(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321157
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】光学記録媒体およびデバイスのための直交トラックエラー信号
(51)【国際特許分類】
G11B 7/09 20060101AFI20180423BHJP
G11B 7/007 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
G11B7/09 C
G11B7/007
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-524081(P2016-524081)
(86)(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公表番号】特表2017-500680(P2017-500680A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】US2014057594
(87)【国際公開番号】WO2015080794
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年6月19日
(31)【優先権主張番号】14/090,240
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502303739
【氏名又は名称】オラクル・インターナショナル・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マフナド,ファラマルズ
【審査官】
中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−006182(JP,A)
【文献】
特開平01−223634(JP,A)
【文献】
特開平05−012677(JP,A)
【文献】
特開2005−346745(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0101801(US,A1)
【文献】
米国特許第07260031(US,B1)
【文献】
特開2007−225500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/09
G11B 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスデューサヘッドおよびウォブル検出システムを含む光学デジタルストレージシステムにおいてプライマリトラックエラー信号および直交トラックエラー信号を提供するための方法であって、
前記ウォブル検出システムから第1の周波数を有するウォブル信号を受け取ることを含み、前記ウォブル検出システムは、ランドおよび溝に対する前記トランスデューサヘッドの位置を検出する光学ピックアップユニットを含み、前記ランド上において中心に位置する前記光学ピックアップユニットについての前記ウォブル信号は、前記溝上において中心に位置する前記光学ピックアップユニットについての前記ウォブル信号とは180度位相が異なり、前記ウォブル信号は、前記ランドと前記溝との間の中間の位置について振幅が変調され、前記方法はさらに、
前記ウォブル検出システムからプライマリトラックエラー信号を受け取ることと、
移動の第1の方向について正であり、前記第1の方向と反対である移動の第2の方向について負である積信号を生成するために前記ウォブル信号を同期信号と乗算することと、
前記プライマリトラックエラー信号と90度位相の異なる直交トラックエラー信号を得るよう前記積信号を積分することとを含み、前記直交トラックエラー信号および前記プライマリトラックエラー信号の組合せは、データトラックにわたる前記トランスデューサヘッドの動きに関する方向情報を提供する、方法。
【請求項2】
前記直交トラックエラー信号および前記プライマリトラックエラー信号は各々独立して、前記ヘッドがトラックにわたって移動する際の振動パターンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記直交トラックエラー信号は、前記移動の第1の方向についての前記プライマリトラックエラー信号に先行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プライマリトラックエラー信号は、前記移動の第2の方向についての前記直交トラックエラー信号に先行する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記直交トラックエラー信号は、前記積信号が移動の第1の方向について正であり、かつ、第1の方向と反対である移動の第2の方向について負であるように変化する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記直交トラックエラー信号および前記プライマリトラックエラー信号は、前記ヘッドがトラックにわたって移動する際に、各々独立してシヌソイド関数によって近似される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記プライマリトラックエラー信号は、線形関数によって近似される領域の第1のセットを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記直交トラックエラー信号は、線形関数によって近似される領域の第2のセットを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
線形関数によって近似される前記領域の第1のセットと、線形関数によって近似される前記領域の第2のセットとは、ランドまたは溝からの前記トランスデューサヘッドの変位に対する非オーバーラップ部分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
線形関数によって近似される前記領域の第1のセットと、線形関数によって近似される前記領域の第2のセットとは、前記データトラックにわたる前記トランスデューサヘッドの移動の完全な線形化を提供する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
光学ストレージシステムにおいてプライマリトラックエラー信号および直交トラックエラー信号を提供するための装置であって、
トランスデューサヘッドと、
前記トランスデューサヘッドにおいて位置決めされる光学ピックアップユニットを含むウォブル検出システムとを含み、前記ウォブル検出システムは、ランドおよび溝に対する前記トランスデューサヘッドの位置を検出し、前記ウォブル検出システムは第1の周波数を有するウォブル信号を提供し、ランドについての前記ウォブル信号は溝についての前記ウォブル信号と位相が180度異なり、前記ウォブル信号は、前記ランドと前記溝との間の中間の位置について振幅が変調され、前記装置はさらに、
移動の第1の方向について正であり、かつ、前記移動の第1の方向と反対の移動の第2の方向について負である積信号を提供するよう、前記ウォブル信号を前記第1の周波数を有する方形波信号と乗算する同期乗算器と、
前記プライマリトラックエラー信号と90度位相が異なる直交トラックエラー信号を得るよう前記積信号を積分する積分器とを含み、前記直交トラックエラー信号および前記プライマリトラックエラー信号の組合せは、データトラックにわたる前記トランスデューサヘッドの動きに関する方向情報を提供する、装置。
【請求項12】
前記方形波信号が前記ウォブル信号と同じ位相にあることを保証する位相ロックループをさらに含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記直交トラックエラー信号および前記プライマリトラックエラー信号は各々独立して、振動パターンを含む、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記直交トラックエラー信号は、前記移動の第1の方向について前記プライマリトラックエラー信号に先行し、前記直交トラックエラー信号は、前記移動の第2の方向について前記プライマリトラックエラー信号に遅れる、請求項11〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記直交トラックエラー信号は、前記トランスデューサヘッドの移動方向における変化についての不連続性を示す、請求項11〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記直交トラックエラー信号および前記プライマリトラックエラー信号は各々独立してシヌソイド関数によって近似される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記プライマリトラックエラー信号は、線形関数によって近似される領域の第1のセットを含み、前記直交トラックエラー信号は、線形関数によって近似される領域の第2のセットを含む、請求項11〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
線形関数によって近似される前記領域の第1のセットと、線形関数によって近似される前記領域の第2のセットとは、ランドまたは溝からの前記トランスデューサヘッドの変位に対する非オーバーラップ部分を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
線形関数によって近似される前記領域の第1のセットと、線形関数によって近似される前記領域の第2のセットとは、前記データトラックにわたる前記トランスデューサヘッドの移動の完全な線形化を提供する、請求項18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
少なくとも1つの局面において、本発明は、光学ストレージシステムにおけるトランスデューサヘッドの動きを検出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
光学テープドライブのような光学データ記録デバイスにおけるサーボシステムは、正確に光学媒体上にデータを記録し次いで当該データを抽出するよう、光学ピックアップユニット(OPU:optical pickup unit)デバイスを介して光学媒体から検出されるトラッキングエラー信号を利用する。
【0003】
図1および
図2は典型的な光学記録媒体の部分を示す。
図1Aは上面図であり、
図1Bは側面図である。光学記録媒体10は、光学媒体の表面にエンボスされたナノストラクチャ表面レリーフパターンを含む。ナノストラクチャは、プレフォーマットプロセスにおいてZ方向(すなわち光学記録媒体10の面に垂直)にエンボスされたランド12および溝14を含む。これらの表面レリーフパターンは、媒体に対して読み取りまたは書き込みを行う光学ヘッドの位置をトラッキングするようサーボシステムによって使用されるトラッキング信号を生成するために使用される。補助的な電子信号処理を伴う光学ドライブOPUは、検出されたパターンからトラッキングエラー信号(TES:tracking error signal)を生成する。これらの記録トラックについてアドレス指定の能力を確立するために、これらのエンボスされたランド12および溝14のレリーフパターンの縁部は、光学記録媒体10の面と平行な水平方向(たとえばX軸をトラッキングする際にはY軸)に、個々のトラックアドレスコードを含む正弦波パターン16(すなわちウォブル(wobble))を有するよう構造的に変調される。また、
図1Aはその上にエンコードされる記録マーク18を示す。
【0004】
「ラジアルプッシュプル(Radial Push Pull)」トラッキング信号生成(「メインプッシュプル(MPP: Main Push Pull)」とも称される)と称される技術が、上に述べられたような「ランド」および「溝」トラック形状でプレフォーマットされた再書込可能な光学記録媒体について、トラッキングエラー信号(TES: Tracking Error Signal)を生成するために従来使用されている。このスキームは、媒体上のランドおよび溝が設けられたトラックの形状に基づくとともにOPUのメインクワッド光検出器(QPD:quad photodetector)によって検出可能である基準トラッキング信号を生成する。
図3は、QPDによって生成されるTES信号について典型的な信号処理スキームの概略図を提供する。信号処理システム20は記録/読取ヘッド21を含む。記録/読取ヘッド21は、個々の光検出器24、26、28および30を含むクワッド光検出器22を含む。光検出器24,26,28,30からの信号32,34,36,38は、増幅器42,44,46,48によって増幅され、信号52,54,56,58を提供する。信号52,54は加算器60に提供され、加算器60は合計された信号62を出力する。信号56,58は加算器64に提供され、加算器64は合計された信号66を出力する。合計された信号62および合計された信号66は、減算器回路70に入力され、減算器回路70は差信号72を出力し、差信号72は、さらに処理されてTES信号78およびウォブル信号80が提供される。たとえば、ローパスフィルタ82は入力として差信号72を受け取り、TES信号78を出力する。その一方、バンドパスフィルタ84は差信号72を受け取り、ウォブル信号80を出力する。この高周波ウォブル信号は、キーデータトラックID、アドレスコード、および他の情報を含む。さらに、TES信号78およびウォブル信号80は、ヘッド21の位置に関する位置決め情報を提供するよう記録/読取ヘッドサーボシステム86によって使用される。詳細には、デジタルサーボシステムは、正しい所望のデータトラックにOPUを配置するようウォブル信号情報を使用することによって、OPUの動的な動作を制御する。
【0005】
図4に示されるように、TES導出のプッシュプル方法は、媒体が方向d
tapeに沿って移動している間、OPU22が方向d
1に沿って媒体10上の複数のデータトラックにわたって移動する際に、量子化された正弦波信号を生成する。
図5に示されるように、当該信号の量子化された正弦波の性質により、この方法では方向情報が提供されないということは周知の欠点である。
図5は、まず方向d
1に沿った動きと、その後の方向d
2に沿った動きとにより、方向d
1にのみ沿った動きと同じTES信号が生成されることを示す。この方向情報の欠如は、特にトラックを交差するOPUの移動の間のトラッキングサーボシステムの堅牢な制御に厳しい影響を及ぼす。
図4および
図5の両方からのTES信号は、OPUの移動が方向を変更する際に如何なる差も示さないということが重要である。
【0006】
したがって、OPUの移動の方向を検出するための方法および装置の改善について必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明は、光学データストレージシステムにおいてトラッキングエラー信号を提供するための方法を提供することによって先行技術の1つ以上の問題を解決する。詳細には、上記方法は、光学記録媒体においてデータトラックにわたる光学ピックアップユニットの移動に関する方向情報を提供する信号を生成する。光学データストレージシステムは、ウォブル検出システムを有するヘッドを含む。上記方法は、ウォブル検出システムからの第1の周波数を有するウォブル信号を受け取るステップを含む。ウォブル検出システムは、ランドおよび溝に対するヘッドの位置を検出する光学ピックアップユニットを含む。ランド上において中心に位置する光学ピックアップユニットについてのウォブル信号は、溝上において中心に位置する光学ピックアップユニットについてのウォブル信号とは180度位相が異なる。ウォブル信号は、ランドと溝との間の中間の位置について振幅が変調されるという特徴を有する。上記方法は、ウォブル検出システムからプライマリトラッキングエラー信号を受け取るステップをさらに含む。ウォブル信号は同期信号と乗算され、積信号が得られる。積信号は移動の第1の方向について正であり、第1の方向と反対の移動の第2の方向について負である。積信号は、直交トラックエラー信号を得るよう積分される。直交トラックエラー信号は、プライマリトラックエラー信号と90度位相が異なるという特徴を有する。直交トラックエラー信号およびプライマリトラックエラー信号は、組み合わせておよび個々に、テープの幅にわたるテープヘッドの動きに関する方向情報を提供する。
【0008】
別の実施形態において、光学ストレージシステムにおいてトラッキングエラー信号が提供される、上に記載された方法を実現するための装置が提供される。装置は、ウォブル検出システムを有するトランスデューサヘッドを含む。ウォブル検出システムは、ランドおよび溝に対するトランスデューサヘッドの位置を検出する光学ピックアップユニットを含み、第1の周波数を有するウォブル信号を提供する。ランドについてのウォブル信号は、ランドと溝との間の中間の位置について振幅が変調される。同期乗算器は、積信号を提供するよう、第1の周波数を有する方形波信号とウォブル信号とを乗算する。積信号は移動の第1の方向について正であり、第1の方向と反対の移動の第2の方向について負である。積分器は、直交トラックエラー信号を得るよう積信号を積分する。直交トラックエラー信号はトラックエラー信号と90度位相が異なり、直交トラックエラー信号およびトラックエラー信号の組合せは、データトラックにわたるトランスデューサヘッドの動きに関する方向情報を提供する。
【0009】
本発明の例示的な実施形態は、詳細な説明および添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】エンボスされたランドおよび溝を示す光学記録媒体の上面図を提供する図である。
【
図2】エンボスされたランドおよび溝を示す光学記録媒体の側面図を提供する図である。
【
図3】エンボスされたウォブルパターンを有する光学ストレージ媒体からのトラッキングエラー信号およびウォブル信号を検出するためのシステムの概略図を提供する図である。
【
図4】関連するTES信号とともに、複数のトラックに交差するOPUの概略図を提供する図である。
【
図5】関連するTES信号とともに、2つの対向する横断方向に沿って複数のトラックに交差するOPUの概略図を提供する図である。
【
図6A】溝上において中心に位置する光学ピックアップユニットについてのウォブル信号の例を提供する図である。
【
図6B】ランド上において中心に位置する光学ピックアップユニットについてのウォブル信号の例を提供する図である。
【
図7】OPUがストレージ媒体にわたって移動する際のウォブル信号の展開を示す概略図を提供する図である。
【
図8】ウォブルパターンがエンボスされた光学媒体からのトラッキングエラー信号および直交トラックエラー信号を検出するためのシステムの概略図を提供する図である。
【
図9】ウォブルパターンがエンボスされた光学媒体からのトラッキングエラー信号および直交トラックエラー信号を検出するためのシステムの概略図を提供する図である。
【
図10】関連するTES信号および直交トラックエラー信号とともに、2つの対向する横断方向に沿って複数のトラックに交差するOPUの概略図を提供する図である。
【
図11】直交トラックエラー信号を検出するための、
図8のシステムによって実現される方法の概略的なフローチャートを提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
ここで、発明者が現在分かっている発明を実施する最良の形態を構成する本発明の現在の好ましい構成、実施形態および方法が詳細に参照される。図面は必ずしも尺度決めされていない。しかしながら、さまざまな形態および代替的な形態で具体化され得る開示される実施形態は単に本発明の例示であることが理解されるべきである。したがって、本願明細書において開示された特定の詳細は、限定として解釈されるべきでなく、単に本発明の任意の局面の代表的な基礎として、および/または、種々に本発明を採用するよう当業者を教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0012】
これらの例または別の態様で明確に示された場合を除いて、材料の量もしくは反応の条件および/または使用を示すこの記載におけるすべての数的な量は、本発明の最も広い範囲を記載する際に、「約」という単語によって修飾されることが理解されるべきである。述べられた数的限定内の実施が一般に好ましい。さらに、明確に反対のことが述べられていなければ、頭字語または他の略語の第1の定義は、本願明細書における同じ略語のすべてのその後の使用に適用し、最初に規定された略語の通常の文法の変形に準用して適用する。また、明確に反対のことが述べられていなければ、ある特性の測定値は、同じ特性について以前にまたはその後参照されたのと同じ技術によって求められる。
【0013】
さらに、この発明は、特定のコンポーネントおよび/または条件が変動し得るので、以下に記載された特定の実施形態および方法に限定されないということが理解されるべきである。更に、本願明細書において使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されており、任意の態様で限定するようには意図されない。
【0014】
なお、明細書および添付の請求の範囲において使用されるように、「ある(a;an)」および「その(the)」といった単数形は、文脈がそうでないことを明白に示さなければ、複数の指示物を含む。たとえば、単数形でのコンポーネントへの参照は複数のコンポーネントを含むように意図される。
【0015】
公報が参照されるこの出願の全体にわたって、これらの公報の開示はそれらの全体においてこの出願に参照により援用され、この発明が関係する現状技術をより完全に説明する。
【0016】
本発明の実施形態および変形例は、OPUの移動の方向の情報を提供する新規な相補的な直交トラックエラー信号(QTES:Quadrature Track Error Signal)を生成するよう、デジタルデータストレージ媒体からのウォブル信号情報を利用するという利点を有する。この点において、
図3が記載するようなシステムがウォブル信号を提供するために利用される。ウォブル信号および/またはトラッキングエラー信号を検出するための方法は、米国特許番号第5,383,169号、米国特許番号第6,009059号、および米国特許番号第6,937,542号に記載され、その全開示は本願明細書において参照によって援用される。QTES信号は、記録ヘッドの動きの組合せ検出で可能にすることによりOPUの移動の堅牢な制御を可能にするという利点を有する。
図6Aは、OPUが溝上において中心に位置する際に得られるウォブル信号の例を提供し、
図6Bは、OPUがランド上において中心に位置する際におけるウォブル信号の例を提供する。上に述べたように、ウォブル信号は、MPPのフィルタリングを通過する狭い高周波帯域を有する非常に高い空間周波数での、溝が設けられたトラックの揺らぎのある縁構造の結果である。
【0017】
図5および
図7を参照して、読取/書込ヘッドがデータトラックにわたって動く際のウォブル信号の振幅変調を示す概略図が提供される。
図7は、OPU22が光学ストレージ媒体10のデータトラックにわたって動く際のウォブル信号の展開を示す概略図を提供する。ランドおよび溝媒体表面構造によって生成される回折パターンの特性により、OPU22が方向d
1に沿って移動するとともに媒体10が方向d
tapeに沿って移動する際に、ウォブル信号の極性は変化する。OPUが溝14の上でトラックnに配置される場合、ウォブル信号は項目番号90によって示される。OPUがトラックn+1に向かって移動すると、OPUがランド上において中心に位置するまでウォブル信号振幅は変調する。その時点において、ウォブル信号は項目番号92によって示される。中間位置では、ウォブル信号78の振幅は中間値を有する。
【0018】
図8を参照して、直交トラックエラー信号を生成するためのシステムの概略図が提供される。特に、システムは、光学記録媒体(たとえば光学テープまたはディスク)のデータトラックにわたる光学ピックアップユニットの移動についての方向情報を提供する信号を生成する。光学データストレージシステム100は、ウォブル検出システム104と通信するトランスデューサヘッド102を含む。
図1〜
図3の記載に関して、ウォブル検出システム104は、上に述べられるように、ランドおよび溝に対してトランスデューサヘッドの位置を検出する光学ピックアップユニット22を含む。光学ピックアップユニット22は、トランスデューサヘッド102に位置決めされる。改善例において、
図2のウォブル検出システムがこの実施形態において使用される。ウォブル検出システム104は、ダイレクトトラックエラー信号78およびウォブル信号80を提供する。本願明細書において使用されるように、ダイレクトトラックエラー信号78という用語は、「メインプッシュプル」(MPP:Main Push Pull)法または差動プッシュプル(differential push pull)法によって検出される通常の先行技術のトラックエラー信号を指す。ウォブル信号80は、第1の周波数(すなわちウォブル信号周波数)を有することを特徴とする。改善例において、ウォブル信号周波数は0.5メガヘルツから10メガヘルツである。典型的なウォブル信号周波数は約1メガヘルツである。上に述べられたように、ランドについてのウォブル信号80は、溝についてのウォブル信号とは180度位相が異なり、ウォブル信号80は、ランドと溝との間の中間の位置について振幅が変調される。より特定的には、この文脈において、180°位相が異なることは、ランドについてのウォブル信号ピーク最大値は溝についてのウォブル信号最小値に対応し、ランドについてのウォブル信号ピーク最小値は溝についてのウォブル信号最大値に対応するということを意味する。同期乗算器106は、第1の周波数を有する同期クロック110から導出された方形波108信号とウォブル信号80とを乗算し、積信号112が提供される。改善例において、方形波108は、0ボルトからピーク値(たとえば1ボルト)へ変動する電圧振幅を有する。積信号112は、トランスデューサヘッド102の移動の第1の方向について正であり、第1の方向の反対であるトランスデューサヘッド102の移動の第2の方向について負である。これらの移動の方向は、
図5の方向d
1およびd
2として認識される。積分器114は、直交トラックエラー信号120を得るよう積信号112を積分する。直交トラックエラー信号120は、トラックエラー信号に対して90度位相が異なることを特徴とする。直交トラックエラー信号(QTES)およびトラックエラー信号78の組合せによって、以下に述べられるように、データトラックにわたるトランスデューサヘッドの動きに関する方向情報が提供される。
【0019】
光学ストレージシステム100はさらに、方形波108がウォブル信号80にロックすることを可能にする位相ロックループ122を含む。位相ロックループ122は、ウォブル信号80からの適切なロック周波数を受け取る。位相ロックループ122は、積信号112を最大化するよう位相調整可能である。
【0020】
図9および
図10を参照して、直交トラックエラー信号の特徴が提供される。
図9は、ダイレクトトラックエラー信号78、ウォブル信号80、方形波信号108、積信号112、および直交トラックエラー信号120が並べられたプロットを提供する。
図10は、関連するTES信号と直交トラックエラー信号とともに、2つの対向する横断方向に沿って複数のトラックに交差するOPUの概略図を提供する。ダイレクトトラックエラー信号78および直交トラックエラー信号120はともに独立して、トランスデューサヘッドがトラックにわたって移動する際の振動パターンを含む。たとえば、直交トラックエラー信号およびダイレクトトラックエラー信号は各々、ヘッドが光学データストレージ媒体においてデータトラックにわたって移動する際に独立してシヌソイド(sinusoidal)関数によって近似され得る。この点に関して、シヌソイド関数は、直交トラックエラー信号およびトラックエラー信号について実際値の5パーセント以内である。
【0021】
1つの改善例において、ダイレクトトラックエラー信号は、移動の第1の方向d
1について直交トラックエラー信号に先行する。別の改善例において、直交トラックエラー信号は、移動の第2の方向d
2について、ダイレクトトラックエラー信号に先行する。さらに、直交トラックエラー信号120は、積信号112が移動の第1の方向d
1について正であり、第1の方向の反対である移動の第2の方向d
2について負であるように変化するということが観察されるはずである。典型的には、ダイレクトトラックエラー信号80は、線形関数l
1によって近似される領域の第1のセットを含み、また、直交トラックエラー信号12は、線形関数l
2によって近似される領域の第2のセットを含む。線形関数によって近似される領域の第1のセットと、線形関数によって近似される領域の第2のセットとは、ランドまたは溝からのトランスデューサヘッドの変位に対して非オーバーラップ部分を含む。さらに、線形関数によって近似される領域の第1のセットと、線形関数によって近似される領域の第2のセットとは、データトラックにわたるトランスデューサヘッドの移動の完全な線形化を提供する。
【0022】
図11を参照して、
図8のシステムによって実現される方法が要約される。ステップa)において、第1の周波数を有するウォブル信号80が、
図2に示されるシステムのようなウォブル検出システム104から受け取られる。ウォブル検出システムは、ランドおよび溝に対するトランスデューサヘッドの位置を検出する光学ピックアップユニットを含む。ランド上において中心に位置する光学ピックアップユニットについてのウォブル信号80は、溝上において中心に位置する光学ピックアップユニットについてのウォブル信号とは180度位相が異なる。ウォブル信号は、ランドと溝との間の中間の位置について振幅が変調されるということを特徴とする。ステップb)において、ウォブル検出システムからダイレクトトラッキングエラー信号78が受け取られる。ステップc)において、ウォブル信号80は同期信号と乗算され、積信号112が得られる。積信号112は移動の第1の方向について正であり、第1の方向と反対の移動の第2の方向について負である。ステップd)において、積信号112は、直交トラックエラー信号120を得るよう積分される。直交トラックエラー信号は、プライマリトラックエラー信号と90度位相が異なるという特徴を有する。直交トラックエラー信号およびプライマリトラックエラー信号は、組み合わせておよび個々に、上に述べられたように、テープの幅にわたってテープヘッドの動きに関する方向情報を提供する。TES信号78およびウォブル信号80は、トランスデューサヘッドの位置に関して位置決め情報を提供するよう記録/読取ヘッドサーボシステム86によって使用される。特に、デジタルサーボシステムは、正しい所望のデータトラック上にOPUを配置するよう、ウォブル信号情報を使用することによってOPUの動的な動作を制御する。
【0023】
上記において例示的な実施形態が記載されているが、これらの実施形態は本発明のすべての形態を説明することを意図しない。むしろ、明細書において使用される単語は限定ではなく説明の単語であり、また、本発明の精神および範囲から逸脱することなくさまざまな変化がなされ得るということが理解される。さらに、さまざまな実現される実施形態の特徴は、本発明のさらに別の実施形態を形成するために組み合わせられてもよい。