(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6320104
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】駆動力伝達装置及び駆動力伝達装置を備えた車両
(51)【国際特許分類】
H02K 11/30 20160101AFI20180423BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
H02K11/30
H02K7/116
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-60985(P2014-60985)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-186356(P2015-186356A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年3月23日
【審判番号】不服2016-12159(P2016-12159/J1)
【審判請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225050
【氏名又は名称】GKNドライブラインジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 将人
(72)【発明者】
【氏名】野口 廣康
(72)【発明者】
【氏名】深作 良範
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正和
(72)【発明者】
【氏名】北川 英和
【合議体】
【審判長】
堀川 一郎
【審判官】
中川 真一
【審判官】
久保 竜一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/008180(WO,A1)
【文献】
特開2002−252955(JP,A)
【文献】
特許第4463268(JP,B2)
【文献】
特開2010−98817(JP,A)
【文献】
特開平10−201168(JP,A)
【文献】
特許第4125798(JP,B2)
【文献】
特開2012−29477(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/137333(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/060123(WO,A1)
【文献】
特開2005−65373(JP,A)
【文献】
特開2004−125145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿った中空孔を有する中空ロータと、
前記中空ロータを第1の軸受と第2の軸受を介して回転自在に軸支し前記中空ロータの外周を囲む枠体と、
前記枠体の内部に固定され、前記中空ロータに向けた突極と該突極に巻かれたコイルを備え、前記中空ロータと同軸状に配置されるステータと、
前記枠体の内部に設けられ前記コイルに接続される駆動回路基板と、
前記駆動回路基板と前記枠体の内面との間を埋めた弾性部材とからなるモータユニットを備え、
さらに、前記中空ロータの回転を減速して前記回転軸周りに回転する出力ギヤに出力する減速ギヤ部と、
前記出力ギヤの出力回転によって作動する作動部と、
前記作動部の作動で駆動軸の駆動力を被駆動軸に伝達するクラッチ機構と、を備えた駆動力伝達装置であって、
前記減速ギヤ部は、前記ステータに対して前記回転軸方向の一側に配置され、
前記駆動回路基板は、前記第1の軸受の外径側であって、前記ステータに対して前記回転軸方向の他側に配置されたことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動力伝達装置を備え、前記被駆動軸を動力伝達軸とする車両であって、前記中空孔に前記動力伝達軸を通したことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
駆動力伝達装置
及び駆動力伝達装置を備えた車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータユニットは、回転トルクを利用した各種のアクチュエータに用いられており、ユニット枠内にモータを配備している。特に車両用のアクチュエータでは、高温環境や低温環境下で生じるマグネットの減磁による性能低下を避けることができるSRモータを用いたモータユニットの活用に期待が寄せられている。
【0003】
SRモータ(switched reluctance motor)は、マグネットを持たず、ロータ側にコイルを持たない(ブラシレス)構造を有しており、回転自在に支持されるロータとこのロータの回転軸と同軸状に配置されるステータとで構成される。SRモータを用いたモータユニットは、車両の駆動力伝達装置やシフトレンジ切換装置など用のアクチュエータとして用いられている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−282601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、モータユニットにおけるコイルへの給電は、コイルに接続されるケーブルをモータユニットの枠から引き出し、このケーブルをモータユニットの枠とは別の枠に納めた駆動回路に接続している。このようにモータユニットと駆動回路とを別枠にしてケーブルで連結する従来技術は、コイルと駆動回路とを繋ぐケーブルで電力ロスが発生してモータを駆動するための電力消費に影響すると共に、モータユニットとは別に駆動回路が収納された枠を設置する必要があるので大きな設置スペースが必要になる。
【0006】
これに対して、モータユニット内に駆動回路を配置しようとすると、駆動回路が発生する熱によってユニット内が高温になり駆動回路自身に熱損が生じ易くなること、モータが発生する振動やノイズの影響を駆動回路が受けやすくなること、車両用アクチュエータに用いられるモータユニットなどではユニット内に混入する油が駆動回路に付着し易くなることなどによって、駆動回路に性能劣化が生じることが問題になる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、モータユニット内に駆動回路を収納することで電力ロスを解消すると共に省スペース化を可能にし、更に、駆動回路の性能劣化を抑止することができるモータユニットを提供すること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によるモータユニットは、明細書に記載された幾つかの発明のうち以下の構成を具備するものである。
【0009】
回転軸に沿った中空孔を有する中空ロータと、前記中空ロータを
第1の軸受と第2の軸受を介して回転自在に軸支し前記中空ロータの外周を囲む枠体と、前記枠体の内部に固定され、前記中空ロータに向けた突極と該突極に巻かれたコイルを備え、前記中空ロータと同軸状に配置されるステータと、前記枠体の内部に設けられ前記コイルに接続される駆動回路基板
と、前記駆動回路基板と前記枠体の内面との間
を埋めた
弾性部材とからなるモータユニット
を備え、さらに、前記中空ロータの回転を減速して前記回転軸周りに回転する出力ギヤに出力する減速ギヤ部と、前記出力ギヤの出力回転によって作動する作動部と、前記作動部の作動で駆動軸の駆動力を被駆動軸に伝達するクラッチ機構と、を備えた駆動力伝達装置であって、前記減速ギヤ部は、前記ステータに対して前記回転軸方向の一側に配置され、前記駆動回路基板は、前記第1の軸受の外径側であって、前記ステータに対して前記回転軸方向の他側に配置されたことを特徴とする駆動力伝達装置。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るモータユニット、アクチュエータ、駆動力伝達装置の断面構造を示した説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るモータユニットの構成例を示した説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの減速ギヤ部の構成例を示した説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るモータユニットの他の構成例を示した説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るモータユニットを備えた車両を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るモータユニットは、回転軸に沿った中空孔を有する中空ロータと、中空ロータを回転自在に軸支し中空ロータの外周を囲む枠体と、枠体の内部に固定され、中空ロータに向けた突極と突極に巻かれたコイルを備え、中空ロータと同軸状に配置されるステータと、枠体の内部に設けられコイルに接続される駆動回路基板とを備える。そして、枠体内に設けられた駆動回路基板に対して、駆動回路基板と枠体の内面との間を弾性部材で埋めている。
【0012】
このような特徴を有するモータユニットは、車両用として用いる場合に、車両の動力伝達軸を中空ロータの中空孔に通してモータユニットを配備することができるので、設置スペースの省スペース化が可能になり、また、動力伝達軸周りのデッドスペースを削減することができる。また、モータユニットの枠体内に駆動回路基板を収納することで、モータを駆動するコイルと駆動回路基板とを繋ぐケーブルの長さを短くすることができ、ケーブルを電流が流れることによる電力ロスを最小限に抑えることができる。また、駆動回路基板を別のユニット枠に収める場合と比較して、設置のためのスペースを省スペース化することができる。
【0013】
更に、枠体に収められた駆動回路基板と枠体の内面との間を弾性部材で埋めることで、駆動回路が発生する熱を弾性部材を介して枠体に導き放熱させることができ、枠体内の温度上昇を抑えることができるので、周辺温度の上昇による駆動回路の性能劣化を抑止することができる。また、弾性部材が振動を吸収することで、枠体などの振動が駆動回路基板に伝わるのを抑止することができ、これによっても駆動回路の性能劣化を抑止することができる。
【0014】
以下、図面を参照して本発明より具体的な実施形態を説明する。ここでは駆動力伝達装置とこれに用いられるモータユニットを例にして説明するが、本発明の実施形態は特にこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータユニット、アクチュエータ、これを備えた駆動力伝達装置の断面構造を示している。
【0015】
モータユニット10は、回転軸Omに沿った中空孔11Aを有する中空ロータ11と、中空ロータ11を回転自在に軸支し中空ロータ11の外周を囲む枠体12と、枠体12の内部に固定され、中空ロータ11に向けた突極14Aと突極14Aに巻かれたコイル14Bを備え、中空ロータ11と同軸状に配置されるステータ14と、枠体12の内部に設けられコイル14Bに接続される駆動回路基板15とを備えている。
【0016】
図示の例では、中空ロータ11の中空孔11Aには、車両の動力伝達軸であるインナーシャフトA3が通されている。インナーシャフトA3の周りに配置された枠体12は、軸受12Aを介してインナーシャフトA3に支持されており、インナーシャフトA3と中空ロータ11の周囲を囲むように配備されている。中空ロータ11は、枠体12の回転軸Om側に軸受
(第1の軸受)13A,
(第2の軸受)13Bを介して軸支されている。これによって、中空ロータ11は、車両の動力伝達軸であるインナーシャフトA3と同軸状に配置され、インナーシャフトA3には直接接触すること無く回転軸Om周りに回転できるようになっている。
【0017】
図2は、モータユニット10における回転軸Omの軸に垂直な断面構造を示している。中空ロータ11は、その外周にステータ14に向けて突出する複数の突極11Bを備えている。また、枠体12に固定され中空ロータ11の外周に沿って配置されるステータ14は、回転中心向きに突出した複数の突極14Aを備えており、その突極14Aにはモータユニット10を作動させるためのコイル14Bが巻かれている。
【0018】
図示の例では、モータユニット10は、中空ロータ11と同軸状のステータ14を備えるSRモータ(switched reluctance motor)である。SRモータは、マグネットを持たないモータであって、コイル14Bに供給される電流によって生み出される磁界による吸引力を各突極14Aにて順次変化させることで、中空ロータ11を回転軸Om周りに回転させる。
【0019】
モータユニット10は枠体12内に駆動回路基板15を備えている。駆動回路基板15は中空の円板状に形成され、回転軸Omと交差する面内に配置されている。枠体12は、回転軸Omと交差する壁面を備えており、この壁面と対面するように駆動回路基板15が配置されている。駆動回路基板15には、その両面に回路部品が実装されており、枠体12の回転軸Omと交差する壁面と対面する側の面には発熱性の高い回路部品15Aが集められ、駆動回路基板15のコイル14Bに対面する側の面には比較的発熱性の低い回路部品15Bが実装されている。
【0020】
モータユニット10は、枠体12の内部に設けられた駆動回路基板15と枠体12の内面との間を弾性部材16で埋めている。弾性部材16は、熱伝導性の高い材料が用いられ、例えば、ポリイミド(PI)、エポキシ樹脂(EP)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリフェニレンサルファイド(PPE)、エチレン・ブロビレンゴム(EPDM)、クロロブレンゴム(CR)などを用いることができる。
図1に示した例では、弾性部材16が駆動回路基板15と枠体12の回転軸Omと交差する方向に沿った内面との間を埋めている。枠体12の内部においてはコイル14Bに駆動回路基板15を接続した後に、駆動回路基板15と枠体12の内面との間を弾性部材16で埋める。
【0021】
このように駆動回路基板15を枠体12内に収納することによって、駆動回路基板15とコイル14Bとの接続配線距離を短くすることができる。これによって、コイル14Bと駆動回路基板15とを繋ぐケーブルでの電力ロスを最小限に抑えることができる。また、駆動回路基板を収容する枠を別途設ける必要が無くなるので、モータユニット10の設置スペースを削減することが可能になる。また、弾性部材16が振動を吸収するので、駆動回路基板15に振動が伝わるのを抑止することができ、振動による駆動回路の性能劣化を抑止することができる。
【0022】
アクチュエータ1は、モータユニット10に加えて減速ギヤ部20を備えている。減速ギヤ部20は、中空ロータ11の回転を減速して回転軸Om周りに回転する出力ギヤに出力するものである。
図3は、減速ギヤ20の構成例を示している。図示の例では、減速ギヤ部20は、中空ロータ11によって偏心回転する公転外歯ギヤ21と公転外歯ギヤ21の外歯に噛み合う内歯を備えた固定外周内歯ギヤ22を備えている。ここで、公転外歯ギヤ21は中空ロータ11の偏心外周部11Cに軸受23を介して回転自在に軸支されている。これによって、中空ロータ11の回転軸Om周りの回転によって公転外歯ギヤ21の中心が一点破線で示すような軌跡Lを描き回転軸Omの周りを公転することになる。
【0023】
これに対して、公転外歯ギヤ21の外歯に噛み合う固定外周内歯ギヤ22は、枠体12にネジ12Bで固定されており、公転外歯ギヤ21の外歯の歯数より多い歯数の内歯を備えている。このため、中空ロータ11の回転軸Omと公転外歯ギヤ21の中心とを結ぶ延長線上で公転外歯ギヤ21は固定外周内歯ギヤ22と部分的に噛み合うことになり、そのかみ合い箇所が、中空ロータ11の回転に伴って固定外周内歯ギヤ22の周りを回ることになる。そして、公転外歯ギヤ21の公転1回(中空ロータ11の1回転)で公転外歯ギヤ21は、自身の外歯と固定外周内歯ギヤ22の内歯の歯数の差分だけ自転することになり、中空ロータ11の回転を公転外歯ギヤ21の自転回転として大きく減速させて出力することができる。
【0024】
図示の例では、減速ギヤ部20は、中空ロータ11の回転に対して偏心回転する公転外歯ギヤ21の自転回転を出力ギヤの出力回転としているが、これに限らず、中空ロータ11の外周にサンギヤ(外歯)を固定し、枠体12に固定される内歯ギヤとサンギヤの間に噛み合う遊星キャリアの公転を出力ギヤの出力回転として取り出す遊星歯車機構によって構成することもできる。
【0025】
モータユニット10を備える駆動力伝達装置Aは、
図1に示すように、ハウジングA1,ハウジングA1内のクラッチ室に設けられるクラッチ機構A2,インナーシャフトA3が構成要素になる。駆動力伝達装置Aは、例えば、駆動軸であるハウジングA1の駆動力をクラッチ機構A2を介して被駆動軸であるインナーシャフトA3に伝達するものであり、車両の動力伝達軸に対して装備される。この駆動力伝達装置AがFFの2WDとAWDを切り換える切換装置として機能する場合には、ハウジングA1は、エンジンの駆動力で回転するプロペラシャフトに連結され、インナーシャフトA3は、リアディファレンシャル機能のピニオンシャフトなどに連結されることになる。
【0026】
駆動力伝達装置Aを作動させるためのアクチュエータ1は、車両の動力伝達軸であるインナーシャフトA3と同軸状に配備されており、モータユニット10、減速ギヤ部20を備えており、駆動力伝達装置Aは、アクチュエータ1の出力回転によって作動する作動部30を備えている。
【0027】
作動部30は、カム機構などで構成することができ、アクチュエータ1の出力回転を回転軸Om方向の変位に変換してクラッチ機構を動作させるものである。ここでは、公転外歯ギヤ21の側面に設けた孔21Aに出力ピン31を遊嵌させ、公転外歯ギヤ21の自転回転を複数の出力ピン31の回転軸Om周りの摺動として取り出している。複数の出力ピン31には、回転軸Omの周りに環状に配備された第1カム体32が固定されている。第1カム体32は、出力ピン31の摺動角度を回転軸Omの軸方向に沿った変位に変換するカム面32Aを備えており、このカム面32Aの変位によってカム面32A上の第2カム体33の位置を回転軸Omの軸方向に変位させている。
【0028】
この作動部30によると、公転外歯ギヤ21の自転回転に伴って、第1カム体32が回転軸Om周りに所定角度摺動し、第1カム体32のカム面32Aの変位によって第2カム体33を回転軸Omの軸に沿って摺動させる。これによって、クラッチ機構A2を軸方向に沿って移動させ、クラッチ機構A2の状態を非結合状態から結合状態に変化させる。
【0029】
アクチュエータ1は、モータユニット10と減速ギヤ部20を車両の動力伝達軸と同軸状に配置することができる。これによって、動力伝達軸に対してオフセットした位置にモータを配置していた従来のアクチュエータと比較して、設置スペースを省スペース化することが可能になる。これによって、車両の車室空間を狭めたり、周辺の他の装備の配置に影響を与えたりすること無く、車両にアクチュエータ1を配備することが可能になる。
【0030】
アクチュエータ1を備える駆動力伝達装置Aは、作動部30が車両の動力伝達軸と同軸状に配置されているので、これによっても設置の省スペース化が可能である。また、
図1に示されるように、アクチュエータ1を駆動力伝達装置AのハウジングA1内に収容することが可能になり、駆動力伝達装置Aの周囲から余計な出っ張り形状を排除することができる。これによって、駆動力伝達装置Aの周囲に無用なデッドスペースが生じるのを避けることができる。
【0031】
そして、アクチュエータ1のモータユニット10は、
図2に示したようなSRモータによって構成することができるので、高温状態や低温状態で減磁が起きるマグネットを用いないモータ構造にすることができる。これにより、使用環境条件を制限することなく、駆動力伝達装置などを安定的に動作させることができる。
【0032】
また、図示の例のように、減速ギヤ部20を、中空ロータ11によって偏心回転する公転外歯ギヤ21と公転外歯ギヤ21の外歯に噛み合う内歯を有する固定外周内歯ギヤ22とからなる構成にして、公転外歯ギヤ21の自転回転を出力することで、大きな減速比を得ながら減速ギヤ部20の軸方向の厚みは歯車一枚分の厚みで済む。このような減速ギヤ部20を備えるアクチュエータ1は、軸方向のスペースも省スペース化することができる。
【0033】
図4は、本発明の実施形態に係るモータユニット10の他の形態例を示している。前述した説明と共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この例は、枠体12内に配置される駆動回路基板15とコイル14Bが弾性部材16で覆われている。これにより弾性部材16は、駆動回路基板15と枠体12の内面との間だけでなく、駆動回路基板15とコイル14Bとの間にも配置されることになる。これによると、弾性部材16に電磁波シールド機能を持たせることで、駆動回路がモータユニット10を駆動させる際に発生するノイズの影響を受けることを抑止することができる。更に、駆動回路基板15の周囲を弾性部材16で覆うので、枠体12内に油が混入した場合にも、油による駆動回路の腐食劣化を防ぐことができる。
【0034】
また、図示の例では、枠体12の外表面12Pに段差部(或いは凹凸部)を設けている。これによると、枠体12の外表面積を拡げることで、弾性部材16を介して枠体12に伝わる熱の放熱効果が高められる。
【0035】
図5は、本発明の一実施形態に係る車両用アクチュエータを備えた車両を示している。車両100はアクチュエータ1を備えており、アクチュエータ1によって作動する駆動力伝達装置Aを備えている。このような車両100においては、動力伝達軸が通る中空孔11Aを有し中空孔11Aの中心を回転軸Omとして回転自在に軸支された中空ロータ11を備えるモータユニット10に制御信号を送って中空ロータ11を回転させ、動力伝達軸周りに回転する出力ギヤを備える減速ギヤ部20によって中空ロータ11の回転を減速し、出力ギヤの回転によって作動部30を作動して、作動される駆動力伝達装置Aによって駆動軸の駆動力を被駆動軸に伝達している。
【0036】
この例では、エンジン101の駆動力は、変速機102を経由してフロントディファレンシャル装置103に伝達される。フロントディファレンシャル装置103は、駆動力を左右のフロントアクスルシャフト104に出力して、前輪105L,105Rを駆動する共に、プロペラシャフト106に出力する。プロペラシャフト106は、駆動力伝達装置Aを介してリアディファレンシャル装置3に連結されており、駆動力伝達装置Aが被駆動軸であるリアディファレンシャル装置3のピニオンシャフトに駆動力を伝達しない場合には、車両100は前輪105L,105Rによる2WD走行を行う。そして、駆動力伝達装置Aが被駆動軸であるリアディファレンシャル装置2のピニオンシャフトに駆動力を伝達する場合には、駆動力はリアディファレンシャル装置3を介して左右のリアアクスルシャフト107に出力され、前輪105L,105Rに加えて後輪108L,108Rが駆動され、車両100は四輪によるAWD走行を行う。
【0037】
図示の例では、駆動力伝達装置Aがリアディファレンシャル装置2に並列配備されており、モータユニット10の枠体12がリアディファレンシャル装置2に接するように配置されている。これによって、駆動回路が発して弾性部材16から枠体12に伝達した熱を、熱容量の高いリアディファレンシャル装置2を介して効率的放熱することができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1:アクチュエータ,
10:モータユニット,11:中空ロータ,
11A:中空孔,11B:突極,
12:枠体,12A:軸受,12B:ネジ,
13A,13B:軸受
(第1又は第2の軸受),
14:ステータ,14A:突極,14B:コイル,
15:駆動回路基板,15A,15B:回路部品,
16:弾性部材,
20:減速ギヤ部,21:公転外歯ギヤ,21A:孔,
22:固定外周内歯ギヤ,
30:作動部,31:出力ピン,32:第1カム体,32A:カム面,
33:第2カム体,
2:リアディファレンシャル装置,
100:車両,101:エンジン,102:変速機,
103:フロントディファレンシャル装置,
104:フロントアクスルシャフト,105L,105R:前輪,
106:プロペラシャフト,107:リアアクスルシャフト,
108L,108R:後輪,
Om:回転軸,A:駆動力伝達装置,A1:ハウジング(動力伝達軸),
A2:クラッチ機構,A3:インナーシャフト(動力伝達機軸)