【実施例】
【0018】
次に、上述した実施形態に対応する具体的な実施例について、
図2乃至
図5を用いて説明する。なお以下に説明する実施例は、実施形態に係る移動体の一例に相当する車両にそれぞれ搭載された端末装置により当該車両の走行を支援する車車間通信システムに対して実施形態を適用した場合の実施例である。
【0019】
また、
図2は実施例に係る車車間通信システムの概要構成を示すブロック図であり、
図3は実施例に係る端末装置の概要構成を示すブロック図である。更に、
図4は実施例に係る走行支援処理を示すフローチャートであり、
図5は当該走行支援処理を例示する概念図である。このとき
図3では、
図1に示した実施形態に係る移動支援装置Sにおける各構成部材に対応する実施例の構成部材それぞれについて、当該移動支援装置Sにおける各構成部材と同一の部材番号を用いている。また
図5は、実施例に係る走行支援処理を、データ処理上の概念的として説明する図である。
【0020】
図2に示すように、実施例に係る車車間通信システムCSは、それぞれが車両Cに搭載された端末装置SSであって、アンテナATを介した直接の無線通信による相互接続により種々のデータの授受が可能とされている端末装置SSにより構成されている。ここで車車間通信システムCSを構成する端末装置SSには、それ自体が案内用の地図データを記録している端末装置SSbと、それ自体は当該地図データを記録していない実施例に係る端末装置SSaと、が含まれている。
【0021】
次に、実施例に係る端末装置SSaについて、
図3を用いてその構成及び概要動作を説明する。
【0022】
図3に示すように、実施例に係る端末装置SSaは、アンテナATに接続されたインターフェース1と、CPU、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる処理部10と、揮発性領域及び不揮発性領域を有するメモリ11と、操作ボタン又はタッチパネル等からなる操作部12と、端末装置SSaを備える車両Cの現在位置を検出するための各種センサ等からなるセンサ部13と、端末装置SSaとして必要な情報を表示するための液晶ディスプレイ等からなるディスプレイ14と、により構成されている。このときインターフェース1が、実施形態に係る移動体情報取得手段1の一例、現在位置情報取得手段4の一例及び移動路情報取得手段3の一例、並びに本願に係る「提供手段」の一例に、それぞれ相当する。またディスプレイ14が本願に係る「出力手段」の一例に相当する。
【0023】
また処理部10は、実施形態に係る移動判定手段2の一例及び本願に係る「検出手段」の一例にそれぞれ相当する移動判定部2と、本願に係る「環境判定手段」の一例及び「必要性判定手段」の一例にそれぞれ相当する必要性判定部15と、実施形態に係る支援手段5の一例に相当する支援部5と、により構成されている。このとき、移動判定部2、必要性判定部15及び支援部5はそれぞれ、処理部10を構成するハードウェアロジック回路により実現されるものであってもよいし、後述する走行支援処理用プログラムを処理部10が読み出して実行することによりソフトウェア的に実行されるものであってもよい。更に、インターフェース1並びに処理部10の移動判定部2及び支援部5により、実施形態に係る移動支援装置Sの一例を構成している(
図3破線参照)。
【0024】
以上の構成においてインターフェース1は、処理部10の制御の下、他の端末装置SSbとの間のデータの授受を制御する。またメモリ11は、実施例に係る走行支援処理を処理部10が実行するに当たって必要なデータ等を一時的に記憶すると共に、必要に応じて読み出させる。更にセンサ部13は、例えば自立的に或いはGPS(Global Positioning System)航法衛星からの航法電波を受信する等の手法により、端末装置SSaの現在位置を検出し、当該現在位置を示す現在位置データを処理部10に出力する。更に操作部12は、端末装置SSaとしての動作を指定するための操作等が実行されることにより、当該操作等に対応する操作信号を処理部10に出力する。これらにより処理部10は、必要な情報をディスプレイ14に表示しつつ、実施例に係る走行支援処理を実行する。このとき、処理部10の移動判定部2、必要性判定部15及び支援部5が中心となって、当該走行支援処理を実行する。
【0025】
次に、実施例に係る走行支援処理について、より具体的に
図3乃至
図5を用いて説明する。なお実施例に係る走行支援処理は、例えば操作部12における開始操作が行われたことをトリガとして開始される。また以下の説明において、後述する車両C0乃至車両C3について共通の事項を説明する場合、単に「車両C」と示す。
【0026】
即ち実施例に係る走行支援処理は
図4に示すように、例えば上記開始操作が行われると処理部10は先ず、インターフェース1及びアンテナATを介した他の車両Cの端末装置SSbとの間の直接の無線通信(車車間通信)により、当該走行支援処理に必要なデータを取得する(ステップS1)。このステップS1の処理により他の端末装置SSbから取得されるデータには、例えば送信元識別データ、宛先識別データ、現在位置データ、種別データ、形状データ、交差点データ、軌跡データ、距離データ等が含まれている。これらのうち、例えば送信元識別データ、宛先識別データ、現在位置データ、軌跡データ及び距離データ等が実施形態に係る移動体情報の一例に相当し、また種別データ、形状データ及び交差点データ等が実施形態に係る移動路情報の一例に相当する。このとき送信元識別データは、当該端末装置SSbが搭載されている車両Cを他の車両Cから識別するためのデータである。また宛先識別データは、送信先(宛先)である端末装置SSaが搭載されている車両Cを他の車両Cから識別するためのデータである。更に現在位置データは、端末装置SSbが搭載されている車両Cの現在位置を示すデータである。また種別データは、当該車両Cが現在走行している道路の種別(例えば、一般道路を走行しているか、或いは高速道を走行しているか等の種別)を示すデータである。更に形状データは、当該車両Cが現在走行している道路の形状を例えばいわゆるリンクデータ及びノードデータ等により示すデータである。また交差点データは、当該車両Cが現在走行している道路において進行方向直近にある交差点の位置、その交差点までの距離及び方位、その交差点の形状、並びにその交差点における信号の有無等を示すデータである。更に軌跡データは、当該車両Cの走行履歴(走行軌跡)を示すデータである。最後に距離データは、端末装置SSbが搭載されている車両Cと端末装置SSaが搭載されている車両Cとの間の距離(両者が同じ道路を同じ方向に走行している場合には両者の車間距離となる)をそれぞれ示すデータである。なおこの場合の種別データ、形状データ及び交差点データは、端末装置SSbが搭載されている車両Cが通常の案内用の地図データを記録していることに起因して送信されてくる。
【0027】
ステップS1において各種データの受信が開始されると、処理部10は次に、後述するステップS3及びステップS4の判定を行うために必要とされる既定量のデータが取得できたか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2の判定において当該必要とされる量のデータが未だ取得できていない場合(ステップS2;NO)、処理部10は上記ステップS1に戻って各種データの取得を継続する。一方ステップS2の判定において必要な量のデータが取得できた場合(ステップS2;YES)、処理部10の移動判定部2は次に、ステップS1により取得できたデータと、端末装置SSa自体のセンサ部13から出力されてきた現在位置データ等に基づいて、端末装置SSaが搭載されている車両C0が現在走行している道路と同一の道路を走行している他の車両C(他の端末装置SSbが搭載されている車両C)があるか否かを判定する(ステップS3)
この場合に移動判定部2は、例えば
図5(a)に示すように、実施例に係る端末装置SSaが搭載されている車両C0(その走行軌跡は軌跡TR0である)に対して同一の道路の前方を走行する車両C1に搭載されている端末装置SSbから車両C1の軌跡TR1を示す上記軌跡データ、上記形状データ及び上記現在位置データが送信されてきている場合において、当該軌跡データ及び形状データにより示される走行軌跡と車両C0の走行軌跡との一致度を判定し、当該一致度が予め設定された閾値以上である場合に、車両C1が車両C0(自車)と同一の道路を走行していると判定する。また同様に移動判定部2は、車両C0に対して同一の道路の後方を走行する車両C2に搭載されている端末装置SSbから当該車両C2の軌跡TR2を示す上記軌跡データ、上記形状データ及び上記現在位置データが送信されてきている場合において、当該軌跡データ及び形状データにより示される走行軌跡と車両C0の走行軌跡との一致度を判定し、当該一致度が予め設定された閾値以上である場合に、車両C2が車両C0と同一の道路を走行していると判定する。
【0028】
なおステップS3の判定として移動判定部2は、この他に例えば、車両C1(又は車両C2)から上記距離データが受信されている場合において、車両C1と車両C0との車間距離の変化(又は車両C2と車両C0との車間距離の変化)が所定の閾値以下の場合、二台の車両C(車両C0と車両C1、又は車両C0と車両C2)が同一の道路上を走行していると判定してもよい。
【0029】
ステップS3の判定において、同一の道路を走行している他の車両Cがない場合(ステップS3;NO)、処理部10は上記ステップS1に戻って各種データの取得を継続する。一方、ステップS3の判定において、同一の道路を走行している他の車両Cがある場合(ステップS3;YES)、移動判定部2は次に、端末装置SSaが搭載されている車両C0が現在走行している道路と同一の道路を走行している他の車両Cが複数あるか否かを判定する(ステップS4)。このステップS4の判定において移動判定部2は、上記ステップS3の判定において同一の道路上を走行していると判定された車両Cが複数あったか否か等により、当該複数の車両Cが走行しているか否かを判定する。例えば
図5(a)に例示する場合は、車両C0の前後に同一道路上を走行する車両C1及び車両C2が二台あると判定される(ステップS4;YES)。ステップS4の判定において、同一の道路を走行している他の車両Cが一台のみである場合(ステップS4;NO)、処理部10は上記ステップS1に戻って各種データの取得を継続する。一方、ステップS4の判定において、同一の道路を走行している他の車両Cが複数ある場合(ステップS4;YES)、処理部10は次に、それらの車両Cからそれぞれ受信しているデータにおける例えば上記種別データの内容が一致しているか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5の判定において両者が一致していない場合(ステップS5;NO)、同一の道路を走行しているにも拘わらずその道路の種別が異なっていることになるため、各車両Cから受信されたデータの信頼度が低いことになる。よってこの場合に処理部10は、上記ステップS1に戻って引き続きデータの取得を行う。なお、ステップS5の判定において「NO」と判定される原因(信頼度低下の原因)としては、例えば、車両C1及び車両C2内にそれぞれ記録されている地図データ間のヴァージョンが異なることなどが挙げられる。
【0030】
他方、ステップS5の判定において各種別データの内容が一致している場合(ステップS5;YES)、受信したデータの信頼度が高いと判定されることから、次に処理部10の必要性判定部15は、同一の道路を走行している車両C1及び車両C2から受信した上記種別データ等を用いて、端末装置SSaが搭載されている車両C0の例えば運転者に対する走行支援が必要であるか否かを判定し(ステップS6)、当該必要性がないと判定された場合は(ステップS6;NO)後述するステップS8に移行し、当該必要性があると判定された場合は(ステップS6;YES)、処理部10の支援部5により当該判定結果に応じた走行支援を実行する(ステップS7)。
【0031】
ここで、上記ステップS6及びステップS7による走行支援処理について、
図5(b)を用いて例示しつつ説明する。
【0032】
例えば
図5(b)に示すように、端末装置SSaが搭載されている車両C0と、端末装置SSbがそれぞれ搭載されている車両C1、車両C2及び車両C3と、が車車間通信を行っているとする(
図4ステップS1乃至ステップS5参照)。そして、車両C0、車両C1及び車両C2は、
図5(b)に例示する順で一般道を
図5(b)中左方向に走行しているとする。これに対して車両C3は、車両C0等が走行している一般道に対して高架により交差する高速道を
図5(b)中上方向に走行しているとする。このとき車両C1と車両C2とは車両C0と同一の道路を走行中と判定されるが(
図4ステップS3;YES及びステップS4;YES参照)、車両C3は同一の道路を走行しているとは判定されない(
図4ステップS3;NO参照)。そして、車両C0等が走行する一般道の前方直近には交差点CR1があることを車両C1又は車両C2からの上記交差点データにより処理部10が認識しており、車両C3が走行する高速道の前方直近には例えばパーキングエリアに入るための分岐点CR2があることを車両C3からの上記交差点データにより処理部10が認識しているとする。
【0033】
この
図5(b)に例示する場合、処理部10の必要性判定部15は、一般道を走行する車両C0と、当該一般道に対して高架により交差する高速度を走行する車両C3とは、交差点CR1においても分岐点CR2においても衝突する可能性がないと判定できる。よってこの場合に必要性判定部15は、走行支援の必要性がないと判定する(
図4ステップS6;NO参照)。
【0034】
これに対して、例えば車両C3が一般道を走行していることが車両C3からの上記種別データにより示されており、且つ、車両C0等が走行する一般道の前方直近にある交差点CR1の位置と、車両C3が走行する一般道の前方直近にある交差点の位置と、が一致していると判定される場合、必要性判定部15は走行支援の必要性があると判定する(
図4ステップS6;YES参照)。これにより支援部5は、例えばディスプレイ14又は図示しない音声出力部を用いて、前方の交差点CR1で交差する可能性のある車両C3に関する注意喚起を行う等の走行支援を実行する(
図4ステップS7参照)。なおこのとき、例えば相互に交差する可能性のある交差点CR1に対する進入のタイミングが相互に異なっている場合や、当該交差点CR1における信号の切り換わり状態により同時に交差点CR1に進入する可能性がない場合等については、車両C3に関する上記走行支援を行わないようにしてもよい。
【0035】
ステップS6の判定において走行支援の必要性がないと判定された場合(ステップS6;NO)、又はステップS7の走行支援が実行された後、処理部10は、車両C0において他の車両Cから受信した各データ(車両C0が走行している道路の種別データや形状データ等を含む)を、他の車両C(例えば
図5(b)に例示する車両C3)に対して送信する(ステップS8)。
【0036】
その後処理部10は、例えば端末装置SSaの電源がオフとされたり、或いは実施例に係る走行支援についてこれを行わない旨の設定がされる等の理由により、実施例に係る走行支援処理を終了するか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9の判定において引き続き走行支援処理を実施する場合(ステップS9;NO)、処理部10は上記ステップS1に戻る。一方ステップS9の判定において実施例に係る走行支援処理を終了する場合(ステップS9;YES)、処理部10はそのまま当該走行支援処理を終了する。
【0037】
以上それぞれ説明したように、実施例に係る車車間通信システムCSの動作によれば、他の車両Cから現在位置データ等を取得し、他の車両Cが同一の道路を移動しているか否かを判定し(
図4ステップS3及びステップS4参照)、同一の道路を移動している他の車両Cから当該他の車両Cに関連する種別データ等を取得する(
図4ステップS1参照)。これにより、その種別データ等に基づいた走行支援の必要性を判定し(
図4ステップS6参照)、走行支援が必要であると判定された場合にそれを実行する(
図4ステップS7参照)。よって、他の車両Cからの種別データ等に基づいた走行支援が必要とされる場合に当該走行支援が実行されるので、例えば独自の地図データ等が記録されていない車両C0の端末装置SSaであっても、その車両C0についての有効な走行支援を行うことができる。
【0038】
また、走行支援が必要であると判定された場合に、種別データや交差点データ等に基づいて進行方向の交差点CR1の有無等を判定し、当該交差点CR1等の状況を出力するので、的確に走行支援を行うことができる。
【0039】
更に、他の車両Cから送信されてくるデータが、軌跡データ又は距離データの少なくともいずれか一方を含む場合は、これらに基づいてより具体的な走行支援を行うことができる。より具体的には、例えば軌跡データが送信されてくる場合、その軌跡データに基づいて他の車両Cの走行軌跡との一致度を検出し、その一致度に基づいて車両C0と車両C1等とが同一の道路を走行しているか否かを判定することとすれば、同一の道路を各車両Cが走行しているか否かを正確に判定して走行支援を行うことができる。また、距離データが送信されてくる場合、その距離データにより示される車間距離の変化に基づいて各車両Cが同一の道路を走行しているか否かを判定することとしても、同一の道路を各車両Cが走行しているか否かを正確に判定して走行支援を行うことができる。
【0040】
更にまた、他の車両Cから送信されてきた種別データに基づいて各車両C同士の衝突に関連する走行支援の必要性を判定するので、道路の種別に基づいて的確に走行支援の必要性を判定することができる。
【0041】
また、同一の道路以外の道路を移動している他の車両C(例えば、
図5(b)に例示する車両C3)に対して、端末装置SSaにおいて受信したデータを送信するので(
図4ステップS8参照)、当該他の車両Cにおいても、車両C0と同様な走行支援を実行することができる。
【0042】
なお上述した実施例では、ステップS3乃至ステップS5それぞれの判定において「NO」であった場合、それぞれステップS1に戻ることとしたが、これ以外に、ステップS3乃至ステップS5それぞれの判定において「NO」であった場合にも上記ステップS6に移行するように構成してもよい。この場合、上記ステップS8の前に、車両C0が走行している道路についての種別データ等が判定できた場合にはそれを他の車両Cに送信し、当該種別データ等が判定できない場合は当該送信をしないように構成することができる。
【0043】
また上述した実施例では、車車間通信を用いる車車間通信システムCSに対して本願を適用した場合について説明したが、これ以外に、例えばインターネット等のネットワークを介して(即ち、所定のサーバ装置を介して)車両C間のデータの授受を行う通信システムに対して本願を適用することも可能である。この場合には、上記送信元識別データ等を用いて各端末装置SSが互いを識別しつつ、データの授受を行うことになる。
【0044】
更に、上述した実施例では、車車間通信を用いる車車間通信システムCSに対して本願を適用した場合について説明したが、これ以外に、例えば実施形態に係る移動体の一例としての人が携帯する携帯型情報端末装置(いわゆるスマートフォンを含む)間で通信を行いつつ、その携帯型情報端末装置を携帯する人の移動を支援するシステムに対して本願を適用することも可能である。この場合には、互いを識別する識別データ等を用いて互いの識別しつつ、携帯型情報端末装置間において必要なデータの授受を行うことになる。
【0045】
更にまた、
図4に示したフローチャートに相当する走行支援用プログラムを、光ディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して取得しておき、これを汎用のマイクロコンピュータ等に読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータ等を実施例に係る処理部10として機能させることも可能である。