特許第6321162号(P6321162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321162繊維状媒体のマッピングの方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321162
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】繊維状媒体のマッピングの方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20180423BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   A61B8/08ZDM
   A61B8/14
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-526679(P2016-526679)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公表番号】特表2016-524982(P2016-524982A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】FR2014051829
(87)【国際公開番号】WO2015007992
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年6月19日
(31)【優先権主張番号】1357158
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500174661
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス−
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・タンター
(72)【発明者】
【氏名】マティア・フィンク
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ペルノー
(72)【発明者】
【氏名】クレマン・パパダキ
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−537688(JP,A)
【文献】 特開2003−61964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状媒体をマッピングするための方法であって、
(a)トランスデューサTijのセット(2)が、繊維を含む媒体(1)の視野(1a)内に、異なる波面を有するN個の非集束入射超音波lを放出し、前記媒体によって反射した超音波を表す各信号RFrawl、ij(t)が、前記入射波lからトランスデューサTijによって取得される、測定段階と、
(b)視野内のM個の仮想の焦点Pについて、Nセットの取得された信号RFrawl,ij(t)からコヒーレントデータが決定されるコヒーレントデータを合成する段階であって、点Pにおいて集束される波が前記トランスデューサによって放出されたかのように、コヒーレント信号RFcoherentk,ij(t)が、前記トランスデューサTijによって受信した信号に対応する、段階と、
(c)各点Pにおける繊維の存在及び配向が、複数の方向におけるコヒーレント信号RFcoherentk,ij(t)の間の空間的コヒーレンスを比較することによって決定される、媒体(1)の繊維をマッピングする段階と、を含む、繊維状媒体をマッピングするための方法。
【請求項2】
前記段階(a)において、使用される前記トランスデューサのセット(2)が、2次元トランスデューサアレイである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記段階(c)において、前記トランスデューサ間の空間的コヒーレンスの関数の積分が複数の方向で決定され、前記繊維の方向が、前記積分を最大化する方向として決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記入射超音波が、異なる伝搬方向を有する平面波である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記入射超音波が発散波である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記媒体(1)内で検出された繊維の画像が表示される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記視野(1a)の超音波画像が決定され、前記超音波画像が、前記繊維の重畳された画像とともに表示される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記超音波画像が、前記段階(b)で決定されたコヒーレント信号をビーム形成することによって決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
画像化される媒体が、人間の組織または動物の組織である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のマッピング方法を実装するためのデバイスであって、
(a)トランスデューサTijのセット(2)に、繊維を含む媒体(1)の視野(1a)内に、異なる波面を有するN個の入射超音波lを放出させ、前記トランスデューサTijに、前記入射波はlから反射した超音波を表すそれぞれの信号RFrawl,ijを取得させ、
(b)視野内のM個の仮想の焦点Pについて、Nセットの取得された信号RFrawl,ij(t)から、点Pにおいて集束される波が前記トランスデューサによって放出されたかのように前記トランスデューサTijによって受信されることとなる信号に対応するコヒーレント信号RFcoherentk,ij(t)を決定し、
(c)複数の方向における前記コヒーレント信号RFcoherentk,ij(t)間の空間的コヒーレンスを比較することによって、各点Pにおける繊維の存在及び配向を決定する、
ように適合されたトランスデューサTijのセット(2)及び制御処理手段(8、4)を含む、デバイス。
【請求項11】
前記トランスデューサのセット(2)が2次元である、請求項10に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状媒体のマッピングの方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、例えばDerode及びFinkによって非特許文献1にすでに説明されており、この文献は、複合材料表面上に配置され、複数の配向を有するトランスデューサアレイによって、集束された超音波を連続的に照射することを教示している。超音波の発出のそれぞれについて、伝送された超音波の反射後にトランスデューサによって取得された信号間の空間的コヒーレンスの関数が計算され、複合材料の繊維の方向が、空間的コヒーレンス関数の最大値に対応するトランスデューサアレイの方向として決定される。
【0003】
この周知の方法は、内部に繊維が均一に配置された複合材料のような単純な媒体に適している。生体組織などのより複雑な媒体を調べる場合には適切ではない。
【0004】
しかし、心筋、筋肉及び脳組織などの、繊維からなる生体組織構造をマップする必要性が存在する。この構造は、これらの組織の機械的機能(筋肉組織)及び電気的機能(脳、筋肉、心臓)の両方において重要な役割を果たし、そのため、繊維の空間的配向は、診断目的及びこれらの臓器の機能的診査について決定すべき非常に重要なパラメータである。
【0005】
例えば、脳の画像化において、異なる脳の領域を接続する神経線維の経路を特定することは非常に重要である。現在は、繊維の組織の3次元画像を提供することが可能であるただ1つの技術は、拡散テンソルによる磁気共鳴画像化(拡散MRI)のみである。この非常に低速な技術は、大人の脳の診査に使用されるが、心臓のような動く臓器を画像化することについては制約が大きすぎる。また、MRIは非常に若い子供、特に不幸にも現在の技術で診断することが不可能な脳発達異常を有する恐れのある早産児の脳の画像化には使用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2101191号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Spatial coherence of ultrasonic speckle in composites, Derode A., M. Fink, IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control 1993; 40(6):666-75
【非特許文献2】“Coherent plane-wave compounding for very high frame rate ultrasonography and transient elastography” (IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control 2009 Mar; 56(3): 489-506
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの欠点を解消することを意図される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、繊維状媒体をマッピングするための方法であって、
(a)トランスデューサTijのセットが、繊維を含む媒体の視野内に、異なる波面を有するN個の非集束入射超音波l(視野内で集束されないことを意味する)を放出し、媒体によって反射した超音波を表す各信号RFrawl、ij(t)が、入射波lからトランスデューサTijによって取得される、測定段階と、
(b)視野内のM個の仮想の焦点Pについて、Nセットの取得された信号RFrawl,ij(t)からコヒーレントデータが決定されるコヒーレントデータを合成する段階であって、点Pにおいて集束される波がトランスデューサによって放出されたかのように、コヒーレント信号RFcoherentk,ij(t)が、トランスデューサTijによって受信した信号に対応する、段階と、
(c)各点Pにおける繊維の存在及び配向が、複数の方向におけるコヒーレント信号RFcoherentk,ij(t)の間の空間的コヒーレンスを比較することによって決定される、媒体の繊維をマッピングする段階と、を含む、繊維状媒体をマッピングするための方法を提供する。
【0010】
そのため、後方散乱信号が、超音波画像内に直接見えない組織の微細構造についての情報を含む(Bモード)という事実によって、心筋、その他の筋肉及び脳などの繊維からなる生体組織の構造を、非常に素早く容易にマップすることが可能になる。組織の異方性が、異なる方向で測定されたコヒーレンス関数内に発見されるので、これは、繊維の配向を明らかにする空間的コヒーレンス分析である。
【0011】
本発明に従う方法の様々な実施形態において、以下の構成の1つまたは複数を使用することが可能でありうる。
【0012】
−段階(a)において、使用されるトランスデューサのセットが、2次元トランスデューサアレイである。
【0013】
−段階(c)において、トランスデューサ間の空間的コヒーレンスの関数の積分が複数の方向で決定され、繊維の方向が、積分を最大化する方向として決定される。
【0014】
−入射超音波が、異なる伝搬方向を有する平面波である。
【0015】
−入射超音波が(異なる発生源の点から来たかのように、超音波アレイによって放出される)発散波である。
【0016】
−入射超音波が連続的に放出される。
【0017】
−入射超音波が、空間的時間的にエンコードされ、同時に放出され、次いで反射波が同時に取得され、デコーディングによって分離される。
【0018】
−媒体内で検出された繊維の画像が表示される。
【0019】
−視野の超音波画像が決定され、この超音波画像が、繊維の重畳された画像とともに表示される。
【0020】
−超音波画像が、段階(b)で決定されたコヒーレント信号をビーム形成することによって決定される。
【0021】
−画像化される媒体が、人間の組織または動物の組織である(特に哺乳類)。
【0022】
本発明はまた、上述のマッピング方法を実装するためのデバイスであって、
(a)トランスデューサTijのセットに、繊維を含む媒体の視野内に、異なる波面を有するN個の入射超音波lを放出させ、トランスデューサTijに、入射波lから反射した超音波を表すそれぞれの信号RFrawl,ij(t)を取得させ、
(b)視野内のM個の仮想の焦点Pについて、Nセットの取得された信号RFrawl,ij(t)から、点Pにおいて集束される波がトランスデューサによって放出されたかのようにトランスデューサTijによって受信されることとなる信号に対応するコヒーレント信号RFcoherentk,ij(t)を決定し、
(c)複数の方向における信号RFcoherentk,ij(t)間の空間的コヒーレンスの関数を比較することによって、各点Pにおける繊維の存在及び配向を決定する、
ように適合されたトランスデューサTijのセット及び制御処理手段を含む、デバイスに関する。
【0023】
有利には、トランスデューサのセットが2次元である。
【0024】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付した図面の参照とともに、限定的でない例で与えられたその実施形態の1つの以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に従う方法を実装するためのデバイスの概略図である。
図2図1のデバイスの一部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
様々な図において、同一の参照符号は、同一または類似の要素を示す。
【0027】
図1は、例えば、2から40MHzの周波数範囲の超音波圧縮波を送信し、受信することによって動作する例示的な画像化デバイスを示す。
【0028】
図1に示される画像化デバイスは、繊維状の媒体1、例えば患者の組織、特に筋肉(心筋またはその他の筋肉)または脳の、視野1aの合成超音波画像化を実行するように適合される。
【0029】
画像化デバイスは、例えば、
−n個の超音波トランスデューサのアレイ2、例えば数百個のトランスデューサを含み、視野1aの3次元(3D)画像を得るように適合された2次元アレイと、
−トランスデューサアレイ2を制御し、トランスデューサアレイによって取得された信号を得るように適合された電子部品ベイ3または類似のものと、
−電子部品ベイ3を制御し、上述の取得された信号から得られた超音波画像を表示するためのコンピュータ4または類似のものと、を含む。
【0030】
トランスデューサアレイ2は、例えば、2つの垂直な軸X、Yに沿って延設する平面マトリクスであってよく、X、Y軸に対して垂直なZ軸は、視野の深さ方向を表す。以下において、トランスデューサは、Tijで表され、i及びjはそれぞれX及びY軸に沿った、各トランスデューサの位置を表す2つのインデックスである。トランスデューサアレイ2は、具体的にはX方向にn個のトランスデューサ及びY方向にn個のトランスデューサを含み、n=n*nでありうる。以下の説明では、この種類のトランスデューサアレイ2を例として使用するが、その他の形態のトランスデューサアレイも、本発明の範囲内において可能である。
【0031】
図2に示されるように、電子部品ベイ3は、例えば、
−トランスデューサアレイ2のn個のトランスデューサTijに個別に接続されたn個のアナログデジタルコンバータ5(A/Dij)と、
−n個のアナログデジタルコンバータ5にそれぞれ接続されたn個のバッファ6(Bij)と、
−バッファ6及びコンピュータ4と通信する中央処理ユニット8(CPU)と、
−CPU8に接続されたメモリ9(MEM)と、
−CPU8に接続されたデジタル信号処理部10(DSP)と、
を含みうる。
【0032】
このデバイスは、媒体1の繊維をマッピングするための方法を実装することができ、これは、具体的にはデジタル信号処理部9に支援されて、CPU8によって実行される以下の3つの段階、
a)測定(放出/受信及び生データの記録)、
b)コヒーレントデータの合成、
c)繊維配向の分析、
d)任意選択的に、Bモードにおける媒体の画像の決定及び繊維マッピングの重畳、
を含む。
【0033】
段階a:測定(放出/受信及び生データの記録)は、以下の通りである。
トランスデューサアレイは、媒体1に接触して配置され、N個の入射超音波が、トランスデューサTijによって媒体1内に放出される(Nは、例えば2から100の間、特に5から10の間であってもよい)。問題にしている入射波は、集束されておらず(より具体的には、視野内に集束されず)、それぞれ異なる波面、すなわち異なる形状及び/または異なる配向の波面を有する。有利には、入射波は様々な異なる傾きの平面波であり、それぞれ平面(X、Z)及び(Y、Z)における、Z軸に対する傾斜角α、αを特徴とし、または入射波は空間内の異なる点から発生したかのように放出された発散波である。
【0034】
入射波は、一般的にはマイクロ秒未満のパルスであり、典型的には中心周波数における超音波の約一周期である。入射波の発出は、例えば約50から200マイクロ秒だけ間隔を開けられうる。
【0035】
各入射波は、媒質1内の反射体に衝突し、反射体は入射波を反射させる。反射した超音波は、アレイのトランスデューサTijによって取得される。入射波は放出時において集束されていないため、各トランスデューサTijによって取得されたこの信号は、媒体1内の全体から来る。
【0036】
n個のトランスデューサTijによって取得された反射信号は、次いで、対応するアナログデジタルコンバータA/Dijによってデジタル化され、対応するバッファBij内に保存される。各入射波の発出後にバッファ内に保存されたこれらの信号は、以下、RF生データと呼ぶ(「RF」は、当技術分野で通常使用される用語であり、単純に、使用される超音波周波数による)。これらのRF生データは、入射超音波lの発出後にトランスデューサTijによってそれぞれ取得されたn*n回の信号RFrawl,ij(t)の配列からなる。
【0037】
入射波lの各発出後、バッファBij内に保存された信号は、単一のプロセッサ8のメモリ9に伝送され、プロセッサによって処理される。そのため、段階(a)の最後において、メモリ9はRF生信号のN個のアレイを含む。
【0038】
様々な入射波は、空間的時間的にエンコードすることができ、それによって、入射波のいくつかまたはすべての同時放出及び反射波の同時受信が可能になり、これらは保存前にデコーディングによって分離される。
【0039】
段階b:コヒーレントRFデータの合成
RF生データのN個の配列から、合成コヒーレントRFデータのM個の配列が、視野1aのM個の点P(x、y、z)のそれぞれにおいて、プロセッサ8によって計算される(kは1からMの間の整数であり、x、y、zはX、Y、Z軸上の点Pの座標である)。合成コヒーレントRFデータのこれらM個の配列のそれぞれは、トランスデューサが点Pにおいて集束された入射波を放出している場合にトランスデューサTijによってそれぞれ取得されることとなる信号に対応するn*n回の信号RFcoherentk,ij(t)を含む。
【0040】
コヒーレントRFデータの配列は、例えば、特に特許文献1またはMontaldoらによる非特許文献2に説明された原理に従い、超音波圧縮波について媒体1を通して均一な伝搬速度cを仮定することによって得られうる。
【0041】
各発出lに対応する平面波の伝搬の方向が分かり、伝搬速度cが分かれば、プロセッサ8は、各点Pについて、点Pへの入射波lの伝搬時間τec(l,k)及び点PからトランスデューサTijへの反射波の伝搬時間τrec(l,k,i,j)、すなわち両方向を伝搬する全時間を計算することができ、以下の通りとなる。
τ(l,k,i,j)=τec(l,P)+τrec(l,P,i,j)
【0042】
次いで、トランスデューサTijについての空間的にコヒーレントな信号は、仮想的な焦点Pに対応して、以下の数式を用いて計算される。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、B(l)は、入射波lの各発出の寄与に関する重み付け関数である(この場合には、B(l)の値は全て1に等しくなりうる)。
【0045】
次いで、コヒーレントデータRFcoherentの配列は、例えば前述の特許文献1またはMontaldoらの文献において説明されたように、媒体1内の収差の効果を修正することによって改善されることもありうる。
【0046】
段階c:繊維配向の分析
次いで、空間的コヒーレンスが、各配列RFcoherentについて決定され、これは同じ点Pについて信号RFcoherentkij(t)の間のコヒーレンスを示す。
【0047】
この空間的コヒーレンスは、例えば、平面(X、Y)内の所定の方向でm個の要素の遠隔トランスデューサ対の間の全ての相関を合計することにより、トランスデューサij及びpqで受信された信号c(ij,pq)の相関を用いて計算された空間的コヒーレンス関数R(m)によって測定可能である。
【0048】
【数2】
【0049】
ここで、
【0050】
【数3】
【0051】
はRFcoherentk,ijの時間平均であり、T1、T2は2つの時間である。
【0052】
平面(X,Y)の同じ方向内に互いに配列されたトランスデューサのみを考慮し、これらのトランスデューサTqをqについて1からQまで番号を再び割り当てることによって、これらの相関はc(p、q)として書くことができ、以下の数式を得る。
【0053】
【数4】
【0054】
【数5】
【0055】
Van Cittert−Zernike理論は、単色ビームについてランダムに反射する媒体(すなわち等方性)内のこの関数R(m)の形状を確立する。R(m)は、焦点の2乗の空間フーリエ変換である。水平方向の延長が関数sin(ax)/xによって与えられる焦点について、R(m)は頂点がm=0(自己相関)であり、m=Qで打ち消す三角形である。
【0056】
非等方性媒体に関して、トランスデューサの配列の方向が繊維に沿って配列している場合には、追加的な空間的コヒーレンスが得られる。
【0057】
平面(X,Y)における配列の考慮される方向におけるこの関数の積分Sは、空間的コヒーレンスのパラメータを与え、これは繊維の配列の方向で最大となる。トランスデューサの複数の配列方向における空間的コヒーレンスのこのパラメータを計算することにより、最大空間的コヒーレンスパラメータSを発生させる方向を発見することができ、そのため、点Pにおける繊維の方向を推定することができる。
【0058】
前述の空間的コヒーレンス関数R(m)または空間的コヒーレンスパラメータSは、いくつかの隣接する点Pに渡って、従って注目する点の周囲の視野の小さな体積内で平均することができることに注意すべきである。
【0059】
別の可能な空間的コヒーレンスパラメータは、コヒーレントエネルギーと非コヒーレント後方散乱エネルギーとの間の比を与える集束基準Cである。上記において、換言すれば、平面(X、Y)内で同じ方向に沿って配列されているトランスデューサを、q=1からQまで番号を振ることによって、以下の数式を得る。
【0060】
【数6】
【0061】
ここで、tは、全ての信号RFcoherentkq(t)を再位相化することができる遅延である。
【0062】
前述の場合のように、この空間的コヒーレンスパラメータは、各点Pに関していくつかの方向で計算され、繊維の方向が、パラメータCkを最大化する方向であるとして決定される。
【0063】
そのため、視野1a内の媒体の繊維の3次元マッピングを非常に素早く決定することができる。このマッピングは、有利には媒体1の断面画像の形態で、デバイスの使用者に提示することができ、例えば、コンピュータ4の画面に表示することができる。所望する場合、これらの画像は異なる点Pで検出された繊維間の連続性の復元を伴って計算可能である。
【0064】
段階d:画像形成
段階(b)で計算された配列RFcoherentから、例えば前述の特許文献1に記載されたように、ビーム形成によって視野1aの3次元Bモード画像を形成することが可能である。
【0065】
段階(c)で決定された繊維マッピングをこのBモード画像上に重畳することができ、Bモード画像及びこの画像上に重畳された繊維の両方を示す、視野の断面画像をコンピュータの画面上に表示することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 媒質
1a 視野
2 トランスデューサアレイ
3 電子部品ベイ
4 コンピュータ
5 アナログデジタルコンバータ
6 バッファ
8 中央処理ユニット
9 メモリ
10 デジタル信号処理部
図1
図2