【課題を解決するための手段】
【0012】
上に述べられた問題に応じるために、本発明は、金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜を作製するための方法であって、
− 電気的アシスト押し出し加工によって、少なくとも1つの第1の材料を含むイオン伝導性ファイバのアレイを形成するシーラントファイバを合成するステップであって、ファイバアレイは、第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を規定する、ステップと、
− 金属電極保護膜を形成するために、第2の材料のポリマーをファイバアレイに含浸させるステップであって、ファイバアレイは、第1の表面と第2の表面との間で第2の材料のポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、第1の表面は、金属電極と接触することを目的とする、ステップとを含む、方法を提案する。
【0013】
本発明は、同時にまたは連続して実施されてもよい2つのステップを有する。第1の材料でのシーラントファイバは、電場の印可を伴う押し出し加工によって作製される。これらのシーラントファイバは、例えば電気化学セルの負電極がそれから作られる要素の金属イオンを伝導する能力があるファイバのアレイを形成する。多孔質ファイバとは反対の、伝導性ファイバの「シーラント」特性は、プロトンよりも大きいイオンが伝導されることを可能にするが、しかしながら水(液体もしくは蒸気の形での)または液体電解質がファイバを伝って流れるまたはシーラントファイバによって吸収されることを可能にすることはない。ファイバアレイは、ポリマーの形で存在する第2の材料を含浸される。このポリマーは、柔軟でかつ防水性の膜がファイバアレイを用いて構成されることを可能にする。膜の表面の一方は、金属電極と接触するが、他方の表面は、電解質と接触する。
【0014】
膜の第2の材料の防水性ポリマーは、電極を電解質から保護するマトリックスを形成し、一方このポリマーを横断するファイバは、イオンが膜の両側で伝導されることを可能にする。典型的には、第2の材料のポリマーは、電子について電気絶縁マトリックスが構成されることを可能にする。マトリックスはまた、イオンについて電気絶縁性であってもよい。イオンはそれ故に優先的に、ファイバアレイのファイバに沿った伝導経路をたどる。
【0015】
このようにして作製された膜は、金属電極を水から保護する。膜は、その組成がポリマー内で含浸されたシーラントファイバに基づくと仮定すると、柔軟であり、それは、金属電極が、構造的変更を受けるときでさえ、膜が金属電極の形状に容易に従うことを可能にする。これは、例えば、膜によって保護される金属電極を備える金属空気電池のいくつかの充電および放電サイクルの後に作製されてもよい。
【0016】
電気的アシスト押し出し加工の具体的使用は、シーラントファイバを容易に作製することを可能にし、その機械的特性、サイズおよび組成は、制御可能である。加えて、この技法は、ファイバの密集した(fiber−dense)アレイが迅速に得られることを可能にする。電気的アシスト押し出し加工はまた、第2の材料のポリマーが、ファイバを合成するために使用される電気的アシスト押し出し加工装置の出口において各シーラントファイバを被覆することができるという意味において含浸ステップと組み合わされてもよい。
【0017】
一実施形態によると、本方法はさらに、
− 膜を用いて、アルカリ金属に基づく金属空気型電気化学セルの電極を水媒体から保護するステップであって、膜含浸ステップでのポリマーは、防水性、防ガス性、かつ電気絶縁性である、ステップをさらに含んでもよい。
【0018】
アルカリ金属を使用する金属空気型電気化学セルでは、負電極に対応する金属電極は、安定でなく、水性電解質と接触して劣化する。第2の材料としてのシーラントかつ電気絶縁性の化合物の使用は、この特定の文脈において負電極の保護を最適化するのに十分適していると分かる。金属空気型電気化学セルでは、防水性を防ガス性と組み合わせることはまた、有利なこともあり、ガスは、金属電極腐食の別の可能性のある原因を構成する。ここで、表現「シーラントポリマー」は、ポリマーを作り上げる材料が、水、液体および電子に対してバリアを形成する物体が得られることを可能にするということを意味する。
【0019】
有利には、ファイバアレイの含浸はさらに、
− ファイバアレイの第1の表面がポリマーを欠いているように、膜の表面上のポリマーを除去するステップを含んでもよい。
【0020】
膜表面上の余剰ポリマーを除去するこの追加のステップは、ファイバを介し、膜を通り抜けてイオンを伝導するための経路が、第2の材料のポリマーによってブロックされないことを確実にする。このステップを追加することによって、ファイバアレイを第2の材料ポリマーの溶液に浸すことによって含浸を実行することが可能である。
【0021】
一実施形態によると、第1の材料は、無機粒子の形で存在するので、本方法はさらに、
− ファイバアレイ内のシーラントファイバの無機粒子の接続を確実にするために、ファイバアレイに含浸させるより前にファイバアレイの放電プラズマ焼結を行うステップを含んでもよい。
【0022】
そのようなステップは、合成されたファイバが、特にそれらが無機材料からの粒子で構成されるとき、密封性(sealing)であることを確実にする。実際、放電プラズマ焼結は、無機粒子が寄せ集められ、より均一な相がファイバ内に生成されることを可能にする。このステップはまた、最初はイオン伝導性無機粒子および有機材料の混合物を含むファイバを処理することを考慮すると、関心のあることでもある。この特定の場合には、おそらくは先の熱処理と組み合わされる焼結は、本質的に均一な相を無機材料内に生成するということを考慮すると、有機材料を取り除く。
【0023】
一実施形態によると、シーラントファイバの電気的アシスト押し出し加工の後、本方法はさらに、
− イオン伝導性ファイバアレイ上に、光活性化重合ポリマー、電気活性化重合ポリマーで構成される群の中から選択される第3の材料を堆積するステップを含んでもよい。
【0024】
そのようなステップは、膜の機械的特性が調節されることを可能にし、シーラントファイバと第2の材料のポリマーとの間のより良好な結合ならびに第2の材料のポリマーのより良好な緻密化を確実にする。しかしながら、液体電解質と金属電極との間の膜内に導電性エリアが生成されないことが、確実にされなければならない。光活性化重合ポリマーまたは電気活性化重合ポリマーの使用は、第2の材料のポリマーの密度を増加させ、防水性を可能にするためにファイバアレイとこのポリマーとの間のリンクを強化するのに有用である。
【0025】
有利には、シーラントファイバの電気的アシスト押し出し加工はさらに、
− 選択された寸法を有するシーラントファイバを合成するためにいくつかの材料入口を備える、選択された直径を有する少なくとも1つのノズルを使用することによってシーラントファイバを押し出すステップと、
− ノズルの様々な材料入口を使用することによってシーラントファイバを構成する材料の投与および配置を制御するステップとを含んでもよい。
【0026】
いくつかの材料入口を有するノズルの使用は、押し出しおよび含浸が単一ステップで実行されることを可能にすることもある。それらの周辺上を防水性ポリマーで覆われたファイバは、簡単に再編成され、例えば膜を構成するために追加の熱処理ステップを受けてもよい。いくつかの材料入口を有するノズルを使用することによるファイバアーキテクチャおよび組成を利用することによって自由に変えることができる伝導および機械的強度特性を与えることもまた可能である。
【0027】
一実施形態によると、本方法はさらに、
− 金属空気電池の金属負電極の表面上に電気的アシスト押し出し加工および含浸を行うステップを含んでもよい。
【0028】
特に、これは、ファイバアレイの第1の表面が、第2の材料のポリマーで完全には覆われないことを確実にする。ファイバを第2の材料のポリマーで完全に覆うことは、電気化学セルの電極と液体電解質との間でのイオンの伝導を妨げることもあり得る。電極表面上に直接シーラントファイバを合成し、膜を受け入れることを目的とする支持物上でファイバアレイに含浸させることによって、金属電極から電解質への効果的なイオン伝導および逆もまた同様であることを考慮した接触が、得られてもよい。
【0029】
本発明はまた、金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜であって、
− 少なくとも1つの第1の材料を含むシーラントかつイオン伝導性のファイバを含むファイバアレイであって、第1の表面および第1の表面と反対側の第2の表面を規定するファイバアレイと、
− ファイバアレイに含浸し、それ故に金属電極保護膜を形成するポリマーを含む第2の材料であって、ファイバアレイは、第1の表面と第2の表面との間で第2の材料のポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、第1の表面は、金属電極と接触することを目的とする、第2の材料とを含む、防水性かつイオン伝導性の柔軟膜にも関する。
【0030】
そのような防水性膜は、金属電極が電解質から保護されることを可能にする。その柔軟性のおかげで、それはまた、金属電極との良好な接触ならびにシーラントファイバのおかげで電極と電解質との間の効果的なイオン伝導も確実にする。
【0031】
一実施形態によると、膜は、水媒体内でアルカリ金属を使用する金属空気型電気化学セルの電極の保護を目的としてもよく、ファイバアレイの第1の表面に含浸するポリマーは、密封性であってもよい。
【0032】
第2の材料のシーラントポリマーは、アルカリ金属を使用する金属空気電池の負金属電極を保護するのに適していると分かることもあり得る。実際、そのようなセルの金属電極は、水性電解質内で安定ではない。
【0033】
一実施形態によると、ファイバアレイは、
− 第1の材料のイオン伝導性粒子を含む中心部分と、
− シーラントポリマーを含む、中心部分を取り囲む周辺部分とを備えるシーラントファイバを含んでもよい。
【0034】
そのような実施形態は、シーラントファイバが、防水性材料によって取り囲まれることを確実にする。周辺部分のポリマーは、防水性である。シーラントポリマーは、第2の材料のポリマーであってもよく、そのとき電気的アシスト押し出し加工のステップ中に含浸によって導入されてもよい。このシーラントポリマーはまた、別の材料で作られてもよく、そのとき例えば特別な機械的特性を膜に与えることができる。周辺部分のシーラントポリマーはまた、ファイバアレイおよび第2の材料のポリマーで構成されるアセンブリのよりよい結合を確実にするために使用されてもよい。特に、2つの同心円層を有するファイバを作製することは、異方性イオン伝導経路を生成し、イオンはそれ故に、膜を通り抜けるそれらの移動中にファイバアレイの第1の表面から第2の表面へ同じファイバに沿って線形径路をたどる。
【0035】
別の実施形態によると、ファイバアレイは、
− ポリマーを含む、有機である第4の材料を含む中心部分と、
− 第1の材料のイオン伝導性粒子を含む、中心部分を取り囲む中心エンベロープと、
− シーラントポリマーを含む、中心エンベロープを取り囲む周辺部分とを備えるシーラントファイバを含んでもよい。
【0036】
別法として、ファイバアレイは、
− 第1の材料のイオン伝導性粒子を含む中心部分と、
− ポリマーを含む、有機である第4の材料を含む、中心部分を取り囲む中心エンベロープと、
− シーラントポリマーを含む、中心エンベロープを取り囲む周辺部分とを備えるシーラントファイバを含んでもよい。
【0037】
3つの同心円層を有するそのようなファイバアーキテクチャは、膜での機械的強度およびイオン伝導特性がより正確に調節されることを可能にする。
【0038】
特に、中心エンベロープとしてポリマーを使用することは、有利であると分かることもあり、このポリマーは、上で述べられたように、放電プラズマ焼結の前の中間ステップのための仮のバインダとしての機能を果たす。中心部分はそのとき、ゾル−ゲル前駆体の形で、第1の材料からの粒子を含んでもよい。そのような配置は、バインダとしての機能を果たすポリマーとの第1の材料からの粒子の中心部分内の混合物を焼結することによって得られるファイバよりも高密度のファイバを熱処理後に生じさせることができる。
【0039】
有利には、第1の表面は、金属電極の外表面との物理化学的親和性を有してもよく、前記物理化学的親和性は、第1の表面と金属電極の外表面との間の永久的接触を確実にする。
【0040】
電気化学セルの金属電極は典型的には、電極が含む導電材料の外表面上に配置される、界面層と呼ばれる薄い層で覆われることもある。本発明の主題である膜を形成する第2の材料のポリマーならびにこの膜のシーラントファイバは有利には、この界面層との化学的親和性により接触を促進する化合物を含んでもよい。物理化学的親和性は典型的には、第1の表面と金属電極の界面層との間の化学結合の形成、またはさもなければファンデルワールス型の力による維持をもたらすこともある。従って、負金属電極の形状が、充電および再充電のサイクルに続いて変化を受けるとき、保護膜と電極との間の接触は、膜によって覆われる全表面にわたって維持される。
【0041】
有利には、第1の材料は、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)、Li
1.4Al
0.4Ti
1.6(PO
4)
3、Li
1.2Al
0.2Ti
1.8(PO
4)
3、LiTi
2(PO
4)
3、リン酸リチウムチタン(LTP)、Li
1+x+zAl
x(Ti,Ge)
2−xSi
zP
3−zO
12、ペロブスカイトLi
3xLa
2/3−xTiO
3、Na
3Si
2Zr
1.88Y
0.12PO
12、Na
3Si
2Zr
2PO
12またはβ−Al
2O
3で構成される無機化合物の群の中から選択されてもよく、第2の材料は、フッ素化ポリマーおよびポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)で構成される群の中から選択されてもよい。
【0042】
これらの材料は、リチウムまたはナトリウムイオン伝導および水性電解質に対する保護にとって特に関心があることが分かる。PVDF−HFP膜はまた、さもなければ負電極を損傷する可能性が高い、再充電段階において解放される酸素に対するバリアも確実にする。第2の材料としてのフッ素化ポリマーはまた、それらが、水と接触しても膨張せず、それによって機械的応力が金属電極に及ぼされるのを防止するまたはファイバを電解質から隔離するという利点も提示する。代替物質が、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、およびカルシウム(Ca)イオンの伝導を伴う応用において考えられてもよい。
【0043】
有利には、膜は、1ミクロンから100ミクロンの間の厚さを有する。
【0044】
そのような厚さは、膜の良好な柔軟性を維持し、ファイバが第2の材料のポリマーによって完全に覆われるのを防止する。
【0045】
本発明は特に、
− 液体電解質溶液内に浸された金属負電極と、
− 金属電極を保護することを目的とする防水性かつイオン伝導性の柔軟膜とを備える少なくとも1つの電気化学セルを備える電池であって、柔軟膜は、
− 少なくとも1つの第1の材料を含むシーラントかつイオン伝導性のファイバを含むファイバアレイであって、第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を規定するファイバのアレイと、
− ファイバアレイに含浸し、それ故に金属電極保護膜を形成するポリマーを含む第2の材料であって、ファイバアレイは、第1の表面と第2の表面との間で第2の材料のポリマーを通り抜けるイオン伝導経路を形成し、第1の表面は、金属電極と接触することを目的とする、第2の材料とを含み、
防水性かつイオン伝導性の柔軟膜は、電解質溶液内で負電極を取り囲む、電池において実施されてもよい。
【0046】
本発明の主題である本方法は、制限なく、例示目的のために提示される実施形態の例の下記の説明を読み、以下の図面を観察することでよりよく理解されることになる。