(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に虹彩認識は、生体認識の一方法であり、最も多用されている生体特徴である指紋の識別特徴が40個程度であるのに比べて、虹彩の識別特徴は266個であり、他の生体認識方法に比べて認識率が格段に高いという長所を有するものとして知られている。
【0003】
このような虹彩認識は、被撮影者の虹彩を抽出してそれを他の映像から抽出された虹彩と比較することによって認証又は身元確認を行うが、この過程において最も重要なのは、被撮影者の虹彩から虹彩認識が可能な虹彩イメージを撮影して取得することである。
【0004】
そのために、虹彩認識では、一般に他の写真やイメージ撮影で主に使用する可視光線照明を用いず、赤外線照明を用いて虹彩を撮影する。
【0005】
虹彩を撮影するために赤外線照明を使用する目的は様々であるが、最も重要な目的は、可視光線領域で発生する光の反射によるノイズによって、カメラで撮影した虹彩イメージの認識率が低下することを防止することである。
【0006】
実際にほとんどの虹彩認識関連会社及び機関が遵守している虹彩認識関連技術の国際標準であるISO/IEC19794−6の2011年バージョン(本発明の出願当時のバージョン)によれば、虹彩撮影時に700nm〜900nmの近赤外線領域の照明を使用するように推奨されている。
【0007】
しかしながら、虹彩認識関連会社及び機関が遵守している(ISO/IEC19794−6の2011年バージョンで推奨する)700nm〜900nmに該当する波長帯域の照明は、主に、大きくとも数千ルクス(lux)の光の強度を有する室内環境では適用可能であるが、通常、数万ルクス〜13万ルクスに該当する直射光線のような光の強度が存在する室外環境では、上記の700nm〜900nmの近赤外線領域の照明でも反射によるノイズを減らすことができず、室外環境では虹彩認識がほとんど不可能なこととされてきた。
【0008】
実際に室外環境で虹彩認識をするために、全世界で初めて国家レベルで虹彩認識を適用して住民証発給事業を示範的に実施したインド(UIDAIプロジェクト(2010年))では、アイリテック(IriTech)社のモデル(IriMagic 1000BK)のように、ゴーグルのような付加装置を虹彩認識カメラに付着して上記室外環境を室内環境と類似にした後、虹彩イメージを取得したこともある。
【0009】
例外的に、大韓民国公開特許公報第10−2013−0123859号では、虹彩イメージを取得するために全世界的に推奨している赤外線照明を使用せず、一般デジタル(カラー)カメラで虹彩イメージを撮影する技術が掲載されているが、周辺の事物(被写体)から反射される反射光が虹彩領域に結んで虹彩イメージを遮り、虹彩認識の正確度を低下させる問題点を解決する内容は掲載されていなく、また、可視光線照明を使用して鮮明な虹彩イメージを得るためには非常に強い可視光線照明を使用せざるをえず、被撮影者にとって非常に眩しくなり、不快感を感じるという不具合も生じ得る。
【0010】
その上、最近に室外環境で広く使われているスマートフォン、タブレット、PDA、PC、ノートパソコンのような様々なモバイルデバイスに、虹彩イメージを撮影するためにゴーグルのような付加装置を追加することはほとんど不可能なのが現実である。
【0011】
したがって、スマートフォン、タブレット、PDA、PC、ノートパソコンのような様々なモバイルデバイスだけでなく、既存のCCTVのような保安機器、ドアロックのような出入関連機器、カメラ、ビデオ、カムコーダのような映像機器にも、前述した既存の室外環境における虹彩イメージ取得の限界を克服し、物理的空間及び経済的費用の問題を十分に考慮すると共にユーザの便宜性を増大させた虹彩イメージ撮影装置及び方法に関する要求が増加している実情である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施のための具体的な内容について説明する。
【0025】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例の構成及び作用を説明する。ただし、図面に図示されて説明される本発明の構成及び作用は少なくとも一つの実施例として説明されるものであり、これによって本発明の技術的思想とその核心的構成及び作用が制限されるわけではない。
【0026】
したがって、本発明の一実施例の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の一実施例の本質的な特性から逸脱しない範囲内で、室外での虹彩認識用イメージ取得装置及び方法の核心構成要素に対して様々な修正及び変形を適用することが可能であろう。
【0027】
また、本発明の構成要素を説明するとき、A、B、(a)、(b)などの用語を使うことができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって当該構成要素の本質、順番又は順序などが限定されるわけではない。ある構成要素が他の構成要素に“連結される”、“含まれる”又は“構成される”と記載された場合、ある構成要素が他の構成要素に直接“連結される”、“含まれる”又は“構成される”場合も含み、両構成要素の間に更に他の構成要素が“連結される”、“含まれる”又は“構成される”場合も含み得ると理解すべきである。
【0028】
また、本発明では、容易な理解のために、別個の図面では同一の構成要素に対しても異なる図面符号を付する。
【0029】
[実施例]
本発明の実施のための具体的な内容について説明する。
【0030】
一般に虹彩認識方法は、カメラから虹彩が含まれた目の映像を取得し、上記目の映像から虹彩の領域を抽出し、抽出された虹彩領域から個人の固有な特徴を探した後、最後に、比較される2つの虹彩特徴間の類似度(similarity)を判断する段階を含む。このため、カメラから取得した虹彩イメージが歪んでいると、虹彩認識を正確に行うことができない。
【0031】
このような歪んでいる虹彩イメージを取得する現象のうち、最も頻繁に発生する現象の代表は、可視光線領域で生じる光の反射ノイズである。一般に、虹彩認識では、上述した可視光線領域の光反射ノイズによって虹彩イメージの認識率が低下することを防止するために可視光線照明を利用せず、赤外線照明を用いて虹彩を撮影する。実際にほとんどの虹彩認識関連会社及び機関は、ISO/IEC19794−6(2011年)で勧告している700nm〜900nmの近赤外線領域の照明を用いている。
【0032】
しかしなから、大きくとも数千ルクスの光の強度しか存在しない室内環境とは違い、普通、数万ルクス〜13万ルクスに該当する直射光線のような光の強度が存在する室外環境では、上記の700nm〜900nmの近赤外線領域の照明でも反射によるノイズを減らすことができず、室外環境では虹彩認識が不可能なものとされてきた。
【0033】
図1は、本発明の一実施例に係る、同一人物の虹彩を既存の700nm〜900nmの近赤外線領域の照明で、室内環境と室外環境とを区別してそれぞれ取得した虹彩イメージである。
【0034】
図1は、同一の虹彩撮影カメラで撮影取得した同一人物の左目の虹彩イメージを示しており、室外環境では室内環境と違い、既存の700nm〜900nmの近赤外線領域の照明でも、既存の強い光の強度を有する太陽光線(sunlight)によって周辺環境が反射されて目に写ったことが分かる。実際に、
図1に示すように、室内で撮影した虹彩イメージとは違い、室外で反射された虹彩イメージが撮影された場合には、虹彩認識率が著しく低下し、虹彩認識はほぼ不可能である。
【0035】
図2は、本発明の一実施例に係る、既存の700nm〜900nmの近赤外線領域の照明で室外環境で取得した、それぞれ異なる4人の虹彩イメージである。
【0036】
図2は、同一の虹彩撮影カメラで同一の室外環境で様々な人物の左目を撮影した資料の中からそれぞれ異なる4名の虹彩イメージを選択して示したものであり、周辺環境が反射されて目に写ったことが分かる。
【0037】
したがって、
図1及び
図2に示すように、室外環境では、既存の虹彩認識関連会社及び機関が遵守している(ISO/IEC19794−6の2011年バージョンで推奨する)700nm〜900nmの近赤外線領域の照明では、虹彩認識が可能な鮮明な虹彩イメージを取得することがほぼ不可能であることが分かる。
【0038】
そこで、本発明では、既存の700nm〜900nmの近赤外線照明を用いる方法の室外環境における限界を克服するために、新しい波長帯で虹彩イメージを取得する原理を説明し、また、説明の便宜のために、既存の700nm〜900nmの近赤外線領域波長帯をISO推奨波長帯と定義し、室外でも虹彩認識が可能な新しい波長帯を室外虹彩認識波長帯と定義するものとする。
【0039】
まず、上記のISO推奨波長帯及び室外虹彩認識波長帯を具体的に定義する前に、波長の範囲の意味で使われている波長帯及び波長帯域の用語を具体的に定義する。
【0040】
一般に、波長帯(wavelength range)と波長帯域(wavelength band)は同じ意味で使われているが、本発明では意味の混とんを防止するために、波長帯は、任意に指定した波長範囲を総称するものと定義し、波長帯域は、任意に指定した範囲に属する一部の波長範囲を表すものと定義する。例えば、700nm〜900nmに該当する波長範囲全体を任意にISO推奨波長帯と定義すれば、700nm〜800nmなどのような波長範囲は、700nm〜900nmに該当する波長範囲に属する一部の波長範囲を表すことから、波長帯域に該当する(数学的な表現によれば、波長帯は全体集合であり、波長帯域は全体集合の部分集合に該当すると見なすことができる。)。
【0041】
一般に、室外環境では、短いガンマ線から長波であるラジオ波に至るまで様々な波長の光が存在するが、その大部分は紫外線、可視光線、赤外線であると知られている。このような様々な波長のうち、赤外線波長の範囲は一般に700nm〜1,000nmに該当すると知られているが、実際に使用される赤外線の波長範囲は、国際的に定義した機関別に異なる。本発明では、国際照明委員会(International Commission on Illumination)の近赤外線(700nm〜1,400nm)、中赤外線(1,400nm〜3,000nm)、遠赤外線(3,000nm〜1mm)に区別した規定に基づいて説明するが、本発明の目的及び趣旨に符合するいかなる機関の定義を使用しても構わない。
【0042】
まず、虹彩イメージ撮影時に反射ノイズを起こす主な原因である赤外線及び可視光線の室外環境における光の強度が特定値以下に落ち、室外でも虹彩イメージを撮影できる区間を具体的に探すために、地球大気環境における太陽放射照度(irradiance)の波長別分布(世界気象機関(WMO)参照)を利用した。
【0043】
図3には、本発明の一実施例に係る太陽放射スペクトル(solar radiation spectrum)を示す。
【0044】
図3は、地球大気環境における太陽放射照度(irradiance)の波長別分布を示す図であり、既に全世界に広く知られている。これは、国際的に測定した機関別にやや異なるものもあるが、本発明の目的及び趣旨に符合するいかなるものを使用しても構わない。
【0045】
図3に示すように、太陽放射照度の波長別分布を見ると、特定の赤外線波長帯領域で放射照度値が急に低下する波長帯域(赤色四角形で表示された領域)が存在することが分かる。この波長帯域では室外環境における太陽光の強度が減るため、虹彩イメージの反射ノイズを減らし得る環境を提供することができる。
【0046】
このような事実に着目し、室外環境でも放射照度の強度が特定の値以下に落ちると反射ノイズを減らし得る環境が提供される波長帯域が存在し、このような波長帯域では室外においても虹彩認識が可能な程度に反射ノイズが減少した虹彩イメージを取得できることを、様々な実験の反復検証から見出した。具体的に、室外でも虹彩認識が可能な程度に反射ノイズが減少した虹彩イメージを取得できる波長帯域は920nm〜1,500nmであり、特に、920nm〜960nm波長帯域、1,110nm〜1,160nm波長帯域、及び1,300nm〜1,500nm波長帯域では非常に効果的であることが分かった。
【0047】
しかし、赤外線照明の明るさを示す照度と放射照度が単純に比例せず、また、IR帯域フィルターの受容波長バンド領域範囲(例えば、10nm、25nm、50nmなど)及びIR LEDパワーなどによって室外虹彩認識波長帯の境界値に誤差があるため、単純に
図3の地球大気環境における太陽放射照度(irradiance)の波長別分布だけでは室外環境において反射ノイズを減らし得る正確な波長帯範囲を見出すことができず、様々な実験を通じた検証が必要だった。
【0048】
理論的には、
図3の地球大気環境における太陽放射照度の波長別分布から、920nm以上の赤外線波長帯では室外で虹彩イメージ取得がすべて可能であると推定できるが、実際には、中赤外線及び遠赤外線照明の被撮影者の目に対する安定性(safety)などに関する研究資料がほとんどないため、既存の虹彩認識で使用する照明の範囲である近赤外線領域の範囲(700nm〜1,400nm)を基準にIR帯域フィルターの受容波長バンド領域範囲を考慮して実験を行った。
【0049】
したがって、本発明では、実際に技術的に検証が可能であり且つ有効な近赤外線(700nm〜1,400nm)の一部の波長帯域(920nm〜1,400nm)及び中赤外線(1,400nm〜3,000nm)の一部の波長帯域(1,400nm〜1,500nm)を含む波長帯域(920nm〜1,500nm)を室外虹彩認識波長帯と定義する。
【0050】
実際には、上述したように、波長の境界値に対しては帯域フィルターのような機器や照明などの測定誤差範囲やパワーなどによって、やや差異がありうる。
【0051】
次に、上述した室外虹彩認識波長帯のみを使用する帯域フィルターについて説明する。
【0052】
図4に、本発明の一実施例に係る帯域フィルターの原理を例示する。
【0053】
図4に示すように、一般に、帯域フィルターは低域フィルターと高域フィルターを組合させたフィルターであり、FminとFmax間の範囲内にある(Fmin<F<Fmax)周波数のみを通過させる。したがって、周波数と波長は逆数関係であるため、帯域フィルターが通過させる波長の境界値を計算することができる。帯域フィルターに関する従来技術は既に公知の技術であり、より詳細な説明は省略する。本発明の目的及び趣旨に符合するいかなる帯域フィルターを使用しても構わない。
【0054】
図5は、本発明の一実施例に係る、帯域フィルターを用いて室外虹彩認識波長帯を様々に選択する原理を示す図である。
【0055】
図5に示すように、Aの場合は、室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)においてc1とc2の範囲に属する波長帯域を含む任意の大きさの波長帯域を使用することを意味する。例えば、c1の値が1,000nm、c2の値が1,300nmだとすれば、実際に帯域フィルターでは1,000nm〜1,300nmの波長帯域を使用してもよいが、全体波長帯域である920nm〜1,500nmを超えない範囲で、任意に±10nm、±25nm,±50nmなどのように波長帯域を広げると、990nm〜1,310nm、975nm〜1,325nm及び950nm〜1,350nmの波長帯域(赤色で表示された部分)の一つを選択して使用することもできる。
【0056】
このとき、帯域フィルターは、1,000nm〜1,300nmで追加された任意の大きさの波長帯域範囲に属する波長だけを通過させ、他の波長は相殺させる。
【0057】
Bの場合は、室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)において任意の波長値であるc1とc2を基準に任意の大きさの波長帯域を使用して生成される複数の波長帯域の中から一つ以上を選択して使用することを意味する。例えば、c1の値が1,000nm、c2の値が1,300nm、任意の大きさが±100nmだとすれば、一つの帯域フィルターは、950nm〜1,050nm、1,050nm〜1,150nm、1,150nm〜1,250nm、1,250nm〜1,350nmの波長帯域(赤色で表示された部分)を使用することもできる。このとき、選択可能な複数の波長帯域のいずれか一つ以上を使用すればいい。
【0058】
最後に、Cの場合は、室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)において任意の波長値であるc1とc2の範囲に属する波長の中から特定波長だけを選択して使用することを意味する。例えば、上記Bで950nm〜1,050nmの範囲に属する波長の中から1,000nm(d1)を、1,250nm〜1,350nmの範囲に属する波長の中から1,260nm(d2)、1,300nm(d3)の波長を選択して使用すればいい。
【0059】
実際に室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)の帯域フィルターは、920nm〜1,500nmの全波長帯域を使用してもよいが、経済的又は技術的な側面を考慮して、室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)に属する任意の大きさの波長帯域又は任意の波長を選択して使用し、このような任意の大きさの波長帯域及び任意の波長は、主に、放射照度の強度が所定の基準値以上だけ落ちる波長帯域の範囲及び帯域フィルターの受容波長範囲によって決定する。
【0060】
次に、室外においてISO推奨波長帯(700nm〜900nm)と室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)で取得した虹彩イメージを比較する。
【0061】
図6は、本発明の一実施例に係る、別々の人物の左目の虹彩を、ISO推奨波長帯(700nm〜900nm)と室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)でそれぞれ撮影した虹彩イメージである。
【0062】
図6に示すように、2人の個人(Human E、Human F)の左虹彩を室外で推奨波長帯で撮影した写真を見ると、目周囲に周辺環境が反射されて現れていることが分かる。これに対し、室外で室外虹彩認識波長帯で撮影した写真を見ると、目周囲に反射イメージが完全に除去されていることが分かる。したがって、室外虹彩認識波長帯で撮影した虹彩イメージで実際に虹彩認識が可能であることが分かる。
【0063】
実際に虹彩認識が可能か否かを評価する代表の指標として、虹彩認識方法では非類似度測定又は認識率を利用する。まず、認識率について説明すると、虹彩認識においてエラーは、登録されたユーザの虹彩とは異なる人の虹彩が入力されたにもかかわらず、同一ユーザの虹彩と誤判定する時(他人受入率(false acceptance rate:FAR);以下、“FAR”という。)、及び登録されたユーザの虹彩と同じユーザの虹彩が入力されたにもかかわらず、他人のものと誤判定する時(本人拒否率(false rejection rate:FRR);以下、“FRR”という。)に発生する。虹彩認識では、FARとFRRの両指標値が低いほど認識率が高いと判断する。
【0064】
他の指標の一つである非類似度の測定は、同一人物の2つの虹彩データの類似度を比較した場合の分布と、登録された人と他人の虹彩データを比較した場合の分布とを比較して、両分布が分離される程度を測定することであり、よく分離されるほど虹彩認識が可能であると判断する。
【0065】
図7は、本発明の一実施例に係る非類似度を説明するためのグラフである。
【0066】
図7の図表を説明すると、右側の分布は、登録された同一人物の2つの虹彩データの類似度を比較した場合の分布(Genuine分布)(以下、この分布を表す関数をF(x)という。)であり、右側の分布は、登録された人と他人の虹彩データとを比較した場合の分布(Imposter分布)(以下、この分布を表す関数をG(x)という。)であり、x軸に任意の値を決めてこれを閾値とする(閾値は任意に定義できる。)。また、非類似度(x軸値)が減少すると(原点に近づくほど)同一人物であることを意味し、逆に、増加すると(原点から遠ざかるほど)他人であることを意味する。
【0067】
図7で、非類似度を測定した左図の分布を見ると、F(x)とG(x)とが重なって完全に分離されないが、右図の分布を見ると、G(x)がx軸増加方向(原点から遠ざかる方向)へ移動してF(x)とG(x)とが重ならない。したがって、右図の分布がより高い虹彩認識率を有することを意味する。
【0068】
図8は、本発明の一実施例に係る、室外でISO推奨波長帯(700nm〜900nm)と室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)で虹彩イメージを撮影して取得した分布を示すグラフである。
【0069】
図7で上述したように、
図8の結果について説明すると、同じ室外環境で虹彩イメージを撮影したが、ISO推奨波長帯(700nm〜900nm)における分布に比べて、室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)における分布がより虹彩認識率が高いことが分かる。
【0070】
したがって、既存に室外での虹彩認識をほとんど不可能にした反射ノイズの問題が自然に解決されたことが分かる。
【0071】
次に、室外で虹彩認識用イメージを撮影するカメラについて詳しく説明する。
【0072】
本発明に係るカメラは、単純にカメラ完成品に限定されず、近年、虹彩認識を導入したり導入のための研究が活発に行われているスマートフォン、タブレット、PDA、PC、ノートパソコンのようなスマートデバイスなどのカメラレンズやカメラモジュールも含む。
【0073】
一般に、虹彩認識に必要なイメージの解像度はISOの規定を参考し、ISO規定は、VGA解像度イメージ(VGA resolution image)を基準に虹彩径のピクセル(pixel)数で規定している。
【0074】
ISO規格によれば、通常、200ピクセル(pixel)以上の場合に高画質と分類され、170ピクセル(pixel)の場合に普通、そして120ピクセル(pixel)の場合を低画質と規定している。
【0075】
したがって、本発明では、左目と右目の虹彩イメージを取得しながら被撮影者の便宜を図り得る、高画質の画素を有するカメラを可能な場合に使用するはずであるが、これもまた、虹彩の画質や他の付加装置の特性によって様々な画素数を適用する可能性が高いため、必ずしも高画質の画素に制限する必要はない。
【0076】
特に、最近では12M又は16Mピクセルの解像度と秒当たり30フレーム以上の伝送速度を有する高画質のカメラモジュールがデジタル映像機器及びスマート機器などで用いられているため、虹彩認識用イメージを取得するには十分である。
【0077】
本発明によって室外で鮮明な虹彩イメージを取得するために、上述した室外虹彩認識波長帯、特に、920nm〜960nm波長帯域、1,110nm〜1,160nm波長帯域、及び1,300nm〜1,500nm波長帯域だけを通過させる帯域フィルターを設置する。
【0078】
上記帯域フィルターは、該当の波長で5nm、10nm、20nm又はそれ以上の波長帯域を設定して通過させるように製作し、該当の波長帯域だけを通過させて虹彩イメージを撮影取得する。
【0079】
より具体的な一実施例として、放射照度の強度が大幅に落ちる940nm〜950nm波長だけを通過させる帯域フィルターを、カメラのイメージセンサーの前段に設置したり、又は虹彩撮影時にのみ位置するように設計製作することができる。
【0080】
帯域フィルターの通過帯域幅は、前述したように様々な通過波長帯域として設計製作することができる。
【0081】
帯域フィルターは、虹彩イメージが通過する通路の一側、カメラレンズの前段、又はレンズの間に設置されて、虹彩イメージ撮影時に帯域フィルターを通過するように構成すればよい。
【0082】
より具体的に、帯域フィルターは、一般に使用するカメラのシャッターのように虹彩イメージ撮影時にのみ動作するように構成したり固定設置することができる。
【0083】
すなわち、鮮明な虹彩イメージを得るために虹彩イメージ撮影時に帯域フィルターを通過する技術的構成であればいい。
【0084】
また、上記カメラは一般に、1個又は2個以上の複数のカメラで構成することができる。
【0085】
次に、室外で虹彩認識用イメージを撮影する時に必要な照明について具体的に説明する。
【0086】
基本的に赤外線照明を使用するが、赤外線ではなく可視光線を使用するデバイスの場合には、赤外線照明をつける照明部をさらに構成することが好ましい。
【0087】
上記光源を調節する方法には、第一に、可視光線照明を使用するが、虹彩イメージを撮影する時には可視光線照明を消して赤外線照明をつける方式を用いたり、第二に、可視光線照明を使用し、虹彩イメージを撮影する時には、可視光線照明に赤外線フィルターが付着されていて、赤外線だけを光源として使用する方式がある。
【0088】
また、赤外線照明としては、上述した帯域フィルターの波長帯域を通過する一つ以上の波長を有する赤外線照明の光源を設置する。
【0089】
次に、室外虹彩認識波長帯を用いて室外でも室内でも虹彩イメージをカメラで撮影取得する装置について説明する。
【0090】
室外虹彩認識波長帯を用いて室外でも室内でも虹彩イメージをカメラで撮影する原理について具体的に説明する。第一には、室外だけでなく室内でも既存のISO推奨波長帯(700nm〜900nm)を使用せず、室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)を使用し、第二には、室内と室外を区別して、例えば、室内で撮影する時には既存のISO推奨波長帯(700nm〜900nm)を使用し、室外では室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)を使用する。
【0091】
(T1)室外及び室内で室外虹彩認識波長帯を使用する場合
一般に、室内で使用する既存のISO推奨波長帯(700nm〜900nm)を使用せず、本発明で使用する室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)で虹彩イメージをカメラで撮影取得する。
【0092】
図9は、本発明の一実施例に係る室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)で別々の人物に対して室外及び室内で取得した虹彩イメージである。
【0093】
図9に示すように、上述した室外で虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)で撮影した虹彩イメージと比較して、室内で虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)で撮影した虹彩イメージも反射イメージがなく、虹彩認識が可能な虹彩イメージであることが分かる。より具体的に、本発明によって室外撮影のために、920nm〜960nm、1,110nm〜1,160nm、及び1,300nm〜1,500nm波長帯域のいずれか一つ以上の帯域フィルターを設計製作して使用することができる。
【0094】
(T2)室外では室外虹彩認識波長帯を、室内ではISO推奨波長帯を使用する場合
例えば、室内で撮影する時には既存のISO推奨波長帯(700nm〜900nm)を使用し、室外では室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)を使用する場合には、室内及び室外を区別して選択できる選択モードが具備される。選択モードは、撮影者の判断によって手動で切り替えてもよく、光の強度を測定する光センサー又は放射照度測定装備を構成して自動で切り替わるようにしてもよい。このような選択モードの構成は従来公知のものが多く、本発明の目的及び趣旨に符合するいかなる技術を利用しても構わない。
【0095】
室外撮影モードでは、室外虹彩認識波長帯(920nm〜1,500nm)だけを通過させる帯域フィルターが虹彩イメージセンサーの前段に設置され、室内撮影モードでは、既存のISO推奨波長帯(700nm〜900nm)範囲の波長帯域を通過させる帯域フィルターが虹彩イメージセンサーの前段に設置されるように構成する。
【0096】
本発明は、室内及び室外の両方で撮影するように帯域フィルターを構成したり、室内と室外のための個別の帯域フィルターを設計製作して使用したり、又はカメラレンズの前面又はカメライメージセンサーの前段に帯域フィルターを設置して虹彩イメージを取得するように構成する。
【0097】
本発明の核心の一つは、虹彩イメージ取得時に、カメラレンズの前面又はカメライメージセンサーの前段に帯域フィルターを配置し、室内、室外又は放射照度の強度にかかわらずに鮮明な虹彩イメージを得ることである。
【0098】
本発明に係る虹彩イメージ品質を測定する技術的構成については、本発明の出願人が特許出願して登録された登録特許公報第10−1030652号に具体的に開示されており、本明細書ではその具体的な記載を省略する。
【0099】
本発明の更に他の実施例として、室外及び室内で虹彩イメージを取得する方法について説明する。
【0100】
室外及び室内で虹彩イメージを取得する方法は、虹彩イメージを受け取るためのレンズ、レンズを通して入力される虹彩イメージを感知するためのイメージセンサー、及び感知された虹彩イメージを保存するためのメモリを具備して虹彩イメージを撮影取得する方法であって、室外虹彩認識波長帯域(920nm〜1,500nm)の全部又は一部を選択する段階と、選択された室外虹彩認識波長帯域(920nm〜1,500nm)の全部又は一部を使用する帯域フィルターをイメージセンサーの前段に設置して、撮影時に発生する反射イメージが防止されたり反射ノイズが減少した虹彩イメージを取得する段階とを含む。
【0101】
室外及び室内で虹彩イメージを取得する他の方法は、虹彩イメージを受け取るためのレンズ、レンズを通して入力される虹彩イメージを感知するためのイメージセンサー、及び感知された虹彩イメージを保存するためのメモリを具備して虹彩イメージを撮影取得する方法であって、室外虹彩認識波長帯域(920nm〜1,500nm)の全部又は一部を選択する段階と、室内虹彩イメージ撮影時に700nm〜900nm波長帯域のフィルターを使用して虹彩イメージを取得する段階と、室外で虹彩イメージ撮影時に上記室外虹彩認識波長帯域(920nm〜1,500nm)の全部又は一部を使用する帯域フィルターをイメージセンサーの前段に設置して、撮影時に発生する反射イメージが防止されたり反射ノイズが減少した虹彩イメージを取得する段階とを含む。