(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321148
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/16 20060101AFI20180423BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20180423BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20180423BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20180423BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
G03B21/16
G03B21/00 F
G03B21/14 A
H05K7/20 R
H04N5/74 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-517781(P2016-517781)
(86)(22)【出願日】2014年5月9日
(86)【国際出願番号】JP2014062485
(87)【国際公開番号】WO2015170405
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】317015179
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
(72)【発明者】
【氏名】永野 裕己
【審査官】
小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−073076(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/148507(WO,A1)
【文献】
特開2009−086271(JP,A)
【文献】
特開2003−110264(JP,A)
【文献】
特開2007−109747(JP,A)
【文献】
特開2013−123099(JP,A)
【文献】
特開2007−024939(JP,A)
【文献】
特開2011−113874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00−21/10
21/12−21/13
21/134−21/30
33/00−33/16
H01L33/00−33/46
F21K9/00−9/90
F21S2/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射ミラーに対して拡大投写される映像光を照射するための光源部と、前記光源部からの光と外部からの電気信号に基づいて前記拡大投写される映像光を生成する映像処理部と、
前記映像処理部からの映像光を拡大投写する投写光学系を備えた投写型映像表示装置であって、
前記光源部を、少なくとも、固体発光装置からなる赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源により構成すると共に、該各固体光源には冷却手段が設けられており、
前記各固体光源は、その発光特性に基づいて、入力される駆動電力が制御され、
前記投写光学系は、筐体の中央部分に配置され、前記投写光学系を中心にして、一方には電源ユニットが配置され、他方には前記光源部が配置され、
さらに該投写型映像表示装置の設置状態を検知する姿勢センサと、該投写型映像表示装置の設置状態と、赤色(R)固体光源、縁色(G)固体光源、青色(B)固体光源それぞれの出力の比率を規定したテーブルとを有し、前記姿勢センサが検知した該投写型映像表示装置の設置状態に応じた検出出力について、前記テーブルを参照して、対応する比率に基づいて、赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源の駆動電力を制御する
ことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載した投写型映像表示装置において、前記赤色(R)固体光源に設けられた前記冷却手段の冷却特性が、他の固体光源に設けられた冷却手段の冷却特性よりも大きく設定したことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載した投写型映像表示装置において、前記冷却手段はヒートパイプであり、前記赤色(R)固体光源に設けられたヒートパイプの径が、他の固体光源に設けられたヒートパイプの径よりも大きいことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載した投写型映像表示装置において、前記冷却手段は、更に、前記ヒートパイプの端部に取り付けられたヒートシンクを備えており、前記赤色(R)固体光源に設けられたヒートパイプの端部のヒートシンクは専用であり、他の固体光源に設けられたヒートパイプの端部のヒートシンクは共用であることを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載した投写型映像表示装置において、前記赤色(R)固体光源に入力される駆動電力が所定の値に達した場合、該駆動電力を所定の期間だけ低下させた後、再び、上昇されることを繰り返す制御を行うことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項6】
反射ミラーに対して拡大投写される映像光を照射するための光源部と、前記光源部からの光と外部からの電気信号に基づいて前記拡大投写される映像光を生成する映像処理部と、
前記映像処理部からの映像光を拡大投写する投写光学系を備えた投写型映像表示装置であって、
前記光源部は、固体発光装置からなる少なくとも赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源により構成し、
前記各固体光源に入力される駆動電力が投写型映像表示装置の姿勢に応じて制御され、
前記投写光学系は、筐体の中央部分に配置され、前記投写光学系を中心にして、一方には電源ユニットが配置され、他方には前記光源部が配置され、
さらに該投写型映像表示装置の設置状態を検知する姿勢センサと、該投写型映像表示装置の設置状態と、赤色(R)固体光源、縁色(G)固体光源、青色(B)固体光源それぞれの出力の比率を規定したテーブルとを有し、前記姿勢センサが検知した該投写型映像表示装置の設置状態に応じた検出出力について、前記テーブルを参照して、対応する比率に基づいて、赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源の駆動電力を制御する
ことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載した投写型映像表示装置において、前記各固体光源には冷却手段としてヒートパイプを設け、前記赤色(R)固体光源に設けられたヒートパイプの径が、他の固体光源に設けられたヒートパイプの径よりも大きく設定したことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載した投写型映像表示装置において、前記冷却手段は、更に、前記ヒートパイプの端部に取り付けられたヒートシンクを備えており、前記赤色(R)固体光源に設けられたヒートパイプの端部のヒートシンクは専用であり、他の固体光源に設けられたヒートパイプの端部のヒートシンクは共用であることを特徴とする投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投写型映像表示装置は、大型のプロジェクションテレビに適用されると共に、例えば、以下の特許文献1にも既に知られるように、外部からの映像信号を入力してその映像を拡大してパネルや壁面等に投写するための手段としても広く利用されている。更に、近年においては、PC(パーソナルコンピュータ)からの映像信号の表示に留まらず、iPhoneやiPad mini等の携帯端末により得られた映像などを、壁面や机の表面などに簡易に投写することを可能にするための手段としても期待されている。なお、そのための反射ミラー(自由曲面ミラー)や自由曲面レンズを含む投写レンズ系の詳細は、以下の特許文献2により既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−8044号公報
【特許文献2】特開2012−215909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した投写型映像表示装置では、特に、携帯端末やPCに接続して映像を投写するプロジェクタでは、使用される状況に応じて、その姿勢(設置状態)も変化する。
【0005】
一方、投写型映像表示装置では、従来の高圧水銀ランプなどに替えて、光変換効率や寿命、更には、その取り扱い性にも優れたLEDやレーザ素子などの半導体発光素子を利用した固体光源が広く採用されてきている。
【0006】
後にも詳細に説明するが、投写型映像表示装置では、その性能を十分に発揮する上で、上述した固体光源から発生する熱を効率的に外部に逃がすことが、特に、重要であり、例えば、ヒートパイプなどを利用した効率的な冷却が行われている。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、特に、携帯端末やPCに接続して映像を投写するプロジェクタのように、その姿勢(設置状態)を状況に応じて種々変化して使用される投写型映像表示装置、特に、その固体光源の冷却構を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、反射ミラーに対して拡大投写される映像光を照射するための光源部と、前記光源部からの光と外部からの電気信号に基づいて前記拡大投写される映像光を生成する映像処理部と、前記映像処理部からの映像光を拡大投射する投写光学系を備えた投写型映像表示装置であって、前記光源部を、少なくとも、固体発光装置からなる赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源により構成すると共に、当該各固体光源には、それぞれの冷却手段が設けられており、前記各固体光源は、その発光特性や当該冷却手段の状態に基づいて、入力される駆動電力が制御される投写型映像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明によれば、各固体光源の発光特性の違いにもかかわらず、更には、その姿勢(設置状態)を状況に応じて、最適な発光特性を示す、実用的にも優れた投写型映像表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】投写型映像表示装置の筺体内部の詳細構造を示すための、上側ケースを外した状態の上面図。
【
図5】投写型映像表示装置の筺体内部の詳細構造を示すための、上側ケースを外した状態の上面図。
【
図6】投写型映像表示装置の筺体内部の冷却構造を示すための
図5のA−A’断面図。
【
図7】投写型映像表示装置の筺体内部の冷却構造を示すための
図5のB−B’断面図。
【
図8】投写型映像表示装置におけるLED照明ユニットの冷却構造を説明するための一部拡大図。
【
図9】投写型映像表示装置の3種類の固体光源について、入力電流と発生する光束量との関係を示す図である。
【
図10】青色(B)固体光源におけるジャンクション温度と照度(絶対値)を示す図である。
【
図11】赤色(R)固体光源におけるジャンクション温度と照度(絶対値)を示す図である。
【
図12】緑色(G)固体光源におけるジャンクション温度と照度(絶対値)を示す図である。
【
図13】赤色(R)、緑色(G)、そして、青色(B)固体光源の入力電力を制御するための回路構成の一例を示すブロック図である。
【
図14】上記赤色(R)、緑色(G)、そして、青色(B)固体光源のヒートパイプの構成を説明するための図である。
【
図15】ジャンクション温度の変化に対する発光効率の変化率が最も大きな赤色(R)固体光源に入力する駆動電流の制御の一例を示す波形図である。
【
図16】投写型映像表示装置の設置状態を検知する姿勢センサを設けた場合の固体光源への駆動電流の制御の一例を示すブロック図である。
【
図17】上記
図16のブロック図におけるメモリ内のテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態になる投写型映像表示装置について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
まず、
図1には、投写型映像表示装置の外観を示す正面図であり、図の符号1は、当該装置の下側ケースを、2は、その上側ケースを、3は、上側ケースの上面に形成された開閉可能なミラーカバーを、4は、下側ケースの側面に形成された、当該装置の内部で発生する熱を外部に排出するための排気口を示している(厳密には、装置内には、シロッコファンと軸流ファンとが設けられており、シロッコファンからの空気の排気口には、符号の後に「C」を、軸流ファンからの空気の排気口には、符号の後に「A」を付加して表示している)。また、下側ケース1と上側ケース2により装置の略平箱状の外形形状を有する筺体を形成している。これは、当該装置の使用状態として、机やテーブルの表面に立てた状態で使用する場合(机やテーブルの表面に映像が投写される場合)をも考慮して、その背面側を底面として直立することが可能となっている。なお、筺体に着脱が可能、又は、筺体に内蔵されて取出しが可能なスタンド等の手段を設けてもよい。
【0013】
図2は、投写型映像表示装置の側面図であり、上側ケースの上面に開閉可能に取り付けられたミラーカバー3の内側には、凸形状で回転非対称に形成された反射ミラー(自由曲面ミラー)31が取り付けられると共に、上側ケースの正面略中央部(
図1を参照)に形成された凸状部の内部には、以下に述べるレンズ光学系102が配置され、投写光を外部に導くための開口部が形成されている(なお、図では、レンズ光学系102の一部だけが当該開口部を介して示されている)。また、図中の符号5は、レンズ調整機構によりレンズ位置を変えて投写映像のフォーカス状態を調整するための、所謂、フォーカス調整用リングの一部(上側ケースから外部に飛び出した上端部)を示している。更に、図の符号6は、光源や制御装置等に必要な電力(商用電力)を供給するための、所謂、電源インレットを示しており、下側ケース1の側面に設けられている(電源ユニットが設けられる側)。
【0014】
図3は、投写型映像表示装置の
図2とは反対側の側面図を示しており、下側ケース1の側面(LED照明ユニットが設けられる側)には、排気口4と共に、外部の装置(例えば、携帯端末やPCなど)からの映像信号を入力するための各種の端子を備えた端子板7を備えている。また、この図の略中央部に示される排気口4は、装置の内部に搭載される電気回路、特に、画像処理装置やLEDの駆動基板、更には、これらを含めて装置全体の動作を制御するための制御部(例えば、CPUにより構成される)を冷却するためのシロッコファンからの空気を排出するための排気口である。
【0015】
<内部構造>
続いて、投写型映像表示装置の内部構造について、
図4〜
図8を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0016】
図4及び5は、共に、投写型映像表示装置の内部構造を示すため、上側ケース2を外した状態の上面図である。これらの図において、反射ミラー31や投写レンズ系102を含む光学系は、下側ケース1、即ち、装置の外形の上面図の中央を通り、投写光の中心部が進行する中心軸(図の面に垂直な中心軸)に沿って、装置の中央部に配置されている。また、この投写レンズ系102を中心にして、その一方の側(図の左側)には、電源ユニット61が配置されており、当該電源ユニット61の一端側には、複数台(本例では2台)の軸流ファン42が隣接して配置されている。そして、この投写レンズ系102を中心にして、その他方の側(図の右側)には、シロッコファン41が配置されている。
【0017】
シロッコファン41の筺体部の一部は放熱用フィンと略一体化されており、LED照明ユニット71の緑色(G)光発光用のLED75Gで発生した熱は、ヒートパイプ73Gを介して、赤色(R)光発光用のLED75Rは、ヒートパイプ73Rを介して、青色(B)光発光用のLED75Bは、ヒートパイプ73Bを介して、上記放熱フィンまで熱を伝播し、シロッコファン41により発生した冷却風により冷却され、それぞれの排気口4Cから放熱される。
【0018】
上述した光源を構成するためのLED照明ユニット71などは、シロッコファン41により発生される空気流に沿って、配置されている。換言すれば、これらの構成要素は、投写レンズ系102を中心にして、左右対称に配置されている。なお、図中の符号72は、DLP装置冷却用のヒートシンクを示し、符号4Sは、下側ケース1の底面及び側面に形成された吸気口を示している。
【0019】
更に、これらの図には、3本のヒートパイプ73が示されており、これらのヒートパイプ73は、それぞれ、LED照明ユニット71の熱を排気口の近傍まで伝達し、もって、効率的な放熱を可能としている。より具体的には、LED照明ユニット71の緑色(G)光発光用のLED75Gは、ヒートパイプ73Gを介して排気口4Cの近傍まで、赤色(R)光発光用のLED75Rは、ヒートパイプ73Rを介して排気口4Cの近傍まで伝達され、そして、青色(B)光発光用のLED75Bは、ヒートパイプ73Bを介して、それぞれ、排気口4Cの近傍まで伝達され、シロッコファン41により発生した冷却風により放熱フィンを介して放熱され排気口4Cから筺体外に排出される。
【0020】
なお、これらの冷却構造についての詳細を、
図6〜
図8を参照しながら説明する。
図6は、
図5に示した投写型映像表示装置におけるミラーカバー3を閉じた状態のA−A’線に沿った断面図であり、
図7は、
図5に示した投写型映像表示装置におけるミラーカバー3を開いた状態のB−B’線に沿った断面図である。
【0021】
まず、
図6には、LED照明ユニット71の冷却構造が示されており、その内部に取り付けられたシロッコファン41は、下側ケース1の底面に形成された図示しない吸気口を介して、外部から空気を吸い込み、装置の正面(この図では、右側の側面)に形成されたシロッコファンからの空気の排気口4Cから排出する。
【0022】
その際、
図4及び5、更には、
図8にも示すように、LED照明ユニット71における主な発熱源である3個のLED(半導体レーザ)75R、75G、75Bからの熱は、それぞれのヒートパイプ73R、73G、73Bにより、下側ケース1の正面、及び、側面に形成された排気口4C(
図7を参照)の近傍まで伝達される。具体的には、その一端が、LEDの表面に熱伝的に取り付けられ、その他端が、排気口の近傍に配置されている。そこで、外部から吸い込まれた空気に熱を伝達(熱交換)することにより、3個のLED75R、75G、75Bを効率的に冷却する。
【0023】
即ち、上述した冷却構造は、特に、LED照明ユニット71のように、発熱がその一部において(即ち、3個のLED75R、75G、75B)、局部的に発生する部品の冷却用に好適である。なお、より詳細には、3個のLED75R、75G、75Bから発熱量は、それぞれ、異なることから、そこに用いられるヒートパイプ73R、73G、73Bは、排気口4Cに近接した配置される場所の数(熱交換量)において、それぞれ、異なるように配置されている。また、配置されるヒートパイプ73の本数も、LEDの発熱量の大小に応じて、適宜、設定することにより、更に効率的な放熱効果を達成することが出来る。なお、
図8における参照符号200は、後に詳述する姿勢センサを示している。
【0024】
続いて、本発明者等は、投写型映像表示装置の固体発光装置である3種類の固体光源、即ち、上記のLED75R、75G、75Bについて、入力電流と発生する光束量について検討した。その結果を、
図9のグラフにより示す。
【0025】
即ち、
図9のグラフからも明らかなように、赤色(R)固体光源は、広い範囲(例えば、0〜5A)の入力電力に対し、その光出力は、良好なリニアリティを示す。他方、緑色(G)固体光源と青色(B)固体光源は、入力電力が3Aを超える付近から、光源の温度上昇により、その発光効率を低下させる。
【0026】
このため、入力電力が3Aを超える場合には、発生する赤色(R)と緑色(G)と青色(B)のバランスが崩れてしまい、良好な色特性が得られないことが危惧されることとなる。
【0027】
また、3種類の固体光源、即ち、上記のLED75R、75G、75Bは、それぞれ、そのジャンクション温度とその照度(絶対値)において、異なる特性を示す。各固体光源について検討した結果を、
図10〜12のグラフにより示す。
【0028】
図10は、青色(B)固体光源におけるジャンクション温度と照度(絶対値)を、
図11は、赤色(R)固体光源におけるジャンクション温度と照度(絶対値)を、そして、
図12は、緑色(G)固体光源におけるジャンクション温度と照度(絶対値)を示している。これらの結果から、ジャンクション温度の変化に対する発光効率の変化率は、赤色(R)固体光源が最も大きく(略20%)、次に、緑色(G)固体光源の変化率(略2.5%)が、そして、青色(B)固体光源の変化率(略0%)であることが分かる。このことから、赤色(R)固体光源の冷却効率を他の固体光源の冷却効率よりも大きくすることが、良好な色特性や寿命を長く維持するためにも好ましいことが分かる。
【0029】
加えて、本発明者等による種々の実験によれば、各LED(半導体レーザ)75R、75G、75Bの発熱を外部に導くためのヒートパイプ73R、73G、73Bについても、重力の影響により性能が変化する。即ち、投写型映像表示装置の設置状態、例えば、横にして(水平)設置した場合、縦にして(垂直)設置した場合、傾けて(傾斜)設置した場合、上下を逆転して設置した場合(例えば、天井に取り付ける、又は、天井からぶら下げる等)とで、それぞれ、その性能が変化することが分かった。
【0030】
本発明は、上述した本発明者等による種々の知見に基づくものであり、これらについて、以下に詳細に説明する。
【0031】
<リニアリティの一致制御>
上述したように、入力電力に対する光出力は、赤色(R)固体光源の特性と、緑色(G)固体光源と青色(B)固体光源の特性とでは、互いに異なるものとなっている。
【0032】
そこで、予め、赤色(R)固体光源の特性と、緑色(G)固体光源と青色(B)固体光源の特性とを測定して、例えば、テーブル(変換表)等を作成しておき、これに従って、赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、そして、青色(B)固体光源の入力電力を制御する。なお、実際には、上述したように、緑色(G)固体光源と青色(B)固体光源の特性は互いにほぼ一致しているが、赤色(R)固体光源のそれとは大きく異なっていることから、例えば、
図13に示すように、赤色(R)固体光源の特性を緑色(G)固体光源と青色(B)固体光源の特性に一致するように、駆動電源回路76から出力される電力を、テーブル等による変換回路77を介して、補正(調整)することが好ましい。
【0033】
<ジャンクション温度の変化に対する発光効率の変化率>
この特性は、上述したように、赤色(R)固体光源において最も著しい。そこのため、上記3種類の固体光源の中でも、特に、赤色(R)固体光源のジャンクション温度を効率的に冷却することが必要となる。
【0034】
そこで、ここでは、一例として、
図14にも示すように、上述したヒートパイプ73R、73G、73Bのうち、赤色(R)固体光源用のヒートパイプ73Rの冷却能力(パイプの径)を最も大きなものに設定した。そして、当該ヒートパイプ73Rの端部には、専用の側面のヒートシンク4C
Sを取り付け、他方、緑色(G)固体光源75Gと青色(B)固体光源75Bのヒートパイプ73G、73Bの端部は、共用の正面のヒートシンク4C
Fを取り付け、更には、専用の側面のヒートシンク4C
Sの放熱面積をより大きくして冷却能力を向上することなどが考えられる。
【0035】
または、他の一例として、
図15にも示すように、赤色(R)固体光源に入力する駆動電流に対し、予め、制限値(例えば、3A)を設けておき、これを超えた場合には、当該駆動電流を徐々に低下させ、その後、所定の期間T=10分程度が経過してから、再び、上昇するように制御することが考えられる。なお、これによれば、ジャンクション温度の変化に対する発光効率の変化率が最も大きな赤色(R)固体光源のジャンクション温度を過剰に上昇させることなく所望の値に保持することが可能となることから、固体光源全体の寿命をより長く維持することが可能となる。
【0036】
更には、投写型映像表示装置の設置状態(即ち、水平設置、垂直設置、傾斜設置、逆転設置)によるヒートパイプ73R、73G、73Bへの重力の影響による性能の変化を考慮して、当該装置の一部に姿勢センサ200を取り付け、当該姿勢センサ200(
図8を参照)からの検出出力(例えば、水平設置、垂直設置、水平左傾斜設置、水平右傾斜設置、垂直左傾斜設置、垂直右傾斜設置、上下逆転など)に基づいて、赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源の入力電力を制御することが望ましい。
【0037】
この場合、例えば、
図16にも示すように、姿勢センサ200からの検出出力を、装置の各部を制御するための制御部に設けられた中央演算部(CPU)210に取り込み、予め求めておいた設置状態とRGB出力の比率をテーブルとして格納したメモリ220と比較し、対応する比率に基づいて、駆動制御回路230を介して、赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源の入力電力を制御すればよい。なお、かかる動作は、例えば、メモリ220内に予め格納されたソフトウェアを中央演算部(CPU)210が実行することにより実現される。
【0038】
なお、上述したRGB出力の比率をテーブルの一例を、
図17に示す。即ち、予め、投写型映像表示装置を、種々の設置状態で配置し、その状態でのホワイトバランスに基づいて赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源への入力電力(比率)をテーブルとしてメモリ220内に設定しておく。装置の動作時には、中央演算部(CPU)210は、姿勢センサ200からの検出信号を取り込み、対応する設置状態を決定し、対応するRGB出力の比率により赤色(R)固体光源、緑色(G)固体光源、青色(B)固体光源の入力電力を制御することにより、投写型映像表示装置の設置状態に影響されることのない、優れた発光特性を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0040】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0041】
75R、75G、75B…固体光源(LED)、73R、73G、73B…ヒートパイプ、77…変換回路、4C
S、4C
F…ヒートシンク、200…姿勢センサ、210…中央演算部(CPU)、220…メモリ、230…駆動制御回路。