(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実装システム10の構成の概略を示す構成図であり、
図2は、実装装置11の構成の概略を示す構成図である。なお、本実施形態は、
図1および
図2の左右方向がX軸方向であり、前後方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
【0011】
実装システム10は、電子部品(以下「部品P」という(
図2参照))を基板Sに実装する実装処理を行う複数の実装装置11と、各実装装置11の管理などシステム全体の生産管理を行う管理コンピュータ80とを備えている。なお、実装処理は、部品Pを基板S上に配置、装着、挿入、接合、接着する処理などを含む。また、複数の実装装置11は、X方向の上流側(
図1中左側)から下流側(
図1中右側)に基板Sを搬送しながら部品Pの実装処理をそれぞれ行うものであり、共通の構成であるため特に区別することなく説明する。
【0012】
実装装置11は、
図2に示すように、部品Pを収容したリールやトレイを備える供給ユニット12と、基板Sの搬送や固定を行う基板処理ユニット13と、部品Pを吸着する複数(例えば、4個)の吸着ノズル14が取り外し可能に装着されて吸着ノズル14をZ軸方向に移動可能な実装ヘッド15と、実装ヘッド15をXY方向に移動可能なヘッド移動機構16と、吸着ノズル14に吸着された部品Pを撮影するカメラユニット17と、複数種類の吸着ノズル14をストックするノズルストッカ18と、装置全体の制御を司るコントローラ19とを備えている。コントローラ19は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムなどを記憶したROMや一時的にデータを記憶するRAM、部品Pの実装に必要な各種データを書き換え可能に記憶するHDDなどを備え、管理コンピュータ80と通信可能に構成されている。
【0013】
実装ヘッド15は、ヘッド移動機構16により供給ユニット12上に移動して複数の吸着ノズル14のそれぞれで部品P(例えば、4個)を吸着し、ヘッド移動機構16によりカメラユニット17上を通過しながら基板S上に移動して所定の配置順に基づいて基板Sに部品Pを順に配置(実装)する。
【0014】
ここで、部品Pの配置順は、作業者が管理コンピュータ80で設定作業を行うことにより設定されて、コントローラ19のHDDに予め記憶される。
図3は、作業者により設定される部品Pの配置順の一例である。
図3は、4個の部品Pの配置順を設定する場合を示す。部品Pの配置順は、複数通りの配置順から実装ヘッド15の移動効率のよいものが設定されることが望ましいが、作業者が、その経験や力量によって様々な配置順を設定する。例えば、
図3(a)のように、実装ヘッド15の移動距離が短く効率のよい配置順が設定されたり、
図3(b)のように、実装ヘッド15の移動距離が長く効率のよくない配置順が設定されたりする。このように、部品Pの配置順の設定により実装ヘッド15の移動効率が異なるから、部品Pの実装にかかる時間が変化することになる。このため、作業者が部品Pの配置順を設定する作業は、実装装置11の生産性に影響を及ぼす作業といえる。以下、作業者が部品Pの配置順を設定する作業を「作業種1」という。
【0015】
カメラユニット17は、部品Pを吸着した吸着ノズル14(実装ヘッド15)が上方を通過する際に、吸着ノズル14に吸着された部品Pを撮影し、撮影画像をコントローラ19に出力する。コントローラ19は、撮影画像を基準画像データと比較することにより、サイズの異なる部品Pが吸着されていないか、部品Pの吸着位置の位置ズレが許容範囲内であるかなどを判定する。コントローラ19は、吸着ノズル14がサイズの異なる部品Pを吸着している、あるいは、部品Pの位置ズレが許容範囲外であると判定すると、部品Pの実装を中止して作業者に吸着部品のエラー(画像処理エラー)を報知する。
【0016】
ここで、基準画像データは、作業者が管理コンピュータ80で設定作業を行うことにより設定されて、コントローラ19のHDDに予め記憶される。
図4は、作業者により設定される基準画像データの一例である。図示するように、例えば、矩形状の部品Pに対する基準画像データは、部品Pの外縁の上限と下限とを定めた画像データが設定される。この基準画像データは、部品Pのサイズが異なることや部品Pの位置ズレを確実に検出しつつ、部品Pのサイズの製造誤差や部品Pの若干の位置ズレなどを許容できることが望ましいが、作業者が、その経験や力量によって様々な基準画像データを設定する。例えば、
図4(a)のように、部品Pの外縁に対して上限と下限とに略均等の許容幅をもった適切な基準画像データが設定されたり、
図4(b)のように、部品Pの外縁に対して上限の許容幅が下限の許容幅よりも小さく適切でない基準画像データが設定されたりする。
図4(b)のような基準画像データが設定されると、部品Pの製造誤差や若干の位置ズレによっても部品Pの外縁が基準画像データの上限から外れるため、コントローラ19が吸着部品のエラー(画像処理エラー)と判定し易くなる。一方で、
図4(a)のような基準画像データが設定されていると、
図4(b)に比べて、コントローラ19が不必要なエラーと判定することを抑えることができる。なお、図示は省略するが、基準画像データの上限と下限の許容幅を大きく設定し過ぎると、コントローラ19が検出すべきエラーを検出できなくなるため問題となる。このように、コントローラ19が部品Pの実装中に吸着部品のエラーと判定する頻度が、基準画像データの設定により異なることになる。このため、部品Pの基準画像データを設定する作業は、実装装置11の生産性に影響を及ぼす作業といえる。以下、作業者が基準画像データを設定する作業を「作業種2」という。
【0017】
ノズルストッカ18は、複数種類の吸着ノズル14をストックするボックスであり、作業者が吸着ノズル14の入れ替えを行うことができる。また、実装ヘッド15には、ノズルストッカ18にストックされた吸着ノズル14の中から、部品Pの実装に適した吸着ノズル14が取り付けられる。
【0018】
ここで、実装に使用される吸着ノズル14は、作業者が実装される部品Pに合わせて管理コンピュータ80で設定作業を行うことにより設定されるものであり、設定された吸着ノズル14の種類はコントローラ19のHDDに予め記憶される。
図5は、作業者により設定される吸着ノズル14の種類の一例である。吸着ノズル14は、部品Pが実装される基板Sの種類や部品Pの種類(サイズ・形状など)に適したものが設定されることが望ましいが、作業者が、その経験や力量によって様々な吸着ノズル14を設定する。例えば、
図5(a)のように、吸着ノズル14の下方の吸着部14aのサイズが部品Pに対して適切なものが設定されたり、
図5(b)のように、吸着ノズル14の下方の吸着部14aのサイズが部品Pに対して小さいものが設定されたりする。また、図示は省略するが、吸着部14aのサイズが部品Pに対して大きいものが設定されたりする。吸着部14aのサイズが小さいと、吸着ノズル14が適切な吸着力を確保することができない場合がある。また、吸着部14aのサイズが大きいと、部品Pの吸着位置の位置ズレが生じたときに吸着部14aが部品Pから外れ易くなって吸着ノズル14が適切な吸着力を確保できない場合がある。このように、吸着ノズル14が適切な吸着力を確保できない場合、実装ヘッド15の移動中に部品Pが落下するなどのエラーが発生し易くなる。即ち、吸着ノズル14の種類の設定によって、実装時にエラーが発生する頻度が異なることになる。このため、実装に使用される吸着ノズル14の種類を設定する作業は、実装装置11の生産性に影響を及ぼす作業といえる。以下、作業者が吸着ノズル14を設定する作業を「作業種3」という。
【0019】
管理コンピュータ80は、CPU81を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムなどを記憶したROM82と、一時的にデータを記憶するRAM83と、各種データを書き換え可能に記憶するHDD84とを備え、各実装装置11のコントローラ19と通信可能に構成されている。ここで、本実施形態の実装システム10は、作業者が識別情報を入力してログインする必要があり、HDD84に識別情報が登録済の作業者がログイン可能となっている。また、HDD84は、ログインした作業者により行われる作業の情報である作業履歴管理情報84aと、作業種1〜3の各作業に対する作業者の権限の情報である作業権限管理情報84bとを記憶しており、これらの詳細は後述する。また、管理コンピュータ80は、マウスやキーボードなどの入力デバイス86から信号を入力可能で、ディスプレイ88に各種情報を出力可能となっている。
【0020】
次の文以降は、こうして構成された実装システム10の動作についての説明である。
図6は、管理コンピュータ80のCPU81により実行されるメイン処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、図示しないログイン画面がディスプレイ88に表示されている状態で、作業者が入力デバイス86の操作により識別情報とパスワードとを入力してログイン操作がなされたときに実行される。
【0021】
このメイン処理ルーチンが実行されると、管理コンピュータ80のCPU81は、まず、ログイン受付処理を実行する(ステップS100)。管理コンピュータ80のCPU81は、ログイン受付処理において、HDD84に記憶されている作業者の識別情報およびパスワードと、ログイン画面で入力された作業者の識別情報およびパスワードとを照合する処理を行う。なお、照合結果が一致しない場合には、管理コンピュータ80がその旨を表示するよう処理をして、識別情報とパスワードとの再度の入力を促す処理などを行う。管理コンピュータ80のCPU81は、ログイン受付処理を行うと、作業者が上述した作業種1〜3の作業を行う「作業」モードか、実装装置11に基板実装処理を行わせる「生産」モードかを選択可能なモード選択画面をディスプレイ88に表示して(ステップS110)、「作業」モードが選択されたか否か(ステップS120)、「生産」モードが選択されたか否か(ステップS130)、を判定する。なお、作業者は、モード選択画面で「ログアウト」も選択可能となっている。管理コンピュータ80のCPU81は、「ログアウト」が選択されたと判定すると(ステップS140)、作業者のログイン状態を解除するなどのログアウト処理を行ってメイン処理ルーチンを終了する。
【0022】
管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS120で「作業」モードが選択されたと判定すると、作業モード時処理を実行し(ステップS150)、ステップS120,S130で「作業」モードでなく「生産」モードが選択されたと判定すると、生産モード時処理を実行する(ステップS160)。管理コンピュータ80のCPU81は、各モード時処理の実行が終了すると、再びステップS110の処理に戻ってモード選択画面を表示する。以下は、ステップS160の生産モード時処理の詳細の説明である。なお、管理コンピュータ80のCPU81は、作業モード時処理で、ログインしている作業者が作業種1〜3のいずれの作業を行ったかを、上述した作業履歴管理情報84aとしてHDD84に登録する。
図7は、作業履歴管理情報84aの一例である。図示するように、作業履歴管理情報84aは、作業モード中に行われた作業内容が作業種1〜3のいずれであるかを、作業を行った作業者の識別情報に関連付けて登録している。作業履歴管理情報84aは、作業モード時処理において、識別情報が「ID01」の作業者の作業開始時間と作業終了時間、作業者が行った作業内容(作業種1,2)を登録している。なお、この作業履歴管理情報84aは、ログアウト処理にて登録するものとしてもよい。また、作業開始時間や作業終了時間の登録は、必須ではない。
【0023】
ステップS160の生産モード時処理は、
図8に示すフローチャートに基づいて行われる。管理コンピュータ80のCPU81は、生産モード時処理を実行すると、まず、各実装装置11に基板実装処理を行うよう実装指示を出力して(ステップS200)、基板実装処理が完了するのを待つ(ステップS210)。なお、実装指示を受信した各実装装置11は、基板Sへの部品Pの実装処理を順次実行する。そして、基板実装処理が完了すると、管理コンピュータ80のCPU81は、完了した基板実装処理における生産性の解析処理を実行して(ステップS220)、今回の生産性が低下したか否かを判定する(ステップS230)。
【0024】
ここで、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS220,S230の処理を、例えば次のように行う。まず、生産量(例えば、基板Sの生産枚数)を生産装置11の生産所要時間で除すことなどにより今回の生産能率を求め、基板Sの種類や実装した部品Sの数などの情報と共にHDD84に登録する。なお、生産所要時間は、生産装置11が運転していた運転時間と、トラブルなどにより休止していた休止時間とを合わせた時間とする。次に、管理コンピュータ80のCPU81は、そのようにしてHDD84に登録されている過去の生産能率のうち、今回実装処理が行われた基板Sの種類や実装した部品Sの数などに近い生産能率を抽出してその平均値を算出し、算出した過去の生産能率の平均値と、今回の生産能率とを比較する。そして、今回の生産能率が過去の生産能率の平均値を下回っていれば、ステップS230で生産性が低下したと判定する。なお、今回の生産能率が過去の生産能率に対して所定割合(例えば、数%や十数%)以上下回っていれば、生産性が低下したと判定してもよい。また、過去の生産能率の平均値を算出することなく、今回の生産能率が前回の生産能率を下回っていれば生産性が低下したと判定してもよいし、今回の生産能率が基準の生産能率を下回っていれば生産性が低下したと判定してもよい。なお、基準の生産能率は、基板Sの種類や実装した部品Sの数などに基づいて予め理論値として算出するものなどとすればよい。
【0025】
管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS230で生産性が低下してないと判定すると、そのまま生産モード時処理を終了する。また、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS230で生産性が低下したと判定すると、作業モード時処理でHDD84に記憶した作業履歴管理情報84aに基づいて、今回の基板実装処理の前に作業を行った作業者と、その作業種とを特定する(ステップS240)。次に、管理コンピュータ80のCPU81は、HDD84に記憶された作業権限管理情報84bから、特定した作業者の特定した作業種における管理値Pと警告実績とを読み出す(ステップS250)。
【0026】
図9は、この作業権限管理情報84bの一例である。図示するように、作業権限管理情報84bは、作業者の識別情報に関連付けて、作業種1〜3毎に、管理値Pと警告実績と実行制限とが登録されている。警告実績は、作業者に作業の不備に対する警告を行ったか否かの情報であり、実行制限は、作業者に作業を実行させない制限をかけているか否かの情報であり、管理値Pは、警告を行うか否かや作業に制限をかけるか否かの判断に用いる値である。警告実績はデフォルトでは「未警告」となっており、実行制限はデフォルトでは「制限なし」となっている。なお、例えば、
図7の作業履歴管理情報84aは、識別情報が「ID01」の作業者が作業種1,2の作業を行ったことを登録しているから、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS250の処理で、
図9の作業権限管理情報84bのうち識別情報が「ID01」の作業者の作業種1,2の情報を読み出すことになる。即ち、管理コンピュータ80のCPU81は、作業種1の値1の管理値Pおよび「未警告」の警告実績と、作業種2の値0の管理値Pおよび「未警告」の警告実績とを読み出す。
【0027】
管理コンピュータ80のCPU81は、管理値Pと警告実績とを読み出すと、読み出した管理値Pをそれぞれ値1ずつインクリメントすることにより作業権限管理情報84bの管理値Pを更新する(ステップS260)。このように、管理値Pは、作業者が実装装置11の生産性を低下させる度に値1ずつインクリメントされていくから、作業者が生産性を低下させた回数を示す値となる。次に、管理コンピュータ80のCPU81は、読み出した警告実績が「警告済」であるか否かを判定する(ステップS270)。管理コンピュータ80のCPU81は、「警告済」でないと判定すると、管理値Pが第1の閾値P1以上であるか否かを判定する(ステップS280)。本実施形態は、第1の閾値P1に値2を定めるものとした。管理コンピュータ80のCPU81は、管理値Pが第1の閾値P1以上であると判定すると、特定した作業者に対し特定した作業種の実行制限が近いことを警告し(ステップS290)、作業権限管理情報84bの警告実績を「警告済」に更新して(ステップS300)、生産モード時処理を終了する。作業者に対する警告は、例えば、作業者の識別情報および作業種と、作業の実行制限が近い旨とをディスプレイ88に表示することにより行われる。なお、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS250で読み出した作業種1の管理値Pの値1をステップS260で値2に更新し、ステップS250で読み出した作業種2の管理値Pの値0をステップS260で値1に更新している。このため、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS280,S290で、作業種1の管理値Pが第1の閾値P1以上と判定して作業種1に対する警告を行うことになる。一方、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS270で管理値Pが第1の閾値P1以上でないと判定すると、そのまま生産モード時処理を終了する。このため、管理コンピュータ80のCPU81は、生産性の低下が1回目の場合には作業者に対して警告を行わないが、生産性の低下が2回目の場合には作業者に対して警告を行うことになる。
【0028】
また、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS270で「警告済」であると判定すると、管理値Pが第2の閾値P2以上であるか否かを判定する(ステップS310)。ここで、第2の閾値P2は、第1の閾値P1よりも大きな値であり、本実施形態は、第2の閾値P2に値4を定めるものとした。管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS310で管理値Pが第2の閾値P2以上でないと判定すると、特定した作業者に対し特定した作業種の実行制限が近いことを警告して(ステップS320)、生産モード時処理を終了する。なお、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS320の処理を、ステップS290の処理と同様に行う。一方、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS310で管理値Pが第2の閾値P2以上であると判定すると、特定した作業者に対し特定した作業種の作業に実行制限がかかる旨を報知し(ステップS330)、作業権限管理情報84bの実行制限を「制限あり」に更新して(ステップS340)、生産モード時処理を終了する。
【0029】
このように、生産モード時処理において、管理コンピュータ80のCPU81は、生産性が低下した回数を示す管理値Pが第1の閾値P1(第1の所定回数)に到達すると、作業者に警告を行い、管理値Pが第1の閾値P1を超えて第2の閾値P2(第2の所定回数)に到達すると、作業者の作業に実行制限をかけるのである。また、本実施形態のように、第1の閾値P1と第2の閾値P2とが連続した値でない場合は、管理値Pが第1の閾値P1を超えて第2の閾値P2に到達するまでの間も、作業者に警告を行うことになる。なお、
図9に示す作業権限管理情報84bは、識別情報が「ID02」の作業者は、作業種1の管理値Pが値2で、作業種3の管理値Pが値3で、いずれも「警告済」となっている。このため、「ID02」の作業者が、作業種1の作業を行って、あと2回生産性を低下させると作業種1の作業に実行制限がかかり、作業種3の作業を行って、あと1回生産性を低下させると作業種3の作業に実行制限がかかることになる。なお、警告や実行制限は、管理コンピュータ80のディスプレイ88に表示するだけでなく、管理コンピュータ80と作業者の管理者が所有するコンピュータや携帯端末とを通信可能に構成しておき、警告や実行制限を管理者のコンピュータや携帯端末に通知するものなどとしてもよい。
【0030】
図10は、作業モード時処理の説明である。管理コンピュータ80のCPU81は、作業モード時処理を実行すると、まず、ディスプレイ88に作業者が作業種を選択するための作業種選択画面を表示して(ステップS400)、作業者が作業種を選択したか否かを判定する(ステップS410)。管理コンピュータ80のCPU81は、作業者が作業種を選択したと判定すると、HDD84に記憶されている作業権限管理情報84bに基づいてログイン中の作業者が選択した作業種における警告実績と実行制限とを読み出し(ステップS420)、作業者が選択した作業種の実行制限は「制限あり」であるか否かを判定する(ステップS430)。管理コンピュータ80のCPU81は、「制限あり」であると判定すると、作業者が選択した作業種は実行制限により作業することができない旨をディスプレイ88に表示して(ステップS440)、再びステップS400の作業選択画面の表示に戻る。例えば、
図9に示す作業権限管理情報84bは、識別情報が「ID03」の作業者の作業種2が「制限あり」となっている。このため、「ID03」の作業者が作業種2を選択した場合、管理コンピュータ80のCPU81は、「制限あり」と判定して、作業を行わせないことになる。このように、生産モード時処理において、生産性を低下させた回数である管理値Pが第2の閾値P2以上となったために実行制限がかかると、以降は、管理コンピュータ80のCPU81は、その作業者にその作業種の作業を行わせないのである。このため、本実施形態は、同じ作業者による同じ作業種の作業を起因として、実装装置11の生産性の低下が繰り返されるのを抑制することができる。
【0031】
また、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS430で「制限あり」でないと判定すると、作業者が選択した作業種の警告実績が「警告済」であるか否かを判定する(ステップS450)。管理コンピュータ80のCPU81は、「警告済」であると判定すると、実行制限が近いため作業者に注意して作業を行うよう注意喚起をディスプレイ88に表示して(ステップS460)、作業者が選択した作業種における作業を受け付ける(ステップS470)。ステップS470は、作業者が入力デバイス86を操作することにより作業に必要な各種設定入力などの入力操作を受け付けるステップである。即ち、管理コンピュータ80のCPU81は、「制限あり」の場合には、作業者の入力操作を受け付けず、「制限なし」の場合には、作業者の入力操作を受け付けることになる。一方、管理コンピュータ80のCPU81は、ステップS450で警告実績が「警告済」でないと判定すると、ステップS460の処理をスキップして、ステップS470で作業を受け付ける。このように、「警告済」の作業種については、作業者が作業を行う際に注意喚起するから、作業者に注意深く作業を行わせることができる。このため、本実施形態は、同じ作業者の同じ作業種の作業により生産性が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0032】
そして、管理コンピュータ80のCPU81は、作業者の作業が完了したか否かを判定し(ステップS480)、作業が完了したと判定すると、HDD84の作業履歴管理情報84aに、今回行われた作業種を作業者の識別情報と関連付けて作業履歴として登録して(ステップS490)、作業モード時処理を終了する。このステップS490の処理で、管理コンピュータ80のCPU81は、
図7に例示した作業履歴管理情報84aをHDD84に登録することになる。
【0033】
以上説明した本実施形態の実装システム10は、実装装置11の生産性が低下した場合に、作業履歴管理情報84aに基づいて生産性を低下させた作業者を特定し、特定した作業者が生産性を低下させた回数(管理値P)が第2の閾値P2(所定回数)になると、以降の作業に実行制限をかけるから、作業者の作業を起因とする生産性の低下が繰り返されるのを抑制することができる。
【0034】
また、実装システム10は、作業者が実装装置11に対する作業に必要な入力操作を行う入力デバイス86を備え、管理コンピュータ80のCPU81は、作業モード時処理のステップS430の処理で実行制限がないと判定した場合には、ステップS470の処理を行うために作業者による入力デバイス86への入力操作を受け付け、作業モード時処理のステップS430の処理で実行制限があると判定した場合には、ステップS470の処理は行わないために作業者による入力デバイス86への入力操作を受け付けない。このため、本実施形態は、実行制限をかけられた作業者によって設定作業などが実行されるのをより確実に防止することができる。
【0035】
また、実装システム10は、実装装置11の生産に関する作業として、作業種1〜3の複数種の作業が実行可能であり、管理コンピュータ80は、HDD84の作業履歴管理情報84aに作業者と作業種とを識別可能に記憶し、管理コンピュータ80のCPU81は、生産モード時処理で生産性を低下させた作業者と作業種とを特定し、特定した作業者の特定した作業種に対して実行制限をかける。このため、本実施形態は、作業者が生産性の低下を引き起こしやすい作業に絞って効率よく実行制限をかけることができるから、作業者に対して必要以上に実行制限をかけることなく、適切に実行制限をかけることができる。
【0036】
また、実装システム10は、管理コンピュータ80のCPU81が実行制限をかける前に、作業者に対して実行制限が近い旨の警告を行うため、作業者に注意深く作業を行わせることができる。このため、予告なく実行制限をかける場合に比べて、作業者に作業改善の機会を与えることができる。
【0037】
また、実装システム10は、管理コンピュータ80のCPU81が、作業者が生産性を低下させた回数(管理値P)をカウントし、カウントした回数が所定の閾値P2に到達したときに実行制限をかけるから、実行制限をかけるための処理を、簡易な処理とすることができる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施形態は、管理値Pを作業種毎に用いるものとしたが、これに限られず、作業種毎に用いないものとしてもよい。この場合、作業種に拘わらず、作業者毎に1つの管理値Pを用いるものとすればよい。
【0040】
上述した実施形態は、実装システム10が備える複数台の実装装置11を区別することなく管理値Pを用いるものとしたが、これに限られず、各実装装置11毎に管理値Pを用いるものとしてもよい。上述した実施形態と異なり、実装システム10が備える複数台の実装装置11の構成が異なれば各実装装置11の特性も異なることがあるから、各実装装置11に対して作業者が行う作業にバラツキが生じ易くなる場合がある。このため、各実装装置11毎に管理値Pを用いることで、作業者の作業を起因とする生産性の低下をより一層抑制することが可能となる。
【0041】
上述した実施形態は、作業モード時処理において管理コンピュータ80のCPU81が警告を行った作業者に対して注意喚起を行うものとしたが、これに限られず、注意喚起を行わないものとしてもよい。この場合、
図10の作業モード時処理のS450,S460の処理を省略すればよい。
【0042】
上述した実施形態は、生産モード時処理において管理コンピュータ80のCPU81が作業に実行制限をかける前に警告を行うものとしたが、これに限られず、警告を行わないものとしてもよい。この場合、
図8の生産モード時処理のS270〜S300,S320の処理と
図10の作業モード時処理のS450,S460の処理を省略し、
図9の作業権限管理情報84bに警告実績を登録しないものとすればよい。
【0043】
上述した実施形態は、生産モード時処理において管理コンピュータ80のCPU81が、生産性の指標として生産量(基板Sの生産枚数)を実装装置11の生産所要時間で除すことにより求めた生産能率を用いたが、これに限られず、生産性の低下を検出することができる指標であれば、如何なるものを用いてもよい。例えば、実装装置11が生産中にトラブルなどで休止していた休止時間を用いることができ、休止時間が所定時間以上であれば生産性の低下が引き起こされると判断して、生産性が低下したと判定すればよい。この場合、管理値Pとして、生産性が低下した回数をカウントするものに限られず、休止時間を累積していくものとしてもよい。即ち、累積休止時間である管理値Pが、第1の閾値P1(第1の所定時間)に到達すると警告を行い、第2の閾値P2(第2の所定時間)に到達すると作業に実行制限をかけるものなどとすればよい。
【0044】
上述した実施形態は、生産モード時処理において管理コンピュータ80のCPU81が生産性の低下が検出された場合に直前の作業モード時処理で作業を行った作業者の該当する作業種における管理値Pを読み出したが、これに限られず、生産モード時処理で生産性の低下が検出された場合に、それより前に作業を行った作業者の該当する作業種における管理値Pを読み出すものであればよい。例えば、作業開始時間または作業終了時間が、生産開始時間または生産終了時間の所定時間前までの作業を行った作業者の該当する作業種における管理値Pを読み出してもよい。あるいは、複数種の作業種のそれぞれにおいて、直近の作業を行った作業者の管理値Pをそれぞれ読み出してもよい。これらの場合、1人の作業者の管理値Pを読み出すものに限られず、複数の作業者の管理値Pを読み出せばよい。
【0045】
上述した実施形態は、本発明を実装装置11を複数備えた実装システム10に適用する例を示したが、これに限られず、実装装置11を1台だけ備えた実装システム10に適用してもよいし、実装装置11以外にスクリーン印刷によって基板Pにはんだを印刷する印刷装置など各種装置を備える実装システムに適用してもよい。また、本発明は、基板Sに部品Pを実装する実装装置11を備えた実装システム10に適用するものに限られず、生産装置を備え、作業者が生産装置の生産に関する作業を実行可能な生産システムに適用するものであればよい。例えば、各種部品の組立を行う組立装置を備え、作業者が組立装置に対して作業を実行可能な組立システムや各種部品の機械加工を行う加工装置を備え、作業者が加工装置に対して作業を実行可能な加工システムなど、種々の生産システムに適用することができる。