(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ペン先が、筆記部となる多孔体と、前記多孔体を保持し、筆記部にインクを供給するためのインク誘導部を有し、可視光線透過率が50%以上となる材料から構成された保持体とを備え、筆記具本体に含まれるインクを、上記保持体のインク誘導部内を通って上記筆記部に供給し、かつ、上記保持体が、筆記方向を視認できる視認部となる筆記具であって、前記インク誘導部は前記保持体の長手方向に形成し、前記視認部の面積比率が、前記筆記具本体先端部より突出した前記ペン先の40%以上であり、前記保持体のインク誘導部の外周にフランジが前記保持体と同一材料で一体に形成されると共に、保持体の前記視認部を形成する面が、略平行とし、保持体の上部側の両側面に筆記部となる多孔体を保持するリブ体を設け、多孔体と接触する保持体の接触部分の局部山頂の表面は梨地状態であることを特徴とする筆記具。
前記インク誘導部の断面積が、前記筆記部の前記保持体側断面積未満であると共に、前記フランジにはインク誘導部よりも大きな開口部が同心状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
【背景技術】
【0002】
従来より、ペン先の視認部で筆記方向を視認することができる筆記具としては、各構造の筆記具(例えば、本出願人による特許文献1〜5参照)が知られている。これらの各特許文献の中で、本発明の近接技術を示すものとして、例えば、
図9に示すように、筆記具本体1aから供給されるインクを誘導し、かつ保留できるペン体1bを有する筆記具1において、上記ペン体1bは、インク誘導部1cと、該インク誘導部1cからのインクを導出する筆記部1dとを備えると共に、該筆記部1dの軸方向直上に筆記方向を視認できる可視部1eを備えたことを特徴とする筆記具(例えば、本出願人による特許文献1参照)が知られており、特に、
図10及び
図11に示される各ペン体が本発明に最も近い近接技術を開示するものである。
【0003】
図10(a)及び(b)は、上記特許文献1に記載される筆記具におけるペン体の第6実施形態の図面である。この実施形態のペン体2は、透明な支持部材2aの前端に脚部2bで固定された筆記部2cが設けられ、この筆記部2cの脚部2b後端に連通して上記支持部材2a内部所要箇所にインクを毛管作用で誘導可能とするインク誘導溝からなるインク誘導部2dが設けられる構造となるものであり、支持部材2aは透明な樹脂等で構成されているので、2eが可視部となり、可視部2a内の流通するインクを通して筆記方向を視認するものである。
また、
図11(a)及び(b)は、上記特許文献1に記載される筆記具におけるペン体のペン体の第8実施形態である。この実施形態のペン体3は、上記
図10の第6実施形態のペン体と略同じ構成であり、相違する点は支持部材3aに可視部となる窓部3bが穿設されると共に、インク誘導溝3cがその窓部3bを迂回して形成され、筆記部3dにインクが毛管作用で供給可能となる構造となるものである。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載される筆記具において、
図9及び
図11では、可視部1e,3bの両側にインク誘導部1c,3cが設けられると共に、下部に筆記部1d,3dが設けられる構造となるため、視認性を有する可視部1eの面積比率は、実際上、筆記具本体先端部より突出したペン先(ペン体)の30%台となるため、十分な視認性を確保することができず、筆記方向が若干見づらい点に課題がある。この可視部を拡大すれば、筆記方向の視認性は広くなるものであるが、筆記部も拡大するため、ラインマーカーとしての筆記性能を損なうこととなる。
また、
図10で示されるペン体2では、可視部2a内の流通するインクを通して筆記方向を視認するものであるため、インク色が濃い色の場合は、筆記方向が見づらい点に課題がある。また、可視部2a内に固定される脚部2b部分は視認性を有しないので、視認性を有する可視部2aの面積比率は、実際上、筆記具本体先端部より突出したペン先(ペン体)の30%台となるため、十分な視認性を確保することができず、更に筆記方向を広く視認できる構造のペン体が望まれているのが現状である。
【0005】
一方、筆記部の陰となる筆記方向の部分を視認することができると共に、インクの終了サインを検知することができるインク終了検知式の筆記具として、例えば、
図12(a)及び(b)に示すように、軸筒4a内のインク吸蔵体4bに含浸されたインクが、中継芯4c、インク誘導部4dを介して筆記部となるペン先4eに供給されると共に、前記インク吸蔵体4bのインクの終了サインを上記インク誘導部4dで視認することにより検知するインク終了検知式の筆記具であって、前記インク誘導部4dは、筆記方向を視認できる可視部4fと、該可視部4fの側部にインク誘導管4gとを有する筆記具4(例えば、本出願人による特許文献6参照)や、
図13(a)及び(b)に示すように、軸筒5a内のインク吸蔵体5bに含浸されたインクが、中継芯5c、インク誘導管5dを介して筆記部となるペン先5eに供給されると共に、前記インク吸蔵体5bのインクの終了サインを上記インク誘導管5dで視認することにより検知するインク終了検知式の筆記具であって、前記インク誘導管5dは内部に厚さが0.01〜1.0mmとなるスリット状のインク流路5eを設けた平板状のインク誘導部5gを有すると共に、インク充填時のインク誘導部5gの可視光線透過率が50%以上となり、かつ、上記インク誘導部5gを介して、該インク誘導部5gの軸方向直下の筆記方向を視認できる筆記具5(例えば、本出願人による特許文献7参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記
図12(a)及び(b)に示される筆記具4では、終了サインを確実に検知するためには、インク誘導管4gが太く(大きく)なるため、十分な視認性を確保することができない点に若干の課題がある。また、インク誘導管4gの形状が複雑なため、ペン先のシール性を確保すること、最後までインクを使いきる構造とするためには、困難性を有し容易でないのが現状であった。
また、上記
図13(a)及び(b)に示される筆記具5では、十分な視認性を確保できる程度にまでインク誘導部を薄くすると、インク流量を確保することができず、また、十分なインク流量を確保しようとすると、十分な視認性を確保することはできず、したがって、有効な視認部が少なく、見難いものであった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
図1は、本発明の筆記具の実施形態の一例を示す縦断面図、
図2は、ペン先を示す図面であり(a)は縦断面図、(b)は(a)のA―A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
本実施形態の筆記具Aは、マーキングペンタイプの筆記具であり、
図1に示すように、筆記具本体となる軸筒10、インク吸蔵体20、中継多孔体30、ペン先40、尾栓60とを備えている。
軸筒10は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ガラス等で形成されるものであり、筆記具用インクを含浸したインク吸蔵体20を収容する本体部11と、ペン先40を固着する先軸部12を有している。
【0014】
インク吸蔵体20は、水性インク、油性インクなどの筆記具用インクを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体20は、軸筒10の本体部11内に収容されている。
なお、上記軸筒10の後端側開口部は、軸筒10と同一素材又は別の合成樹脂製素材等にて成形される尾栓60により封止されている。
また、用いるインク組成は特に限定されず、アンダーラインペン等ではインクに蛍光色素、例えば、ベーシックバイオレット11、ベーシックイエロー40などを含有させることできる。
【0015】
中継多孔体30は、インク吸蔵体20のインクを後述する保持体55に設けたインク誘導部50に供給する中継芯となるものであり、インク吸蔵体20と同様に繊維束、フェルト等の繊維束を加工した繊維束芯、または、硬質スポンジ、樹脂粒子焼結体等からなる樹脂粒子多孔体、スライバー芯等の連続気孔(流路)を有するものであり、インク吸蔵体20に含浸されたインクを中継多孔体30を介して保持体55のインク誘導部50へ供給できるものであれば、特にその形状、構造等は限定されるものでない。この中継多孔体の断面形状としては、例えば、円、楕円、正方形、長方形、台形、平行四辺形、ひし形、カマボコ形、半月形の形状が挙げられ、本実施形態では、断面形状が円形状となっている。なお、本実施形態の中継多孔体30は、
図1に示すように、先軸12内に嵌合される支持部材35に保持される構造となっている。
【0016】
ペン先40は、
図1及び
図2に示すように、筆記部となる多孔体(ペン芯)45と、該多孔体45を保持し、筆記部にインクを供給するためのインク誘導部50を有する保持体55とを備えている。
本実施形態の筆記部となる多孔体45は、保持体55の先端部に固着されるものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる並行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、各種のプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)などからなるものである。
【0017】
この筆記部となる多孔体45の形状としては、例えば、外観形状がチゼル形状、砲弾形状、円柱、楕円柱、立方体、直方体などの形状が挙げられ、また、その断面形状が台形、平行四辺形、ひし形、カマボコ形、半月形等となる形状が挙げられ、本実施形態では、チゼル形状となっている。チゼル形状とは、先端がペン軸の中心線に対して傾斜面を形成しており、傾斜面が平坦である形状である。
また、筆記部となる多孔体45は、筆記しやすい傾きとなるように、好ましくは、本体軸の長軸方向に対して、40〜90°の角度で傾いていることが望ましく、本実施形態では、75°の傾きとなっている。
これらの筆記部となる多孔体45の形状、傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、筆記部となる多孔体45は、描線幅が太いものであり、好ましくは、描線幅2mm以上、更に好ましくは、描線幅3mm以上の描線幅となる筆記部である。
【0018】
本実施形態の保持体55は、視認性を有する材料、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の材料から構成されるものであり、可視光線透過率が50%以上となる材料から構成されることが好ましい。 この可視光線透過率が50%未満の材料を使用した場合は、筆記方向に書いてある文字を有効に視認できないことがあり、好ましくない。更なる良好な視認機能を発揮できるようにするために、50%以上透過する材料が好ましく、この可視光線透過率が80%以上であれば、更に良好に視認できるものとなる。
なお可視光線透過率は、多光源測色計を用いて反射率を測定することで求めることができる。
【0019】
この保持体55は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成することができ、2種類以上の材料で構成する場合は、少なくとも一つが可視光線透過率50%以上となる材料から構成されているものが好ましく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0020】
上記保持体55内部には、筆記部にインクを供給するためのインク誘導部50を少なくとも1つ有するものであり、本実施形態では、視認部の面積比率を最大限に発揮せしめる点、筆記部となる多孔体に効率的にインクを供給する点から、
図2(a)及び(c)に示すように、長手方向の中央にインク誘導部50が貫通する形で1本設けられている。
このインク誘導部50の形状、大きさ等は、筆記具本体に含まれるインク吸蔵体20に含浸されたインクが上記中継多孔体30を介して直接インク誘導部へ供給できる構造等とるものであれば、その形状、構造、大きさ、本数などは適宜選択することができる。
好ましくは、本発明の効果を最大限に発揮せしめる点から、インク誘導部50の断面幅方向の長さWは、ペン先の長軸長さXの40%未満、更に好ましくは、1〜30%であることが望ましく、また、インク誘導部50の断面積は、筆記部の保持体側断面積未満、または、中継多孔体30の保持体側断面積未満であることが望ましい。
【0021】
特に、十分な筆記流量の確保、保持体の視認性を損なわずに、十分な筆記流量を確保する点から、インク誘導部50の幅方向の長さが3mm以下、好ましくは、0.1〜2.5mmであることが望ましく、また、直径0.1〜3.0mm、好ましくは、直径0.2〜2.5mm、更に好ましくは、直径0.2〜2.0mmの管状であることが望ましい。
また、保持体55内部にインク誘導部50の断面積の合計が0.01〜7mm
2、好ましくは、0.03〜5mm
2で、更に好ましくは、0.03〜4mm
2であることが望ましい。
更に、インク誘導部50は、筆記部45側に向かってテーパーが形成されていることが好ましく、また、本体軸の長軸方向に対して0〜30°の向きで、2本以上の複数本でもよいが、1本のみ設けられていることが望ましい。
また、インク誘導部50の形状は長軸方向に対して直線が望ましいが、後述するように、V字形状、X字形状、Y字形状、螺旋形状、逆V字形状、逆Y字形状のようにして視認しやすい形状にすることもできる。
本実施形態では、筆記部多孔体の保護及びシール性を確保の点から、保持体55の中継多孔体30側にフランジ51が保持体と同一材料で一体に形成されると共に、インク誘導部50の後端はインク誘導部50よりも大きな開口部52が同心状に形成されている。
【0022】
上記構造となるインク誘導部50の形成方法としては、例えば、インク誘導部形成用の棒状体等を備えた金型に樹脂を流し込んで射出成形、ブロー成形等の各樹脂成形法で成形後、型抜きをして保持体55にインク誘導部50を形成する方法、保持体55成形後に、ドリル、レーザー加工などによりインク誘導部50を形成する方法、保持体55を二部材とし、それぞれにインク誘導部形成用の溝を形成した後、これらを接着、溶着などにより一体化して保持体55にインク誘導部50を形成する方法などが挙げられ、先行技術文献に記載された同様の方法で形成することができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、上記保持体55内部に設けられたインク誘導部50は、後述する筆記具用インクが入った状態で可視光線透過率が50%未満であり、視認部として機能せず、筆記方向を有効に視認できないものとすることが望ましい。インク誘導部50にインクが入った状態で視認できる状態であると、インクの着色成分等の使用が制限されることとなり、ニーズに対応したインク色が得られないこととなり、好ましくない。このような場合には、インク誘導部50に筆記具用インクと略同色で着色されたパイプを挿入して、インク色が容易に判別できるようにしてもよい。
また、保持体55のインク誘導部50以外の部分が視認部を形成する面となるものであり、筆記方向を有効に視認するために、略平行面となっていることが望ましい。なお、視認部をレンズ面として拡大して視認することもできる。
【0024】
本発明において、上記筆記部となる多孔体45と、インク誘導部50を有する保持体55との接着は、多孔体45を、シール性能を付与した状態で、強固に固定せしめる点から、多孔体45と保持体55が接触している部分の多孔体45の細孔の凹凸に、保持体55から保持体を形成する樹脂が入り込み、保持体樹脂層を形成することで多孔体45と保持体55が固定されることが望ましい。
上記多孔体45と保持体55を形成する材料が、溶剤への溶解性の異なる樹脂から選ばれることが好ましく、例えば、多孔体45では、ポリエチレン製焼結芯、保持体では、アクリル製であれば、溶剤として、多孔体樹脂と保持体樹脂の溶解パラメーター(SP値)の差が0.5以上とすることができるため、アルコール、エステル(酢酸ブチル)、エーテル、ケトン(アセトン)、グリコールエーテル、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素、塩化脂肪族炭化水素(ジクロロメタン)、芳香族炭化水素、塩化芳香族炭化水素等の有機溶剤を用いることにより、上記筆記部となる多孔体45と、インク誘導部50を有する保持体55とを固定することができる。
【0025】
好ましくは、インク誘導部50の筆記部多孔体45側の端面には、多孔体45と保持体55の境界面に、保持体樹脂層(以下、「境界面の保持体樹脂層を接着面」と表記)を形成し、該接着面が、当該端面の全方向に対して長さ0.5mm以上、更に好ましくは、0.8〜3mm形成されていることが望ましい。
この接着面は、平面、曲面、屈曲部の何れかで形成することができ、インク誘導部50の筆記部多孔体45側の端面には、接着面が当該端面全周に渡り0.5mm以上、更に好ましくは、0.8〜3mm形成されていることが望ましい。
また、接着面上の保持体樹脂層が、多孔体45内部に向かって1〜1000μm、更に好ましくは、10〜800μm形成されていることが望ましく、また、筆記部多孔体45と接触する保持体55の接触部分の局部山頂の表面はシボ加工等により梨地状態となっていることが望ましい。
【0026】
図3及び
図4は、筆記部となる多孔体45と、インク誘導部50を有する保持体55との接着構造の実施形態を示すものである。
図3(a)及び(b)は中継多孔体30と、支持部材35と、筆記部となる多孔体45と、インク誘導部50を有する保持体55とをセットした状態を示す正面図、縦断面図であり、(c)及び(d)は保持体55の平面図、斜視図であり、
図4(a)は、筆記部となる多孔体45と、インク誘導部50を有する保持体55とをセットした状態の平面図、(b)はその側面図、(c)及び(d)は多孔体45と保持体55の境界面の保持体樹脂層46を示す正面図、側面図である。
【0027】
この実施形態では、筆記部となる多孔体45と、インク誘導部50を有する保持体55とを強固に固定せしめる点から、
図3(d)に示すように、保持体55の上部にリブ体56が、筆記部多孔体45の側面の2つ以上に設けられるものであり、本実施形態では2つ設けられている。
また、上記筆記部となる多孔体45と、インク誘導部50を有する保持体55との接着面は、
図3(d)に示すように、リブ体56の側面内側の二面とインク誘導部50の開口部を除く底面部が接着面となるものであり、平坦面となっており、更に、筆記部多孔体45と接触する保持体55の接触部分の局部山頂の表面はシボ加工等により梨地状態となっている。
この実施形態では、二色成形などにより、多孔体45と保持体55とを固定することができる。
【0028】
このように構成される本実施形態において、上記筆記部となる多孔体45と、インク誘導部50を有する保持体55との接着を、多孔体45と保持体55が接触している部分の多孔体45の細孔の凹凸に、保持体55から保持体を形成する樹脂が入り込み、底面部に保持体樹脂層46を形成することなどにより、筆記部となる多孔体45とインク誘導部50を有する保持体55との固定が確実にでき、十分な筆記流量を終筆まで確保できる耐久性に優れた筆記具が得られるものとなる。
【0029】
また、本発明において、中継多孔体30と保持体55との接着を、上述の実施形態と同様に、保持体樹脂層を形成することなどにより接着することができる。
具体的には、
図5(a)に示すように、中継多孔体30側接着面を、平面、曲面、屈曲部の何れかに形成し、インク誘導部50の中継多孔体30側端面には、保持体55とこの保持体55の支持部材35に挿入された中継多孔体30の境界面に保持体樹脂層(以下、「中継多孔体側接着面」と表記)を中継多孔体30全周に渡り厚み0.5mm以上形成し、中継多孔体30側接着面上の周状の保持体樹脂層31が、多孔体内部に向かって1〜1000μm、並びに、中継多孔体30と接触する保持体55の接触部分の局部山頂の表面はシボ加工等により梨地状態とする。
【0030】
このように構成される本実施形態において、中継多孔体30と、インク誘導部50を有する保持体55との接着を、中継多孔体30と保持体55が接触している部分の中継多孔体30の細孔の凹凸に、保持体55から保持体を形成する樹脂が入り込み、保持体樹脂層31を形成することなどにより、中継多孔体30とインク誘導部50を有する保持体55との固定が確実にでき、十分な筆記流量をインク誘導部50に供給でき、耐久性に優れたものとなる。また、
図5(b)に示すように、保持体樹脂層31は、中継多孔体30が圧入されていて、支持部材35と中継多孔体30の接触している部分全体に形成しても良い。
【0031】
本発明の筆記具では、ペン先40は、上述の如く、筆記部となる多孔体45と、該多孔体45を保持し、筆記部にインクを供給するためのインク誘導部50を少なくとも1つ有する保持体55を備えたものであり、筆記具本体10に含まれるインクを、保持体55に設けたインク誘導部50に供給するための中継多孔体30を有すると共に、上記保持体55が、視認性を有する材料で構成されているので、当該保持体55においてインク誘導部50以外の全面(全体)が筆記方向を視認できる視認部となるものであり、この構造とすることにより、初めて、視認部の面積比率を、筆記具本体10先端部より突出したペン先の40%以上とすることができ、好ましくは、ペン先の保持体55側面の視認部も、40%以上とし、更に、インク誘導部50を保持体55の長手方向中央部に形成し、インク誘導部50の幅方向の長さ、直径、断面積等を上述の好ましい範囲に好適に設定することにより、更に、視認部の面積比率を、50%以上にすることができ、従来よりも筆記方向に書いてある文字を確実に読むことができる十分な視認性が付与することができると共に、終筆まで使用可能な筆記具が提供される。特に、インク誘導部50を保持体55の長手方向中央部に形成することにより、筆記部となる多孔体45に、かたよりなく効率的にインクを供給できるので、更に、終筆まで使用可能な筆記具が提供されるものとなる。
また、インク誘導部50を保持体55の長手方向中央部に形成することにより、筆記方向を定め易く、非常に筆記しやすい形状となるものである。
更に、保持体55の上部にリブ体56を設けることにより、定規で筆記した際に、定規を汚さずに真直ぐな線などを引くこともできる。
更にまた、インク誘導部50には、直接液体が供給される機構とすることにより、インクを効率的に筆記部となる多孔体45に供給することができるものとなる。なお、インク誘導部50として多孔体を用いた場合には、好適なインク流量が得られないことがある。
【0032】
本発明の筆記具は、上記実施形態などに限定されることなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々変更することができる。
例えば、上記実施形態では、インク誘導部50の形状を長軸方向に対して直線状に形成したものを詳述したが、ペン先40のインク誘導部50の形状を、
図6(a)〜(d)及び
図7(a)、(b)に示す各形状にして視認しやすい形状にすることもできる。なお、
図6及び
図7中において、上記実施形態と同様の構成は、同じ図示符号を付してその説明を省略する。
図6(a)は、インク誘導部50の形状をV字形状とするものであり、
図6(b)は、X字形状、
図6(c)はY字形状、
図6(d)は螺旋形状、
図7(a)は逆V字形状、
図7(b)は、逆X字形状とするものである。
また、上記実施形態では、リブ体56を2つ設けたが、3つ設けても良いものである。また、多孔体全周(4方向)に設けることもできる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
〔試験例1:実施例1〜4及び比較例1〜6〕
下記構成となるペン先を備えた筆記具、インクを使用した。各ペン先を構成する筆記部となる多孔体、保持体、インク誘導部の寸法等は下記表1、
図8に示す各大きさのものを使用した。ペン先以外の筆記具部材、インクは共通のものを使用した。
【0034】
(ペン先の構成)
筆記部多孔体:PE製焼結芯、気孔率60%
保持体 :アクリル製、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC−5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。以下同じ。〕
各ペン先の視認部面積(面積比率)の算出は、成形品の実寸法を測定することにより行った。各ペン先の視認部面積(面積比率)は下記表1に示す。
インク誘導部:円筒形状、下記表1に記載の各直径、インクが入った状態の可視光線透過率27%(共通)
(ペン先以外の筆記具部材の構成)
中継多孔体 :PET繊維束、気孔率65%、φ4×25mm
インク吸蔵体:PET繊維束、気孔率85%、φ14×55mm
筆記具本体、尾栓、キャップ:ポリプロピレン(PP)製
中継多孔体、筆記部多孔体、保持体の接着は下記により行った。
中継多孔体、筆記部多孔体は、保持体に各多孔体を仮挿しした状態で、有機溶剤(酢酸エチル)をしみ込ませ、乾燥させることで接着した。
【0035】
比較例3のインク誘導部の多孔体は、PET繊維束、気孔率65%、φ1.5×8mmのものを使用した。
比較例5は従来技術である特許文献6(特開2007−69426号公報)の
図1(本願
図12)に準拠するものであり、比較例6は従来技術である特許文献7(特開2007−69427号公報)の
図1(本願
図13)に準拠するものであり、それぞれ各特許文献の各実施例1に記載材料、大きさのペン先を用いた。
【0036】
(インク組成、共通)
インクとして、下記組成の蛍光桃インクを使用した。
色材 :VCトナー桃(御国色素社製) 30質量部
湿潤剤:グリセリン 25質量部
防腐剤:バイオエース(ケイアイ化成社製) 0.7質量部
イオン交換水 44.3質量部
【0037】
上記構成となる各ペン先を用いて、下記評価方法により、視認性とインク流量の評価を行った。
これらの評価結果を下記表1に示す。
【0038】
(視認性の評価方法)
文字の上に筆記し、筆記時に視認部を介して向こう側の見え方を目視にて確認し、下記評価基準で視認性の評価を行った。
視認性の評価基準:
○:視認性十分。非常に見やすく、筆記方向に書いてある文字を読みながら筆記する事が出来る。
△:視認性不十分。ある程度の視認性があるが、筆記方向に書いてある文字を読み取るには注意深く視認する必要がある。
×:視認性不十分。部分的には見えるが、通常使用時には視認出来ていない。
【0039】
(インク流量の評価方法)
自動筆記装置にペン体をセットして、JIS S6037に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記力1N、速度7cm/s、距離20mで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認し、下記評価基準によりインク流量の評価を行った。
インク流量の評価基準:
○:筆記性良好。描線かすれなし。
△:筆記性不十分。描線かすれあり。
×:筆記性不十分。著しい描線かすれあり。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜4は、本発明の範囲外となる比較例1〜6に較べて、従来よりも筆記方向に書いてある文字を確実に読むことができる十分な視認性が付与することができると共に、終筆まで使用可能な筆記具となることが判明した。
比較例5及び6(特開2007−69426号公報、本願
図12、特開2007−69427号公報、本願
図13)は、直液部分を介して筆記方向を視認することができるが、筆記中等の通常使用時には視認し難く、十分な視認性を付与出来ているとは言えないものであった。
【0042】
〔試験例2:実施例5〜7及び比較例7〜8〕
試験例2は、筆記部多孔体、保持体との接着については、接着面形状、接着面寸法、接着面最短長さを変えて接着強度、シール性能を下記評価方法により評価した。これらの結果を下記表2に示す。
上記実施例1のペン先を備え、以下の方法で作製した筆記具を使用した。
筆記部多孔体、保持体との接着は、下記方法により行った。
中継多孔体、筆記部多孔体は、保持体に各多孔体を仮挿しした状態で、有機溶剤をしみ込ませ、乾燥させることで接着した。
【0043】
(接着強度の評価方法)
接着された筆記部多孔体を、ゴム手袋をした手で剥がし、下記評価基準で評価した。
接着強度の評価基準:
○:接着強度十分。筆記部多孔体を剥がそうとすると、接着部が剥がれる前に、筆記部多孔体が壊れる。
△:通常使用に耐えるレベルの接着強度。接着強度不足。筆記部多孔体をはがそうとすると、筆記部多孔体が剥がれてしまう。筆記等では剥がれない。
×:接着強度不足。筆記等により筆記部多孔体が保持体から剥がれてしまう。
【0044】
(シール性能の評価方法)
シール性能は、筆記時にシール破壊があるかどうか、150cmからペン先を上方に向けてコンクリート上に自由落下させた場合にシール破壊があるかどうか、以下の評価基準に従い評価を行った。シール破壊が起こった場合、直液部分に空気(気泡)が入るため、目視で確認することができる。
シール性能の評価基準:
○:シール性能問題なし。
△:落下衝撃等により、シール破壊が起こりインク誘導部に微小な気泡が入る。
×:落下衝撃等により、シール破壊が起こりインク誘導部に大きな気泡が入る。
【0045】
【表2】
【0046】
上記表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例5〜7は、本発明の範囲外となる比較例7〜8に較べて、接着強度、シール性能に優れていることが判明した。
【0047】
〔試験例3:実施例8〜10及び比較例9〜10〕
試験例3は、保持体樹脂層厚さによる接着強度、シール性能を上記評価方法により評価した。これらの結果を下記表3に示す。
上記実施例1のペン先を備え、上記試験例2と同様、ただし、保持体樹脂層の厚みだけを変えて作製した筆記具を使用した。
【0048】
【表3】
【0049】
上記表3の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例8〜10は、本発明の範囲外となる比較例9〜10に較べて、接着強度、シール性能に優れていることが判明した。保持体樹脂層厚みが1μm未満の場合、保持体樹脂層を確認出来ず、接着も出来ていない状態だった。比較例9の保持体樹脂層厚みが1500μmのものは、インク誘導部を閉塞してしまい、インク流量が非常に低くなった。