特許第6321314号(P6321314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321314光安定性を向上したシロドシン含有着色錠剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321314
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】光安定性を向上したシロドシン含有着色錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20180423BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20180423BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20180423BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20180423BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20180423BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   A61K31/404
   A61K9/20
   A61K47/02
   A61K9/28
   A61P13/08
   A61P13/02
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-921(P2018-921)
(22)【出願日】2018年1月9日
(62)【分割の表示】特願2016-41968(P2016-41968)の分割
【原出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2018-70659(P2018-70659A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年1月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-92260(P2015-92260)
(32)【優先日】2015年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-110072(P2015-110072)
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593030071
【氏名又は名称】大原薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153394
【弁理士】
【氏名又は名称】謝 卓峰
(74)【代理人】
【識別番号】100116311
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 忠行
(72)【発明者】
【氏名】五丁森 一博
(72)【発明者】
【氏名】東郷 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 俊哉
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/157137(WO,A1)
【文献】 特開2008−044960(JP,A)
【文献】 特開2008−273870(JP,A)
【文献】 特開2010−229075(JP,A)
【文献】 特許第4648491(JP,B2)
【文献】 特開2014−114280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/404
A61K 9/20
A61K 9/28
A61K 47/02
A61P 13/02
A61P 13/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロドシン及び遮光剤を含有する口腔内崩壊錠であって、該遮光剤が黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号より選ばれる口腔内崩壊錠。
【請求項2】
遮光剤が黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄より選ばれる、請求項1に記載の口腔内崩壊錠
【請求項3】
遮光剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.001〜10.0重量%である、請求項1〜2のいずれかに記載の口腔内崩壊錠
【請求項4】
遮光剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.01〜1.0重量%である、請求項1〜のいずれかに記載の口腔内崩壊錠
【請求項5】
遮光剤とシロドシンを含む造粒物を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の口腔内崩壊錠
【請求項6】
シロドシンの含有量が錠剤全重量に対して、0.5〜10.0重量%である、請求項1〜のいずれかに記載の口腔内崩壊錠
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の口腔内崩壊錠が、フィルムコーティング層で覆われた口腔内崩壊錠
【請求項8】
遮光剤とシロドシンを含む造粒物を賦形剤及び滑沢剤と混合して打錠する工程を含む、請求項1〜のいずれかに記載の口腔内崩壊錠を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原薬として1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−({2−[2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]インドリン−7−カルボキサミド、すなわちシロドシン(日本医薬品一般名称)を含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シロドシンは、下部尿路組織である前立腺、尿道、膀胱三角部のα1A受容体サブタイプに選択的に結合し、尿道内圧の上昇を抑制する作用機構をもち、前立腺肥大に伴う排尿障害の治療薬に用いられる化合物(原薬)である(非特許文献1参照)。シロドシンと薬理学的に関連するα遮断薬としては、プラゾシン塩酸塩、テラゾシン塩酸塩水和物、ウラジピルなどが挙げられる。
【0003】
シロドシンは錠剤に含有された形態で医療現場に上記の治療薬として提供されている。シロドシンを含有する錠剤に関しては、シロドシンが光に対する安定性が不十分であり、分解物(類縁体)を生じやすいことが特許文献1で報告されている。そのため、シロドシンを含有する錠剤については今までに、その安定性を改善する錠剤の製造方法が、幾つかの先行技術文献で報告されてきた。特許文献1では、シロドシンを含有する錠剤が酸化チタンを含有するフィルムコーティング層で覆われた技術が報告され、その技術によって光に対する安定性が向上している。また、特許文献2では、光及び温度に対する保存条件下での安定性の向上を目的とした、シロドシンを含有する錠剤に塩基性コポリマーを含有させる技術が報告されている。
【0004】
近年では嚥下困難な患者が錠剤を服用する負担を軽減させる目的で、口腔内で容易に崩壊する錠剤(口腔内崩壊錠)の開発が各種の原薬を含む錠剤において盛んに行われるようになった。口腔内崩壊錠は普通錠とは異なる技術的構成要素を含むが、先行技術文献ではシロドシンの口腔内崩壊錠を作成するための処方及び製造方法などの技術的情報や、その光に対する安定性を向上させるための技術的情報が十分に開示されていない。本発明者はシロドシンの口腔内崩壊錠の光安定性を向上させることを目的として、シロドシンを含有する口腔内崩壊錠の処方及び製造方法に関する検討を開始した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4805234号公報
【特許文献2】特表2013−532651号公報
【特許文献2】特開2015−17134号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】医薬品インタビューフォーム「ユリーフ(登録商標)錠2mg、ユリーフ(登録商標)錠4mg」、2013年11月(改訂第4版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な課題は、シロドシンを含有する錠剤(特に口腔内崩壊錠)について、シロドシンの光に対する化学的な安定性を向上させ、原薬由来の分解産物(類縁体)の発生量を抑制することや、光による錠剤表面の色調変化を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、シロドシンを含有する口腔内崩壊錠の安定性を改善するため、その処方や製造方法に関して鋭意検討を重ねた。その結果、特定の遮光剤によって特定の色で着色されたシロドシン含有口腔内崩壊錠は、シロドシンの光に対する安定性が向上し、原薬由来の類縁体の発生量が有意に抑えられることを発見した。その知見に基づき、本発明者はさらに鋭意検討を重ねて下記の発明を完成させた。また本発明の錠剤は、原薬の光に対する安定性に加え、光による錠剤表面の色調変化を防止できる効果を併せてもつ。
【0009】
本発明の錠剤の具体的な構成は、下記(1)〜(10)によって記述されているものである。
(1)淡黄色、黄色、淡赤色、赤色より選ばれる色で錠剤が着色された、シロドシン及び遮光剤を含有する素錠である錠剤。
(2)口腔内崩壊錠である、前記(1)に記載の錠剤。
(3)遮光剤が黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号より選ばれる、前記(1)又は(2)に記載の錠剤。
(4)遮光剤が黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄より選ばれる、前記(1)又は(2)に記載の錠剤。
(5)遮光剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.001〜10.0重量%である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の錠剤。
(6)遮光剤の含有量が錠剤全重量に対して、0.01〜1.0重量%である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の錠剤。
(7)遮光剤とシロドシンを含む造粒物を含有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の錠剤。
(8)シロドシンの含有量が錠剤全重量に対して、0.5〜10.0重量%である、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の錠剤。
(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の錠剤が、フィルムコーティング層で覆われた錠剤。
(10)遮光剤とシロドシンを含む造粒物を賦形剤及び滑沢剤と混合して打錠する工程を含む、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の錠剤を製造する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シロドシンを含有する口腔内崩壊錠について、シロドシンの光に対する化学的な安定性を向上させ、原薬由来の分解産物(類縁体)の発生量を抑制すると共に、さらには光による錠剤の色調変化を防止する効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1〜4の錠剤及び比較例1〜3の錠剤について、光を照射する試験を行った前後で、それぞれが含有する類縁体(デヒドロ体)の量(面積百分率)をHPLC法で測定した結果を示したものである。
図2図2は、実施例1〜4の錠剤及び比較例1〜3の錠剤について、光を照射する試験を行った前後で、それぞれが含有する各種の類縁体の総量(面積百分率)をHPLC法で測定した結果を示したものである。
図3図3は、実施例1〜4の錠剤及び比較例1〜3の錠剤について、光を照射する試験を行った前後でのそれぞれの色調変化(ΔE)を測定した結果を示したものである。
図4図4は、実施例5〜7の錠剤及び比較例4の錠剤について、光を照射する試験を行った前後で、それぞれが含有する類縁体(デヒドロ体)の量(面積百分率)をHPLC法で測定した結果を示したものである。
図5図5は、実施例5〜7の錠剤及び比較例4の錠剤について、光を照射する試験を行った前後で、それぞれが含有する各種の類縁体の総量(面積百分率)をHPLC法で測定した結果を示したものである。
図6図6は、実施例5〜7の錠剤及び比較例4の錠剤について、光を照射する試験を行った前後でのそれぞれの色調変化(ΔE)を測定した結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下で本発明のシロドシンを含有する錠剤の処方及び製造方法を詳細に説明する。但し以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。
【0013】
本発明において使用されるシロドシンの平均粒子径(光散乱法による測定値)は20.0μm以下のものが好ましく、より好ましくは5.0〜20.0μmである。必要に応じて適宜乾式又は湿式粉砕を行い、任意の粒子径に調整することも可能である。本発明の錠剤において、シロドシンは錠剤全重量に対して0.5〜10.0重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0重量%の範囲で含有される。シロドシンの結晶形はα、β、γ型、非晶質形態が挙げられるが、好ましくはγ型である。
【0014】
本発明のシロドシンを含有する錠剤を製造するために使用可能な添加物としては、通常使用されている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤等を挙げることができる。
【0015】
例えば賦形剤としては、乳糖、結晶セルロース、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト、マルチトール、白糖、ショ糖、ブドウ糖等を挙げる事ができ、好ましくはD-マンニトールである。賦形剤は、錠剤全重量に対して50〜95重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは70〜90重量%の範囲で含有される。
【0016】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレングリコール等を挙げる事ができる。結合剤は、錠剤全重量に対して0.5〜10.0重量%の範囲で含有されていることが好ましい。
【0017】
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、カンテン末、D−マンニトール、部分α化デンプン等を挙げる事ができ、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又は部分α化デンプンである。崩壊剤は、錠剤全重量に対して1.0〜40.0重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは8.0〜30.0重量%の範囲で含有される。
【0018】
滑沢剤としては、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、硬化油等を挙げる事ができ、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。滑沢剤は、錠剤全重量に対して0.1〜10.0重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0重量%の範囲で含有される。
【0019】
矯味剤としては、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン等を挙げる事ができ、好ましくはスクラロースである。矯味剤は、錠剤全重量に対して0.1〜5.0重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0重量%の範囲で含有される。
【0020】
本発明のシロドシンを含有する錠剤は、遮光剤をさらに含有する。遮光剤によって錠剤を特定の色に着色することが可能である。その特定の遮光剤としては、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等を挙げる事ができ、好ましくは食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄から選ばれ、より好ましくは黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄である。遮光剤は、錠剤全重量に対して0.001〜10.0重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは0.005〜5.0重量%の範囲で含有され、さらにより好ましくは0.01〜1.0重量%の範囲で含有され、最も好ましくは0.2〜1.0重量%の範囲で含有される。遮光剤はシロドシンと共に造粒の工程を経て、造粒物に含有されることが好ましい。
本発明のシロドシンを含有する錠剤は、遮光剤の錠剤中の含有量によっては必ずしも着色されている必要性はないが、淡黄色、黄色、淡赤色、赤色より選ばれる色で着色されていることが好ましく、より好ましくは黄色、赤色、淡黄色且つ淡赤色である色より選ばれる色で着色され、最も好ましくは黄色で着色される。
【0021】
本明細書中で記載される、本発明の錠剤に係る各色は、一般的にもよく用いられる表現方法である、L*a*b*(エルスター・エースター・ビースター)表色系(“徹底図解 色のしくみ”,新星出版社,2009年参考)を用いて以下に記載されるように定義づけられる。L*a*b*表色系においては、L*は0.0(黒)〜100.0(白)の範囲で明度を表し、a*は−60.0(緑方向)〜+60.0(赤方向)の範囲で、b*は−60.0(青方向)〜+60.0(黄方向)の範囲で色相と彩度を表す。
本発明に係る淡黄色とはb*の範囲が+8.0〜+20.0であり、本発明に係る黄色とはb*の範囲が+20.0より大きい範囲である。本発明においてより好ましい淡黄色の範囲は+12.0〜+20.0であり、より好ましい黄色の範囲は+20.0〜+50.0である。
本発明に係る淡赤色とはa*の範囲が+4.0〜+14.0であり、本発明に係る赤色とはa*の範囲が+14.0より大きい範囲である。本発明においてより好ましい淡赤色の範囲は+8.0〜+14.0であり、より好ましい赤色の範囲は+14.0〜+35.0である。
また、上記の各色に共通してL*の範囲は0.0〜100.0であるが、本発明において好ましくは50.0〜100.0であり、より好ましくは70.0〜100.0である。
尚、本段落の記載に従ってL*a*b*表色系によって定義される色が、黄色且つ、淡赤色若しくは赤色である色は、本明細書の他段落中では単に“黄色”としても扱われて表現される場合がある。赤色且つ、淡黄色である色は、本明細書の他段落中では単に“赤色”としても扱われて表現される場合がある。淡黄色且つ淡赤色である色は、本明細書の他段落中では単に“淡黄色”としても扱われて表現される場合がある。
【0022】
本発明のシロドシンを含有する錠剤は、素錠であることが好ましく、口腔内崩壊錠であることが更に好ましい。また、本発明の錠剤は、必要に応じてフィルムコーティング層で覆うことが可能である。その際のフィルムコーティング層に用いることが出来る添加剤として、好ましくはヒプロメロース、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができ、より好ましくはヒプロメロースである。
【0023】
本発明の錠剤の製造方法として具体的には、湿製法、セミ直打法、造粒物圧縮法が挙げられるが、好ましくは造粒物圧縮法であり、より好ましくは湿式造粒物圧縮法である造粒物圧縮法である。前記の製造方法の操作法に困難はなく、常法にしたがって容易に目的の錠剤を製造することができる。例えば湿式造粒物圧縮法では、原薬と添加剤の混合物を流動層造粒機中で結合剤を含有する液を添加して造粒した造粒物を打錠する、一般的な方法で行われる。尚、シロドシンを含有する錠剤は、原薬(シロドシン)の特性上の問題で直接打錠法(直打法)による製造は打錠障害が生じやすいために極めて困難であり、製造工程中に高温高湿条件にさらされうる工程(造粒工程など)を含む製造方法(湿製法、セミ直打法、造粒物圧縮法)によって製造される必要がある。
【実施例1】
【0024】
シロドシン(γ型)16.0g、D−マンニトール332.0g及び部分α化デンプン40.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース4.0g、黄色三二酸化鉄0.4gを精製水133.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、30メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品10.81gにD−マンニトール8.59g、スクラロース0.2g、タルク0.2g及びステアリン酸マグネシウム0.2gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.0mgの下記組成の淡黄色の口腔内崩壊錠(L*=95.2、a*=−0.4、b*=+15.4)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 83.0
部分α化デンプン 10.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
黄色三二酸化鉄 0.1
・外添加部
D−マンニトール 85.9
スクラロース 2.0
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【実施例2】
【0025】
シロドシン(γ型)16.0g、D−マンニトール332.0g及び部分α化デンプン40.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース4.0g、黄色三二酸化鉄4.0gを精製水133.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、30メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品10.9gにD−マンニトール8.5g、スクラロース0.2g、タルク0.2g及びステアリン酸マグネシウム0.2gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.0mgの下記組成の黄色の口腔内崩壊錠(L*=87.7、a*=+2.5、b*=+29.3)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 83.0
部分α化デンプン 10.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
黄色三二酸化鉄 1.0
・外添加部
D−マンニトール 85.0
スクラロース 2.0
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【実施例3】
【0026】
シロドシン(γ型)16.0g、D−マンニトール332.0g及び部分α化デンプン40.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース4.0g、三二酸化鉄0.4gを精製水133.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、30メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品10.81gにD−マンニトール8.59g、スクラロース0.2g、タルク0.2g及びステアリン酸マグネシウム0.2gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.0mgの下記組成の淡赤色の口腔内崩壊錠(L*=88.5、a*=+9.2、b*=+5.6)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 83.0
部分α化デンプン 10.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
三二酸化鉄 0.1
・外添加部
D−マンニトール 85.9
スクラロース 2.0
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【実施例4】
【0027】
シロドシン(γ型)16.0g、D−マンニトール332.0g及び部分α化デンプン40.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース4.0g、三二酸化鉄4.0gを精製水133.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、30メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品10.9gにD−マンニトール8.5g、スクラロース0.2g、タルク0.2g及びステアリン酸マグネシウム0.2gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.0mgの下記組成の淡黄・赤色の口腔内崩壊錠(L*=71.2、a*=+17.7、b*=+10.1)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 83.0
部分α化デンプン 10.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
三二酸化鉄 1.0
・外添加部
D−マンニトール 85.0
スクラロース 2.0
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【実施例5】
【0028】
シロドシン(γ型)8.0g、D−マンニトール324.0g及び部分α化デンプン40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース16.0g、黄色三二酸化鉄0.2g、三二酸化鉄0.2gを精製水304.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、24メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品196.2gにタルク2.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.2mgの下記組成の淡黄・淡赤色の錠剤(L*=84.7、a*=+9.2、b*=+11.2)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 164.0
部分α化デンプン 20.0
ヒドロキシプロピルセルロース 8.0
黄色三二酸化鉄 0.1
三二酸化鉄 0.1
・外添加部
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【実施例6】
【0029】
シロドシン(γ型)8.0g、D−マンニトール324.0g及び部分α化デンプン40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース16.0g、食用黄色4号0.4gを精製水304.0gに溶解した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、24メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品196.2gにタルク2.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.2mgの下記組成の黄色の錠剤(L*=93.4、a*=−4.2、b*=+44.4)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 164.0
部分α化デンプン 20.0
ヒドロキシプロピルセルロース 8.0
食用黄色4号 0.2
・外添加部
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【実施例7】
【0030】
シロドシン(γ型)8.0g、D−マンニトール324.0g及び部分α化デンプン40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース16.0g、食用黄色4号アルミニウムレーキ0.4gを精製水304.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、24メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品196.2gにタルク2.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.2mgの下記組成の黄色の錠剤(L*=94.4、a*=−2.2、b*=+20.5)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 164.0
部分α化デンプン 20.0
ヒドロキシプロピルセルロース 8.0
食用黄色4号アルミニウムレーキ 0.2
・外添加部
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【0031】
〔比較例1〕
シロドシン(γ型)16.0g、D−マンニトール332.0g及び部分α化デンプン40.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース4.0gを精製水133.0gに溶解した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、30メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品10.8gにD−マンニトール8.6g、スクラロース0.2g、タルク0.2g及びステアリン酸マグネシウム0.2gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.0mgの下記組成の白色の口腔内崩壊錠(L*=98.9、a*=+0.4、b*=+0.6)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 83.0
部分α化デンプン 10.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
・外添加部
D−マンニトール 86.0
スクラロース 2.0
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【0032】
〔比較例2〕
シロドシン(γ型)16.0g、D−マンニトール332.0g及び部分α化デンプン40.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース4.0g、酸化チタン0.4gを精製水133.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、30メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品10.81gにD−マンニトール8.59g、スクラロース0.2g、タルク0.2g及びステアリン酸マグネシウム0.2gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.0mgの下記組成の白色の口腔内崩壊錠(L*=98.9、a*=+0.4、b*=+0.5)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 83.0
部分α化デンプン 10.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
酸化チタン 0.1
・外添加部
D−マンニトール 85.9
スクラロース 2.0
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【0033】
〔比較例3〕
シロドシン(γ型)16.0g、D−マンニトール332.0g及び部分α化デンプン40.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース4.0g、酸化チタン4.0gを精製水133.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、30メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品10.9gにD−マンニトール8.5g、スクラロース0.2g、タルク0.2g及びステアリン酸マグネシウム0.2gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.0mgの下記組成の白色の口腔内崩壊錠(L*=98.7、a*=+0.4、b*=+0.7)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 83.0
部分α化デンプン 10.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
酸化チタン 1.0
・外添加部
D−マンニトール 85.0
スクラロース 2.0
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【0034】
〔比較例4〕
シロドシン(γ型)8.0g、D−マンニトール324.0g及び部分α化デンプン40.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース16.0g、タルク0.4gを精製水304.0gに溶解・懸濁した液を噴霧、造粒して、シロドシンを含有する造粒物を得た。得られた造粒物を乾燥し、24メッシュの篩にて篩過して整粒品を得た。得られた整粒品196.2gにタルク2.0g及びステアリン酸マグネシウム2.0gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を卓上型単発式打錠機を用いて直径8.0mmに圧縮成型し、1錠質量が200.2mgの下記組成の白色の錠剤(L*=97.9、a*=+0.8、b*=−0.1)を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
・造粒部
シロドシン(γ型) 4.0
D−マンニトール 164.0
部分α化デンプン 20.0
ヒドロキシプロピルセルロース 8.0
タルク 0.2
・外添加部
タルク 2.0
ステアリン酸マグネシウム 2.0
【0035】
〔試験例1〕光照射前後の類縁物質測定試験
実施例1〜7及び比較例1〜4で得た錠剤について、白熱光3000lxを400時間、合計120万lx・hr照射した前後又は白熱光3000lxを200時間、合計60万lx・hr照射した前後のシロドシンの類縁体の含量をそれぞれHPLC法(定量方法は面積百分率法を使用した)で測定し、それらの結果を図1、2、4、5に示した。図1、4では類縁体としてデヒドロ体の含有量を測定し、図2、5ではデヒドロ体を含む全ての類縁体の含有量を測定している。
〔試験例2〕光照射前後の色差測定
実施例1〜7及び比較例1〜4で得た錠剤について、白熱光3000lxを400時間、合計120万lx・hr照射した前後又は白熱光3000lxを200時間、合計60万lx・hr照射した前後の、各錠剤の明度(L*)、色相と彩度を示す色度(a*およびb*)について分光色差計(日本電色工業社製:SE6000型)を用いて測定した。これらの結果から、光照射前後の色差(ΔE)を算出して図3、6に示した。色差は色度値としてCIELab1976に規定されるL*a*b*を用い、ΔEについて下記の式にて算出した。ΔE={(ΔL*)^2+(Δa*)^2(Δb*)^2}^1/2(日本電色工業株式会社、Spectrophotometer SE6000型、取扱説明書より)。
【0036】
図1、2、4、5に共通して、本発明に係る実施例1〜7の錠剤では光照射後のシロドシン由来の類縁体の増加量が有意に低いのに対し、比較例1〜4の錠剤では製造直後のシロドシンの類縁体の増加量が有意に大きいことが判る。すなわち、本発明により得られる錠剤は、光に対するシロドシンの化学的な安定性が極めて優れていることが判った。
さらに図3、6より、発明に係る実施例1〜7の錠剤では光照射前後の色差が有意に低いのに対し、比較例1〜4の錠剤では光照射前後の色差が有意に大きいことが判る。すなわち、本発明により得られる錠剤は、光による錠剤の色調変化を防止する効果が極めて優れていることが併せて判った。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、保存条件下でのシロドシンの光に対する化学的な安定性を向上させ、分解産物(類縁体)の発生量を抑制すると共に、さらには光による錠剤の色調変化を防止する効果をもった、シロドシンを含有する口腔内崩壊錠を医療現場に提供することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6