特許第6321313号(P6321313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6321313
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】カム装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/08 20060101AFI20180423BHJP
   B21D 37/04 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B21D37/08
   B21D37/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-531(P2018-531)
(22)【出願日】2018年1月5日
【審査請求日】2018年2月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175582
【氏名又は名称】三協オイルレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100126147
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 成年
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博志
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−540249(JP,A)
【文献】 特許第5243039(JP,B2)
【文献】 特開2012−071313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/08
B21D 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型と第2の金型のいずれかがプレス方向に駆動してワークをプレス加工する金型に取り付けられ、前記第1の金型に取り付けられるカムホルダと、前記ワークを加工する加工工具が設置可能であり、前記カムホルダに対して所定の往復動作方向に摺動可能に取り付けられたカムスライダと、前記第2の金型に取り付けられ、前記カムスライダを前記加工方向に駆動するカムドライバと、を有するカム装置であって、
前記カムスライダは、
前記往復動作方向に所定の間隔で配置された複数のスライダ部を有し、
前記カムホルダは、
前記往復動作方向に伸長し、前記往復動作方向にガイド可能に前記複数のスライダ部を収容した溝部と、
前記複数のスライダと当接して前記複数のスライダを前記溝部内に保持する保持部と、
所定位置に、前記複数のスライダの少なくとも1つが前記往復動作方向と垂直な方向に通過可能な、少なくとも1つの通過孔部と、を有するカム装置。
【請求項2】
前記通過孔部は、前記溝部の前記往復動作方向のほぼ中間に備わることを特徴とする請求項1に記載のカム装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記溝部の両側に取り付けられた複数のプレートであり、
前記通過孔部は、前記溝部の両側に取り付けられた複数のプレートの切欠きの組み合わせにより形成された、ことを特徴とする請求項1または2に記載のカム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解・組立作業を容易とすることが可能なカム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディ等の大型金属製板は、下側の固定金型と上側の移動金型とによりプレス成型される。このプレス成型と同時に、プレス成型品の側面に孔を穿設したり縁部を屈曲させたりするために、金型内に設置可能なカム装置が用いられる。
【0003】
カム装置は、例えば、上型に取り付けられるカムホルダと、ワークを加工する加工工具が設置可能であり、カムホルダに摺動可能に取り付けられたカムスライダと、下型に取り付けられ、カムスライダを加工方向に駆動するカムドライバとを有する。
【0004】
裏表が摺動面のアッパープレートを使うカム構造では、カムの分解、組付けはカムホルダの後方からのカムスライダの抜き差しになる。しかしながら、カムホルダの長いものは後方のスペースが大きく必要になり作業性が悪く、金型上のカム装置のレイアウトに制約が生じる場合がある。また、カムスライダを浮かした状態から差し込むため作業性に難がある。
【0005】
特許文献1には、中間部及び一端にTヘッドが挿入可能な開口を有するT字型チャネルを有するカムユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5243039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のカムユニットでは、カムドライバとカムスライドとの係合構造を示し、カムホルダとカムスライダとの係合構造を示すものではない。また、特許文献1のT字ヘッドとT溝構造は、強制カム戻しのための構造であり、カムスライダの抜き差しを容易にするための構造ではない。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、分解・組立作業を容易とすることが可能なカム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の金型と第2の金型のいずれかがプレス方向に駆動してワークをプレス加工する金型に取り付けられ、第1の金型に取り付けられるカムホルダと、ワークを加工する加工工具が設置可能であり、カムホルダに対して所定の往復動作方向に摺動可能に取り付けられたカムスライダと、第2の金型に取り付けられ、カムスライダを加工方向に駆動するカムドライバと、を有するカム装置であって、カムスライダは、往復動作方向に所定の間隔で配置された複数のスライダ部を有し、カムホルダは、往復動作方向に伸長し、往復動作方向にガイド可能に複数のスライダ部を収容した溝部と、複数のスライダと当接して複数のスライダを溝部内に保持する保持部と、所定位置に、複数のスライダの少なくとも1つが往復動作方向と垂直な方向に通過可能な、少なくとも1つの通過孔部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカム装置によれば、分解・組立作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のカム装置を示す斜視図である。
図2】実施形態のカムホルダを示す図である。
図3】実施形態のカムスライダを示す図である。
図4図1のA−A断面図である。
図5図4のB−B一部断面図である。
図6】分解・組立時のカムスライダとカムホルダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態であるカム装置について、図を参照して詳細に説明をする。なお、実施形態では吊りカム装置について記載するが、カム装置の形式はこれに限られず、例えば、下置きカム装置でもよい。
【0013】
図1は、実施形態のカム装置1を示す図である。なお、図1、4、5は、組立が完了し、金型への設置時のカム装置を示す。
【0014】
図1に示すように、実施形態のカム装置1は、移動金型(上型、不図示)に固定されたカムホルダ100と、カムホルダ100に摺動可能に支持され、弾性部材208で戻り方向に付勢されて、所定のストロークで往復動作方向に往復動作(図中の矢印B)し、加工方向の側面に加工工具(不図示)が取り付くカムスライダ200と、固定金型(下型、不図示)に固定され、カムスライダ200を所定の往復動作方向(図中の矢印B)に駆動するためのカムドライバ300と、で構成される。
【0015】
図2は、実施形態のカムホルダを示す図である。カムホルダ100は、カムスライダ200の往復動作方向に伸長する略凹型断面の溝101bを有する。溝101bの上面101aには、溝101bの両側から溝を一部塞ぎ、カムスライダ200の往復動作可能な隙間があるように、アッパープレート102〜104が取り付けられる。アッパープレート102と103の隙間、及び、アッパープレート104と105の隙間の間隔は、後述する突起部203、204が通過可能な間隔である。
【0016】
アッパープレート102は、L字状の切欠き102aを有し、アッパープレート103は、L字状の切欠き103aを有し、アッパープレート104は、L字状の切欠き104aを有し、アッパープレート105は、L字状の切欠き105aを有する。これらL字状切欠き102a〜104aが、四隅となるように配置されることにより、矩形の通過孔107となる。ここで、通過孔107のカムスライダ200の往復動作方向の長さをl1とし、幅をw1とする。
【0017】
実施形態では、アッパープレート102〜104は両面が摺動面となる。
【0018】
ストッパ106は溝101bの一端に備わる。その他のカムホルダ100の構成については従来と同等であるため説明を省略する。
【0019】
図3は、実施形態のカムスライダを示す図である。カムスライダ200は、カムホルダ100のアッパープレート102〜104との摺動面となる摺動面207を有する。摺動面207のカムスライダ200の往復動作方向のほぼ両端に略直方体の突起部203、204を有する。突起部203、204は摺動面207に幅方向中心に備わる。突起部203上には、略直方体で、突起部203の幅より大きい幅のロアスライダ201が備わる。突起部204上には、突起部204の幅より大きい幅の略直方体のロアスライダ202が備わる。
【0020】
なお、実施形態では突起部203及び突起部204を同一形状としたが、異なる形状としてもよい
【0021】
実施形態では、略直方体のロアスライダ201、202のカムスライダ200の往復動作方向の長さはl2であり、幅はw2である。実施形態では、通過孔107の長さl1は、ロアスライダ201、202の長さl2より大きく、通過孔107の幅w1は、ロアスライダ201、202の幅w2より大きい。これらの寸法関係により、ロアスライダ201は通過孔107を、図6のC方向に通過可能となる。また、実施形態では、ロアスライダ201、202の幅w2は、溝101bによりカムスライダ200の往復動作方向にガイド可能に嵌合する幅である。
【0022】
なお、実施形態ではロアスライダ201及びロアスライダ202を同一形状としたが、異なる形状としてもよい。
【0023】
摺動部205や工具取付部206等の他のカムスライダ200の構成については従来と同等であるため説明を省略する。
【0024】
図4は、図1のA−A断面図である。図4は、カム装置1の図1中のY方向の中心位置で図中のX方向に切断した断面図である。図5は、図4のB−B一部断面図である。
【0025】
図4、5からわかるように、ロアスライダ201の下面201aは、アッパープレート102の上面102cとアッパープレート103の上面103cに当接する。これにより、ロアスライダ201の下方向の移動は規制される。
【0026】
ロアスライダ201の両側面は、溝101bと摺動可能に嵌合する。これによりロアスライダ201の横方向の移動は規制される。ロアスライダ202の下方向の規制及び横方向の規制は、ロアスライダ201と同様である。このように、ロアスライダ201、202が規制されることにより、カムスライダ200は、カムホルダ100に対して一定の摺動方向に往復動作可能となり、これがカムスライダ200の往復動作方向となる。
【0027】
図6は、カム装置の分解・組立位置のカムスライダとカムホルダを示す図である。
【0028】
従来は、カムホルダ100からカムスライダ200を抜くためには、ストッパ106を取り外した後、図中のl2の長さだけ、カムスライダ200を動かす必要があり、その分、スペースが必要であった(図中のD)。一方、実施形態のカム装置では、ロアスライダ201が通過孔107から図中のC方向に抜けるため、図中のl1だけ動かせば、分解、組立が可能となる。このため、カムホルダ100の後方スペースをl2−l1だけ小さく出来る。
【0029】
さらに、カムスライダ200は重量物であるが、実施形態では、ロアスライダを前後に分割しているため、分解、組立時に、カムスライダ200が重心付近で常にアッパープレート104、105に載った状態で差し抜き出来るため作業性が向上する。
【0030】
なお、実施形態では、ロアスライダが2つの例について説明したが、これに限られず、カムホルダがさらに長くなり、ロアスライダが3以上となった場合にも適用できる。その場合、通過孔の数は、ロアスライダの数より1つ少ない、もしくは、ロアスライダの数と同数とすればよい。また、この場合の通過孔のピッチは、ロアスライダと同ピッチにすればよい。
【0031】
以上説明したように、実施形態のカム装置によれば分解・組立作業が容易となる。
【符号の説明】
【0032】
100:カムホルダ
101b:溝
102〜104:アッパープレート
107:通過孔
200:カムスライダ
201、202:ロアスライダ
203、204:突起部
300:カムドライバ
【要約】
【課題】 組立・分解作業が容易なカム装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、第1の金型と第2の金型のいずれかがプレス方向に駆動してワークをプレス加工する金型に取り付けられ、第1の金型に取り付けられるカムホルダと、ワークを加工する加工工具が設置可能であり、カムホルダに対して所定の往復動作方向に摺動可能に取り付けられたカムスライダと、第2の金型に取り付けられ、カムスライダを加工方向に駆動するカムドライバと、を有するカム装置であって、カムスライダは、往復動作方向に所定の間隔で配置された複数のスライダ部を有し、カムホルダは、往復動作方向に伸長し、往復動作方向にガイド可能に複数のスライダ部を収容した溝部と、複数のスライダと当接して複数のスライダを溝部内に保持する保持部と、所定位置に、複数のスライダの少なくとも1つが摺動方向と垂直な方向に通過可能な、少なくとも1つの通過孔部とを有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6