【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の方法は、少なくとも1つの哺乳動物の心血管の量を判定することを対象としており、当該方法は、
(i)血管の測定部位を選択する工程と、
(ii)該測定部位の血管の平均直径を判定または推定する工程と、
(iii)該測定部位の血管の脈波伝播速度ならびに/または弾性および/もしくは別の弾性に関連した量を判定する工程と、
(iv)該測定部位の血管の膨満感を判定する工程と、
(v)判定された該測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量および膨満感から少なくとも1つの心血管の量を計算する工程と、
からなる。
【0018】
本発明によれば、測定部位の血管の平均直径、測定部位の血管の弾性に関連した量、および測定部位の血管の膨満感からなるデータから心血管の量を計算することによって、より正確な判定を得ることができ、この判定はさらに、測定の前にも後にも、いかなる個々の較正またはいかなるさらなるタイプの較正手順の必要性も完全に免除されることがわかった。この状況において正確な判定とは、約10%以下、好適には約5%以下の位数における等、非常に低い測定の不確実性を有する判定を意味する。
【0019】
従って、本発明の方法は、上記の従来技術において記載された方法に代わるものを提供するが、従来技術の非侵襲的従来技術の方法を使用した類似の心血管の量の判定と比較した場合に驚くほど高い信頼性を有して侵襲的または非侵襲的に心血管の量を判定する方法も提供する。
【0020】
「非侵襲的」という用語は、当該方法が哺乳動物の皮膚の表皮への完全な侵入を必要としないこと、および、「侵襲的」は、当該方法が表皮の完全な侵入を必要とすることを本明細書において意味する。
【0021】
測定部位の血管の平均直径を判定するまたは推定する工程(ii)、測定部位の血管の弾性に関連した量を判定する工程(iii)、および、測定部位の血管の膨満感を判定する工程(iv)は、いかなる順番で行ってもよく、さらには判定は同時に行ってもよく、後者の方が好適である。これらの判定のうち1つまたは複数の判定を、さらなる判定に再利用してもよい。例えば、一実施形態において、測定部位の血管の平均直径の判定または推定は、この選択された測定部位でのさらなるまたは連続した心血管の量の判定に再利用
してもよい。一実施形態において、測定部位の血管の弾性に関連した量の判定は、この選択された測定部位でのさらなるまたは連続した心血管の量の判定に再利用される。
【0022】
一実施形態において、測定部位の血管の平均直径の判定もしくは推定、および/または、測定部位の血管の弾性に関連した量の判定は、測定部位の血管の膨満感の判定よりも少ない回数行われ、さらに、測定部位の血管の平均直径の判定もしくは推定、および/または、測定部位の血管の弾性に関連した量の判定は、例えば先の判定の平均の形で再利用される。その結果、当該方法は、多くの連続した所望の心血管の量の判定を提供することができ、さらに、実際には、当該方法は、継続的または半継続的な所望の心血管の量の判定を送達することができる。当該方法の単純さのために、当該方法は、一実施形態において、上記のように判定を再利用しなくても、継続的または半継続的な所望の心血管の量の判定を送達する。
【0023】
哺乳動物は、いかなる哺乳動物であってもよく、特に、ヒトであってもよい。一実施形態において、哺乳動物は、ネコ、イヌ、またはウマ等の愛玩動物である。
「患者」という用語は、1つまたは複数の心血管の量が判定される哺乳動物を表すが、一方、「使用者」または「補助者」という用語は、測定を行うまたは患者が測定を行うのを助ける人物を表す。一般に、本発明の方法は行うのが容易であり、好ましくは、必要な計算を行うようプログラムされた本発明の心血管のシステムを使用する工程からなってもよく、さらに、患者は、多くの状況において、患者自身が測定を行うことができる。
【0024】
血管は、いかなる血管であってもよいが、好ましくは、哺乳動物の体の主要な血管の1つである。血管は、好ましくは、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、大腿動脈、指動脈、または頸動脈等の動脈である。
【0025】
単純に測定部位とも呼ばれる血管の測定部位は、血管の長さ部分からなる部位を意味し、長さ部分は、判定を行うのに十分長く、同時に、測定部位の長さ内の約10%以上等、平均直径が実質的に変わらないように長過ぎない。好ましくは、測定部位の長さは、時間平均された血管の平均直径が、測定部位の長さ内または測定部位の長手方向に約3%以下等、約5%以下変わるように選択される。測定部位の長さは、哺乳動物のタイプおよびサイズに依存して、ならびに、測定される血管の平均直径および位置に依存して選択される。一般に、測定部位が、約15cm以下、約5cm以下等、約30cm以下の長さを有することが望ましい。測定部位の最小長は、判定および任意で測定の目的とは無関係の攪乱が意図されるまたは必要とされる装置の精度および質次第である。一実施形態において、測定部位は、約1cm以上、約2cm以上等の約5mm以上の長さを有する。
【0026】
測定部位の実際の長さは、電極のサイズと組織の分布との組み合わせによって、さらに、1つまたは複数の組の単に励振電極の組を使用した場合に、また、電極の間隔に基づいて判定される。皮下脂肪に侵入する力線は、脂肪が筋肉および血液よりもはるかに低い導電率を有するため非常に少ない伝播を有する。筋肉において力線は、筋肉の断面によって与えられた量だけ粗く広がる。力線は、骨の低い導電率および低い誘電率のため骨を回避する傾向にあり、従って、骨からの寄与は排除することができる。電磁界分布の計算は、例えば、準定常状況に対してマクスウェルの方程式に基づいた有限要素プログラムを用いて行うことができる。詳細等価回路図も、集中インピーダンス素子のコンダクタンスおよび誘電率がそれぞれ、組織の電気特性および等価インピーダンス回路によって表される肢または組織部分の物理的な寸法によって与えられる方法で考案することができる(さらに以下を参照)。
【0027】
一実施形態において、血管の測定部位は、哺乳動物の肢における、腕における、下肢における、手における、足における、指における、首における、または、心臓の領域、胸腔
、腹腔、骨盤腔における血管の部位であるように選択される。これらの位置の血管は、測定するのが比較的容易であると示した。測定部位の選択は、所望の診断用途に関して自然に行ってもよい。
【0028】
本発明の心血管のシステム等の使用される特定の機器は、通常、1つまたは多くの特定の測定部位、例えば2、3、4、または5つの異なる特定の測定部位等に適合される。
一実施形態において、測定部位は、判定と干渉し得るさらなる血管を測定部位が実質的に含まないように選択される。
【0029】
本発明の方法によれば、少なくとも3つの判定、すなわち、測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および膨満感の判定が行われ、好ましくは、これら3つの判定の全てを使用して、1つまたは複数の心血管の量が計算される。
【0030】
測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および膨満感の個々の判定は、原則的には、いかなる非侵襲的方法によって行ってもよいが、好ましくは、以下に記載される方法のうち1または複数の方法が使用される。
【0031】
一実施形態において、測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および膨満感それぞれの判定のうち少なくとも1つ、さらに、好ましくは全てが、選択された測定部位までの距離内に少なくとも1組の電極を適用する工程、電極へ電気信号を適用する工程、および、電界の向きの線が測定部位にて血管に侵入することを提供する工程からなる方法によって行われる。電界の向きの線は電界ベクトルの方向を示し、さらに、線の密度は電界の強さを指し示す。
【0032】
1組の電極は、少なくとも2つの電極からなる。一実施形態において、1組の電極は、3、4、またはそれ以上の電極からなる。いくつかの組の電極が適用される状況において、電極は、例えば、1つの判定に対する第1組の電極の一部、および、第2の判定に対する第2組の電極の一部であってもよい。類似の電極構造が当業者にはよく知られている。
【0033】
使用される電極は、測定の部位に従って適合されたサイズをそれぞれ有してもよい。電極のサイズは、好ましくは、その寸法が測定される膨満感の動向に対する影響が無視できるほどであるほど小さく、しかし電流密度がどこでも組織に対していかなる作用もないほど大きくなるように選択されるべきである。「電極のサイズ」という用語は、皮膚に対する電極の接触面積を意味する。電極サイズの例は、約1cm
2等、約10mm
2から約16cm
2までである。円形の接触面を有した電極の場合、接触面は、例えば、約1cm以上、約2cm以上等の、約5mm以上の直径を有してもよい。楕円形、三角形、または、力線内の組織の特定の解剖学的形態に従った形状等、長方形または円形以外の他の電極の形状が実現可能である。電極の間隔は、例えば、約1cm以上等、約5mm以上であってもよく、約10cm以上でさえもあり得る。電極の相対変位は、好ましくは、測定の対象を構成する血管に垂直である。
【0034】
優れた電気接点を提供するために、電極は、好ましくは接点抵抗を減らす適切な粘着性物質を用いておよび/またはゲルを用いて、好ましくは皮膚と密着させて配置される。
一実施形態において、少なくとも1組の電極のうちの電極のそれぞれは、好ましくは粘着によって哺乳動物の皮膚表面に付着する。電極は、皮膚または好ましくは1つまたは複数の基板上もしくは基板内への適用に対して直接個々に、互いに対して1つまたは複数の選択された距離を有して適用される。1つまたは複数の選択された電極の距離は、適用される意図された体の箇所に従って変わることができ、好ましくは心血管の量の判定および計算に対する基礎として設定されたパラメータである。
【0035】
好ましくは、振動電圧または振動電流が、電極間の少なくとも一部の電界の向きの線が、測定の対象を構成する血管と交わるように少なくとも1組の電極に加えられる。振動電圧または振動電流は、励振信号とも呼ばれる。
【0036】
一実施形態において、励振信号は、約100Hzから約10MHzまでの範囲の、またはそれ以上の範囲の周波数を多数含む。周波数は、並行して同時に適用されるか、または、順次に適用されてもよい。電圧と電流との関係は、電極間の肢の組織のインピーダンスによって与えられ、肢の組織の解剖学的形態、肢の異なる組織の特定の導電率および誘電率、ならびに、組織の物理的な寸法によって再度与えられる。異なるタイプの組織の導電率および誘電率は、周波数によって個々に変わる。
【0037】
一実施形態において、当該方法は、測定部位までの選択された距離内に少なくとも1組の電極を適用する工程、該1組の電極に電気発振信号を適用する工程、および、該1組の電極に関して少なくとも1つのインピーダンスパラメータを判定する工程からなる。
【0038】
測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および/または膨満感の判定のうち少なくとも1つ、好ましくはその全てを、1つまたは複数のインピーダンスパラメータの判定に基づくものにすることによって、所望の心血管の量の攪乱されていない判定を得ることができるということが本発明によってわかった。測定パラメータとしてインピーダンスセンシングを導入して物理学的な量、平均直径、弾性、または/および膨満感のうち1つまたは複数の量を判定することによって、対象の状態に影響を与えることなく、従って、最終的にその結果に影響を与えることなく、優れた予後および対象の血圧をより表す診断値が提供される。
【0039】
本発明によって、従来技術の方法を、特に、例えば圧力カフを前もって使用した場合に、行うことができたものよりもはるかに小さい体の領域上に提供されたセンサを用いて、心血管の量の判定を行うことができる。実際、1組の電極のみを使用した場合に、この体−面積−使用量をかなり最小限にすることができる。さらに、電極の面積および測定部位も、当業者には既知のように、パッチならびに/または電極ならびに/または配線ならびに/またはプロセッサおよび送/受信機の適切な選択によってかなりサイズを有利に減らすことができる。これは、例えば基板上に電極を装着することによって対象の不快感を減らす。
【0040】
インピーダンスの変化は、一般に、(組織が内部にある)肢のインピーダンスモデルに基づき得られた方程式によって膨満感ΔA(またはΔd)に変えられてもよく、
【0041】
【数1】
【0042】
lは、1組の電極によって力線にさらされた血管部分の長さであり、σはポアソン比である。
少なくとも1つのインピーダンスパラメータは、ホイートストンブリッジまたはその変形等のブリッジを使用して測定されてもよく、当該方法は、好ましくは、自動的にブリッジを平衡化する工程を含む。これらのタイプのブリッジは、当技術分野においてよく知られている。
【0043】
一実施形態において、1つまたは複数の測定されたインピーダンスのうち現実の部分と
想像の部分の両方が、1つまたは複数の心血管の量の判定において使用される。
一実施形態において、測定部位の血管の平均直径は、推定された平均直径である。推定された平均直径は、例えば、特定の患者に対して、患者のタイプ、サイズ、性、年齢、および/もしくは状態に基づき、ならびに/または、患者の血管の測定部位もしくは別の部位の平均直径の先の判定に基づき推定されてもよい。
【0044】
血管の寸法は、人物によって著しく異なる。単に集団に対して平均直径を推定する工程は、従って、望まれていない低い正確さの心血管の量の測定を生じ得る。
一実施形態において、測定部位の血管の平均直径は、例えば測定に基づき判定された平均直径である。その結果、より正確な平均直径を得ることができる。
【0045】
一実施形態において、抵抗器およびコンデンサからなる電気的等価回路は、インピーダンスに対して確立される。等価回路の抵抗器の抵抗およびコンデンサの静電容量は、導電率、誘電率、および幾何学的寸法次第である。多数の周波数にて時間平均された値として複素インピーダンスを測定する工程、および、組織の電気特性に関する事前の知識を適用する工程は、1組の方程式を確立することを可能にし、その方程式から、時間平均された平均直径を推測することができ、さらには、判定された平均直径として使用することができる。
【0046】
異なるタイプおよび組み合わせの組織ならびにex vivoでの電気特性は、公開文献においてよくまとめられている。しかし、in vivoで直面する状態は、一般に、記載されておらず、さらには、一般に、肢の異なる組織への明確な分類を可能にしていない。これは特に、in vivoでの血管新生が電気特性をかなり変えることができる皮下脂肪上の皮膚を測定する場合である。
【0047】
生存している人物に対してその上腕の内側にて、皮下脂肪の厚さを1mm未満から3cmを超える厚さにして行われた測定は、志願者によって完了され、この事実を確立した。しかし、in vivoの状態に対する非常に単純なモデルを適用することができ、従って、これに基づき心血管の量を判定することができることも実証された。
【0048】
1kHzから1MHzに及ぶ周波数において、抵抗器とコンデンサとの直列および並列の組み合わせからなる等価回路を適用してもよく、ここで、脂肪の誘電率は、0.1程度の指数で周波数に対し弱い指数関数依存性を有し、さらに、これらの領域においてほぼ一定である抵抗を有し、ここで、インピーダンスは主に抵抗性である。
【0049】
一実施形態において、少なくとも1組の電極に対するインピーダンスが、平均直径を得るために判定される。
一実施形態において、1組の電極が励起のために適用され、別の電極の組が検出のために適用される。別の組の電極を検出のために使用して、すなわち、測定が皮膚インピーダンスからの影響を減らすことができるが、4極の等価回路の複雑さを導入することを代償とする。
【0050】
一実施形態において、測定部位の血管の平均直径の判定は、電気回路を提供する工程、1組の電極間の電界の向きの線が測定部位にて血管に侵入するように配置される1組の電極を含む工程、複数の電気発振信号を該1組の電極に適用する工程であって、該複数の電気発振信号が少なくとも2つの異なる励起周波数からなる工程、および、各励起周波数に対して該1組の電極間のインピーダンスを判定する工程からなる。
【0051】
複数のインピーダンスの判定は、約1kHzから約100MHzまでの範囲の異なる周波数にて測定することができる。約100MHzを超える周波数は、測定部位への不十分
な侵入のために不適切であり得る。一実施形態において、第1の周波数(f1)は、約1kHzから約1MHzまでの範囲において選択され、第2の周波数(f2)は、約100kHzから約100MHzまでの範囲において等、約1kHzから約100MHzまでの範囲において選択され、第3の周波数は、100kHzから1MHzまでの範囲において選択され、さらに、任意の第4の周波数は、約10kHzから約10MHzまでの範囲において選択される。
【0052】
一実施形態において、異なる励起周波数は、約1kHz、約12kHz、および約400kHzから選択される第1の周波数、約12kHz、約400kHz、約1.6MHz、および約10MHzから選択される第2の周波数、約1kHz、約12kHz、約400kHz、約1.6MHz、および約10MHzから選択される第3の周波数、ならびに、約1kHz、約12kHz、約400kHz、約1.6MHz、および約10MHzから選択される任意の第4の周波数からなる。あるいは、パルスを用いた励起を適用することができる。パルスの時間幅は、包含されるものとするスペクトル範囲の逆数値に等しいかまたはそれよりも小さくあるべきである。1つまたは複数の周波数は、同時または順次に適用してもよい。
【0053】
一実施形態において、当該方法は、各励起周波数に対する電極の組のインピーダンスを判定する工程からなる。
異なる励起周波数を使用して平均直径を判定する方法は、脂肪、筋肉、および血液の電気特性がそれぞれ非常に異なるという事実に基づいている。約400kHzにて、血液および筋肉の誘電率はほぼ同一であり、約1MHzにて、電気特性はここでも異なる。他の励起周波数は、選択された肢の組成に基づいて選択することができる。
【0054】
一実施形態において、当該方法は、励起のための少なくとも1組の電極、および、検出のための少なくとも1組の電極からなる。一実施形態において、励起電極の組は、検出電極に関連して血管の上流または下流に提供されてもよい。
【0055】
あるいは、好ましくは、励起の組の電極の1つおよび検出の組の1つの電極は、交差構成で検出の組の他の電極および励起の組の他の電極に関連して血管の上流または下流に提供され、この構成において、励起用力線と仮の検出用力線との間の重複部分のみが測定される信号に寄与することになる。皮下脂肪からの影響は、従って、本質的に信号から除去することができる。交差する電極の構成は、以下の通りである。各組の電極に対して、電極は、励起電極および検出電極に対する接続線がそれぞれ互いに交差する方法で、動脈の方向にも動脈に対して垂直にも移動させられる。逆インピーダンスである測定されたアドミタンスは、この場合、力線の方向での筋肉のアドミタンスと血管のアドミタンスの合計によって与えられる。この構成は、皮下脂肪からの影響が計算から除かれるため、例えばたった2つの電極を有した構成と比較した場合の静的および動的両方の血管の特性のより簡単な推定を促進する。筋肉も血液も圧縮できないと仮定すると、この構成を用いて、膨満感を量的にインピーダンスにおける変化と関連づけることができることを意味する。
【0056】
本発明によれば、インピーダンスのうち現実の部分も想像の部分も使用して、血管の平均直径の判定に対して現実の部分または想像の部分のみを使用した場合よりもはるかに優れた平均血管直径の判定を見つけることができることがわかった。
【0057】
測定部位の血管の平均直径の推定をもたらす逆計算を行うために、力線または力線のサブセットによって侵入される測定部位および隣接する領域の解剖学的形態の事前の推定を提供し、検出電極の組間のインピーダンスに対する等価集中定数等価回路に対するこのプレモデルに基づく数式の組を設定することが好ましく、ここで、数式は、電界の向きの線に沿ったインピーダンスの総合効果を表し、力線のうち少なくとも1つの長さ部分が皮膚
を通り抜け、少なくとも1つの力線のサブセットのうち1つの長さ部分が脂肪層を通り抜け、力線のサブセットのうち1つの長さ部分が筋肉を通り抜け、さらに、力線のサブセットのうち1つの長さ部分が血管を通り抜け、少なくとも2つの異なる励起周波数での電極の組間の測定されたインピーダンスおよび数式の組に基づき血管を通り抜ける実際の力線の長さ部分を判定する。励起および検出に対する別の電極の組をそれぞれ用いて、考慮しなければならないのは、2組の電極に対する力線の重複である。
【0058】
数式の組は、例えば、未知のパラメータとしての力線の長さ部分を有した力線の各長さ部分に対する式からなってもよい。
実際には、測定部位の血管の平均直径の推定をもたらす逆計算は、解剖学的形態に基づく断面に対する構造モデルを使用すること、ならびに、測定装置の真下にある組織のタイプ、その効果的な断面の寸法、その中の電界の向きの線の効果的な侵入領域、および、誘電率および導電率対励起周波数の値によって特定される、力線の組によって侵入される測定部位および隣接する領域を含むことによって行ってもよい。そのような構造モデルは、NMR画像に基づき、超音波によって得られた画像またはX線を用いて得られた画像に基づき確立することができる。そのようなNMR、超音波、またはX線の画像は、当然ながら、一般的な構造モデルのみが問題の各測定部位に必要とされるため、インピーダンス測定が行われることになる各個体には必要ではない。
【0059】
一実施形態において、測定されたインピーダンスから平均直径を判定するのに使用される式は、例えば、ウルフラムリサーチの“Mathematica”プログラムの“Solve”手順を適用することによって得ることができるが、当業者には既知の他の方程式求解機を適用することができる。測定されたインピーダンスから平均直径を判定する特に好ましい方法は、以下の実施例に示されている。
【0060】
さらに別の実施形態において、動脈の寸法は、例えばNMR画像、超音波、X線、多周波励起、または、上記の方法の2つ以上の組み合わせによって得られた患者の事前の画像に基づき推定される。
【0061】
血管の膨満感(血管性膨満感とも呼ばれる)ΔAまたはΔdは、インピーダンスの時間的変動から得られる。
本発明の一実施形態において、膨満感は、市販のインピーダンス分析計を使用して得られ、そのインピーダンスの変化を使用することによって、低周波の変化から任意でハイパスフィルタで分離され、さらに、平均インピーダンスを判定することができる。しかし、そのような機器は、携帯型測定には不適当なことが多く、嵩張り過ぎて患者には装備できないことが多い。従って、これらの方法は好ましくはないが、本発明の方法の一般的な概念において使用することができる。
【0062】
測定部位の血管の膨満感を判定する方法は、好ましくは、電極の組間の電界の向きの線が測定部位の血管に侵入するように電極の組を含む電気回路を提供する工程、および、電極の組間のインピーダンスの時間的変動を判定する工程からなる。
【0063】
膨満感を判定する場合の平均直径の判定に関する限りでは、1つまたは複数の検出電極から回収されるインピーダンス測定のうちの現実の部分にも想像の部分にもその判定を基づけることがここでも好ましい。
【0064】
一実施形態において、測定部位の血管の膨満感の判定は、電極の組間の最大および最小のインピーダンスを判定する工程からなり、当該方法は好適には、時間の関数としてインピーダンスを判定する工程、インピーダンスの時間的変動を判定する工程、および、測定部位の血管の膨満感を計算する工程からなる。
【0065】
一実施形態において、当該方法は、測定部位までの選択された距離内に少なくとも1つの電極の組を適用する工程、電気発振信号を電極の組に適用する工程、および、平均インピーダンス、最小インピーダンス、最大インピーダンス、インピーダンスの時間的変動、時間の関数としてのインピーダンス、または、電極の組について上記のもののうち2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つのインピーダンスパラメータを判定する工程からなる。
【0066】
一実施形態において、電極間の電界の向きの線が測定部位の血管に侵入するように1つまたは複数の電気回路において電気的に接続される電極の組からなる少なくとも1つのセンサが提供され、当該方法は、電極の組にわたって電気発振信号を適用する工程、および、時間の関数としての電極の組の少なくとも1つのインピーダンスパラメータを判定する工程からなる。
【0067】
一実施形態において、電圧が電極の組に加えられ、関連する電流が、例えば同じ電極の組を使用して測定される。
一実施形態において、電流が電極の組によって注入され、関連する電圧が、例えば、同じ組の電極を使用して測定される。
【0068】
一実施形態において、当該方法は、測定部位までの選択された距離内に少なくとも1組の電極を適用する工程、少なくとも1つの励起周波数の振動電流および/または電圧等の電気信号を少なくとも1組の電極、すなわち励起電極の組に適用する工程、ならびに、該少なくとも1組の電極、すなわち検出電極の組にわたって測定することによって少なくとも1つのインピーダンスパラメータを判定する工程を含み、励起電極の組および検出電極の組は同じ組を構成する。
【0069】
一実施形態において、電流は電極の組によって注入され、1つまたは複数の電圧は、異なる電極の組を用いて測定される。
測定部位の血管性膨満感を得るために、時間分解信号測定が好ましくは適用される。しかし、時間平均された直径が既知である場合、1つの周波数にて時間的インピーダンス変動を測定するのに十分であり得る。
【0070】
一実施形態は、1つの電極の組のインピーダンスおよび約1MHzの励起周波数を利用する。他の励起周波数が可能である。しかし、約100kHz以上等の比較的高い周波数を適用して皮膚のインピーダンス効果を最小限にすることが好ましい。非常に小さい皮膚層の厚さのため、皮膚を通る容量結合を利用することができる。この結合の有効性は、増加する周波数と共に増加する。
【0071】
別の実施形態は2組の電極を利用し、1つは励起のため、および、1つは検出のために利用する。
弾性に関連した量は、例えば、血管の弾性、血管の硬化度、脈波伝播速度、または他の弾性に関連した量であり得、そこから、好ましくは平均直径を使用して、および/または、任意で膨満感を使用して弾性を計算することができる。
【0072】
測定部位の血管の弾性に関連した量の判定は、好ましくは、測定部位の血管における脈波の速度を判定する工程からなる。「脈波の速度」および「脈波伝播速度」または単に「パルス速度」という用語は交換可能に使用され、血圧パルスが血管に沿って移動する速度を意味する。
【0073】
血管に沿ったパルスの伝播は、本質的に聴覚性の現象である。脈波伝播速度は、流速よ
りもはるかに速く、例えば、上腕動脈に対して5〜15m/sの位数にある。該速度は、メーンズ・コルテベークの方程式によって与えられる。ポアソン比を考慮に入れるこの方程式の修正されたバージョンは、以下
【0074】
【数2】
【0075】
の通りであり、ここで、Eは血管壁の弾性率であり、hは壁厚であり、pは血液密度であり、σはポアソン比であり、さらに、rは血管の半径である。σ=0.5および壁厚が概して直径の10分の1未満であることが仮定されることが多い。E×h/(1−σ
2)という項は、vが測定される場合に判定することができ、rは、いくつか異なる周波数にてインピーダンスを評価することによって得られる。膨満感から圧力変化への変換は、E×h/(1−σ
2)という項が既知である場合に行うことができる。
【0076】
脈波伝播速度および流速のような補助のパラメータから血圧を推測する方法は、例えば、米国特許第5,309,916号、ジェイ・ジー・トーマス(J.G.Thomas),“Continuous pulse wave velocity recording for indirectly monitoring blood pressure in man”,Medical and Biological Engineering and Computing,vol.3 1962,pp321−322に記載された方法等、当技術分野において既知である。そのような測定は、一般に、既知の標準血圧測定装置に対する較正を必要とする。
【0077】
一実施形態において、当該方法は、測定部位までの選択された距離内に少なくとも2組の電極、すなわち第1および第2の電極の組を適用する工程、少なくとも1つの励起周波数の振動電流および/または電圧等の電気信号を第1組の電極、すなわち励起電極の組に適用する工程、ならびに、該第2組の電極、すなわち検出電極の組にわたって測定することによって少なくとも1つのインピーダンスパラメータを判定する工程を含み、そこで、励起電極の組および検出電極の組は異なる組を構成する。
【0078】
一実施形態において、測定部位の血管における脈波の速度の判定は、センサの電極の選択された間隔で、測定部位の少なくとも一部からなる血管の長さ区分Lを包含する血管の方向に離して少なくとも2つのセンサを置く工程、および、各センサによる時間の関数としてパルスを判定する、その結果、脈波の速度を判定する工程からなる。センサは、パルスを検出する能力を持ついかなるタイプのセンサであってもよい。高精度を有するために、センサは、好ましくは、検出されたパルスに実質的に干渉しないように選択される。
【0079】
本出願において、センサは、1つまたは複数の電極等、少なくとも1つの励起および/または検出要素からなる基板であるとして定義される。
好ましい実施形態において、少なくとも2つのセンサが提供され、ここで各センサは1つの電極の組からなる。2つの電極の組の励起周波数は、好ましくは、2つの電極の組間の望ましくない交差結合を回避するためにわずかに異なってもよい。第1の周波数は、約1MHz以上であってもよく、第2の周波数は、約900kHz以下であってもよい。少なくとも2つの電極の組を、各組を測定されることになる血管の一部にわたって提供することは、血管に沿ったパルス伝播の時間的記録を定める。電極の間隔は、例えば、約30cm、約10cm、または約3cm等、約1cmから約50cmまでであってもよい。短い間隔は、必要とされた平均動脈直径の均一性を遵守するために好ましいが、時間的なパルス間隔の判定は、より短い間隔に取り組む場合にノイズ、望ましくない交差結合、およ
び、不正確さによってより影響を受けるようになる。
【0080】
平均血液密度は、ヒトに対して1060kg/m
3であると文献において推定されている。他の哺乳動物に対しては、類似の平均血液密度を当業者は見い出すことができる。
一実施形態において、パルス速度は、3組の電極を適用することによって判定される。1組は他の2組の間に、また、血管の上に置かれて励起に使用される。他の2組は、パルスの検出に使用される。電極の組の分離は、血管の方向に沿っている。電極の組の電極は、血管の各側に1つずつ、血管の延出長さに対して垂直に置かれる。
【0081】
さらに別の実施形態において、1組の電極のみが適用される。当該量を判定するための遅延は、血管の分岐点からの反射を利用することによって得られる。動脈系における反射は、医業における業者にはよく知られている。
【0082】
弾性に関連した量を判定する場合の平均直径および/または膨満感の判定に関する限りでは、インピーダンス測定の現実の部分にも想像の部分にもその判定を基づけることがここでも望まれる場合があるが、ほとんどの状況において、膨満感は、排他的にインピーダンスの現実の部分または絶対値に基づいてもよい。
【0083】
電極信号からのインピーダンスの判定は、特別な信号処理を必要とすることが多い場合がある。ここで鍵となる問題は、インピーダンスの動的部分が、平均インピーダンスに対して非常に小さいことである。高性能多目的インピーダンス測定機器を適用することができ、その使用は、本発明の範囲内である。しかし、従来技術の高性能多目的インピーダンス測定機器は、一般的に嵩張り高価であり、十分な時間分解能を提供しないことが多く、従って、以下に記載される他の解決策が好ましい。
【0084】
1つの好ましい実施形態において、複素インピーダンスを測定するように適合されたホイートストンブリッジが適用される。そのようなブリッジは、一般に、例えば血管の平均直径の判定に対して平均インピーダンスを判定する場合にも、例えば膨満感を判定するためにそのインピーダンスの時間的変動を判定する場合にも適用するのに有益であると示されている。
【0085】
ブリッジは、好ましくは、フィードバック回路で平衡を保ち、サーボ機構の技術分野における業者にはPIDループとして知られる設計がなされる。ループの応答時間は、連続するパルス間の時間間隔とも呼ばれる予想時間よりも大きくあるように設定される。ブリッジの最小のrms信号に調節される単純な順応性アルゴリズムも適用することができる。
【0086】
好ましい実施形態において、電極からの信号は、当業者には既知のようにクォドラチャ検波器に適用される。
一実施形態において、第1の組の検出電極、第2の組の検出電極、および、該第1および第2の組の電極間に配置された第3の組の励起電極が提供され、第2の組の電極は、少なくとも第3の組の電極から励起された電界の向きの線が測定部位の血管に侵入するように置かれ、ここで、好ましくは、第3の組の電極は、第1および第2の電極の組の間に置かれる。
【0087】
当該方法の実施形態において、少なくとも1つのインピーダンスパラメータの判定が、入力信号を感知および増幅するための少なくとも1つの電圧フォロワおよび/または計装用増幅器による信号処理、ならびに、増幅された信号のインピーダンス値のクォドラチャ検波に対してインピーダンスパラメータを復調するための少なくとも1つのミキサ、および、アナログ信号をデジタル値に量子化するためのアナログ−デジタル変換器を使用して
行われる。
1.振動電流が2つの電極に適用される。電極は、6つの電極構成における真ん中の組の電極であり得る。周波数は、10kHzから10MHzの範囲、好ましくは、100kHzから1MHzの範囲内にある。
2.1組の電極の電圧は、以下のように評価される。
【0088】
a.励起周波数にて中心に置かれた帯域フィルタ。
b.どちらも発振器から得られた共通モード信号およびクォドラチャ信号と測定された信号との組み合わせ(増加)。これによって、信号の現実のインピーダンス部分と想像のインピーダンス部分の両方が提供される。
【0089】
c.ミキサ出力がローパスフィルタで分離される。組み合わせおよびローパスフィルタによる分離は、励起周波数にて自動的に中心に置かれるさらなるかつ非常に効果的な帯域フィルタによる分離を本質的に提供する(発振器からの参照信号によって保証される)。ローパスフィルタは、(例えば100Hz等)パルス周波数よりもはるかに高いコーナ周波数を有する。トランスバーサルフィルタ(有限インパルス応答フィルタ)が好ましくは周波数範囲にわたって定遅延を保証するために使用される。
3.正規化相関関数が、例えば2から20秒のレコード長に対して計算される。
4.ガウス関数によって切断された歪んだ鋸歯の信号の相関関数であり得る参照相関関数が定められる。
5.参照関数が、信号の相関関数に適合させられる。時間的スケールが得られる。(参照関数と相関関数の両方が正規化され、従って、軸スケールは唯一のフィッティングパラメータであることに留意されたい。)
6.参照関数は、適合のそれぞれに対して評価される。相関関数および参照関数の共分散が、適合のそれぞれに対して計算され、相関関数は所与の適合に相当する。受容の閾値は設定される。典型的な値は、最大共分散を0.7倍した値にある。この最初の共分散は、その人物が静止状態にある間に得られる。
7.受容された相関関数の時間的位置が識別され、信号に対する、相関関数のそれぞれが評価される間隔に相当する時間間隔にわたった最大値および最小値それぞれの平均である。その差がインピーダンス変動を生み出す。
【0090】
インピーダンス変動は、一般に、肢(その中の組織)のインピーダンスモデルに基づき得られた方程式によって膨満感ΔA(またはΔd)に変換されてもよく、
【0091】
【数3】
【0092】
lは、1組の電極による力線を受けやすい血管部分の長さであり、σは、ポアソン比である。
別の実施形態において、信号処理は、閾値とゼロ交差との組み合わせによって行われ、以下のように行ってもよい。
1.定常状態の状況が、約1分間対象を静止状態のままにさせることによって得られる。2.信号が、(上記のように)帯域フィルタによって分離される。フィルタの応答時間は、予期されたパルス間隔の約1/3である。
3.レシプロフィルタの帯域幅によって与えられた時間の長さにそれぞれ記録された最大値の平均が評価される。
4.ゼロ交差が検出され、さらに、フィルタ応答時間(レシプロカル帯域幅)の1/3の時間内の信号が平均されたピークの50%を超える場合に交差の発生時が記録される。
5.後のゼロ交差は、4で記録された時間の受容に対してフィルタ応答時間の2/3よりも前に発生してはならない。
6.先の要求を満たす信号の最大および最小が、差動インピーダンスに対して、従って、脈圧に対して記録される。
7.2つのチャネル(パルス速度)からの信号の受容されたゼロ交差が、飛行時間を推定するために適用される。
【0093】
2組の電極が同じ肢に置かれる場合に、その2組の電極のインピーダンス負荷は互いに干渉し得る。これは、例えば、励起信号の時間多重化によって回避してもよい。
ブリッジ検出の実施形態において、電子ブリッジの同時の平衡化によって、および、好ましくは、わずかに異なる励起周波数と関連して平衡化が提供される。好ましい励起周波数は、感受性および交差結合に関連した妥協であり、比較的低い血液の導電率は、測定が行われる肢の長さに沿った力線のより少ない広がりを意味するが、血管の直径の変化によってもたらされるインピーダンスの変化への比較的低い寄与も意味する。約100kHzの励起周波数は、優れた妥協を提供するように思われる。
【0094】
患者の心臓の拍動と付随したパルスの時間間隔を判定または推定することができ、実際には、おおよその推定で十分である。ヒトに対して、時間間隔は、例えば、約1秒に推定されてもよい。他の哺乳動物に対しては、時間間隔は、例えば、約0.1秒から約10秒に推定されてもよい。フィードバック回路は、ブリッジが平衡化されることを意味する。一実施形態において、抵抗要素のみが調整される。簡単なインピーダンス計算は、どのようにして検査対象の複素インピーダンスの任意の変化を、純粋に抵抗要素によって相殺することができるかを示す。この実施形態は、電子的に設定可能な抵抗器の使用を促進する。代替の実施形態において、可変コンデンサとしてバリキャップを使用することができる。バリキャップは、例えば、逆バイアスダイオードまたはMOS装置に基づけることができる。
【0095】
一実施形態において、当該方法は、哺乳動物のパルスの時間間隔を好ましくは測定部位にて判定または推定する工程、ブリッジを使用して平均インピーダンスを判定する工程、および、パルスの時間間隔と類似またはそれよりも長いループ応答時間を有するフィードバックループを介してブリッジを自動的に平衡化する工程からなる。当該方法は、好ましくは、ブリッジの少なくとも2つの抵抗要素を調整する工程からなる。
【0096】
一実施形態において、当該方法は、哺乳動物のパルスの時間間隔を好ましくは測定部位にて判定または推定する工程、ブリッジを使用してインピーダンスの時間的変動を判定する工程、および、パルスの時間間隔と類似またはそれよりも長いループ応答時間を有するフィードバックループを介してブリッジを自動的に平衡化する工程からなり、当該方法は、ブリッジのインピーダンスの時間的変動を判定する工程からなる。
【0097】
3組の電極を有した構成における遅延の推定に対する実施形態において、これは、上記のように各検出電極の組からの信号を処理する、および、2つの復調信号を照合することによって行われる。得られた正規化された相互相関関数は、次に、上記のように参照関数を用いて確認することができる。遅延は、次に、確認された相互相関関数の第1のピークの変位から推定される。ピークは、参照関数を測定された関数に適合することによって推測されてもよい。参照関数は、放物線によって近似されてもよい。励起は、検出電極間に置かれた励起電極の組に適用される。
【0098】
遅延の推定に対する実施形態において、これは、上記のようにゼロ交差検出および確認によって行われる。遅延は、2つの検出電極からの信号のゼロ交差の差から推測される。
橈骨動脈の単一の順方向に伝播するパルスは、以下の式
d(t)=a[sin(2πt/t
1)exp(−(t/t
2)
2)+(1−t)(1−exp(−t/t
3))]×[unitstep(t)−unitstep(t−1)]
(2a)
によって設計することができる。
【0099】
一実施形態において、適合手順が、t
1、t
2、およびt
3の推定を提供するように適用される。他の数式を、測定が行われる体の特定の箇所に適用および適合することができる。
【0100】
一実施形態において、比較的簡単な遅延を推定する方法が適用される。パルスの時間幅が第1組の電極から第2組の電極までのパルス遅延よりも実質的に小さくなるよう、電極の組の間隔は小さくあるように選択される。これは、通常、ヒトに対して約15cm以下の間隔を意味する。
【0101】
推定値は、以下の式
【0102】
【数4】
【0103】
によって定められる。
約15cmよりも大きい電極の組の間隔を用いた別の実施形態において、上記の推定値を使用したエラーは、容認できなくなり得る。遅延線路の遅延が、1つの信号の遅延が関連のある別の信号に一致するように制御ループによって連続的にアップデートされる遅延ロックループにおいて等、反復法を組み入れるために推定は修正される。
【0104】
信号のうち、時間に関して最大勾配を有する部分が、一般的に、時間的位置の最良の判定を提供することに留意されたい。パルスの第1の部分が脈波伝播速度の測定に対して好ましいと考慮されることにも留意されたい。これらの事実は、パルス速度の測定に対してハイパスフィルタによって分離された信号が好ましくは適用されるべきであることを意味する。ハイパスフィルタによる分離を適用することができる程度は、信号の小さな特徴の差の可能な出現によって、および、ノイズによって判定される。一実施形態において、1Hzまでのハイパスフィルタが適用される。別の実施形態において、ハイパスフィルタによる分離が、100Hzまで行われる。
【0105】
さらに別の実施形態において一般的な手順が適用され、相互相関関数が、測定された値に基づき計算され、モデルの相互相関関数が、フィッティングパラメータとして遅延を用いて、計算された相互相関関数に適合される。
【0106】
異なる対象に対して測定されたパルスは、概して、反射の効果および血管構造の変化のため、ならびに、心臓から測定部位までの距離が異なるため、異なる形状のものである。反射は、一般に、望ましくない。効果は、予想された順方向に伝播されるパルスに一致されたフィルタを用いて観察されたパルスを適合することによって最小にすることができる。
【0107】
特定の状況において、変動の一部は、所望の信号と同じ一般的な帯域幅内にあってもよい。従って、これらの望ましくない変動を、簡単なフィルタによる分離によって除くことが可能ではない場合がある。しかし、変動は一般的に心拍と同期しておらず、他の方法で除くことができることを意味する。
【0108】
この事実は、いくつかの方法において、特に以下のものによって利用することができる。
・測定されたパルスの大きな組が、定められた参照パルスから所与のパルスまでのパルスの合計により与えられる量によって置換される条件付平均化。これらのパルスは次に平均化される。心拍と同期していない変動は、平均化方法において消える傾向にある。パルス特性が、第1の測定された数列のうち識別された準周期的数列から適合された設定値にそむく場合、その数列は放棄することができる。参照パルスは、概して時間において明確なECG信号から、または、選択されたインピーダンス信号のパルスから得ることができる。この手順は、パルスの位相が(約10%未満の)小さい変化を示す場合でさえも作用し得ることに留意されたい。
・位相ロックループに類似の機構。ループの発振器は、一般に、クォドラチャ信号を生じる。クォドラチャ信号は、エラー信号を生じるのに使用された入力信号との掛け算によるものであり、ループのロックを促進する。入力信号を掛けられた共通モード信号は、ロックインジケータとして使用される。しかし、本件において、共通モード信号に相当する信号は、正弦波であるべきではないが、予想されたパルス形状によって所与の信号形状を有する準反復信号であるべきである。クォドラチャ信号に相当する信号は、入力信号の誘導体であり得、ゼロの平均を有する位相置換されたバージョンの信号であり得る。信号のヒルバート変換も、ループにおいて優れたエラー信号を提供すると証明した。
【0109】
本発明の方法の一実施形態において、判定された測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および膨満感からの少なくとも1つの心血管の量の計算は、収縮期血圧を計算する工程、拡張期圧を計算する工程、および/または、血管コンプライアンスを計算する工程からなる。
【0110】
差圧(収縮期血圧と拡張期血圧との差)および絶対圧力(拡張期圧)を得るために、圧力と血管の半径との関係が適用されることになる。血管は、圧力と半径との非線形の関係を示す。低い圧力にて、血管は、エラスチン線維によって非常に弾力的に特色づけられる。より高い圧力にて、血管はより硬いように見え、その特性は、コラーゲン線維によって特色づけられる。ゼロの経壁圧(壁にわたる圧力差)はゼロの半径を意味しないことにも留意されたい。負の経壁圧が、完全な血管の虚脱に必要とされる。
【0111】
計算の一実施形態において、壁は圧縮できず、従って、壁の断面積および平均直径が一定であると仮定することができる。正の経壁圧に対して、以下の関係
【0112】
【数5】
【0113】
が適用される。
式は、ギャリー・ドルゼウィエッキ(Gary Drzewiecki)、ショーン・フィールド(Shawn Field)、イサム・モウバラック(Issam Moubarak)、およびジョン・ケー・ジェイ・リー(John K.−J.Li)“Vessel growth and collapsible pressure−area
relationship”,Am J Physiol Heart Circ Physiol 273:H2030−H2043,1997,Equation(7a);πr
2によって与えられる血管内腔断面積Aから採用される。量P
1、b、A
b、およびP
0は、例えば患者等の対象、および、哺乳動物上の測定部位の位置に特有の定数である。
【0114】
差圧および絶対圧力の推定は、血管の半径への圧力の他の仮定された関数関係に基づくことができ、その関係が単調および非線形であり、勾配が符号を変えないことを意味する限り基づくことができることに留意されたい。
【0115】
上記の半径への圧力の関係は、rA≧A
bに対してのみ妥当であり、A
bは、圧力がさらに低くされる場合にバックリングが現れる値である。実験データに基づき実行される外挿法は、式(4)によって与えられたP
sがr=0にてゼロでなければならないことを実際に意味する。この事実は、式(4)を以下の式
【0116】
【数6】
【0117】
まで簡単にすることができることを意味する。
血管の断面への圧力の関係に対して指数関係を一般的に仮定することができることに留意されたい。血管が破裂し得る圧力に近い非常に大きい圧力に対して、この関係は、もはや妥当ではない。
【0118】
パルス速度は、式(1)および(5)を組み合わせることによって∂P/∂r≒ΔP/Δrの観点から表すことができ、
【0119】
【数7】
【0120】
をもたらすことができる。
式(6)は、本質的に、ブラムウェル(Bramwell)−ヒル(Hill)の方程式であり、血管の縦方向膨張は無視できることを仮定する。パルス速度は、式(1)から見ることができるように血管の半径次第である。単一体よりもはるかに小さい関連する膨満感に対して、rの実際値は、rの平均値によって置換することができる。膨満感の変化は、概して、約10%よりも小さい。より大きい変化に対しては、非線形の効果を考慮することができる。非線形の効果は、速度が増加する半径と共に減少するため、パルスの広がりを意味する。この効果は、動脈の先細りがパルスシャープニングを意味するという事実に反する。
【0121】
v、A、ΔAを測定し、表示された値から密度pを得たことで、式(6)からのΔPの計算が促進される。
絶対圧力は、一実施形態において、式(5)から得ることができる。これを行うために、2つのパラメータP’およびr
b’が評価される。rの2つの値は、工程iiおよびiii、すなわち{r,r+Δr}から知られている。実際に、rとr+Δrとの血管の半径に対する値の全範囲が、通常、工程iiおよびiiiから既知であるが、2つの値のみが、{P’,r
b’}を判定するのに必要とされる。
【0122】
血管コンプライアンスは、圧力の変化にわたる血管容積の変化、すなわち
【0123】
【数8】
【0124】
として定められ、
lは、1組の電極による測定にさらされる血管部分の長さであり、
r
sは、収縮期圧P
sでの血管の半径であり、
r
dは、拡張期圧P
dでの血管の半径である。
【0125】
本発明の方法は、さらに、血管壁の厚さ、血管の最大直径、血管の最小直径、血管直径の時間的変動、および/または、時間の関数としての血管直径等、測定部位の血管の1つまたは複数のさらなる寸法の判定を含んでもよい。1つまたは複数のさらなる寸法は、平均直径を判定する場合と類似の方法を使用して判定されてもよい。
【0126】
当該方法は、さらに、パルス繰返し数の判定を含んでもよい。
当該方法は非侵襲性であることが一般的に望ましい。好ましくは、当該方法は、血管への圧力の適用を含まない。より好ましくは、当該方法は、好ましくは特定の判定が行われる場合に患者がそれを感じないように実質的に非干渉である。当該方法は、選択された1つまたは複数の心血管の量の連続的、半連続的、またはステップごとの判定として行ってもよい。
【0127】
本発明は、哺乳動物の血管における少なくとも1つの心血管の量を判定するための心血管の量のシステムにも関する。心血管の量のシステムは、
・複数の組の電極であって、電流または電圧等の電気信号が測定部位の電極にわたって適用される場合に皮膚表面を通るおよび電極の組の電極間の容量結合が提供されるように、各組の電極を哺乳動物の皮膚表面に付着させることができる、複数の組の電極、
・それぞれの組の電極にわたって例えば発振信号等の電気信号を適用するための電気要素、
・それぞれの組の電極から電気応答信号を受信するように配置された少なくとも1つのプロセッサおよびメモリユニットであって、プロセッサは、それぞれの組の電極からの電気応答信号に基づき、上記の本発明の方法に従って少なくとも1つの心血管の量を計算するように設計およびプログラムされる、少なくとも1つのプロセッサおよびメモリユニット、
からなる。
【0128】
電極の組は上記のようにあってもよい。一実施形態において、1つまたは複数の組の電極が、例えば国際公開第2007/000164号および/または国際公開第2010/057495号に記載された例えばパッチ等の柔軟なハウジング上に適用される。
【0129】
任意で電極と組み合わせたハウジング/パッチは、再利用できるかまたは使い捨てであってもよい。電圧は、例えば電池等、いかなる電気要素から加えられてもよい。電源は、電極に放出可能に接続されてもよく、電極に使い捨てのハウジング/パッチを適用するのを簡単にしている。電極は、予め選択された位置にてパッチに固定されてもよい。
【0130】
心血管の量のシステムは、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のメモリユニットからなってもよく、ここで、1つのメモリユニットおよびプロセッサもしくはこれらのうちいくつかは、1つの単一ユニットにおいて組み合わせてもよいか、または、いくつか別のユニットの形状にあってもよい。1つまたは複数のプロセッサは共に、それぞれの組の電極からの信号に基づき少なくとも1つの心血管の量を計算するように設計およ
びプログラムされる。
【0131】
一実施形態において、1つまたは複数のプロセッサは共に、それぞれの組の電極からの信号に基づき測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および膨満感を計算するようにプログラムされる。
【0132】
一実施形態において、1つまたは複数のプロセッサは共に、測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および膨満感の判定に基づき少なくとも1つの心血管の量を計算するようにプログラムされる。
【0133】
一実施形態において、1つまたは複数のプロセッサは共に、測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および膨満感の判定に基づき収縮期血圧、拡張期圧を計算する、および/または、血管コンプライアンスを計算するようにプログラムされる。
【0134】
一実施形態において、少なくとも1つのメモリユニットが、判定されたインピーダンスの値を記憶するために電極の組に直接結合される。
一実施形態において、少なくとも1つのプロセッサユニットが、インピーダンスの値を前処理するが収縮期血圧、拡張期圧の最終計算は行わないおよび/または血管コンプライアンスは計算しないために、電極の組に直接または無線で結合される。
【0135】
前処理は、好ましくは、電極の組にわたった平均インピーダンス、最小インピーダンス、最大インピーダンス、インピーダンスの時間的変動、時間の関数としてのインピーダンス、または、前述のインピーダンスパラメータのうち2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つのインピーダンスパラメータのうち少なくとも1つの判定からなる。一実施形態において、前処理は、それぞれの組の電極からの信号に基づく測定部位の血管の平均直径、弾性に関連した量、および膨満感の判定からなる。
【0136】
一実施形態において、少なくとも1つのメモリユニットおよび少なくとも1つの前処理プロセッサは、局部患者ユニットに組み込まれ、局部患者ユニットは、それぞれの組の電極に直接または無線でデータ接続されてもよい。局部患者ユニットは、例えば、患者によって運ばれるように適合されても、または、患者の家もしくは患者がいると予想される環境に配置されるよう適合されてもよい。一実施形態において、局部患者ユニットは、PCまたは携帯電話に組み込まれる。
【0137】
一実施形態において、少なくとも1つのプロセッサが主要なプロセッサユニットに組み込まれ、この1つまたは複数のプロセッサは、局部患者ユニットから得られるデータに基づき収縮期血圧、拡張期圧を計算するよう、および/または血管コンプライアンスを計算するようにプログラムされる。局部患者ユニットおよび主要なプロセッサユニットは、直接接続または無線接続によってデータ通信を提供するように適合されてもよい。一実施形態において、局部患者ユニットからのデータは、インターネットを介して主要なプロセッサユニットに送信することができる。
【0138】
発明の方法の1つの利点は、血管を含む肢に逆圧を適用する必要なく血管に対する正確な測定を提供することが現在可能であることであるが、逆圧が実際適用されている間に発明の方法を行うこともできると理解されていることに留意されたい。約40mmHgの逆圧は、動脈上で行われた測定に対して無視できる効果を有するが、血液が存在しないように静脈を本質的に圧迫し、動脈の断面の判定を簡単にする。適用される外部圧力の関数として膨満感を測定することも、その独自の本来の状態において診断または予後の値を有し得る。
【0139】
「からなる/含む」という用語は、本明細書において使用される場合、オープンターム(open term)として解釈されることになる、すなわち、1つまたは複数の要素、ユニット、完全体、工程、構成要素、およびその組み合わせ等、明確に述べられた1つまたは複数の特徴の存在を特定するように利用されるべきであるが、1つまたは複数の他の述べられた特徴の存在または追加を排除しないことが強調されるべきである。
【0140】
範囲および好ましい範囲を含む本発明の全ての特徴および実施形態は、そのような特徴を組み合わせない特定の理由がない限り、本発明の範囲において種々の方法で組み合わせることができる。
【0141】
本発明の適用性のさらなる範囲は、以下に与えられる実施例および実施形態の詳細な説明から明らかになる。しかし、本発明の真意および範囲内の種々の変化および修正がこの詳細な説明から当業者には明らかになるため、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しながら、例証のみとして与えられることが理解されるべきである。
【0142】
本発明は、多くの実施例に関して、および、図面を参考にして以下においてより完全に説明される。