特許第6321182号(P6321182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321182一定の電圧でバイアスされたフォトダイオードを有する画素回路及び関連する撮像方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321182
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】一定の電圧でバイアスされたフォトダイオードを有する画素回路及び関連する撮像方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/374 20110101AFI20180423BHJP
【FI】
   H04N5/374
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-542084(P2016-542084)
(86)(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公表番号】特表2016-535548(P2016-535548A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】US2014055088
(87)【国際公開番号】WO2015038709
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】61/876,226
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517023736
【氏名又は名称】ヴァレックス イメージング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ガングリー アルンデュティー
(72)【発明者】
【氏名】ロース ピーテル ヘルハルト
【審査官】 鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−205307(JP,A)
【文献】 国際公開第03/021939(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30−5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素回路を備える画素アレイを有する画像システムであって、各画素回路が、
光または放射線に応答して電荷を発生させるように構成されるフォトダイオードと、
前記フォトダイオードにより発生される前記電荷を排出するように、バイアス信号によって変調されるバイアス回路のバイアス電流によって前記フォトダイオードの両端に一定のバイアス電圧を提供するように構成されるバイアス回路と、
前記バイアス回路により排出された前記電荷を蓄積し、当該蓄積された電荷を対応する出力電圧に変換するように構成される第1の電荷‐電圧変換器と
を含む、画像システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像システムであって、前記各画素回路が、
前記出力電圧を検出し、前記出力電圧が閾値電圧を超えることに応答して、前記フォトダイオードにより発生される前記電荷を蓄積するように、第2の電荷‐電圧変換器を提供するように構成される利得スイッチング回路をさらに含む、前記画像システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像システムであって、
前記利得スイッチング回路が、
前記出力電圧と前記閾値電圧の差に従って選択信号を発生させるように構成される電圧比較器と、
前記選択信号の論理レベルと関連したラッチ信号を発生させるように構成される選択回路と
を含み、
前記第2の電荷‐電圧変換器が、前記ラッチ信号に基づいて、選択的に前記第1の電荷‐電圧変換器と並列に結合される、前記画像システム。
【請求項4】
請求項1に記載の画像システムであって、
前記第1の電荷‐電圧変換器が、
前記フォトダイオードのカソードに結合された第1の端部と、
前記出力電圧を出力するための第2の端部と
を含み、
前記バイアス回路が、
演算増幅器であって、
非反転入力端部と、
前記フォトダイオードの前記カソードに結合された反転入力端部と、
前記第1の電荷‐電圧変換器の前記第2の端部に結合された出力端部と、を備える、前記演算増幅器と、
前記一定のバイアス電圧を提供するように、前記フォトダイオードのアノードと前記演算増幅器の前記非反転入力端部との間に結合された電圧源と、
を含む、前記画像システム。
【請求項5】
請求項1に記載の画像システムであって、
前記第1の電荷‐電圧変換器が、
前記フォトダイオードのアノードに結合された第1の端部と、
前記出力電圧を出力するための第2の端部と、を含み、
前記バイアス回路が、
第1のトランジスタであって、
前記フォトダイオードのカソードに結合された第1の端部と、
第2の端部と、
制御端部と、を備える、前記第1のトランジスタと、
第2のトランジスタであって、
第1の端部と、
前記第1のトランジスタの前記制御端部に結合された第2の端部と、
前記第1のトランジスタの前記制御端部に結合された制御端部と、を備える、前記第2のトランジスタと、
第3のトランジスタであって、
第1の端部と、
前記第1のトランジスタの前記第2の端部に結合された第2の端部と、
前記第1のトランジスタの前記第2の端部に結合された制御端部と、を備える、前記第3のトランジスタと、
第4のトランジスタであって、
前記第3のトランジスタの前記第1の端部に結合された第1の端部と、
前記第1のトランジスタの前記制御端部に結合された第2の端部と、
前記第1のトランジスタの前記第2の端部に結合された制御端部と、を備える、前記第4のトランジスタと、
第5のトランジスタであって、
前記第3のトランジスタの前記第1の端部に結合された第1の端部と、
前記第1の電荷‐電圧変換器の前記第2の端部に結合された第2の端部と、
前記第1のトランジスタの前記第2の端部に結合された制御端部と、を備える、前記第5のトランジスタと、
前記一定のバイアス電圧を提供するように、前記フォトダイオードの前記アノードと前記第2のトランジスタの前記第1の端部との間に結合された電圧源と、
を含む、前記画像システム。
【請求項6】
請求項1に記載の画像システムであって、前記各画素回路が、
前記第1の電荷‐電圧変換器の第2の端部をデータラインに選択的に結合する第1のスイッチと、
前記第1の電荷‐電圧変換器をリセットする第2のスイッチと
をさらに含む、前記画像システム。
【請求項7】
請求項1に記載の画像システムであって、
第1の処理回路であって、
1の画素回路における前記第1の電荷‐電圧変換器をリセットする前に、前記複数の前記画素回路の中の第1の画素回路における第1の電荷‐電圧変換器により発生される出力電圧を読み出すことにより、第1の信号サンプルを取得し、
2の画素回路における前記第1の電荷‐電圧変換器をリセットする前に、前記複数の前記画素回路の中の第2の画素回路における第1の電荷‐電圧変換器により発生される出力電圧を読み出すことにより、第2の信号サンプルを取得するように構成される、前記第1の処理回路と、
第2の処理回路であって、
前記第1の画素回路における前記第1の電荷‐電圧変換器をリセットした後に、前記第1の画素回路における前記第1の電荷‐電圧変換器により発生される前記出力電圧を読み出すことにより、第1のリセットサンプルを取得し、
前記第2の画素回路における前記第1の電荷‐電圧変換器をリセットした後に、前記第2の画素回路における前記第1の電荷‐電圧変換器により発生される前記出力電圧を読み出すことにより、第2のリセットサンプルを取得するように構成される、前記第2の処理回路と
をさらに含み、
前記第1の画素回路が、前記画素アレイのm番目の行及びn番目の列に配列され、m及びnは正の整数であり、
前記第2の画素回路が、前記画素アレイの(m+1)番目の行及び前記n番目の列に配列される、前記画像システム。
【請求項8】
請求項7に記載の画像システムであって、前記第1のリセットサンプル及び前記第2の信号サンプルが同時に取得される、前記画像システム。
【請求項9】
請求項1に記載の画像システムであって、前記第1の電荷‐電圧変換器が線形平板コンデンサである、前記画像システム。
【請求項10】
請求項1に記載の画像システムであって、前記一定のバイアス電圧がゼロである、前記画像システム。
【請求項11】
撮像方法であって、
リセット期間、画像取得期間または読み出し期間の間に、光または放射線に応答してフォトダイオードにより発生される電荷を排出するように、前記フォトダイオードの両端に確立される電圧を、バイアス回路を用いて一定の値に維持することと、
バイアス信号を用いて前記画像取得期間及び前記読み出し期間又は前記リセット期間の間に2つのバイアス電流間で変調することと、
前記画像取得期間の間に、第1の電荷‐電圧変換器における前記フォトダイオードから排出された前記電荷を蓄積して、前記蓄積された電荷を対応する出力電圧に変換することと、
前記画像取得期間の後の前記読み出し期間の間に、前記出力電圧を読み出すことにより信号サンプルを取得すること、を含み、前記信号サンプルの電圧が、前記画像取得期間の間に前記第1の電荷‐電圧変換器内に蓄積される前記電荷と関連する、撮像方法。
【請求項12】
請求項11に記載の撮像方法であって、
前記リセット期間の間であり、且つ前記画像取得期間の前に、前記第1の電荷‐電圧変換器をリセットすることと、
前記リセット期間の間に、前記第1の電荷‐電圧変換器内に蓄積される電荷と関連したリセットサンプルを取得することと、
前記画像取得期間の間に、前記信号サンプルの電圧及び前記リセットサンプルの電圧に基づいて、前記フォトダイオードにより発生される前記電荷と関連した映像信号を発生させること
をさらに含む、前記撮像方法。
【請求項13】
請求項12に記載の撮像方法であって、前記映像信号が、前記リセットサンプルにより減算された前記信号サンプルと関連する、前記撮像方法。
【請求項14】
請求項11に記載の撮像方法であって、
前記画像取得期間の間に、前記フォトダイオードの両端に確立される前記電圧を前記一定の値に維持するように、第1のバイアス電流を使用して前記バイアス回路を動作させることと、
前記リセット期間または前記読み出し期間の間に、前記フォトダイオードの両端に確立される前記電圧を前記一定の値に維持するように、第2のバイアス電流を使用して前記バイアス回路を動作させること、をさらに含み、前記第1のバイアス電流が前記第2のバイアス電流よりも小さい、前記撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照により明細書に組込まれる、2013年9月11日に出願された米国仮出願番号第61/876,226号(代理人整理番号124‐0015‐US‐PRO)の利益を主張するものである。
【0002】
本明細書において特に明記のない限り、この部分において述べられるアプローチは、本出願の特許請求の範囲に対する先行技術ではなく、また、この部分に包含することにより、先行技術であると認められない。
【0003】
従来の撮像装置は、入射光を電流または電圧のいずれかに変換する感光性の電子的素子であるフォトダイオードを使用する。そのようなフォトダイオード素子または画素の行列からの信号が、画像を作成する。フォトダイオードは、「電荷消耗」モードで通常は動作される。このモードにおいて、各画素回路におけるフォトダイオードと関連したコンデンサは、露光または画像取得前に、1V〜6Vの逆バイアス(または電圧)にプリチャージされる。例えば、カソードは、アノードよりも電圧レベルが高い(カソード及びアノードは、フォトダイオードにおいて反対の極性に帯電した2つの電極である)。非常に少ない漏れ電流の流れがこれらの2つの端子間で可能である。漏れ電流とは、オフ状態のデバイスにおける電荷の流れであり、望ましくない現象である。電荷消耗モードにおいて、画像情報により発生される光電流は、逆バイアス内にストアされた電荷を消極的に消耗するか、または除去し、その結果、フォトダイオード両端の電圧は、フォトダイオードが入来する画像により投射される光を吸収するにつれて、徐々に降下する。
【0004】
いくつかの先行技術の受動画素回路では、読み出し動作が、フォトダイオード逆バイアスを露光前のレベルに回復でき、このバイアスを回復するのに必要とされる電荷の量を測定できる。いくつかの先行技術の能動画素回路では、フォトダイオードに残された電圧が、露光の最後に測定される。フォトダイオード逆バイアスはその後、別個のリセット動作によって回復される。
【0005】
上述の先行技術のアプローチには、少なくとも以下の制限がある。すなわち、(1)フォトダイオード漏れ電流が、ストアされた逆バイアスも消耗でき、それゆえ、ショット雑音として知られるタイプの雑音及びダイナミックレンジの制限が生じること、(2)フォトダイオード感度が、信号積分の増加により消耗し得るそのバイアス電圧と共に変化でき、それゆえ、望ましくない非線形性が生じること、(3)多くのアクティブ画素設計において、蓄積された信号電荷が、電圧の関数である、フォトダイオード静電容量間の電圧によって表され、それによって、望ましくない非線形性が生じること、及び、(4)フォトダイオード静電容量のバイアス回復動作が、kTC雑音(リセット雑音としても知られる)を生じさせることがあること、である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】画像システムにおける1つの例示的な画素回路の概略図である。
図2】画像システムにおける別の例示的な画素回路の概略図である。
図3】画像システムにおける別の例示的な画素回路の概略図である。
図4】画像システムにおけるさらに別の例示的な画素回路の概略図である。
図5図1に示された画素回路で実施される画像システムの概略図である。
図6】本開示の少なくともいくつかの実施形態に従って全てが構成された、図5の画像システムの動作を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成する添付の図面が参照される。図面では、特に文脈が規定しない限り、同様の記号は、通常は同様の構成要素を示す。詳細な説明、図面及び特許請求の範囲において述べられる説明的な実施形態は、限定的であることを意図するものではない。本明細書に示された主題の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、または他の変更がなされてもよい。本明細書において全般的に述べられ、また図面に示されるように、本開示の態様は、幅広い様々な構成においてアレンジでき、置換でき、結合でき、また、設計でき、それら全てが、本明細書において明確に考慮されることが容易に理解されよう。
【0008】
この説明全体を通して、フォトダイオード両端のバイアス電圧(すなわち、フォトダイオードのカソード端子及びアノード端子間に存在または維持される電位差)と、画素回路において動作するバイアス電流との相違に留意すべきである。バイアス電圧は、フォトダイオードが電荷消耗により光信号を積分できることを可能にするように、フォトダイオードに印加される。バイアス電流は、画素回路の、最適な、線形且つ低雑音の動作を確実にするように、画素回路内のアクティブユニットに印加される。
【0009】
図1図2図3及び図4は、それぞれ、本開示の少なくともいくつかの実施形態に従った、画像システムにおける画素回路101、102、103及び104の概略図である。画素回路101、102、103及び104のそれぞれは、フォトダイオードPD、バイアス回路10、電荷‐電圧変換器C1、ならびにスイッチSW1及びSW2を備える。画素回路101、102、103及び104は、制御信号RESET、BIAS及びSELECTに基づいて動作するように構成でき、これは後の段落において詳細に説明される。VCC及びVSSは、正常な動作を確実にするようにバイアス回路10に供給されるバイアス電圧を表す。
【0010】
画素回路101、102、103及び104の動作は、少なくとも3つの段階を備えることができる。すなわち、画像取得期間、読み出し期間及びリセット期間である。バイアス回路10は、全体の動作の間にフォトダイオードPDの両端に一定のバイアス電圧を提供するように構成され、その結果、画素回路101、102、103及び104は「電荷発生」モードで動作できる。画像取得期間の間、フォトダイオードPDは、入射する光または放射線に応答して電荷を発生させるように構成できる。「電荷発生」モードにおいて、光または放射線に応答してフォトダイオードPDにより発生される電荷は、バイアス回路10によって排出され、電荷‐電圧変換器C1内に蓄積される。前述のように、先行技術の画素回路は、フォトダイオード感度がバイアス電圧と共に変化でき、それゆえ望ましくない非線形性が生じる、「電荷消耗」モードで動作するように構成される。本開示では、フォトダイオードPD両端のバイアス電圧は、入射する光または放射線によって変調することができないので、フォトダイオード感度は、既に捕捉された信号の量の関数ではなく、それゆえ、信号応答の線形性を維持できる。
【0011】
図1図2図3及び図4に示された実施形態において、電荷‐電圧変換器C1は、これに限定されるのではないが、線形平行板コンデンサまたは同様の機能を有する別のタイプのデバイスとすることができる。画像取得期間の間、電荷‐電圧変換器C1は、フォトダイオードPDから排出された電荷を第1の端部で受け取り、当該受け取られた電荷を蓄積し、当該蓄積された電荷を第2の端部で出力電圧Voに変換するように構成できる。読み出し期間の間、出力電圧Voは、対応する映像信号を取得するために、画像システムにおける対応するデータラインにスイッチSW1を介して伝送でき、これは後の段落において詳細に説明される。リセット期間の間、電荷‐電圧変換器C1は、蓄積された電荷をクリアするために、スイッチSW2を使用してリセットでき、それによって、後続の画像取得期間に備える。
【0012】
前述のように、先行技術の能動画素回路において光または放射線により発生される電荷は、フォトダイオード静電容量において蓄積され、これは変動するバイアス電圧の関数であり、それによって、望ましくない非線形性が生じる。本開示において、光または放射線により発生される電荷は、フォトダイオード静電容量ではなく、電荷‐電圧変換器C1内に蓄積される。電荷‐電圧変換器C1の利得(入力電荷対出力電圧の比)は、いずれの入射する光または放射線とも無関係の一定の値なので、入射する光または放射線の線形表現は、電荷‐電圧変換器C1の第2の端部で出力電圧Voを直接読み出すことにより提供できる。
【0013】
「電荷発生」モードで動作する場合、バイアス回復動作が、切換方法におけるフォトダイオードPD上で実行される必要がないことに留意すべきである。それゆえ、本開示の少なくともいくつかの実施形態に従った画素回路101、102、103及び104は、従来の画素回路の欠点であった多量のkTC雑音を発生させない。
【0014】
図1及び図3に示された実施形態において、画素回路101または103のバイアス回路10は、演算増幅器20及び電圧源40を備える。電圧源40は、演算増幅器20の非反転端部とフォトダイオードPDのアノードとの間に結合される。電荷‐電圧変換器C1は、演算増幅器20の反転端部と出力端部との間に結合される。フォトダイオードPDの両端に提供される一定のバイアス電圧は、電圧源40によって決まる。演算増幅器20は、その反転入力で、仮想の接地ノードをフォトダイオードPDに提供でき、それゆえ、そうした仮想の接地ノードをその非反転入力と同じ電圧で保持できる。光により発生される全ての電荷は電荷‐電圧変換器C1を通され、そこで、当該電荷は、フォトダイオードPDが入来する光信号から発生させた電荷の積算量に直線的に比例する出力電圧Voになる。しかし、これらの光により誘起された電荷は、従来の画素回路における非線形性の原因である、フォトダイオードPD両端の電圧を変化させない。
【0015】
図2及び図4に示された実施形態において、画素回路102または104のバイアス回路10は、電流整流回路30及び電圧源40を備える。電流整流回路30は、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4、及びQ5を備え、これらは、金属酸化膜半導体電解効果トランジスタ(MOSFET)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)または同様の機能を有する他のデバイスとすることができる。フォトダイオードPDのカソードは、電流整流回路30の第1の端部に結合される。電圧源40は、電流整流回路30の第2の端部とフォトダイオードPDのアノードとの間に結合される。電荷‐電圧変換器C1は、電流整流回路30の第3の端部とフォトダイオードPDのアノードとの間に結合される。フォトダイオードPDの両端に提供される一定のバイアス電圧は、電圧源40によって決まる。画素回路102及び104における電流整流回路30が、演算増幅器と比べて電子雑音の発生を少なくできることに留意すべきである。
【0016】
前述のように、従来の画素回路は、フォトダイオード上にストアされた初期バイアス電荷を消耗するので、漏れ電流は、従来の画素回路が画像積分モードに留まることのできる時間の長さを制限する。漏れ電流はまた、従来の画素回路の低信号検出機能を制限するショット雑音をもたらす。本開示のいくつかの実施形態によれば、バイアス回路10における電圧源40は、0Vのバイアス電圧を提供するように構成され、その結果、漏れ電流はフォトダイオードPDにおいて発生し得ない。結果として、より望ましい線形性を提供することに加えて、ゼロバイアスされたフォトダイオードを有する画素回路101、102、103及び104は、動作時間を長くでき、また、ショット雑音を低くできる。
【0017】
図1図2図3及び図4に示された例示的な実施形態において、バイアス回路10は、画像取得期間の間は第1のモードで、また、読み出し期間及びリセット期間の間は第2のモードで動作するように構成される。バイアス回路10は、バイアス信号BIASに基づいて、第1のモードと第2のモードとの間を切り換えることができる。第1のモードにおいて、バイアス回路10の内部バイアス電流は、フォトダイオードPDから電荷を排出し、且つフォトダイオードPDの両端を一定のバイアス電圧に維持するのに十分な最小値に変調される。第2のモードにおいて、バイアス回路10の内部バイアス電流は、雑音低減のために、また、良好なインテグリティでデータラインに出力電圧Voを送信するのに十分な駆動強度を提供するために、より高い値(その最小値の100倍と同程度)に変調される。それゆえ、画素回路101、102、103及び104が、画素数の高いアクティブ/パッシブモノリシック画像システムにおいて実施される場合に特に、電力消費は、バイアス回路10の内部バイアス電流を変調することによって低減できる。
【0018】
図3及び図4に示された例示的な実施形態において、画素回路103及び104のそれぞれは、利得スイッチング回路50及び電荷‐電圧変換器C2をさらに備える。利得スイッチング回路50は、電圧比較器52と、ラッチ54ならびにスイッチSW3及びSW4を有する選択回路とを備える。電圧比較器52は、出力電圧Voと閾値電圧Vthとの差に従って、選択信号Vsを発生させるように構成される。ラッチ54は、選択信号Vsの論理レベルと関連したラッチ信号Vaを発生させるように構成される。その利得が電荷‐電圧変換器C1の利得よりも高い電荷‐電圧変換器C2は、ラッチ信号Vaに基づくスイッチSW3を介して電荷‐電圧変換器C1と選択的に並列に結合される。電荷‐電圧変換器C2は、これに限定されるのではないが、線形平行板コンデンサまたは同様の機能を有する別のタイプのデバイスとすることができる。
【0019】
画素回路103または104の全体の電荷‐電圧変換比が、最適な信号対雑音比を達成するのに可能な限り小さくされる場合、処理できる信号電荷の量は、少なくなるであろう。本開示の少なくともいくつかの実施形態によれば、電荷‐電圧変換器C1の利得は、最大限の変換効率を提供するのに可能な限り低いものであるように選択でき、他方で、電荷‐電圧変換器C2の利得は、より多くの量の信号電荷を処理するために、電荷‐電圧変換器C1の利得よりも著しく高いものであるように選択できる(通常、4倍または16倍高い)。各フレームの開始時に、選択回路におけるスイッチSW3はオフにされ(開回路にされ)、画素回路103または104の全体の電荷‐電圧変換比は、それゆえ、電荷‐電圧変換器C1の利得のみによって決まる。このような状況の下、画素回路103または104は、電荷‐電圧変換効率及び信号対雑音比を改善できる。
【0020】
前述のように、電荷‐電圧変換器C1によって提供される出力電圧Voは、フォトダイオードPDによって発生され、且つそこから排出される電荷に比例し、電圧比較器52によって提供される選択信号Vsは、出力電圧Voと閾値電圧Vthとの差に比例する。フォトダイオードPDが、低レベルの光または放射線に露光される場合、電荷‐電圧変換器C1内に蓄積された電荷は、閾値電圧Vthを超えない出力電圧Voとなることがある。この時、電圧比較器52により発生される選択信号Vsは論理ローレベルにあり、選択回路においてラッチ54により発生される対応するラッチ信号Vaは、スイッチSW3を「オフ」状態に保つ。従って、画素回路103または104の全体の電荷‐電圧変換比はやはり電荷‐電圧変換器C1の利得のみによって決まり、それによって、電荷‐電圧変換効率及び信号対雑音比が改善する。
【0021】
フォトダイオードPDが、高レベルの光または放射線に露光される場合、電荷‐電圧変換器C1内に蓄積される電荷は、十分に大きいものとすることができ、その結果、出力電圧Voは、閾値電圧Vthを超えるまで急速に上昇する。この条件の下、電圧比較器52により発生される選択信号Vsは論理ハイレベルにあり、選択回路においてラッチ54により発生される対応するラッチ信号Vaは、スイッチSW3をオンにし(短絡させ)、それによって、電荷‐電圧変換器C2が電荷‐電圧変換器C1と並列に結合することが可能となる。従って、画素回路103または104の全体の電荷‐電圧変換比は、ここでは、電荷‐電圧変換器C1の利得と電荷‐電圧変換器C2の利得の両方によって決めることができ、それによって、画素回路103または104は、より多くの量の信号電荷を積分することが可能となる。
【0022】
この方法で、画像において暗い(低レベルの光または放射線)領域は、利得が高く、且つ相加性雑音が低い状態で取り込むことができ、明るい(高レベルの光または放射線)領域は、信号容量が高い状態で取り込まれる。低い利得で取り込まれた画素データは、出力電圧Voと平行して(スイッチSW1及びSW4を制御することにより)多重伝送される利得ビット値GBとして、ラッチ出力により警告できる。後の画像処理コンピュータ(図示せず)はその後、その画素の代表デジタル値を、その画素の較正された利得比によりデジタルに乗算して、先行技術の画素回路における既定の利得設計により可能なものよりもダイナミックレンジがより大きい状態で、すべての画素のための線形信号値を回復できる。
【0023】
図5は、本開示の少なくともいくつかの実施形態に従った、図1の画素回路101により実施される画像システム500の概略図である。画像システム500は、M×N画素の撮像装置アレイとして構成でき、ここでM及びNは正の整数である。図5は、説明目的のためにM=N=3である場合の実施形態を表す。画素回路101が例として使用されているが、画素回路102、103及び104のそれぞれが、画像システムにおいて同様に実施されてもよい。
【0024】
画像システム500はまた、行制御回路510及び列読み出し回路520を備える。行制御回路510は、バイアス信号BIAS1、BIAS2及びBIAS3、選択信号SELECT1、SELECT2及びSELECT3、ならびにリセット信号RESET1、RESET2及びRESET3を含め、対応する画素回路101を動作させるための制御信号を発生させるように構成される。バイアス信号BIAS1、BIAS2及びBIAS3は、それぞれ画素回路101の第1、第2及び第3の行における演算増幅器20のバイアス電流を変調するのに使用される。選択信号SELECT1、SELECT2及びSELECT3は、それぞれ画素回路101の第1、第2及び第3の行におけるスイッチSW1をオンにするのに使用され、その結果、対応する行の出力信号Voは、列読み出し回路520に伝送できる。リセット信号RESET1、RESET2及びRESET3は、次の画像取得のために、対応する行の電荷‐電圧変換器C1内に蓄積された電荷をクリアするように、それぞれ画素回路101の第1、第2及び第3の行におけるスイッチSW2をオンにするのに使用される。
【0025】
列読み出し回路520は、第1の映像処理回路、第2の映像処理回路、複数の信号データラインDLA1、DLA2及びDLA3、ならびに複数のリセットデータラインDLB1、DLB2及びDLB3を備える。第1の映像処理回路は、映像処理ユニットA1、A2及びA3を備え、それぞれは、画素回路101の対応する列から対応する信号データラインを介して受け取った出力電圧Voを処理するように構成される。第2の映像処理回路は、映像処理ユニットB1、B2及びB3を備え、それぞれは、画素回路101の対応する列から対応するリセットデータラインを介して受け取った出力電圧Voを処理するように構成される。画像システム500において、2つの映像処理回路及び2つのデータラインが、画素回路101の対応する列に提供される。例えば、画素回路101の第1の行におけるスイッチSW1が選択信号SELECT1によってオンにされる場合、処理ユニットA1は、信号データラインDLA1を介して出力電圧Voをラッチすることにより信号サンプルを取得でき、処理ユニットB1は、リセットデータラインDLB1を介して出力電圧Voをラッチすることによりリセットサンプルを取得できる。
【0026】
いくつかの実施形態において、画像積分の完了時に、各画素回路上にストアされた信号は、ラスター映像信号VIDEOを形成するように、行列データライン及び列読み出し回路520を通って読み出すことができる。連続的に、通常は行列の行単位で、その行の画素内演算増幅器20が、対応するバイアス信号に基づいて上昇したバイアス電流により動作でき、その行のスイッチSW1が、対応する選択信号によってオンにできる。それゆえ、その行における演算増幅器20の出力端部は、行列データラインを通って列読み出し回路520に接続できる。各データラインから信号サンプルを取り込んだ直後に、その行のためのリセット信号が、蓄積された信号電荷をクリアするように作動でき、また、次の画像積分フェーズのために画素回路を準備できる。
【0027】
図6は、本開示の少なくともいくつかの実施形態に従った、図5の画像システム500の動作を示すタイミング図である。選択信号SELECT1、SELECT2及びSELECT3がアクティブ(図6におけるハイレベルによって表す)である場合、列読み出し回路520が信号サンプル及びリセットサンプルを対応する画素回路から取得することが可能となるように、スイッチSW1がオンにされる。いくつかの実施形態においては、映像処理回路A1、A2及びA3が電荷‐電圧変換器C1をリセットする前に対応する画素回路から信号サンプルを取得することが可能となるように、また、映像処理回路B1、B2及びB3が電荷‐電圧変換器C1をリセットした後に対応する画素回路からリセットサンプルを取得することが可能となるように、各行のための選択信号は、対応するリセット信号がインアクティブになる前及びその後の十分な時間の間、アクティブに保つことができる。画素回路から取得されたリセットサンプルは、次の画像積分フェーズに備えて演算増幅器20をリセットするレベルを表すことができる。このリセットサンプルは、その後、次の画像の信号サンプルから減算するためにストアでき、それゆえ、演算増幅器20のリセット雑音を除去するように、相関二重サンプリングを実行できる。
【0028】
いくつかの実施形態において、この相関二重サンプリングプロセスは、1つの行のリセットサンプル及び次の行の信号サンプルが同じ期間の間に読み取ることができるように、2つのデータライン及び2つの映像処理回路を列毎に有する画像システム500を設計することによって合理化できる。例えば、第1の行のリセットサンプル及び第2の行の信号サンプルは、選択信号SELECT1とSELECT2の両方がアクティブであるT3及びT4の間に取得できる。同様に、第2の行のリセットサンプル及び第3の行の信号サンプルは、選択信号SELECT1とSELECT2の両方がアクティブであるT5〜T6の間に取得できる。
【0029】
いくつかの実施形態において、この相関二重サンプリングプロセスは、1つの行のリセットサンプル及び次の行の信号サンプルが同時に読み取ることができるように、2つのデータライン及び2つの映像処理回路を列毎に有する画像システム500を設計することによって合理化できる。例えば、第1の行のリセットサンプル及び第2の行の信号サンプルは、選択信号SELECT1とSELECT2の両方がアクティブであるT3及びT4の間の同じ時間に取得できる。同様に、第2の行のリセットサンプル及び第3の行の信号サンプルは、選択信号SELECT1とSELECT2の両方がアクティブであるT5及びT6の間の同じ時間に取得できる。
【0030】
様々な態様及び実施形態が本明細書において開示されたが、他の態様及び実施形態が当業者に明らかであろう。明細書において開示された様々な態様及び実施形態は、説明目的のためのものであり、限定的であることを意図するものではなく、その正確な範囲及び精神は以下の特許請求の範囲に示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6