特許第6321300号(P6321300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321300防水性かつイオン伝導性の柔軟膜を作製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321300
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】防水性かつイオン伝導性の柔軟膜を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20180423BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   H01M12/08 K
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-532873(P2017-532873)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公表番号】特表2018-504743(P2018-504743A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】FR2015053497
(87)【国際公開番号】WO2016097571
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年8月15日
(31)【優先権主張番号】1462667
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・スティーヴンス
(72)【発明者】
【氏名】グエナエル・トゥーサン
(72)【発明者】
【氏名】ジル・ランセル
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・ラベルティ−ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン・ブレジルー
(72)【発明者】
【氏名】クレマン・サンチェス
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0057386(US,A1)
【文献】 特開2016−039138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属電極(401)を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜(300)を作製するための方法であって、
− 電気的アシスト押し出し加工によって、少なくとも1つの第1の材料(20)を含むイオン伝導性ファイバのファイバアレイ(100)を形成するシーラントファイバ(10)を合成するステップであって、前記ファイバアレイは、第1の表面(310)および前記第1の表面の反対側の第2の表面(320)を規定する、ステップと、
− 金属電極保護膜(300)を形成するために、前記ファイバアレイに第2の材料(200)のポリマーを含浸させるステップであって、前記ファイバアレイは、前記第1の表面と前記第2の表面との間で前記第2の材料の前記ポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、前記第1の表面は、前記金属電極と接触することを目的とする、ステップとを含む方法。
【請求項2】
− 前記膜(300)を用いて、アルカリ金属に基づく金属空気型電気化学セルの電極(401)を水媒体から保護するステップであって、前記膜含浸ステップでの前記ポリマーは、防水性、防ガス性、かつ電気的絶縁性である、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ファイバアレイ含浸がさらに、
− 前記ファイバアレイの前記第1の表面(310)がポリマーを欠いているように、前記膜の表面上の前記ポリマーを除去するステップを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の材料(20)が、無機粒子の形で存在し、前記方法がさらに、
− 前記ファイバアレイ(100)内でのシーラントファイバ(10)の無機粒子の接続を確実にするために前記ファイバアレイに含浸させるより前に前記ファイバアレイ(100)の放電プラズマ焼結を行うステップを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
シーラントファイバの前記電気的アシスト押し出し加工の後、前記方法がさらに、
− 前記イオン伝導性ファイバアレイ上に、光活性化重合ポリマー、電気的活性化重合ポリマーで構成される群の中から選択される第3の材料(614)を堆積するステップを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
シーラントファイバの前記電気的アシスト押し出し加工がさらに、
− 選択された寸法を有するシーラントファイバを合成するためのいくつかの材料入口(511、512、513)を備える、選択された直径を有する少なくとも1つのノズル(40)を使用することによって前記シーラントファイバ(10)を押し出すステップと、
− 前記ノズルの様々な材料入口を使用することによって前記シーラントファイバを構成する材料の投与および配置を制御するステップとを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法がさらに、
− 金属空気電池の金属負電極(401)の表面上に電気的アシスト押し出し加工および含浸を行うステップを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜であって、
− 少なくとも1つの第1の材料(20)を含むシーラントかつイオン伝導性のファイバを含むファイバアレイ(100)であって、第1の表面(310)および前記第1の表面の反対側の第2の表面(320)を規定するファイバアレイと、
− 前記ファイバアレイに含浸し、それ故に金属電極(401)保護膜(300)を形成するポリマーを含む第2の材料(200)であって、前記ファイバアレイは、前記第1の表面と前記第2の表面との間で前記第2の材料の前記ポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、前記第1の表面は、前記金属電極と接触することを目的とする、第2の材料(200)とを含む、防水性かつイオン伝導性の柔軟膜。
【請求項9】
前記ファイバアレイが、
− 前記第1の材料のイオン伝導性粒子を含む中心部分(711)と、
− シーラントポリマーを含む、前記中心部分を取り囲む周辺部分(712)とを備えるシーラントファイバを含むことを特徴とする、請求項8に記載の膜。
【請求項10】
前記ファイバアレイが、
− ポリマーを含む、有機である第4の材料を含む中心部分(611)と、
− 前記第1の材料のイオン伝導性粒子を含む、前記中心部分を取り囲む中心エンベロープ(612)と、
− シーラントポリマーを含む、前記中心エンベロープを取り囲む周辺部分(613)とを備えるシーラントファイバを含むことを特徴とする、請求項8に記載の膜。
【請求項11】
前記ファイバアレイが、
− 前記第1の材料のイオン伝導性粒子を含む中心部分(611)と、
− ポリマーを含む、有機である第4の材料を含む、前記中心部分を取り囲む中心エンベロープ(612)と、
− シーラントポリマーを含む、前記中心エンベロープを取り囲む周辺部分(613)とを備えるシーラントファイバを含むことを特徴とする、請求項8に記載の膜。
【請求項12】
前記第1の表面が、前記金属電極(401)の外表面(400)との物理化学的親和性を有し、前記物理化学的親和性が、前記第1の表面(310)と前記金属電極(401)の前記外表面(400)との間の永久的接触を確実にすることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の膜。
【請求項13】
前記第1の材料(20)が、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO、Li1.2Al0.2Ti1.8(PO、LiTi(PO、リン酸リチウムチタン(LTP)、NSiZr1.880.12PO12、NaSiZrPO12またはβ−Alで構成される無機化合物の群の中から選択されてもよく、前記第2の材料(200)が、フッ素化ポリマーであってもよいことを特徴とする、請求項8から12のいずれか一項に記載の膜。
【請求項14】
前記膜が、1ミクロンから100ミクロンの間の厚さを有することを特徴とする、請求項8から13のいずれか一項に記載の膜。
【請求項15】
− 液体電解質溶液(403)内に浸された金属負電極(200)と、
− 金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜(300)と
を備える少なくとも1つの電気化学セルを備える電池であって、前記柔軟膜(300)は、
− 少なくとも1つの第1の材料(20)を含むシーラントかつイオン伝導性のファイバ(10)を含むファイバアレイ(100)であって、第1の表面(310)および前記第1の表面の反対側の第2の表面(320)を規定する前記ファイバアレイ(100)と、
− 前記ファイバアレイに含浸し、それ故に金属電極保護膜を形成するポリマーを含む第2の材料(200)であって、前記ファイバアレイは、前記第1の表面と前記第2の表面との間で前記第2の材料の前記ポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、前記第1の表面は、前記金属電極と接触することを目的とする、第2の材料(200)とを含み、
前記防水性かつイオン伝導性の柔軟膜は、前記電解質溶液内で前記負電極を取り囲む、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学システムのためのセパレータの分野に関する。より詳しくは、本発明は、金属電極を保護することを目的とする膜を作製するための方法、およびこの方法によって得られる膜に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気化学セルは、負電極、正電極および電荷担体が一方の電極から他方の電極に移動することを可能にする電解質から成る。
【0003】
金属空気型の電気化学セルは、一般に液体電解質から成る。下記の反応に従って、典型的には金属化合物Mから形成される負電極は、放電中にMn+イオンに分解し、一方空気は、空気電極と呼ばれる正電極において還元される。
負電極における放電:M→Mn++ne
正電極における放電:O+2HO+4e →4OH
【0004】
負電極のための活性材料として使用される周期表の1族からのアルカリ金属は、一般に水性電解質内で安定でなく、そのようなアルカリ性材料で作られた電極は、防水バリアによって保護されなければならない。
【0005】
そのような保護を確実にするために、硬質セラミック膜が、よく使用される。伝導性セラミックは、負電極から液体電解質へのイオンの移動を可能にすること、および液体電解質が電極の金属と直接接触するのを防止することの二重機能を確実にする。
【0006】
しかしながら、硬質セラミック膜を使用することは、膜の厚さに対して二重の制約を伴う。この厚さは、セラミックの脆性に起因して良好な機械的強度を保証するために十分厚くなければならないが、しかしまたセラミックのイオン抵抗を低減し、この抵抗と関連する電力損失を制限するために十分薄くもなければならない。イオン伝導度と機械的強度との間のこの妥協は、これらの膜の性能を制限する。
【0007】
セルが、再充電されるとき、下記の反応に従って、酸素が、正電極において生成され、金属が、負電極において還元によって堆積される。
負電極における再充電:Mn++ne →M
正電極における再充電:4OH →O+2HO+4e
【0008】
これはそのとき、硬質セラミック膜によって保護される負電極に影響を及ぼす第2の問題をもたらす。実際、金属は、一般に負電極上に均一に堆積されない。その結果、負電極がいくつかの充電/放電サイクルの後にかなりの構造的変更を受けることは、珍しくない。実際には、そのような構造的変更は、負電極の表面上にデンドライトとして知られている空洞および突起の形成もたらす。
【0009】
イオンが、セラミック膜を電解質から電極へと横断するとき、それらは、必ずしも負電極の表面上に均一に堆積するとは限らない。従って、保護セラミック膜と負電極との間の界面に機械的応力が、生成される。加えて、最終的に負電極のいくつかのエリアは、もはやセラミック膜と直接接触せず、それによって膜と電極との間の接触面を低減する。これはさらに、膜を通り抜けるイオンの伝導エリアを低減し、膜と電極との間の接触が失われる非活性エリアを電極上に生成する。
【0010】
硬質セラミック膜を作製することは、それらがたった一つのサイズおよび形状の電極に適しているだけであるという事実に結び付けられる別の不都合を提示する。セラミック膜を作製するための方法は、所与の電極の幾何学的形状と調和させるのに適しているべきであり、作製されるべき任意の種類の電極に適応できる膜を可能にしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上に述べられた理由のため、金属電極を水から保護しながら、イオンが電極と電解質との間で効率的に伝導されることを可能にする電気化学セルの金属電極を保護するための手段が、探求されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上に述べられた問題に応じるために、本発明は、金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜を作製するための方法であって、
− 電気的アシスト押し出し加工によって、少なくとも1つの第1の材料を含むイオン伝導性ファイバのアレイを形成するシーラントファイバを合成するステップであって、ファイバアレイは、第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を規定する、ステップと、
− 金属電極保護膜を形成するために、第2の材料のポリマーをファイバアレイに含浸させるステップであって、ファイバアレイは、第1の表面と第2の表面との間で第2の材料のポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、第1の表面は、金属電極と接触することを目的とする、ステップとを含む、方法を提案する。
【0013】
本発明は、同時にまたは連続して実施されてもよい2つのステップを有する。第1の材料でのシーラントファイバは、電場の印可を伴う押し出し加工によって作製される。これらのシーラントファイバは、例えば電気化学セルの負電極がそれから作られる要素の金属イオンを伝導する能力があるファイバのアレイを形成する。多孔質ファイバとは反対の、伝導性ファイバの「シーラント」特性は、プロトンよりも大きいイオンが伝導されることを可能にするが、しかしながら水(液体もしくは蒸気の形での)または液体電解質がファイバを伝って流れるまたはシーラントファイバによって吸収されることを可能にすることはない。ファイバアレイは、ポリマーの形で存在する第2の材料を含浸される。このポリマーは、柔軟でかつ防水性の膜がファイバアレイを用いて構成されることを可能にする。膜の表面の一方は、金属電極と接触するが、他方の表面は、電解質と接触する。
【0014】
膜の第2の材料の防水性ポリマーは、電極を電解質から保護するマトリックスを形成し、一方このポリマーを横断するファイバは、イオンが膜の両側で伝導されることを可能にする。典型的には、第2の材料のポリマーは、電子について電気絶縁マトリックスが構成されることを可能にする。マトリックスはまた、イオンについて電気絶縁性であってもよい。イオンはそれ故に優先的に、ファイバアレイのファイバに沿った伝導経路をたどる。
【0015】
このようにして作製された膜は、金属電極を水から保護する。膜は、その組成がポリマー内で含浸されたシーラントファイバに基づくと仮定すると、柔軟であり、それは、金属電極が、構造的変更を受けるときでさえ、膜が金属電極の形状に容易に従うことを可能にする。これは、例えば、膜によって保護される金属電極を備える金属空気電池のいくつかの充電および放電サイクルの後に作製されてもよい。
【0016】
電気的アシスト押し出し加工の具体的使用は、シーラントファイバを容易に作製することを可能にし、その機械的特性、サイズおよび組成は、制御可能である。加えて、この技法は、ファイバの密集した(fiber−dense)アレイが迅速に得られることを可能にする。電気的アシスト押し出し加工はまた、第2の材料のポリマーが、ファイバを合成するために使用される電気的アシスト押し出し加工装置の出口において各シーラントファイバを被覆することができるという意味において含浸ステップと組み合わされてもよい。
【0017】
一実施形態によると、本方法はさらに、
− 膜を用いて、アルカリ金属に基づく金属空気型電気化学セルの電極を水媒体から保護するステップであって、膜含浸ステップでのポリマーは、防水性、防ガス性、かつ電気絶縁性である、ステップをさらに含んでもよい。
【0018】
アルカリ金属を使用する金属空気型電気化学セルでは、負電極に対応する金属電極は、安定でなく、水性電解質と接触して劣化する。第2の材料としてのシーラントかつ電気絶縁性の化合物の使用は、この特定の文脈において負電極の保護を最適化するのに十分適していると分かる。金属空気型電気化学セルでは、防水性を防ガス性と組み合わせることはまた、有利なこともあり、ガスは、金属電極腐食の別の可能性のある原因を構成する。ここで、表現「シーラントポリマー」は、ポリマーを作り上げる材料が、水、液体および電子に対してバリアを形成する物体が得られることを可能にするということを意味する。
【0019】
有利には、ファイバアレイの含浸はさらに、
− ファイバアレイの第1の表面がポリマーを欠いているように、膜の表面上のポリマーを除去するステップを含んでもよい。
【0020】
膜表面上の余剰ポリマーを除去するこの追加のステップは、ファイバを介し、膜を通り抜けてイオンを伝導するための経路が、第2の材料のポリマーによってブロックされないことを確実にする。このステップを追加することによって、ファイバアレイを第2の材料ポリマーの溶液に浸すことによって含浸を実行することが可能である。
【0021】
一実施形態によると、第1の材料は、無機粒子の形で存在するので、本方法はさらに、
− ファイバアレイ内のシーラントファイバの無機粒子の接続を確実にするために、ファイバアレイに含浸させるより前にファイバアレイの放電プラズマ焼結を行うステップを含んでもよい。
【0022】
そのようなステップは、合成されたファイバが、特にそれらが無機材料からの粒子で構成されるとき、密封性(sealing)であることを確実にする。実際、放電プラズマ焼結は、無機粒子が寄せ集められ、より均一な相がファイバ内に生成されることを可能にする。このステップはまた、最初はイオン伝導性無機粒子および有機材料の混合物を含むファイバを処理することを考慮すると、関心のあることでもある。この特定の場合には、おそらくは先の熱処理と組み合わされる焼結は、本質的に均一な相を無機材料内に生成するということを考慮すると、有機材料を取り除く。
【0023】
一実施形態によると、シーラントファイバの電気的アシスト押し出し加工の後、本方法はさらに、
− イオン伝導性ファイバアレイ上に、光活性化重合ポリマー、電気活性化重合ポリマーで構成される群の中から選択される第3の材料を堆積するステップを含んでもよい。
【0024】
そのようなステップは、膜の機械的特性が調節されることを可能にし、シーラントファイバと第2の材料のポリマーとの間のより良好な結合ならびに第2の材料のポリマーのより良好な緻密化を確実にする。しかしながら、液体電解質と金属電極との間の膜内に導電性エリアが生成されないことが、確実にされなければならない。光活性化重合ポリマーまたは電気活性化重合ポリマーの使用は、第2の材料のポリマーの密度を増加させ、防水性を可能にするためにファイバアレイとこのポリマーとの間のリンクを強化するのに有用である。
【0025】
有利には、シーラントファイバの電気的アシスト押し出し加工はさらに、
− 選択された寸法を有するシーラントファイバを合成するためにいくつかの材料入口を備える、選択された直径を有する少なくとも1つのノズルを使用することによってシーラントファイバを押し出すステップと、
− ノズルの様々な材料入口を使用することによってシーラントファイバを構成する材料の投与および配置を制御するステップとを含んでもよい。
【0026】
いくつかの材料入口を有するノズルの使用は、押し出しおよび含浸が単一ステップで実行されることを可能にすることもある。それらの周辺上を防水性ポリマーで覆われたファイバは、簡単に再編成され、例えば膜を構成するために追加の熱処理ステップを受けてもよい。いくつかの材料入口を有するノズルを使用することによるファイバアーキテクチャおよび組成を利用することによって自由に変えることができる伝導および機械的強度特性を与えることもまた可能である。
【0027】
一実施形態によると、本方法はさらに、
− 金属空気電池の金属負電極の表面上に電気的アシスト押し出し加工および含浸を行うステップを含んでもよい。
【0028】
特に、これは、ファイバアレイの第1の表面が、第2の材料のポリマーで完全には覆われないことを確実にする。ファイバを第2の材料のポリマーで完全に覆うことは、電気化学セルの電極と液体電解質との間でのイオンの伝導を妨げることもあり得る。電極表面上に直接シーラントファイバを合成し、膜を受け入れることを目的とする支持物上でファイバアレイに含浸させることによって、金属電極から電解質への効果的なイオン伝導および逆もまた同様であることを考慮した接触が、得られてもよい。
【0029】
本発明はまた、金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜であって、
− 少なくとも1つの第1の材料を含むシーラントかつイオン伝導性のファイバを含むファイバアレイであって、第1の表面および第1の表面と反対側の第2の表面を規定するファイバアレイと、
− ファイバアレイに含浸し、それ故に金属電極保護膜を形成するポリマーを含む第2の材料であって、ファイバアレイは、第1の表面と第2の表面との間で第2の材料のポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、第1の表面は、金属電極と接触することを目的とする、第2の材料とを含む、防水性かつイオン伝導性の柔軟膜にも関する。
【0030】
そのような防水性膜は、金属電極が電解質から保護されることを可能にする。その柔軟性のおかげで、それはまた、金属電極との良好な接触ならびにシーラントファイバのおかげで電極と電解質との間の効果的なイオン伝導も確実にする。
【0031】
一実施形態によると、膜は、水媒体内でアルカリ金属を使用する金属空気型電気化学セルの電極の保護を目的としてもよく、ファイバアレイの第1の表面に含浸するポリマーは、密封性であってもよい。
【0032】
第2の材料のシーラントポリマーは、アルカリ金属を使用する金属空気電池の負金属電極を保護するのに適していると分かることもあり得る。実際、そのようなセルの金属電極は、水性電解質内で安定ではない。
【0033】
一実施形態によると、ファイバアレイは、
− 第1の材料のイオン伝導性粒子を含む中心部分と、
− シーラントポリマーを含む、中心部分を取り囲む周辺部分とを備えるシーラントファイバを含んでもよい。
【0034】
そのような実施形態は、シーラントファイバが、防水性材料によって取り囲まれることを確実にする。周辺部分のポリマーは、防水性である。シーラントポリマーは、第2の材料のポリマーであってもよく、そのとき電気的アシスト押し出し加工のステップ中に含浸によって導入されてもよい。このシーラントポリマーはまた、別の材料で作られてもよく、そのとき例えば特別な機械的特性を膜に与えることができる。周辺部分のシーラントポリマーはまた、ファイバアレイおよび第2の材料のポリマーで構成されるアセンブリのよりよい結合を確実にするために使用されてもよい。特に、2つの同心円層を有するファイバを作製することは、異方性イオン伝導経路を生成し、イオンはそれ故に、膜を通り抜けるそれらの移動中にファイバアレイの第1の表面から第2の表面へ同じファイバに沿って線形径路をたどる。
【0035】
別の実施形態によると、ファイバアレイは、
− ポリマーを含む、有機である第4の材料を含む中心部分と、
− 第1の材料のイオン伝導性粒子を含む、中心部分を取り囲む中心エンベロープと、
− シーラントポリマーを含む、中心エンベロープを取り囲む周辺部分とを備えるシーラントファイバを含んでもよい。
【0036】
別法として、ファイバアレイは、
− 第1の材料のイオン伝導性粒子を含む中心部分と、
− ポリマーを含む、有機である第4の材料を含む、中心部分を取り囲む中心エンベロープと、
− シーラントポリマーを含む、中心エンベロープを取り囲む周辺部分とを備えるシーラントファイバを含んでもよい。
【0037】
3つの同心円層を有するそのようなファイバアーキテクチャは、膜での機械的強度およびイオン伝導特性がより正確に調節されることを可能にする。
【0038】
特に、中心エンベロープとしてポリマーを使用することは、有利であると分かることもあり、このポリマーは、上で述べられたように、放電プラズマ焼結の前の中間ステップのための仮のバインダとしての機能を果たす。中心部分はそのとき、ゾル−ゲル前駆体の形で、第1の材料からの粒子を含んでもよい。そのような配置は、バインダとしての機能を果たすポリマーとの第1の材料からの粒子の中心部分内の混合物を焼結することによって得られるファイバよりも高密度のファイバを熱処理後に生じさせることができる。
【0039】
有利には、第1の表面は、金属電極の外表面との物理化学的親和性を有してもよく、前記物理化学的親和性は、第1の表面と金属電極の外表面との間の永久的接触を確実にする。
【0040】
電気化学セルの金属電極は典型的には、電極が含む導電材料の外表面上に配置される、界面層と呼ばれる薄い層で覆われることもある。本発明の主題である膜を形成する第2の材料のポリマーならびにこの膜のシーラントファイバは有利には、この界面層との化学的親和性により接触を促進する化合物を含んでもよい。物理化学的親和性は典型的には、第1の表面と金属電極の界面層との間の化学結合の形成、またはさもなければファンデルワールス型の力による維持をもたらすこともある。従って、負金属電極の形状が、充電および再充電のサイクルに続いて変化を受けるとき、保護膜と電極との間の接触は、膜によって覆われる全表面にわたって維持される。
【0041】
有利には、第1の材料は、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO、Li1.2Al0.2Ti1.8(PO、LiTi(PO、リン酸リチウムチタン(LTP)、Li1+x+zAl(Ti,Ge)2−xSi3−z12、ペロブスカイトLi3xLa2/3−xTiO、NaSiZr1.880.12PO12、NaSiZrPO12またはβ−Alで構成される無機化合物の群の中から選択されてもよく、第2の材料は、フッ素化ポリマーおよびポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)で構成される群の中から選択されてもよい。
【0042】
これらの材料は、リチウムまたはナトリウムイオン伝導および水性電解質に対する保護にとって特に関心があることが分かる。PVDF−HFP膜はまた、さもなければ負電極を損傷する可能性が高い、再充電段階において解放される酸素に対するバリアも確実にする。第2の材料としてのフッ素化ポリマーはまた、それらが、水と接触しても膨張せず、それによって機械的応力が金属電極に及ぼされるのを防止するまたはファイバを電解質から隔離するという利点も提示する。代替物質が、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、およびカルシウム(Ca)イオンの伝導を伴う応用において考えられてもよい。
【0043】
有利には、膜は、1ミクロンから100ミクロンの間の厚さを有する。
【0044】
そのような厚さは、膜の良好な柔軟性を維持し、ファイバが第2の材料のポリマーによって完全に覆われるのを防止する。
【0045】
本発明は特に、
− 液体電解質溶液内に浸された金属負電極と、
− 金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜とを備える少なくとも1つの電気化学セルを備える電池であって、柔軟膜は、
− 少なくとも1つの第1の材料を含むシーラントかつイオン伝導性のファイバを含むファイバアレイであって、第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を規定するファイバのアレイと、
− ファイバアレイに含浸し、それ故に金属電極保護膜を形成するポリマーを含む第2の材料であって、ファイバアレイは、第1の表面と第2の表面との間で第2の材料のポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、第1の表面は、金属電極と接触することを目的とする、第2の材料とを含み、
防水性かつイオン伝導性の柔軟膜は、電解質溶液内で負電極を取り囲む、電池において実施されてもよい。
【0046】
本発明の主題である本方法は、制限なく、例示目的のために提示される実施形態の例の下記の説明を読み、以下の図面を観察することでよりよく理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】電気的アシスト押し出し加工によるファイバアレイの合成のためのアセンブリの概略図である。
図2】本発明による金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜の概略横断面図である。
図3】本発明による金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜の別の概略横断面図である。
図4】本発明による膜で覆われた金属電極を備える電気化学セルの概略図である。
図5】3つの層を有するファイバの押し出し加工のために使用される3つの材料入口を有するノズルの概略縦断面図である。
図6】本発明による膜内で使用される3つの同心円層を有するファイバの概略図である。
図7】本発明による膜内で使用される2つの同心円層を有するファイバの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
明確さのために、これらの図に表される異なる要素の寸法は、必ずしもそれらの現実の寸法と比例していない。図では、同一の参照符号は、同一の要素に対応する。
【0049】
本発明は、金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜を作製するための方法に関する。それはまた、このようにして得られる膜および、例えば金属空気型電池、特にアルカリ金属電極を使用する電池において、金属電極を保護するためにそのような膜を使用する電気化学セルにも関する。
【0050】
例として、図1は、電気的アシスト押し出し加工によって得られるシーラントファイバ10で構成されるファイバアレイ100の製作を例示する。電気的アシスト押し出し加工は、例えば第1の材料20で構成される溶液を電場にさらすことによって実行される。図1からの例では、溶液110は、有機相30と混合された、第1の無機材料20からの粒子を含む。電場は、ファイバ10堆積支持物1を溶液110がそれから抜け出すノズル40に接続する電気回路を用いて印可される。支持物1はそれによって、堆積中に対向電極を形成する。溶液110は、シリンジポンプ42を用いてシリンジ41のノズル40を介して注入される。
【0051】
堆積支持物1はまた、電気的アシスト押し出し加工法が実施されることを可能にする任意の表面であってもよい。膜300によって保護されることを目的とする金属電極の外表面上に直接ファイバを堆積することが、有利であることもある。
【0052】
支持物1上にファイバ10を堆積することは、電気的アシスト押し出し加工パラメータを選択することによって異なる仕方で行われてもよい。ノズルに印可される電圧、ノズルと支持物1との間の距離、支持物の性質および形状、ノズル40内への溶液110の注入速度、ならびに堆積が行われる雰囲気、特に湿度レベルおよび温度は、電気的アシスト押し出し加工を実行するために選択されてもよいパラメータの中にある。
【0053】
これらのパラメータを制御することは、ファイバアレイ100内でのファイバ10の配置、それらのもつれおよびそれらの密封性が規定されることを可能にする。以下で述べられることになるように、ファイバの密封性および機械的特性はなお、押し出し加工後の処理ステップによって変更されてもよい。
【0054】
いったんファイバアレイ100が、作られると、本発明の主題である本方法は、例として図2および図3に表されるように、膜300を構成することを考慮して、第2の材料200のポリマー内でのアレイの含浸を続ける。
【0055】
ファイバアレイ100の含浸は、このファイバアレイを第2の材料200のポリマーの溶液内に浸すことによって行われてもよい。第2の材料200が、ファイバアレイ100に含浸するように、液体の形のポリマー溶液を支持物1上に注ぐこともまた可能である。他の含浸方法がまた、考えられてもよい。
【0056】
第2の材料200のポリマーは、膜300内に防水性保護マトリックスを構成することができるように選択されてもよい。そのような効果を得ることを可能にする材料の中で、フッ素化ポリマーおよびポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)が、例えば見いだされてもよい。これらの材料は、密封性であり、液体または蒸気の形での水に対する二重防水性、および防ガス性をもたらす特別な特徴を提示する。防水性は、膜300が保護する金属電極を液体電解質または水蒸気による劣化から保護する。防ガス性は、金属空気型の電気化学セルの金属電極の保護に応用を見いだす。そのようなセルでは、膜300は、電極を再充電サイクルで生成される酸素および放電中に液体電解質に溶解される酸素から保護し、それ故にこの酸素が電極を腐食するのを防止する。他の材料、例えば防水性であるという特性を提示するだけである材料は、特に使用される電解質が、水性でないとき、第2の材料200のために考えられてもよい。
【0057】
図2は、上で述べられた方法から支給される(issued from)、本発明による膜300を概略的に表す。この膜は、第2の材料200のポリマーを含浸された第1の材料のファイバ10を含む。ファイバ10は、ファイバアレイ100を構成し、第1の表面310および第2の表面320を規定する。図2からの例では、これらの表面310、320は、膜300の2つの表面に対応する。
【0058】
第2の材料200のポリマーによるファイバ10の含浸は、防水性膜300が構成されることを可能にする。第2の材料200のポリマー内のファイバ10は、イオン伝導経路を形成する。図2に表されるように、ファイバは、ファイバアレイ100の第1の表面310上のその端部311の1つから第2の表面320上のその反対側の端部312まで伝導経路を形成することができる。
【0059】
充電および放電の両方のときに電気化学セルの動作を確実にするために、膜300は優先的に、第1の表面310から第2の表面320まで伝導経路を形成するかなりの数のファイバ10を含んでもよい。含浸は、ファイバ10の端部の少なくとも1つを意図せずに完全に覆う可能性があることに留意すべきである。ファイバアレイ100が典型的に含むかなりの数のファイバ、例えば平方ミリメートル当たり10万のファイバのうち、イオンを伝導するために使用されないファイバの割合は、膜300によって覆われた電極を備えるセルの動作を妨げない。加えて、いくつかの解決策は、この意図しない被覆が改善されることを可能にする。
【0060】
例えば、ポリマーによって覆われたファイバの端部を露出するために、含浸ステップの後に第2の材料200のポリマーの一部を除去することが可能である。膜300の密封性を確実にする第2の材料200のポリマーマトリックスのために低減した厚さを提供することもまた可能である。例として、1ミクロンから100ミクロンの間の典型的な厚さは、かなりの数のファイバ10の端部を覆うことなく、膜の良好な密封性および柔軟性を保証するのに適しており、それによって十分なイオン伝導を確実にする。
【0061】
図3に表される実施形態は、ファイバ10が、第2の材料200のポリマーによって形成された密封性マトリックスを越えてある距離313にわたって延びる突出部分を備える、膜300を示す。第1の表面310はそのとき、このマトリックスの表面と一致しない。表されない他の実施形態によると、ファイバアレイの第2の表面320もまた、第2の材料200のポリマーを形成するマトリックスと一致しないこともある。
【0062】
そのような膜が、水から保護されることを目的とする金属電極の表面に適用されるとき、ファイバアレイ100の第1の表面310上のファイバ10の端部311は、金属電極と接触し、一方膜300のファイバ10の反対側の端部312は、電解質と接触し、それ故に両方向において、電極と電解質との間のイオンのための伝導経路を確実にする。
【0063】
図4は、負電極401、正電極402および液体電解質溶液403を備える電気化学セルを概略的に表す。負電極401は、本発明による膜300によって少なくともその浸される部分を覆われる。電極401は、活性金属材料410で構成される。放電するときは、この金属は、ファイバ10を介して膜300から電解質403までイオン411の形で通過する。図4に例示されるように、電極401はまた、その外表面上にイオン伝導性フィルム400も備える。そのようなフィルムは、膜300との化学的親和性を確実にする軟質界面層を形成する。この界面層400はそれ故に、いくつかのセル充電および放電サイクル後でさえ、たとえ電極401が、その外表面を変形させる構造的変化を受けても、膜300が電極401と接触する状態を維持する。界面層を形成する金属電極の外表面を構成するために典型的に使用される材料の中で、例えば、Li(CFSO)2N (LiTFSI)を有するポリエチレンオキシド(PEO)で構成されるポリマー電解質を使用することが、知られている。
【0064】
シーラントファイバをポリマーマトリックスで接続する混成複合構造と関連する、膜300の柔軟性は、膜が柔軟であり、従って任意の金属電極401の形状に従うことを可能にする。そのような膜300はそれ故に、セルの充電および放電サイクル中に電極401の大きな表面との永久的接触を確実にすることができるだけでなく、それはまた、異なる形状、サイズまたは組成でさえ有する他の電極上に導入されてもよい。例えば、電極は、コイル状であってもよい。
【0065】
この柔軟性は、硬質セラミックでの従来技術からの膜との関連で本発明の膜に利点を与える。電極の外表面との電気的接触は、硬質膜を有するセルの充電および放電サイクルにわたって低減される。加えて、硬質膜は、特定の電極形状に適しているだけである。
【0066】
関係している電荷担体が、プロトンである、例えば水素セルに使用される膜と異なり、本発明の膜は、イオンを第1の表面310から第2の表面320まで伝導するだけのために提供される。電気化学セル内で典型的に考えられるイオンは、リチウム、カルシウム、カリウムおよびナトリウムである。有利には、H+イオンは、膜300を横断しない。「シーラント」ファイバ10の使用は、ファイバが、使用中に液体内で含浸されず、膜を通り抜ける水、液体または電子の移動を可能にしないということを確実にする。ファイバ10の「シーラント」特性、すなわちそれらが、液体または水性さえもの電解質による含浸につながる可能性が高い多孔を欠いているといえるくらいまで高密度であることは、ファイバが、それらのイオン伝導の役割を最適に果たすことを可能にする。
【0067】
電気的アシスト押し出し加工によるシーラントファイバ10の合成は、どんな追加のステップも必要としなくてもよい。しかしながら、ファイバ10の密封性およびイオン伝導は、様々な方法で改善することができる。
【0068】
大部分のシーラントファイバ10は、第1の無機材料20の粒子から合成される。これらの粒子は、共沈などのソフト化学法またはゾル−ゲル型の方法によって得られてもよい。それらの典型的なサイズは、1nmから1ミクロンの間である。粒子で構成されるファイバ10は、粒子およびこれらの粒子間の間隔が、水が通過することを許さないとき、シーラントであると考えることができる。この基準に最もよく応じるために、バインダとして使用されるポリマー30内に粒子を閉じ込めることが可能である。第1の材料20からの粒子はそのとき、図1に表されるように、押し出し加工中にポリマー30を含有する溶液と混合される。
【0069】
ある応用については、ポリマー30がない場合の第1の無機材料20からの粒子によるイオン伝導が、探求される。このために、溶液110から押し出された混合ファイバは、ファイバ10からポリマー30を除外するために熱処理を受けることができる。この熱処理は、その後に焼結ステップが続き、有利には第1の材料20の粒子を劣化させない中間温度で実施される。「放電プラズマ焼結」と呼ばれる、特に有利な焼結法は、電場の下で焼結を実行することから成る。焼結は、ファイバ10を構成する第1の材料20の粒子間の適切な接触を確実にし、イオンの移動に対する抵抗を低減する。
【0070】
ファイバ内にポリマーを追加することなくファイバ10内にまとめられている、第1の無機材料20の粒子からだけの押し出し加工を実行することもまた可能である。そのような実施形態では、事前の熱処理なしで放電プラズマ焼結を実行することが可能である。
【0071】
電解質溶液は、液体または例えば金属空気セルの場合は水性でさえあってもよい。電解質溶液はまた、液体でなくてもよく、例えばそれは、ゲルまたはポリマーであってもよい。しかしながら、ファイバおよび膜の防水性は、セルが含むこともある水蒸気から電極を守るための有利な特性である。
【0072】
電気的アシスト押し出し加工は、得られるファイバ10の機械的、構造的および電気的特性が細かく制御されることを可能にする
【0073】
一方では、溶液110の組成は、ファイバが優先的に1つの特定の種類のイオンを伝導するように選択されてもよい。この点において、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO、Li1.2Al0.2Ti1.8(PO、LiTi(PO、リン酸リチウムチタン(LTP)、Li1+x+zAl(Ti,Ge)2−xSi3−z12またはペロブスカイトLi3xLa2/3−xTiOの中から選択される化合物は、リチウムLi+イオンを伝導するのに特に適している。他のNa+、K+またはCa2+イオン伝導性化合物がまた、使用されてもよい。例えば、NaSiZr1.880.12PO12、NaSiZrPO12またはβ−Alの中から選択される化合物は、ナトリウムイオンを伝導するために選択されてもよい。これらのイオンは、ほとんどの場合電気化学セル電極に使用される種に対応し、その場合本発明は、ガスおよび/または電解質による腐食から電極を保護するための膜を構成するための応用を見いだす。
【0074】
電気的アシスト押し出し加工によって形成されるファイバアレイ100の含浸は、独自の特性を膜300に与えることを考慮して他のステップによって完了されてもよい。
【0075】
例えば、粒子または溶液の形での第3の材料の電着またはさもなければ光析出によって含浸を完了することが可能である。これらの添加物は、例えば膜300の密度または柔軟性を調整することによって、例えば特定の機械的特性を膜に与えることができる。
【0076】
従って、含浸中に、コポリマーが、ファイバアレイ100上に堆積されてもよくまたは第2の材料200のポリマーと混合されてもよい。
【0077】
このコポリマーは、例えば2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートまたは1,1,1,3,3,3−ヘキサ−フルオロ−イソプロピルメタクリレートなどの、光活性化重合ポリマーであってもよい。この特性は特に、ファイバアレイ100と第2の材料200のポリマーとの間のより良好な結合を確実にすることができる。光活性化重合コポリマーはまた、防水性、柔軟性およびイオン伝導性特性を保ちながら、その厚さのさらなる低減を可能にするために、膜の密度を増加させることもできる。
【0078】
コポリマーはまた、同様の密度増加および/またはより良好な柔軟性効果を与えることを考慮して、電気的活性化重合ポリマーであってもよい。
【0079】
電気的アシスト押し出し加工は、本発明がいくつかの異なる実施形態に従って実施されることを可能にする。
【0080】
一方では、ファイバアレイの押し出し加工および次いで含浸を伴う2つの別個の連続するステップでの方法が、考えられる。他方では、ノズル40が、いくつかの材料入口を備え、シリンジ41が、いくつかのリザーバを備えるとき、含浸は、押し出し加工の一体部分であってもよい。
【0081】
いくつかの材料入口を有するノズル40の実施形態の一例は、図5に概略的に表される。第1の区画511は、ファイバ10の中心部分を形成する材料を含む。第2の区画512は、ファイバ10の中心部分を取り囲む中心エンベロープを形成する材料を含む。第3の区画513は、中心エンベロープを取り囲むファイバ10の周辺部分を形成する材料を含む。3つより多い材料入口またはさもなければ2つもしくは1つの材料入口を提供するノズル40のための他の配置が、考えられてもよい。
【0082】
いくつかの材料入口を有するノズル40を用いると、特に中心イオン伝導性部分および第2の材料200のポリマーを含む周辺部分を備えるファイバ10を構成することが可能である。含浸ステップはその時、押し出し加工ステップの一体部分である。防水性マトリックスは例えば、圧縮を用いてファイバの密度を増加させることによってか、またはこのようにして得られたファイバを結合するまたは接続する能力がある材料に浸す追加のステップによって得られてもよい。膜の密封性はまた、十分な量のファイバ10の重ね合わせによって得られてもよく、それは、ファイバ10の周辺部分を構成するポリマー材料の結合によって互いに接触した状態に維持されてもよい。
【0083】
いくつかの材料入口を有するノズルを使用することによって、膜を構成するための多くの実施形態が、考えられてもよい。ノズル40の直径の選択は、合成されたファイバ10の直径が選択されることを可能にする。シーラントファイバ10を形成する材料の投与および配置を制御することは、膜300の機械的および電気的特性が調整されることを可能にする。いくつかの例は、以下に提供される。
【0084】
図6に表されるように、ファイバ10は、3つの同心円層を備えることができる。中心部分611は、第1のイオン伝導性材料を含むことができる。中心部分を取り囲む中心エンベロープ612は、ポリマーを含む第4の有機材料のポリマーを含むことができる。中心エンベロープを取り囲む周辺部分613は、シーラントポリマーを含む。そのようなファイバ10は、第1のイオン伝導性材料だけで構成されるファイバよりもより容易に調節される機械的強度特性を有する。シーラントポリマーへの第3の材料614の追加は、ファイバアレイ100のファイバ10と第2の材料200のポリマーとの間のより良好な界面を確実にする。
【0085】
変形として、中心部分は、第4の有機材料からのポリマーを含んでもよく、中心部分を取り囲む中心エンベロープは、第1のイオン伝導性材料を含むことができる。
【0086】
図7は、その実施がより簡単である、2つの同心円層を有するファイバ10を表す。ファイバ10は、第1の無機のイオン伝導性材料での中心部分711およびシーラントポリマーでの周辺部分712を備える。
【0087】
有利な実施形態では、2つまたは3つの層での配置は、中心エンベロープとして使用されるバインダとしての機能を果たすポリマーを用いて、中心部分にゾル−ゲル前駆体の形での粒子を閉じ込めるために使用されてもよい。このバインダポリマーは、ファイバ内に一時的に存在するだけであり、上で述べられたように、放電プラズマ焼結ステップ中に取り除かれる。そのような配置は、バインダとしての機能を果たすポリマーとの第1の材料からの粒子の中心部分内での混合物を焼結することによって得られるファイバよりもより高密度のファイバを熱処理後に生じさせることもある。
【0088】
一般に、イオンを伝導せず、かつ防水性であるポリマー内でファイバ10のイオン伝導性部分を被覆することは、異方性イオン伝導性経路が膜内に生成されることを可能にする。その結果、膜の電気的特性は、ファイバ10および第2の材料200のポリマーの組成に応じて調整されてもよい。
【0089】
ファイバアレイ100および膜300の実施形態の一例は、以下で簡潔に述べられる。
【0090】
第1の材料20の前駆体を含むゾルは、溶液内でPVDF−HFP型の支持ポリマーと混合される。
【0091】
ポリマー200mgが、テトラヒドロフラン20mLに加えられる。溶液は、ポリマーを溶解するために50℃から100℃の間の温度で15分間撹拌され、次いで周囲温度まで冷却される。機械的撹拌の下で、フェニルホスホン酸1g、硝酸リチウム200mgおよび非水和硝酸アルミニウム0.5gが次いで、溶液に加えられる。
【0092】
このようにして生成された溶液は、電気的アシスト押し出し加工によってファイバを合成するためにシリンジ内で使用される。シリンジポンプは、ノズルと対向電極を形成する支持物との間に10cmの間隔を有して22kVの電圧下で、シリンジノズルによって0.1mL/minの速度で液体を移動させる。ファイバは、Li1+xAlTi2−x(PO酸化物またはLi3xLa2/3−xTiOカチオン伝導性ファイバの無機アレイを得るために焼成される。ファイバは、3%の重量比を有するPVDF−HFP/DMF溶液を使用することによってポリマーを含浸される。
【0093】
オプションとして、このようにして構成された膜は、得られた膜が休止時に平坦性を保つように、2つの金属プレートの間で15分間170℃において向きを変えられ(turned around)、処理されてもよい。
【0094】
このようにして得られた膜は、40ミクロンの厚さを有する膜について10−6S/cmのイオン伝導率を有する。
【0095】
本発明は、上で述べられた実施形態に限定されない。特に、ファイバ10は、第1の完全に有機のイオン伝導性かつ防水性の材料で作られてもよい。そのような実施形態では、膜300は、全体として有機材料で作られる。
【符号の説明】
【0096】
1 支持物
10 ファイバ
20 第1の材料
30 有機相、ポリマー
40 ノズル
41 シリンジ
42 シリンジポンプ
100 ファイバアレイ
110 溶液
200 第2の材料
300 膜
310 第1の表面
311 第1の表面上の端部
312 第2の表面上の端部
313 ある距離
320 第2の表面
400 イオン伝導性フィルム、界面層
401 負電極、金属電極
402 正電極
403 液体電解質溶液、電解質
410 活性金属材料
411 イオン
511 第1の区画
512 第2の区画
513 第3の区画
611 中心部分
612 中心エンベロープ
613 周辺部分
614 第3の材料
711 中心部分
712 周辺部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7