に設けられ、収容室55が設けられている。通路54は、圧力調整室43につながり、収容室55は、通路54と圧縮室42とをつなぐ。逆止弁53は、弁座56と、通路54を開閉する弁体57と、弁体57を弁座56へ押し付けるバネ58と、を有する。弁体57及びバネ58は、収容室55へ収容されている。
【0043】
さらに、操作部材59が設けられている。操作部材59は作業者により操作される。操作部材59は、軸部60と、軸部60に固定されたノブ61と、を備え、ノブ61はハウジング14の外に配置されている。軸部60は、ハウジング14及び壁部材40に対して、軸部60の長手方向に移動可能である。軸部60の先端は通路54に配置され、かつ、弁体57に接触する。
【0044】
操作部材59に操作力が加えられていない場合、バネ58の力で弁体57が弁座56に押し付けられて通路54を閉じる。操作部材59に操作力が加えられている場合、バネ58の力に抗して弁体57が弁座56から離れ、通路54が開く。
【0045】
図6の逆止弁53を備えた打込機は、圧縮室42の圧力Pが所定値Pmaxよりも高いと、リリーフバルブ44が通路45を開く。このため、圧力調整室43の圧力が上昇し、圧縮室42の圧力が低下する。リリーフバルブ44は、圧縮室42の圧力Pが所定値Pmaxまで低下すると、通路45を閉じる。
【0046】
その後、ピストン31が下死点に向けて移動すると、圧縮室42の圧力Pが、圧力調整室43の圧力P2未満になっても、逆止弁53は通路54を閉じている。そして、作業者が操作部材59に操作力を加えると、バネ58の力に抗して弁体57が弁座56から離れて通路54が開き、圧縮室42の圧力と圧力調整室43の圧力とが同じになる。さらに、作業者が操作部材59に加えた操作力を解除すると、弁体57はバネ58の力で弁座56に押し付けられ、通路54を閉じる。図6の逆止弁53を用いると、作業者が操作部材59を操作しない限り、圧力調整室43の空気は圧縮室42へ戻らない。
【0047】
したがって、リリーフバルブ44及び逆止弁53は、1回の打撃毎に動作せず、リリーフバルブ44の耐久性及び逆止弁53の耐久性を向上できる。また、ピストン31が図2に示すように下死点に停止した状態で打込機10が保管され、気温が高温状態から低温状態になった場合、圧縮室42の圧力Pが、圧力調整室43の圧力P2未満になっても、逆止弁53は通路54を閉じている。このため、上記のように、操作部材59を操作すると、圧縮室42の圧力と圧力調整室43の圧力とを同じにすることができる。したがって、外気温が高い時に打込機10を使用した後に保管し、外気温が低い時に打込機10を使用する場合であっても、圧縮室42の圧力Pの圧力を、一定の所定値Pmaxにすることができる。
【0048】
ここで、実施の形態1で説明した構成と本発明の構成との対応関係を説明すると、ケーシング62が、本発明のケーシングであり、シリンダ30が、本発明のシリンダであり、壁部材39が、本発明の第1壁部材であり、壁部材40が、本発明の第2壁部材である。また、圧縮室42が、本発明の第1圧力室であり、ピストン31が、本発明の動作部材であり、通路45が、本発明の第1通路であり、圧力調整室43が、本発明の第2圧力室であり、リリーフバルブ44が、本発明の第1バルブであり、バッテリ12が、本発明の電源装置である。
【0049】
また、中心線B1に沿った方向が、本発明の所定方向であり、所定値Pmaxが、本発明の所定値である。さらに、通路46が、本発明の第2通路であり、逆止弁47,53が、本発明の第2バルブであり、隔壁41が、本発明の隔壁である。また、操作部材59が、本発明の操作部材であり、シリンダ30が、本発明のシリンダであり、ブレード21が、本発明の打撃子であり、釘24が、本発明の対象物であり、電動モータ19が、本発明の電動モータ及びモータである。また、プレート28、ピン29、ラック37が、本発明の動力変換機構に相当する。さらに、プレート28は、本発明の回転部材であり、ピン29は、本発明の第1係合部であり、ラック37は、本発明の第2係合部である。
【0050】
(実施の形態2) 本発明の打込機の実施の形態2を、図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8に示す構成において、図1図6に示す構成と同じ構成は、図1図6に付した符号と同じ符号を付してある。打込機10は、リリーフバルブ63を備えている。リリーフバルブ63は、圧縮室42の圧力を調整する機構であり、リリーフバルブ63は、シリンダ30の径方向で、シリンダ30の外側に配置されている。リリーフバルブ63は、圧縮室42と圧力調整室43とを接続する通路64と、通路64を開閉する弁体65と、弁体65を隔壁41に押し付けるバネ66と、バネ66を支持するホルダ67と、を備えている。
【0051】
通路64は隔壁41を貫通している。弁体65は、軸部68と、軸部68の軸線C1方向の端部に設けた円板部69と、を有する。円板部69は圧力調整室43に配置されている。軸部68は通路64内で軸線C1方向に移動可能であり、円板部69の外径は、通路64の内径よりも大きい。軸線C1と中心線B1とは、互いに平行である。弁体65は、ホルダ67によって回転不可能に支持されている。ホルダ67は筒形状であり、ホルダ67はフランジ39Bに固定されている。
【0052】
バネ66はホルダ67の軸孔71内に配置されている。軸部68の外周面に雄ねじが形成され、軸部68の外周面に可動部材70が取り付けられている。可動部材70は環状であり、可動部材70の内周面に雌ねじが形成され、可動部材70は平歯車である。可動部材70の雌ねじは、軸部68雄ねじと噛み合っている。
【0053】
ホルダ67は、圧縮室42から、壁部材39の外に亘って配置されており、ホルダ67の内周面と軸部68との間をシールするシール部材72が設けられている。シール部材72は、圧縮室42の圧縮空気が、軸孔71から漏れることを防止する。バネ66は金属製の圧縮バネであり、バネ66は、軸線C1方向でシール部材72と可動部材70との間に配置されている。バネ66は圧縮荷重を受けて弾性変形し、バネ66の付勢力は可動部材70を介して弁体65に伝達される。弁体65は、バネ66の付勢力を受け、圧力調整室43から離れる向きで、軸線C1方向に付勢される。弁体65は、円板部69が付勢力で隔壁41に接触して停止する。
【0054】
調整機構76がハウジング14内に設けられている。調整機構76は、軸線C1方向における可動部材70の位置を調整する機構である。調整機構76は、円板状のダイヤル77と、ダイヤル77の中心に固定された軸部78と、軸部78に設けた平歯車79と、を有する。調整機構76は、軸部78の中心線を中心として回転可能に配置されており、平歯車79は可動部材70と噛み合っている。可動部材70は、平歯車79に噛み合った状態で、軸線C1方向に移動可能である。よって、バネ66の付勢力を調整することができる。また、調整機構76は、ハウジング14内で軸線C1方向に移動しない。軸線C1方向において、可動部材70の平歯車の幅は、平歯車79の幅よりも短い。ダイヤル77の外周面の一部は、図7のようにハウジング14の外に露出している。
【0055】
このため、作業者がダイヤル77を操作して軸部78が回転すると、軸部78の回転力は、平歯車79を介して可動部材70に伝達され、可動部材70は軸部68の雄ねじに沿って回転し、かつ、軸線C1方向に移動する。平歯車79の回転方向を切り替えることにより、可動部材70が軸線C1方向に移動する向きを、可動部材70がホルダ67に近く向きと、可動部材70がホルダ67から離れる向きと、に切り替え可能である。
【0056】
また、レバー80がハウジング14に取り付けられている。レバー80は、支持軸81を支点として回動可能であり、レバー80の第1端部82は、軸部68の先端に接触する。ハウジング14に開口部83が設けられ、レバー80の第2端部84は開口部83からハウジング14の外に露出している。
【0057】
図7及び図8に示す打込機10は、通路46及び逆止弁47を備えていない。図7及び図8に示す打込機10は、図1図3に示す打込機10と同じ構成部分について、同じ動作及び制御が行われる。
【0058】
図8に示す打込機10は、リリーフバルブ63の機能により、圧縮室42の圧力を調整する。リリーフバルブ63は、圧縮室42の圧力Pが設定圧力P1以下であると通路64を閉じる。リリーフバルブ63は、圧縮室42の圧力Pが設定圧力P1よりも高いと通路64を開く。設定圧力P1は、バネ66から弁体65に伝達される付勢力から定まる値である。具体的に説明すると、リリーフバルブ63の弁体65は、バネ66の力で軸線C1方向に付勢されている。また、圧縮室42の圧力Pは、通路64から弁体65の円板部69に加わる。バネ66から弁体65に加わる付勢力の向きと、圧縮室42の圧力で弁体65に加わる付勢力の向きとは、互いに逆である。
【0059】
そして、圧縮室42の圧力が設定圧力P1以下であると、バネ66の力で円板部69が隔壁41に密着した状態に維持され、通路64は閉じられている。つまり、バネ66は閉弁機構としての役割を有する。また、打込機10を使用する環境の温度が上昇して、圧縮室42の圧力Pが設定圧力P1を超えると、弁体65がバネ66の付勢力に抗して圧力調整室43に近づく向きで軸線C1方向に移動し、通路64が開く。このため、圧縮室42の空気は圧力調整室43へ流れ、圧力調整室43の圧力は上昇する。したがって、圧縮室42の圧力上昇を抑制できる。そして、圧縮室42の圧力Pが設定圧力P1以下になると、バネ66の付勢力で弁体65が移動し、通路64が閉じられる。
【0060】
このように、図7及び図8に示す打込機10は、図1図3に示す打込機10と同様に、ピストン31が上死点に到達した時点における圧縮室42の圧力上昇を抑制できる。したがって、図1図3に示す打込機10と同じ効果を得ることができる。
【0061】
図8に示す打込機10は、リリーフバルブ63が通路64を開く圧力、つまり、設定圧力P1を作業者が調整できる。作業者がダイヤル77を操作して軸部78を回転させると、軸部78の回転力が可動部材70に伝達される。つまり、軸部78の回転方向を切り替えることにより、可動部材70は、軸線C1方向でホルダ67に近づく向き、または、ホルダから離れる向きのいずれかに移動する。そして、バネ66から可動部材70を介して弁体65に伝達される付勢力は、軸線C1方向における可動部材70とホルダ67との距離に応じて定まる。
【0062】
図8において、ホルダ67と可動部材70との距離が短い実線の第1状態と、ホルダ67と可動部材70との距離が長い破線の第2状態とを比べる。バネ66から弁体65に伝達される付勢力は、第1状態の方が第2状態よりも大きい。そして、設定圧力P1は、バネ66から弁体65に伝達される付勢力が大きいほど高くなる。
【0063】
このように、図7及び図8に示す打込機は、作業者がダイヤル77を操作して、リリーフバルブ63が開く設定圧力P1を任意に調整可能である。このため、打込機10を使用する温度に応じて設定圧力P1を調整することが可能である。
【0064】
なお、通路64が開いて圧縮室42の空気が圧力調整室43へ流れ込んで通路64が閉じた後、作業者は打ち込み作業を終了できる。打ち込み作業を行っていない場合、ピストン31は上死点以外の位置にある。つまり、圧縮室42の空気圧は、圧力調整室43の空気圧よりも低い。ここで、作業者は、レバー80を図8で反時計回りに操作し、弁体65をバネ66の付勢力に抗して移動させ、通路64を強制的に開くことができる。すると、圧力調整室43内の空気は、通路64を経由して圧縮室42へ戻る。その後、作業者がレバー80から手を離すと、レバー80はバネ66の力で、図8において時計回りに回動し、円板部69が隔壁41に接触した時点で弁体65が停止し、通路64が閉じられる。
【0065】
また、作業者は、温度以外の条件に基づいてダイヤル77を操作し、設定圧力P1を調整できる。例えば、釘24の長さに応じて設定圧力P1を調整すれば、釘24の長さ毎に、釘24に加える打撃力を調整できる。具体的には、釘24が長くなる程、設定圧力P1を高く設定できる。この場合、設定圧力P1が高いほど、釘24に加えられる打撃力は強くくなる。さらに、釘24を打ち込む対象物の硬度に応じて設定圧力P1を調整し、対象物の硬度毎に、釘24に加える打撃力を調整してもよい。作業者は、対象物の硬度が高い程、設定圧力P1を高く設定する。
【0066】
リリーフバルブ63の設定圧力P1を設定する調整機構の他の例を、図7及び図9を参照して説明する。図7の調整機構76に代えて、図9に示す調整機構86を設けることができる。調整機構86は、調整モータ87と、調整モータ87の出力軸88に設けた平歯車89と、を有する。調整モータ87は電動モータ、より具体的にはステッピングモータであり、調整モータ87は、バッテリ12から電圧が印加されると、出力軸88が所定角度回転して停止する。また、コントローラ90は、出力軸88の回転方向を切り替える。このため、平歯車89の回転方向を切り替えて、可動部材70が軸線C1方向に移動する向きを、可動部材70がホルダ67から離れる向きと、可動部材70がホルダ67に近づく向きとに切り替え可能である。
【0067】
打込機10は、図10(A)に示す操作パネル92を有する。操作パネル92は、打込機本体11に設けられている。操作パネル92は、例えば、装着部18の表面、または、モータケース16の表面、または、接続部85の表面のいずれかに露出して設けられる。操作パネル92は、切替ボタン93及び表示部94を有する。作業者は切替ボタン93を操作して、設定圧力P1を複数段階、例えば、釘24の3種類の長さに応じて第1設定圧力、第2設定圧力、第3設定圧力の3段階に切り替えることができる。第2設定圧力は第1設定圧力よりも高く、第3設定圧力は第2設定圧力よりも高い。表示部94は、第1設定圧力、第2設定圧力、第3設定圧力に対応して設けた3個のランプであり、選択された設定圧力に相当する表示部94が点灯し、その他の表示部は消灯する。
【0068】
打込機10は、図10(B)に示すコントローラ90を有する。コントローラ90は、モータケース16内に設けられている。コントローラ90は、電動モータ19及び調整モータ87を制御する。操作パネル92の操作信号は、コントローラ90に入力される。電流値検出センサ91がモータケース16内に設けられ、電流値検出センサ91は、バッテリ12から電動モータ19に供給される電流値を検出する。電流値検出センサ91から出力された信号は、コントローラ90に入力される。また、トリガ49の操作信号はコントローラ90に入力される。
【0069】
図9に示す打込機10は、図8に示したレバー80、支持軸81及び開口部83を備えていない。一方、図9に示す打込機10はストッパ95を備えている。ストッパ95は、ハウジング14内に固定されている。ストッパ95は、軸部68の径方向で、軸部68の外側に配置されている。軸線C1に対して垂直な平面視で、ストッパ95の配置領域と、可動部材70の配置領域とが重なる。可動部材70は、軸線C1方向でストッパ95とホルダ67との間に配置されており、可動部材70は、平歯車89が回転すると、ストッパ95とホルダ67との間で軸線C1方向に移動する。
【0070】
図9に示す打込機10は、図10に示す操作パネル92を操作することにより、釘24の長さに応じて、3種類の設定圧力P1を設定できる。そして、コントローラ90は、設定圧力P1に応じて調整モータ87の回転方向及び回転角度を制御し、可動部材70とホルダ67との距離を変更する。つまり、図9の調整機構86は、図8の調整機構76と同様に、リリーフバルブ63が通路64を開く設定圧力P1を変更できる。コントローラ90が、設定圧力P1に応じて調整モータ87の回転方向及び回転角度を制御すると、可動部材70はストッパ95に接触しない位置で停止する。
【0071】
図9に示す打込機10は、打ち込み作業を行っていない場合に、調整モータ87を制御して、圧力調整室43内の空気を、通路64を経由して圧縮室42へ戻すことができる。この場合、操作パネル92に、「圧力調整室43内の空気を、通路64を経由して圧縮室42へ戻す制御」を実行するための操作部を設ける。コントローラ90は、この操作部が操作されると、調整モータ87を回転させて可動部材70をストッパ95に押し付けた後、同じ回転方向に所定角度回転して停止する。すると、弁体65は、可動部材70がストッパ95に接触した時点から、可動部材70が停止するまでの間、バネ66の付勢力に抗して移動し、通路64が強制的に開く。つまり、圧力調整室43内の空気は、通路64を経由して圧縮室42へ戻る。
【0072】
その後、コントローラ90は、調整モータ87の回転方向を切り替えて可動部材70をストッパ95から離した後に、調整モータ87を停止する。その結果、弁体65はバネ66の付勢力で押され、円板部69が隔壁41に接触した時点で弁体65が停止し、通路64が閉じられる。なお、図9に示す打込機10の他の構成よび作用効果は、図7及び図8に示す打込機10の構成及び作用効果と同じである。
【0073】
さらに、コントローラ90が、調整機構86を制御する他の例を、図10(B)を参照して説明する。コントローラ90は、電流値検出センサ91の信号から、ピストン31を上死点に向けて移動する場合における電動モータ19の負荷を間接的に求める。電動モータ19の負荷は、ピストン31が上死点に到達した時点における圧縮室42の実際の圧力を、設定圧力P1にする場合における電動モータ19の出力である。釘24の長さが長いほど、釘24の打撃に必要な打撃力及び設定圧力P1は高くなる。つまり、釘24の長さが長いほど、電動モータ19の負荷は大きくなる。
【0074】
そこで、釘24の長さに応じた打撃力が発生するように、調整モータ87を制御し、設定圧力P1を調整できる。例えば、釘24の長さが大きくなる程、ピストン31が上死点に到達した時点における圧縮室42の圧力が、なるべく高くなるように、設定圧力P1を設定できる。
【0075】
なお、実施の形態2において、調整モータ87の出力軸88を回転及び停止して設定圧力P1を調整する制御は、段階的に設定圧力P1を調整する制御と、無段階的に設定圧力P1を調整する制御と、を含む。
【0076】
本発明の打込機は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、実施の形態1の図2図5に示す逆止弁は、ばね処理が施されていない金属板と、金属板を隔壁へ押し付けるバネと、を備えていてもよい。金属板及びバネは、圧縮室42に配置する。また、図6に示す通路54、収容室55、逆止弁53は、隔壁41に設けることも可能である。
【0077】
また、実施の形態2において、弁体65が通路64を閉じる向きに、弁体65に軸線C1方向の付勢を与える機構は、バネの他に、ソレノイドを含む。また、弁体65の少なくとも一部を、磁性材料で製造する。コントローラは、ソレノイドに印加する電圧を制御する。ソレノイドは、バッテリ12から通電されるコイルを有し、ソレノイドは、印加される電圧に応じて、磁気吸引力を発生する。弁体は磁気吸引力で付勢されて通路を閉じる。
【0078】
そして、弁体65は、圧力調整室43の空気圧が設定圧力P1を超えると、磁気吸引力に抗して移動し、通路64が開く。このため、コントローラは、ソレノイドに印加する電圧を制御して磁気吸引力を調整し、設定圧力P1を変更可能である。この場合、ソレノイドは、弁体で通路を閉じる力を発生する閉弁機構と、本発明の調整機構と、を兼ねる。このため、閉弁機構の他に調整機構を専用で設けずに済む。
【0079】
さらに、圧縮室42内の圧力を検出する圧力検出手段を設け、コントローラ90は、圧縮室42内の圧力に応じて、ソレノイドを駆動してもよい。圧力検出手段は、圧力センサであってもよいし、電流値検出センサ91でもよい。コントローラは、ピストン31を下死点から上死点に向けて移動させる時のモータ19の負荷電流から、圧縮室42内の圧力を推測することができる。
【0080】
実施の形態2で説明したバネ66、ソレノイドのコイルが、本発明の付勢部材に相当し、調整機構76、86が、本発明の調整機構に相当する。付勢部材は、弁体に付勢力を与える機構であればよく、付勢部材は、バネ、ソレノイドの他、油圧シリンダ、空気圧シリンダを含む。
【0081】
減速機に回転力を伝達するモータは、電動モータの他、エンジン、油圧モータ、空気圧モータを含む。電動モータは、ブラシ付きモータまたはブラシレスモータの何れでもよい。電動モータに電力を供給する電源装置は、直流電源または交流電源のいずれでもよい。また、本発明の打込機は、打込機の側面視で、軸線が中心線から外れた位置にある第1打込機と、軸線が中心線上に位置する第2打込機と、を含む。第2打込機における運動変換機構は、単数の突起と、突起が接触した状態でスライド可能な係止片と、を備える。本発明の動力変換機構は、プレート28に設けたピニオンギヤと、ブレード21に設けたラックと、を含むラックアンドピニオン機構でもよい。
【0082】
本発明の打込機は、動作部材が動作して第1圧力室の容積を狭めることにより、第1圧力室の圧力が上昇する。つまり、ケーシングの外から、第1圧力室または第2圧力室の少なくとも一方へ、圧縮性流体を供給する経路は存在しない。本発明のケーシングは、動作部材が動作しても形状が変化しない金属製のシリンダ、壁部材を含む。本発明のケーシングは、ベローズ及び壁部材により構成されていてもよい。隔壁は、壁部材とベローズとの間に介在し、第1圧力室はベローズ内に形成し、第2圧力室は壁部材内に形成する。ベローズは、動作部材が動作すると伸縮して、第1圧力室の圧力が変化する。
【0083】
本発明の回転部材は、回転軸、ギヤ、プーリ、プラネタリギヤ機構のキャリヤを含む。マガジンに収容される止具は、棒状の釘、コ字形の止め具を含む。本発明の打込機は、打撃子で止具を打撃して、止具を対象物に打ち込む打込機と、打撃子で対象物を打撃して、対象物を破砕または削る打込機を含む。
【符号の説明】
【0084】
10…打込機、11…打込機本体、12…バッテリ、13…マガジン、14…ハウジング、15…ノーズ部、16…モータケース、17…グリップ、18…装着部、19…電動モータ、21…ブレード、22…減速機、23…射出口、24…釘、25…ステータ、26…ロータ、27…回転軸、28…プレート、29…ピン、30…シリンダ、31…ピストン、32…ボス部、33,67…ホルダ、34…ダンパ、35,71…軸孔、36,72,73,74,75…シール部材、37…ラック、38…プッシュロッド、39,40…壁部材、39A…外筒部、39B…フランジ、39C…内筒部、40A…円筒部、40B…円板部、41…隔壁、42…圧縮室、43…圧力調整室、44,63…リリーフバルブ、45,46,54,64…通路、47,53…逆止弁、48…固定要素、49…トリガ、50…ストッパ、51…軸受、53…逆止弁、55…収容室、56…弁座、57,65…弁体、58,66…バネ、59…操作部材、60,68,78…軸部、61…ノブ、62…ケーシング、69…円板部、70…可動部材、76,86…調整機構、77…ダイヤル、79,89…平歯車、80…レバー、81…支持軸、82…第1端部、83…開口部、84…第2端部、85…接続部、87…調整モータ、88…出力軸、90…コントローラ、91…電流値検出センサ、92…操作パネル、93…切替ボタン、94…表示部、95…ストッパ、A1…軸線、B1…中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10