(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6319792
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】周波数可変フィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 7/12 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
H03H7/12
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-62173(P2014-62173)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-186115(P2015-186115A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】浜路 知希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 安彦
【審査官】
▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0122190(US,A1)
【文献】
特開平09−252236(JP,A)
【文献】
実開昭61−042126(JP,U)
【文献】
実開昭53−070103(JP,U)
【文献】
実開昭53−070101(JP,U)
【文献】
実開昭56−090028(JP,U)
【文献】
特開平09−284098(JP,A)
【文献】
特開2000−059106(JP,A)
【文献】
特開2010−219941(JP,A)
【文献】
実開昭57−096528(JP,U)
【文献】
実開昭63−035338(JP,U)
【文献】
特開2008−300548(JP,A)
【文献】
特開平11−234091(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0980109(EP,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0237964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PINダイオードに所定のバイアス電圧を抵抗を介して印加することにより共振容量を接地と開放とを切り替えるUHF以上の周波数を中心周波数とする周波数可変フィルタにおいて、
前記共振容量は、共振棒と並列に接続される12以上の周波数可変フィルタが所定の並列数で構成され、
前記PINダイオードが逆バイアス時に、前記PINダイオードと前記共振容量とを前記バイアス電圧を印加する抵抗と分離する素子として、ダイオードを用いたことを特徴とする周波数可変フィルタ。
【請求項2】
請求項1の周波数可変フィルタにおいて、前記分離するダイオードとして、PINダイオード又はPINダイオードとチップビーズの直列を用いたことを特徴とする周波数可変フィルタ。
【請求項3】
PINダイオードに所定のバイアス電圧を抵抗を介して印加することにより共振容量を接地と開放とを切り替える極超短波(Ultra High Frequency:以下UHF)以上の周波数(特に800MHz以上の周波数、更には1GHz以上の周波数)を中心周波数とする周波数可変フィルタにおいて、
前記共振容量は、共振棒と並列に接続される12以上の周波数可変フィルタが所定の並列数で構成され、
前記PINダイオードが逆バイアス時に、前記PINダイオードと前記共振容量とを前記バイアス電圧を印加する抵抗と分離する素子として、PINダイオード又はPINダイオードとチップビーズの直列を用いたことを特徴とする周波数可変フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数可変フィルタ、特に極超短波(Ultra High Frequency:以下UHF)以上の周波数可変フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の特開平11−234091は、消費電力を低減できる周波数可変フィルタである。
つまり、制御部が入力された周波数信号に表される周波数で機能する周波数可変フィルタを選択するフィルタ選択信号を出力するとともに、当該選択された周波数可変フィルタには、同調周波数を前記周波数に微調整するバイアス信号を、選択されない周波数可変フィルタには、当該周波数可変フィルタの消費電力が最小になるようなバイアス信号をそれぞれ生成して出力し、選択された周波数可変フィルタがバイアス信号に従って周波数を微調整し、選択されない周波数可変フィルタがバイアス信号に従って、その消費電力が最小となるようになる周波数可変フィルタである。
【0003】
特許文献1の特開平11−234091の従来の周波数可変フィルタ装置は、第1のフィルタセレクタ1と複数の周波数可変フィルタ2と、第2のフィルタセレクタ3と、制御部4とから主に構成されている。周波数可変フィルタ2の数は4つであるとしている。
【0004】
第1のフィルタセレクタ1は、第2のフィルタセレクタ3とともに、制御部4から入力されるフィルタ選択信号に応じて入力されるRF信号(高周波信号)を特定の周波数可変フィルタ2に選択的に出力するものである。
【0005】
周波数可変フィルタ2は、PINダイオードを備え、PINダイオードのオン/オフによって同調周波数を切り替えて、第1のフィルタセレクタ1から入力されるRF信号をフィルタリングして第2のフィルタセレクタに出力する周波数フィルタであって、後に説明する制御部3から各々入力されるバイアス信号に応じてPINダイオードのオン/オフを行うものである。
【0006】
また、周波数可変フィルタ2は、それぞれ、例えば第1の周波数可変フィルタ2aは、225〜280MHzに、第2の周波数可変フィルタ2bは、280〜325MHzに、第3の周波数可変フィルタ2cは、235〜370MHzに、第4の周波数可変フィルタ2dは、370〜400MHzに対応するというように可変周波数幅(周波数可変フィルタ2が機能する周波数帯域)が異なっているように設定されている。
【0007】
非特許文献1のTDKチップビーズ(フェライトビーズ又はビーズインダクタとも称される)MMZシリーズでは、高周波数用でも巻き線間の浮遊容量から300MHz以上のUHF又特にそれ以上の例えば1GHz以上の高い周波数ではインピーダンスが低下し始める。非特許文献1のMMZ1005D121のチップビーズの特性例を示す模式図の様に、例えば800MHzでは約720Ωで、1175MHzでは約480Ωで、2GHzでは約210Ωである。
【0008】
特許文献1の構成の4並列となると800MHzでは約180Ωとなり伝送特性インピーダンスの50Ωの3.6倍の値となり、周波数可変フィルタのインピーダンスに近くなるため、周波数可変フィルタの共振周波数のズレや損失の増加となる。8並列となると約90Ωとなり伝送特性インピーダンスの50Ωの1.8倍の値となり、周波数可変フィルタのインピーダンスに近くなるため、周波数可変フィルタの共振周波数のズレや損失の増加となる。10並列となると約72Ωとなり伝送特性インピーダンスの50Ωの1.4倍の値となり、周波数可変フィルタのインピーダンスに近くなるため、周波数可変フィルタの特性が大きく劣化する。12並列となると約60Ωとなり伝送特性インピーダンスの50Ωの1.2倍の値となり、周波数可変フィルタのインピーダンスに近くなるため、周波数可変フィルタの共振周波数のズレや損失の増加となる。
【0009】
非特許文献2のTDKチップビーズMMZ−Eシリーズでは、縦巻き線のため巻き線間の浮遊容量が低減しているが、3GHzから高い周波数(Super High Frequency:以下SHF)ではインピーダンスが低下し始める。チップビーズの特性例を示す模式図の
図5(TDKチップビーズMMZ−Eシリーズ)と
図6(TDKチップビーズMMZ1005−Eシリーズ)の様に、例えば800MHzでは約1800Ωで、1175MHzでは約2600Ωで、2GHzでは約1500Ωで、3GHzでは約900Ωである。
【0010】
特許文献1の構成の4並列となると800MHzでは約450Ωとなり伝送特性インピーダンスの50Ωの9倍の値となり、周波数可変フィルタのインピーダンスとの比が十分大きいため、周波数可変フィルタの共振周波数のズレや損失の増加は許容範囲となる。特許文献1の構成の倍の8並列となると約225Ωとなり伝送特性インピーダンスの50Ωの4.5倍の値となり、周波数可変フィルタのインピーダンスとの比が大きいが不十分のため、周波数可変フィルタの共振周波数のズレや損失の誤差となる。10並列となると約180Ωとなり伝送特性インピーダンスの50Ωの3.6倍の値となり、周波数可変フィルタのインピーダンスにとの比が不足し始めるため、周波数可変フィルタの共振周波数のズレや損失の増加が始まる。12並列となると約150Ωとなり伝送特性インピーダンスの50Ωの3倍の値となり、周波数可変フィルタのインピーダンスに近くなるため、周波数可変フィルタの共振周波数のズレや損失の増加となる(非特許文献2のMMZ1005F121E参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−234091
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】TDKチップビーズMMZシリーズhttp://product.tdk.com/emc/beads/ja/documents/beads_commercial_signal_mmz_ja.pdf
【非特許文献2】TDKチップビーズMMZ−Eシリーズhttp://product.tdk.com/emc/beads/ja/documents/beads_commercial_signal_mmz-e_ja.pdf
【非特許文献3】Infinion_BAR89series_Datasheet http://www.infineon.com/dgdl/bar89.pdf?folderId=db3a304314dca3890114fea780a30a91&fileId=db3a304314dca3890114ff2f84ae0b09
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、UHF以上の高周波に対応できる周波数可変フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するため、
PINダイオードに所定のバイアス電圧を抵抗を介して印加することにより共振容量を接地と開放とを切り替えるきりかえる周波数可変フィルタを12以上(24以上36以上)並列接続する極超短波(Ultra High Frequency:以下UHF)以上の周波数(特に800MHz以上の周波数、更には1GHz以上の周波数)を中心周波数とする周波数可変フィルタにおいて、
前記PINダイオードが逆バイアス時に、前記PINダイオードと前記共振容量とを前記バイアス電圧を印加する抵抗と分離する素子として、ダイオードを用いたことを特徴とする周波数可変フィルタである。
さらに上記の周波数可変フィルタにおいて、前記分離するダイオードとして、PINダイオード又はPINダイオードとチップビーズ(フェライトビーズ又はビーズインダクタとも称される)の直列を用いたことを特徴とする周波数可変フィルタである。
【0015】
また、PINダイオードに所定のバイアス電圧を抵抗を介して印加することにより共振容量を接地と開放とを切り替えるきりかえる周波数可変フィルタを12以上(24以上36以上)並列接続する極超短波(Ultra High Frequency:以下UHF)以上の周波数(特に800MHz以上の周波数、更には1GHz以上の周波数)を中心周波数とする周波数可変フィルタにおいて、
前記PINダイオードが逆バイアス時に、前記PINダイオードと前記共振容量とを前記バイアス電圧を印加する抵抗と分離する素子として、PINダイオード又はPINダイオードとチップビーズの直列を用いたことを特徴とする周波数可変フィルタである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、UHF以上の高周波に対応できる周波数可変フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の1実施例の周波数可変フィルタの構成を示す等価回路図
【
図2】本発明の1実施例の周波数可変フィルタの構造を示す組立斜視図
【
図3】本発明の1実施例の周波数可変フィルタの特性例を示す模式図(800MHz)
【
図4】本発明の1実施例の周波数可変フィルタの特性例を示す模式図(1175MHz)
【
図5】チップビーズの特性例を示す模式図(TDKチップビーズMMZ−Eシリーズ)
【
図6】チップビーズの特性例を示す模式図(TDKチップビーズMMZ1005−Eシリーズ)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は上記課題を解決するため、PINダイオードに所定のバイアス電圧を抵抗を介して印加することにより共振容量を接地と開放とを切り替えるきりかえる周波数可変フィルタを8以上(12以上)並列接続する極超短波(Ultra High Frequency:以下UHF特に800MHz以上の周波数、更には2GHz以上の周波数)以上の周波数を中心周波数とする周波数可変フィルタにおいて、前記PINダイオードが逆バイアス時に、前記PINダイオードと前記共振容量とを前記バイアス電圧を印加する抵抗と分離する素子として、ダイオードを用いたことを特徴とする周波数可変フィルタである。
【0019】
さらに上記の周波数可変フィルタにおいて、前記分離するダイオードとして、PINダイオードを用いたことを特徴とする周波数可変フィルタである。
PINダイオードは、非特許文献3のInfinion_BAR89series_Datasheetの様に、耐圧が80Vと高く、10V印加時の逆容量が100MHzで0.17pF、1GHzで0.16pF、1.8GHzで0.15pF、と少なく、順方向抵抗が0.8Ωと低い。
前記分離するPINダイオードに直列に非特許文献2のTDKチップビーズMMZ1005−Eシリーズを直列に挿入しても良い。
【実施例1】
【0020】
本発明の1実施例の周波数可変フィルタの構成を示す等価回路図の
図1と、本発明の1実施例の周波数可変フィルタの構造を示す組立斜視図の
図2と、本発明の1実施例の周波数可変フィルタの特性例を示す模式図の
図3とを用いて本発明の1実施例を説明する。
【0021】
本発明の1実施例の周波数可変フィルタの構成を示す等価回路図の
図1において、C101−C116とC201−C216とC301−C316とは、共振コンデンサ(容量)であり、C117−C128とC217−C228とC317−C328とは、デカップリングコンデンサ(容量)である。CR101−CR124とCR201−CR224とCR301−CR324はPINダイオードであり、CR125−CR130とCR225−CR230とCR325−CR330とは、高速放電用の2ケ入りダイオードである。R101−R112とR201−R212とR301−R312とはバイアス電圧からPINダイオードにバイアス電流を供給する抵抗である。
また、
図1において、CR101、CR103、CR105、CR107、CR109、CR111、CR113、CR115、CR117、CR119、CR121、CR123は、共振容量を接地と開放とを切替えるPINダイオードである。CR102、CR104、CR106、CR108、CR110、CR112、CR114、CR116、CR118、CR120、CR122、CR124は、前記接地開放の切替PINダイオードが逆バイアス時に、前記接地開放の切替PINダイオードと前記共振容量とを前記バイアス電圧を印加する抵抗と分離するPINダイオードである。抵抗と分離するPINダイオードに直列に非特許文献2のTDKチップビーズMMZ1005−Eシリーズを直列に挿入しても良い。
また、
図1において、CR125−CR130とCR225−CR230とCR325−CR330は、高速放電用の2ケ入りダイオードである。
また、
図1において、R101−R112とR201−R212とR301−R312とは抵抗である。FL1−FL8はローパスフィルタである。J1とJ1XとJ2とJ2Xとはコネクタである。TP1,TP2,TP3:チェックポイントであり各共振棒と接続されている。
共振コンデンサ(容量)は、各共振棒と各12ケづつ並列となりさらに3並列となり、合計24ケの並列となる。
【0022】
本発明の1実施例の周波数可変フィルタの構成を示す等価回路図の
図1において、前記接地開放の切替PINダイオードで接地されなかった共振コンデンサ(容量)が、チェックポイントTP1とTP2とTP3に接続された共振棒と各12ケづつ並列となりさらに3並列となり、周波数可変フィルタを実現する。本発明の1実施例の周波数可変フィルタの構造を示す組立斜視図の
図2において、最下部の図のシールド内に3本一直線に並んだ円柱であり、
図2の中央のプリント基板と接続している。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明により、極超短波(Ultra High Frequency:以下UHF)以上の周波数、特に800MHz以上の周波数における周波数可変フィルタを実現することができる。更には、現状より高周波数に対応できるPINダイオード又はGaNショットキーバリアダイオード又はGaOショットキーバリアダイオードを用いれば、3GHzから高い周波数のSHFにおける周波数可変フィルタを実現することができる。抵抗と分離するPINダイオードに直列に非特許文献2のTDKチップビーズMMZ1005−Eシリーズを直列に挿入すれば、更に高い周波数のSHFにおける周波数可変フィルタを実現することができる。
【符号の説明】
【0024】
C101−C116,C201−C216,C301−C316:共振コンデンサ(容量)、
C117−C128,C217−C228,C317−C328:デカップリングコンデンサ(容量)、
CR101−CR124,CR201−CR224,CR301−CR324:PINダイオード、
CR125−CR130,CR225−CR230,CR325−CR330:高速放電用の2ケ入りダイオード、
R101−R112,R201−R212,R301−R312:抵抗、
FL1−FL8:ローパスフィルタ、
J1,J1X,J2,J2X:コネクタ、
TP1,TP2,TP3:チェックポイント、