(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記負荷制御部は、ユーザ又はオペレータによって開始された前記負荷への制御であるユーザ制御が存在する場合、前記ユーザ制御の優先順位にかかわらず、前記ユーザ制御の実行を維持したままで他の制御を停止することによって、前記現在発電電力が前記目標電力を上回らないように前記負荷を制御する、請求項1に記載の負荷制御システム。
前記負荷制御部は、制御対象から除外された負荷が存在する場合、前記現在発電電力が前記目標電力を上回るか否かの判定を行う際に、前記除外された負荷への制御によって消費される電力を含まない前記現在発電電力の値に基づいて前記判定を行う、請求項1又は2に記載の負荷制御システム。
電力を発電する自家発電機と、商用電源又は前記自家発電機により供給される電力を消費して動作する負荷と、前記負荷の動作を制御する中央制御装置と、を備えた負荷制御システムにおける中央制御装置であって、
予め設定された優先順位毎の負荷及びその運転内容を示す制御内容を複数パターン記憶する記憶部と、
前記複数パターンの中からオペレータが選択したパターンを表す情報の入力を受け付ける入力部と、
前記自家発電機によって発電された電力で前記負荷を制御する場合に、前記オペレータによって選択されたパターンに基づいて、前記制御内容のうち優先順位が高いものから順に実行し、負荷によって消費される電力の容量の合計を表す現在発電電力が前記自家発電機によって発電される電力の容量の合計の目標値を表す目標電力を上回る場合には、前記制御内容を実行しない負荷制御部と、
停電が生じる前における前記負荷の制御内容を記憶する状態記憶部と、を備え、
前記負荷制御部は、停電が生じた後に前記負荷を制御する場合に、前記停電が生じる前において制御されていなかった負荷については、前記優先順位にかかわらず制御しない、中央制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[概略]
実施形態の負荷制御システムでは、予め1又は複数の負荷制御パターンが登録される。負荷制御パターンは、複数の優先順位(BCP制御レベル)毎に負荷の制御内容が設定された情報である。負荷制御システムでは、BCP制御が行われる際に、オペレータによって選択された負荷制御パターンにしたがった負荷制御が実行される。具体的には以下のとおりである。
【0008】
負荷制御システムでは、高い優先順位の制御内容から順に参照される。参照されている制御内容を実行した際に消費される電力(設定電力)と、自家発の余剰電力(BCP調整電力)とが比較される。自家発の余剰電力よりも、消費される電力の方が小さい場合には、その制御内容に基づいて新たに各負荷が制御される。一方、自家発の余剰電力よりも、消費される電力の方が大きい場合には、その制御内容に基づいた制御が行われない。そのため、自家発が発電可能な電力内で、優先順位の高い負荷から順に稼働させることが可能となる。したがって、より効率的に自家発の発電電力を利用することが可能となる。
以下、実施形態の負荷制御システムについて詳細に説明する。
【0009】
[詳細]
図1は、実施形態の負荷制御システム10のシステム構成を示す図である。
図1において、監視及び制御を行うための通信線を破線で示し、電力を供給する経路を実線で示し、制御対象となる各電力系統を一点鎖線で示す。実施形態の負荷制御システム10は、1又は複数の設備や建物に対して設置される。負荷制御システム10は、複数の電力系統100(電力系統100−1,電力系統100−2)、系統間バイパス用遮断器200、商用電源遮断器300及び中央制御装置400を備える。
図1に示される実施形態の負荷制御システム10は、電力系統100−1(系統1)と、電力系統100−2(系統2)とを備える。以下、電力系統100−1及び電力系統100−2に共通する事項について説明する。
【0010】
電力系統100は、発電機101、第一遮断器102、第二遮断器103、動力盤104及び負荷105を備える。
発電機101は、負荷105に対して供給される電力を発電する自家用発電機(自家発)である。
第一遮断器102は、発電機101によって発電された電力を第二遮断器103及び系統間バイパス用遮断器200に接続された電力線(母線)へ供給するか否か制御するための遮断器である。第一遮断器102は、例えば真空遮断器(Vacuum Circuit Breaker, VCB)や、ガス遮断器(Gas Circuit Breaker, GCB)等の高圧用遮断器を用いて構成される。
【0011】
第二遮断器103は、第一遮断器102を介して発電機101から供給される電力を動力盤104及び負荷105に対して供給するか否か制御するための遮断器である。第二遮断器103は、例えば真空遮断器や、ガス遮断器等の高圧用遮断器を用いて構成される。
動力盤104は、1又は複数の負荷105毎に電力を供給するか否か制御するための装置である。オペレータは、動力盤104を操作することによって、負荷105に供給される電力を制御することが可能である。オペレータの操作は、直接行われてもよいし、遠隔地から行われてもよい。
【0012】
負荷105は、動力盤104を介して供給される電力を消費することによって動作する装置である。負荷105は、例えば空調機器、熱源設備、空調機、外調機、照明設備、セキュリティ設備、通信設備、ビル制御設備、エレベーター設備などの機器である。負荷105は、不図示の中央監視装置による制御に応じて状態を変化する。例えば負荷105が空調機である場合、負荷105は、中央監視装置から電源のオン又はオフ、設定温度、風量などの制御を受け付け、受け付けられた制御に応じて動作する。また、負荷105は、オペレータやユーザによる操作を受け付け、受け付けられた操作に応じて動作する。
【0013】
電力系統100に設けられる発電機101、第一遮断器102、第二遮断器103、動力盤104及び負荷105の数は、それぞれ1つであってもよいし複数であっても良い。また、電力系統100に対し、発電機101、第一遮断器102、第二遮断器103、動力盤104及び負荷105とは異なる他の構成が設けられてもよい。
【0014】
系統間バイパス用遮断器200は、複数の電力系統100を接続する電力線(母線)を遮断するための遮断器である。系統間バイパス用遮断器200は、例えば真空遮断器や、ガス遮断器等の高圧用遮断器を用いて構成される。系統間バイパス用遮断器200は、例えば商用電源による電力供給が行われている場合には、各電力系統100に商用電源による電力が伝わるように閉じる。一方、発電機101による電力供給が行われる場合には、中央制御装置400は、必要に応じて系統間バイパス用遮断器200を開いてもよい。
商用電源遮断器300は、商用電源から供給される電力を電力線に対して供給するか否か制御するための遮断器である。商用電源遮断器300は、例えば真空遮断器や、ガス遮断器等の高圧用遮断器を用いて構成される。
【0015】
中央制御装置400は、負荷制御システム10に設けられた複数の電力系統100の装置、系統間バイパス用遮断器200及び商用電源遮断器300を制御する。中央制御装置400は、例えばサーバ装置などの情報処理装置を用いて構成される。
【0016】
図2は、中央制御装置400の機能構成を表す機能ブロック図である。中央制御装置400は、入力部401、表示部402、パターン制御部403、パターン記憶部404、通信部405、状態監視部406、状態記憶部407、負荷制御部408及び判定部409を備える。パターン制御部403、状態監視部406、負荷制御部408及び判定部409は、CPU(Central Processing Unit)が中央制御プログラムを実行することによって実現される。なお、パターン制御部403、状態監視部406、負荷制御部408及び判定部409の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。中央制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。中央制御プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0017】
入力部401は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部401は、オペレータの指示を中央制御装置400に入力する際にオペレータによって操作される。入力部401は、入力装置を中央制御装置400に接続するためのインタフェースであっても良い。この場合、入力部401は、入力装置においてオペレータの入力に応じ生成された入力信号を中央制御装置400に入力する。
【0018】
表示部402は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部402は、テキストや画像を表示する。表示部402は、画像表示装置を中央制御装置400に接続するためのインタフェースであっても良い。この場合、表示部402は、テキストや画像を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0019】
パターン制御部403は、オペレータが入力装置を操作して入力した指示に応じて、オペレータによって作成された負荷制御パターンを受け付ける。パターン制御部403は、受け付けた負荷制御パターンをパターン記憶部404に書き込む。
【0020】
パターン記憶部404は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。パターン記憶部404は、パターン制御部403によって受け付けられた負荷制御パターンを記憶する。
【0021】
図3は、パターン記憶部404が記憶する情報の具体例を示す図である。パターン記憶部404は、負荷制御パターン毎に、パターンテーブル41を記憶する。そのため、パターン記憶部404は、負荷制御パターンの数だけパターンテーブル41を記憶する。1つのパターンテーブル41は、1つの負荷制御パターンの内容を表す。
【0022】
パターンテーブル41には、複数のレコード42が登録されている。レコード42は、優先順位と負荷の制御内容とを表す。レコード42は、ナンバー、優先順位、制御対象、容量、除外、合計容量(設定電力)の各値を有する。
ナンバーは、1つのパターンテーブル41内で一意にレコードを示す番号である。
優先順位は、そのレコード42に定義されている負荷の制御内容の優先順位(BCP制御レベル)を表す。優先順位の値は、小さいほど高い優先度を表し、大きいほど低い優先度を表す。
制御対象は、制御される負荷105の名称を表す。
容量は、制御対象に定義された制御内容を実行することによって消費する電力の量を表す。
除外は、そのレコード42に定義されている制御内容を実行するか否かを意味する値である。除外の値として“除外”が設定されている場合、そのレコード42に定義されている制御内容は実行されない。
合計容量は、そのレコード42に定義されている優先順位の全ての制御内容(除外されている制御内容を除く)を実行した場合に消費する電力の合計量を示す。例えば、優先順位“1”の合計容量は、ナンバー1のレコードの容量と、ナンバー2のレコードの容量との合計値である。例えば、優先順位“2”の合計容量は、ナンバー4のレコードが除外に設定されているため、ナンバー3のレコードの容量と同値である。
【0023】
図2に戻って中央制御装置400の説明を続ける。通信部405は、ネットワークインタフェースである。通信部405は、例えば電力系統100の各装置や系統間バイパス用遮断器200と通信する。例えば、通信部405は、負荷105の状態を示す値(以下、「負荷状態値」という。)を、負荷105や不図示のセンサーから受信する。また、通信部405は、負荷制御部408によって生成された制御信号を、負荷制御部408の制御対象となった第一遮断器102、第二遮断器103、動力盤104、負荷105へ送信する。
【0024】
状態監視部406は、通常の制御が行われている間(停電が生じる前まで)に通信部405によって受信された負荷状態値に基づいて、各負荷105の状態を監視する。状態監視部406は、負荷105の状態に変化が生じた場合、変化後の負荷状態値を状態記憶部407に書き込む。状態監視部406は、停電が生じた後は、復旧するまでの間は、負荷状態値の更新を行わない。そのため、停電が生じた後の状態記憶部407には、停電が生じる直前の各負荷105の状態を表す負荷状態値が記録されている。
【0025】
状態記憶部407は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。状態記憶部407は、状態監視部406によって書き込まれる負荷状態値を記憶する。
【0026】
図4は、状態記憶部407が記憶する情報の具体例を示す図である。状態記憶部407は、状態情報テーブル71を記憶する。
状態情報テーブル71には、複数のレコード72が登録されている。レコード72は、負荷ID及び負荷状態値の各値を有する。負荷IDは、負荷105を一意に示す識別情報である。負荷状態値は、そのレコード72の負荷IDが示す負荷105の状態を表す情報である。
【0027】
図2に戻って中央制御装置400の説明を続ける。負荷制御部408は、パターン記憶部404に記憶されている負荷制御パターンと、判定部409による判定結果と、に基づいて負荷105を制御する。
例えば、負荷制御部408は、負荷制御パターンに基づいて各負荷105の制御内容を決定し、決定された制御内容を表す制御信号を生成する。そして、負荷制御部408は、通信部405を介して各負荷105に制御信号を送信する。
【0028】
負荷制御部408は、状態情報テーブル71に登録されている各負荷105の負荷状態値に応じて、各負荷105を制御してもよい。例えば、負荷制御部408は、負荷制御パターンにおいて定義されている負荷の制御内容のうち、状態情報テーブル71に制御実行中であったことが登録されている負荷105についてのみ、制御を実行する。
また、負荷制御部408は、停電後であって復旧するまでの間(BCP制御実行中の間)は、各負荷105が中央監視装置等の他の装置による制御を受け付けないように負荷105を制御する。このような制御により、負荷制御部408による制御が、他の装置による制御によって乱されてしまうこと(例えば、優先順位の低い制御が実行されてしまうことや、現在発電電力がBCP目標電力を超えてしまうこと)を抑止できる。
判定部409は、より低い優先順位の制御内容を実行すべきか否か判定する。判定部409は、判定結果を負荷制御部408に出力する。
【0029】
次に、負荷制御部408が実行する処理について詳細に説明する。負荷制御部408が実行する処理には、BCP制御を開始するか否かを判定する処理、BCP制御の対象外にする系統を判定する処理が含まれる。以下、それぞれの処理について説明する。
【0030】
まず、BCP制御を開始するか否かを判定する処理について説明する。負荷制御部408には、BCP制御を開始する条件(制御条件)が予め設定されている。負荷制御部408は、制御条件が満たされたか否か判定する。負荷制御部408は、制御条件が満たされたと判定した場合に、BCP制御を開始する。
【0031】
制御条件として、例えば電力系統100毎に以下のような条件が設定されてもよい。
・発電機101が運転中であり、且つ、その電力系統100が自家発としての送電系統であること。
・動作可能条件を満たした発電機101が1台以上その電力系統100に属していること。
・オペレータの手動によりBCP制御の開始の指示が実行済みであること。
【0032】
発電機101の動作可能条件には、発電機101が正常に、故障の疑いなく動作していることを示すための複数の条件が設定されてもよい。例えば、発電機101の状態を表す複数の指標や、発電機101が故障しているか否かを表す複数の指標が動作可能条件として設定されてもよい。例えば、動作可能条件に設定されている複数の条件のうち、1つでも満たされていない条件が存在する発電機101は、動作可能条件を満たしていないと判定されてもよい。
【0033】
次に、BCP制御の対象外にする系統を判定する処理について説明する。負荷制御部408は、BCP制御が実行されている最中に、上記の制御条件が不成立となった電力系統100が存在する場合、制御条件が不成立となった電力系統100のBCP制御を中断する。この場合、負荷制御部408は、制御条件が不成立となった電力系統100において、優先順位“0”の制御内容のみを実行し、優先順位が“1”及び“1”より低い制御内容の実行を停止する。そして、負荷制御部408は、制御条件が不成立となったことをオペレータやユーザに報知する。なお、設定値出力については制御が行われなくてもよい。
一度制御条件が不成立となった電力系統100が後に制御条件を満たしたとしても、負荷制御部408は、その電力系統100に対してBCP制御を再開しない。
【0034】
図5は、負荷制御システム10におけるBCP制御の処理の流れを表すフローチャートである。なお、BCP制御の処理においては、中央制御装置400以外の装置又はオペレータが主体となる処理も含まれている。このような処理については、
図5において破線の矩形にて表す。
【0035】
まず、BCP制御が開始されるまでの処理(ステップS101〜S108)について説明する。
負荷制御システム10のオペレータは、負荷制御パターン(BCPパターン)を事前に中央制御装置400に対して登録する(ステップS101)。災害の発生などに起因して商用電源において停電が発生すると(ステップS102)、負荷制御システム10の制御対象となっている建物内の全設備(全負荷105)が停止する(ステップS103)。その後、商用電源に停電が発生したことに応じて各電力系統100の発電機101が起動する(ステップS104)。
【0036】
オペレータは、負荷制御システム10の制御対象となっている建物内に設置された負荷105について、安全確認を行う(ステップS105)。例えば、オペレータは、災害発生などのアクシデントに対して予め設定されているマニュアルにしたがって、各負荷105を起動させても問題が無いか(障害が生じていないか)について確認作業を行う。起動させるべきではない負荷105(以下、「障害負荷」という。)の存在が確認された場合、オペレータは、障害負荷を負荷制御システム10の制御対象から除外するための操作を行う。この操作に応じて、中央制御装置400は、パターンテーブル41の障害負荷を表すレコード42に、“除外”の値を設定する(ステップS106)。
【0037】
オペレータは、停電の発生後(ステップS102)、発電機101が起動し(ステップS104)、建物内の各負荷105の安全が確認され(ステップS105)、必要に応じて障害負荷の除外が行われた後(ステップS106)、中央制御装置400に対してBCP制御の開始を指示する。この際、オペレータは、中央制御装置400に対して予め登録されている複数の負荷制御パターンの中から、1つの負荷制御パターンを選択する。そして、オペレータは、選択された負荷制御パターンを中央制御装置400に対して指示する。オペレータによる指示に応じて、中央制御装置400は、選択された負荷制御パターンに基づいたBCP制御を開始する(ステップS107)。そして、負荷制御システム10に備えられている各負荷105は、中央制御装置400によるBCP制御に応じて動作する(ステップS108)。
【0038】
負荷105への電源供給は、停電による各第二遮断器103の開放後、発電機101が起動し各第一遮断器102が再投入されるまでは、受変電設備側の停電動作パターンに依存する。この停電動作パターンには、手動による自家発起動も含まれる。また、中央監視装置等において異常警報が発報していない負荷105であっても、現地におけるオペレータの確認作業により運転不可と判断されることがあり得る。そのため、BCP開始操作(ステップS107)が行われる前に、負荷105の状態を現地にて確認する作業が行われることが望ましい。ただし、一部又は全部の負荷105が稼働する前にBCP制御が開始されてもよいし、全ての負荷105が稼働した後にBCP制御が開始されてもよい。
【0039】
次に、BCP制御が開始されてから復旧するまでの処理(ステップS109〜S113)について説明する。
BCP制御が開始された後に、商用電源による電力の供給が復旧すると(ステップS109)、商用電源の復旧(復電)に応じて発電機101が停止する(ステップS110)。その後、第一遮断器102が開放され、全ての負荷105が停止する(ステップS111)。オペレータは、中央制御装置400に対してBCP制御の終了を指示する。オペレータによる指示に応じて、中央制御装置400は、BCP制御を終了する(ステップS112)。その後、オペレータは、現場設備の負荷105や中央監視装置を操作することによって、負荷105を通常通りの動作に復旧させる作業を行う(ステップS113)。中央監視装置は、1又は複数の負荷105を制御する装置である。この後、現場設備及び中央監視装置によって条件付けされた復電動作となり、BCP制御に関連する一連の処理が終了する。
【0040】
図6は、負荷制御システム10におけるBCP制御の特徴を示す図である。
図6において、横軸は時間を表す。時刻t1までの間は、商用電源において停電は生じていない。そのため、負荷制御システム10における各負荷105は、商用電源によって供給される電力を用いて動作している。この間は、負荷制御システム10は通常制御を行っている。
【0041】
時刻t1に商用電源において停電が生じる(
図5:S102)。商用電源において停電が生じると、負荷制御システム10は、停電制御を行う。具体的には、まず、負荷制御システム10の制御対象となっている建物内の全設備(全負荷105)が停止する(
図5:S103)。その後、時刻t2において、発電機101が起動し、発電機101による給電が可能な状態になる(
図5:S104)。また、オペレータは、負荷105の安全確認を行い、必要に応じて障害負荷を除外する(
図5:S105,S106)。以上の作業が完了すると、時刻t3において停電制御が終了する。
【0042】
オペレータが中央制御装置400に対してBCP制御の開始を指示すると、時刻t4においてBCP制御が開始される(
図5:S107)。BCP制御が開始されると、まず非常用防災負荷に対して電力が供給される。非常用防災負荷とは、負荷制御システム10の制御対象となっている建物内に設置された負荷105のうち、非常時に備えて最優先で稼働させておく必要のある負荷105に要する電力を表す。
図6において、非常用防災負荷の優先順位は、優先度が最も高いことを示す“0”で表されている。
【0043】
次に、時刻t5において、中央制御装置400は、優先順位が“1”の制御内容を実行するか否か判定する。中央制御装置400は、優先順位が“1”の制御内容を実行した際に消費される電力(設定電力)と、発電機101の余剰電力(BCP調整電力)とを比較する。発電機101の余剰電力よりも消費される電力の方が小さい場合、中央制御装置400は、優先順位が“1”の制御内容に基づいて各負荷の制御を開始する。中央制御装置400は、優先順位“2”、“3”、・・・と順に判定処理を行い、優先順位が“19”の制御内容まで順に実行する。
【0044】
次に、時刻t6において、中央制御装置400は、優先順位“20”の制御内容を実行するか否か判定する。優先順位が“20”の制御内容を実行した際に消費される電力(設定電力)は、発電機101の余剰電力(BCP調整電力)よりも高い。すなわち、優先順位“1”から“20”までの制御内容を全て実行した際に消費される電力は、発電機101で供給可能な目標電力(BCP目標電力)よりも高い。そのため、中央制御装置400は、優先順位“20”の制御内容を実行しない。
【0045】
時刻t7において、商用電源が復電する(
図5:S109)。商用電源の復電に応じて、時刻t8に発電機101が停止する(
図5:S110)。その後、時刻t9において、中央制御装置400は、全ての遮断器(商用電源の電力線に接続された遮断器、発電機101の電力線に接続された遮断器)を開放することによって、全ての負荷105に対する電力の供給を停止する。電力の供給の停止に伴い、全ての負荷105が停止する(
図5:S111)。
【0046】
次に、時刻t9において、オペレータが中央制御装置400に対してBCP制御の終了を指示する。オペレータによる指示に応じて、中央制御装置400は、制御内容の優先順位を“0”に設定し、時刻t10においてBCP制御が終了する(
図5:S112)。
【0047】
その後、時刻t11に復電制御が開始される。復電制御において、オペレータは、現場設備の負荷105や中央監視装置を操作することによって、負荷105を通常通りの動作に復旧させる作業を行う(
図5:S113)。時刻t12以降は、負荷制御システム10における各負荷105は、商用電源によって供給される電力を用いて通常通り動作する。
【0048】
図7は、BCP制御が開始される時点と、レベル制御が実行される時点と、の処理の内容を表す図である。まず、
図7に示される各値について説明する。
発電可能電力は、制御条件を満たす発電機101によって発電可能な電力の系統毎の総量である。発電可能電力は、オペレータによって設定される。例えば、1つの系統で4台の発電機101が稼働する場合、その系統の発電可能電力は、4台の発電機101が発電可能な電力の合計値となる。
【0049】
点線で示される現在発電電力は、制御条件を満たす発電機101によって発電されている電力の系統毎の総量である。例えば、1つの系統で4台の発電機101が稼働している場合、その系統の現在発電電力は4台の発電機101の発電電力の合計値となる。現在発電電力は、負荷105の制御内容(稼働、停止など)に応じて変化する。いいかえると、現在発電電力は、負荷105に対して供給されている(負荷105によって消費されている)電力の系統毎の総量である。
【0050】
BCP目標電力は、発電機101によって供給可能とする電力の目標値を表す。BCP目標電力は、例えば以下の式によって算出される。
BCP目標電力=(gW-elW)×dfr/100))×((100-lvr)/100)・・・(式1)
式1において、gWは発電可能電力を示し、elWは非常用防災負荷の容量を示し、lvrは負荷起動時の瞬低率を示し、dfrはBCP制御時の需要率を示す。
投入上限電力は、投入上限電力比率(%)とBCP目標電力とに基づいて算出される。投入上限電力は、登録されるBCP制御レベルの数と、各BCP制御レベルの合計容量(設定電力)と、に応じて設定される。具体的には、投入上限電力は、BCP制御レベルが1つ上がる場合(1つ低い優先順位の制御が実行される場合)にBCP目標電力を超過しない範囲で設定される。投入上限電力は、例えば以下の式によって算出される。
投入上限電力=BCP目標電力×投入上限電力比率・・・(式2)
現在発電電力が投入上限電力より低く、投入条件を満たしていた場合、BCP制御レベルを1つ上げる処理(1つ低い優先順位の制御を実行する処理)が行われる。なお、投入上限電力比率は、オペレータによって設定されてもよい。
【0051】
BCP調整電力は、負荷105に供給可能な電力(調整電力)を表す。BCP調整電力は、以下の式によって算出される。
BCP調整電力=BCP目標電力−現在発電電力・・・(式3)
レベル設定電力は、オペレータによって選択されたBCP制御パターンの各BCP制御レベル(例えば1〜20)における負荷105の容量の合計値(合計容量)である。レベルn設定電力(nは0以上の整数)は、BCP制御レベルnにおける負荷105の容量の合計値である。
【0052】
次に、BCP制御の流れについて説明する。
BCP制御の制御条件が成立すると、BCP制御が開始される。BCP制御が開始された時点のBCP制御レベルは“0”である。すなわち、BCP制御が開始された時点では、非常用防災負荷のみが稼働するように負荷制御が実行される。その後、BCP制御の開始操作時に選択された制御パターンに基づいて、BCP制御レベルがBCP目標電力と投入上限電力との間に位置するように、BCP制御レベルが制御周期(例えば1分)にしたがって繰り返し変更される。
【0053】
現在発電電力が投入上限電力より低く、且つ、現在のBCP制御レベルより1つ上のBCP制御レベルの設定電力よりもBCP調整電力の方が高い場合、中央制御装置400は1つ上のBCP制御レベルを実行する。この場合、中央制御装置400は、新たに実行されるBCP制御レベルの制御対象に応じて負荷105の制御を開始する。なお、中央制御装置400は、制御周期内においてBCP制御レベルを1つずつ上げる。
【0054】
図8は、投入条件においてBCP制御レベルを上げない場合の具体例を示す図である。現在実行されているBCP制御レベルよりも1つ上のBCP制御レベルの設定電力(
図8のレベルn設定電力)が、BCP調整電力を超過している場合、中央制御装置400は、BCP制御レベルを上げない。
【0055】
図9は、遮断条件の具体例を示す図である。現在発電電力がBCP目標電力より高くなった場合、中央制御装置400は、BCP制御レベルを下げる。この際、中央制御装置400は、BCP制御レベルを上げる場合とは異なり、1つずつBCP制御レベルを下げるのではなく、現在発電電力がBCP目標電力よりも低くなるBCP制御レベルまで一度に下げる。
図9の例では、m分のBCP制御レベルが一度に下げられている。なお、制御条件が不成立になった場合、中央制御装置400はBCP制御レベルを“0”まで一度に下げる。
【0056】
また、オペレータ又はユーザの操作によって、現在実行されている負荷制御パターンとは異なる負荷の制御(以下、「ユーザ制御」という。)が実行された場合、中央制御装置400は、ユーザ制御によって消費される電力の容量を含む現在発電電力を算出する。算出された現在発電電力がBCP目標電力よりも高い場合、中央制御装置400は、ユーザ制御を継続したままで、他の制御を停止させることによって、現在発電電力をBCP目標電力以下に下げる。具体的には以下のとおりである。
【0057】
中央制御装置400は、
図9に示されるようにBCP制御レベルを下げる際に、制御が停止されるBCP制御レベルの制御内容(
図9のBCP制御レベルn〜(n−m)の各レコード42に設定されている制御対象)にユーザ制御と同一の制御が含まれているか否か判定する。もし含まれている場合には、ユーザ制御と同一の制御の実行を維持した状態における現在発電電力を推定する。現在発電電力の推定値がBCP目標電力よりも低い場合には、中央制御装置400は、BCP制御レベルを(n−m)まで下げる。一方、現在発電電力の推定値がBCP目標電力よりも高い場合には、中央制御装置400は、BCP制御レベルを(n−(m+1))まで下げた場合の現在発電電力を推定する。中央制御装置400は、このような処理を繰り返すことで、ユーザ制御の実行を維持したままで、現在発電電力をBCP目標電力以下に下げる。
【0058】
図10は、表示部402が表示するBCP制御画面の具体例を示す図である。BCP制御画面は、この画面において設定される負荷制御パターンの各優先順位の設定電力や、制御状況等を表示する画面である。
BCP制御状態表示領域501は、BCP制御状態を表示する領域である。BCP制御状態表示領域501には、BCP制御条件成立、BCP制御中、発電可能電力、BCP目標電力、投入上限電力、現在発電電力、BCP調整電力、BCP以降要求の各項目の値が表示される。
【0059】
BCP制御条件成立は、BCP制御条件が成立しているか否かを表す。成立している場合には丸印が表示され、成立していない場合はバツ印が表示される。
BCP制御中は、BCP制御が行なわれているか否かを表す。BCP制御が行われている場合は丸印が表示され、行なわれていない場合はバツ印が表示される。
BCP制御パターンは、現在の制御中パターンを表す。
発電可能電力は、動作可能条件を満たしている正常な発電機101の発電電力の合計値を表す。
【0060】
BCP目標電力は、発電機101で供給可能とするBCP目標電力を表示する。
投入上限電力は、目標電力に対し発電機設定で登録された投入上限比率により算出された投入上限電力を表示する。
現在発電電力は、現在の発電電力(現在発電電力)を表示する。
BCP調整電力は、BCP目標電力から現在発電電力を引いた値を表示する。
BCP移行要求は、制御開始時及び終了時の設備に対する移行指令の結果を表示する。
【0061】
レベル表示領域502は、各電力系統100において実施されているBCP制御レベルを表示する。BCP制御開始後に条件不成立となったために制御中断している電力系統100については、BCP制御レベルの値として“0”が表示され、下部に“中断”と表示される。
【0062】
パターン設定電力表示領域503には、BCP制御パターンの選択中パターンのパターン番号、パターン名称及び設定電力が表示される。各パターンの設定電力は、累積容量を表す。なお、現在のBCP制御レベルが1〜20のいずれかである場合、該当するBCP制御レベルの左に所定の記号(
図10の例では黒塗りの三角形)が表示される。
【0063】
制御設定ボタン504は、制御設定ダイアログを表示するためのボタンである。パターン選択ボタン505は、パターン選択ダイアログを表示するためのボタンである。パターン設定ボタン506は、パターン設定ダイアログを表示するためのボタンである。制御条件設定ボタン507は、制御条件設定ダイアログを表示するためのボタンである。発電機設定ボタン508は、発電機設定ダイアログを表示するためのボタンである。CSV保存ボタン509は、CSV保存ダイアログを表示するためのボタンである。印刷設定ボタン510は、印刷設定ダイアログを表示するためのボタンである。制御モード表示領域511には、現在行われている制御の内容(例えば、通常、停電制御、BCP制御、復電制御など)が表示される。
【0064】
図11は、表示部402が表示するパターン設定ダイアログの具体例を示す図である。パターン設定ダイアログの画面では、オペレータは各負荷制御パターンの内容を登録することができる。
パターン設定表示領域601には、パターンテーブル41に登録されている情報が表示される。なお、
図11では、
図3に示された項目に加えてさらに、状態、設定値、変更状況などの項目が表示されている。
【0065】
レベルは、BCP制御レベルの番号を表す。負荷名称は、制御対象ポイントの名称を表す。状態は、制御対象ポイントが状態(ON/OFFなど)を制御するものである場合に黒塗りの丸が表示される。
設定値は、設定値出力を行う制御対象ポイント登録時に選択されている負荷種別を表す。負荷種別が温度である場合には黒塗りの正方形が表示され、負荷種別が照度である場合には黒塗りの菱形が表示される。
容量は、制御対象ポイントの容量を表示する。除外は、制御対象ポイントが除外か否かを表示する。変更状況は、制御中に選択されているパターンのみ変更状況および制御出力状況を表示する。合計は、各BCP制御レベルに登録されている負荷容量の合計を表す。
【0066】
パターン選択領域602は、現在パターン設定表示領域601に表示されている負荷制御パターンの値を表示する。オペレータは、“<”や“>”が表示されているボタンを操作することによって、パターン設定表示領域601に表示される負荷制御パターンを変更できる。
【0067】
新規登録ボタン603は、パターン情報設定ダイアログを表示するためのボタンである。変更ボタン604は、選択されている制御対象ポイントのBCP制御レベルの情報設定ダイアログを表示するためのボタンである。削除ボタン605は、選択した制御対象ポイントの登録を削除するためのボタンである。キャンセルボタン606は、ダイアログを閉じるためのボタンである。
【0068】
図12は、表示部402が表示するパターン選択ダイアログの具体例を示す図である。パターン選択ダイアログは、オペレータが負荷制御パターンの番号を系統毎に選択するための表示である。
パターン番号表示領域701には、系統毎の負荷制御パターンの番号が表示される。番号が表示されている部分を選択すると、パターン番号選択ダイアログが表示される。オペレータは、パターン番号選択ダイアログにて、選択されている番号を変更できる。
【0069】
設定ボタン702は、設定を反映してパターン選択ダイアログを閉じるためのボタンである。キャンセルボタン703は、設定を破棄してパターン選択ダイアログを閉じるためのボタンである。
【0070】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の負荷制御システムによれば、オペレータによって状況に応じて選択された負荷制御パターンに基づき、優先順位が高い制御内容から順に実行される。そのため、発電機101(自家発)が発電可能な電力内で、優先順位の高い負荷から順に稼働させることが可能となる。したがって、より効率的に自家発の発電電力を利用することが可能となる。
【0071】
また、BCP制御が実行されている最中にユーザ制御が発生した場合に、例えユーザ制御が低い優先順位の制御として定義されていたとしても、ユーザ制御を維持したままで他の制御が停止されることによって現在発電電力が調整される。そのため、ユーザが所望する負荷105の制御を維持したままで、自家発の発電電力を効率的に利用することが可能となる。
【0072】
また、負荷105に障害が生じた場合、その負荷105を制御対象から除外することが可能である。そして、除外された制御に要する電力は、設定電力に含まれることなく、BCP制御が実行される。そのため、正常に動作しない負荷105に対して割り当てられていた電力を、正常に動作する他の負荷105への制御に転用することが可能であり、自家発の発電電力をより効率的に利用することが可能となる。
【0073】
また、BCP制御が実行される際に、停電が生じる前に動作していた負荷105についてのみ制御が実行される。したがって、そもそも動作していなかった負荷105によって自家発の電力が消費されることがない。停電が生じる前に動作していなかった負荷105は、その時点でユーザによって必要とされていない負荷105である可能性が高い。そのため、よりユーザによって必要とされている負荷105に対してのみ自家発の電力を供給し、自家発の発電電力をより効率的に利用することが可能となる。
【0074】
<変形例>
BCP制御が実施されている間は、制御パターンに登録されている内容を変更できないように構成されてもよい。
上述したレコード42には、制御対象の具体例として照明の発停、空調の発停、空調の温度設定を挙げている。制御対象の具体例は、上述した例に限定される必要は無い。例えば、負荷105が空調機である場合には、制御対象として以下の様な情報が設定されてもよい。電源のオン又はオフ。運転種別(例えば、冷房、暖房、ドライ、送風)。風量(例えば、弱、中、強)。設定温度(例えば、28度、30度)。例えば、負荷105が照明設備である場合には、制御対象として以下の様な情報が設定されてもよい。複数の照明のうち、点灯させる(電源をオンにする)照明の個数又は位置。照度(例えば、低、中、高)。また、空調機や照明設備以外の制御対象が設定されてもよい。
中央制御装置400は、必ずしも1台の情報処理装置として実装される必要はない。例えば、互いに通信可能な複数台の情報処理装置が連携して中央制御装置400の機能を実現するように構成されてもよい。また、中央制御装置400と、上述した中央監視装置とは、1台の情報処理装置として構成されてもよい。
図3に示されるパターンテーブル41は、一例にすぎず他の値を有するテーブルとして構成されてもよい。例えば、ナンバー、優先順位、制御対象、容量、除外、合計容量の各値の他に、状態、設定値、変更状況などの値がパターンテーブル41に登録されてもよい。なお、状態値、設定値、変更状況などの各値は、
図11の画面に示されている同名の各値を同じである。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。