(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブタジエンおよびスチレンをベースとするコポリマーが、スチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)、スチレン−ブタジエン−イソプレンコポリマー(SBIR)およびこれらのコポリマーの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載のタイヤ。
【背景技術】
【0002】
まず、ラジアルカーカス補強材を有するタイヤは、公知の仕方で、トレッド、2つの非伸縮性ビーズ、ビーズとトレッドを連結する2つのサイドウォール、およびカーカス補強材とトレッドの間に円周方向に配置されたベルトを含み、このベルトは、金属もしくは織物型のコードまたはモノフィラメントなどの補強用エレメント(または「補強材」)によっておそらく補強されているゴムの様々なプライ(または「層」)からなっていることは簡単に想起されよう。
タイヤベルトは、一般に、「ワーキング(working)」プライまたは「交差(cross)」プライと称されることがある、重ね合わせた少なくとも2つのベルト層またはプライからなり、その補強材は、層内で互いに、ほぼ平行に配置されるが、1つの層と別の層は交差している、すなわち、正中円周平面(median circumferential plane)に対して対称的かまたは非対称的に、当該タイヤの種類に応じて概ね10°〜45°の間の角度で傾斜している。これらの交差層のそれぞれは、一般に、補強材をコーティングする「カレンダー加工ゴム(calendering rubber)」と称されることがあるイソプレンをベースとするゴムマトリックスからなる。交差層は、補強材を含むか含まないで、環境に応じて幅を変えて、ゴムの他の様々な補助的プライまたは層で補うことができ;例としては、ベルトの残りの部分を外部からの攻撃または貫通から保護する役割を有する「保護」層として公知であるか、あるいは、それらが交差層に対して径方向に外側かまたは内側にある、ほぼ円周方向に配向された補強材を含む「フーピング(hooping)」層(「0度(zero degree)」層として公知である)として公知である、簡単な防振ゴムが挙げられよう。
【0003】
このタイヤベルトは、公知の仕方で、多くの、時には矛盾する要件、特に:
(i)変形が少なく、できるだけ剛性であること。これは、タイヤのクラウンを強固にするのに実質的に寄与するためである;
(ii)一方では、クラウンの内部域の回転発熱を最少にし、他方では、タイヤの転がり抵抗を減少させる(これは燃料節減に合致する)ように、できるだけ低いヒステリシスを有すること;
(iii)最後に、特に、タイヤの「ショルダー」域における交差層の末端の分離またはクラッキングの現象(この問題は「層間剥離(delamination)」として公知である)に関して、高い耐久性を有すること:
を満たさなければならない。
この第3の条件によって、とりわけ、タイヤベルトの構成体に入るゴム組成物は、クラック伝播および熱酸化に対して非常に高い抵抗性を持つように要求される。
【0004】
この要件は、公知のように、それらのトレッドが長期間の回転の後、重大な摩耗度合いに至ったときに、1回または複数回更生できるように設計されている重荷重用タイヤケーシングについて、特に厳しいものである。一般的に言えば、湿潤した腐食性の雰囲気で、特に過酷な回転条件にかけられる傾向のある、とりわけ、乗用車両型または重荷重用車両型の任意のタイヤについても厳しいものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本説明において、別段の明らかな指定のない限り、与えられるすべてのパーセンテージ(%)は質量%である。
さらに、「a〜bの間」という表現で表される値の任意の範囲は、a超からb未満の値(すなわち、限界値aおよびbを除く)の範囲を表し、「a〜b」という表現で表される値の任意の範囲は、a〜bの値(すなわち、厳密な限界値aおよびbを含む)の範囲を意味する。
「phr」という略語は、エラストマーまたはゴムの(複数のエラストマーが存在する場合、それらのエラストマーのすべての)100部当たりの質量部を意味する。
【0009】
したがって、本発明の対象は、すなわち、公知のように定義により、空気または膨張用ガスと接触しておらず、その耐クラッキング性が改善されており、少なくとも:
− 50〜100phrの(少なくとも1つ、すなわち1つまたは複数の)イソプレンエラストマーを含み;
− 0〜50phrの別の(少なくとも1つ、すなわち1つまたは複数の)ジエンエラストマーを含んでもよく;
− 0〜15phr未満の(少なくとも1つ、すなわち1つまたは複数の)カーボンブラック;
− 40〜100phrの間の(少なくとも1つ、すなわち1つまたは複数の)ナノスケールの無機充填剤
を含む少なくとも1つの「内部」ゴム組成物を含むタイヤであって、この内部組成物が、(エラストマー/無機充填剤)カップリング剤を含まないか、または、ナノスケールの無機充填剤の質量に対して2%未満の(エラストマー/無機充填剤)カップリング剤しか含まないことを特徴とする、タイヤである。
上記のすべての成分を以下で詳細に説明する。
【0010】
4.1.イソプレンエラストマー
「ジエン」エラストマー(またはゴム、この2つの用語は同意語と見なされる)という用語は一般に、ジエンモノマー、すなわち、2つの(共役型または非共役型)炭素−炭素二重結合を担持するモノマーから少なくとも一部誘導されたエラストマー(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものとする。
与えられているこの一般的な定義で、本特許出願において、「イソプレンエラストマー」は、イソプレンのホモポリマーまたはコポリマー、言い換えれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、イソプレンの種々のコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味するものとする。イソプレンのコポリマーの中では、特に、イソブテン−イソプレンコポリマー(ブチルゴム−IIR)、イソプレン−スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン−ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SBIR)が挙げられよう。
イソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴムまたはcis−1,4型の合成ポリイソプレンである。これらの合成ポリイソプレンの中では、90%超、特に95%超、より好ましくは98%超のcis−1,4結合の含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用することが好ましい。
本発明の1つの変形実施形態によれば、イソプレンエラストマーは単独で、すなわち、別のジエンエラストマーとブレンドすることなく使用される。さらに、このイソプレンエラストマーはもっぱら天然ゴムであることがより好ましい。
【0011】
4.2.場合による他のジエンエラストマー
本発明の別の変形実施形態によれば、イソプレンエラストマーをブレンドで、すなわち、イソプレンエラストマー以外の第2のジエンエラストマーと混合して使用することができる。
したがって、本発明による組成物は、0〜50phrのこのイソプレンエラストマー以外の第2のジエンエラストマーを、好ましくは少量(すなわち、50phr未満の含量で)含むことができる。イソプレンエラストマーはより好ましくは、ジエンエラストマーの全体の75〜100質量%、すなわち75〜100phr(エラストマー100部当たりの質量部)を表す。
【0012】
イソプレンエラストマー以外のジエンエラストマーのために、とりわけ、ポリブタジエン(BR)、特にcis−1,4−ポリブタジエンまたはシンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、および4%〜80%の間の1,2−単位の含量を有するもの、ならびにブタジエンコポリマー、例えばスチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)、スチレン−ブタジエン−イソプレンコポリマー(SBIR)およびそうしたブタジエンホモポリマーまたはコポリマーの混合物が挙げられよう。とりわけ、5%〜50%の間、より特別には20%〜40%の間のスチレン含量、4%〜65%の間のブタジエン部の1,2結合含量、および30%〜80の間のtrans−1,4結合含量を有するSBRコポリマーが挙げられよう。
【0013】
本発明に適した内部組成物の例として、とりわけ、第2のジエンエラストマーとして、特に板状充填剤(lamellar filler)(例えば、グラファイト、タルクまたは雲母)の存在下でのそれらの防水特性のため(WO2011/147710を参照されたい)、または、炭化水素ベースの可塑性樹脂の存在下でのそれらの防音特性のため(WO2011/147712またはWO2011/147713を参照されたい)の、高いガラス転移温度(Tg)、特に−40℃超を有するSBRコポリマー、あるいは、さらに、それらの防音特性のため(WO2011/147711を参照されたい)の非常に高いTg(−10℃超)を有するSBRを含む組成物が挙げられよう。
【0014】
4.3.カーボンブラック(場合による)
本発明のタイヤの内部組成物は、カーボンブラックを含まないか、または15phr未満、好ましくはその12phr未満のカーボンブラックを含む。より好ましくは、2〜10phrの間、特に3〜7phrのカーボンブラックを使用する。
カーボンブラックとして、タイヤにおいて慣用的に使用されているすべてのカーボンブラック(「タイヤグレード」ブラック)、例えばシリーズ100、200もしくは300(ASTMグレード)からの補強用カーボンブラックなど、またはより高いシリーズ、特に500、600、700もしくは800からのブラック(例えばN550、N660、N683、N772、N774ブラックなど)が適している。カーボンブラックは、例えばマスターバッチの形態で、ジエンエラストマー、特にイソプレンエラストマーにすでに混ぜ込まれていてよい(例えば出願WO97/36724またはWO99/16600を参照されたい)。
カーボンブラックは、市販されているような単独の状態で、または、他の任意の形態、例えば、公知の仕方で、使用されるゴム添加剤の一部のための担体として使用することができる。
【0015】
4.4.ナノスケールの無機充填剤
ナノスケールの無機充填剤は、カーボンブラック(これは、定義により、本明細書では有機充填剤と見なす)に対するものとして、公知の仕方で、その色または由来(天然または合成)に関係なく、「鉱物性充填剤」、「白色充填剤」、「軽量充填剤」あるいは「非ブラック充填剤」と称されることもある任意の無機充填剤と理解すべきであり、この充填剤は、ナノ粒子すなわち、その平均サイズが定義により、質量で1μm未満、好ましくは500nm未満、特に20〜200nmの間の粒子で形成されている。
【0016】
そうしたナノスケールの無機充填剤は当業者に周知のものであり、カップリング剤の存在下で、タイヤ用のゴム組成物を強化することができる、言い換えれば、それらは、補強する役割で、従来のタイヤグレードカーボンブラックを置き換えることができる。そうした充填剤は一般に、公知の仕方での、それらの表面におけるヒドロキシル(−OH)基の存在によって特徴付けられる。
ナノスケールの無機充填剤、特にシリカの含量は50〜100phrの間、とりわけ50〜90phrの間であることが好ましい。
そのもとでこの充填剤が存在する物理的状態は、それが粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズの形態であるか、また他の適切な任意の緻密化形態であるかは重要ではない。
【0017】
シリカ(SiO
2)型の鉱物性充填剤は特に適している。使用されるシリカは、当業者に公知の任意の補強用シリカ、特に、BET比表面積とCTAB比表面積の両方が450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/g、特に60〜300m
2/gの間である任意の沈降シリカまたはヒュームドシリカであってよい。特に本発明を、低い転がり抵抗を有するタイヤを製造するために用いる場合、高度に分散性の沈降シリカ(「HDS」と称される)が特に使用される;そうしたHDSシリカの例として、Evonikからの「Ultrasil」7000シリカ、Rhodiaからの「Zeosil」1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ、PPGからの「Hi−Sil」EZ150Gシリカ、Huberからの「Zeopol」8715、8745または8755シリカ、および出願WO03/016387に記載されているようなシリカを挙げることができる。
【0018】
本発明による内部組成物において使用できるナノスケールの無機充填剤の他の例として、すべてが、例えば出願WO99/28376、WO00/73372、WO02/053634、WO2004/003067およびWO2004/056915に記載されているような、カップリング剤の存在下で補強型のものである、アルミナ、アルミニウム(酸化物)水酸化物、アルミノケイ酸塩、酸化チタン、ケイ素の炭化物または窒化物も挙げることができる。
質量平均サイズは、例えば、Brookhaven Instrumentsから販売されているXDC(X線円板式遠心分離機)型のX線検出遠心分離型沈降速度計によって、水(または界面活性剤を含む水溶液)の中で、分析する充填剤を超音波で脱凝集して分散させた後、周知の方法で、以下の手順にしたがって測定することができる:分析しようとする3.2gの無機充填剤のサンプルを、1500Wの超音波プローブ(Bioblockから販売されているVibracell3/4インチ型の超音波処理装置)の60%の出力(「出力制御」の最大位置の60%)で8分間動作させて、40mlの水に懸濁させ;超音波処理の後、15mlの懸濁液を回転円板に導入し;120分間沈降させた後、粒子サイズの質量分布および粒子の質量平均サイズd
wを、XDC沈降速度計のソフトウェアで計算する。
【0019】
BET比表面積は、"The Journal of the American Chemical Society", Vol. 60, page 309, February 1938に記載されており、より具体的には、1996年12月のフランス標準(French Standard)NF ISO9277(多点(5点)容積法−気体:窒素−脱気:160℃で1時間−相対圧力p/poの範囲:0.05〜0.17)にしたがって、Brunauer−Emmett−Teller法を用いて公知の仕方で、気体吸着により測定する。CTAB比表面積は、1987年11月のフランス標準NF T45−007(B法)にしたがって測定した外部表面である。
【0020】
4.5.カップリング剤
当業者に周知されている通り、ナノスケールの無機充填剤をジエンエラストマーとカップリングさせ、それによって、それを含むゴムマトリックスに関して補強を提供するために、結合剤としても公知であるカップリング剤を通常使用する。このカップリング剤は、充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間の十分な化学的および/または物理的連結を確実にするためのものである。
定義により少なくとも二官能性であるそうしたカップリング剤は、簡略化された一般式「Y−A−X」を有する:
ここで、
− Yは、そうした結合を、例えば、カップリング剤のケイ素原子と無機充填剤(例えば、それがシリカである場合、表面シラノール)の表面ヒドロキシル(OH)基の間で樹立できる、無機充填剤と物理的および/または化学的に結合させることができる官能基(「Y」官能基)を表し;
− Xは、例えば硫黄原子を介して、ジエンエラストマーと物理的および/または化学的に結合させることができる官能基(「X」官能基)を表し;
− Aは、YとXが連結されるようにする二価基を表す。
【0021】
特に、カップリング剤を、公知の仕方で、無機充填剤に関して活性である「Y」官能基を含むがジエンエラストマーに関して活性である「X」官能基を含まない、無機充填剤を覆う単純な作用剤と混同すべきではない。
二官能性有機シランまたはポリ有機シロキサンが通常使用され、非常に多くの特許文献(例えば、WO03/002648、WO03/002649またはWO2004/033548を参照されたい)に記載されているものなどの、それらの具体的な構造に応じて「対称性」または「非対称性」と称される、シランポリスルフィドが最も頻繁に使用される。
留意すべきことであるが、最も頻繁に使用されるものは、以下の一般式(I):
(I) Z−A−S
x−A−Z:
に相当する「対称性」シランポリスルフィドとして公知のものである。ここで、
− xは、2〜8(好ましくは2〜5)の整数であり;
− Aは、二価炭化水素ベースの基(好ましくはC
1−C
18アルキレン基またはC
6−C
12アリーレン基、より具体的にはC
1−C
10アルキレン、とりわけC
1−C
4アルキレン、特にプロピレン)であり;
− Zは、以下の式:
【0022】
【化1】
{式中、
− 置換もしくは非置換の同じかもしくは互いに異なっている基R
1は、C
1−C
18アルキル基、C
5−C
18シクロアルキル基またはC
6−C
18アリール基(好ましくはC
1−C
6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC
1−C
4アルキル基、より具体的にはメチルおよび/またはエチル)を表し;
− 置換もしくは非置換の同じかもしくは互いに異なっている基R
2は、C
1−C
18アルコキシ基またはC
5−C
18シクロアルコキシ基(好ましくは、C
1−C
8アルコキシおよびC
5−C
8シクロアルコキシから選択される基、さらにより好ましくは、C
1−C
4アルコキシ、特にメトキシおよびエトキシから選択される基)を表す}
の1つに相当する。
【0023】
シランポリスルフィドの例には、より具体的には、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが挙げられよう。これらの化合物の中では、特に、TESPTと略称されるビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドまたはTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが使用される。他の可能性のある例として、特許出願WO02/083782(またはUS2004/132880)に記載されているようなビス(モノ(C
1−C
4)アルコキシジ(C
1−C
4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、例えばビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられよう。
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤のためには、特に、特許出願WO02/30939およびWO02/31041に記載されているような二官能性POS(ポリ有機シロキサン)またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式(I)でR
2がOHである)、あるいは、例えば特許出願WO2006/125532、WO2006/125533およびWO2006/125534に記載されているようなシランまたはアゾジカルボニル官能基を担持するPOSが挙げられよう。
【0024】
本発明のタイヤの内部ゴム組成物は、(エラストマー/無機充填剤)カップリング剤を含まないか、またはそれを非常に少量、すなわちナノスケールの無機充填剤の質量に対して2%未満しか含まないという基本的な特徴を有する。
言い換えれば、十分な含量(2%超、好ましくは5%超)のカップリング剤の存在下で、それに補強可能性を付与するその高い含量(40phr超)およびそのナノスケールの粒子サイズにもかかわらず、ナノスケールの無機充填剤は本発明の内部組成物において、補強型の無機充填剤としては使用されず;従来技術の教示に反して、この場合、ナノスケール型の特定の不活性な充填剤として使用される。
熱酸化性老化の後、クラック伝播からの内部組成物の保護の改善が予想外に観察されたのは、これらの条件下においてである。
このため、カップリング剤の含量は、ナノスケールの無機充填剤の質量に対して、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満である。さらに、本発明のタイヤの内部組成物は、カップリング剤を完全に含まないことがより好ましい。
【0025】
4.6.様々な添加剤
本発明による組成物は、例えば保護剤、例えば化学的オゾン劣化防止剤または酸化防止剤、可塑剤または伸展油(extending oil)(後者は、高いかまたは好ましくは低い粘度を有する芳香性または非芳香性のもの、特に非常にわずかに芳香性であるかまたは芳香性のない油、例えばナフテンもしくはパラフィン型の油、MESまたはTDAE油である)、高いTgを有する炭化水素ベースの可塑化樹脂、生の状態の組成物のための加工助剤、粘着性樹脂、補強用樹脂(レゾルシノールまたはビスマレイミドなど)、メチレン受容体もしくは供与体、例えばヘキサメチレンテトラミンもしくはヘキサメトキシメチルメラミン、硫黄かもしくは硫黄供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドをベースとする架橋系、加硫促進剤、加硫活性化剤、金属塩型、例えばコバルト、ニッケルもしくはランタニド、例えばネオジムの塩(例えば、アセチルアセトネート、アビエチン酸塩、ナフテン酸塩、トール酸塩)の公知の接着促進系などのタイヤ用のゴム組成物において慣用的に使用される一般的な添加剤のすべてまたは一部も含むことができる。
【0026】
4.7.ゴム組成物の調製
これらの組成物は、当業者に周知の2つの連続した調製の段階、すなわち:110℃〜190℃の間、好ましくは130℃〜180℃の間の最高温度までの高温での熱機械的作業または混練の第1の段階(「非生産的」段階)、続く、その仕上げ段階の間に架橋系を混ぜ込む、一般に110℃未満のより低い温度まで下げた機械的な作業の第2の段階(「生産的」段階)を用いて、適切な混合機で製造する。
例を挙げると、非生産的段階は、数分間(例えば2〜10分の間)続行される単一の熱機械的ステップで実施する。その間に、架橋または加硫系を除くすべての必要なベース成分および他の添加剤を、標準的な内部混合機などの適切な混合機に導入する。得られた混合物を冷却した後、次いで加硫系を、低温(例えば30℃〜100℃の間)に保持されたオープンミルなどの外部混合機に混ぜ込む。次いですべてを、数分間(例えば5〜15分の間)混合する(生産的段階)。
【0027】
次いで、得られた最終組成物は、例えば、タイヤの内部構造の一部を形成させることを目的とした織物補強材もしくは金属補強材で補強されているか補強されていない複合材または半最終製品、例えばプライ、ストリップ、副層、他のゴムブロックなどの製造のために使用できる、ゴムプロフィールエレメントを形成できるように、例えばシートまたはプラークの形態でカレンダー加工するか、あるいは、押し出し加工することができる。
次いで、加硫(または硬化)は、公知の仕方で、好ましくは減圧下、概ね130℃〜200℃の間の温度で、特に硬化温度、採用される加硫系および対象組成物の加硫動力学の関数として、例えば5〜90分の間で変動してよい適切な時間実行することができる。
本発明は、生の状態(すなわち、硬化前)と、硬化または加硫と称される状態(すなわち、硬化後)の両方におけるタイヤに関する。
【0028】
5.本発明の例示的な実施形態
5.1.本発明によるタイヤ
上記で説明した本発明のゴム組成物は、任意の種類の自動車車両タイヤ用の内部混合物として使用することができる。
「内部(interior)」または「内部(internal)」組成物(または混合物)という用語は、ここでは、タイヤの外側に開放されていない、言い換えれば、空気または膨張用ガスと接触しておらず、したがってタイヤ構造の真の内側に位置するタイヤの任意のゴム部分を意味するものであり;例としては、特にタイヤのビーズ域、カーカス補強材もしくはクラウン補強材またはベルトの中に存在する混合物が挙げられよう。
対照的に、「外部(exterior)」または「外部(external)」組成物(または混合物)という用語は、タイヤの外側に開放されている、言い換えれば、空気または膨張用ガスと接触しているタイヤの任意のゴム部分を意味するものであり;例えば、タイヤのトレッド、サイドウォールあるいは気密層が挙げられよう。
例として、添付の図面は、非常に概略的な形で、この非常に一般的な表示において、例えば重荷重用車両または乗用車両を目的とした本発明によるラジアルカーカス補強材を有するタイヤ1の径方向断面を表す。
【0029】
このタイヤ1は、クラウン2、2つのサイドウォール3、2つのビーズ4、および一方のビーズから他方のビーズへ延びるカーカス補強材7を備える。トレッド(簡単にするために、この概略図では示していない)が搭載されているクラウン2は、それ自体公知の仕方で、例えば、少なくとも1つの保護プライまたは1つの0度フーピングクラウンプライで覆われていてよい、少なくとも2つの重ね合わせた交差クラウンプライ(「ワーキング」クラウンプライ)からなるクラウン補強材またはベルト6で補強されている。カーカス補強材7は、各ビーズ4中で2つのビーズワイヤー5の周りを巻いており、この補強材7の折り返し8は、例えば、ここで、そのホイールリム9に取り付けて示されているタイヤ1の外側へ向かって配置されている。カーカス補強材7は、「ラジアル」コードとして公知なもので補強された少なくとも1つのプライからなっている。すなわち、これらのコードは、正中円周平面(2つのビーズ4の中間に位置し、クラウン補強材6の中心を通る、タイヤの回転軸に対して垂直な面)と80°〜90°の間の角度を形成するように、実質的に互いに平行に配置され、一方のビーズから他方のビーズの方へ延びている。
【0030】
もちろん、このタイヤ1は、公知の仕方で、通常気密ゴムまたは気密層と称されるゴムまたはエラストマー10の層も含み、この層は、タイヤの径方向に内側の面を画定し、カーカスプライを、タイヤの内部空間から来る空気の拡散から保護することを目的とする。有利には、特に、重荷重用車両のためのタイヤの場合、カーカスプライと気密層の間に位置する中間補強用エラストマー層(図には示していない)も備えることができる。本発明によるタイヤは、その内部構造中に本発明による少なくとも1つの内部組成物を含むという本質的な特徴を有する。この内部組成物は、例えばビーズワイヤー5を含むビーズ域4の内部にあってよく、交差クラウンプライ、またはクラウン補強材もしくはベルト6の保護プライ、あるいはカーカス補強材7のすべてもしくは一部を形成するプライのゴムマトリックスを構成することができる。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明のゴム組成物は、すべての種類のタイヤ、例えば乗用車両用タイヤ、バン用タイヤまたは重荷重用車両用タイヤのためのクラウン補強材またはベルト6におけるカレンダー加工組成物として有利に使用することができる。そうした場合、本発明のゴム組成物は、加硫化した状態(すなわち、硬化後)で、4MPa超、より好ましくは6〜20MPaの間、例えば6〜15MPaの間のE10モジュラスを有することが好ましい。
【0032】
しかし、乗用車両または産業用車両、例えば重荷重用車両のためには、それは、タイヤのカーカス補強材7においても有利な使用である可能性がある。そうした場合、本発明のゴム組成物は、加硫化した状態で、9MPa未満、より好ましくは4〜9MPaの間のE10モジュラスを有することが好ましい。
【0033】
5.2.ゴム試験(老化およびクラッキング)
これらの試験に必要なため、3つのゴム組成物(以下C−1、C−2およびC−3と表示する)を調製し、その配合物を表1に示す。様々な生成物の含量はphr(全エラストマー100部(ここでは100phrのNRからなる)当たりの質量部)で表す。これらの組成物は、例えば、タイヤのクラウン補強材6中にある2つの重ね合わせた交差クラウンプライのカレンダー加工ゴムを構成する目的のものである。
対照組成物C−1は、エラストマーおよび補強用充填剤に加えて、基本的に、酸化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄、スルフェンアミド促進剤、グアニジン誘導体(DPG)、耐加硫戻り剤(anti-reversion agent)および金属補強材の接着を促進するためのコバルト塩を含む。その補強用充填剤は、少量の(5phr)の非結合シリカ(すなわち、カップリング剤を含まない)が添加されたカーボンブラック(60phr)を含む。
【0034】
対照組成物C−2は、上記組成物とは異なる性質の補強用充填剤によって違っている:ここで後者は基本的に、そのシランカップリング剤(5.5phr、すなわち無機充填剤の質量に対して約9%)によって、公知の仕方で、エラストマーと結合し、したがってゴム組成物C−2を大幅に補強する(引張モジュラスを増大させる)ことを目的とした無機補強用充填剤(60phrのシリカ)を含む。
最後に、本発明にしたがった唯一のものである組成物C−3は、カップリング剤が存在しないことだけが上記組成物C−2と異なる;言い換えれば、ここで使用するナノスケールの無機充填剤(シリカ)は、ジエンエラストマー(天然ゴム)と結合しておらず、したがってゴム組成物C−3を補強することを目的とはしていないシリカである。
【0035】
これらの組成物の製造のため、以下の工程を実施した。充填剤、ジエンエラストマー(NR)および加硫系を除いた他の様々な成分を内部混合機に順次導入し、その初期の容器温度はおよそ60℃であった;この混合機は満杯の約70%(体積%)であった。次いで熱機械的作業を、165℃の最大「低下(dropping)」温度に達するまで、1段で約2〜4分続けて実施した(非生産的段階)。得られた混合物を回収して冷却し、次いで硫黄およびスルフェンアミド型の促進剤を、外部混合機(ホモフィニッシャー)を用いて30℃で、すべてを数分間混合しながら混ぜ込んだ(生産的段階)。
次いで、得られた組成物を、一方で、それらの機械的特性を測定するために、プラーク(2〜3mm厚さ)の形態でカレンダー加工し、次いで、他方で、クラッキングおよび老化試験を実施するために、試験片の形態でカレンダー加工した。
硬化後(150℃で25分)の引張特性および破断特性を、添付の表2に示した。別段の明らかな指定のない限り、これらは、1998年のASTM D412規格(試験片「C」)にしたがって測定した:真の割線係数、すなわち、MPaで表して、E10、E100およびE300でそれぞれ表示される、10%、100%および300%伸びでの試験片の実際の断面に関して、第2の伸び(すなわち、順応サイクル後)で測定した(1999年のASTM D1349規格にしたがった標準的な温度および湿度条件下で)。破断応力(MPaで)および破断伸び(%で)も測定した。
【0036】
3つの組成物は、それがシリカである場合、後者がエラストマーと結合していてもいなくても(シランカップリング剤の存在または非存在)、もちろん充填剤(カーボンブラックまたはシリカ)の特性の関数として変化する、破断時のモジュラスおよび伸びについての値を有することに留意されたい。
特に、本発明による組成物C−3における非結合シリカ(カップリング剤なし)の使用は、破断応力に悪影響を及ぼすことなく、破断伸びの大幅な増大をもたらすことが観察される。
しかし、本発明の完全な有意性が出現したのは、まさに、以下で説明するような加速された老化試験、次いでクラッキング試験をした後であった。
【0037】
表1のゴム組成物を、硬化後、空気下、60%の相対湿度のもとで、オーブン中に77℃の温度で1週間から数週間置いた。次いで、まず、この熱酸化性老化の関数として、それらの破断伸びの変化を監視した。
結果を表3に示す。これらの結果をみると、本発明による組成物(C−3)の破断伸びは、一方で初期状態(硬化直後)において、他方で、課された老化の期間に関係なく約1〜4週間の加速老化後で、他の2つの組成物のそれより常に大きいことが分かる。さらに、老化後での破断伸びの相対損失(%で表して)についても、加速老化の期間に関係なく、他の2つの組成物より常に小さいことが観察される(特に、27日後での損失率%がわずか43%であることを確認されたい)。
老化の過程にわたる破断伸びの変化に関した、本発明による組成物のこの改善された性能は、耐クラッキング性の増大を暗示しており、これは、以下で説明するような補足的なクラッキング試験によって確認された。
クラッキングの速度を、以下で説明するようなMTSからの381型のサイクル疲労試験機(「エラストマー試験システム」)の助けを受けて、ゴム組成物C−1〜C−3の試験片で測定した。
【0038】
耐クラッキング性を、最初に順応させ(最初の引張サイクル後)、次いでノッチを入れた試験片で、繰り返し引張動作の助けを受けて測定した。引張試験片は、例えば厚さ1〜2mmの間、長さ130〜170mmの間および幅10〜15mmの間を有する平行エピペダル形状のゴムプラークからなり、その2つの外側縁はそれぞれ、その試験片を引張試験装置の顎部に固定できるように、円筒状のゴムビーズ(5mm径)で長さ方向に覆われている。作製された試験片を、新鮮な状態および加速老化後において試験した(上記したようにして)。試験は、空気下、90℃の温度で実施した。順応後、試験を開始する前に、15〜20mmの間の長さの3つの非常に狭いノッチを、幅の中央(mid-width)で、試験片の長さ方向に位置合わせして、かみそりの刃で、1つを後者(試験片)の各末端に、1つをその中心に入れた。各引張サイクルについて、エネルギー補償レベル(クラック伝搬の際に放出されるエネルギーの量)が、約1000J/m
2に等しい値で一定に保持されるように、試験片の変形度合いを自動的に調節した。クラック伝播の速度を測定し、サイクル当たりのナノメートルで表示した。もちろん、より低い値は、クラック伝播に対して抵抗性がより良好であることを示す。
結果を添付した表4に示す。これらの結果は、まず、カーボンブラック(対照組成物C−1)の代わりのシリカ(対照組成物C−2)の従来の使用(すなわち、カップリング剤の存在下)が、すでに、クラッキングの速度を大幅に低下させることができることを非常に明確に示している。カーボンブラックと比較したシリカのそうした特性は、当業者にすでに公知であり、例えば出願欧州特許第0722977号またはWO2004/033548に記載されている。
【0039】
しかし、これらの結果の大部分は、予想外に、本発明による組成物C−3における高い含量(どの場合も40phr超)の非結合シリカの使用は、この速度を、結合したシリカ、すなわちカップリング剤によってカップリングされたものと同じ量の対照組成物C−2における従来の使用と比較して、例えば初期状態での2.6倍(6.5〜2.5nm/サイクル)から27日間の加速老化後の約7倍(130〜18nm/サイクル)へ、さらに顕著に低下させられるようにすることを示している。
【0040】
結論として、上記のゴム試験は、非結合状態、すなわちジエンエラストマーとカップリングしていない高い含量のシリカなどの無機補強用充填剤の使用は、クラックまたはノッチ伝播の速度の実質的な低下を可能にする、言い換えれば、引裂き特性の改善を可能にし、したがって加硫物およびそれらを含むタイヤ、熱酸化性老化の影響によるより良好な保護に起因した寿命の改善がもたらされることを明らかに実証している。