(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321347
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】加熱システム及び自動車両
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
B60H1/22 611Z
B60H1/22 671
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-203174(P2013-203174)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2014-84098(P2014-84098A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】13/655,770
(32)【優先日】2012年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】アラン ケー.ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】チャド エー.バーンズ
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/129266(WO,A1)
【文献】
特開平11−037486(JP,A)
【文献】
特開2004−053213(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0076213(US,A1)
【文献】
実開平05−091922(JP,U)
【文献】
特開2008−267627(JP,A)
【文献】
実開平03−115352(JP,U)
【文献】
特開2010−006344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/08
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両のための加熱システムであって、
エンジンクーラントを有しない電気自動車と、
該電気自動車の車室への開放部を有するエアダクトと、
該エアダクトに取り付けられた加熱ユニットと、を具備し、該加熱ユニットが、複数の加熱要素と、オイルタンク内において内包された多少のオイルとを有し、前記複数の加熱要素の各加熱要素が、前記オイルタンクと流体連通し且つ前記複数の加熱要素の各加熱要素の前部壁及び後部壁間に配置されたオイル配管を有し、前記加熱ユニットが、前記オイルタンク内において電気加熱要素を少なくとも部分的に有し、該電気加熱要素が、前記オイルタンク内でオイルを加熱するように操作可能であることによって、各オイル配管を通して前記オイルを流し、且つ、前記複数の加熱要素の各加熱要素の前記前部壁及び前記後部壁を加熱し、前記オイルは、冷却により各オイル配管を通して前記オイルタンクへと流れて戻り、
当該加熱システムが、
前記エアダクトと流体連通したファンであって、前記複数の加熱要素の全ての長さにわたってほぼ広がっていて、前記エアダクトを通して且つ前記複数の加熱要素の各加熱要素の前記前部壁を通過させて、空気を流すように操作可能であるファンと、
空調ユニットであって、前記エアダクトと流体連通し、且つ、前記複数の加熱要素の各加熱要素の前記前部壁を通過させて流される冷却された空気を提供するように操作可能な空調ユニットとを具備する、加熱システム。
【請求項2】
前記各オイル配管が、第1の通路部と第2の通路部とを有し、前記第1の通路部が、前記オイルタンクから流れる加熱されたオイルを含み、前記第2の通路部が、前記第1の通路部を通過した、冷却されたオイルを含む、請求項1に記載の加熱システム。
【請求項3】
前記オイルが、各第1の通路部へと流れて通過する前に、前記電気加熱要素によって前記オイルタンク内で加熱される、請求項2に記載の加熱システム。
【請求項4】
前記ファンが前記加熱ユニットの上流に配置され、前記複数の加熱要素を通過させて空気を加圧する、請求項3に記載の加熱システム。
【請求項5】
前記ファンが前記加熱ユニットの下流に配置され、前記複数の加熱要素を通過させて空気を引き込む、請求項3に記載の加熱システム。
【請求項6】
自動車両であって、
エンジンクーラントを有しない電気自動車を含み、該電気自動車は、車室と、計器盤と、HVACシステムとを有し、該HVACシステは、エアダクトと、ファンと、加熱ユニットと、空調ユニットと、制御ユニットとを有し、前記HVACシステムが、加熱された空気及び冷却された空気を前記車室へと提供するように操作可能であり、
前記加熱ユニットは、複数の加熱要素であって、該複数の加熱要素の各加熱要素が、内包されたオイルタンクを有するように、複数の内包されたオイルタンクと複数のオイル配管とを備える複数の加熱要素を有し、
前記ファンは、前記複数の加熱要素の全ての長さにわたってほぼ広がっていて、
前記複数の内包されたオイルタンクの各オイルタンクが、個別のオイル配管と流体連通するように、前記複数のオイル配管の各オイル配管は、前記複数の内包されたオイルタンクと流体連通されていて、
前記加熱ユニットは、前記複数の内包されたオイルタンクの各オイルタンク内に少なくとも部分的に配置された電気加熱要素を有し、
前記加熱ユニットは、前記複数の内包されたオイルタンクの各オイルタンク内でオイルを加熱するように操作可能であり、
前記ファンが前記加熱ユニットを通過させて空気を流す間、前記複数のオイル配管の各オイル配管を通して前記オイルを流し、且つ、前記複数のオイル配管の各オイル配管から前記加熱ユニットを通過させられた空気への伝熱によって、加熱された空気を前記車室へと提供し、
前記空調ユニットは、前記エアダクトと流体連通し、且つ、前記加熱ユニットを通過させて流される冷却された空気を提供し、前記加熱ユニットを冷却するように操作可能であり、
当該自動車両は、前記各オイルタンク内及び前記各オイル配管内にオイルを更に具備し、前記オイルを備えた前記各オイル配管が、前部壁及び後部壁間に配置され、前記各オイルタンクからのオイルが、前記電気加熱要素によって加熱され且つ前記各オイル配管を通して流されたときに、前記前部壁及び前記後部壁が加熱される、自動車両。
【請求項7】
前記ファンは、前記エアダクトを通して、加熱された前記前部壁及び加熱された前記後部壁の少なくとも1つを通過させて空気を流すように操作可能であり、前記車室に加熱された空気を提供する、請求項6に記載の自動車両。
【請求項8】
前記エアダクトが前記加熱ユニット及び前記空調ユニットと流体連通し、前記空調ユニットが、前記加熱ユニットの上流に配置され、加熱された前記前部壁及び加熱された前記後部壁の前記少なくとも1つを通過させて流すための冷却された空気を提供し、且つ、前記加熱ユニットを冷却するように操作可能である、請求項7に記載の自動車両。
【請求項9】
前記電気加熱要素が、120ボルトの電気加熱要素である、請求項8に記載の自動車両。
【請求項10】
前記制御ユニットは、目的の車室温度に応じて前記電気加熱要素を励起するように操作
可能である、請求項9に記載の自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両のためのヒーターに関し、特に、隔離された加熱流体を有し、エンジンブロック及び/又は流体ヒーターからの入口ホース及び出口ホースを必要としないヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両内のヒーター、又は、自動車両の部分としてのヒーターは、公知である。概して、内燃機関からの伝熱によって加熱される水のような流体を使用するこうしたヒーターは、水からヒーターコイルフィンへと伝熱し、次いで、フィンを通過して(over)車室へと流れる空気へと伝熱する。概してこうした加熱ユニットは、加熱された流体を通過させて流すヒーターコアを必要とし、加熱された流体は、車両のエンジンブロックを通して循環される。更に、ヒーターコアを通る流体の温度及び流れを調節するため、入口ホース、出口ホース及びサーモスタットが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした加熱ユニットの形式は、内燃機関を有する自動車両において広く知られ、使用されているが、電気自動車における、こうしたユニットの使用は、内燃機関を使用することなく、或いは、内燃機関を有さずに、流体を加熱する必要がある。従って、電気自動車で使用するための、隔離された加熱流体源を有する改良された加熱ユニットが好適となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電気自動車のための、エンジンクーラントのない加熱システムが提供される。加熱システムは、車両の車室への開放部を有するエアダクトと、エアダクトに取り付けられた加熱ユニットと、を有することができる。加熱ユニットは、オイルタンク内及びオイルタンクと流体連通したオイル配管内に、内包された多少のオイル(quantity of oil)を有することができる。オイル配管は、加熱要素の前部壁と後部壁との間に配置されることができ、ユニットは、オイルタンク内で少なくとも部分的に電気加熱要素を有することもできる。電気加熱ユニットは、オイルタンク内においてオイルを加熱するために操作されることができ、それによって、オイル配管を流れる加熱されたオイルを生成し、加熱要素の前部壁及び後部壁へと伝熱する。
【0005】
システムのエアダクトは、空気が、エアダクトを流れ、且つ、加熱要素の前部壁及び/又は後部壁の少なくとも1つを通過するように操作することができ、自動車両の車室に加熱された空気を提供する。オイル配管は、オイルタンクからの加熱されたオイルが流れる第1の通路部と、第1の通路部を通った冷却されたオイルが流れる第2の通路部と、を有することができる。当然のことながら、オイルは、第1の通路部へと流れて通過する前に電気加熱要素によってオイルタンク内で加熱されることができ、熱は、加熱されたオイルから加熱要素の外部表面へと伝えられることができ、且つ、伝熱によって冷却されたオイルは、再加熱されるため、オイルタンクへと流れて戻される。当然のことながら、加熱されたオイルは、冷却されたオイルより低い密度を有し、従って、オイルタンク内で加熱されたオイルは、例えば、第1の通路部を通って上方に流れるように、油体(body of the oil)内で上昇する傾向を有し、冷却されたオイルは、例えば第2の通路部を通って下方に流れるように油体内で下降する傾向を有する。このように、オイルは、内包された加熱ユニットを通して流れ且つ/又は循環する。
【0006】
場合によっては、加熱ユニットは、複数の前部壁及び後部壁間に複数のオイル配管を有することができ、複数のオイル配管は、オイルタンクからの加熱されたオイルがそれぞれのオイル配管の第1の通路部を通して流れ、それにより、冷却される前に前部壁及び後部壁を加熱し、第2の通路部を通してオイルタンクへと流れて戻されるように、オイルタンクと流体連通される。
【0007】
加熱システムは、ダクトと流体連通したファンを有することができ、ファンは、空気が、ダクトを通過し、複数の前部壁及び/又は複数の後部壁の少なくとも1つを通過するように操作可能である。少なくとも1つのオイル配管の前部壁及び/又は後部壁からの熱伝導は、加熱された空気を車両の車室へと通過させる。場合によっては、ファンは、加熱ユニットの上流に配置されることができ、こうして複数の前部壁及び/又は複数の後部壁の少なくとも1つを通過させて空気を加圧する。他の場合において、ファンは、加熱ユニットの下流に配置されることができ、こうして、操作中、複数の前部壁及び/又は複数の後部壁の少なくとも1つを通過させて空気を引き込む。
【0008】
加熱システムは、空調ユニットであって、エアダクトと流体連通し、且つ、加熱ユニットの複数の前部壁及び/又は複数の後部壁の少なくとも1つを通過させられる冷却された空気を提供するように操作可能な空調ユニットを更に有することもできる。このように、空調ユニットからの冷却された空気は、加熱ユニットを冷却するために使用され得る。更に、加熱要素は、目的の車室温度に応じて電力を調整することができる制御ユニットによって励起され得る、120ボルトの電気加熱要素であってもよい。このように、ファンのファン速度との組合せにおいて、車室へと流れる加熱された空気の温度及び量は、制御され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態による、加熱システムを有する自動車両の斜視図である。
【
図2】
図1に示された加熱ユニットの拡大図である。
【
図3】
図2に示された加熱ユニットの一部の側部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電気自動車及び/又はハイブリッドガス/電気自動車のための加熱システムが提供される。加熱システムは、加熱要素又はフィンへと伝熱し、次いで要素を通過する空気へと伝熱するために、オイルを加熱するオイルヒーターを使用し且つ/又は有することができる。加熱された空気は、電気自動車の車室へと自然に提供される。オイルヒーターは、オイルタンク内でオイルを加熱する電気加熱要素を有することができ、加熱されたオイルは、加熱フィンの第1の通路部を通して流し且つ/又は上昇させることができ、且つ、第2の通路部をオイルタンクへと流し且つ/又は下降させて戻すことができる。
【0011】
加熱されたオイルが第1の通路部を通して流れるとき、オイルからの熱は、加熱フィンの外部表面へと伝えられ、次いで、要素フィンを通過する空気へと、熱が伝えられるのを可能とする。オイルからフィンの外部表面への伝熱及びフィンの外部表面から空気への伝熱は、オイルから熱を引き出させる。従って、熱は、オイルから引き出され、オイルは、第1の通路部を通って流れるときに冷却される。最後に、冷却されたオイルは、第2の通路部を通して、再加熱され得るオイルタンクへと流されて戻される。このように、内包された加熱ユニットは、これを通して加熱流体を循環させる。
【0012】
加熱システムは、ヒーターフィンを通過させて電気自動車の車室へと空気を流すファンを有することができる。ファンは、1又は複数の回転速度を有することができ、空調ユニットから車室へと冷たい空気を流すファンであってもよく、又は、そうでなくてもよい。このように、加熱システムは、車両に熱を提供するためのエンジンクーラントを必要としない加熱ユニットを提供する。様々に説明されたように、加熱ユニットは、入口ホース又は出口ホースのない、内包されたユニットとすることができ、それによって、車両のために、簡易且つコスト効率の好適な加熱システムを提供することができる。
【0013】
図1に戻ると、自動車両MVは、車室PC、計器盤IP及び加熱システム10を備えて示される。加熱システム10は、加熱ユニット100と、当業者に公知な、計器盤IPの部分である制御ユニット112と、を有することができる。更に加熱システム10の部分として、選択的空調ユニットACと共に、加熱ユニット100と流体連通され得るファン150及びエアダクト110を含むこともできる。
【0014】
図2は、
図1に示された加熱ユニット100の、より詳細な拡大図を示す。加熱ユニット100は、エアダクト110と、前部壁132及び後部壁134を備えた1又は複数の加熱要素又はフィン130と、を有することができる。加熱ユニット100は、電気加熱要素140によって加熱され得る加熱オイルを含むオイルタンク114を有することもできる。オイルタンク114内のオイルが、電気加熱要素140によって加熱されたとき、
図3の上向きの矢印によって示されたように第1の通路部136を通して上昇し得る。更に、空気は、第1の通路部136において加熱されたオイルから伝えられた熱を有する加熱要素130を通過して流され、前部壁132及び/又は後部壁134の外部表面へと流されることができ、更にこうした熱は、次いで要素を通過する空気へと伝えられる。
【0015】
加熱要素130から空気へと熱が伝えられ又は伝達されたとき、第1の通路部136を通して上昇して流れるオイルは、冷却されることに留意されたい。当然のことながら、オイルが冷却されるとき、その密度が増し、こうして冷却されたオイルは、
図3の下向きの矢印によって示されたように第2の通路部138を通してオイルタンク114へと流れて戻される傾向を有する。加熱要素130の正確な形状が、図に示されたものとは異なり得ることに留意されたい。例えば、前部壁132及び/又は後部壁134は、前部壁と後部壁との間の開放された管路(open channels)を通してオイルが流れる波形の(corrugated)形状を有し得る。
【0016】
場合によっては、ファン150は、空気を押し、すなわち、
図2及び
図3に示されたように、加熱要素130を通過させて空気を加圧してもよい。或いは、ファン150は、加熱ユニット100から下流に配置されることができ、こうして加熱要素130を通して空気を引き出すことができる。
【0017】
制御ユニット112は、電気加熱要素140に提供されエネルギー/電気の量を調節するために使用されることができ、こうしてオイルタンク114内のオイルに提供された熱を制御する。ファン150の回転速度との組合せにおけるこの制御ユニットは、車室へと流れる空気の温度を制御するために使用されることができる。更に、電気加熱要素140に対するパワーの簡易な停止(termination)によって得られ又は取得され得るより速い時間の、加熱ユニット100の冷却を目的とする場合、加熱要素130を通過する冷却された空気を提供するために空調ユニットACが使用され得る。
【0018】
比較的高電圧の、すなわち、120ボルト電源の電気自動車であれば、こうした加熱システム10は、車両の車室に熱を提供することが実際的に、且つ/又は、経済的に実現可能であることに留意されたい。更に、内包されたオイルヒーターがあれば、ホース及び/又はエンジン室からの液体は、熱を生成するのに不要である。従って、電気自動車のための簡易且つ経済的に実現可能な加熱ユニットが提供される。
【0019】
当業者にとって、当然のことながら、ここで説明された本発明に係る様々な変形例、及び、変化等がなされ得るが、本発明の範囲内にある。従って、請求項及びその全ての均等物は、本発明に係る範囲を定義する。
【符号の説明】
【0020】
10 加熱システム
100 加熱ユニット
110 エアダクト
112 制御ユニット
114 オイルタンク
130 フィン
132 前部壁
134 後部壁
136 第1の通路部
138 第2の通路部
140 電気加熱要素
150 ファン
IP 計器盤
MV 自動車両
PC 車室