(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷感剤及び溶媒を含有する冷感剤溶液を含浸させた吸収性シートで構成される層が中間層として介在し、さらに不織布で構成される上層及び下層を有する冷涼感シートであって、
高吸収性ポリマーの粒子又は多孔性粉体が吸収性シートの繊維層間に保持されてなり、冷感剤溶液における溶媒中の水の含有量が10質量%以下であり、かつ該溶媒の20℃における蒸気圧が1kPa以下である冷涼感シート。
20℃における蒸気圧が1kPa以下の溶媒が、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の冷涼感シート。
冷感剤が、メントール、乳酸メンチル、メントングリセリンアセタール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、メンチルエチルアミノシュウ酸、N−エチル−3−p−メンタンカルボキシアミド、イソプレゴール、メンチルアセテート、ボルネオール、カンファー、及びチモールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の冷涼感シート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の冷涼感シートは、冷感剤及び溶媒を含有する冷感剤溶液を含浸させた吸収性シートで構成される層を有し、かつ該溶媒の20℃における蒸気圧が1kPa以下である。
【0011】
冷感剤溶液を含浸させるのに用いる吸収性シートとしては、吸収力や薄型化の観点、また加工性の観点から、高吸収性ポリマーの粒子又は多孔性粉体が繊維層間に保持された吸収性シートを用いることが好ましい。このような吸収性シートとしては、高吸収性ポリマーの粒子又は多孔性粉体が紙や親水性の不織布間に保持された吸収性シート、親水性繊維等の繊維材料からなるシート、又は特開平8−246395号公報記載の吸収性シート等を用いることができる。
【0012】
高吸収性ポリマーとしては、吸収性又は吸湿性のあるアクリル酸ナトリウム共重合体等の粒状ポリマーが挙げられる。多孔性粉体としては、結晶性シリカ、非晶質シリカ、非晶質アルミノ珪酸塩等が挙げられる。また、親水性繊維としては、粉砕パルプ、コットン等のセルロース、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、粒子状ポリマー、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維、或いは親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維等を単独又は混合して用いることができる。これらのなかでも、コスト及び成形性の観点から、粉砕パルプを使用することが好ましい。
これら親水性繊維と高吸収性ポリマー又は多孔性粉体とを被覆材で覆うことにより、吸収性シートを構成してもよい。
【0013】
吸収性シートは、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシートでもよい。エアレイドシートとしては、繊維と粒子状ポリマーとをバインダー等でシート物に成形したものが挙げられる。なお、粒子状ポリマーは、エアレイドシートにおいて、層状に分散されていてもよいし、厚み方向に偏っていてもよい。
また、吸収性シートには、例えば、銀・銅・亜鉛・シリカ・活性炭・アルミノケイ酸塩化合物・ゼオライト等の粒状消臭材、又は粒状抗菌材を添加してもよい。
【0014】
吸収性シートには、装着中における型崩れやヨレの防止、又は厚みを調整する観点から、エンボスを形成していてもよい。
【0015】
吸収性シートの坪量は、加工性や加工後の形態の保持性の観点、及び薄型化等の観点から、好ましくは50〜120g/m
2であり、より好ましくは60〜100g/m
2である。また、吸収性シートの厚みは、好ましくは0.3〜1mmであり、より好ましくは0.4〜0.8mmである。
なお、吸収性シートの厚みは、定圧厚さ測定器により測定する。かかる測定器としては、例えばテクロックコーポレーション製 PG−11Jを用いることができる。
【0016】
冷感剤溶液は、冷感剤及び溶媒を含有するもの、すなわち20℃における蒸気圧が1kPa以下の溶媒に冷感剤を溶解させたものである。かかる溶媒に冷感剤を溶解させた冷感剤溶液を吸収性シートに含浸させることにより、冷感剤の保存安定性を高めて持続性のある冷感効果を発揮することができるとともに、本発明の冷涼感シートが、後述するホットメルト粘着剤からなる塗布層を有するような場合には、保存時間が経過するにつれてホットメルト粘着剤が変質してしまうのを有効に抑制することができる。
【0017】
かかる冷感剤としては、具体的には、例えば、メントール、乳酸メンチル、メントングリセリンアセタール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、メンチルエチルアミノシュウ酸、N−エチル−3−p−メンタンカルボキシアミド、イソプレゴール、メンチルアセテート、ボルネオール、カンファー、チモール、及びこれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらのなかでも、溶媒への溶解性や冷却効果の観点から、メントール及び乳酸メンチルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0018】
冷感剤の含有量は、良好な冷感効果を発揮させる観点から、冷感剤溶液中に、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。冷感剤の含有量は、刺激性等を抑制し、良好な使用感を確保する観点から、冷感剤溶液中に、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。また、冷感剤の含有量は、冷感剤溶液中に、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0019】
冷感剤溶液に含有される溶媒は、蒸気圧が1kPa以下のものである。また、かかる溶媒は、冷感剤の保存安定性を高め、長時間にわたって心地よい冷涼感をもたらす観点から、蒸気圧が700Pa以下のものがより好ましく、500Pa以下のものがさらに好ましく、100Pa以下のものが殊更に好ましい。
蒸気圧が1kPa以下の溶媒としては、多価アルコール、炭素数4以上の第一級アルコール、炭化水素油、脂肪酸エステル、及びシリコーン油等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0020】
また、冷感剤溶液に含有される溶媒は、冷感剤の保存安定性を高め、長時間にわたって心地よい冷涼感をもたらす観点から、分子量が70以上のものが好ましく、80以上のものがより好ましく、90以上のものがさらに好ましく、また500以下のものが好ましく、200以下のものがより好ましく、180以下のものがさらに好ましい。また、分子量が70未満又は200超の溶媒であっても、他の溶媒と組み合わせて溶媒全体として重量平均分子量が上記範囲内となればよい。
冷感剤溶液に含有される溶媒は、冷感剤の溶解性、冷感剤溶液の製造し易さ、吸収性シートへの含浸し易さの観点から、融点は30℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがさらに好ましい。
【0021】
多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
炭素数4以上の第一級アルコールとしては、1−ブタノール、1−ペンタノール等の低級アルコールの他、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、水素添加ラノリンアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、なかでも炭素数12以上の高級アルコールが好ましい。
炭化水素油としては、スクワラン、スクワレン、ミンク油、ホホバ油、カルナバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ラノリン、セレシン、ワセリン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、石油ワックス、及びポリエチレンワックス等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸コレステリル、グリセリン誘導体(モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロール)、オリーブ油、及びひまし油等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
シリコーン油としては、直鎖、分岐または環状のシリコーン、変性シリコーン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
これらのうち、冷感剤の保存安定性を高める観点、冷感剤を良好に溶解させる観点、使用時における快適性等の観点から、多価アルコールが好ましく、なかでもグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ことさらポリエチレングリコールが好ましい。かかるポリエチレングリコールにおけるエチレンオキシドの平均重合度は、好ましくは4〜20であり、より好ましくは8〜20である。
また、蒸気圧が1kPa以上の溶媒であっても、蒸気圧が1kPa以下の他の溶媒と組み合わせて溶媒全体として蒸気圧が1kPa以下となればよい。
【0022】
複数の溶媒を組み合わせる場合、それぞれの溶媒が単独で1kPa以下の蒸気圧のもののみであれば問題ないが、1kPa以上の溶媒を用いる場合には、その含有量を制限するのが好ましい。例えば、水(20℃における蒸気圧が2.3kPa)の場合、かかる水の含有量は、溶媒中に10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、実質的に水を含有しないことがことさらに好ましい。
【0023】
溶媒の含有量は、冷感剤を十分に溶解させる観点から、冷感剤溶液中に、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。溶媒の含有量は、べたつき等を低減し、良好な使用感を保持する観点から、冷感剤溶液中に、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。また、溶媒の含有量は、冷感剤溶液中に、好ましくは60〜97質量%であり、より好ましくは70〜95質量%であり、さらに好ましくは80〜90質量%である。
【0024】
冷感剤溶液中における冷感剤と溶媒の質量比(冷感剤/溶媒)は、溶媒中に溶解する冷感剤の量を確保して、十分な冷感効果を発揮させる観点から、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上である。冷感剤溶液中における冷感剤と溶媒の質量比(冷感剤/溶媒)は、溶媒中に冷感剤を良好に溶解させる観点から、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下である。また、冷感剤溶液中における冷感剤と溶媒の質量比(冷感剤/溶媒)は、好ましくは0.03〜0.7であり、より好ましくは0.05〜0.5であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。
【0025】
冷感剤溶液には、さらにTRPアンタゴニストを含有させてもよい。かかるTRPアンタゴニストを含有させることにより、さらに冷感効果を増大させることができる。かかるTRPアンタゴニストとしては、具体的には、例えば、2−メチル−4−フェニル−1−ペンタノール、trans−4−tert−ブチルシクロヘキサノール、1,8−シネオールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、良好に冷感効果を増大させる観点から、2−メチル−4−フェニル−1−ペンタノール、trans−4−tert−ブチルシクロヘキサノールが好ましい。
【0026】
TRPアンタゴニストの含有量は、冷感効果を効果的に増大させる観点から、冷感剤溶液中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。TRPアンタゴニストの含有量は、良好な使用感を確保する観点から、冷感剤溶液中に、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。また、TRPアンタゴニストの含有量は、冷感剤溶液中に、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは8〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%である。なお、TRPアンタゴニストは、冷感剤溶液とは別に調製し、吸水性シートに含浸させてもよい。
【0027】
冷感剤溶液には、上記成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲内で、香料、防腐剤、色素、硬化剤等の他の成分を含有させることができる。
【0028】
本発明の冷涼感シートが有する層を構成する吸収性シートに含浸された冷感剤溶液の量は、冷感効果の持続性を高める観点から、吸収性シート1cm
2あたり、好ましくは2mg以上であり、より好ましくは5mg以上であり、さらに好ましくは8mg以上である。吸収性シートに含浸された冷感剤溶液の量は、冷感効果の効き過ぎを防止する観点から、吸収性シート1cm
2あたり、好ましくは80mg以下であり、より好ましくは60mg以下であり、さらに好ましくは40mg以下である。また、吸収性シートに含浸された冷感剤溶液の量は、吸収性シート1cm
2あたり、好ましくは2〜80mgであり、より好ましくは5〜60mgであり、さらに好ましくは8〜40mgである。
【0029】
本発明の冷涼感シートは、上記吸収性シートで構成される層が中間層として介在し、さらに不織布で構成される上層及び下層を有することが好ましい。これにより、保存時には冷感剤溶液を含浸させた吸収性シートを担持・保護し、使用時において吸収性シートからかかる不織布へと徐々に冷感剤を移行させ、より快適な冷感効果をもたらすことができる。なお、本発明の冷涼感シートの使用時において、人体や衣類等の所望の部位に当接する側の面を構成する層を下層と称する。
上層及び下層を構成する不織布の素材としては、特に制限はなく、天然繊維、化学繊維のいずれも用いることができる。天然繊維としては、粉砕パルプ、コットン等のセルロースが挙げられる。化学繊維としては、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維、又は親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維などが挙げられる。熱可塑性疎水性化学繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の単繊維、ポリエチレンとポリプロピレンをグラフト重合してなる繊維、芯鞘構造等の複合繊維が挙げられる。
【0030】
不織布の坪量は、加工性や加工後の形態の保持性の観点、及び薄型化や冷感効果の伝達性の確保等の観点から、好ましくは50〜120g/m
2であり、より好ましくは60〜100g/m
2である。また、不織布で構成される上層及び下層の厚みは、各々好ましくは0.4〜5mmであり、より好ましくは0.5〜3mmである。
なお、不織布の厚みは、定圧厚さ測定器により測定する。かかる測定器としては、例えばテクロックコーポレーション製 PG−11Jを用いることができる。
【0031】
不織布の製造方法としては、乾式(カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等)及び湿式のいずれか一つのウェブフォーミング方法を用いることができる。乾式法と湿式法のうち、複数の方法を組み合わせてもよい。また、サーマルボンディング、ニードルパンチ、ケミカルボンディング等の方法が挙げられる。
なお、上層及び下層は、各々別の不織布から形成してもよく、一の不織布を折り畳んで形成してもよい。また、不織布からなる平袋体を形成し、その内部に後述する吸収性シートで構成される中間層を封入してもよい。
【0032】
本発明の冷涼感シートにおける冷感剤の含有量は、冷感効果の持続性を高める観点から、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは0.25mg以上であり、より好ましくは0.5mg以上であり、さらに好ましくは1mg以上である。本発明の冷涼感シートにおける冷感剤の含有量は、冷感効果の効き過ぎを防止する観点から、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは10mg以下であり、より好ましくは6mg以下であり、さらに好ましくは4mg以下である。また、本発明の冷涼感シートにおける冷感剤の含有量は、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは0.25〜10mgであり、より好ましくは0.5〜6mgであり、さらに好ましくは1〜4mgである。
【0033】
本発明の冷涼感シートにおける蒸気圧が1kPa以下の溶媒の含有量は、冷感剤の保存安定性を高め、長時間にわたって心地よい冷涼感をもたらす観点から、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは1.8mg以上であり、より好ましくは4.5mg以上であり、さらに好ましくは7mg以上である。本発明の冷涼感シートにおける蒸気圧が1kPa以下の溶媒の含有量は、溶媒の浸みだし防止の観点から、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは70mg以下であり、より好ましくは54mg以下であり、さらに好ましくは36mg以下である。また、本発明の冷涼感シートにおける蒸気圧が1kPa以下の冷感剤の含有量は、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは1.8〜70mgであり、より好ましくは4.5〜54mgであり、さらに好ましくは7〜36mgである。
【0034】
本発明の冷涼感シートにおける冷感剤と溶媒の質量比(冷感剤/溶媒)は、溶媒中に溶解する冷感剤の量を確保して、十分な冷感効果を発揮させる観点から、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上である。本発明の冷涼感シートにおける冷感剤と溶媒の質量比(冷感剤/溶媒)は、溶媒中に冷感剤を良好に溶解させる観点から、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下である。また、本発明の冷涼感シートにおける冷感剤と溶媒の質量比(冷感剤/溶媒)は、好ましくは0.03〜0.7であり、より好ましくは0.05〜0.5であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。
【0035】
本発明の冷涼感シートにおいて、吸収性シートで構成される中間層を介在させ、上層及び下層を設ける場合、下層において、中間層が介在する面とは反対側の面にホットメルト粘着剤からなる塗布層を有するのが好ましい。ホットメルト粘着剤は、加熱溶融する性質を有し、冷却することにより固化して接着性能を発揮することができる。したがって、加熱溶融させたホットメルト粘着剤を下層の表面に塗布して塗布層を設けることにより、本発明の冷涼感シートにおいて、かかる層が設けられた面側を皮膚や衣類に当接及び貼着させることが可能となる。また、本発明の冷涼感シートであれば、中間層を構成する吸収性シートが上記冷感剤溶液を含浸してなるため、保存時間が経過するにつれてホットメルト粘着剤が変質するのを有効に抑制し、かかるホットメルト粘着剤が冷涼感シート内から浸出して皮膚や衣類に付着するのを効果的に防止することができる。
【0036】
用い得るホットメルト粘着剤としては、特に制限されず、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体等のゴム系粘着剤、シリコーン含有ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン含有アクリル系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0037】
ホットメルト粘着剤からなる塗布層の量は、皮膚や衣類への貼着力を確保しつつ皮膚や衣類への付着を防止する観点から、好ましくは50〜300g/m
2であり、より好ましくは100〜200g/m
2である。
【0038】
なお、上記塗布層を設けた場合、かかる塗布層の表面に、さらに使用時に剥離して用いるための、ポリエチレンフィルムやポリ塩化ビニルフィルム等からなる剥離層を設けるのが好ましい。
【0039】
本発明の冷涼感シートの総厚みは、十分な冷感効果を得つつ、使用性を高める観点から、好ましくは1.3〜11mmであり、より好ましくは1.4〜6.8mmである。なお、冷涼感シートの厚みは、定圧厚さ測定器により測定する。かかる測定器としては、例えばテクロックコーポレーション製 PG−11Jを用いることができる。
【0040】
本発明の冷涼感シートを製造するには、例えば、予め上記溶媒に冷感剤を十分に溶解させ、これを含浸させた吸収性シートを製造する。次いで、上層及び下層を構成するための不織布2枚の間に、得られた吸収性シートを中間層として挟み込んで一のシートを成形するのが好ましい。必要に応じ、下層の表面、すなわち人体や衣類等の所望の部位に当接する側の面(中間層が介在する面とは反対側の面)に、ホットメルト粘着剤を塗布して塗布層を形成し、得られた冷涼感シートの端部を圧着又は切断等することにより、所望のサイズを有する冷涼感シートを得る。かかる塗布層の上にさらに剥離層を形成して、使用時に剥離してもよい。
【0041】
また、上層及び下層を構成するにあたり、1枚の不織布を折り畳んで吸収性シートを挟み、端部を圧着又は切断等して製造してもよく、不織布を用いて少なくとも一の開口部を備える平袋体を形成し、その内部に吸収性シートで構成される中間層を格納した後、開口部を圧着して製造してもよい。
【0042】
本発明の冷涼感シートは、首や頭、腕、脚等、人体の所望の部位に直接装着してもよく、また必要に応じてホットメルト粘着剤層からなる塗布層を設け、衣類に貼着して用いてもよい。なかでも、いわゆるネッククーラーとして衣類の襟内側に装着して用いると、持続性の高い冷涼感を十分に享受できるので、冷涼感シートを長時間使用し続けたり、取り換え回数を減じたりすることが可能である。またホットメルト粘着剤の変質をも有効に抑制するので、ホットメルト粘着剤からなる塗布層を有する冷涼感シートであっても、シート内から襟内側へとホットメルト粘着剤が浸出及び付着するのを防止することもでき、快適な使用感を実感することが可能である。
【0043】
上述した実施態様に関し、本発明はさらに以下の冷涼感シートを開示する。
[1]冷感剤及び溶媒を含有する冷感剤溶液を含浸させた吸収性シートで構成される層を有し、かつ該溶媒の20℃における蒸気圧が1kPa以下である冷涼感シート。
[2]吸収性シートが、好ましくは高吸収性ポリマーの粒子又は多孔性粉体が繊維層間に保持された吸収性シートを用いている上記[1]の冷涼感シート。
[3]高吸収性ポリマーが、好ましくは吸収性又は吸湿性のあるアクリル酸ナトリウム共重合体等の粒状ポリマーである上記[2]の冷涼感シート。
[4]多孔性粉体が、結晶性シリカ、非晶質シリカ、非晶質アルミノ珪酸塩等である上記[2]の冷涼感シート。
[5]吸収性シートが、好ましくは親水性繊維からなるシートである上記[1]の冷涼感シート。
[6]親水性繊維として、好ましくは再生セルロース、半合成セルロース、粒子状ポリマー、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維、或いは親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維を単独又は混合して用いる上記[5]の冷涼感シート。
[7]吸収性シートの坪量が、好ましくは50〜120g/m
2であり、より好ましくは60〜100g/m
2である上記[1]〜[6]のいずれか1の冷涼感シート。
[8]吸収性シートの厚みが、好ましくは0.3〜1mmであり、より好ましくは0.4〜0.8mmである上記[1]〜[7]のいずれか1の冷涼感シート。
【0044】
[9]冷感剤が、好ましくはメントール、乳酸メンチル、メントングリセリンアセタール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、メンチルエチルアミノシュウ酸、N−エチル−3−p−メンタンカルボキシアミド、イソプレゴール、メンチルアセテート、ボルネオール、カンファー、チモール、及びこれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上である上記[1]〜[8]のいずれか1の冷涼感シート。
[10]冷感剤の含有量が、冷感剤溶液中に、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である上記[1]〜[9]のいずれか1の冷涼感シート。
[11]冷感剤溶液に含有される溶媒の20℃における蒸気圧が、好ましくは700Pa以下であり、より好ましくは500Pa以下であり、さらに好ましくは100Pa以下である上記[1]〜[10]のいずれか1の冷涼感シート。
[12]冷感剤溶液に含有される溶媒の分子量が、好ましくは70以上であり、より好ましくは80以上であり、さらに好ましくは90以上であり、また、好ましくは200以下であり、より好ましくは190以下であり、さらに好ましくは180以下である上記[1]〜[11]のいずれか1の冷涼感シート。
[13]冷感剤溶液に含有される溶媒の融点が、好ましくは30℃以下であり、より好ましくは25℃以下であり、さらに好ましくは20℃以下である上記[1]〜[12]のいずれか1の冷涼感シート。
[14]冷感剤溶液に含有される溶媒が、好ましくは多価アルコール、炭素数4以上の第一級アルコール、炭化水素油、脂肪酸エステル、及びシリコーン油等から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは多価アルコールであり、さらに好ましくはグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上ことさらに好ましくはポリエチレングリコールである上記[1]〜[13]のいずれか1の冷涼感シート。
[15]冷感剤溶液中の水の含有量が、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、ことさらに好ましくは実質的に水を含有しない上記[1]〜[14]のいずれか1の冷涼感シート。
[16]冷感剤溶液中の溶媒の含有量が、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である上記[1]〜[15]のいずれか1の冷涼感シート。
[17]冷感剤溶液中における冷感剤と溶媒の質量比(冷感剤/溶媒)が、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下である上記[1]〜[16]のいずれか1の冷涼感シート。
【0045】
[18]冷感剤溶液が、好ましくはTRPアンタゴニストを含有する上記[1]〜[17]のいずれか1の冷涼感シート。
[19]TRPアンタゴニストが、好ましくは2−メチル−4−フェニル−1−ペンタノール、trans−4−tert−ブチルシクロヘキサノール、1,8−シネオールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは2−メチル−4−フェニル−1−ペンタノール、trans−4−tert−ブチルシクロヘキサノールである上記[18]の冷涼感シート。
[20]TRPアンタゴニストの含有量が、冷感剤溶液中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である上記[18]又は[19]の冷涼感シート。
【0046】
[21]冷涼感シートを構成する吸収性シートに含浸された冷感剤溶液の量が、吸収性シート1cm
2あたり、好ましくは2mg以上であり、より好ましくは5mg以上であり、さらに好ましくは8mg以上であり、また、吸収性シート1cm
2あたり、好ましくは80mg以下であり、より好ましくは60mg以下であり、さらに好ましくは40mg以下である上記[1]〜[20]のいずれか1の冷涼感シート。
[22]冷涼感シートにおける冷感剤の含有量が、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは0.25mg以上であり、より好ましくは0.5mg以上であり、さらに好ましくは1mg以上であり、また、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは10mg以下であり、より好ましくは6mg以下であり、さらに好ましくは4mg以下である上記[1]〜[21]のいずれか1の冷涼感シート。
[23]冷涼感シートにおける蒸気圧が1kPa以下の溶媒の含有量が、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは1.8mg以上であり、より好ましくは4.5mg以上であり、さらに好ましくは7mg以上であり、また、冷涼感シート1cm
2あたり、好ましくは70mg以下であり、より好ましくは54mg以下であり、さらに好ましくは36mg以下である上記[1]〜[22]のいずれか1の冷涼感シート。
[24]冷涼感シートにおける冷感剤と溶媒の質量比(冷感剤/溶媒)が、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下である上記[1]〜[23]のいずれか1の冷涼感シート。
【0047】
[25]吸収性シートで構成される層が中間層として介在し、さらに不織布で構成される上層及び下層を有する上記[1]〜[24]のいずれか1の冷涼感シート。
[26]下層において、好ましくは中間層が介在する面とは反対側の面にホットメルト粘着剤からなる塗布層を有する上記[25]の冷涼感シート。
[27]ホットメルト粘着剤が、好ましくはスチレン−ブタジエン共重合体等のゴム系粘着剤、シリコーン含有ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン含有アクリル系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤から選ばれる1種又は2種以上である上記[26]の冷涼感シート。
[28]ホットメルト粘着剤からなる塗布層の量が、好ましくは50〜300g/m
2であり、より好ましくは100〜200g/m
2である上記[26]又は[27]の冷涼感シート。
[29]塗布層の表面に、使用時に剥離して用いるための剥離層を設けた上記[26]〜[28]のいずれか1の冷涼感シート。
【0048】
[30]冷涼感シートの総厚みが、好ましくは1.3〜11mmであり、より好ましくは1.4〜6.8mmである上記[1]〜[29]のいずれか1の冷涼感シート。
[31]冷涼感シートが、好ましくは首や頭、腕、脚等、人体の所望の部位に直接装着するか、又はホットメルト粘着剤層からなる塗布層を設け、衣類に貼着して用いるものであり、より好ましくは衣類の襟内側に装着して用いるものである上記[1]〜[30]のいずれか1の冷涼感シート。
[32]蒸気圧が1kPa以下の溶媒に冷感剤を溶解させ、これを吸収性シートに含浸させた後、得られた吸収性シートを中間層として、上層及び下層を構成する不織布2枚の間に挟み込む工程を含む、冷涼感シートの製造方法。
[33]さらに、好ましくは下層の表面に、ホットメルト粘着剤を塗布して塗布層を形成する工程を含む、上記[32]の冷涼感シートの製造方法。
[34]さらに、塗布層の表面に、使用時に剥離して用いるための剥離層を設ける工程を含む、上記[33]の冷涼感シートの製造方法。
【実施例】
【0049】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0050】
[実施例1〜28、比較例1〜22]
表1、2に示す処方にしたがい、溶媒中に冷感剤を投入し、完全に溶解した冷感剤を含有する冷感剤溶液を調製した。次いで、ピペットを用いて得られた冷感剤溶液を表1、2に記載の含有量となるように吸収性シート(PS−100、伊野紙株式会社製、アクリル酸ナトリウム共重合体ポリマー50質量%、坪量100g/m
2、9×5cm、厚み0.6mmのシートを、5cm幅の中央2cm部分を残して両端1.5cmを内側に折り込んで9×2cmとしたもの)に含浸させた。
【0051】
次に、サイズ20cm×6cm、厚み2.0mmの不織布(IS744D、ダイワボウポリテック株式会社製)を、短辺の中心で縦半分に折り込みながら得られた吸収性シート2枚を縦方向に重ならないように並べて挟み込み、ヒートシーラーを用いて圧着した。
その後、剥離フィルムに塗工されたホットメルト粘着剤(スチレン−ブタジエン共重合体、150g/m
2))を下層となる一方の面に熱転写し、剥離フィルムをはがした。ホットメルト粘着剤を転写した粘着面に、別途用意した剥離層を付与し冷涼感シートを得た。得られた冷涼感シートの総厚みは、いずれも5.2mmであった。
得られた冷涼感シートを用い、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表1〜2に示す。
【0052】
《冷感剤の保存安定性》
得られた冷涼感シートをアルミ包材に封入し、50℃で2週間保存した後、ガスクロマトグラフィーにより、冷涼感シート内における冷感剤の含有量を測定し、製造直後の冷感剤の含有量を基準とした残存量(%)を求めた。
【0053】
《衣類へのホットメルト粘着剤の付着量の評価》
得られた冷涼感シートをアルミ包材に封入し、50℃で2週間保存した。次いで、冷涼感シートをアルミ包材から取り出し、剥離層をはがし、粘着面を黒布(綿100質量%)へ貼着した後、35℃のホットプレート上に400gのおもりをのせて10分放置した。シートを貼着していた黒布の表面領域を観察し、付着したホットメルト粘着剤の量を目視により確認して下記基準にしたがって評価した。
【0054】
0:ほとんどホットメルト粘着剤が付着していなかった
1:わずかにホットメルト粘着剤が付着していた
2:シートを貼着していた黒布の表面領域の1/4程の領域にホットメルト粘着剤が付着していた
3:シートを貼着していた黒布の表面領域の1/2程の領域にホットメルト粘着剤が付着していた
4:シートを貼着していた黒布の表面領域の3/4程の領域にホットメルト粘着剤が付着していた
5:シートを貼着していた黒布の表面領域のほぼ全領域にホットメルト粘着剤が付着していた
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1〜2の結果によれば、実施例1〜28のシートは、比較例1〜22のシートに比して、冷感剤の保存安定性が高く、ホットメルト粘着剤の変質をも抑制して被貼着体への付着を有効に防止できることがわかる。