(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321339
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】しゃ断機用ウェイト装置、及び、しゃ断機
(51)【国際特許分類】
B61L 29/04 20060101AFI20180423BHJP
E01F 13/06 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
B61L29/04 A
E01F13/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-165812(P2013-165812)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33917(P2015-33917A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130476
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 昭穂
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】福田 翔
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 成孝
(72)【発明者】
【氏名】小栗 彰夫
【審査官】
田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−111794(JP,A)
【文献】
実開平03−032565(JP,U)
【文献】
特開2012−006553(JP,A)
【文献】
特開平10−307092(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3063968(JP,U)
【文献】
特開昭47−042449(JP,A)
【文献】
実開平03−081178(JP,U)
【文献】
特開2001−151113(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0093509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00 − 99/00
E01F 1/00
E01F 13/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェイトと、外面に溝部を有するウェイトレバーと、前記ウェイトを前記ウェイトレバーに取り付けるジョイントとを備えるしゃ断機用ウェイト装置であって、
前記溝部は、前記ウェイトレバーの延びる方向に沿って設けられ、
前記ジョイントは、前記ウェイトレバーが挿通されるように構成され、前記ウェイトを取り付けて一体と成り、
前記ジョイントが前記ウェイトレバーの前記溝部に移動可能に取り付けられ、前記ウェイトの取り付け位置が調整される、しゃ断機用ウェイト装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたしゃ断機用ウェイト装置であって、
前記溝部は、ねじ溝である、しゃ断機用ウェイト装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたしゃ断機用ウェイト装置であって、さらに、前記ウェイトレバーは、切欠き部を有し、
前記切欠き部は、前記ウェイトレバーの断面を非円形形状とする、しゃ断機用ウェイト装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたしゃ断機用ウェイト装置であって、さらに回動規制板を含み、
前記回動規制板は、基板部と、開口部とを有し、
前記開口部は、前記切欠き部に沿った非円形形状を有し、前記基板部を貫通しており、
前記回動規制板は、前記ジョイントにおいて、挿通孔と重なる位置に取り付けられ、
前記開口部に前記ウェイトレバーが挿通された状態で、前記開口部と、前記切欠き部とが係合することにより、前記ジョイントの回動を規制する、しゃ断機用ウェイト装置。
【請求項5】
しゃ断かんと、ウェイト装置とを含むしゃ断機であって、
前記ウェイト装置は、請求項1乃至4の何れかに記載されたものでなり、
前記ウェイトレバーは、前記しゃ断かんの延長方向とは反対方向に取り付けられる、しゃ断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しゃ断機用ウェイト装置に関し、具体的には、鉄道用電気踏切しゃ断機、及び、駐車場や有料道路の料金徴収所などのゲート用しゃ断機に用いられるウェイト装置、及び、しゃ断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道用電気踏切しゃ断機、及び、駐車場や有料道路の料金徴収所などのゲート用しゃ断機には、しゃ断かんをゆっくりと自重降下させるためのウェイト装置が備えられている。一例として、特許文献1に記載されているウェイト装置は、バランスウェイトと、ウェイトレバーとを含み、ウェイトレバーは、しゃ断かんの延長方向と反対方向に延長されており、バランスウェイトは、ウェイトレバーに支持されている。
【0003】
ところで、この種のしゃ断かんは、しゃ断機の設置目的や設置条件等に応じて、その材質や太さ、長さ、さらには具体的構造や設置数などが決定されるものである。すなわち、しゃ断機において、しゃ断かん側の重量は一定ではないから、これと釣り合うためのウェイト装置側の重量も調整しうることが求められる。
【0004】
上述した要請に応える従来技術として、例えば特許文献2が知られている。特許文献2のウェイト装置を構成するウェイトレバーは、板状であって、その延長方向に沿って一定のピッチ間隔で開設された複数の螺子穴を有しており、この螺子穴の一つにバランスウェイトがねじ止めされる構造となっている。
【0005】
確かに、特許文献2に開示されているウェイト装置によると、バランスウェイトのねじ止め位置をウェイトレバーの延長方向に沿って適宜調節することで、てこの原理により、ウェイト装置側の重量を、一定の範囲で調整することができる。
【0006】
しかし、既に述べたように、しゃ断かん側の重量は一定ではなく、様々に変化するから、特許文献2に開示されている重量調整機構には限界がある。例えば、特許文献2において、バランスウェイトの取り付け位置は、複数の螺子穴の開設位置からしか選択できないから、バランスウェイトの最適な取り付け位置が、隣接する螺子穴のピッチ間隔内に見出された場合、その位置にバランスウェイトを取り付けることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−314130号公報
【特許文献2】特許3919518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ウェイトの取り付け位置を無段階に調整することができるしゃ断機用ウェイト装置、及び、しゃ断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明に係るしゃ断機用ウェイト装置は、ウェイトレバーと、ウェイトとを含み、ウェイトは、ウェイトレバーの外面において、移動可能に取り付けられる。
【0010】
上述した構成は、従来のしゃ断機用ウェイト装置でも見られるところである。ところが、既に説明したように、しゃ断機のしゃ断かん側の重量は、しゃ断機の設置目的や設置条件等に応じて異なるところ、従来のしゃ断機用ウェイト装置のように、ウェイトレバーに複数の螺子穴を開設し、この螺子穴の一つにバランスウェイトをねじ止めする構成では、バランスウェイトのねじ止め位置は、複数の螺子穴の開設位置からしか選択できないから、バランスウェイトの最適な取り付け位置が、隣接する螺子穴のピッチ間隔内に見出された場合、その位置にバランスウェイトを取り付けることはできないという問題が生じる。このような問題を回避するには、バランスウェイトの掛け止め位置は、無段階で設定できることが求められる。
【0011】
そこで、本発明を構成するしゃ断機用ウェイト装置は、上述した要請に応えるための構成として、バランスウェイトの掛け止め構造に工夫を加えた点に特徴の一つがある。具体的に、ウェイトと、外面に溝部を有するウェイトレバーと、ウェイトをウェイトレバーに取り付けるジョイントとを備えるしゃ断機用ウェイト装置であって、溝部は、ウェイトレバーの延びる方向に沿って設けられ、ジョイントは、ウェイトレバーが挿通されるように構成され、ウェイトを取り付けて一体と成り、ジョイントがウェイトレバー
の溝部に移動可能に取り付けられ、ウェイトの取り付け位置
が調整
される。従って、本発明の構成によると、ウェイトの取り付け位置を、溝部の延長範囲内で無段階に調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、ウェイトの取り付け位置を無段階に調整することができるしゃ断機用ウェイト装置、及び、しゃ断機を提供することができる。
【0013】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るしゃ断機用ウェイト装置の斜視図である。
【
図4】
図1に示したウェイト装置の左側面図である。
【
図5】
図1に示したウェイト装置の分解構造図である。
【
図6】
図1に示したウェイト装置の一部を省略した拡大正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るしゃ断機について一部を省略した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至7において同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。また、
図1乃至7の説明において、しゃ断かんの延長方向、ウェイトレバーの軸方向、及び、ウェイトの凹溝の延びる方向はそれぞれ一致するから、全て符号aに統一して示す。
【0016】
図1乃至
図6のしゃ断機用ウェイト装置1は、鉄道用電気踏切しゃ断機、及び、駐車場や有料道路の料金徴収所などのゲート用しゃ断機において、しゃ断かんの延長方向と反対方向に取り付けられることにより、いわゆるバランスウェイト(又は、カウンターウェイト)として機能するものであって、ウェイトレバー2と、ウェイト3と、ジョイント4と、固定具5とを含む。
【0017】
ウェイトレバー2は、軸部20と、溝部21と、切欠き部22(
図3参照)とを有する。軸部20は、しゃ断かんの延長方向とは反対方向(軸方向a)に延びる。
図1の軸部20は、素材的強度の観点から、金属材料を主成分とする断面円形形状の中実棒状体であって、軸方向aでみて、一端側が自由端(挿入端)であり、一端とは反対側の他端がしゃ断かんとの結合端となっている。この種のウェイトレバーにおいて、しゃ断かんとの結合端の構造は周知であるから、詳細は省略する。
【0018】
溝部21は、軸部20の外周面において、軸方向aに沿って延びている。
図1の溝部21は、いわゆるねじ溝であって、軸部20の外周面を周回しながら、軸方向aに沿って所定のピッチで螺旋状に延びている。
【0019】
切欠き部22は、軸部20の延長方向aに沿って延びており、軸部20の断面を非円形形状とする。
図3の切欠き部22は、軸方向aでみて軸部20の一端から他端まで形成されている。切欠き部22は、その切欠き面が平坦面であり、切欠き部22でみた軸部20の断面形状が非円形形状、具体的には半円形形状、又は、截頭円形形状となっている。切欠き部22の切欠き面を平坦面としたのは、加工効率を考慮したものであり、切欠き面は、必ずしも平坦面である必要はない。例えば、切欠き部22は、一点鎖線で示す軸部20の円周上、又は、円周内に頂点を有する角形形状であってもよいし、軸部20の曲率より小さい曲率の曲面であってもよい。
【0020】
再び
図1乃至
図6を参照して説明する。ウェイト3は、軸部20において、溝部21に沿って移動可能に取り付けられる。
図1乃至
図6のウェイト3は、ジョイント4を介してウェイトレバー2に取り付けられる。次に、ウェイト3、及び、ジョイント4について説明する。まず、ウェイト3は、3つのウェイトパーツ31〜33で構成される組立体である。以下、説明の都合上、ウェイトパーツ31を例に説明するが、ウェイトパーツ31〜33のそれぞれは、基本的に同一の構造を有するものである。
【0021】
ウェイトパーツ31は、ブロック状、又は、厚板状であって、第1凹溝34、第2凹溝35、第1貫通孔36、第2貫通孔37を有している。第1凹溝34は、高さ方向hでみた一面38の下側において、高さ方向hに交差する方向aに沿って延びるている。第1凹溝34は、一面38でみた開口部分の幅が狭く、溝の底面側が拡張されたくびれ構造を有する。他方、第2凹溝35は、高さ方向hでみた一面38の上側において、第1凹溝34と平行して延びるている。第2凹溝35は、一面38でみた開口部分の幅と、溝の底面側でみた幅が同程度である。
【0022】
第1貫通孔36は、ウェイトパーツ31を厚み方向に貫通しており、第1凹溝34の底面に開口している。第2貫通孔37は、ウェイトパーツ31を厚み方向に貫通しており、第2凹溝35の底面に開口している。
【0023】
ジョイント4は、本体部40と、レバー挿通孔41と、ウェイト取付部42、43とを有する。ジョイント4を構成する本体部40は、素材的強度の観点から、金属材料を主成分とするものであり、レバー挿通孔41が本体部40を貫通することにより、筒状体となっている。
【0024】
本体部40は、レバー挿通孔41に、ウェイトレバー2が挿通されることにより、軸部20の上に取り付けられる。
図5からは必ずしも明らかではないが、レバー挿通孔41を画定する本体部40の内面は、平坦であり、溝部21と螺着するための構造(いわゆる螺子山)は有していない。すなわち、本体部40は、レバー挿通孔41にウェイトレバー2が挿通された状態で、軸部20上を軸方向aに沿ってスライド移動することができるととに、軸部20の回りを周方向に沿って回動することができる。
【0025】
ウェイト取付部42、43は、本体部40の外面において、軸方向aに交差する幅方向wの両側部に左右対称に配置され、軸方向aに沿って延びる凹凸嵌合構造を有している。ウェイト取付部42、43の凹凸嵌合構造は、断面でみて突出部分の基部側(又は本体部40の側)が狭く、先端側が拡張された膨出構造を有している。なお、本体部40と、ウェイト取付部42、43とは、周知の鋳造技術により一体的に成型することができる。
【0026】
次に、ウェイト3と、ジョイント4と結合構造について説明する。ウェイトパーツ31、32のそれぞれは、第1凹溝34の延びる方向aでみた端面から、ウェイト取付部42、43のそれぞれが案内され、凹凸嵌合されることにより、ジョイント4に取り付けられ、さらに取り付けられた状態で第1貫通孔36にボルトなどの固定具5が挿通され、固定具5の先端が本体部40に螺着することにより、一体的に固定される。違う言葉で表現すれは、2つ1対のウェイトパーツ31、32は、第1凹溝34が形成された一面38を相対向する関係で配置し、その相対向面間にジョイント4を案内して、ウェイト取付部42、43を第1凹溝34に凹凸嵌合させることにより、ジョイント4を介して一体化される。ウェイト3とジョイント4との結合は、レバー挿通孔41にウェイトレバー2を挿通する前に行ってもよいし、レバー挿通孔41にウェイトレバー2を挿通した後に行ってもよい。
【0027】
ウェイトパーツ33は、いわば重さ調整用の補助的なウェイトパーツであって、ウェイトパーツ33の第1貫通孔36と、ウェイトパーツ31の第1貫通孔36とは、開設数、及び、開設位置などが一致する。この構造により、ウェイトパーツ31の取り付け時に、固定具5を、ウェイトパーツ33の第1貫通孔36と、ウェイトパーツ31の第1貫通孔36とに連通させることにより、ウェイトパーツ31、33が、一体的にジョイント4に取り付けられ、固定される。
【0028】
他方、既に説明したように、レバー挿通孔41の内面には螺子山が設けられていないから、このままの状態では、ジョイント4が軸方向aに沿って自由にスライド移動してしまうとともに、軸部20の周方向に沿って自由に回動してしまう。そこで、
図1乃至
図6のウェイト装置1は、ジョイント4を軸部20の所定の位置に、安定した姿勢でとどめるための構成要素として、回動規制板6と、掛止具7とを有する。
【0029】
回動規制板6は、基板部60と、開口部61とを有する。開口部61は、切欠き部22でみた軸部20の断面形状に沿った非円形形状の開口形状を有し、基板部60を貫通している。回動規制板6は、軸方向aでみた本体部40の端面において、レバー挿通孔41と重なる位置に取り付けられ、開口部61と、レバー挿通孔41とにウェイトレバー2が挿通された状態で、開口部61と、切欠き部22とが噛み合うことにより、ウェイトレバー2に対するジョイント4の回動を規制する。
図1乃至
図6の回動規制板6は、ジョイント4と、掛止具7(及び緩衝用の座金8)との間に配置されている。
【0030】
掛止具7は、いわばウェイトレバー2をボルトとするナットであって、一対の掛止具7,7が、軸部20の軸方向aでみて、ジョイント4の前後に配置されることにより、ジョイント4に対して相対向する方向から挟持力を加える。違う言葉で表現すれば、一対の掛止具7,7は、軸部20において互いに間隔を隔てて取り付けられ、間隔内にジョイント4部が配置されたとき、ジョイント4の移動を規制する。
【0031】
図1乃至
図6のウェイト装置1の特徴の一つは、ウェイトレバー2を構成する軸部20に、いわばウェイト位置の無段階調整領域を有する点にある。ウェイト位置調整領域は、軸部20の外周面において、軸部20の延長方向aに沿って螺旋状に周回する溝部21が形成された領域であって、且つ、切欠き部22が形成されている領域である。この構成によると、ウェイト装置1は、ウェイト3がジョイント4に取り付けられた状態で、回転規制板6により、周方向への不正回転が規制され、軸部20上での設置姿勢が安定化するとともに、一対の掛止具7,7により、軸方向aへの不正スライド移動が規制される。
【0032】
他方、ウェイト3の位置を調節する場合には、一対の掛止具7,7を回転させて、軸部20上を軸方向aに沿って移動させる。その結果、ジョイント4が一対の掛止具7,7の移動に追従して移動することにより、ジョイント4、及び、ジョイント4に取り付けられたウェイト3が、ねじ溝を構成する溝部21のピッチに沿って移動可能となる。
【0033】
図7は、本発明の実施形態に係るしゃ断機について一部を省略した正面図である。しゃ断機は、しゃ断かん9と、ウェイト装置1とを含む。ウェイトレバー2は、接続端が,しゃ断かん9の延長方向aとは反対方向の取り付け面に着脱可能に取り付けられる。
【0034】
ところで、既に説明したところではあるが、従来、鉄道用電気踏切しゃ断機、及び、駐車場や有料道路の料金徴収所のゲート用しゃ断機などには、しゃ断かんをゆっくりと自重降下させるためのウェイト装置が備えられている。従来、この種のウェイト装置を構成するウェイトレバーは、板状であって、その延長方向に沿って一定のピッチ間隔で開設された複数の螺子穴を有しており、この螺子穴の一つにバランスウェイトがねじ止めされる構造となっている。
【0035】
確かに、従来のウェイト装置によっても、バランスウェイトのねじ止め位置をウェイトレバーの延長方向に沿って適宜調節することで、てこの原理により、ウェイト装置側の重量を、一定の範囲で調整することができる。
【0036】
しかし、しゃ断かん9は、しゃ断機の設置目的や具体的な設置条件等に応じて、その材質や太さ、長さ、設置数、さらには直腕構造や屈折構造などが決定される。その結果、しゃ断かん側の重量は、必ずしも一定ではなく、様々に変化するから、これと釣り合うためのウェイト装置側の重量増減も自在に調整しうることが求められる。
【0037】
これに対し、従来、ウェイトレバーに複数の螺子穴を開設し、この螺子穴の一つにバランスウェイトがねじ止めされる構成では、バランスウェイトの取り付け位置は、複数の螺子穴の開設位置からしか選択できないから、バランスウェイトの最適な取り付け位置が、隣接する螺子穴のピッチ間隔内に見出された場合、その位置にバランスウェイトを取り付けることはできないという問題が生じる。このような問題を回避するには、バランスウェイトの掛け止め位置は、無段階で設定できることが求められる。
【0038】
図1乃至
図7のしゃ断機用ウェイト装置1は、上述した要請に応えるための構成として、ウェイト3の掛け止め構造に工夫を加えた点に特徴の一つがある。具体的に、ウェイトレバー2は、溝部21を有し、溝部21は、軸部20の外周面において、軸部20の延長方向aに沿って延びており、ウェイト3は、軸部20において、溝部21に沿って移動可能に取り付けられる。この構成によると、ウェイト3の掛け止め位置は、軸部20の延長方向aに沿って延びる溝部21の延長範囲内で無段階で設定することが可能となる。従って、ウェイト3の取り付け位置を無段階に調整することができるしゃ断機用ウェイト装置1、及び、これを用いたしゃ断機を提供することができる。
【0039】
また、ジョイント4のレバー挿通孔41の内面には螺子山が設けられていないから、ジョイント4が軸部20の延長方向aに沿ってスライド移動することができるとともに、軸部20の回りを周方向に沿って回動することができる。従って、ウェイト3の取り付け位置を無段階に調整することができるとともに、ウエイトレバー2に対するウェイト3の上下位置を自由に設定することができる。
【0040】
ここで、
図1のウェイト装置1は、ジョイント4を軸部20の所定の位置に、安定した姿勢でとどめるための構成要素として、回動規制板6と、掛止具7とを有する。回動規制板6は、ジョイント4において、レバー挿通孔41と重なる位置に取り付けられ、開口部61と、レバー挿通孔41とにウェイトレバー2が挿通された状態で、開口部61と、切欠き部22とが係合することにより、ウェイトレバー2に対するジョイント4の回動を規制する。
【0041】
他方、掛止具7は、いわゆるナットであって、軸部20の軸方向aでみて、ジョイント4の前後に配置されることにより、ジョイント4に対して相対向する方向から挟持力を加える。この構造によりウェイト3は、ジョイント4に取り付けられた状態で回転規制板6により周方向の不正回転が規制され、軸部20上での設置姿勢が安定化するとともに、一対の掛止具7,7により軸方向aへの不正スライドも防止される。
【0042】
さらに、ウェイト3の位置を調節する場合には、軸部20に一対の掛止具7,7を回転させて移動させ、ジョイント4が一対の掛止具7,7の移動に追従して移動することにより、ジョイント4と一体的にウェイトも溝部21、すなわち、ねじ溝のピッチに沿って移動可能に取り付けられる。従って、本発明によれば、ウェイト3の取り付け位置を無段階に調整することができるしゃ断機用ウェイト装置1、及び、これを用いたしゃ断機を提供することができる。
【0043】
ウェイト3は、複数のウェイトパーツ(31〜33)で構成される組立体であって、ウェイトパーツ31〜33は、第1、第2貫通孔33,34を有するから、第1、第2貫通孔33,34に固定具5を挿通させることにより、重さ調整用のウェイトパーツを追加的に取り付けることができる。ここで、第2凹溝35の幅を予めナットの幅と一致するように形成することにより、ナットが第2凹溝35の内壁面に挟持されて固定されるから、ボルトを回すだけで重さ調整用のサブウェイトを追加することができる。
【0044】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。例えば、
図1〜
図6において、溝部21は、軸部20の延長方向aでみて軸部20の一端から他端まで、外周面の全面に形成されているが、必ずしもこれに限定されるものではない。溝部21は、ウェイト3の移動範囲を規制するものであるから、ウェイトの移動に必要な範囲に形成されていれば足りる。そのような構成として、溝部21を、軸部20の中間領域に、部分的に設けることも考えられる。同様の観点から、切欠き部22を、軸部20の中間領域に、部分的に設けることも考えられる。
【符号の説明】
【0045】
1 しゃ断機用ウェイト装置
2 ウェイトレバー
21 溝部
22 切欠き部
3 ウェイト
4 ジョイント
40 本体部
41 挿通孔
6 回動規制板
60 基板部
61 開口部
9 しゃ断かん