(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁体は、前記背圧室の下面を画成する弁棒部と、該弁棒部の下部に連設ないし連結固定され、前記上側弁口及び下側弁口をそれぞれ選択的に開閉するための上側弁体部及び下側弁体部を持ち、前記下側棒状ガイド部の上部に摺動自在に嵌挿される双弁体部とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の四方切換弁。
【背景技術】
【0002】
一般に、ルームエアコン、カーエアコン等のヒートポンプ式冷暖房システムは、圧縮機、室外熱交換器、室内熱交換器、気液分離器、及び膨張弁等に加えて、流路(流れ方向)切換手段としての四方切換弁を備えている。
【0003】
この四方切換弁を備えたヒートポンプ式冷暖房システムの一例を
図3を参照しながら説明する。図示例のヒートポンプ式冷暖房システム100は、運転モード(冷房運転と暖房運転)の切り換えを四方切換弁140で行うようになっており、基本的には、圧縮機110、室外熱交換器(コンデンサ)120、室内熱交換器(エバポレータ)130、気液分離器(レシーバ)150、及び膨張弁160を備え、前記の圧縮機110、室外熱交換器120、室内熱交換器130、及び気液分離器150の四者の間に4つのポート、すなわち、吐出側高圧ポートD、室外側入出ポートC、室内側入出ポートE、及び吸入側低圧ポートSを有する四方切換弁140が配在されている。
【0004】
前記各機器類間は導管(パイプ)等で形成される流路で接続されており、冷房運転モードが選択されたときには、
図3において実線矢印で示される如くに、四方切換弁140の吐出側高圧ポートDが室外側入出ポートCに、また、室内側入出ポートEが吸入側低圧ポートSにそれぞれ連通せしめられる。これにより、気液分離器150内の低圧冷媒が圧縮機110に吸入されるとともに、圧縮機110から高温高圧の冷媒が四方切換弁140を介して室外熱交換器120に導かれ、ここで室外空気と熱交換して凝縮し、高圧の二相冷媒となって膨張弁160に導入される。この膨張弁160により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、室内熱交換機130に導入され、ここで室内空気と熱交換(冷房)して蒸発し、室内熱交換機130からは低温低圧の冷媒が四方切換弁140を介して気液分離器150に戻される。
【0005】
それに対し、暖房運転モードが選択されたときには、
図3において破線矢印で示される如くに、四方切換弁140の吐出側高圧ポートDが室内側入出ポートEに、また、室外側入出ポートCが吸入側低圧ポートSにそれぞれ連通せしめられ、気液分離器150内の低圧冷媒が圧縮機110に吸入されるとともに、圧縮機110から高温高圧の冷媒が室内熱交換機130に導かれ、ここで室内空気と熱交換(暖房)して蒸発し、高圧の二相冷媒となって膨張弁160に導入される。この膨張弁160により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、室外熱交換器120に導入され、ここで室外空気と熱交換して凝縮し、室外熱交換器120からは低温低圧の冷媒が四方切換弁140を介して気液分離器150に戻される。
【0006】
前記した如くのヒートポンプ式冷暖房システムに組み込まれる四方切換弁として、従来、スライド式主弁体を内蔵する弁本体(弁ハウジング)と、電磁式のパイロット弁とを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に所載の四方切換弁は、弁ハウジングに、吐出側高圧ポートD、室外側入出ポートC、吸入側低圧ポートS、及び室内側入出ポートEが形成されるとともに、前記したポートD→C及びE→S、又は、ポートD→E及びC→Sの連通状態を作り出す(流路切換を行う)べくスライド式主弁体が左右方向に摺動可能に配在されている。弁ハウジングにおけるスライド式主弁体の左右には、パイロット弁を介して圧縮機吐出側の高圧冷媒及び圧縮機吸入側の低圧冷媒が導入される、それぞれスライド式主弁体に結合された左右一対のピストン型パッキンにより画成される高圧室及び低圧室が設けられ、この高圧室と低圧室の圧力差を利用して前記スライド式主弁体を左右方向に摺動させることで前記流路切換を行うようにされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記した如くの四方切換弁が使用されるヒートポンプ式冷暖房システム等においては、圧縮機が停止しているとき、すなわち、圧縮機吐出側と圧縮機吸入側との差圧がほとんど無いとき(略0MPa)においても、四方切換弁を動かして流路切換を行いたいとの要望があるが、前記特許文献1に所載の四方切換弁では、圧縮機吐出側と圧縮機吸入側との差圧(以下、単に差圧と称することがある)を利用してスライド式主弁体を左右方向に摺動させることで流路切換を行うようになっている関係上、圧縮機が吸入吐出動作を行っていないときには、前記差圧がほとんど生じないので、四方切換弁による流路切換を行うことができないという問題があった。
【0009】
また、左右一対のピストン型パッキンを伴うスライド式主弁体を摺動させて流路切換を行う構成であるので、スライド式主弁体を動かすのに大きな駆動力を必要とする(前記差圧が相当大きくないとスライド式主弁体が動かない)とともに、動作音が比較的大きいという問題があり、さらに、パイロット弁と弁ハウジングとの間に別途にスライド式主弁体を摺動させるための配管(高圧用2本、低圧用2本の計4本)が必要であり、組立設置コスト、占有スペース等の面でも難がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ヒートポンプ式冷暖房システム等における圧縮機吐出側と圧縮機吸入側との差圧がほとんど無いときにおいても、流路切換を確実に行うことができ、また、小さな駆動力で弁体を動かすことができるとともに、動作音や組立設置コスト等を低く抑えることのできる四方切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る四方切換弁は、基本的には、一つの弁ハウジングに、電磁式又は電動式アクチュエータを持つ二つの二位置切換弁が設けられ、各二位置切換弁は、前記電磁式又は電動式アクチュエータにより上下動せしめられる弁体と、該弁体により選択的に開閉される上側弁口及び下側弁口とを有し、
前記弁ハウジング側に、前記弁体の下部が摺動自在に嵌挿される下側棒状ガイド部が設けられ、前記弁ハウジング内における前記弁体の下側に高圧流体が導入される高圧室が形成されるとともに、前記弁体の上側に背圧室が形成され、前記高圧室と前記背圧室とが前記下側棒状ガイド部内及び前記弁体内に形成された連通路で結ばれ、前記弁体に作用する流体圧力による押し下げ力と押し上げ力とが相殺されるように、
前記背圧室の室径、前記上側弁口の口径、及び前記下側弁口の口径が同径に設定されていることを特徴としている。
【0012】
好ましい態様では、
前記弁体の上部が前記弁ハウジングに固定された筒状ホルダの内周に摺動自在に嵌挿されて前記背圧室が画成される。
【0013】
他の好ましい態様では、前記弁体は、前記背圧室の下面を画成する弁棒部と、該弁棒部の下部に連設ないし連結固定され、前記上側弁口及び下側弁口をそれぞれ選択的に開閉するための上側弁体部及び下側弁体部を持
ち、前記下側棒状ガイド部の上部に摺動自在に嵌挿される双弁体部とから構成される。
【0014】
他の好ましい態様では、前記弁体と前記下側棒状ガイド部との間に前記弁体を上方に付勢する付勢部材が設けられる。別の好ましい態様では、前記二つの二位置切換弁は、前記弁ハウジングの左右に縦置きで並設される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る四方切換弁は、例えば、前述した
図3に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において圧縮機が停止しているとき、すなわち、圧縮機吐出側と圧縮機吸入側との差圧がほとんど無いとき(略0MPaのとき)においても、二つの電磁式又は電動式アクチュエータへの通電を選択的にON/OFFすることにより流路切換を行うことができる。
【0017】
また、弁体に作用する冷媒圧力による押し下げ力と押し上げ力とが相殺されるように各部の寸法形状が設定されているので、小さな駆動力で弁体を上下動させることができ、そのため、電磁式又は電動式アクチュエータとして小型で安価なものを採用することができるとともに、消費電力を抑えることができ、さらに、動作音を小さくすることができる。
【0018】
加えて、パイロット弁が不要であり、かつ、一つの弁ハウジングに2台の二位置切換弁を縦置きで並設した構成であるので、組立設置コスト、占有スペース等の面でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1、
図2は、それぞれ本発明に係る四方切換弁の一実施例における第1の状態(冷房運転時)及び第2の状態(暖房運転時)を示す縦断面図である。なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0021】
図示実施例の四方切換弁1は、例えば前述した
図3に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100における四方切換弁140として用いられるもので、弁ハウジング10と、該弁ハウジング10の左右に縦置きで横並びに並設された同一構成の二つの電磁弁(第1電磁弁20A、第2電磁弁20B)とを備える。
【0022】
弁ハウジング10は、アルミあるいはステンレス等の金属素材(インゴット)を削り出し(切削加工)により作製したもので、左側に第1電磁弁20A用の段付き円筒状の第1縦貫穴11Aが形成されるとともに、右側に第2電磁弁20B用の段付き円筒状の第2縦貫穴11Bが形成され、また、上段部には左面開口の上側横穴12が形成され、下段部には左面開口の下側横穴13が形成されている。第1縦貫穴11Aと第2縦貫穴11Bとは相互に平行であり、それらの中心線が第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bの中心線Oa、Obとなる。また、第1縦貫穴11Aと第2縦貫穴11B(の中心線Oa、Ob)に対して上側横穴12と下側横穴13(の中心線)は同一平面上で垂直に交わっている。
【0023】
さらに、弁ハウジング10の上下方向中央部の左右、言い換えれば、第1縦貫穴11Aと第2縦貫穴11Bの上下方向中央部には、中央隔壁部14を挟んで、他より大径の第1中ぐり部15Aと第2中ぐり部15Bが形成されている。
【0024】
また、第1縦貫穴11Aと第2縦貫穴11Bの上端部には、後述する第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bの組付用筒状ホルダ38、38が螺合固定され、さらに、第1中ぐり部15Aと第2中ぐり部15Bの上辺部に相当する上側内周鍔状部15u、15uには、それぞれ第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bの弁座22付き上側弁口21が形成された弁座部材22J、22Jが螺合固定されるとともに、第1中ぐり部15Aと第2中ぐり部15Bの下辺部に相当する下側内周鍔状部15v、15vには、それぞれ第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bの弁座24付き下側弁口23、23が形成されている。
【0025】
第1縦貫穴11Aと第2縦貫穴11B、上側横穴12と下側横穴13、及び、第1中ぐり部15Aと第2中ぐり部15Bは、実質的に同一寸法形状となっている。
【0026】
第1縦貫穴11Aと第2縦貫穴11Bの下端部には、それぞれ盲蓋18、18が螺合固定され、また、上側横穴12と下側横穴13の左端部には、それぞれ盲蓋19、19が螺合固定されている。なお、弁ハウジング10に螺合固定される組付用筒状ホルダ38、38、盲蓋18、18、及び盲蓋19、19の外周には、気密性を確保するため、Oリング47、48、49が装着されるとともに、必要に応じて接着材が塗布されている。また、それらは、螺合ではなく、圧入等で固定するようにしてもよい。
【0027】
弁ハウジング10おける上側の盲蓋18で閉塞された上側横穴12部分の左右方向中央(の手前側)には、吸入側低圧ポートSが開口せしめられ、下側の盲蓋18で閉塞された下側横穴13部分の左右方向中央(の手前側)には、吐出側高圧ポートDが開口せしめられ、第1中ぐり部15A(の手前側)には、室内側入出ポートEが開口せしめられ、第2中ぐり部15B(の手前側)には、室外側入出ポートCが開口せしめられている。
【0028】
ここで、本実施例においては、吸入側低圧ポートSが開口せしめられた上側横穴12部分を第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bに共通の吸入側低圧室26と称し、吐出側高圧ポートDが開口せしめられた下側横穴13部分を第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bに共通の吐出側高圧室27と称し、室内側入出ポートEが開口せしめられた第1中ぐり部15Aを第1電磁弁20Aの弁室(第1弁室)25Aと称し、室外側入出ポートCが開口せしめられた第2中ぐり部15Bを第2電磁弁20Bの弁室(第2弁室)25Bと称する。
【0029】
次に、弁ハウジング10の左右に縦置きで並設された第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bの構成について説明する。第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bは、基本的には同一構成の二位置切換弁であるので、以下においては、第1電磁弁20Aを代表して説明し、第2電磁弁20B(の各部)については第1電磁弁20A(の各部)と共通の符号(もしくは対応した符号)を付してその重複説明を省略する。
【0030】
第1電磁弁20Aは、上から順に、電磁式アクチュエータ30、弁体40(弁棒部41と双弁体部50)、及び下側棒状ガイド部60を備える。
【0031】
電磁式アクチュエータ30は、通電励磁用のコイル31、このコイル31の外周を覆うケース32、コイル31の上部内周側に配在されてボルト33によりケース32に固定された吸引子34、この吸引子34の下側に対向配置されたプランジャ35、及びコイル31に通電するための電源ケーブル39等を備えている。吸引子34の下部には円錐台状の凹部が形成され、プランジャ35の上部には前記凹部に嵌合する凸部が形成されている。プランジャ35は、コイル31と吸引子34との間にその上部が配在された円筒状のガイドパイプ36に摺動自在に嵌挿されている。ガイドパイプ36の上端は、吸引子34の外周段丘部にろう付け等により固定され、その下端は、弁ハウジング10における第1縦貫穴11Aの上端部に螺合固定された、鍔状部38aを有する天井部38b付き円筒状の組付用筒状ホルダ38における天井部中央孔の内周段丘部にろう付け等により固定されている。
【0032】
また、プランジャ35の下部は、後述する弁棒部41の上部に摺動自在に嵌挿され、吸引子34とプランジャ35との間には、プランジャ35を下方に付勢する圧縮コイルばねからなる押し下げ閉弁ばね37が縮装されている。
【0033】
ここで、本実施例においては、上記した電磁式アクチュエータ30における組付用筒状ホルダ38の内径(=後述する背圧室28の室径)Da、弁座部材22Jに形成された上側弁口21の口径Db、及び下側弁口23の口径Dcは、同径とされている(詳細は後述)。
【0034】
前記弁体40の上部を構成する弁棒部41は、上から順に、前記組付用筒状ホルダ38の内周に摺動自在に嵌挿される大径の上部嵌挿部42、中径の中間部43、及びねじ込み小径部(おねじ部)44を有する。上部嵌挿部42の上部中央には、プランジャ35の下部が摺動自在に嵌挿される凹穴45が形成され、この凹穴45の底面にプランジャ35の下端面が接離可能となっている。また、上部嵌挿部42の外周には、組付用筒状ホルダ38の内周面との間を封止すべく、摺動面間用のシール材(ピストンリング)46が装着されている。なお、後述するように、組付用筒状ホルダ38の内周部(空間)のうちの、上部嵌挿部42より上側の部分は圧縮機吐出側の高圧冷媒が連通路70を介して導入される背圧室28となる。
【0035】
また、前記弁体40の下部を構成する双弁体部50は、上下に鍔状部を有するボビン形とされ、上側鍔状部が上側弁座22に離接する正立円錐台状の上側弁体部51とされ、下側鍔状部が下側弁座24に離接する逆立円錐台状の下側弁体部52とされている。双弁体部50の中央には段付き縦貫穴53が形成され、該段付き縦貫穴53の上部は、弁棒部41の中間部43の下端部が嵌合せしめられるとともに、ねじ込み小径部(おねじ部)44が螺合せしめられる固定部(めねじ部)54とされ、したがって、弁棒部41のねじ込み小径部(おねじ部)44を双弁体部50の固定部(めねじ部)54に螺合固定することにより、弁棒部41と双弁体部50とが一体化されて弁体40となる。また、段付き縦貫穴53の下部は、下側棒状ガイド部60の上部に摺動自在に嵌挿される外挿部55となっている。なお、弁棒部41と双弁体部50とは、上記のように螺合により一体化するのではなく、圧入や接着等の手法で一体化するようにしてもよいし、最初から一体物として作製(弁棒部分の下部に双弁体部分を連設)してもよい。
【0036】
下側棒状ガイド部60は、上から順に、双弁体部50の外挿部55が摺動自在に嵌挿される上部内挿部61、大径中間部62、及び、盲蓋18に形成された段付き凹穴(めねじ部)65に植え込み固定されるねじ込み小径部(おねじ部)63を有する。なお、下側棒状ガイド部60と盲蓋18とを上記のように別体に製作して後で固定するのではなく、最初から一体物として作製するようにしてもよい。
【0037】
前記した双弁体部50の下端面と下側棒状ガイド部60における大径中間部62の上端段丘部との間には、双弁体部50と弁棒部41とからなる弁体40を上方に付勢する圧縮コイルばねからなる押し上げ閉弁ばね57が縮装されている。ここでは、押し上げ閉弁ばね57のセット荷重(付勢力)は、前記した押し下げ閉弁ばね37のセット荷重(付勢力)より小さく設定されている。
【0038】
上記に加え、組付用筒状ホルダ38の内周部(空間)のうちの、上部嵌挿部42より上側の部分である背圧室28及び吸引子34とプランジャ35との間に形成される空所に、圧縮機吐出側の高圧冷媒を導入すべく、下側棒状ガイド部60、弁体40(双弁体部50と弁棒部41)、及びプランジャ35の各部の中央を縦貫するように連通路70が形成されている。連通路70は、下から順に、下側棒状ガイド部60に形成され、吐出側高圧室27に開口する複数個の横孔71、下側棒状ガイド部60に形成された縦穴72、双弁体部50の段付き縦貫穴53の中間部分73、弁棒部41に形成された縦貫孔74、プランジャ35に形成された段付き縦貫孔75、プランジャ35の下部に形成され、前記背圧室28に開口する複数個の横孔76等からなっている。
【0039】
ここで、以上説明した如くの構成を有する本実施例の四方切換弁1の組立手順の一例を説明する。まず、(1)予め第1電磁弁20A及び第2電磁弁20Bにおける電磁式アクチュエータ30部分、並びに、弁体40部分を組み立てるとともに、(2)盲蓋18に下側棒状ガイド部60を植え込み固定しておき、(3)弁ハウジング10に盲蓋18(+下側棒状ガイド部60)を組み付け、(4)押し上げ閉弁ばね57を下側棒状ガイド部60の上部内挿部61に外挿し、(5)下側棒状ガイド部60の上部内挿部61における押し上げ閉弁ばね57の上側に弁体40を乗せ置くようにしてその下部を外挿し、(6)弁ハウジング10に電磁式アクチュエータ30部分を組み付け、組付用筒状ホルダ38部分を弁棒部41の上部嵌挿部42に外挿し、(7)盲蓋19、19を組み付ける。なお、以上の組立手順はあくまで一例であって、これに限られることはない。
【0040】
このような構成とされた第1電磁弁20Aにおいては、組付用筒状ホルダ38の内径(=背圧室28の室径)Da、すなわち弁体40の上部嵌挿部42の受圧面積、上側弁口21の口径Db、すなわち閉弁状態にある上側弁体部51の受圧面積、及び下側弁口23の口径Dc、すなわち閉弁状態にある下側弁体部52の受圧面積が同じに設定されているので、弁体40を押し下げる方向に作用する冷媒圧力による押し下げ力と弁体40を押し上げる方向に作用する冷媒圧力による押し上げ力とは相殺される。また、押し下げ閉弁ばね37のセット荷重(付勢力)は、押し上げ閉弁ばね57のセット荷重(付勢力)より大きく設定されている。
【0041】
そのため、第1電磁弁20Aのコイル31に通電されていないOFF時には、
図1に示される如くに、押し下げ閉弁ばね37と押し上げ閉弁ばね57のセット荷重(付勢力)の差により、プランジャ35及び弁体40が一体的に押し下げられて、下側弁体部52が下側弁座24に着座して下側弁口23が閉じられるとともに、上側弁体部51が上側弁座22から離れて上側弁口21が開かれた状態(以下、この状態を上開下閉状態と称す)となる。
【0042】
それに対し、第1電磁弁20Aのコイル31に通電されたON時には、
図2に示される如くに、プランジャ35が押し下げ閉弁ばね37の付勢力に抗して吸引子34側に引き寄せられ、これに伴い、弁体40が押し上げ閉弁ばね57の付勢力によりプランジャ35に追従するように押し上げられて、上側弁体部51が上側弁座22に着座して上側弁口21が閉じられるとともに、下側弁体部52が下側弁座24から離れて下側弁口23が開かれた状態(以下、この状態を上閉下開状態と称す)となる。
【0043】
この上閉下開状態では、背圧室28が上下方向に狭められるものの、上側弁体部51が上側弁座22に着座しているため、上部嵌挿部42の上端面と組付用筒状ホルダ38の天井部38b下面との間には隙間α(背圧室28部分)が形成され、また、プランジャ35の下端面と上部嵌挿部42の凹穴45の底面との間にも隙間βが形成される。
【0044】
一方、第1電磁弁20Aと同じ構成の第2電磁弁20Bも、第1電磁弁20Aと同様に動作し、第2電磁弁20Bのコイル31に通電されていないOFF時には、
図2に示される如くに、上開下閉状態となり、第2電磁弁20Bのコイル31に通電されたON時には、
図1に示される如くに、上閉下開状態となる。
【0045】
次に、本実施例の四方切換弁1を、前述した
図3に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100に組み込んで運転モード(冷房運転と暖房運転)の切り換え(流路切換)を当該四方切換弁1で行う場合について説明する。
【0046】
まず、冷房運転時には、
図1に示される如くに、第1電磁弁20Aが通電OFF、第2電磁弁20Bが通電ONにされる。これにより、第1電磁弁20Aが上開下閉状態、第2電磁弁20Bが上閉下開状態となり、吐出側高圧ポートDが吐出側高圧室27→第2電磁弁20Bの下側弁口23→第2弁室25Bを介して室外側入出ポートCに連通せしめられるとともに、室内側入出ポートEが第1弁室25A→第1電磁弁20Aの上側弁口21→吸入側低圧室26を介して吸入側低圧ポートSに連通せしめられ、これにより、室内の冷房が行われる。
【0047】
また、暖房運転時には、
図2に示される如くに、第1電磁弁20Aが通電ON、第2電磁弁20Bが通電OFFにされる。これにより、第1電磁弁20Aが上閉下開状態、第2電磁弁20Bが上開下閉状態となり、吐出側高圧ポートDが吐出側高圧室27→第1電磁弁20Aの下側弁口23→第1弁室25Aを介して室内側入出ポートEに連通せしめられるとともに、室外側入出ポートCが第2弁室25B→第2電磁弁20Bの上側弁口21→吸入側低圧室26を介して吸入側低圧ポートSに連通せしめられ、これにより、室内の暖房が行われる。
【0048】
以上の説明から理解されるように、本発明実施例の四方切換弁1では次のような効果を奏する。
【0049】
前述した
図3に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において圧縮機が停止しているとき、すなわち、圧縮機吐出側と圧縮機吸入側との差圧がほとんど無いとき(略0MPaのとき)、特許文献1に所載の四方切換弁では流路切換を行うことができなかったが、本発明実施例の四方切換弁1では、前述した如くに第1電磁弁20Aと第2電磁弁20Bへの通電を選択的にON/OFFすることにより流路切換を行うことができる。
【0050】
また、弁体40等に連通路70が形成されて背圧室28等に圧縮機吐出側の高圧冷媒が導入されるとともに、組付用筒状ホルダ38(背圧室28)の内径Da、上側弁口21の口径Db、及び下側弁口23の口径Dcが同じに設定されて、弁体40に作用する冷媒圧力による押し下げ力と押し上げ力とが相殺されるようになっているので、小さな駆動力で弁体40を上下動させることができ、そのため、電磁式アクチュエータ30として小型で安価なものを採用することができるとともに、消費電力を抑えることができ、さらに、動作音を小さくすることができる。
【0051】
加えて、パイロット弁が不要であり、かつ、一つの弁ハウジング10に二位置切換弁を2台(第1電磁弁20Aと第2電磁弁20B)を縦置きで左右に並設した構成であるので、組立設置コスト、占有スペース等の面でも有利である。
【0052】
なお、上記実施例では、弁体40を駆動(上下動)させるのに電磁式アクチュエータ30を用いているが、それに代えて、電動式アクチュエータ(ステッピングモータ+ねじ送り機構等)を用いてもよい。この場合は、電動式アクチュエータへの通電をOFFにしても、前記上閉下開状態及び上開下閉状態を維持することができ、消費電力の低減化が図られる。
【0053】
また、本発明に係る四方切換弁は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。
【0054】
また、弁ハウジングの素材としては、アルミやステンレスに限られることはなく、その他の金属、樹脂等の、弁ハウジング内に導入される冷媒の圧力に耐えられるものであれば、いかなるものであってもよい。弁ハウジング以外の構成部材についても同様である。