特許第6319775号(P6319775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6319775中古資産取得提案システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6319775
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】中古資産取得提案システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20180423BHJP
   G06Q 30/06 20120101ALI20180423BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20180423BHJP
【FI】
   G06Q30/02 450
   G06Q30/06
   G06Q50/10
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-32557(P2016-32557)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-151655(P2017-151655A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2016年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】516056395
【氏名又は名称】株式会社ルピナス
(74)【代理人】
【識別番号】100154210
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 宏
(72)【発明者】
【氏名】中西 恵美
(72)【発明者】
【氏名】中西 英臣
【審査官】 池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−230256(JP,A)
【文献】 特開2004−094703(JP,A)
【文献】 特表2014−523057(JP,A)
【文献】 特開2001−344463(JP,A)
【文献】 特開2003−317011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中古資産の取得効果を評価し、前記取得効果の高い中古資産の取得を提案する中古資産
取得提案システムであって、
税負担軽減額を各々の中古資産について算出する税負担軽減額算出部と、
リース収入予測額を各々の中古資産について算出するリース収入予測額算出部と、
売却収入予測額を算出する売却収入予測額算出部と、
前記取得効果を、前記税負担軽減額、前記リース収入予測額及び前記売却収入予測額のうちの少なくとも前記税負担軽減額を用いて算出し、前記取得効果の高い中古資産の情報を表示する提案表示部とを備え、
前記税負担軽減額算出部は、前記中古資産取得提案システムのユーザの課税対象額を入力され、
前記リース収入予測額算出部は、リース需要データ及び前記税負担軽減額に基づいて前記リース収入予測額を算出し、該算出において前記税負担軽減額に0.2以上かつ0.5以下の係数を乗じた値を減算して前記リース収入予測額を求めることを特徴とする、中古資産取得提案システム。
【請求項2】
前記売却収入予測額算出部は、売却実績データに基づいて前記売却収入予測額を算出することを特徴とする、請求項1に記載の中古資産取得提案システム。
【請求項3】
前記リース収入予測額算出部は、所定のリース期間についてのリース収入予測額を算出し、
前記売却収入予測額算出部は、前記所定のリース期間の完了時における売却収入予測額を算出することを特徴とする、請求項1又は2に記載の中古資産取得提案システム。
【請求項4】
前記税負担軽減額、前記リース収入予測額及び前記売却収入予測額の合計額を前記取得効果とし、
前記提案表示部は、前記取得効果が最大となる中古資産を表示に含めることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の中古資産取得提案システム。
【請求項5】
前記提案表示部は、前記税負担軽減額、前記リース収入予測額及び前記売却収入予測額のうちの少なくとも1つについて、それが最高額となる中古資産を表示に含めることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の中古資産取得提案システム。
【請求項6】
インターネットにおけるサーバ機上で動作し、
前記提案表示部は、インターネットを介して接続されたクライアント機の画面に前記情報を表示することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の中古資産取得提案システム。
【請求項7】
前記中古資産が中古車であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の中古資産取得提案システム。
【請求項8】
税負担軽減額算出プログラムと、リース収入予測額算出プログラムと、売却収入予測額算出プログラムと、提案表示プログラムとを含み、
前記税負担軽減額算出プログラム、前記リース収入予測額算出プログラム、前記売却収入予測額算出プログラム及び前記提案表示プログラムは、インターネットにおけるサーバ機のCPUを、それぞれ税負担軽減額算出部、リース収入予測額算出部、売却収入予測額算出部及び提案表示プログラムとして動作させ、
インターネットにおけるサーバ機のCPUを請求項7に記載の中古資産取得提案システムとして動作させることを特徴とする、中古資産取得提案プログラム。
【請求項9】
前記中古資産が中古車であることを特徴とする、請求項8に記載の中古資産取得提案プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中古資産の取得を提案する中古資産取得提案システム及び該システムを実現するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中古車(乗用車、貨物車等を含む)、機械設備(医療機器を含む)、その他中古資産について、リースの需要が存在する。一方、従来は取得価格(購入価格)に基づき、金利負担等の経費を加算してリース料が定められていたため、リース価格は高額であった。このため、リース需要に合った供給がなく、遊休となる中古資産を必ずしも減少させられない可能性があった。
【0003】
この点、特許文献1には、中古車が外国において比較的高額で売却できることに着目し、新車価格と比較的高額の中古車価格との差額に基づいてリース価格を定めるシステムが開示されている。特許文献1に開示のシステムによれば、中古車については、上記の従来方法よりもリース価格を低減させることが可能である。
【0004】
新車販売方法として、所定の期間の後にディーラーが買取ることを前提として新車価格と買取価格の差額を分割払いする「残価クレジット」方式が存在する。特許文献1に開示されたシステムは、残価クレジット方式と同等のリース価格となり、実質的な価格低下につながるものではない。
【0005】
リース価格を低減させて遊休・廃棄の中古資産を減らすためには、残価クレジット方式よりも低額のリース価格を実現することが必要である。このためには、中古資産自体の価値以外のところに価値を見出す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−169701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リース価格を低減させて中古資産を有効に活用するとともに、中古資産取得者に利益をもたらすことのできる中古資産取得提案システム、及び該システムを実現するプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
中古資産の減価償却に着目すると、減価償却される価額は、資産価値(売却価額)の低下額と必ずしも一致しない。してみれば、減価償却に基づく税負担の軽減によって、リースの供給者側が減価クレジット方式よりも低額のリース価格を受容する可能性がある。本発明の中古資産取得提案システム及びプログラムは、減価償却に基づく税負担の軽減を中古資産の取得効果に組み込み、リース価格を低減させることを可能とする。
【0009】
本発明の中古資産取得提案システムは、
中古資産の取得効果を評価し、前記取得効果の高い中古資産の取得を提案する中古資産取得提案システムであって、
税負担軽減額を各々の中古資産について算出する税負担軽減額算出部と、
リース収入予測額を各々の中古資産について算出するリース収入予測額算出部と、
売却収入予測額を算出する売却収入予測額算出部と、
前記取得効果を、前記税負担軽減額、前記リース収入予測額及び前記売却収入予測額のうち少なくとも前記税負担軽減額を用いて算出し、前記取得効果の高い中古資産の情報を表示する提案表示部とを備えることを特徴とする。
【0010】
この特徴によれば、減価償却に基づく税負担の軽減が取得効果に反映され、リース価格が低額でも中古資産取得者の有利となる提案を行うことが可能となる。
【0011】
本発明の中古資産取得提案システムは、
前記税負担軽減額算出部は、前記中古資産取得提案システムのユーザの課税対象額を入力されることを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、税負担軽減額が、課税対象額に基づいて正確に計算される。
【0013】
本発明の中古資産取得提案システムは、
前記リース収入予測額算出部は、リース需要データに基づいて前記リース収入予測額を算出することを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、実需要に基づいてリース収入予測額を計算することができる。正確なリース収入予測額となる。
【0015】
本発明の中古資産取得提案システムは、
前記売却収入予測額算出部は、売却実績データに基づいて前記売却収入予測額を算出することを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、将来の事象であって正確な予測が困難な売上収入予測額について、精度の高い予測をすることができる。
【0017】
本発明の中古資産取得提案システムは、
前記リース収入予測額算出部は、所定のリース期間についてのリース収入予測額を算出し、
前記売却収入予測額算出部は、前記所定のリース期間の完了時における売却収入予測額を算出することを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、所定のリース期間のリース収入予測額と、そのリース期間完了後に売却する場合の売却収入予測額が求まる。すなわち、リース収入予測額と売却収入予測額とが整合性を有する。
【0019】
本発明の中古資産取得提案システムは、
前記税負担軽減額、前記リース収入予測額及び前記売却収入予測額の合計額を前記取得効果とし、
前記提案表示部は、前記取得効果が最大となる中古資産を表示に含めることを特徴とする。
【0020】
この特徴によれば、税負担軽減額、リース収入予測額、売却収入予測額の全てを反映した取得効果が計算される。取得効果が最大となる中古資産が表示に含められるので、中古資産取得者はその中古資産を取得するとの判断が容易である。
【0021】
本発明の中古資産取得提案システムは、
前記提案表示部は、前記税負担軽減額、前記リース収入予測額及び前記売却収入予測額のうちの少なくとも1つについて、それが最高額となる中古資産を表示に含めることを特徴とする。
【0022】
この特徴によれば、税負担軽減額、リース収入予測額及び売却収入予測額のうち、中古資産取得者の重視するものがあるばあい、それが最高額となる中古資産が表示に含まれる。
【0023】
本発明の中古資産取得提案システムは、
インターネットにおけるサーバ機上で動作し 、
前記提案表示部は、インターネットを介して接続されたクライアント機の画面に前記情報を表示することを特徴とする。
【0024】
この特徴によれば、インターネットを介して中古資産取得提案を行うサービスが提供される。
【0025】
本発明の中古資産取得提案システムは、
前記中古資産が中古車であることを特徴とする。
【0026】
この特徴によれば、市場の大きな中古車に、中古資産取得提案システムを活用することができる。
【0027】
本発明の中古資産取得提案プログラムは、
税負担軽減額算出プログラムと、リース収入予測額算出プログラムと、売却収入予測額算出プログラムと、提案表示プログラムとを含み、
前記税負担軽減額算出プログラム、前記リース収入予測額算出プログラム、前記売却収入予測額算出プログラム及び前記提案表示プログラムは、インターネットにおけるサーバ機のCPUを、それぞれ税負 担軽減額算出部、リース収入予測額算出部、売却収入予測額算出部及び提案表示プログラムとして動作させ、
インターネットにおけるサーバ機のCPUを中古資産取得提案システムとして動作させることを特徴とする。
【0028】
この特徴によれば、インターネットを介して中古資産取得提案を行うサービスを提供するためのプログラムが実現される。
【0029】
本発明の中古資産取得提案プログラムは、
前記中古資産が中古車であることを特徴とする。
【0030】
この特徴によれば、市場の大きな中古車に、中古資産取得提案プログラムを使用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の中古資産取得提案システム及びプログラムによれば、リース価格を低減させて中古資産を有効に活用するとともに、中古資産取得者に利益をもたらすことのできる中古資産取得提案システム、及び該システムを実現するプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、中古資産取得提案システムの構成を示す図である。
図2図2は、中古資産取得提案システムの処理を示す図である。
図3図3は、入力画面の例を示す図である。
図4図4は、表示画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施例を示す。
【0034】
図1は、中古資産取得提案システムの構成を示す図である。中古資産取得提案システム1は、プログラム(中古資産取得提案プログラム)がインターネットのサーバ上で動作して実現される。すなわち、中古資産取得提案プログラムがサーバのCPUを中古資産取得提案システム1として動作させている。中古資産取得提案システム1は、クライアントであるユーザ端末2とインターネットを介して接続されている。なお、インターネット以外を介した接続であってもよく、ユーザ端末2において動作してもよい。
【0035】
中古資産取得提案システム1は、税負担軽減額算出部11、リース収入予測額算出部12、売却収入予測額算出部13、提案表示部14及び最適化部15を備えている。また、これら各部とは別の情報処理も行う。中古資産取得提案システム1は、中古資産データ10a、リース需要データ12a及び売却実績データ13aを保持している。なお、中古資産取得提案システム1に保持せず、例えばインターネットを介して外部のデータを参照することとしてもよい。
【0036】
税負担軽減額算出部11は、減価償却によって減額される納税額(税負担軽減額)を算出する。詳細については後述する。
【0037】
リース収入予測額算出部12は、リース需要データ12aを参照しつつ、リース収入予測額を算出する。詳細については後述する。
【0038】
売却収入予測額算出部13は、売却実績データ13aを参照しつつ、売却収入予測額を算出する。詳細については後述する。
【0039】
提案表示部14は、算出された税負担軽減額、リース収入予測額及び売却収入予測額から計算される取得効果に基づいて選択された中古資産について、その取得の提案を表示する(ユーザ端末2に表示させる)。
【0040】
最適化部15は、取得時期、売却時期のパラメータに依存して変動する取得効果を最大化するようなパラメータの値を求める。このため、最適化部15は、税負担軽減額算出部11、リース収入予測額算出部12及び売却収入予測額算出部13に、パラメータの値を指定した算出を指示する。
【0041】
中古資産データ10aは、取得可能な中古資産に係るデータである。各々の中古資産について、例えば自動車であれば、車種、年次、色等の取得価格、リース価格及び売却価格を求めるためのデータが含まれている。
【0042】
リース需要データ12aは、リースについての需要価格(リースを受ける者の希望価格)を含むデータである。
【0043】
売却実績データ13aは、実際に中古資産が売却された際の売却価格のデータである。例えば自動車であれば、車種、使用年数、色等の売却価格に影響するデータが含まれている。
【0044】
ユーザ端末2は、入力部21及び表示部22を備えている。
【0045】
入力部21は、ユーザから中古資産取得提案システム1に向けて情報を伝達する。詳細については後述する。
【0046】
表示部22は、提案表示部からの指示を受けて中古資産取得提案を表示する。
【0047】
なお、入力部21及び表示部22は、特殊なプログラムではなく、例えばインターネットブラウザの機能を入力部21及び表示部22として使用することができる。中古資産取得提案システム1は、多くのユーザに向けたサービスを提供することができる。
【0048】
以下、中古資産取得提案システム1の動作を、具体的に説明する。
【0049】
図2は、中古資産取得提案システムの処理を示す図である。ユーザ端末2からのアクセスによって、図に示す処理が起動される。中古資産取得提案システム1は、まず、提案の前提となる情報を、ユーザ端末2から入力する(ステップ10s)。入力は、入力部21によって行われ、中古資産取得提案システム1に送信される。
【0050】
図3は、入力画面の例を示す図である。入力部21において表示される画面である。本実施例では、法人個人の別、課税所得、資産種類、取得年月、売却年月及び希望利益率を入力する。
【0051】
ここで、法人個人の別及び課税所得は、税負担軽減額を算出するために必須の情報である。なお、課税所得について、厳密な計算のためには取得から売却までの期間の年次の値があることが好ましいが、本実施例では簡便化のために現在の年次の値のみを入力させるものとした。
【0052】
一方、資産種類、取得年月、売却年月及び希望利益率は、ユーザの希望を示すものであり、任意の情報である。
【0053】
中古資産取得提案システム1は、次に、中古資産の抽出を行う(ステップ10t)。資産種類が入力された場合には、中古資産データ10aから、その種類の中古資産を抽出する。資産種類が入力されなかった場合には、全ての中古資産を抽出する。ここで、資産種類は、例えば自動車、船舶、航空機、農機、重機、医療機器(MRI、手術ロボット、レントゲン設備等)の別である。
【0054】
中古資産取得提案システム1は、次に、1つの中古資産を選択し(ステップ10u)、最適化部15により取得時期及び売却時期の最適化を行って、取得効果を算出する(ステップ15s)。ステップ15sを、抽出された全ての中古資産について実行する。
【0055】
以下、最適化部15による取得時期及び売却時期の最適化(ステップ15sの処理)について説明する。まず、取得時期及び売却時期を固定して取得効果を算出する計算手順を示す。
【0056】
税負担軽減額算出部が、税負担軽減額Tを算出する(ステップ11s)。税負担軽減額Tは、入力された課税所得をIとし、減価償却額をDとすると、
T=t(I)−t(I−D)
によって求められる。ここで、減価償却額Dは、取得価格Bと初年度の減価償却率を積算して求めることができる。t()は、課税所得から税額を求める関数(税法の定めによる)である。
【0057】
売却収入予測額算出部13が、売却収入予測額Sを算出する(ステップ13s)。売却収入予測額Sは、売却時点における、中古資産の状況(使用年数、その他(自動車であれば車種、色等))に基づき、売却実績データを参照して求める。状況に一致する売却実績データが存在すればその売却価格を使用することができる。状況に一致する売却実績データが存在しない場合には類似の状況の売却実績データに基づいて近似、内挿等の数学的処理で売却価格を予測することができる。
【0058】
リース収入予測額算出部12が、リース収入予測額Lを算出する(ステップ12s)。リース収入予測額Lは、例えば以下の式によって算出することができる。
L=B−S−T×r+C+H
ここで、Cは保有コストであり自動車税、重量税、自賠責保険料、定期メンテナンス費用、車検費用の合計額とする。Hは事業リスクプレミアムであり、資産の毀損リスク、税法改正リスク、投下資本回収を考慮する。本実施例では、H=B×0.05とした。
【0059】
rは、0以上1未満の数である。税負担軽減額Tのうちの比率Rをリース価格の低減に向けるものである。r=0とすると、残価クレジット方式と同等のリース価格となるので、rは0よりも十分に大きな0.2以上の値とすることが好ましい。r=1とすると中古資産取得者の税負担軽減を全てリース価格の低減に向けることとなり中古資産取得者のメリットがなくなってしまうので、rは中古資産取得者に十分なメリットが残るように0.5以下の値とすることが好ましい。本実施例ではr=0.25とした。
【0060】
以上のように計算したリース収入額Lは、リース需要データ12aに基づいて実現不能な高額であったり、より高いリース収入が実現できる低額であったりする可能性もある。リース収入予測額算出部12は、かかる場合にリース収入額Lをリース需要データに基づいて補正してもよい。本実施例では補正をしないこととする。これによってユーザに提供される情報については後述する。
【0061】
最適化部15は、取得効果Mを算出する。取得効果Mは、
M=−B+T+L―C−t2(I+L)+t2(I)+S−t3(I+S)+t3(I)
によって求められる。ここでt2()及びt3()は、課税所得から税額を求める関数(税法の定めによる)である。t()と同一の関数であるが、説明のために添字2,3を付してある。
【0062】
以上で、取得時期及び売却時期を固定して取得効果Mが算出される。最適化部15は、取得時期及び売却時期を変化させて各々についての取得効果Mを算出し、Mを最大化するような取得時期及び売却時期を求める。
【0063】
以上の処理の後、提案表示部14は、表示すべき中古資産を決定(ステップ14s)して表示(ステップ14t)する。
【0064】
表示すべき中古資産の決定は、原則として取得効果Mの大きなものから順に所定の数を表示することとなるが、以下を考慮する。
【0065】
ユーザは、税負担軽減額T、リース収入予測額L及び売却収入予測額Sのいずれかについて、取得効果Mよりも重視する可能性がある。例えば、当座の資金繰りのために税負担軽減額を重視する場合である。
【0066】
t2()及びt3()については、その値の予測が困難な場合がある。特にt3()の値は数年後の課税所得に依存して変動する。
【0067】
図4は、表示画面の例を示す図である。図は、2の提案を示すが、より多い3以上を提案してもよい。また、1のみの提案であってもよい。中古資産A及び中古資産Bについて、推奨条件及び希望条件の提案が示されている。図において総計4の提案が示される。各々の提案は、4行5列のマトリクス状に示されている。マトリクスの各セルの意味が最上部に説明される。
【0068】
1列目には、取得時における情報が、取得時期、取得予測額(B)、税負担軽減額(T)、実質負担額(B−T)の順に示される。
【0069】
2列目には、リース時における情報が、リース収入(L)、保有コスト(C)、税負担額(t2)、実質収入額(L−C−t2)の順に示される。
【0070】
ここで、リース収入(の1か月当たりの値)は、推奨条件と希望条件とで相違している。これは、推奨条件におけるリース収入はL=B−S−T×r+C+Hとして計算されるが、希望条件におけるリース収入は、希望利益率が入力された場合には希望利益率に基づいて必要とされるリース収入の額とされるためである。
【0071】
そこで、リース需要データ12aに基づいて、オファー額(需要者の示す支払金額)を、例えば図のマトリクスの右側に示してもよい。なお、中古資産の状況に一致するリース需要データが存在しない場合には類似の状況のリース需要データに基づいて近似、内挿等の数学的処理でリース需要を予測することができ、それを示してもよい。ユーザは、自己の希望と市場状況の乖離を知ることができ、希望を修正することができる。
【0072】
また、ユーザが逆オファー額(供給者の示す受取金額)を入力できるようにし、それをリース需要者に伝達してもよい。特に、リース収入がオファー額よりも小さい場合に、ユーザがリース収入を増加させることを可能にする。
【0073】
希望利益率が入力されない場合には、希望条件におけるリース収入も推奨条件におけるリース収入と同様にL=B−S−T×r+C+Hとして計算される。
【0074】
3列目には、売却時における情報が、売却時期、売却予測額(S)、税負担額(t3)、実質収入額(S−t3)の順に示される。
【0075】
4列目及び5列目には、総利益額(M)、総利益率(M/B)、年当り利益率が示される。4列目は売却時に課税のあるもの、5列目は売却時に課税のないもの(t3=0としたもの)である。売却時の課税の有無は、将来である売却時の課税所得に依存するので予め定めることはできないが、ユーザは売却時課税がないことを前提に中古資産取得を計画することも多いと考えられる。
【0076】
そこで、表示すべき中古資産を決定(ステップ14s)する際には、売却時課税のない5列目における総利益額(M)の大きなものを選択することが好ましい。また、税負担軽減額T、リース収入予測額L及び売却収入予測額Sのいずれかについて、それが最大のものを選択するようにしてもよい。
【0077】
売却時課税のある4列目の値を、推奨条件について見ると、中古資産AについてもBについてもM=0となっている。これは、以下の理由による。本実施例では、ユーザが法人であるとし、課税所得が十分にあるものとし、税率は20%で固定されるとした。そうすると、
M=−B+T+L―C−t2(I+L)+t2(I)+S−t3(I+S)+t3(I)
=T×r−H
となる。本実施例では、T=B×20%、r=0.25、H=B×5%としているので、T×r=Hであり、M=0となる。
【0078】
購入額と同額をリース収入及び売却収入で回収することを前提とする限り、トータルの収支(課税前)がゼロとなるので、取得効果は税の減少によるものであり、課税所得が十分にあって固定税率であれば取得効果が見込めない。時期によって課税所得がマイナスとなっていることで取得効果を得ることとなる。
【0079】
課税所得がマイナスとなる時期が存在しない場合には、逆オファーによってリース収入を増加させることが取得効果を生む。
【0080】
以上詳細に説明したとおり、本実施例の中古資産取得提案システムによれば、税負担軽減額を活用して低額のリース価格が実現可能であり、同時に、中古資産取得者に取得効果をもたらすことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
リース価格を低減させて中古資産を有効に活用するとともに、中古資産取得者に利益をもたらすことのできる中古資産取得提案システム、及び該システムを実現するプログラムである。多くの法人及び個人による利用が考えられる。
【符号の説明】
【0082】
1 中古資産取得提案システム
11 税負担軽減額算出部
12 リース収入予測額算出部
13 売却収入予測額算出部
14 提案表示部
15 最適化部
2 ユーザ端末
21 入力部
22 表示部
図1
図2
図3
図4