(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態のフィルターは、平均粒径が0.1μm〜100μmである活性白土粉末若しくは酸性白土粉末を含むフィルタマトリックスを有するものである。
【0015】
本明細書におけるフィルタマトリックスとは、活性白土粉末若しくは酸性白土粉末とポリマー粒子とが自己支持性フィルタマトリックス内で互いに一体に焼結及び/又は合着されて結合したものをいう。本明細書において、合着とは「くっつけて一つにすること」を意味し、焼結とは「固体粉末の集合体を加熱して固める」を意味する。加熱して固める条件は、例えば、100℃〜250℃で加熱することが挙げられる。
【0016】
本実施形態のフィルターは、活性白土粉末若しくは酸性白土粉末がフィルタマトリックスに含まれていることにより、ろ液に活性白土粉末若しくは酸性白土粉末が混入することや活性白土粉末若しくは酸性白土粉末が飛散することを防止することができ、作業性に優れたものになり得る。また、本実施形態のフィルターによれば、平均粒径が上記範囲内にある活性白土粉末若しくは酸性白土粉末を含むことにより、カフェインが含まれる液体からカフェインを効率よく除去することができる。
【0017】
なお、本実施形態のフィルターによる効果は、以下の本発明者らの知見に基づくものである。すなわち、活性白土粉末や酸性白土粉末は、単にカラム内に充填しても充分な通水性が得られないものであるところ、活性白土粉末若しくは酸性白土粉末をフィルタマトリックスとして成形し通水可能なフィルターとすることにより、カフェインが含まれる液体からカフェインを効率よく除去することができることを本発明者らは見出した。また、活性白土粉末若しくは酸性白土粉末をフィルタマトリックスにすることで、活性白土粉末若しくは酸性白土粉末をカフェインが含まれる液体と混合し攪拌する従来の方法に比べて、処理量を向上させることができるという効果を本発明者らは見出した。活性白土粉末若しくは酸性白土粉末が、それ自体では通水性が得られにくいものであることを鑑みれば、上記の効果は予想外のものであるといえる。
【0018】
平均粒径が0.1μm〜100μmである活性白土粉末若しくは酸性白土粉末は、共に一般的な化学成分として、SiO
2、Al
2O
3、Fe
2O
3、CaO、MgOなどを有するが、本実施形態においては、SiO
2/Al
2O
3比が3.0〜12.0であるものが好ましく、5.0〜9.0であるものがより好ましく用いられ、またFe
2O
3が1.0〜5質量%、CaOが0〜1.5質量%、MgOが1〜7質量%含まれるものが好ましい。本実施形態のフィルターにおいては、「ガレオンアース V2」(水澤化学社製商品名(日本国東京都中央区))、「活性白土SA35」(東新化成株式会社製商品名(日本国東京都中央区))などの市販品を用いることができる。
【0019】
活性白土粉末の平均粒径は、10〜80μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。
【0020】
活性白土粉末若しくは酸性白土粉末を含むフィルタマトリックスは、例えば、活性白土粉末若しくは酸性白土粉末と結着剤とが含まれる組成物を所定の型を用いて加熱成形する方法により得ることができる。
【0021】
結着剤としては、例えば、超高分子量ポリエチレン粉末及び高分子量ポリエチレン粉末が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において超高分子量とは、重量分子量が3.0×10
6g/mol以上を意味し、高分子量とは、重量分子量が2.0×10
4〜3.0×10
6g/molを意味する。溶融しにくい点で、超高分子量ポリエチレン粉末が好ましい。
【0022】
上記重量分子量は、"StandardTest Method for Dilute Solution Viscosity of Ethylene Polymers," D1601,Annual Book of ASTM Standards, American Society for Testing and Materials、及び、"Standard Specification for Ultra-High-M o l e c u l a r-Weight Polyethylene Molding andExtrusion Materials," D 4020, Annual BookofASTM Standards, American Society forTesting and Materialsによって測定される値を意味する。
【0023】
本実施形態においては、結着剤として、重量分子量が3.0×10
6g/mol〜12×10
6g/molであり、嵩密度が0.2g/cm
3〜0.4g/cm
3である超高分子量ポリエチレン粉末を用いることが好ましい。超高分子量ポリエチレン粉末は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
特に、上記の超高分子量ポリエチレン粉末を配合することにより、フィルタマトリックスを良好に成形できるとともに、フィルタマトリックスの通気性及び通水性を充分確保することができる。
【0025】
上記嵩密度は、[固体比重測定方法]JIS Z 8807に準拠して測定される値を意味する。
【0026】
上記超高分子量ポリエチレン粉末は、例えば、「GUR2126」、「GUR2122」(以上、Ticona社製商品名(アメリカ合衆国ケンタッキー州))などの市販品を用いることができる。
【0027】
上記組成物における活性白土粉末若しくは酸性白土粉末の配合量は、フィルタマトリックスの成形性及びカフェイン除去性能を両立させる観点から、組成物全量を基準として20質量%〜80質量%であることが好ましく、25質量%〜75質量%であることがより好ましく、35質量%〜75質量%であることが更により好ましい。特に、活性白土粉末の配合量が35質量%〜75質量%である場合には、広範囲の液空間速度SV(hr
−1)においてカフェインを効率よく除去することができ、カフェインが含まれる液体をより大量に処理することができる。
【0028】
上記組成物における結着剤の配合量は、フィルタマトリックスの成形性及び成形後の形状維持性等を確保する観点から、組成物全量を基準として80質量%〜20質量%であることが好ましく、75質量%〜25質量%であることがより好ましく、65質量%〜25質量%であることが更により好ましい。
【0029】
上記組成物には、珪藻土、活性炭粉末等の無機吸着剤粉末、ゼオライト粉末、イオン交換樹脂等のイオン交換剤粉末等を更に配合することができる。これらの配合量は、組成物全量を基準として1質量%〜20質量%が好ましい。
【0030】
上記組成物を所定の型を用いて加熱成形するときの条件としては、例えば、結着剤として超高分子量ポリエチレン粉末を用いる場合、100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃で、30分〜3時間、好ましくは30分〜1時間加熱する条件が挙げられる。圧力は、必要に応じて負荷してもよい。
【0031】
本実施形態のフィルターの好適な態様しては、フィルタマトリックスの質量を基準として20質量%〜80質量%の範囲で平均粒径が0.1μm〜100μmである活性白土粉末若しくは酸性白土粉末と、フィルタマトリックスの質量を基準として80質量%〜20質量%の範囲で超高分子量ポリエチレン粉末若しくは高分子量ポリエチレン粉末とを含むフィルタマトリックスを有するものである。
【0032】
さらに、本実施形態のフィルターの好適な態様しては、フィルタマトリックスの質量を基準として50質量%〜75質量%の範囲で平均粒径が0.1μm〜100μmである活性白土粉末若しくは酸性白土粉末と、フィルタマトリックスの質量を基準として25質量%〜50質量%の範囲で重量分子量が3.0×10
6g/mol〜12×10
6g/molであり、嵩密度が0.2g/cm
3〜0.4g/cm
3である超高分子量ポリエチレン粉末とを含むフィルタマトリックスを有するものである。このようなフィルタマトリックスは、カフェインの除去効率に優れるとともに、カフェインが含まれる液体をより大量に処理することができる。
【0033】
本実施形態のフィルターにおいて、通水性の観点から、上記フィルタマトリックスの嵩密度が0.2g/cm
3〜0.55g/cm
3の範囲にあることが好ましく、0.3g/cm
3〜0.55g/cm
3の範囲にあることがより好ましく、0.4g/cm
3〜0.55g/cm
3の範囲にあることが更により好ましい。
【0034】
上記数値範囲の嵩密度を有するフィルタマトリックスは、例えば、結着剤として、フィルタマトリックスの質量を基準として25質量%〜50質量%の範囲で重量分子量が3.0×10
6g/mol〜12×10
6g/molであり、嵩密度が0.2g/cm
3〜0.4g/cm
3である超高分子量ポリエチレン粉末を含有させることによって得ることができる。
【0035】
また、通水性の観点から、上記フィルタマトリックスの通気抵抗が4.0kPa〜20kPaの範囲にあることが好ましく、5.0kPa〜20kPaの範囲にあることがより好ましく、10kPa〜20kPaの範囲にあることが更により好ましい。
【0036】
上記数値範囲の通気抵抗を有するフィルタマトリックスは、例えば、結着剤として、フィルタマトリックスの質量を基準として20質量%〜80質量%の範囲で重量分子量が3.0×10
6g/mol〜12×10
6g/molであり、嵩密度が0.2g/cm
3〜0.4g/cm
3である超高分子量ポリエチレン粉末を含有させることによって得ることができる。
【0037】
本実施形態のフィルターは、毎分0.5Lで純水を通水したときの圧力損失(MPa)が、0.005〜0.2MPaであることが好ましく、0.005〜0.1MPaであることがより好ましく、0.01〜0.05MPaであることが更に好ましい。
【0038】
本実施形態のフィルターを構成する上記フィルタマトリックスの形状としては、例えば、シート状、中空ブロック状、中実ブロック状等が挙げられる。
【0039】
次に、本実施形態のカフェインの除去方法について説明する。
【0040】
本実施形態のカフェインの除去方法は、本実施形態のフィルターでカフェインが含まれる流動体を濾過する工程を備える。
【0041】
カフェインが含まれる流動体としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶、コーヒー、コーラなどの飲料;緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶、コーヒーなどの抽出液;その他の植物の抽出液;及び、合成カフェイン含有植物の抽出液などが挙げられる。
【0042】
本実施形態のカフェインの除去方法において、カフェインが含まれる流動体が液体である場合、カフェイン除去率の観点から、本実施形態のフィルターにおける液空間速度SVを10〜3000(hr
−1)に設定することが好ましく、50〜2000(hr
−1)に設定することがより好ましく、50〜1000(hr
−1)に設定することが更により好ましい。
【0043】
カフェインが含まれる流動体の温度は、4〜98℃に設定することができる。
【0044】
本実施形態のカフェインの除去方法は、カフェインが含まれる飲料の味覚調整に用いることができる。この場合、所望のカフェイン濃度が得られるように、フィルターにおける液空間速度や流動体の濾過量を適宜設定することによりカフェイン除去率を調整することができる。
【0045】
次に、本実施形態のフィルターを備えるカフェインの除去システムについて説明する。
【0046】
図1は、実施形態に係るカフェインの除去システムを示す図である。
図1に示されるシステム10は、カフェインを含有する流動体を後段に供給する供給手段1と、供給手段1に流路L1を介して接続され、供給されたカフェインを含有する流動体からカフェインを除去する除去手段2と、除去手段2に接続され、カフェインが除去された流動体を取り出すための流路L2と、を備える。
【0047】
供給手段1としては、例えば、コーヒーの貯蔵タンク、茶の貯蔵タンクなどのカフェインを含む原料の貯蔵部が挙げられる。
【0048】
図2は、実施形態に係るカフェインの除去手段の一例を示す模式断面図である。
図2に示される除去手段2は、カフェインが含まれる流動体を導入するための導入口L11を有する容器30と、容器30内に設けられた上記本実施形態に係るフィルター20とを備える。
【0049】
容器30としては、例えば、3M製1BSフィルターハウジング等のステンレス製容器、3M製1M1フィルターハウジング等のプラスチック製容器が挙げられる。
【0050】
除去手段2において、フィルター20は円筒形状を有しており、ホルダー22,24によって保持されている。カフェインが含まれる流動体は、円筒形状のフィルターの外側から内側に通じることでカフェインが除去され、導出口L21から系外へ取り出される。
【0051】
実施形態に係るカフェインの除去システムは、ろ液において所望のカフェイン濃度が得られるよう、上述した本実施形態のカフェインの除去方法における液空間速度SV、液温の条件で稼動させ、必要に応じて、希釈或いは濃縮などによりカフェイン濃度が調製されたカフェインが含まれる流動体を供給することが好ましい。
【0052】
本実施形態の係るカフェインの除去システムによれば、本実施形態のフィルターを備えることにより、カフェインが含まれる液体からカフェインを効率よく除去することができる。
【0053】
本実施形態に係るカフェインの除去システムによれば、例えば、カフェインを含有する飲料のカフェイン濃度を調整することができ、低カフェイン飲料を製造することができる。
【0054】
本実施形態に係るカフェインの除去システムは、活性白土粉末の流出を防止できるため、活性白土粉末を除去する装置を省くことができる。更に、本実施形態に係るカフェインの除去システムは、活性白土粉末の飛散を防止することができるため、作業場の環境を向上させることができる。
【0055】
本実施形態のカフェインの除去システムは適宜変更が可能である。例えば、上記供給手段1に代えて、別のカフェインの除去システムに流路L1を接続し、当該システムから供給される処理液を更にカフェインを除去するために用いることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、上記供給手段1に代えて、下記(a)〜(c)のうちの一種以上の手段を経たカフェインを含有する流動体を除去手段2に供給することができる。
(a)遠心分離手段
(b)限外濾過、微細濾過、精密濾過、逆浸透膜濾過、電気透析、又は生物機能性膜などの膜濾過手段
(c)イオン交換樹脂、活性炭若しくはゼオライトなどの吸着剤が充填されているカラム、フィルタープレス、又はスパクラを有する濾過手段
【0057】
例えば、遠心分離によってカフェインを含有する液を得た場合には、これをそのまま除去手段2に供給することができる。
【0058】
更に、本実施形態のカフェインの除去システムは、除去手段2の後段に、上記(a)〜(c)のうちの一種以上の手段を更に設けることができる。
【0059】
次に、本実施形態のフィルターを備える濾過システムについて説明する。
【0060】
図3は、実施形態に係る濾過システムの一例であるポットを示す模式断面図である。
図3に示されるポット50は、容器48と、容器48の上部に設けられたファネル46と、ファネル46の底部に設けられたフィルターユニット44とを備える。フィルターユニット44は、本実施形態のフィルター40と、フィルター40を保持するホルダー42とから構成されている。ファネル46及びフィルターユニット44は脱着可能であり、フィルターユニット44は定期的に交換できる。フィルターユニット44には、本実施形態のフィルター以外のフィルターを更に有していてもよい。具体的には、例えば、本実施形態のフィルターの前段に臭いや異味除去用或いは微粒子除去用のフィルター、後段に臭いや異味除去用或いは微粒子除去用のフィルターを設けることができる。
【0061】
ポット50によれば、ファネル46にカフェインが含まれる飲料を注ぎ、容器48に溜まったろ液を低カフェイン飲料として得ることができる。カフェインが含まれる飲料としては、コーヒー;緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶;コーラが挙げられる。
【0062】
ポット型以外の濾過システムとしては、例えば、導入口と導出口が設けられた容器と、当該容器内に設けられた本実施形態のフィルターとを備える据置型のものが挙げられる。据置型の濾過システムは、業務用として好適であり、コーヒーマシーン、ベンディングマシーンに接続して用いることができる。
【実施例】
【0063】
[フィルターの作製]
(実施例1)
平均粒径が25μmの活性白土粉末(水澤化学社製(日本国東京都中央区)、商品名「ガレオンアース V2」)を65質量部と、嵩密度が0.23g/cm
3であり、重量平均分子量が4.5×10
6g/molであり、平均粒径が35μmである超高分子量ポリエチレン粉末PE−1(Ticona社製(アメリカ合衆国ケンタッキー州)、商品名「GUR2126」)とを35質量部と、をブレードミキサーで混合した。
【0064】
上記で得られた混合粉末を、内径53mm、高さ12mmの円筒型内に充填し、これをオーブン内で温度160℃で、30分焼成した。こうして、直径51mm、高さ11mmの円盤状の活性白土粉末のフィルタマトリックスを成形し、これを実施例1のフィルターとして得た。
【0065】
[フィルターの評価]
得られたフィルターについて、以下の方法にしたがって成形性、嵩密度、通気抵抗、及び通水性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
(成形性)
まず、型から取外し、円板状のフィルターとして成形され、形状が維持されているかを確認し、次に、取り外した円板状のフィルターを10cmの高さから落として欠けがないか確認した。下記評価基準に従って成形性を評価した。
A:10cmの高さから落としても割れない。
B:10cmの高さから落とすと一部欠ける。
C:成形できず、成形処理後の形状が維持されない。
【0067】
(嵩密度)
[固体比重測定方法]JIS Z 8807に準拠して、円板状のフィルターの直径と高さ、及び重量を測定して、その重量を直径と高さから求めた体積で割ることにより嵩密度を算出した。
【0068】
(通気抵抗)
得られたフィルターを直径43mm、高さ11mmの円盤状に切り出し、このフィルターについて、「クリーンルーム用エアーフィルター性能試験方法」JIS B 9927の5.2項の圧力損失試験に準拠して、摂氏25℃の大気圧下で、フィルターの下面から上面に毎分17Lの空気を通気した。このときのフィルター下面における空気圧と大気圧との圧力差を測定し、これを通気抵抗とした。
【0069】
(通水性)
水圧ポンプを用いて、毎分0.5Lで純水を円盤状のフィルターの上面から下面方向に通水したときの圧力損失(MPa)を測定した。
【0070】
【表1】
【0071】
(実施例2)
活性白土粉末及び超高分子量ポリエチレン粉末の配合量をそれぞれ50質量部及50質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、フィルターを得た。得られたフィルターについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
超高分子量ポリエチレン粉末PE−1に代えて、嵩密度が0.25g/cm
3であり、重量平均分子量が4.5×10
6g/molであり、平均粒径が115μmである超高分子量ポリエチレン粉末PE−2(Ticona社製(アメリカ合衆国ケンタッキー州)、商品名「GUR2122」)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、フィルターを得た。得られたフィルターについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
超高分子量ポリエチレン粉末PE−1の配合量を25質量部に変更し、嵩密度が0.25g/cm
3であり、重量平均分子量が4.5×10
6g/molであり、平均粒径が115μmである超高分子量ポリエチレン粉末PE−2(Ticona社製(アメリカ合衆国ケンタッキー州)、商品名「GUR2122」)を25質量部配合したこと以外は実施例2と同様にして、フィルターを得た。得られたフィルターについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例5)
超高分子量ポリエチレン粉末PE−1の配合量を25質量部に変更し、嵩密度が0.47g/cm
3であり、重量平均分子量が9.0×10
6g/molであり、平均粒径が45μmである超高分子量ポリエチレン粉末PE−3(Ticona社製(アメリカ合衆国ケンタッキー州)、商品名「GUR4186」)を25質量部配合したこと以外は実施例2と同様にして、フィルターを得た。得られたフィルターについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例1)
超高分子量ポリエチレン粉末PE−1に代えて、嵩密度が0.47g/cm
3であり、重量平均分子量が9.0×10
6g/molであり、平均粒径が45μmである超高分子量ポリエチレン粉末PE−3(Ticona社製(アメリカ合衆国ケンタッキー州)、商品名「GUR4186」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルタマトリックスの形成を試みた。しかし、フィルタマトリックスを形成することができなかった。
【0076】
(比較例2)
超高分子量ポリエチレン粉末PE−1に代えて、嵩密度が0.47g/cm
3であり、重量平均分子量が9.0×10
6g/molであり、平均粒径が45μmである超高分子量ポリエチレン粉末PE−3(Ticona社製(アメリカ合衆国ケンタッキー州)、商品名「GUR4186」)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、フィルタマトリックスを得た。得られたフィルタマトリックスについて実施例1と同様の評価を行った。しかし、このフィルタマトリックスは、通水抵抗が0.2MPaを超え、通水性に問題があり、フィルターとして機能するものではなかった。
【0077】
(比較例3)
平均粒径が25μmの活性白土粉末(水澤化学社製(日本国東京都中央区)、商品名「ガレオンアース V2」)を、両側が開口した内径53mm、高さ12mmの円筒容器に詰めて、カラムフィルターを作製した。得られたフィルターについて実施例1と同様にして嵩密度及び通水性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
フィルターのカフェイン除去能を評価するために、下記の手順にしたがってカフェインを含有する液からカフェインを除去する実験を行った。
【0079】
(実施例6〜12)
カフェインを含有する原液として、和光純薬工業製(日本国大阪府)の「無水カフェイン」試薬により調製した水溶液を用意した。次に、実施例1又は4のフィルターを用いて、表2に示される液空間速度SV(hr
−1)でカフェインを含有する原液を処理した。なお、原液の処理量は、SVが75hr
−1の条件では1360mLとし、その他のSVの条件では1400mLとした。
【0080】
SVが75hr
−1の条件では80mL毎にろ液のサンプリングを行い、その他のSVの条件では200mL毎にろ液のサンプリングを行った。
【0081】
なお、原液及びろ液中のカフェイン濃度は、20倍に希釈した原液又はろ液について、HACH社製(アメリカ合衆国コロラド州)DR500分光光度計を使用して273nmの波長に対する吸光度を測定し、予め作成した検量線に基づき算出した。
【0082】
得られた原液のカフェイン濃度及びろ液のカフェイン濃度から原液からのカフェイン除去率(%)を求め、各液空間速度SV(hr
−1)におけるカフェイン除去率(%)と処理量(ろ液の総量)との関係をプロットした。これに最小二乗法の近似曲線(多項式近似)を適用し、カフェイン除去率90%における処理量を求めた。結果を表2に示す。
【0083】
また、表2には、原液のカフェイン濃度、フィルターに含まれる活性白土粉末量、カフェイン除去率90%におけるろ液のカフェイン濃度、吸着カフェイン量及び活性白土粉末量に対する吸着カフェイン量の割合を示す。
【0084】
【表2】
【0085】
(参考例1)
実施例10における接触条件に対応する条件で、従来の方法で原液を処理した。すなわち、カフェイン濃度が0.2207mg/mLである原液438mLに、平均粒径が25μmの活性白土粉末(水澤化学社製、商品名「ガレオンアース V2」)8.3gを混合し、66秒間連続攪拌した。
【0086】
攪拌後の混合物を0.45μmのメンブランフィルター(ミリポア社(アメリカ合衆国 マサチューセッツ州) MILLEXHA SLHA033SS)により濾過し、ろ液のカフェイン濃度を測定することによりカフェイン除去率を算出した。このときのカフェインの除去率は86.7%であった。
【0087】
これに対し、実施例6〜12においては、実施例1及び実施例4のフィルターを用いることにより、活性白土粉末の濾過を行うことなく、カフェインが除去されたろ液を得ることができ、カフェインの除去率90%においても充分な量の原液を処理できることが確認された。特に、実施例4のフィルターを用いた場合、広範囲の液空間速度SV(hr
−1)においてカフェインを効率よく除去することができ、大量の原液を処理することができることが分かった。また、実施例4のフィルターにおいては、液空間速度SVを75(hr
−1)〜780(hr
−1)の範囲に設定することで、より多くの原液を処理できることが分かった。