(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6320007
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20180423BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20180423BHJP
【FI】
A61M25/01 500
A61M25/01 510
A61M25/10
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-247783(P2013-247783)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-104503(P2015-104503A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】前田 純也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 峰太
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−518481(JP,A)
【文献】
特開2009−089806(JP,A)
【文献】
特表平09−511159(JP,A)
【文献】
特開2002−028243(JP,A)
【文献】
特表平10−503694(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0303054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位部にバルーンが設けられ、内腔が前記バルーンに流出入する流体の流路をなす可撓性のシャフトと、
前記シャフトの側面に形成されたガイドワイヤ挿入口から前記シャフトの前記内腔を通って前記シャフトの遠位端から突出するガイドワイヤ挿通用チューブと、
を有するラピットエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルであって、
前記シャフトの近位端から前記シャフトに内挿され、内腔が前記バルーンに流出入する流体の流路をなすハイポチューブを有し、
前記ハイポチューブは、
前記ガイドワイヤ挿通用チューブに当接して前記可撓性のシャフトを遠位方向に押し込むことができる当接面を有し、当該当接面には前記流体を前記ハイポチューブの前記内腔から流出入させる開口部が形成され、
前記当接面が前記ガイドワイヤ挿通用チューブに当接する第1位置と、前記ガイドワイヤ挿通用チューブから離間する第2位置と、をとることが可能とされており、
前記当接面が前記第2位置にある場合には、前記当接面が前記第1位置にある場合よりも、前記開口部の開口率が大きくなることで前記バルーンに流出入する流体の流路が拡大される、
バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記ハイポチューブの前記当接面は、傾斜しながら開口する傾斜開口部を有し、
前記ガイドワイヤ挿通用チューブは、前記ハイポチューブの前記傾斜開口部に当接する傾斜面を有する、
請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記ハイポチューブは、少なくとも、筒状の本体部と、当該本体部よりも遠位側に形成された前記当接面と、を有し、
前記本体部の外周面と、前記本体部が挿通される前記シャフトの内周面との間には、隙間が存在する、
請求項1又は請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラピットエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは、血管などの脈管に狭窄が生じた場合に、血管の狭窄部位を拡張して血管末梢側の血流を改善するための医療器具として広く用いられている。バルーンカテーテルを用いて施術を行う場合、先ず、バルーンカテーテルを血管内に挿入してバルーンを狭窄部位に一致させる。次いで、バルーンに加圧流体を注入してバルーンを拡張させることで、狭窄部位を拡張治療する。拡張治療を行った後は、バルーンを減圧収縮させ、バルーンカテーテルを血管内から抜去する。
【0003】
ところで、狭窄部にガイドワイヤを留置したままカテーテルの交換ができるラピットエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルも広く用いられている。ラピットエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルは、ガイドワイヤ挿通用チューブをカテーテルシャフトの全長に亘って設けるのではなく、バルーンが配置されたカテーテルシャフトの先端部のみに設けるようになっている。具体的には、ガイドワイヤ挿通用チューブは、カテーテルシャフトの側面に形成されたガイドワイヤ挿入口からシャフトの内腔を通ってシャフトの遠位端に突出するように設けられる。
【0004】
ラピットエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルは、基本的には、近位側(手元側)から順に、ハブ、プロキシマルシャフト、ディスタルシャフトが配置され、ディスタルシャフトの遠位側の先端付近にバルーンが配置される。プロキシマルシャフトはアウターチューブによって構成され、ディスタルシャフトはアウターチューブとインナーチューブによる二重管構造となっている。アウターチューブは、バルーンに流体を流出入する役割を果たす。インナーチューブは、ガイドワイヤ挿通用チューブであり、一端がシャフトの側面のガイドワイヤ挿入口に連通し、他端がバルーンの先端側に突出して設けられる。
【0005】
ここで、バルーンカテーテルのシャフトは、屈曲又は蛇行している血管に沿って容易に撓曲するだけの可撓性と、バルーンを狭窄部位まで押し込むだけの押し込み力と、が必要とされる。より具体的には、近位端近傍ではある程度の剛性が要求される一方、遠位端では高い可撓性が要求される。
【0006】
このような要求を充たす一つの方法として、シャフトの材質を、近位側では硬く、遠位側に行くに従って軟らかくするものがある。しかし、このような材質のシャフトを製造するのは容易ではないので、従来、シャフトの長手方向に沿って、ハイポチューブ及び又はコアワイヤを延在させることにより、シャフトに所望の剛性や硬度変化を持たせたものがある。
【0007】
さらに、従来、シャフトの押し込み力をより向上させるための構成が提案されている。
【0008】
特許文献1には、金属製の基部側シャフト(ハイポチューブに相当)と、先端側シャフト(インナーチューブに相当)とを、押し込み方向で当接する形状とすることにより、シャフトの押し込み力を高めた構成が開示されている。
【0009】
特許文献2には、カテーテルシャフト(アウターチューブに相当)と、コアワイヤとを、押し込み方向で当接する形状とすることにより、シャフトの押し込み力を高めた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−187315号公報
【特許文献2】特開2012−20077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、バルーンカテーテルにおいては、シャフト内にバルーンに造影剤などの流体を流出入させるための流路が形成されており、この流路を確保することが重要である。流路が小さくなると、バルーンを拡張及び収縮させるための時間が長くなるといった問題が生じる。特に、バルーンを収縮させるための時間が長くなると、血管を長い時間に亘って塞ぐことになり患者の負担が増すので、好ましくない。
【0012】
特許文献1では、基部側シャフトの傾斜面が先端側シャフトの傾斜面に当接することで、基部側シャフトによって先端側シャフトを押し込むことができる構成が採られている。このため、基部側シャフトの傾斜面に開口された流路が、当接する先端側シャフトの傾斜面によって塞がれ、その分だけ流量が少なくなる。実際上、流体は、基部側シャフトの傾斜面の開口よりも遠位側の開口部分から流出入するようになるが、この開口部分は先端ほど縮径された基部側シャフトの先端付近に位置するので、流路(開口部分)が小さくなってしまう。
【0013】
特許文献2では、内腔が流体の流路となっているカテーテルシャフト(アウターチューブに相当)の径を小さくしてコアワイヤに当接する構成となっているため、流路が細くなり、その分だけ流量が少なくなってしまう。
【0014】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、バルーンへの流路を確保しつつ、押し込み力が向上したバルーンカテーテルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のバルーンカテーテルの一つの態様は、
遠位部にバルーンが設けられ、内腔が前記バルーンに流出入する流体の流路をなす可撓性のシャフトと、
前記シャフトの側面に形成されたガイドワイヤ挿入口から前記シャフトの前記内腔を通って前記シャフトの遠位端から突出するガイドワイヤ挿通用チューブと、
を有するラピットエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルであって、
前記シャフトの近位端から前記シャフトに内挿され、内腔が前記バルーンに流出入する流体の流路をなすハイポチューブを有し、
前記ハイポチューブは、
前記ガイドワイヤ挿通用チューブに当接して前記可撓性のシャフトを遠位方向に押し込むことができる当接面を有し、当該当接面には前記流体を前記ハイポチューブの前記内腔から流出入させる開口部が形成され、
前記当接面が前記ガイドワイヤ挿通用チューブに当接する第1位置と、前記ガイドワイヤ挿通用チューブから離間する第2位置と、をとることが可能とされて
おり、
前記当接面が前記第2位置にある場合には、前記当接面が前記第1位置にある場合よりも、前記開口部の開口率が大きくなることで前記バルーンに流出入する流体の流路が拡大される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バルーンへの流路を確保しつつ、押し込み力が向上したバルーンカテーテルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係るバルーンカテーテルの全体構成を示す概略図
【
図4A】傾斜開口部がインナーチューブに当接している状態における断面図
【
図4B】傾斜開口部がインナーチューブから離間している状態における断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態に係るバルーンカテーテルの全体構成を示す概略図である。バルーンカテーテル100は、ハブ110、バルーン120、プロキシマルシャフト130、及びディスタルシャフト140を本体として有する。
【0020】
プロキシマルシャフト130と、ディスタルシャフト140との境界には、ガイドワイヤ160を挿入するためのガイドワイヤ挿入口150が形成されている。プロキシマルシャフト130はアウターチューブを有する。ディスタルシャフト140はアウターチューブとインナーチューブとを有し、アウターチューブとインナーチューブとによる二重管構造となっている。これらの構成については、
図2を用いて後で詳しく説明する。
【0021】
ハブ110は、血管形成術においてバルーンカテーテル100を操作する医師の手元に配置される。ハブ110は、圧力により流体を供給及び排出するインデフレータ等のような圧力印加装置(図示せず)と接続可能に構成されている。プロキシマルシャフト130は、ハブ110と流体連通可能に接合され、遠位側に延在し、さらにその遠位側には、ディスタルシャフト140が流体連通可能に接合されている。ディスタルシャフト140の遠位側にはバルーン120が接合されている。プロキシマルシャフト130とディスタルシャフト140は、高圧流体をバルーン120内部に供給するための流路を有する。
【0022】
図2は、バルーンカテーテル100のシャフト部分を長手方向に切った断面図を示す。プロキシマルシャフト130は、アウターチューブ132内にハイポチューブ170が内挿されて構成されている。アウターチューブ132の材質は、ポリアミド系樹脂である。なお、アウターチューブ132の材質は、これに限らず、ウレタン系やポリエチレン系の樹脂を用いてもよい。要は、アウターチューブ132の材質としては、柔軟性を有し、長手方向に圧力が加えられたときに、長手方向に縮んだり撓むものを用いればよい。
【0023】
ディスタルシャフト140は、アウターチューブ132の管内にインナーチューブ133が配設された二重管構造となっている。インナーチューブ133は、ガイドワイヤ160(
図1)を挿通するためのものである。インナーチューブ133は、アウターチューブ132及びバルーン120内部を貫通するように、プロキシマルシャフト130とディスタルシャフト140との境界位置から、バルーン120よりもさらに遠位側の位置まで延在する。これにより、ガイドワイヤ挿入口150から挿入されたガイドワイヤ160は、インナーチューブ133内を通って、ガイドワイヤ挿出口151から突出する。インナーチューブ133の材質としては、アウターチューブ132と同様にポリアミド系樹脂、又は、ウレタン系、ポリエチレン系の樹脂を用いることができる。
【0024】
ハイポチューブ170は、金属製であり、根元部171と、本体部172と、傾斜開口部173と、先端部174と、を有する。根元部171は、その外径がアウターチューブ132の外径と略同じとされている。
【0025】
本体部172は、筒状であり、外径がアウターチューブ132の内径よりも小さくされている。つまり、本体部172の外周面と、本体部172が挿通されるアウターチューブ132の内周面との間には、隙間175がある。これにより、ハイポチューブ170が遠位方向に押し込まれたときに、アウターチューブ132が長手方向に縮んだり撓んだりできるようになる。
【0026】
傾斜開口部173には、ガイドワイヤ挿入口150においてアウターチューブ132内に入り込んでいるインナーチューブ133の傾斜面に当接するような傾斜が形成されている。先端部174は、ディスタルシャフト140内におけるインナーチューブ133とアウターチューブ132との間、すなわちインナーチューブ133の外面とアウターチューブ132の内面との間に挿入できるように縮径されている。因みに、ハイポチューブ170は、長手方向に直交する方向に対しては血管に沿って曲がることができる程度のフレキシビリティを有するとともに、長手方向に対しては血管内を押し進むことができるプッシャビリティを有する。
【0027】
図3は、ハイポチューブ170の斜視図である。本体部172は筒状となっているが、傾斜開口部173及び先端部174は樋状となっている。これにより、樋状部分の開口を介してハイポチューブ170への流体の流出入が行われる。アウターチューブ132は、
図2に示すように、近位端にハイポチューブ170の根元部171が突き当たるまでハイポチューブ170が挿入されることにより、密閉される。ハイポチューブ170の根元部171とアウターチューブ132との当接部分は、例えば接着剤により接合される。
【0028】
バルーン120の近位端はアウターチューブ132の遠位端に接合されており、バルーン120の遠位端はインナーチューブ133の外周面を囲繞してその外周面に接合されている。これにより、ハブ110(
図1)及びハイポチューブ170を介してディスタルシャフト140内に供給された高圧流体は、アウターチューブ132を通ってバルーン120の内部に流入し、バルーン120の内部に滞留し、この結果、バルーン120が拡張する。バルーン120は、高圧流体が内部に供給される前には、ディスタルシャフト140の外径とほぼ同じ寸法に折り畳まれている。バルーン120は、高圧流体が内部に供給されると、折り目が展開することで拡張する。なお、
図1及び
図2では、バルーン120が拡張した状態を示している。逆に、ハブ110に接続された圧力印加装置(図示せず)から陰圧が与えられると、バルーン120の内部の流体は、ハイポチューブ170の開口を介してハイポチューブ170内に流入し、ハイポチューブ170及びハブ110を介してバルーン120から排出される。
【0029】
かかる構成に加えて、ハイポチューブ170は、ユーザによって押し込み方向の力が与えられていないときには、傾斜開口部173がインナーチューブ133の傾斜面に当接しない状態となるようにアウターチューブ132に取り付けられている(例えば、ハイポチューブ170の傾斜開口部173がインナーチューブ133の傾斜面から数ミリ程度近位方向に離間している)。つまり、
図2のようにハイポチューブ170の傾斜開口部173がインナーチューブ133の傾斜面に当接するのは、ユーザによってハイポチューブ170の根元部171が押し込み方向(
図2の右方向)に押し込まれたときである。
【0030】
以上の構成において、ユーザがバルーンカテーテル100を血管内に挿入しハイポチューブ170の根元部171又はこれに連接されたハブ110を持ってバルーンカテーテル100を遠位方向に押し込むと、この押し込み力によってプロキシマルシャフト130のアウターチューブ132が長手方向に縮み又は撓むことで、ハイポチューブ170の傾斜開口部173がインナーチューブ133の傾斜部に当接する。これにより、ハイポチューブ170によってディスタルシャフト140が遠位方向に押し込まれるので、バルーンカテーテル100の先端付近での押し込み力を向上させることができる。
【0031】
次に、バルーン120が狭窄位置に達し、ユーザがシャフトを押し込むのを止めると、プロキシマルシャフト130のアウターチューブ132の長さが元に戻ることで、ハイポチューブ170の傾斜開口部173がインナーチューブ133の傾斜部から離間する。これにより、傾斜開口部173の開口がインナーチューブ133によって塞がれていない状態となる。この状態において、ハブ110及びハイポチューブ170を介してバルーン120に流体を供給する。また、逆に、この状態において、ハイポチューブ170及びハブ110を介してバルーン120内の流体を排出する。このように、傾斜開口部170の開口がインナーチューブ133によって塞がれていない状態(つまりバルーン120に流出入する流体の流路が拡大された状態)で流体の供給及び排出を行うので、バルーン120の拡張及び収縮を短時間で行うことができるようになる。
【0032】
図4Aは、ハイポチューブ170に押し込み力が与えられ、傾斜開口部173がインナーチューブ133に当接している状態における
図2のA−A’断面を示す。
図4Bは、ハイポチューブ170に押し込み力が与えられておらず、傾斜開口部173がインナーチューブ133から離間している状態における
図2のA−A’断面を示す。
図4Aからも分かるように、当接状態においては、流体は傾斜開口部173のU字状部分からは流出入できるが、開口がインナーチューブ133によって塞がれるので開口からは流出入できない。これに対して、
図4Bからも分かるように、離間状態においては、流体は傾斜開口部173のU字状部分及び開口部の両方から流出入できる。この結果、離間状態においては、当接状態よりも流体の流量を大きくできるようになる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ハイポチューブ170に、インナーチューブ133に当接してディスタルシャフト140を遠位方向に押し込むことができる傾斜開口部173を形成するとともに、傾斜開口部173がインナーチューブ133に当接する第1位置とインナーチューブ133から離間する第2位置とをとることができるようにしたことにより、バルーン120への流路を確保しつつ、押し込み力が向上したバルーンカテーテル100を実現できる。
【0034】
なお、必ずしも、第2位置にある場合に開口率が100%である必要はなく、第1位置にある場合に開口率が0%である必要もない。要は、傾斜開口部173が第2位置にある場合に、傾斜開口部173が第1位置にある場合よりも、開口部の開口率が大きくなることでバルーン120に流出入する流体の流路が拡大されればよい。
【0035】
なお、上述の実施の形態では、説明を簡単にするために、傾斜開口部173がインナーチューブ133の傾斜面に直接当接する場合について述べたが、実際には、インナーチューブ133はガイドワイヤ挿入口150付近で溶着や接着剤を用いてアウターチューブに接合されるので、傾斜開口部173がこの溶着部分や接着剤部分に当接する構成としてもよい。このような溶着部分及び接着剤部分もインナーチューブと一体なので、本発明では、溶着部分及び接着剤部分もインナーチューブ133に含めるものとする。
【0036】
また、上述の実施の形態では、
図2に示したように、本体部172の外周面と、本体部172が挿通されるアウターチューブ132の内周面との間に、隙間175を設けることで、ハイポチューブ170が遠位方向に押し込まれたときに、アウターチューブ132が長手方向に縮んだり撓んだりできるようにした。この隙間175は、
図2に示したように、アウターチューブ132の全長に亘って(ハイポチューブ170の本体部172の全長に亘ってと言い換えてもよい)存在させれば、アウターチューブ132の長手方向への縮み及び又は撓みを大きくできるので、ハイポチューブ170をガイドワイヤ挿通用チューブ(実施の形態の場合、インナーチューブ133)に当接する第1位置と、ガイドワイヤ挿通用チューブから離間する第2位置と、で大きく移動させることができるようになる。この結果、第2位置を、傾斜開口部173がインナーチューブ133の当接面から大きく離れた位置に設定できるようになるので、第2位置で確実に傾斜開口部173を開放できるようになり、第2位置の流量増加をより見込めるようになる。ただし、必ずしも、アウターチューブ132の全長に亘って隙間175を存在させなくてもよく、要は、アウターチューブ132が長手方向に縮み及び又は撓むことができるような隙間を設ければよい。
【0037】
さらに、上述の実施の形態では、ハイポチューブ170が傾斜しながら開口する傾斜開口部173を有するとともに、インナーチューブ133がハイポチューブ170の傾斜開口部173に当接する傾斜面を有する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は、ハイポチューブがガイドワイヤ挿通用チューブに当接してシャフトを遠位方向に押し込むことができる当接面を有し、当該当接面の位置には流体をハイポチューブの内腔から流出入させる開口部が形成され、前記当接面がガイドワイヤ挿通用チューブに当接する第1位置と、ガイドワイヤ挿通用チューブから離間する第2位置と、をとることが可能とされていれていればよい。
【0038】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ラピットエクスチェンジのバルーンカテーテルに適用し得る。
【符号の説明】
【0040】
100、200 バルーンカテーテル
110 ハブ
120 バルーン
130 プロキシマルシャフト
132 アウターチューブ
133 インナーチューブ
140 ディスタルシャフト
150 ガイドワイヤ挿出口
160 ガイドワイヤ
170 ハイポチューブ
171 根元部
172 本体部
173 傾斜開口部
174 先端部
175 隙間