特許第6320444号(P6320444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6320444
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   H05B6/12 317
   H05B6/12 313
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-75967(P2016-75967)
(22)【出願日】2016年4月5日
(65)【公開番号】特開2017-188295(P2017-188295A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】文屋 潤
【審査官】 黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−287938(JP,A)
【文献】 特開2015−035424(JP,A)
【文献】 特開2010−218706(JP,A)
【文献】 特開2013−168334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が表面に載置される天板と、
前記天板の裏面に面して配置される平板状の導電材料で構成された誘導加熱プレートと、
1次側に高周波電流を出力する第1電源が接続され、2次側に前記誘導加熱プレートが接続された変圧器と、
前記誘導加熱プレートに接触し、第2電源から供給される電源で駆動されて前記天板を冷却する冷却部とを備えた
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
被加熱物が表面に載置される天板と、
前記天板の裏面に面して配置される平板状の導電材料で構成された誘導加熱プレートと、
1次側に高周波電流を出力する第1電源が接続され、2次側に前記誘導加熱プレートが接続された変圧器と、
第2電源から供給される電源で駆動されて前記天板を冷却する冷却部と、
前記誘導加熱プレートと前記冷却部との間の距離を調整する調整部を備え、
前記調整部は、前記冷却部が冷却動作を行っていないときには、冷却動作を行っているときよりも、前記誘導加熱プレートと前記冷却部との間の距離を大きくする
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記調整部は、前記冷却部が冷却動作を行っているときには、前記冷却部と前記誘導加熱プレートとを接触させる
ことを特徴とする請求項記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記誘導加熱プレートには、開口部が形成されており、
前記冷却部は、前記開口部内に配置された
ことを特徴とする請求項記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記冷却部は、前記天板の裏面に接触している
ことを特徴とする請求項記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記天板又は前記誘導加熱プレートの温度を検出する温度検出器を備え、
前記第1電源が前記変圧器への高周波電流の出力を停止した後であって、前記温度検出器の出力が第1閾値以上である場合に、前記冷却部が冷却動作を実行する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記温度検出器の出力が前記第1閾値よりも小さい値である第2閾値以下である場合に、前記冷却部は冷却動作を停止する
ことを特徴とする請求項記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記冷却部による冷却動作の要否を入力する操作部を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記冷却部による冷却動作の開始又は停止の指示を入力する操作部を備え、
前記第1電源が前記変圧器への高周波電力の出力を停止した後に、前記操作部からの出力に基づいて、前記冷却部は冷却動作を実行または停止する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物に渦電流を生じさせて誘導加熱するための誘導加熱手段を用いた誘
導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるIHクッキングヒータの誘導加熱用のコイルの代わりとして、「被加熱物に面して配置される加熱部と、前記加熱部とともに給電部を有する電気的な閉回路を構成する導電体と、前記給電部を囲うように配置された磁性体と、前記磁性体に複数回交差するように導線を巻いて形成されたコイルと、前記コイルに高周波電流を供給する高周波電源と」を備えた誘導加熱装置が適用されたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−35424号公報(請求項1、第14−15頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の加熱調理器は、高周波電流による誘導加熱原理により被加熱物を加熱することに加え、導電体に誘導電流が流れることにより導電体自体の電気抵抗で発生するジュール熱も被加熱物の加熱に利用されている。この導電体の温度は例えば500℃という高温になることも想定され、被加熱物と導電体との間に介在する天板(トッププレート)の温度も高温となり、誘導加熱調理器が加熱を停止した後もしばらくは天板の高温状態が続きうる。
【0005】
ここで、加熱を停止している状態の誘導加熱調理器の天板は、作業台としても使用される。しかし、天板が高温状態であると、天板を作業台として使用しづらいという課題があった。また、誘導加熱調理器には、加熱中の被加熱物の温度を検出するための温度センサが設けられており、この温度センサの検出精度は、天板自体の温度の影響も受ける。このため、加熱停止後、天板が高温状態のときに被加熱物の加熱を開始すると、被加熱物の温度検出精度が低下してしまう。また、温度検出精度を確保するためには、天板の温度が常温程度に戻るまで加熱開始を待機する必要があり、使い勝手を低下させるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、誘導加熱停止中に、天板の温度を素早く低下させることのできる誘導加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る誘導加熱調理器は、被加熱物が表面に載置される天板と、前記天板の裏面に面して配置される平板状の導電材料で構成された誘導加熱プレートと、1次側に高周波電流を出力する第1電源が接続され、2次側に前記誘導加熱プレートが接続された変圧器と、前記誘導加熱プレートに接触し、第2電源から供給される電源で駆動されて前記天板を冷却する冷却部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘導加熱停止中に冷却部が天板を冷却することで、加熱停止後にすばやく天板を作業台や物置台として使用することも可能となり、加熱調理器の使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の要部の構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の誘導加熱プレートの概略平面図である。
図4】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の要部の構成を示す図である。
図5】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の誘導加熱プレートの概略平面図である。
図6】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の天板の冷却動作を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態3に係る誘導加熱調理器の天板の冷却動作を説明するフローチャートである。
図8】実施の形態4に係る誘導加熱調理器の天板の冷却動作を説明するフローチャートである。
図9】実施の形態5に係る誘導加熱調理器の要部の構成を示す図である。
図10】実施の形態6に係る誘導加熱調理器の誘導加熱プレートの概略平面図である。
図11】実施の形態6に係る誘導加熱調理器の誘導加熱プレートの他の例を示す概略平面図である。
図12】実施の形態6に係る誘導加熱調理器の要部断面を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の斜視図である。誘導加熱調理器100は、概ね箱型の筐体1を有し、筐体1の上には、鍋やフライパンなどの被加熱物が載置される天板2が設けられている。天板2は、例えばセラミックス、耐熱ガラス、結晶化ガラス等の非金属材料で構成される。誘導加熱調理器100には、3つの加熱口3が設けられており、各加熱口3の上に被加熱物が載置されて加熱される。
【0012】
誘導加熱調理器100の上面の手前側、及び筐体1の前壁には、ユーザーからの操作入力を受け付ける操作部4が設けられている。操作部4は、例えば、押しボタン、ダイヤルスイッチ、静電容量式タッチスイッチ等で構成される。天板2の手前側には、表示部5が設けられている。表示部5は、液晶ディスプレイやLED等の視覚的に情報を報知する装置を有し、誘導加熱調理器100の火力、タイマーの時間等の動作状態や、ユーザーが操作部4で入力するための選択肢、ユーザーへの警告及び注意喚起の報知を行う。
【0013】
また、天板2には、高温注意表示部6が設けられている。高温注意表示部6は、天板2の温度が高温であるときに、ユーザーに注意を促すための視覚的な報知を行う表示部である。ここで、高温とは、ユーザーに注意を促すべき温度をいい、誘導加熱調理器100の使用条件等を考慮して定めることができる。高温注意表示部6は、例えば液晶ディスプレイを用いて注意喚起の文言を表示するものであってもよいし、天板2に施された注意喚起の文字や図をLED等のランプで照射するものであってもよい。
【0014】
なお、加熱口3、操作部4、表示部5及び高温注意表示部6の数、配置、及び具体的構成は、本発明を限定するものではなく、同様の機能を発揮するものであれば本実施の形態で例示した以外の具体的構成を採用することができる。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の要部の構成を示す図である。図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の誘導加熱プレートの概略平面図である。なお、図2では、説明のために天板2の表面に載置された被加熱物200を図示しているが、被加熱物200は本発明を構成するものではない。誘導加熱調理器100は、天板2の下に設けられた誘導加熱プレート7と、変圧器8と、変圧器8に電源を供給する第1電源11と、冷却部12と、冷却部12に電源を供給する第2電源13と、第1電源11、第2電源13、表示部5及び高温注意表示部6を制御する制御部14と、磁性材15とを有する。操作部4からの操作入力は、制御部14に入力される。
【0016】
誘導加熱プレート7は、例えばアルミや銅などの電気抵抗が小さい金属などの導電材料で構成された板状の部材である。誘導加熱プレート7は、その平板面が天板2の裏面に面するようにして、天板2の下側に配置される。誘導加熱プレート7の平面形状は、図3に示すように電気的に閉じた閉回路を形成する環状である。本実施の形態の誘導加熱プレート7は、板状の部材を切削加工やプレス加工などにより環状に加工された後、該誘導加熱プレート7を長さ方向の途中で略直角に折り曲げられて、図2に示すように側面視においてL字型に形成されている。L字型に折り曲げられた誘導加熱プレート7の垂直に延びる部分を、垂直部71と称する。誘導加熱プレート7は、加熱口3毎に設けられる。なお、誘導加熱プレート7の具体的形状は、図示のものに限定されない。
【0017】
変圧器8は、誘導加熱プレート7の一部である垂直部71と、被覆銅線を複数回巻いて形成したコイル10と、コイル10に高周波電流を流したときに発生する高周波磁束が垂直部71と鎖交する磁気回路を構成するように配置された磁性体9とを有する。
【0018】
コイル10は、例えば直径φ0.3mm程度の銅線を樹脂で被覆した被覆銅線を36本撚り線にした所謂リッツ線を複数回平板状に巻いて形成することができる。なお、コイル10に用いるリッツ線の銅線(素線)の直径や撚り数はこれに限るものではなく、例えばリッツ線に代えて単なる被覆銅線を用いてもよいし、銅線に代えてアルミ線を用いてもよい。また、コイル10の形状も平板状に限らず、コイル10により発生した高周波磁束が誘導加熱プレート7の垂直部71と鎖交するものであればどのような形状であってもよい。
【0019】
磁性体9は、例えばフェライトコア、厚さ0.1mm程度のケイ素鋼板などを積層して形成した鉄心コア、アモルファス薄膜で形成したアモルファスコア、さらには鉄などの磁性体粉末を主成分として圧粉や樹脂固着などにより形成したダストコアなどを用いることができる。磁性体9とコイル10及び垂直部71との間には、図示しないガラスウールやセラミックウール等の絶縁層が配置され、電気的に絶縁される。
【0020】
コイル10の導線の端部は、第1電源11に接続される。第1電源11は、コイル10に例えば20kHz〜40kHz程度、30Arms程度の高周波電力を供給する。第1電源11は、例えば、IGBTやMOSFETなどの半導体スイッチング素子を用いたフルブリッジ回路やハーフブリッジ回路あるいは一石共振型回路を用いることができる。
【0021】
第1電源11からコイル10に高周波電流(コイル電流)が供給されると、コイル10の周囲には高周波磁束φ1が発生する。高周波磁束φ1は主として磁気抵抗が小さい磁性体9を通る。磁性体9からなる磁気回路は誘導加熱プレート7の垂直部71と鎖交するように配置されているので、高周波磁束φ1は誘導加熱プレート7の垂直部71と鎖交する。その結果、誘導加熱プレート7の垂直部71には電磁誘導により誘導電流が流れる。コイル10を巻数Nの1次巻線とすると、誘導加熱プレート7は巻数1の2次巻線になり、変圧器8によってN:1に変圧される。したがって、誘導加熱プレート7の垂直部71にはコイル電流よりも大きな大電流が、コイル電流と同じ周波数で流れる。具体的には、コイル10が巻数20である場合には変圧器8によって1:20で電流変換され、第1電源11の電流が30Armsであれば、2次側である誘導加熱プレート7には600Armsの電流が発生する。
【0022】
誘導加熱プレート7に高周波の誘導電流が流れると、誘導加熱プレート7の周囲に高周波磁束φ2が発生する。この高周波磁束φ2が誘導加熱プレート7の近傍に配置された被加熱物200を通過することで被加熱物200に渦電流が発生し、この渦電流のジュール熱によって被加熱物200が発熱する。
【0023】
冷却部12は、誘導加熱プレート7を介して、天板2と熱的に接続され、天板2を冷却する。すなわち、冷却部12は、誘導加熱プレート7の裏面に熱的に接続されており、冷却部12が誘導加熱プレート7を冷却することで、誘導加熱プレート7を介して天板2が冷却される。冷却部12は、第2電源13からの電源供給を受けて、冷却動作を行う。冷却部12の具体的構成としては、例えばペルチェ素子を用いることができる。ペルチェ素子は、電流によって発熱及び吸熱の制御ができる半導体素子であり、吸熱面を構成する金属板と放熱面を構成する金属板とが2枚張り合わされたような構造である。冷却部12としてペルチェ素子を用いる場合、吸熱面が誘導加熱プレート7の裏面に接触するようにして配置される。
【0024】
磁性材15は、例えばフェライトコアであり、誘導加熱プレート7の裏面に配置されている。この磁性材15は、必須の構成ではないが、誘導加熱プレート7の裏面に設けることで、被加熱物200に効率的に渦電流を発生させ、加熱効率を向上させることができる。
【0025】
制御部14は、専用のハードウェア、又はメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)で構成される。
【0026】
このような構成において、操作部4に対して加熱開始の指示が入力されると、制御部14は、第1電源11に駆動信号を送る。第1電源11がコイル10に高周波電流を供給すると、変圧器8によって変圧された高周波の誘導電流が誘導加熱プレート7を流れ、誘導加熱プレート7の周囲に発生する高周波磁束によって被加熱物200が加熱される。このような誘導加熱動作中は、誘導加熱プレート7からの伝熱によって天板2の温度も上昇する。誘導加熱動作中は、制御部14は第2電源13を動作させず、冷却部12は冷却機能を発揮しない。
【0027】
操作部4に対して加熱停止の指示が入力される、あるいはタイマー機能等によって加熱停止条件が整うと、制御部14は、第1電源11に駆動停止信号を送り、第1電源11は電源供給を停止する。誘導加熱動作を停止すると、制御部14は、第2電源13に駆動信号を送り、第2電源13は冷却部12に電源を供給する。電源供給を受けた冷却部12は、誘導加熱プレート7を冷却し、誘導加熱プレート7からの伝熱によって天板2も冷却される。
【0028】
冷却部12の冷却動作を開始してから設定時間(例えば10分間)が経過すると、制御部14は、第2電源13を制御して冷却部12への電源供給を停止し、冷却部12による冷却動作を停止させる。
【0029】
また、誘導加熱動作中、制御部14は、天板2上に誘導加熱可能な被加熱物200が載置されているか否かを検出する負荷検知処理を実行することができる。ここで、負荷検知は、例えば、誘導加熱プレート7に高周波電流を供給したときに誘導加熱プレート7に流れる電流が、被加熱物200の有無、材質、及び大きさに依存することを利用して行うことができる。このほか、透光性を有する天板2の上に被加熱物200が載置されると筐体1内に入射する外光量が変化することを利用し、筐体1内に設けた受光手段の受光状態によって負荷検知を行うこともできる。制御部14は負荷検知を行い、誘導加熱動作中に被加熱物200が加熱対象の加熱口3から取り外されたことを検出すると、第1電源11を制御して加熱を停止する。そして、制御部14は、再び被加熱物200が加熱口3に載置されたことを検出するまでの間、第2電源13を駆動して冷却部12を動作させ、天板2を冷却する。
【0030】
このように本実施の形態では、被加熱物200が表面に載置される天板2と、天板2の裏面に面して配置される平板状の金属板で構成された誘導加熱プレート7と、1次側に高周波電流を出力する第1電源11が接続され2次側に誘導加熱プレート7が接続された変圧器8と、第2電源13から供給される電源で駆動されて天板2を冷却する冷却部12とを備えた。このため、加熱停止中に冷却部12が天板2を冷却することで、加熱停止後に素早く天板2を作業台や物置台として使用することが可能となり、誘導加熱調理器100の使い勝手を大幅に向上させることができる。
【0031】
また、誘導加熱調理器100が天板2に設けられたサーミスタや筐体1内に設けられた赤外線センサ等の温度検出手段の出力を用いて被加熱物200の温度を検出する機能を有する場合、天板2の温度が、被加熱物200の温度検出の精度に影響を与えることが知られている。このため、天板2の温度が常温よりも高い状態で誘導加熱動作を開始するいわゆるホットスタートでは、被加熱物200の温度検出を正確に行うことが困難であり、さらに被加熱物200の底面が沿ったいわゆる鍋反り状態であると、正確な温度検出が困難である。しかし、本実施の形態のように加熱停止後には冷却部12で天板2を冷却することで、次の誘導加熱動作を、天板2の温度が常温又はそれに近いいわゆるコールドスタートで実行しやすくなる。このため、鍋反り量を考慮しても、被加熱物200の温度をより正確に検出できるようになり、使い勝手のよい誘導加熱調理器100を提供することができる。
【0032】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の要部の構成を示す図である。図5は、実施の形態2に係る加熱調理器の誘導加熱プレートの概略平面図である。本実施の形態では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。本実施の形態は、実施の形態1で説明した構成に加え、誘導加熱プレート7及び天板2のいずれか又は両方の温度を検出する温度検出器16を備えている。本実施の形態の温度検出器16は、例えば誘導加熱プレート7の裏面に取り付けられたサーミスタであり、誘導加熱プレート7の温度を直接的に検出し、さらに誘導加熱プレート7に接している天板2の温度も間接的に検出することができる。本実施の形態では、温度検出器16が誘導加熱プレート7の温度を直接的に検出する場合を例に説明するが、温度検出器16は天板2の温度を直接的に検出するものであってもよい。また、温度検出器16は、天板2及び誘導加熱プレート7から放射される赤外線に基づいて温度を検出する例えば赤外線センサであってもよい。温度検出器16の出力は、制御部14に入力される。
【0033】
本実施の形態は、冷却部12による冷却動作の開始及び停止に係る制御が、実施の形態1と異なる。
【0034】
図6は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の天板の冷却動作を説明するフローチャートである。制御部14は、加熱停止条件が整うと第1電源11を駆動停止する(S1)。これにより誘導加熱動作が停止する。誘導加熱動作を停止すると、制御部14は、温度検出器16からの出力に基づいて、誘導加熱プレート7の温度監視を開始する(S2)。制御部14は、温度検出器16で検出される温度と第1閾値とを比較し(S3)、検出温度が第1閾値未満であれば(S3;NO)、冷却部12を動作させることなく処理を終了する。一方、制御部14は、温度検出器16の検出温度が第1閾値以上であれば(S3;YES)、第2電源13を駆動して冷却部12に電源を供給し、冷却部12による天板2の冷却を開始する(S4)。
【0035】
冷却部12による冷却動作開始後も、制御部14は温度検出器16の検出温度の監視を継続しており、検出温度と第2閾値とを比較し(S5)、検出温度が第2閾値を超えている間は(S5;NO)、冷却動作を継続する。一方、制御部14は、検出温度が第2閾値以下であれば(S5;YES)、第2電源13を駆動停止して冷却部12による天板2の冷却動作を停止させる(S6)。
【0036】
ここで、第1閾値は、冷却部12の動作を開始する条件であり、第2閾値は冷却部12の動作を停止する条件といえる。第2閾値は、第1閾値よりも小さい温度であり、具体的には、第1閾値は例えば40℃前後、第2閾値は例えば25℃程度とすることができる。この場合、誘導加熱プレート7又は天板2の温度が40℃以上であれば冷却部12によって天板2が冷却され、誘導加熱プレート7又は天板2の温度が25℃以下になると、冷却動作が停止する。
【0037】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態では、天板2又は誘導加熱プレート7の温度を検出する温度検出器16を備え、制御部14は誘導加熱動作を停止した後、温度検出器16の検出値が第1閾値以上である場合に、冷却部12に冷却動作を行わせるようにした。すなわち、加熱停止後であっても温度検出器16の検出温度が第1閾値未満であれば、冷却部12は冷却動作を行わない。さらに本実施の形態では、冷却動作を開始後、温度検出器16の検出温度が第2閾値以下になると、冷却動作を停止するようにした。このため、冷却部12による不要な冷却動作が抑制され、誘導加熱調理器100の消費電力を低減させることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、冷却動作の開始条件となる第1閾値と終了条件となる第2閾値の両方を用いる例を説明したが、冷却動作の開始条件となる第1閾値のみを採用し、冷却動作の停止は時間の経過によって判断してもよい。また、加熱停止後は無条件で冷却動作を開始し、冷却動作の停止条件となる第2閾値のみを採用してもよい。
【0039】
実施の形態3.
本実施の形態は、実施の形態2で説明した冷却動作の開始及び停止に係る制御を変更したものであり、ここでは実施の形態2との相違点を中心に説明する。本実施の形態では、表示部5は、冷却部12による冷却動作を行うか否かを確認する表示を行い、また、操作部4は、冷却部12を動作させるか否かの指示を入力する入力手段を備えている。制御部14は、この操作部4からの入力に基づいて、冷却動作を制御する。以下、具体的に説明する。
【0040】
図7は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器の天板の冷却動作を説明するフローチャートである。制御部14は、加熱停止条件が整うと第1電源11を駆動停止する(S11)。これにより誘導加熱動作が停止する。誘導加熱動作を停止すると、制御部14は、温度検出器16からの出力に基づいて、誘導加熱プレート7の温度監視を開始する(S12)。制御部14は、温度検出器16で検出される温度と第1閾値とを比較し(S13)、検出温度が第1閾値未満であれば(S13;NO)、冷却部12を動作させることなく処理を終了する。一方、制御部14は、温度検出器16の検出温度が第1閾値以上であれば(S13;YES)、冷却動作の要否を確認する表示を表示部5に行わせる(S14)。
【0041】
ステップS14において制御部14は、天板2の冷却を行うかどうかを確認するメッセージを、表示部5に表示させる。操作部4には、冷却の要否を入力する入力手段が設けられており、制御部14は操作部4への冷却動作を要する旨の入力が無ければ(S15;NO)、高温注意表示部6を制御して高温注意表示を行い(S16)、冷却部12による冷却動作は行わない。
【0042】
一方、制御部14は、冷却動作の実行を指示する入力を操作部4から取得すると(S15;YES)、第2電源13を駆動して冷却部12に電源を供給し、冷却部12による天板2の冷却を開始する(S17)。
【0043】
冷却部12による冷却動作開始後も、制御部14は温度検出器16の検出温度の監視を継続しており、検出温度と第2閾値とを比較し(S18)、検出温度が第2閾値を超えている間は(S18;NO)、冷却動作を継続する。一方、制御部14は、検出温度が第2閾値以下であれば(S18;YES)、第2電源13を駆動停止して冷却部12による天板2の冷却動作を停止させる(S19)。
【0044】
なお、ステップS14及びステップS16における表示は、誘導加熱動作を停止してから設定時間が経過するまで継続することができる。あるいは、温度検出器16の検出温度が設定温度以下になるまで継続することができる。
【0045】
本実施の形態によれば、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態では、冷却部12による冷却動作の要否を入力する操作部4を備えたので、ユーザーの意向に応じて冷却動作が実行される。このため、ユーザーは、天板2の冷却を行わない、という選択が可能となる。誘導加熱動作後の天板2は高温となるため、冷却動作を行わなかった場合には、徐々に天板2の温度は低下するもののしばらくは高温状態が維持される。したがって、天板2の上に被加熱物200を載置しておくことで、誘導加熱動作の停止中でも、天板2には保温機能を発揮することができ、加熱に係る消費電力を抑制して経済的に使用できる誘導加熱調理器100を得ることができる。
【0046】
実施の形態4.
本実施の形態は、実施の形態2で説明した冷却動作の開始及び停止に係る制御を変更したものであり、ここでは実施の形態2との相違点を中心に説明する。本実施の形態では、操作部4に、冷却部12による冷却動作の実行の有無に係る指示を入力する入力手段が設けられている。制御部14は、この操作部4からの入力に基づいて、冷却動作を制御する。以下、具体的に説明する。
【0047】
図8は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器の天板の冷却動作を説明するフローチャートである。制御部14は、加熱停止条件が整って第1電源11を駆動停止させており、加熱停止状態である(S21)。制御部14は、操作部4からの冷却を実行する旨の指示を監視し(S22)、冷却指示がなければ(S22;NO)、これ以降の処理を行わない。
【0048】
一方、操作部4からの冷却を実行する旨の指示を受けると(S22;YES)、制御部14は、天板2の上に載置物があるか否かを検出する(S23)。ここで、載置物の検出は、実施の形態1で説明した負荷検知処理によって行うことができる。そのほか、天板2に係る荷重を検出する重量センサを設け、制御部14は重量センサからの出力に基づいて天板2の上に載置物があるかどうかを検出することもできる。
【0049】
制御部14は、天板2の上に載置物がないと判断した場合には(S23;NO)、冷却動作を行わず、処理を終了する。一方、制御部14は、天板2の上に載置物があると判断した場合には(S23;YES)、第2電源13を駆動して冷却部12に電源を供給し、冷却部12による天板2の冷却を開始する(S24)。冷却動作を開始した後は、制御部14は、操作部4から冷却停止指示がなければ冷却動作を継続し(S25;NO)、操作部4から冷却停止指示を取得すると(S25;YES)、第2電源13を駆動停止して天板2の冷却を停止する(S26)。
【0050】
なお、図8では、ステップS23において天板2の上に載置物があるか否かを検出する例を説明したが、このステップを設けず、操作部4への冷却開始及び冷却停止の指示にのみ基づいて、天板2の冷却を行うようにしてもよい。
【0051】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態では、天板2や誘導加熱プレート7の温度によらず、操作部4への入力に基づいて天板2の冷却を行える構成とした。このため、例えば天板2が常温のときに、ユーザーが冷却部12を積極的に動作させて天板2を冷却することにより、天板2上の載置物を冷却することができる。したがって、天板2に載置される食品を冷却して菌の繁殖を抑制することも可能となる。また、加熱調理された調理物は、時間の経過とともに食材としてのおいしさが失われうるが、冷却部12を用いて冷却することで、調理物の風味、おいしさ、栄養価などを保つことも可能となる。例えば冷却部12としてペルチェ素子を用いた場合、マイナス温度帯まで冷却が可能となるので、天板2上の載置物を、急速冷却することもできる。
【0052】
実施の形態5.
本実施の形態では、実施の形態2との相違点を中心に、冷却部12の配置に係る変形例を説明する。本実施の形態は、実施の形態1〜4と組み合わせることができる。
【0053】
図9は、実施の形態5に係る誘導加熱調理器の要部の構成を示す図である。本実施の形態は、実施の形態2で説明した構成に加え、誘導加熱プレート7と冷却部12との間の距離を調整する調整部としての可動手段17を備えている。可動手段17は、冷却部12を機械的に上下に移動させることで、冷却部12と誘導加熱プレート7との距離を調整する。制御部14からの制御信号に基づいて、可動手段17が上下方向に移動し、これに伴って可動手段17に機械的に接続された冷却部12も上下方向に移動する。冷却部12は、誘導加熱プレート7に接触した状態(隙間ゼロ)と、誘導加熱プレート7との間に例えば1〜2mm程度の隙間があいた状態と、の間で移動する。なお、冷却部12と誘導加熱プレート7との隙間の具体的な距離は一例である。
【0054】
このような構成において、制御部14は、誘導加熱動作を行っているとき、すなわち冷却部12が冷却動作を行っていないときには、可動手段17を制御して冷却部12を下へ移動させて、冷却部12と誘導加熱プレート7とに隙間を設ける。一方、制御部14は、誘導加熱動作を行っていないとき、すなわち冷却部12が冷却動作を行っているときには、可動手段17を制御して冷却部12を上へ移動させて、冷却動作を行っていないときよりも間隙の距離を小さくし、冷却部12と誘導加熱プレート7とを接触させる。
【0055】
本実施の形態によれば、誘導加熱動作を行っているときは、冷却部12を誘導加熱プレート7から離すことができるので、誘導加熱プレート7からの熱を冷却部12が受けにくく、冷却部12の熱による劣化を抑制することができる。したがって、冷却部12の寿命を延ばすことができる。また、冷却動作を行うときには、冷却部12を誘導加熱プレート7に接触させることで、誘導加熱プレート7を介して天板2を効果的に冷却することができる。なお、本実施の形態では冷却動作を行うときには冷却部12を誘導加熱プレート7に接触させるものとして説明したが、接触していなくてもよく、所望の冷却効果が得られるように両者の距離を近づけておいてもよい。
【0056】
実施の形態6.
本実施の形態では、実施の形態2との相違点を中心に、冷却部12の配置に係る変形例を説明する。本実施の形態は、実施の形態1〜5と組み合わせることができる。
【0057】
図10は、実施の形態6に係る誘導加熱調理器の誘導加熱プレートの概略平面図である。図10に示す誘導加熱プレート7Aには、誘導加熱プレート7の平板面を貫通する複数の開口部18Aが形成されており、開口部18A内に冷却部12が配置されている。なお、図10では矩形の開口部18Aを例示しているが、冷却部12を内部に配置することのできる形状であれば、開口部18Aの具体的形状は限定されない。
【0058】
図11は、実施の形態6に係る誘導加熱調理器の誘導加熱プレートの他の例を示す概略平面図である。図11に示す誘導加熱プレート7Bは、その平板面を貫通する環状の開口部18Bが設けられている。この誘導加熱プレート7Bは、平板面が二重環状に形成されているともいえる。二重環状の誘導加熱プレート7Bは、変圧器8内で直接接続あるいは並列接続される。もしくは、二重環状の誘導加熱プレート7Bのそれぞれに、変圧器8から個別に出力するようにしてもよい。そして、開口部18B内に、冷却部12が配置されている。なお、開口部18Bの具体的形状は一例であり、冷却部12を内部に配置することのできる形状であれば、開口部18Bの具体的形状は限定されない。
【0059】
図12は、実施の形態6に係る誘導加熱調理器の要部断面を説明する模式図である。図12は、図10に示した例の概略断面を示している。図12に示すように、冷却部12は、開口部18Aの内側において、天板2の裏面に接触して配置されている。このため、冷却部12は、天板2を直接的に冷却することができる。図11に示した例においても同様に、冷却部12は開口部18Bの内側において、天板2の裏面に接触して配置される。
【0060】
本実施の形態によれば、天板2に直接冷却部12を接触させたので、天板2の冷却効果をより高めることができる。また、冷却部12を誘導加熱プレート7A、7Bから離して配置するので、誘導加熱プレート7A、7Bからの熱を冷却部12が受けにくく、熱による冷却部12の劣化を抑制することができる。したがって、冷却部12の寿命を延ばすことができる。また、誘導加熱プレート7A、7Bの厚みと一部又は全部が重なるように冷却部12が配置されるので、誘導加熱プレートに重ねて冷却部12を配置する場合と比較して、天板2、誘導加熱プレート7A、7B、及び冷却部12の全体的な厚みを薄くすることができる。このため、誘導加熱調理器100の薄型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 筐体、2 天板、3 加熱口、4 操作部、5 表示部、6 高温注意表示部、7 誘導加熱プレート、7A 誘導加熱プレート、7B 誘導加熱プレート、8 変圧器、9 磁性体、10 コイル、11 第1電源、12 冷却部、13 第2電源、14 制御部、15 磁性材、16 温度検出器、17 可動手段、18A 開口部、18B 開口部、20 巻数、71 垂直部、100 誘導加熱調理器、200 被加熱物。
図1
図2
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図4
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図12