(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0001】
[0001]何百万ものヒト患者が、ウイルス感染またはウイルス性疣贅感染、ニキビダニ感染、真菌もしくは酵母感染、または眼、眼瞼もしくは眼周囲領域の皮膚を含めた皮膚の細菌感染に罹患している。
【0002】
[0002]眼または眼瞼の感染は、直接的なヒトとヒトの皮膚接触を介して、または公共のスイミングプールもしくは体育館のような公共の出入りされる場所における汚染表面から間接的に起こり得る。感染因子への曝露は、わずかな擦過傷を介して起こる恐れがあり、感染は、上皮の浸軟を介して促進される。自己接種もやはり一般的である。
【0003】
[0003]疣贅の医療用語である尋常性疣贅は、すべての疣贅の総称となる。疣贅は、ヒトパピローマウイルス(HPV)または伝染性軟属腫ウイルス(MCV)に関連することが最も多い、ウイルス感染に起因し得る。皮膚疣贅の非生殖器系の様々なものが、両方の性において、等しい頻度で学童児の20%に発生する。
【0004】
[0004]ウイルス感染もしくはウイルス性疣贅感染、ニキビダニ感染、真菌もしくは酵母感染、または眼瞼、結膜、角膜、眼表面もしくはマイボーム腺の細菌感染は、眼瞼炎および/もしくは眼瞼結膜炎もしくは結膜炎、すなわち、眼瞼または眼表面の感染性および炎症性状態として現れ得る。
【0005】
[0005]眼瞼結膜炎および眼瞼炎は、集団の約15%に影響を及ぼす一般的に現れる状態であり、眼瞼の炎症性、感染性または混合状態となる。眼瞼炎は、真皮、睫毛、瞼結膜、粘膜皮膚移行部またはマイボーム腺を含むことができ、ぶどう球菌属(Staphylococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)およびプロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)の種などのグラム陽性菌感染により引き起こされることが最も多い。しかし、眼瞼炎を引き起こす他の因子には、ウイルス、ニキビダニ(ダニ)または酵母感染、脂漏、酒さおよびホルモンの調節異常が含まれる。
【0006】
[0006]治療せず放置された眼瞼炎は、ドライアイの悪化、繊毛の喪失、角膜の潰瘍化を引き起こすことがあり、白内障手術後の眼内炎リスクの増加をもたらす。理解を容易にするため、眼内炎は、眼瞼縁の前方、眼瞼縁の後方またはこれらの両方の構造に影響を及ぼす炎症に一般に分類される。
【0007】
[0007]前方眼瞼炎は、コラレット(collarettes)の存在を伴うまたは伴わない、眼瞼の前方および睫毛の痂皮形成として最も一般に現れる。他の徴候はまた、脂漏または眼角炎症、とりわけモラクセラ属(Moraxella)またはウイルスに関連する、皮膚または睫毛の剥離も含むことができる。
【0008】
[0008]後部眼瞼炎も、マイボーム腺疾患と一般に称される。マイボーム腺は、涙液膜への脂質の放出に関与し、蒸発性涙液喪失(evaporative tear loss)を効果的に和らげる。すべての眼瞼炎に一般的な慢性的刺激、炎症および紅斑の他に、後部の変異型は、マイボーム腺の濃縮、オリフィスの角質化、毛細血管拡張症および眼瞼縁の後方の肥厚化をさらに特徴とすることができる。眼フローラ(ocular flora)から生じる細菌リパーゼは、遊離脂肪酸を生成するマイボーム腺の分泌に作用することもでき、この遊離脂肪酸は、さらに、眼表面に支障をきたす。
【0009】
[0009]疣贅、および眼瞼炎などの眼科状態を含めた、細菌、ニキビダニ、真菌/酵母およびウイルス感染に対する現在の処置は、これらが、感染の原因因子の一部しか処置しない点で有効とはなり得ない。現在の処置の多数には、ステロイドまたは他の潜在的に有害な構成成分などの望ましくない成分が組み込まれている。
【0010】
[00010]Capriottiらによる最近の発見は、活性成分としてポビドン−ヨード(PVP−I)などのヨードフォアを含む組成物を開示し、ジメチルスルホキシド(DMSO)が、皮膚および爪の真菌感染の処置に有用であることが示された。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国公開番号US2014/0205559(Capriottiの559号)を参照されたい。
【0011】
[00011]ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む様々な有機溶媒は、ある種の医薬の経皮吸収を増強することが知られているが、DMSOは、低分子または低分子量(LMW)化合物または薬物しか浸透を増強しないことが医薬分野において長く受け入れられており、ポリマー、例えばポビドン−ヨードなどの約10,000ダルトンを超える高分子量(HMW)化合物の浸透を増強することは予想されなかった。DMSOが、ポビドン−ヨード(PVP−I)の浸透を増強することが実証されたのは、ごく最近であり、予想外のことであった。PVP−I調製物は、1,000〜1,000,000またはそれを超える分子量の範囲である。局所医薬組成物は、PVPグレードのK29−32の使用しか承認されていない。許容されるPVPグレードの1つは、PVP K30であり、これは、30,000〜60,000ダルトン(平均MWは約40,000ダルトン)のMWを有する。したがって、Capriottiの559号の教示に先立って、当業者らは、PVP−Iなどの、大分子、ポリマーまたは高分子量物質の皮膚浸透を増強するために、局所医薬組成物中でDMSOを使用しなかったと思われる。
【0012】
[00012]さらに、DMSOは、当技術分野において、眼に毒性があることが理解されて認められており、眼または眼周囲領域への局所投与を意図する組成物における許容される成分とは考えられていなかった。したがって、DMSOは一般に、ポビドン−ヨードなどの高分子量ポリマー化合物の浸透促進剤としての使用が許容されないものと認識されているだけでなく、DMSOは、特に、眼科用調製物において使用するための成分として回避され、とりわけ、局所眼科用調製物用の成分として回避された。
【0013】
[00013]さらに、ポビドン−ヨードおよびDMSOを含むゲル製剤は、一般に、Capriottiの559号および関連刊行物において言及されているが、ポビドン−ヨード、DMSOおよびゲル化剤を含むある種の製剤は、許容される保存可能期間を有する実現可能な医薬製品をもたらすのに十分な期間、安定ではないことが発見された。特定量のポビドン−ヨードを特定量のDMSOおよび特定量のゲル化剤と組み合わせた場合だけ、許容されかつ承認される保存可能期間を有する、実現可能な薬学的に許容される製品をもたらすのに十分に安定であることが観察された。
【0014】
[00014]米国特許出願公開第2017/0000819号において、Capriottiらは、ある種の眼科状態を処置するための、局所眼科用ゲル組成物を記載した。しかし、本組成物は、ゲル化剤、例えばHECの濃度が本組成物の2%(w/w)未満となる場合、不安定であることが示された。この結果は、ゲル化剤を低濃度で含む組成物を安定化させるのは極めて困難であるという当技術分野における知識と一致した。DMSO中にPVP−Iを含む局所ゲル組成物の安定性および有効性は、ゲル化剤が好ましくは2.5%から5%の濃度で供給される場合に保持されたことを、米国公開第2017/0000819号は記載した。
【0015】
[00015]より低い濃度のゲル化剤を含有するが、組成物の許容される保存可能期間に反映される期間の安定性および有効性を保持する局所眼科用調製物を提供するという課題は、当技術分野において依然として存在する。2%未満の濃度のゲル化剤を含む局所眼科用組成物の提供は、製品の適切な投与または適用、処置の部位における滞留時間または麻酔面での理由(製品の外観/感覚および患者の許容性)にとって有利となり得る。したがって、許容される期間、安定かつ有効な、DMSO中のPVP−I、および有機共溶媒を含むまたは含まない水、および2%未満の濃度のゲル化剤を含む組成物の発見は、医療分野、とりわけ、眼科処置の分野に著しい進歩となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
[00016]したがって、本発明は、当技術分野における顕著な進歩であり、そして、特定の成分、つまりPVP−I、DMSOおよびゲル化剤を含む局所眼科用ゲル組成物、特に濃度組合せ物は、眼瞼炎、結膜炎、角膜炎または他の眼科状態などの眼の感染を処置するための眼科用製剤の調製および安定化における、有利かつ予想外の結果をもたらすことができるという驚くべきで予測できない発見を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[00018]本発明は、ヨードフォア、浸透促進剤およびゲル化剤を含む局所ゲル組成物であって、疣贅、または眼瞼炎などの眼状態を引き起こす恐れがある、ウイルス、ニキビダニ、真菌/酵母または細菌感染を処置するのに特に有効な、局所ゲル組成物に関する。したがって、本発明は、本明細書において開示されている局所ゲル組成物を使用する、ウイルス、ニキビダニ、真菌/酵母または細菌感染を処置する方法をさらに含む。本組成物は、追加的な薬学的に許容される賦形剤、または溶媒もしくは共溶媒をさらに含むことができる。
【0020】
[00019]本発明の組成物は、局所または眼科用投与するための医薬調製物における使用に許容されるものとして、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されているまたは許可されている活性な医薬品成分(API)を好ましくは含む。本発明の好ましい組成物は、局所投与および/または眼科用投与にFDAにより承認されている不活性成分または賦形剤をさらに含む。FDAにより承認されているAPIまたは不活性成分または賦形剤は、本明細書において、「薬学的に許容される」と称される。したがって、薬学的に許容されるAPI、不活性成分または賦形剤を含む、本発明の局所組成物、製剤または調製物は、本明細書において、「薬学的に許容される」局所組成物と称される。
【0021】
[00020]同様に、FDAにより承認されている、眼科用調製物における使用に許容される活性または不活性成分を含む本発明の眼科用組成物は、「薬学的に許容される眼科用組成物」または「眼科用に許容される」組成物として称され、API、賦形剤、または眼科用使用のための「薬学的に許容される」溶媒を含む。
【0022】
[00021]より詳細には、本発明は、10,000ダルトンを超える分子量を有するヨードフォア、例えばポビドン−ヨードK30などのポビドン−ヨード、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびゲル化剤、ならびに場合により追加の薬学的にまたは眼科用に許容される賦形剤または溶媒または共溶媒を含む、安定な局所組成物に関する。好ましい実施形態では、本組成物は、4.5未満のpHの値を有する。好ましくは、pHの値は、4.4以下、4.3以下、4.2以下、4.1以下、4.0以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、3.5以下、3.4以下、3.3以下、または3.2以下とすることができる。この実施形態では、pHの値は、4.5未満である限り、限定されない。しかし、pHの値の下限値は、たとえば、0、0.5、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.45、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1または3.2とすることができる。
【0023】
[00022]本発明の組成物は、眼、眼瞼、結膜、角膜、眼表面、マイボーム腺もしくは眼周囲領域のウイルス感染もしくはウイルス性疣贅感染、ニキビダニ感染、真菌もしくは酵母感染、または細菌感染を処置するための方法に有用となり得る。
【0024】
[00023]本発明の局所ゲル組成物は、水性成分または無水成分の存在下で、室温において予想外にも高度に安定である。
[00024]本発明の局所眼科用ゲル組成物は、約0.1%〜約1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)、約30%〜約99%のジメチルスルホキシド(DMSO)および約0.5%から2%未満のゲル化剤を含むことができる。本発明の局所ゲル組成物は、ゲル化剤を実質的に含まず、かつ約0.1%〜約1.5%のポビドン−ヨードおよび約30%〜約99%のDMSOを含む液体組成物と比べて、皮膚感染または眼瞼炎の処置において予想外にもより高い効力を示す。
【0025】
[00025]好ましい局所眼科用ゲル組成物は、約0.15〜1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)を含む。より好ましい組成物は、約0.25%のPVP−I〜0.5%のPVP−Iを含むことができる。PVP−IグレードのK30は、本組成物における使用に好ましい。
【0026】
[00026]好ましい局所眼科用ゲル組成物は、約30%〜約99%のDMSOを含む。より好ましい組成物は、約30%〜約70%のDMSOを含むことができる。本発明の最も好ましい組成物は、約40%〜約49%のDMSOを含み、さらにより好ましくは約44%のDMSOを含む。
【0027】
[00027]好ましい局所眼科用ゲル組成物は、約0.25%から2.0%未満のゲル化剤を含む。より好ましい組成物は、約0.5%〜約1.75%のゲル化剤、約0.75%〜約1.75%のゲル化剤、約1.0%〜約1.5%のゲル化剤、およびより好ましくは約1.5%のゲル化剤を含むことができる。
【0028】
[00028]試験用に調製された特に有用な局所眼科用ゲル組成物は、0.25%のPVP−I、44%のDMSO、0.25%〜1.75%のヒドロキシエチルセルロースおよび100%となるのに十分の量の水性溶媒を含む。好ましい水性溶媒は、水または水性等張性溶液である。
【0029】
[00029]本発明の局所眼科用ゲル組成物を調製するのに有用なゲル化剤は、当技術分野において周知の通り、ガム、寒天、カラギーナン、ワセリンまたはセルロースポリマーなどを含むことができる。ゲル化剤として有用な好ましいセルロースポリマーの1つは、ヒドロキシエチルセルロースまたはその塩である。代替的なセルロースポリマーゲル化剤は、ヒドロキシメチルセルロースまたはその塩である。代替的なセルロースポリマーゲル化剤は、カルボキシメチルセルロースまたはこの塩である。
【0030】
[00030]本発明の局所眼科用ゲル組成物は、ポビドン−ヨード、または10,000を超える平均分子量を有するPVP−Iを好ましくは含む。より好ましくは、本発明の組成物は、約20,000〜約1,000,000の平均分子量を有する、PVP−Iを含む。好ましい一実施形態は、約30,000〜約60,000の間、またはこれ超の平均分子量を有するPVP−Iを含む。10,000〜約1,000,000の範囲の平均分子量を有するPVP−I成分の各々が、本明細書において言及され、「高分子量PVP−I」または「HMW PVP−I」を意味する。
【0031】
[00031]局所眼科用ゲル組成物は、1つまたは複数の眼科用に許容される成分を含む、眼科用に許容されるものである。優位なことに、本明細書に記載されている眼科用ゲル組成物の実施形態は、ゲル化剤を実質的に含まない(または、ゲルを形成するのに必要な濃度未満のゲル化剤)液体組成物であって、約0.1%〜約10%のポビドン−ヨードおよび約30%〜約99%のDMSOを含む液体組成物と比べて、眼または眼瞼の感染状態の処置において、より大きな効力または安定性を示すことができる。
【0032】
[00032]最も好ましい局所眼科用ゲル組成物は、0.15%〜0.5%の範囲の医薬品グレードのポビドン−ヨード、30%超のDMSOから90%までのDMSOおよび0.50%から2.0%未満の範囲のゲル化剤を含む。割合はすべて、別段の指定がない限り、w/wである。この最も好ましい組成物はまた、ポリエチレングリコール(PEG)などの共溶媒を含むことができる。本発明の好ましい組成物は、予想外にも安定であり、一定の眼感染を処置するのに有効である。
【0033】
[00033]本組成物の好ましい実施形態は、酸性溶液およびより詳細にはゲル溶液を含み、ポビドン−ヨードが最終組成物中に溶解されているかまたは可溶化されている。好ましくは、本組成物は、ゲルまたは最終組成物中の、成分の微粒子のエマルションまたは懸濁液ではない。
【0034】
[00034]本発明の局所ゲル組成物の好ましい実施形態は、ステロイド、例えばコルチコステロイドまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの追加的なAPIまたは抗炎症薬を含まない。したがって、本発明の組成物は、ステロイドを含まない、NSAIDを含まない、ステロイドを含まずNSAIDを含まない、または抗炎症性を有さない(本組成物を含む特定の成分により示された抗炎症特性を除く)のものとして記載され得る。有利なことに、本発明の組成物は、該組成物中に存在する、追加的な抗炎症剤を含まず、ステロイドを含まず、またはNSAIDを含まず、記載されている眼科状態の処置に有用である。
【0035】
[00035]本発明の組成物の好ましい一実施形態は、
0.15%〜1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)、
30%〜97%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
0.75%から2%未満のヒドロキシエチルセルロース、および
水または等張性共溶媒
を含む、眼科用に許容される安定なゲル組成物であって、
追加的な抗炎症薬を含まず、または「抗炎症性を有さない」、局所眼科用ゲルとして製剤化されているゲル組成物である。
【0036】
[00036]本発明の組成物の好ましい一実施形態は、
0.15%〜1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)、
30%〜97%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
0.5%から2.0%未満のヒドロキシエチルセルロース、および
水または等張性共溶媒
を含む、眼科用に許容される安定なゲル組成物であって、
ステロイドを含有しない(または「ステロイド不含」である)、局所眼科用ゲルとして製剤化されているゲル組成物である。
【0037】
[00037]本発明の組成物の好ましい一実施形態は、
0.15%〜1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)、
30%〜97%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
0.25%から2.0%未満のヒドロキシエチルセルロース、および
水または等張性共溶媒
を含む、眼科用に許容される安定なゲル組成物であって、
ステロイドを含有しない、局所眼科用ゲルとして製剤化されているゲル組成物である。
【0038】
[00038]本発明の組成物の好ましい一実施形態は、
0.15%〜1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)、
30%〜97%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
0.25%〜1.6%のヒドロキシエチルセルロース、および
水または等張性共溶媒
を含む、眼科用に許容される安定なゲル組成物であって、
ステロイドを含まない、局所眼科用ゲルとして製剤化されているゲル組成物である。
【0039】
[00039]本発明の組成物の好ましい一実施形態は、
0.15%〜1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)、
30%〜97%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
0.25%から2%未満のメチルセルロース、および
水または等張性共溶媒
を含む、眼科用に許容される安定なゲル組成物であって、
コルチコステロイドを含まない、局所眼科用ゲルとして製剤化されているゲル組成物である。
【0040】
[00040]本発明の組成物の好ましい一実施形態は、
0.15%〜1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)、
30%〜97%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
1.0%から2%未満のヒドロキシエチルセルロース、および
水または等張性共溶媒
を含む、眼科用に許容される安定なゲル組成物であって、
NSAIDを含まない、局所眼科用ゲルとして製剤化されているゲル組成物である。
【0041】
[00041]本発明による方法は、眼科感染が取り除かれるまで、または実質的に阻害されるまで、部位への、本発明の局所眼科用ゲル組成物、つまり、ヨードフォア、DMSOおよびゲル化剤を含む局所組成物の、1つまたは複数の必要に応じた局所投与または局所適用を一般に含む。好ましい方法では、本ゲル組成物は、好ましくは少なくとも1日1回(QD)、またはより好ましくは少なくとも1日2回(BID)、典型的には、約1週間から約24週間まで、結果が判明するまで、必要に応じて(PRN)、感染の部位に直接投与される。有利には、本発明の組成物は、眼または眼周囲領域に直接、投与することができ、眼への毒性を全く示さない。
【0042】
[00042]本発明の好ましい実施形態は、眼または眼瞼の感染状態を処置する方法であって、感染を低減または取り除くために、感染の部位に有効量の安定な局所眼科用ゲル組成物を適用するステップを含む、方法を含む。
【0043】
[00043]本発明の方法は、細菌、ニキビダニ、真菌もしくは酵母、またはウイルスなどの1つもしくは複数の感染因子により引き起こされる、またはこれらに関連する、眼瞼炎、結膜炎、角膜潰瘍、HSV角膜炎、結膜の新生物、AC炎症、術後眼内炎、および硝子体内注射または前房内注射後の眼内炎の処置に有用となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[00041]本発明は、消毒剤、浸透促進剤およびゲル化剤を含む、局所ゲル組成物に関する。好ましくは、本組成物は、消毒剤としてポビドン−ヨード、浸透促進剤としてジメチルスルホキシド(DMSO)、セルロース系ゲル化剤(ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他のセルロースポリマー、ならびにこれらの塩など)を含む。本組成物は、滑剤もしくは共溶媒、または他の薬学的にもしくは眼科用に許容される賦形剤を任意選択でさらに含むことができる。例えば、眼瞼炎などの眼科状態を処置するための組成物は、眼科用に許容される賦形剤を含むことができる。
【0045】
[00042]本主題の組成物は、眼瞼炎を引き起こす恐れがある、ウイルス、ニキビダニ、真菌/酵母、または眼、眼瞼、結膜、角膜、眼表面およびマイボーム腺の細菌感染の処置に驚くほど有用である。
【0046】
[00043]有用な医薬調製物を提供する本発明の製剤の特定の、しかし非限定な例は、溶液中に1つまたは追加の共溶媒を含むDMSOに溶解されており、かつゲルまたは半固体として調製されている固体PVP−Iを含む。
【0047】
[00044]別の実施形態では、DMSOは、PVP−Iの水溶液に添加することができる。一例では、DMSOは、10%〜99%の範囲の水を含む共溶媒として存在することができる。このような製剤の一実施形態は、水または塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸水素二ナトリウム無水物および水、ならびに当業者に公知の他の水溶液または等張性緩衝液などの広範な賦形剤を含むことができる。
【0048】
[00045]本明細書において説明されている割合は、特に示さない限り、全組成物中の特定した構成成分に関して、(w/w)である。例えば、1%のPVP−Iおよび45%のDMSOを含む組成物は、組成物の合計に対して1重量%のPVP−Iを有する。
【0049】
[00046]ある実施形態では、組成物は、約0.01%〜約15%の範囲のポビドン−ヨードを含む。別の実施形態では、組成物は、0.05%から12.5%の範囲のポビドン−ヨードを含む。別の実施形態では、組成物は、0.05%から10.0%の範囲のポビドン−ヨードを含む。別の実施形態では、組成物は、0.1%から10.0%の範囲のポビドン−ヨードを含む。別の実施形態では、組成物は、0.1%から1.0%の範囲のポビドン−ヨードを含む。別の実施形態では、組成物は、0.15%から1.5 5%の範囲のポビドン−ヨードを含む。別の実施形態では、組成物は、0.25%から0.5%の範囲のポビドン−ヨードを含む。
【0050】
[00047]ある実施形態では、組成物は、約0.01%、約0.05%、約0.10%、約0.15%、約0.20%、約0.25%、約0.30%、約0.35%、約0.40%、約0.45%、約0.50%、約0.55%、約0.60%、約0.65%、約0.70%、約0.75%、約0.80%、約0.85%、約0.90%、約0.95%、約1.00%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、または上記の比率から決定可能な任意の範囲のポビドン−ヨードを含む。割合はすべて、別段の指定がない限り、w/wとして表される。
【0051】
[00048]ある実施形態では、組成物は、DMSOおよびPVP−Iを含む。ある実施形態では、組成物は、水性または無水希釈剤中の、DMSOおよびPVP−Iおよびゲル化剤から本質的になる。ある実施形態では、組成物は、水性または無水希釈剤中の、DMSOおよびPVP−Iおよびゲル化剤および共溶媒からなる。ある実施形態では、組成物は無水である。ある実施形態では、組成物は実質的に無水である。ある実施形態では、組成物は、測定可能な量の水を含む。
【0052】
[00049]ある実施形態では、DMSO、例えば無水DMSOが、組成物中で使用される。ある実施形態では、実質的に無水のDMSOが、組成物中で使用される。DMSOは、様々なグレードで生成することおよび/または得ることができること、ならびに様々なグレードのDMSO調製物の中で変わり得るものの1つは、含水量であることが当業者により理解されよう。例として、DMSOは、完全に無水(本明細書において、単に「無水」とも称される)であってもよく、実質的に無水であってもよく、または測定可能な程度の水を含有してもよい。DMSO調製物中の測定可能な水の量は、このような測定を行うために使用される、機器および技法の限界に基づいて変動し得ることが理解されよう。
【0053】
[00050]ある実施形態では、完全に無水ではないDMSOは、実質的に無水とすることができ、検出可能なレベル未満のレベルで水を含有する。ある実施形態では、完全に無水ではないDMSOは水を含有してもよく、含水量は、少なくとも約0.01%、少なくとも約0.02%、少なくとも約0.03%、少なくとも約0.04%、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.06%、少なくとも約0.07%、少なくとも約0.08%、少なくとも約0.09%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.6%、少なくとも約0.7%、少なくとも約0.8%、少なくとも約0.9%、少なくとも約1.0%、少なくとも約1.5%、少なくとも約2.0%、少なくとも約2.5%、少なくとも約5%、少なくとも約7.5%、少なくとも約10%、少なくとも約12.5%であるか、またはこれより大きい。DMSOは、水の他に1つまたは複数の他の不純物を含有してもよいことが理解されよう。
【0054】
[00051]ある実施形態では、組成物は、米国薬局方(UPS)グレードのDMSO、活性医薬品成分(API)グレードのDMSO、分析グレードのDMSO、および米国化学会(ACS)分光分析用グレードのDMSOのうちの少なくとも1種を含む。ある実施形態では、組成物は、KF滴定により<0.1%水、および無水基準で決定される>99.9%を有するDMSOを含む。
【0055】
[00052]上で説明されている通り、組成物中のDMSOのパーセント量は、特に示さない限り、該組成物の1つまたは複数の他の構成成分に関して、重量対重量比(w/w)で記載される。ある実施形態では、重量%DMSOは、PVP−Iの添加後の、重量パーセントの残量である。非限定例として、組成物は、1重量パーセント(1%)のPVP−Iおよび99重量パーセント(99%)のDMSOを含むことができる。上述の例において、本組成物のDMSO構成成分は、完全に無水、実質的に無水であってもよく、または測定可能な程度に水を含有していてもよい。ある実施形態では、重量パーセントDMSOは、PVP−Iおよび任意の他の構成成分(例えば、共溶媒、水、追加の活性成分など)の添加後の重量パーセントの残量である。ある実施形態では、重量パーセントDMSOは、ヨードフォア、および存在する場合、他の構成成分の添加後の、重量パーセントの残量である。ある実施形態では、組成物中の重量パーセント浸透剤は、ヨードフォア、および存在する場合、他の構成成分の添加後の、重量パーセントの残量である。
【0056】
[00053]ある実施形態では、組成物は、30%〜99.99%の範囲のDMSOを含む。ある実施形態では、組成物は、35%〜99.99%の範囲のDMSOを含む。別の実施形態では、組成物は、40%〜99.9%の範囲のDMSOを含む。別の実施形態では、組成物は、30%〜97%の範囲のDMSOを含む。別の実施形態では、組成物は、35%〜75%の範囲のDMSOを含む。別の実施形態では、組成物は、40%〜50%の範囲のDMSOを含む。別の実施形態では、組成物は、40%〜49%の範囲のDMSOを含む。別の実施形態では、組成物は、43%〜45%の範囲のDMSOを含む。別の実施形態は、組成物は、44%のDMSOを含む。
【0057】
[00054]ある実施形態では、組成物は、2%未満の範囲のゲル化剤を含む。ある実施形態では、組成物は、0.10%から2.0%未満の範囲のゲル化剤を含む。別の実施形態では、組成物は、0.25%〜1.75%の範囲のゲル化剤を含む。別の実施形態では、組成物は、0.5%〜1.6%の範囲のゲル化剤を含む。別の実施形態では、組成物は、約0.25%〜約1.95%のゲル化剤を含む。別の実施形態では、組成物は、1.75%のゲル化剤を含む。
【0058】
[00055]ある実施形態では、組成物は、1%〜99.99%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、5%〜99.9%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、10%〜99.9%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、20%〜99.9%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、30%〜99.9%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、40%〜99.9%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、50%〜99.9%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、60%〜99.9%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、70%〜99.9%の範囲の共溶媒を含む。別の実施形態では、組成物は、80%〜99.9%の範囲の共溶媒を含み、さらに別の実施形態では、90%から99.9%の共溶媒を含む。
【0059】
[00056]ある実施形態では、組成物は、約1%の共溶媒を含む。他の実施形態では、組成物は、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%の共溶媒を含む。
【0060】
[00057]共溶媒の例は、以下に限定されないが、アルコール、シリコーン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ワセリン、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロースおよびそれらの組合せを含む。ある実施形態では、共溶媒は、ポリエチレングリコールである。
【0061】
[00058]ある実施形態では、組成物は、約0.01%〜99.99%の範囲でDMSOを含み、0.01%〜約99.99%の範囲で少なくとも1つの浸透剤をさらに含む。ある実施形態では、組成物は、DMSOを含み、約0.1%〜約50%の範囲で少なくとも1つの浸透剤をさらに含む。別の実施形態では、組成物は、DMSOを含み、約5%〜約50%の範囲で少なくとも1つの浸透剤をさらに含む。別の実施形態では、組成物は、DMSOを含み、約10%〜約99%の範囲で少なくとも1つの浸透剤をさらに含む。ある実施形態では、組成物は、DMSO、少なくとも1つの共溶媒、および少なくとも1つの浸透剤を含む。ある実施形態では、共溶媒は、浸透剤でもある。
【0062】
[00059]ある実施形態では、可能な場合、組成物は、該組成物中に化合物の薬学的に許容される塩を含んでもよい。ある実施形態では、組成物は、本化合物の酸付加塩を含む。ある実施形態では、組成物は、本化合物の塩基付加塩を含む。本明細書で使用する場合、薬学的に許容される塩または複合体という用語は、親化合物の所望の生物活性を保持する塩または複合体(例えば、溶媒和物、多形)を指し、存在する場合、最小限の望ましくない毒性学的作用を示す。
【0063】
[00060]様々な実施形態では、本明細書において包含される組成物は、以下に限定されないが、保護剤、吸着剤、粘滑剤(demulcent)、エモリエント(emollient)、保存剤、抗酸化剤、保湿剤、緩衝化剤、可溶化剤、皮膚浸透剤および界面活性剤を含めた、参照により本明細書に組み込まれている、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 866−885頁(Alfonso R.Gennaro編 第19版 1995年);Ghosh、T.K.ら、TRANSDERMAL AND TOPICAL DRUG DELIVERY SYSTEMS(1997年)に列挙されているものなどの、薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0064】
[00061]保護剤および吸着剤には、以下に限定されないが、粉剤、ステアリン酸亜鉛、コロジオン、ジメチコン、シリコーン、炭酸亜鉛、アロエベラゲルおよび他のアロエ製品、ビタミンEオイル、アラントイン、グリセリン、ワセリンおよび酸化亜鉛が含まれる。
【0065】
[00062]粘滑剤には、以下に限定されないが、ベンゾイン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールが含まれる。
[00063]エモリエントには、以下に限定されないが、動物および植物の脂肪および油、ミリスチルアルコール、ミョウバンおよび酢酸アルミニウムが含まれる。
【0066】
[00064]保存剤には、以下に限定されないが、二酸化塩素、第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セチルイミド、デカリニウム塩化物および塩化セチルピリジニウムなど;水銀剤、例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀およびチメロサールなど;アルコール剤、例えば、クロロブタノール、フェニルエチルアルコールおよびベンジルアルコール;抗細菌エステル、例えば、パラヒドロキシ安息香酸のエステル;および他の抗微生物剤、例えば、クロルヘキシジン、クロロクレゾール、安息香酸およびポリミキシンなどが含まれる。
【0067】
[00065]好適な抗酸化剤には、以下に限定されないが、アスコルビン酸およびそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、ならびにEDTAおよびクエン酸のようなキレート剤が含まれる。
【0068】
[00066]適切な保湿剤には、以下に限定されないが、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素およびプロピレングリコールが含まれる。
[00067]好適な可溶剤には、以下に限定されないが、第四級塩化アンモニウム、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチンおよびポリソルベートが含まれる。
【0069】
[00068]好適な皮膚浸透剤には、以下に限定されないが、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクチルフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N−デシルメチスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセロールおよびモノオレイン酸プロピレングリコール);およびN−メチルピロリドンが含まれる。
【0070】
[00069]ある実施形態では、組成物は、PVP−I、DMSOおよびポリエチレングリコールおよびゲル化剤を含む。ある実施形態では、組成物は、0.25%のPVP−I、44%のDMSO、10%のポリエチレングリコールおよび1.75%のゲル化剤を含む。ある実施形態では、組成物は、PVP−I、DMSO、ヒドロキシエチルセルロース、プロピレングリコールおよびグリセリンを含む。ある実施形態では、組成物は、2%のPVP−I、約40%のDMSOおよび10〜33%のプロピレングリコール、ゲル化剤および少なくとも1つの追加の不活性成分を含む。
【0071】
[00070]一実施形態では、本発明は、40〜50%(w/w)のDMSO、0.25%〜0.55%のPVP−I(w/w)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースおよびこれらの塩を含む。
【0072】
[00071]一実施形態では、本組成物は溶液であり、半固体、例えば、ゲル、軟膏剤またはクリーム剤;チンキ剤;フォーム;エアゾルまたは別の一般的な医薬品剤形として製剤化することができる。一実施形態では、本組成物は、pHが4.5未満のヒドロキシエチルセルロースなどの1.75%のゲルに溶解されている0.25%のPVP−I/44%のDMSO溶液である。
【0073】
安定性
A.クロモフォアの可視的喪失
[00072]ポビドン−ヨード、DMSOおよびゲル化剤成分の様々な量および組合せを含む局所眼科用組成物が調製されて、本主題の組成物についての予期不能な安定性を実証し、そしてゲル製剤のpHを低下させることにより、類似のPVP−I/DMSO組成物の場合に可能であることが既に教示されているものよりも低い濃度のゲル化剤の安定化が可能になるという驚くべき結果が示された。
【0074】
[00073]高度に不安定な、したがって、局所眼科用調製物として好適または有用ではない組成物は、該調製物を作製して約72時間以内に、色調を失い、無色に見えることになろう。無色状態は、ポビドン−ヨード出発原料中のヨウ素の量と比較すると、滴定可能なヨウ素が失われた結果である。調製の72時間内に無色となる組成物の場合、滴定可能なヨウ素のさらなる確証試験は、必要ではない。
【0075】
[00074]組成物は、0.15%、0.25%および0.5%のポビドン−ヨードを用いて調製された。これらの組成物の場合、DMSOは、0%の量で、または30%〜90%の量で供給された。DMSOを含む特定の組成物は、44%のDMSOを含んで調製された。ゲル化剤は、0%、0.25%、0.5%、0.75%、1.0%、1.25%、1.5%、1.75%および1.95%の量で供給された。
【0076】
[00075]水性でPVP−Iおよび水だけを含み、0%DMSOおよび0%ゲル化剤の、調製された組成物はすべて、室温で72時間以内にこれらの色調のほとんどを実質的に失うか、または完全に無色となり、さらなる使用のために安定であるとは決定されなかった。
【0077】
[00076]0.15%のポビドン−ヨードおよび30%〜90%の範囲内のDMSOを含む調製物に関し、この組成物は、ゲル化剤が0.75%で供給される場合、色調を保持しており、安定であった。72時間またはそれより長く色調を保持した組成物の長期安定性は、ポビドン−ヨードの出発原料と比較する、滴定可能なヨウ素に関する修正USPアッセイにより確認した。本発明の安定な組成物は、室温で保管され、光から遮蔽されない場合、2週までの間、ポビドン−ヨード出発原料中の滴定可能なヨウ素の少なくとも85%を保持した。
【0078】
[00077]0.25%のポビドン−ヨードおよび30%〜90%の範囲内のDMSOを含む調製物に関し、この組成物は、ゲル化剤の量が0.5%以上である場合、色調を保持しており、安定であった。72時間またはそれより長く色調を保持した組成物の長期安定性は、ポビドン−ヨードの出発原料と比較する、滴定可能なヨウ素に関する修正USPアッセイにより確認した。本発明の安定な組成物は、保管すると、1か月までの間、ポビドン−ヨード出発原料中の滴定可能なヨウ素の少なくとも85%を保持した。
【0079】
[00078]0.5%のポビドン−ヨードおよび30%〜90%の範囲内のDMSOを含む調製物に関し、この組成物は、ゲル化剤の量が0.75%以上である場合、色調を保持しており、安定であった。72時間またはそれより長く色調を維持した組成物の長期安定性は、ポビドン−ヨードの出発原料と比べる、滴定可能なヨウ素に関する修正USPアッセイにより確認した。本発明の安定な組成物は、室温で、1か月までの間、ポビドン−ヨード出発原料中の滴定可能なヨウ素の少なくとも85%を保持した。
【0080】
[00079]これらの実験結果は、特定の範囲内の量、つまり、0.15%〜0.5%のポビドン−ヨード、30%〜90%のDMSOおよび0.5%〜1.75%のゲル化剤という成分の特定の組合せの安定性は安定となる一方、特定の範囲の量のこれらの特定の成分から逸脱した組成物[具体的に、少なくとも0.5%(w/w)のゲル化剤を含有していないもの]は、不安定となることを実証している。好ましいゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロースポリマーである。最も好ましいゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)である。
【0081】
[00080]選択された組成物を使用する安定性実験の結果を示す表が、以下に提示されている:
【0098】
[00081]一実施形態では、本製剤は、室温25℃において、少なくとも6か月間、12か月間、18か月間および24か月間、安定である。安定性は、最終PVP−I濃度が、ポビドン−ヨードに関するUSP滴定方法に準拠して、ラベルの濃度の少なくとも85%〜120%と定義される。
【0099】
[00082]一実施形態では、本製剤は、温度2〜8℃において、少なくとも6か月間、12か月間、18か月間および24か月間、安定である。安定性は、最終PVP−I濃度が、USP法に準拠して、ラベルの濃度の少なくとも85〜120%と定義される(例えば、ラベルが、0.2%のヨウ素をもたらす2%PVP−Iである場合、90%は、0.18%元素性ヨウ素になるであろう)。
【0100】
[00083]一実施形態では、本製剤は、室温−10〜−25℃において、少なくとも6か月間、12か月間、18か月間および24か月間、安定である。安定性は、最終PVP−I濃度が、USP法に準拠して、ラベルの濃度の少なくとも85〜120%と定義される(例えば、ラベルが、0.2%のヨウ素をもたらす2%PVP−Iである場合、90%は、0.18%元素性ヨウ素になるであろう)。
【0101】
[00084]一実施形態では、本製剤は、室温15〜30℃において、少なくとも6か月間、12か月間、18か月間および24か月間、安定である。安定性は、最終PVP−I濃度が、USP法に準拠して、ラベルの濃度の少なくとも85〜120%と定義される(例えば、ラベルが、0.2%のヨウ素をもたらす2%PVP−Iである場合、90%は、0.18%元素性ヨウ素になるであろう)。
【0102】
[00085]一実施形態では、本製剤は、室温40℃において、少なくとも1か月間、3か月間、6か月間、12か月間、18か月間および24か月間、安定である。安定性は、最終PVP−I濃度が、USP法に準拠して、ラベルの濃度の少なくとも85〜120%と定義される(例えば、ラベルが、0.2%のヨウ素をもたらす2%PVP−Iである場合、90%は、0.18%元素性ヨウ素になるであろう)。
【0103】
調製および使用の方法
[00086]PVP−I水溶液は、長期間にわたり低いPVP−I濃度で安定化させるのが困難であることが当業者に公知である。非限定例として、約0.6%(w/w、水性)未満のPVP−Iの濃度では、PVP−I水溶液は、急速に活性を失い(decay)、ヨウ素化されている構成物とヨウ素を含まない構成物からなる複合体混合物をもたらす。
【0104】
[00087]本明細書に記載されている通り、驚くべきことに、本明細書において説明されている開示により包含される、非プロトン性DMSO溶媒系において、0.15%という低いPVP−Iゲル溶液を容易に調製することができ、長期間、安定な組成物として維持することができることが見出された。同様に、既に記載されている通り、水性PVP−Iおよび十分な(約2%以上の)ゲル化剤から調製された水和化DMSO溶液は、室温で少なくとも12か月間にわたり、PVP−I構成成分の安定性の向上を実証する。驚くべきことに、初めて、そして従来技術の教示に反して、ゲル化剤、具体的にはHECの酸性溶液を用いて、0.5%という少ないゲル化剤HECが用いられる場合でさえも、低い濃度のPVP−I/DMSOゲルを安定化することができることが、本出願において実証された。
【0105】
[00088]ある実施形態では、組成物は、DMSOを含むまたはDMSOからなる組成物中に溶解または懸濁している、乾燥固体または乾燥粉末PVP−Iを含む。別の実施形態では、PVP−Iを含むまたはこれからなる水性調製物にDMSOを添加する。
【0106】
[00089] 当業者は、本明細書における開示に基づいて、どのように組成物を調製し、本明細書において包含されている組成物のいくつかある可能な構成成分のなかで特に、ヨウ素、ヨードフォアおよびDMSOの所望量に到達するかを、過度の実験なしに理解するであろう。
【0107】
[00090]非限定例として、治療的に有効な医薬組成物は、DMSOに溶解または懸濁した固体PVP−Iを使用して調製される。一態様では、本組成物は無水である。一態様では、本組成物は実質的に無水である。別の実施形態では、DMSOは、PVP−Iの水溶液に添加されて、治療的に有効な医薬組成物を調製することができる。ある実施形態では、DMSOは、共溶媒として、水および他の非水性共溶媒と共に30%〜99%の範囲で使用される。ある実施形態では、製剤は、1つまたは複数の賦形剤を含む。非限定例として、賦形剤には、以下に限定されないが、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸水素二ナトリウム無水物および水、ならびに当業者に公知の他のものが含まれる。
【0108】
[00091]ある実施形態では、組成物は、PVP−I(w/v、水性)を純粋な十分な量のDMSOに添加して、DMSOを含む、0.15〜1.5%のPVP−I(w/w)の得られた溶液をもたらすことにより調製される。別の実施形態では、組成物は、純粋な十分な量のDMSO中に固体PVP−Iを溶解して、溶媒としてDMSOを含む、0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%または0.5%のPVP−I(w/w)組成物のいずれかを得ることにより調製される。さらに別の実施形態では、組成物は、純粋な十分な量のDMSO中に固体PVP−Iを溶解して、本明細書において説明されている、記載されているおよび/または包含される任意の組成物を得ることにより調製される。水性PVP−I(当技術分野において一般に使用される、および/または公知の賦形剤を含むおよび含まない)およびDMSOを含む同様の組成物は、10%PVP−Iの保存水溶液および純粋なDMSOから調製することができる。ゲル化剤は、本組成物の最終濃度の2.0%(w/w)未満まで、好ましくは約0.5%から1.75%、約0.5%から1.0%、および1.5%の量で添加することができる。本組成物の酸性化は、以下に限定されないが、HClを含めた、一般に用いられる酸性化剤の任意の数を添加することにより達成することができる。
【0109】
[00092]しかし、適切な希釈および調節が行われて、所望の最終PVP−I濃度をもたらす場合、固体または液体のPVP−Iの出発組成物のいずれかが使用され得ることが当業者により理解されよう。同様に、適切な希釈および調節が行われて、所望の最終ヨードフォアまたは元素性ヨウ素濃度をそれぞれもたらす場合、ヨードフォアまたは元素性ヨウ素の任意の出発組成物が使用され得る。
【0110】
[00093]当技術分野における技能に鑑みて、本明細書に説明されている開示に基づくと、本明細書に包含される化合物および組成物の具体的な投与量は、臨床的および/または薬物動態実験により経験的に決定することができること、およびこのような投与量は、予め指定されている有効性および/または毒性基準に従って調整され得ることが理解されよう。任意の特定の患者に対する具体的な投与量および処置レジメンは、用いられる具体的な化合物の活性、患者の特徴、薬物組合せ、治療医師の判断、ならびに処置される特定の疾患または状態の性質および重症度を含めた、様々な因子に依存することがやはり理解されよう。
【0111】
[00094]ある実施形態では、治療組成物は、剤形において使用するための1つまたは複数の化合物を最適化することにより調製され、ここで、当該剤型は、当該化合物に典型的に使用されるものとは異なる。ある実施形態では、典型的には局所剤形で投与されない化合物が、局所剤形において使用するために開発される。このような開発に必要な化学的および生物学的アッセイは、当業者に公知である。本明細書における開示は、このような化合物およびこのような化合物を含む組成物を調製する方法に関する指針を当業者に提供する。
【0112】
[00095]ある実施形態では、微生物のコロニー形成および/または感染により合併症を受けた眼表面の疾患を有する対象を処置する方法は、眼表面の疾患を処置するための、本明細書に説明されている、記載されているおよび/または包含されている組成物の投与を含み、この眼表面の疾患の処置は、感染の進行を予防するまたは減速させる、感染の蔓延を予防する、感染の少なくとも一部を撲滅する、および感染の全部を撲滅することのうちの少なくとも1つを含む。
【0113】
[00096]ある実施形態では、治療組成物は、1日1回のスケジュールで投与される。ある実施形態では、治療組成物は、1日2回、投与される。典型的には、本発明のゲル組成物は、眼の上、眼瞼の下、または処置される眼の眼周囲領域において、約1cm〜約5cmの長さ、1cmまでの直径を有するリボンとして投与することができる。
【0114】
[00097]ある実施形態では、治療組成物は、1日3回、1日4回、1日5回またはそれを超える回数で投与される。ある実施形態では、治療組成物は、1日1回より少ない頻度で投与される。ある実施形態では、治療組成物は、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回、または7日ごとに1回投与される。ある実施形態では、治療組成物は、1週間に1回より少ない頻度で投与される。ある実施形態では、治療組成物は、1か月に1回、投与される。実施形態では、治療組成物は、1か月に2回、投与される。
【0115】
[00098]ある実施形態では、治療的投与レジメンは、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、または少なくとも7日間、継続される。ある実施形態では、治療的投与レジメンは、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも14週間、または少なくとも16週間、継続される。ある実施形態では、治療的投与レジメンは、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも4か月間、少なくとも5か月間、少なくとも6か月間、少なくとも9か月間、または少なくとも12か月間、継続される。
【0116】
[00099]本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。一側面では、以下の実施例は、本開示によって包含される組成物および方法を使用した、特定された状態の有効な、および/または成功を収めた処置を実証する。本発明の特徴に基づいた変形は、当業者の技術の範囲内にあること、および本発明の範囲は、実施例により限定されないことを認識すべきである。本発明の範囲を適切に決定するため、関係者は、本願の請求項、およびそれらの均等物を考慮すべきである。国際特許出願PCT/US2012/036942および同PCT/US2012/065298の全開示は、あたかも本明細書において十分に説明されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書における引用はすべて、参照により組み込まれており、特に明確に明記されていない限り、百分率はすべて重量/重量基準である。
【0117】
[000100]本発明について記載されている有用な組成物の追加例には、クリーム、ワセリンバルム、軟膏、スプレーの製剤、および眼表面への局所投与に好適な当業者に周知の他の製剤が含まれ、または追加例は「眼科用に許容される」組成物である。
【実施例】
【0118】
[000101]本明細書において提供されている実施例および記載は、記載されている本発明の全範囲および主旨の範囲内でもたらされる保護の広さを限定するものとして意図されず、かつ限定しない。
【0119】
[000102]本発明による組成物を使用する臨床的処置の結果は、以下の表14Aに示される:
【0120】
【表17-1】
【0121】
【表17-2】
【0122】
処置例
[000103]以下は、本発明の組成物を使用して行うことができる臨床的処置の例であり、このような処置から生じ得る、男性および女性の両方の、若年、中年および高齢の患者における陽性臨床応答を例示しており、それらは、従来技術を鑑みると予測できなかったであろうものであるが、本開示により開発および試験された組成物により実証された安定性および効力に基づいて予期されるものである。
【0123】
(1)
ある82歳の女性は、明らかな、両眼の不快感、疼痛、赤みおよび漏出を呈し得た。検眼鏡検査法により、軽度の結膜浮腫および漏出を伴う、両眼の2+の紅斑性結膜であることが明らかになった。眼瞼を外側にめくり返すと、乳頭状反応と濾胞性反応が混在した反応を示した。この患者は、細菌性結膜炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.5%のHECと0.25%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物が7日間、1日2回、投与された。3日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。5日目までに、残った炎症は軽減し、視検法では、目立つものはなかった。この患者は、完全に症状緩和したことを認め、患者は正常な機能を取り戻した。
【0124】
(2)
ある87歳の女性は、再発性の、明らかな、両眼の不快感、疼痛、赤みおよび緑色の漏出を呈した。この女性は、以前にICUに入院していたことがあり、ここで、多剤耐性MRSA眼感染の診断を受けた。検眼鏡検査法により、軽度の結膜浮腫および漏出を伴う、両眼の4+の紅斑性結膜であることが明らかになった。眼瞼検査は、眼瞼浮腫および紅斑を伴う、よくある混合眼瞼炎に陽性であった。この患者は、MRSA、すなわち、多剤耐性の細菌性眼瞼結膜炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.0%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与される。この組成物が10日間、1日2回、投与された。3日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。6日目までに、眼瞼浮腫および紅斑は、軽減し始めた。8日目に、残った炎症が解消し、視検法では、目立つものはなかった。この患者は完全に症状緩和したと認め、正常な機能を取り戻し、再発はない。
【0125】
(3)
ある77歳の男性は、明らかな、両眼の不快感、かゆみ、赤みおよび眼瞼の炎症を呈した。検眼鏡検査法により、結膜浮腫または漏出を伴わない、両眼の微かな紅斑性結膜であることが明らかになった。眼瞼検査により、紅斑および非円筒状コラレット(collarettes)を伴う、3+の眼瞼浮腫であることが明らかになった。2+のマイボーム腺の濃縮および閉塞(plugging)があった。この患者は、混合前部および後部眼瞼炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、0.75%のHECと0.25%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、眼瞼縁の下側の感染眼瞼の皮膚に直接、投与された。この組成物が14日間、1日2回、投与された。5日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。10日目までに、後部眼瞼マイバム(meibum)の粘性が低下し、閉塞が解消した。2週間の処置サイクルの終わりに、残った炎症は軽減し、視検法では、目立つものはなかった。この患者は、完全な症状緩和があることを認め、正常機能を取り戻した。
【0126】
(4)
ある72歳の女性は、明らかな、両眼の不快感、かゆみ、赤みおよび眼瞼の炎症を呈した。この女性は、過去において眼瞼炎の処置に上手くいかなかった。検眼鏡検査法により、結膜浮腫または漏出を伴わない、両眼の微かな紅斑性結膜であることが明らかになった。眼瞼検査により、紅斑および睫毛の底部の円筒状コラレットを伴う、3+の眼瞼浮腫であることが明らかになった。25x拡大下における、ウェットマウントプレパレート(wet mount prep)により、ニキビダニ(Demodex folliculorum)の存在が明らかになった。この患者は、ニキビダニによる眼瞼炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.75%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、眼瞼縁の下側の感染眼瞼の皮膚に直接、投与された。この組成物が14日間、1日2回、投与された。5日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。7日目までに、円筒状コラレットはもはや存在しない。2週間の処置サイクルの終わりに、残った炎症は軽減し、視検法では、目立つものはなかった。この患者は、完全に症状緩和したことを認め、正常機能を取り戻した。
【0127】
(5)
ある68歳の男性は、明らかな、両眼の不快感、かゆみ、痂皮形成、赤みおよび眼瞼の炎症を呈した。この男性は、鼻瘤および断続的な顔面紅潮も呈した。検眼鏡検査法により、結膜浮腫または漏出を伴わない、両眼の微かな紅斑性結膜であることが明らかになった。眼瞼検査により、紅斑および鱗状物を伴う、2+の眼瞼浮腫であることが明らかになった。蛇行性の後部眼瞼縁毛細管拡張を伴う、2+のマイボーム腺の閉塞も呈した。この患者は、酒さ眼瞼炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.25%のHECと0.25%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、感染眼瞼の皮膚に直接、投与された。この組成物が14日間、1日2回、投与された。5日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。10日目までに、後部眼瞼マイバムの粘着が低下し、閉塞が解消した。2週間の処置サイクルの終わりに、残った炎症は軽減し、眼瞼縁の毛細管拡張はかなり弱化した。視検法では、特に、目立つものはなかった。この患者は、症状緩和があることを認め、正常機能を取り戻した。
【0128】
(6)
ある52歳の男性は、明らかな、両眼の不快感、疼痛、赤みおよび濁りのない漏出を呈した。この男性は、流行性結膜炎と接触した、彼の家族内の他の者との最近の接触を認めている。検眼鏡検査法により、軽度の結膜浮腫および漏出を伴う、両眼の紅斑性結膜であることが明らかになった。角膜上皮下浸潤または偽膜はない。瞼を外側にめくり返すと、よくある濾胞性反応であることが明らかになり、耳介前方の節が触知可能である。この患者は、ウイルス性結膜炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.75%のHECと0.25%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物は10日間、1日2回、投与された。3日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。5日目までに、残った炎症は軽減し、視検法では、目立つものはなかった。この患者は、ウイルスの排出機会を低下させるため、7日間の全期間、投薬を続ける。この男性は、完全な症状緩和であることを認め、正常な機能を取り戻した。
【0129】
(7)
ある27歳の女性は、明らかな、両眼の不快感、疼痛、かゆみ、赤みおよび濁りのない漏出を呈した。この女性は、流行性結膜炎と接触した、彼女の家族内の他の者との最近の接触を認めている。検眼鏡検査法により、軽度の結膜浮腫および漏出を伴う、両眼の紅斑性結膜であることが明らかになった。角膜上皮下浸潤が存在し、下側の眼瞼円蓋において早期偽膜が可視化された。瞼を外側にめくり返すと、よくある濾胞性反応であるのが明らかであり、耳介前方の節が触知可能であった。この患者は、アデノウイルス感染に続発する流行性角結膜炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.25%のHECと0.25%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物は10日間、1日2回、投与された。3日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。5日目までに、残った炎症は軽減し、視検法では、目立つものはなかった。この患者は、ウイルスの排出機会を低下させるため、7日間の全期間、投薬を続ける。この患者は、完全な症状緩和したことを認め、正常な機能を取り戻した。
【0130】
(8)
ある35歳の男性は、眼の中に植物性物質が当たった後、明らかな、片眼の不快感、赤みおよび漏出を呈した。検眼鏡検査法により、軽度の結膜浮腫および漏出を伴う、2+の紅斑性結膜であることが明らかになった。角膜検査は、浸潤を伴う染色2×2mm角膜潰瘍化に陽性となり、円鋸歯状のそぎ端(crenate, feathered edges)を示した。角膜培養物により、糸状菌の成長が明らかになった。この患者は、外傷に関連する真菌による角膜潰瘍の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.75%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物が1か月、1日4回、投与された。5日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。2週目までに、角膜浸潤が縮小し始め、角膜は再上皮形成し、辺縁白色細胞は存在しない。3週間の終わりに、小さなピンポイントの浸潤が依然として存在し、この月の終わりまでに、角膜は濁りがなくなり、中央部にコンパクトになり、不活性瘢痕が依然として存在している。残った炎症はすべて軽減し、視検法では、目立つものはなかった。この患者は、完全な症状緩和であることを認め、正常機能を取り戻した。
【0131】
(9)
ある22歳の女性は、コンタクトレンズで一晩寝た後に、明らかな、片眼の不快感、赤みおよび漏出を呈した。検眼鏡検査法により、軽度の結膜浮腫および漏出を伴う、2+の紅斑性結膜であることが明らかになった。角膜検査は、浸潤、膿および25%の間質菲薄化を伴う、染色3×2mm角膜潰瘍化に陽性となった。角膜培養物により、Pseudomonas spp.の増殖が明らかとなった。この患者は、細菌性の角膜潰瘍の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、0.75%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物は3週間、1日4回、投与された。5日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。2週目までに、角膜浸潤が縮小し始め、角膜は再上皮形成し、辺縁白色細胞は存在しない。3週間の終わりに、角膜は濁りがなくなり、中央にコンパクトとなり、以前の潰瘍の領域に不活性な瘢痕が存在した。視検法では、特に、目立つものはなかった。この患者は、完全な症状緩和であることを認め、正常機能を取り戻した。
【0132】
(10)
ある27歳の女性は、コンタクトレンズで一晩寝て、疑わしいコンタクトレンズ溶液を使用した後に、明らかな、片眼の不快感、赤みおよび漏出を呈した。検眼鏡検査法により、軽度の結膜浮腫および漏出を伴う、2+の紅斑性結膜であることが明らかになった。角膜検査は、検査に対して不釣り合いな疼痛を伴う、環状潰瘍に陽性であった。角膜培養物により、Acanthamoeba spp.の増殖が明らかとなった。この患者は、アカントアメーバによる角膜潰瘍の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.50%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物が3週間、1日4回、投与された。5日間の処置後、結膜浮腫と紅斑の両方が、改善し始めた。2週目までに、角膜環状浸潤が縮小し始め、角膜は再上皮形成し、周辺の辺縁白色細胞は存在しない。3週間の終わりに、角膜は濁りがなくなり、中央にコンパクトとなった。視検法では、特に目立つものはなかった。この患者は、完全な症状緩和であることを認め、正常機能を取り戻した。
【0133】
(11)
ある45歳の男性のビジネス専門家は、明らかな、片眼の不快感、疼痛および赤みを呈した。この患者は、数年前に、類似のエピソードを発生したことを記憶している。検眼鏡検査法により、2+の紅斑性結膜であることが明らかになった。角膜検査は、染色樹枝状角膜潰瘍化に陽性であった。この患者は、単純ヘルペスウイルスの上皮角膜炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.25%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物は、2週間、1日4回、投与された。5日間の処置の後、眼の紅斑は改善し始め、樹状突起が弱化した。2週目までに、樹状突起は完全に解消され、角膜は、再上皮形成され、濁りがなくなりコンパクトとなった。視検法では、特に、目立つものはなかった。この患者は、完全な症状緩和であることを認め、正常機能を取り戻した。
【0134】
(12)
ある81歳の女性は、明らかな、片眼の不快感、疼痛、赤みおよび視力の低下を呈した。目視検査時に、顔面および頭皮の両方を含む、剥皮した皮膚発疹が存在した。検眼鏡検査法により、漏出を伴わない2+の紅斑性結膜が明らかになった。角膜検査は、盛り上がりのある上皮樹枝状(dendritiform)病変に陽性であった。この患者は、眼部帯状疱疹の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.00%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物が2週間、1日4回、投与された。5日間の処置の後、結膜紅斑は改善し始め、樹枝状病変は弱化した。2週目までに、これらの病変は完全に解消され、角膜は、再上皮形成され、濁りがなくなりコンパクトとなった。視検法では、特に、目立つものはなかった。この患者は、完全な症状緩和であることを認め、正常機能を取り戻した。
【0135】
(13)
ある68歳の女性は、明らかな片眼の不快感、疼痛および赤みを呈した。この女性は、数年前に、類似のエピソードを発生したことを記憶しており、眼のヘルペス感染の病歴を有していると述べている。検眼鏡検査法により、漏出を伴わない2+の紅斑性結膜が明らかになった。角膜検査により、無傷の角膜上皮であることが明らかになったが、角膜基質は、基礎となる角膜後面沈着物を貨幣状に呈する2+浮腫を示す。この患者は、単純ヘルペスウイルスによる間質性角膜炎および内皮性角膜炎の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、0.75%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物が2週間、1日4回、投与された。5日間の処置の後、眼の紅斑は改善し始め、間質性浮腫が後退し始めた。2週目までに、内皮の変化が反転し、角膜後面沈着物はもはや存在しない。視検法では、特に、目立つものはなかった。この患者は、完全な症状緩和であることを認め、正常機能を取り戻した。
【0136】
(14)
ある26歳の女性は、明らかな、両眼の不快感、かゆみ、赤みおよび眼瞼の炎症を呈した。この女性は、HIVの既往歴を認めており、免疫不全であった。検眼鏡検査法により、結膜浮腫または漏出を伴わない、両眼の微かな紅斑性結膜があることが明らかになった。眼瞼検査により、紅斑、および下眼瞼の両方に存在する中心臍窩を伴う複数のドーム型丘疹を有する1+の眼瞼浮腫が明らかになった。この患者は、伝染性軟属腫の診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.50%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、眼瞼縁の下側の感染眼瞼の皮膚に直接、投与された。この組成物が14日間、1日2回、投与された。5日間の処置後、結膜紅斑と眼瞼紅斑の両方が、改善し始めた。8日目までに、臍窩を有した眼瞼丘疹が正常に戻り、処置周期の終わりに、これらはもはや存在しない。眼試験の残りでは、目立つものはなく、患者は完全な症状緩和であることを認めた。
【0137】
(15)
ある77歳の男性は、縁部近くに位置した片側の腫瘤を呈した。検眼鏡検査法により、ローズベンガルにより染色される結膜と角膜の両方を包含する、白板の成長を伴う充血結膜が明らかとなった。生検により、カルチノーマインサイチュ(carcinoma in situ)に一致する、角膜および結膜の上皮新生物が明らかになった。この患者は、CINの診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、1.5%のHECと0.25%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物が3か月間、1日4回、投与された。1週間の処置後、紅斑が改善し始めた。1か月目までに、腫瘤は、サイズがかなり低下した。2か月目までに、不規則な結膜の残存領域が数カ所しか存在しない。3か月目までに、結膜は濁りがなくなり、視検法では目立つものはなかった。この患者は、完全な症状緩和であることを認め、正常機能を取り戻した。処置後の生検は、新生物に陰性であった。
【0138】
(16)
ある66歳の女性は、明らかな、両眼の不快感、疼痛、赤みおよび異物感覚を呈した。検眼鏡検査法により、斑点状の上皮びらんおよびSchirmer試験の低下を伴う、両眼の+1の紅斑性結膜であることが明らかになった。眼瞼検査は、正常範囲内であった。この患者は、水分が欠乏したドライアイの診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、0.25%のHECと0.25%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物が1か月、1日2回、投与された。5日間の処置の後、結膜紅斑は改善し始め、患者の症状も改善し始めた。2週目までに、角膜の斑点状の上皮びらんが解消した。1か月時に、Schirmerの試験は正常になり、この患者は、症状の完全な解消を経験した。
【0139】
(17)
ある72歳の女性は、明らかな、両眼の不快感、疼痛、赤みおよび異物感覚を呈した。検眼鏡検査法により、斑点状の上皮びらんおよび正常なSchirmer試験および涙膜破壊時間の低下を伴い、両眼の+1の紅斑性結膜であることが明らかになった。眼瞼検査により、濃縮を伴う軽度のマイボーム腺キャッピングに陽性であった。この患者は、蒸発性ドライアイの診断を受け、投与レジメンが用いられ、こうして、0.50%のHECと0.25%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の感染眼の表面に直接、投与された。この組成物が1か月、1日2回、投与された。5日間の処置の後、結膜紅斑は改善し始め、患者の症状も改善し始めた。2週目までに、角膜の斑点状の上皮びらんが解消した。1か月時に、涙膜破壊試験は正常化し、この患者は、症状の完全な解消を経験した。
【0140】
(18)
滲出型(wet)黄斑変性を有するある86歳の男性は、抗VEGF剤での硝子体内注射のため、この男性の眼科医を訪れた。検眼鏡検査法により、両眼の軽度の眼瞼炎であることが明らかになり、後眼部は、脈絡膜新生血管複合体(choroidal neovascular complex)に陽性であった。眼瞼検査は、正常範囲内であった。この患者は、滲出型黄斑変性の診断を受け、硝子体内注射の前に、眼表面を殺菌するため、投与レジメンが用いられ、こうして、その手順の前に、0.75%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の眼の表面に直接、投与された。これを、眼を上方視、下方視、内転および外転しながら、4回、繰り返した。次に、この手順は、合併症または感染なく行われた。
【0141】
(19)
滲出型黄斑変性を有するある86歳の男性は、眼瞼の腫瘤を除去するため、この男性の眼科医を訪れた。検眼鏡検査法により、軽度の両眼の眼瞼炎、および眼瞼の一部を包含する有茎性(peduculated)新生物があることが明らかになった。患者は、外科的切除が予定されている眼の新生物性腫瘤の診断を受ける。手順の前に、眼瞼、睫毛およびほおを殺菌するため、投与レジメンが用いられ、こうして、1.75%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、眼瞼、睫毛およびほおに直接、投与された。これを、眼を上方視、下方視、内転および外転しながら、2回、繰り返した。次に、この手順は、合併症または感染なしで行われた。
【0142】
(20)
滲出型黄斑変性を有するある89歳の女性は、白内障手術をするため、この女性の眼科医を訪れた。以前の検眼鏡検査法により、軽度の両眼の眼瞼炎および3+の核性硬化内障であることが明らかになった。眼瞼検査は正常範囲内にあった。この患者は、視覚的に深刻な成熟白内障の診断を受け、白内障手術の前に、眼表面を殺菌するため、投与レジメンが用いられ、その手順の前に、0.50%のHECと0.50%のPVP−Iおよび44%のDMSOを含む組成物の約1.27cm(1/2インチ)のリボン剤またはゲル点眼剤が、角膜表面と下眼瞼との間の眼の表面に直接、投与された。これを、眼を上方視、下方視、内転および外転しながら、4回、繰り返した。次に、この手順は、合併症または感染なく行われた。
【0143】
上の記載により、当業者は、現在のところその最良形式と考えられているものを再現して使用することが可能になるが、当業者は、上で提供されている特定の実施形態、方法および実施例の変形、組合せ、誘導体、アナログおよび等価物の存在を理解し、認識するであろう。したがって、本発明は、上記によって制限されるべきではない。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
0.15%〜1.5%のポビドン−ヨード(PVP−I)、
30%〜97%のジメチルスルホキシド(DMSO)、
0.25%から2.0%未満のゲル化剤、および
水または等張性共溶媒
を含む、眼科用に許容される安定なゲル組成物であって、
局所眼科用ゲルであり、4.5未満のpHを有しており、かつさらなる抗炎症薬を含まない、ゲル組成物。
[請求項2]
0.15%〜1.25%のPVP−Iを含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項3]
0.25%〜1.0%のPVP−Iを含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項4]
約0.25%のPVP−Iを含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項5]
約0.50%のPVP−Iを含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項6]
約0.75%のPVP−Iを含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項7]
30%〜70%のDMSOを含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項8]
40%〜49%のDMSOを含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項9]
44%のDMSOを含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項10]
約0.25%のゲル化剤を含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項11]
約0.50%のゲル化剤を含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項12]
約1.0%のゲル化剤を含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項13]
約1.25%のゲル化剤を含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項14]
約1.50%のゲル化剤を含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項15]
1.75%のゲル化剤を含む、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項16]
ゲル化剤がセルロースポリマーである、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項17]
ゲル化剤がヒドロキシエチルセルロース(HEC)である、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項18]
0.25%のPVP−I、
44%のDMSO、
0.25%超および2.0%未満のゲル化剤、および
共溶媒
を含み、
ステロイドを含まず、そしてNSAIDを含まない、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項19]
共溶媒が、水または水性等張溶液である、請求項18に記載の安定なゲル組成物。
[請求項20]
ゲル化剤がセルロースポリマーである、請求項18に記載の安定なゲル組成物。
[請求項21]
セルロースポリマーがヒドロキシエチルセルロース(HEC)である、請求項19に記載の安定なゲル組成物。
[請求項22]
請求項1に記載の安定なゲル組成物であって、当該組成物が局所眼科用調製物であり、各成分が眼科的に許容され、前記眼科用ゲル組成物が、少なくとも72時間、ポビドン−ヨード出発原料中の滴定可能なヨウ素の少なくとも85%を保持する、前記組成物。
[請求項23]
少なくとも1か月間、ポビドン−ヨード出発原料中の滴定可能なヨウ素の少なくとも85%を保持する、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項24]
12か月までの間、ポビドン−ヨード出発原料中の滴定可能なヨウ素の少なくとも85%を保持する、請求項1に記載の安定なゲル組成物。
[請求項25]
眼または眼瞼の感染状態を予防する方法であって、
有効量の請求項1に記載の安定な局所眼科用ゲル組成物を、眼内注射または硝子体内注射を含めた眼の手術または侵襲的手技の前に、眼または眼瞼または眼周囲皮膚表面に適用するステップを含む、方法。
[請求項26]
前記感染状態が、眼瞼炎、結膜炎、角膜潰瘍、細菌性角膜炎、ウイルス性角膜炎、術後眼内炎、および硝子体内注射または前房内注射後の眼内炎からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
[請求項27]
感染状態が、細菌、ニキビダニ、真菌または酵母、およびウイルスからなる群から選択される、1つもしくは複数の感染因子により引き起こされる、またはこれらに関連する、請求項25に記載の方法。
[請求項28]
前記状態が、眼瞼炎、眼瞼結膜炎、結膜炎、角膜炎または感染性角膜潰瘍である、請求項25に記載の方法。
[請求項29]
感染因子がウイルスである、請求項27に記載の方法。
[請求項30]
感染因子がニキビダニである、請求項27に記載の方法。
[請求項31]
眼または眼瞼の感染状態を処置する方法であって、
有効量の請求項1に記載の安定な局所眼科用ゲル組成物を、感染を低減するまたは取り除くために必要に応じて、感染部位に適用するステップ
を含む、方法。
[請求項32]
前記感染状態が、眼瞼炎、結膜炎、角膜潰瘍、細菌性角膜炎、ウイルス性角膜炎、術後眼内炎、および硝子体内注射または前房内注射後の眼内炎からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
[請求項33]
感染状態が、細菌、ニキビダニ、真菌または酵母、およびウイルスからなる群から選択される、1つもしくは複数の感染因子により引き起こされる、またはこれらに関連する、請求項31に記載の方法。
[請求項34]
前記状態が、眼瞼炎、眼瞼結膜炎、結膜炎、角膜炎または感染性角膜潰瘍である、請求項31に記載の方法。
[請求項35]
感染因子がウイルスである、請求項33に記載の方法。
[請求項36]
感染因子がニキビダニである、請求項33に記載の方法。
眼のウイルス感染、ニキビダニ感染、真菌感染および細菌感染の処置において有用な安定な局所製剤、および眼のウイルス感染、ニキビダニ感染、真菌感染および細菌感染を処置するために組成物を使用する方法が記載される。