【実施例】
【0025】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されないのは明らかである。
(実施例1)3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物(非結晶性)の製造
公知の方法に従って3’,5’−サイクリックジアデニル酸を合成し、精製を行った。
精製して得られたOD257が709の3’,5’−サイクリックジアデニル酸溶液(141mL)を、OD257が20となるよう水で希釈した。撹拌しながら1Nの塩酸溶液をゆっくり加え、pH1.8となるよう調整した。結果、水溶液中に白色固体が析出した。
【0026】
包接化合物をさらに効率よく取得するため、プログラムインキュベーターを用いて当該溶液を60℃に加温した。その後、温度勾配 −4℃/hrで、液温が4℃になるまで冷却した。析出物をグラスフィルター(17G3)にて濾取し、白色固体を得た。当該白色固体を60℃で6時間乾燥させ、包接化合物(非結晶性)2.169gを得た。
【0027】
(参考例)3’,5’−サイクリックジアデニル酸の凍結乾燥品の製造
酵素合成した3’,5’−サイクリックジアデニル酸1gを20mLの水に懸濁した後、1N NaOH溶液でpH7.0に,または5%アンモニア水で7.4に調整することによって、懸濁した3’,5’−サイクリックジアデニル酸を溶解した。
溶解した3’,5’−サイクリックジアデニル酸溶液を水でさらに35mLまで希釈した後、凍結乾燥機にて凍結乾燥を行うことにより、3’,5’−サイクリックジアデニル酸のナトリウム塩またはアンモニウム塩の凍結乾燥品を得た。
【0028】
(実施例2)3’,5’−サイクリックジアデニル酸包接化合物(非結晶性)の物性
上記実施例1で調製した3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物に対する機器分析の結果を示す。
(機器分析)
(A)純度検定
上記実施例1で得られた3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物の純度を、高速液体クロマトグラフィー法で分析した。結果、3’,5’−サイクリックジアデニル酸純度は99.8%であった。なお、高速液体クロマトグラフィー法は以下の条件で行った。
(条件)
カラム:Hydrosphere C18(YMC社製)
溶出液:0.1M TEA-P(pH6.0)
検出法:UV260nmによる検出
【0029】
(B)形状
3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物の代表的な写真を
図1に示す。
図1に示すように、3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物は針状の形状を示すことが明らかとなった。
また、3’,5’−サイクリックジアデニル酸ナトリウム塩、および3’,5’−サイクリックジアデニル酸アンモニウム塩の凍結乾燥品は、写真を
図2、3に示すように、包接化合物とは全く異なる形状であった。
【0030】
(C)水分
熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置(昇温速度5℃/分)で分析したところ、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物中の水分は、再乾燥前の包接化合物で8.7〜9.5%、100℃の減圧乾燥による再乾燥後の包接化合物で3.5〜3.6%、再乾燥した包接化合物を室温、湿度40〜50%で一晩放置した包接化合物で10.3%、再乾燥した包接化合物を温度30℃、湿度70%で一晩放置した包接化合物で15.0%、20℃で2時間真空乾燥させた包接化合物で17.0%であった。
すなわち計算により、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物は、乾燥の度合いに応じて、3’,5’−サイクリックジアデニル酸1分子に対しそれぞれ1.1〜6.1分子の水分子が結合又は付着していることが明らかとなった。
【0031】
なお、3’,5’−サイクリックジアデニル酸ナトリウム塩の凍結乾燥品、3’,5’−サイクリックジアデニル酸アンモニウム塩の凍結乾燥品についても同様に熱重量測定を行ったところ、再乾燥前の測定値で、ナトリウム塩の凍結乾燥品は16〜17%、アンモニウム塩の凍結乾燥品は13〜15%の水分を含有していた。
【0032】
(D)示差走査熱量分析
熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置(昇温速度5℃/分)で分析したところ、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物は、220℃付近において特徴的吸熱ピークを示した(
図4)。
これに対し、3’,5’−サイクリックジアデニル酸ナトリウム塩の凍結乾燥品は267℃付近を示し(
図5)、アンモニウム塩の凍結乾燥品は228〜229℃付近に吸熱ピークを示した(
図6)。
【0033】
(E)核磁気共鳴スペクトル
本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物に6NのNaOH溶液を2μL添加して溶解させ、重水を用いて濃度6mg/0.6mlとなるよう希釈し、核磁気共鳴スペクトル測定(
1H、
13C、
31P)を行った。測定結果をそれぞれ
図7〜9に示す。
【0034】
結果、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物は
1Hのときは8.37、7.96、6.08、4.98−5.02、4.86、4.51−4.55、4.17(ppm)付近にピークを有していた。また、
13Cのときは、157.9、155.4、150.0、141.6、121.3、93.1、82.8、76.7、73.3、65.2(ppm)付近にピークを有していた。
31Pのときは、−0.91(ppm)付近にピークを有していた。
【0035】
(F)赤外線吸収スペクトル
本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物、3’,5’−サイクリックジアデニル酸ナトリウム塩の凍結乾燥品、3’,5’−サイクリックジアデニル酸アンモニウム塩の凍結乾燥品について、フーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One(Perkin Elmer)を用いてATR(Attenuated Total Reflectance、減衰全反射)法によって赤外線吸収スペクトルを測定した。
【0036】
それぞれの包接化合物で観察された特徴的なピーク(cm
−1)の値を表1に示す。また、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物、3’,5’−サイクリックジアデニル酸ナトリウム塩の凍結乾燥品、3’,5’−サイクリックジアデニル酸アンモニウム塩の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ
図10〜12に示す。
【0037】
結果、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物は、3087、1686、1604、1504、1473、1415、1328、1213(cm
−1)付近に特徴的なピークを有していた。
【0038】
【表1】
【0039】
(G)粉末X線回折
本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸包接化合物について、下記の測定条件でX線回折スペクトルを測定した。
【0040】
(測定条件)
ターゲット:Cu
X線管電流:40mA
X線管電圧:45kV
走査範囲:2θ=4.0〜40.0°
前処理:めのう製乳鉢を用いて粉砕
【0041】
測定の結果、X線回折スペクトルのパターンに明瞭なピークは観察されず、本包接化合物は非結晶性であることが示された。
【0042】
(実施例3)
[1]3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物の製造(1)
公知の方法により、酵素的に3’,5’−サイクリックジアデニル酸を合成し、精製を行った。精製して得られたOD257が473の3’,5’−サイクリックジアデニル酸溶液(280mL)を、OD257が40となるよう水で希釈した。撹拌しながら2Nの塩酸溶液を加えpH1.8となるよう調整した。結果、水溶液中に白色固体が析出した。
【0043】
包接化合物をより効率的に取得するため、プログラムインキュベーターを用いて当該溶液を50℃に加温した。その後、温度勾配 −3℃/hrで、液温が4℃になるまで冷却し、固体を析出せしめた。析出物をグラスフィルター(17G3)にて濾取し、白色固体を得た。当該白色固体を室温にて真空乾燥させ、3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物を得た。
【0044】
[2]3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物の製造(2)
公知の方法により、酵素的に3’,5’−サイクリックジアデニル酸を合成し、精製を行った。精製して得られたOD257が758の3’,5’−サイクリックジアデニル酸溶液(400mL)を、OD257が100となるよう水で希釈した。包接化合物をより効率的に取得するため、プログラムインキュベーターを用いて当該溶液を50℃に加温し、撹拌しながら2Nの塩酸溶液を加えpH1.8となるよう調整した。
【0045】
その後、温度勾配 −4℃/hrで、液温が4℃になるまで冷却し、固体を析出せしめた。析出物をグラスフィルター(17G3)にて濾取し、白色固体を得た。当該白色固体を室温にて真空乾燥させ、3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物を8.5g得た。
【0046】
(実施例4)3’,5’−サイクリックジアデニル酸包接化合物(結晶性)の物性
(H)形状
上記実施例3で調製した3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物(結晶性)の写真を
図13に示す。
図13に示すように、3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物(結晶性)は針状の形状を示した。
(I)示差走査熱量分析
熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置(昇温速度5℃/分)で分析したところ、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物は、193℃付近において特徴的吸熱ピークを示した(
図14)。
(J)水分
熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置(昇温速度5℃/分)で分析したところ、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物中の水分を温度20℃の条件で2時間真空乾燥させたときの水分含量は17.0%であった。
【0047】
(K)粉末X線回折
本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸包接化合物について、(G)と同一の測定条件でX線回折スペクトルを測定した。
【0048】
結果、
図15および表2に示すように、本発明の3’,5’−サイクリックジアデニル酸包接化合物は、回折角(2θ)が、9.2、10.2、10.9、11.1、13.7、15.2、19.0、20.6、22.4、23.1、24.3、26.6、26.8(°)付近に特徴的なピークを示した。
【0049】
また、X線回折スペクトルのパターンから、本実施例において取得した3’,5’−サイクリックジアデニル酸包接化合物は結晶性物質であることが判明した。
【0050】
【表2】
【0051】
(L)純度検定
3’,5’−サイクリックジアデニル酸の包接化合物(結晶性)の純度を、高速液体クロマトグラフィー法で分析した。結果、3’,5’−サイクリックジアデニル酸純度は99.7%であった。なお、高速液体クロマトグラフィー法の条件は、実施例1と同じとした。