特許第6321348号(P6321348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321348
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】貯湯タンク
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/18 20060101AFI20180423BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   F24H9/18 303
   F24H1/18 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-214506(P2013-214506)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-78774(P2015-78774A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田中 将之
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−121168(JP,A)
【文献】 特開平10−238865(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/073088(WO,A2)
【文献】 実開昭53−011654(JP,U)
【文献】 特開平11−037569(JP,A)
【文献】 特開平03−059347(JP,A)
【文献】 特開平05−052424(JP,A)
【文献】 特開2001−263826(JP,A)
【文献】 実開昭59−086541(JP,U)
【文献】 特開2009−108904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24H 1/20
F24H 9/18
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーター挿入孔が形成され、当該ヒーター挿入孔の周辺の外面にネジの一端側が溶接された貯湯タンク本体と、
前記貯湯タンク本体内に設けられ、前記貯湯タンク本体内の水を加熱するヒーターと、
前記ネジが挿通されるネジ孔が形成され、前記ヒーターを支持して固定するヒーター固定板と、を備え、
前記ネジ孔に挿通された前記ネジにナットが締結されることで、前記ヒーター固定板により前記ヒーター挿入孔が塞がれるとともに前記ヒーターが固定される貯湯タンクであって、
前記ネジは、前記一端側に設けられて前記貯湯タンク本体に溶接された鍔部を備え、
前記鍔部は、前記ヒーター固定板の前記貯湯タンク本体側の面に当接しており、
前記ヒーター固定板は、前記ネジ孔の周辺が前記貯湯タンク本体側とは反対側に膨出することで、前記ネジ孔の周辺とOリングと接する側とで段差が形成され、前記段差は略鍔部の厚さ分であって前記ヒーター固定板は前記Oリングと接する側で前記貯湯タンク本体に当接する貯湯タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気温水器に用いられる貯湯タンクでは、円筒形状の貯湯タンク本体の表面にヒーター挿入孔が形成され、ヒーター固定板に支持されたヒーターがヒーター挿入孔から貯湯タンク本体の内部に挿入されている。更に、貯湯タンク本体のヒーター挿入孔周辺にはネジ(ヒーター取付ネジ)が溶接され、ヒーターを支持するヒーター固定板にはネジ孔(ヒーター取付孔)が設けられている。ヒーター取付孔に、ヒーター取付ネジを挿通させて、ヒーター取付ネジにナットを締結させることでヒーターは貯湯タンク本体に固定される。
【0003】
しかしながら、電気温水器で使用する水の水圧が高いことで、ヒーター取付ネジの溶接部分に過度の力が加わっている場合、ヒーターで水の沸かし上げの繰り返しによる金属疲労によりヒーター取付ネジの溶接部分に亀裂が入り、貯湯タンクから漏水してしまう場合がある。特に、電気温水器に用いられる貯湯タンクは、貯湯タンク本体の母材が薄いため、ヒーター取付ネジの溶接部分に亀裂が入りやすい傾向にある。
【0004】
図7を用いて、より詳細に説明する。図7は、従来の貯湯タンクを、ヒーター取付ネジにおいてヒーター固定板と垂直な方向に切断した拡大断面図である。
貯湯タンク本体110にヒーター固定板120を固定する際には、ヒーター取付孔121に、ヒーター取付ネジ111を挿通させて、ヒーター取付ネジ111にナット130をワッシャ140を介して締結させる(図7(a))。この際に、更にナット130を強く締めこむと、ヒーター取付ネジ111の溶接部分がヒーター取付ネジ111の軸方向に引っ張られて、ヒーター取付ネジ111の溶接部分に応力がかかる(図7(b))。ナット130を強く締めこむことで応力のかかる溶接部分は、電気温水器で使用する水の水圧が高い場合に応力がかかる部分でもあり、金属疲労によって亀裂が生じやすい。従って、ヒーター取付ネジ111へのナット130の締結においては、厳密なトルク管理が必要となり、ヒーター固定板120を貯湯タンク本体110に取り付ける際の作業工程が煩雑になる。
【0005】
このような問題に対して、貯湯タンク本体の母材を厚くすることで貯湯タンク全体を補強する対策や、ヒーター挿入孔を小さくすることでヒーター固定板の受圧面積を小さくしてヒーター取付ネジの溶接部分にかかる応力負荷を低減する対策が取られている。
【0006】
また、応力が集中する、貯湯タンク本体のヒーター取付ネジが溶接された部分の周辺にビードを形成することで補強する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。更に、環状の平板に複数のヒーター取付ネジを溶接し、この平板を貯湯タンク本体に溶接してすることでヒーター取付ネジ周辺を補強した上で、ヒーター固定板をナットで固定する技術も知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−121168号公報
【特許文献1】特開平10−238865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、貯湯タンク本体の母材を厚くした場合には、貯湯タンク全体の材料費が増加し、貯湯タンクの大型化が難しくなる。また、ヒーター挿入孔を小さくした場合、ヒーターのパイプ径も小さくする必要がある。この場合、水の加熱能力を維持するためには、ヒーターのパイプを長くして多数屈曲させる必要があることから、加工費が増加する。
【0009】
また、貯湯タンク本体のヒーター取付ネジが溶接された部分の周辺にビードを形成した場合には、逆にビードを形成することで生じる凹形状が金属疲労によって亀裂の発生の起点となってしまう場合がある。更に、環状の平板を介してヒーター固定板を貯湯タンク本体に固定すれば、確かに応力は緩和できるが、貯湯タンク本体やヒーターとは別部材である平板を用いれば、材料費の増加を招き、製造工程が煩雑になることにもなる。
【0010】
このように、貯湯タンク本体の母材が薄い場合であっても、煩雑な製造工程を必要とせずに、ヒーター取付ネジの溶接部分における亀裂の発生を十分に抑制することができる貯留タンクについては得られていないのが現状である。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、貯湯タンク本体の母材が薄い場合であっても、煩雑な製造工程を必要とせずに、ヒーター取付ネジの溶接部分における亀裂の発生を十分に抑制することができる貯留タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ヒーター挿入孔(例えば、後述のヒーター挿入孔311)が形成され、当該ヒーター挿入孔の周辺の外面にネジ(例えば、後述のネジ312)の一端側が溶接された貯湯タンク本体(例えば、後述の貯湯タンク本体31)と、前記貯湯タンク本体内に設けられ、前記貯湯タンク本体内の水を加熱するヒーター(例えば、後述のヒーター32)と、前記ネジが挿通されるネジ孔(例えば、後述のネジ孔331)が形成され、前記ヒーターを支持して固定するヒーター固定板(例えば、後述のヒーター固定板33)と、を備え、前記ネジ孔に挿通された前記ネジにナット(例えば、後述のナット35)が締結されることで、前記ヒーター固定板により前記ヒーター挿入孔が塞がれるとともに前記ヒーターが固定される貯湯タンクであって、前記ネジは、前記一端側に設けられて前記貯湯タンク本体に溶接された鍔部(例えば、後述の鍔部313)を備え、前記鍔部は、前記ヒーター固定板の前記貯湯タンク本体側の面(例えば、面317)に当接している貯湯タンク(例えば、後述の貯湯タンク30)に関する。
この発明によれば、ネジに形成された鍔部が、ヒーター固定板の前記貯湯タンク本体側の面に当接しているので、ナットをネジに締結させた際の応力が、鍔部に負荷される。これにより、ナットをネジに締結させた際の応力が、ネジが貯湯タンク本体に溶接された箇所に直接印加されるのを防ぐことができる。従って、貯湯タンク本体の母材が薄い場合であっても、ネジが貯湯タンク本体に溶接された箇所における亀裂の発生を抑えることができる。また、鍔部の設けられたネジを貯湯タンク本体の外面に溶接するだけでよいので、煩雑な製造工程を必要とせずに、ヒーター取付ネジの溶接部分における亀裂の発生を十分に抑制することができる。
【0013】
また、前記ヒーター固定板は、前記ネジ孔の周辺が前記貯湯タンク本体側とは反対側に膨出することで形成された段差(例えば、後述の段差332)を有することが好ましい。
この発明によれば、貯湯タンク本体とヒーター固定板との間の隙間は、ヒーター固定板の外周側よりもヒーター挿入孔の周縁側で狭くなる。
仮に、ヒーター固定板に段差が形成されていない場合に、Oリングの位置決めに用いられる溝部を深く形成するには、貯湯タンク本体におけるOリングの配置される領域の外周側と内周側の両方をヒーター固定板側に近づけるように変形させる必要がある。この場合、貯湯タンク本体の製造が煩雑になってしまう。
一方、この発明では、ヒーター挿入孔の周縁で貯湯タンク本体とヒーター固定板との間の隙間が狭いことから、Oリングの位置決めに用いられる溝部を、煩雑な工程を経ずに深く形成することができる。従って、貯湯タンク本体の製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貯湯タンク本体の母材が薄い場合であっても、煩雑な製造工程を必要とせずに、ヒーター取付ネジの溶接部分における亀裂の発生を十分に抑制することができる貯留タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る貯湯タンクを有する電気温水器の透過斜視図である。
図2】上記実施形態に係る貯湯タンクを有する電気温水器の使用状態を示す図である。
図3】上記実施形態に係る貯湯タンクの斜視図であり、図1の貯湯タンクを矢視Aから視た図である。
図4】上記実施形態に係る貯湯タンクの拡大分解斜視図である。
図5】上記実施形態に係る貯湯タンクの拡大断面図であり、貯湯タンクにおいてネジにナットが締結された状態について示す図である。
図6】上記実施形態の変形例に係る貯湯タンクの拡大断面図であり、貯湯タンクにおいてネジにナットが締結された状態について示す図である。
図7】従来の貯湯タンクの拡大断面図であり、(a)がヒーター取付ネジにナットが締結された状態について示す図であり、(b)がヒーター取付ネジにナットが締結された後に、更にナットを強く締めた状態について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る貯湯タンク30を有する電気温水器1の透過斜視図である。図1に示すように、電気温水器1は、給水部2と、貯湯部3と、給湯部4と、膨張水排出部5と、略直方体状のケーシング6とで構成される小型の電気温水器である。この電気温水器1は、給水部2により給水された水を、貯湯部3で加熱して湯として貯留し、貯留した湯を給湯部4により給湯する。また、貯湯部3における加熱の際に生じる膨張水を、膨張水排出部5により外部に排出する。
【0017】
給水部2は、管継手21と、給水管22と、減圧弁23と、バイパス管24と、給水口25と、を備える。
管継手21は、ケーシング6の上面に設けられ、その下流側には、給水管22の上流端が接続される。また、管継手21の上流側には、後述する止水栓72を介して水道管に接続された直圧給水管71が接続される。
【0018】
給水管22は、下方に延び、後述する減圧弁23を介して貯湯タンク本体31に接続される。これにより、貯湯タンク30内に水が供給される。
【0019】
減圧弁23は、給水管22の途中に設けられた圧力調整弁(レギュレータ)である。減圧弁23は、管継手21を介して導入された高圧の水を減圧する。これにより、減圧された水が貯湯タンク本体31内に供給される。
【0020】
バイパス管24は、減圧弁23よりも下流側の給水管22の第1分岐部221から分岐して設けられる。また、バイパス管24は、上方に延び、後述する給水口25に接続される。
【0021】
給水口25は、ケーシング6の上面に設けられ、その開口は略水平方向に向いている。給水口25の下流側には、後述する水栓金具7に接続された同圧給水管73が接続される。これにより、減圧弁23により減圧された水が、給水口25から同圧給水管73を介して水栓金具7に供給される。
【0022】
貯湯部3は、貯湯タンク30と、水抜き弁30aと、を備える。
貯湯タンク30は、貯湯タンク本体31と、ヒーター32と、を備える。貯湯タンク30では、給水管22から貯湯タンク本体31の内部に供給された水がヒーター32により温められて、給湯管41に排出される。
貯湯タンク30については、後段で詳述する。
【0023】
水抜き弁30aは、貯湯タンク本体31の下部と給水管22との接続部に設けられる。水抜き弁30aは、メンテナンスや凍結防止目的で、後述する管継手21に設けられた水抜きピン213を押すことにより開弁する。これにより、給水管22内の水が外部に排出される。
【0024】
給湯部4は、給湯管41と、湯水混合弁42と、給湯口43と、を備える。
給湯管41は、その上流側が貯湯タンク本体31に接続される。また、その下流側が後述する給湯口43に接続される。
【0025】
湯水混合弁42は、給湯管41の途中に設けられる。湯水混合弁42には、給水管22から分岐されたバイパス管24が接続される。これにより、給水管22から供給される水と給湯管41から供給される高温の湯が混合される。湯水混合弁42の内部には、図示しないサーモスタット等の自動温度調節器が設けられる。この自動温度調節器により、混合後の温水が使用に適した所定温度(例えば38℃〜42℃)となるように、湯水の混合比率が制御される。
【0026】
給湯口43は、ケーシング6の上面に設けられ、その開口は略水平方向に向いている。給湯口43の下流側は、後述する出湯管74を介して水栓金具7に接続される。これにより、湯水混合弁42で湯と水とが混合されて適温に調整された温水が、水栓金具7に供給される。
【0027】
膨張水排出部5は、膨張水排出管51と、逃がし弁52と、膨張水排出口53と、を備える。
膨張水排出管51は、第1分岐部221よりも下流側の給水管22の第2分岐部222から分岐して設けられる。また、膨張水排出管51は、上方に延び、後述する膨張水排出口53に接続される。
【0028】
逃がし弁52は、膨張水排出管51の途中に設けられる。逃がし弁52は、内圧が所定圧を超えると開弁し、内圧が所定圧以下になると閉弁する安全弁である。逃がし弁52が開弁されることで、ヒーター32による加熱の際に生じた膨張水が膨張水排出管51内に導入される。なお、逃がし弁52は、ケーシング6の前面に設けられたテストピン521を備え、メンテナンス時にはこのテストピン521を操作することで開閉可能となっている。
【0029】
膨張水排出口53は、ケーシング6の上面に設けられ、その開口は略水平方向に向いている。膨張水排出口53の下流側には、後述する排水器具76に接続された膨張水排出ホース75が接続される。これにより、ヒーター32による加熱の際に生じた膨張水が、外部に排出される。
【0030】
図2は、本実施形態に係る貯湯タンク30を有する電気温水器1の使用状態を示す図である。
図2に示すように、電気温水器1は、水栓金具7が設けられた洗面器70の下方に配置される。このように、電気温水器1は、狭い空間に壁掛け固定されて使用される。また、電気温水器1は、壁コンセント9に電源コード8を接続し、ケーシング6の前面に設けられた電源スイッチ61をONすることで駆動する。
【0031】
上述したように管継手21には、止水栓72を介して水道管に接続された直圧給水管71が接続される。直圧給水管71は、止水栓72から上方に延びて電気温水器1側に屈曲した後、略水平方向に延びて設けられる。この直圧給水管71には、水道管から供給された高圧の水が流通する。
【0032】
給水口25には、水栓金具7に接続された同圧給水管73が接続される。同圧給水管73は、給水口25から略水平方向(図2では右方向)に延びた後、斜め上方に延びて設けられる。この同圧給水管73には、減圧弁23により減圧された水が流通する。
【0033】
給湯口43には、水栓金具7に接続された出湯管74が接続される。出湯管74は、給湯口43から略水平方向(図2では右方向)に延びた後、斜め上方に延びて設けられる。この出湯管74には、湯水混合弁42で湯と水とが混合されて適温に調整された温水が流通する。
【0034】
膨張水排出口53には、後述する排水器具76に接続された膨張水排出ホース75が接続される。膨張水排出ホース75は、膨張水排出口53から略水平方向(図2では右方向)に延びた後、斜め上方に延び、再び略水平方向(図2では右方向)に延びて設けられる。この膨張水排出ホース75には、ヒーター32による加熱の際に生じた膨張水が流通する。
【0035】
排水器具76の下流側は、洗面器70の下部に設けられた排水管77に接続される。排水器具76の内部には、トラップ式の封水部76aが設けられる。この封水部76a内の封水により、排水管77の下流側に接続された下水管内の臭気が上昇して室内に入り込むのが防止される。
【0036】
以上のようにして使用される電気温水器1により、水栓金具7には、同圧給水管73から水が供給されるとともに、出湯管74から温水が供給される。そして、水栓金具7に供給された水と温水は、混合された後に吐水口7aから吐水される。
【0037】
続いて、本実施形態に係る貯湯タンク30について説明する。
図3は、貯湯タンク30の斜視図であり、図1の矢視Aから視た図である。また、図4は、貯湯タンク30の拡大分解斜視図である。上述したように、貯湯タンク30は、貯湯タンク本体31と、ヒーター32と、ヒーター固定板33と、を備える。
貯湯タンク本体31は、鉛直方向に延びる略円筒形状の薄肉のタンクで構成される。貯湯タンク本体31は、下方に貯湯タンク給水口315を有し、上方に貯湯タンク給湯口316を有する。貯湯タンク給水口315は、給水管22に、貯湯タンク給湯口316は、給湯管41に、それぞれ接続される。
【0038】
更に、図4に示すように、貯湯タンク本体31には、ヒーター挿入孔311が形成され、ヒーター挿入孔311の周辺の外面にネジ312の一端側が溶接される。
ヒーター挿入孔311は、貯湯タンク本体31の側周の鉛直方向下側に形成される。ヒーター挿入孔311は、後述するヒーター32を挿入することが可能な大きさに形成された鉛直方向に伸びる長孔である。貯湯タンク本体31におけるヒーター挿入孔311の周縁には、溝部314が形成される。溝部314にはOリング34が配置される。
【0039】
ネジ312は、ヒーター挿入孔311の上側の周縁に2本、ヒーター挿入孔311の下側の周縁に2本、ヒーター挿入孔311の長手方向の中心の周縁に2本で合計6本配置される。ネジ312は、貯湯タンク本体31側の一端側に設けられた鍔部313を備える。鍔部313の形状は、円形である。鍔部313の径は、ネジ312の径よりも大きく、鍔部313は、ネジ312の周囲から延出している。鍔部313は、貯湯タンク本体31に溶接される。なお、ネジ312は、鍔部313も含めて一体の部材として構成されている。
【0040】
円筒形の貯湯タンク本体31は、ヒーター挿入孔311の周辺が平坦になった形状となっている。特に、貯湯タンク本体31の外面における、ヒーター挿入孔311の上側の周辺2本及び下側の周辺2本のネジ312の配置される箇所は、平坦になっている。
【0041】
貯湯タンク本体31の内壁には、図示しない温度調節器及び温度過昇防止器が設けられる。これら温度調節器及び温度過昇防止器は、貯湯タンク本体31内の水を適切な温度に昇温し、且つ、過昇温を防止する。
【0042】
ヒーター32は、ヒーターパイプで構成され、貯湯タンク本体31内に設けられる。ヒーター32は、端部321,321が貯湯タンク本体31の外部に配置される。ヒーター32は、貯湯タンク本体31の内部で湾曲している。特に、ヒーター32は、その中間部322においてU字状に湾曲して折り返される。ヒーター32は、端部321,321において図示しない電源に接続される。ヒーター32は、通電されることにより昇温され、貯湯タンク本体31内の水を加熱する。
【0043】
ヒーター固定板33は、矩形板状である。ヒーター固定板33は、長手方向に並ぶ2箇所においてヒーター32に貫通される。ヒーター固定板33は、ヒーター32と、溶接されることによって一体化される。また、ヒーター固定板33は、ヒーター32を支持して固定する。更に、ヒーター固定板33は、後述するヒーター挿入孔311を塞ぐ。
【0044】
図4に示すように、ヒーター固定板33には、ネジ312が挿通されるネジ孔331が形成される。ネジ孔は、ヒーター固定板33の四方の角と、ヒーター固定板33のそれぞれの長辺の中心部付近の計6箇所に形成される。
【0045】
ヒーター固定板33は、ネジ孔331の周辺が貯湯タンク本体31側とは反対側に膨出することで形成された段差332を有する。段差332は、加圧成形により形成することができる。
【0046】
ネジ孔331に挿通されたネジ312にナット35が締結されることで、ヒーター固定板33によりヒーター挿入孔311が塞がれるとともにヒーター32が固定される。ナット35とヒーター固定板33との間には、ワッシャ36が配置される。
【0047】
続いて、本実施形態に係る貯湯タンク30の、ネジ312にナット35が締結された状態について、より詳細に説明する。
図5は、貯湯タンク30を、ネジ312においてヒーター固定板33と垂直な方向に切断した拡大断面図であり、貯湯タンク30においてネジ312にナット35が締結された状態について示す図である。鍔部313は、ヒーター固定板33の前記貯湯タンク本体31側の面317に当接している。鍔部313が、ヒーター固定板33の面317に当接していることで、ナット35をネジ312に締結させた際の応力が、鍔部313に負荷される。これにより、ナット35をネジ312に締結させた際の応力が、ネジ312が貯湯タンク本体31に溶接された箇所に直接印加されるのを防ぐことができる。なお、上述のように、ネジ312は、鍔部313も含めて一体の部材として構成されているので、鍔部313は溶接された箇所に比べて応力に対する耐性が強い。
【0048】
段差332が形成されることで、ヒーター固定板33は、ネジ孔331の周辺よりも、Oリング34と接する側(ヒーター挿入孔311の形成されている側)において貯湯タンク本体31側に接近する。また、ヒーター固定板33は、段差332の周辺において貯湯タンク本体31に当接する。
Oリング34は、貯湯タンク本体31と後述するヒーター固定板33に挟まれて押圧されることで、貯湯タンク30からの漏水を防ぐ。
【0049】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
(1)本実施形態では、一端に鍔部313の設けられたネジ312の、鍔部313の設けられた一端側を、貯湯タンク本体31のヒーター挿入孔311の周辺の外面に溶接した。また、鍔部313を、ヒーター固定板33の貯湯タンク本体31側の面317に当接させた。
鍔部313が、ヒーター固定板33の面317に当接していることで、ナット35をネジ312に締結させた際の応力が、鍔部313に負荷される。これにより、ナット35をネジ312に締結させた際の応力が、ネジ312が貯湯タンク本体31に溶接された箇所に直接印加されるのを防ぐことができる。従って、貯湯タンク本体31の母材が薄い場合であっても、ネジ312が貯湯タンク本体31に溶接された箇所における亀裂の発生を抑えることができる。また、鍔部313の設けられたネジ312を貯湯タンク本体31の外面に溶接するだけでよいので、煩雑な製造工程を必要とせずに、ネジ312の溶接部分における亀裂の発生を十分に抑制することができる。
【0050】
(2)本実施形態では、ヒーター固定板33のネジ孔331の周辺に、貯湯タンク本体31側とは反対側に膨出する段差332を形成した。
これにより、貯湯タンク本体31とヒーター固定板33との間の隙間は、ヒーター固定板33の外周側(図5のA側)よりもヒーター挿入孔311の周縁側(図5のB側)で狭くなる。
仮に、ヒーター固定板33に段差332が形成されていない場合に、Oリング34の位置決めに用いられる溝部314を深く形成するには、貯湯タンク本体31におけるOリング34の配置される領域の外周側(図5のA側)と内周側(図5のB側)の両方をヒーター固定板33側に近づけるように変形させる必要がある。この場合、貯湯タンク本体31の製造が煩雑になってしまう。
一方、本実施形態では、ヒーター挿入孔311の周縁で貯湯タンク本体31とヒーター固定板33との間の隙間が狭いことから、Oリング34の位置決めに用いられる溝部314を、煩雑な工程を経ずに深く形成することができる。従って、貯湯タンク本体31の製造コストを抑えることができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態では、ヒーター固定板33のネジ孔331の周辺に段差332を形成したが、これに限定されない。例えば、図6に示すように、貯湯タンク30Aのヒーター固定板33Aを、段差を有さない平坦な板状部材としてもよい。ヒーター固定板33Aがネジ孔331Aの周辺に段差を有さない場合であっても、鍔部313Aを、ヒーター固定板33Aの貯湯タンク本体31A側の面317Aに当接させることで、ナット35Aをネジ312Aに締結させた際の応力が、ネジ312Aが貯湯タンク本体31Aに溶接された箇所に直接印加されるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0052】
1…電気温水器
30…貯湯タンク
31…貯湯タンク本体
311…ヒーター挿入孔
312…ネジ
313…鍔部
32…ヒーター
33…ヒーター固定板
331…ネジ孔
332…段差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7