(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボビンに対して上下方向に伸びる中心軸周りに導線が巻かれることによって構成されるコイルと、前記コイルの径方向内方において、中心軸方向に沿って移動可能に配置され、少なくとも一部に磁性体部を有するプランジャと、 前記コイルの径方向内方に固定され、前記プランジャの磁性体部と中心軸方向に対向して配置され、前記プランジャを中心軸方向に移動可能に支持する円筒部を有するコア体と、 前記中心軸方向で前記プランジャに対向し、前記プランジャを吸引したラッチ状態と前記プランジャが離反した解放状態を形成するマグネットと、前記マグネットの磁界の影響により、前記プランジャが前記コア体に対して磁気吸引される力に反発する離反方向に、前記プランジャを押圧するスプリングと、 前記コア体よりも軸方向下側に配置され、流体の入路となるインポートと流体の出路となるアウトポートと前記インポートと前記アウトポートとの間に配置され、前記入路と前記出路との間を開閉する弁体とを備える弁本体と、 前記コイルに所定の電圧を印加し通電せしめるコントロールユニットと、 前記コントロールユニットは、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向とは反対方向に移動駆動させる際に、正、または負の第一所定電圧をコイルに印加せしめ、前記プランジャを前記中心軸方向に移動させる事に伴い前記プランジャを介して前記弁体を作動させ前記入路と前記出路との間を開閉せしめる電磁弁装置であって、 前記プランジャが前記マグネットと近接したプランジャ吸着状態において、前記マグネット単体が前記プランジャを吸着するマグネット吸引力に対し、前記スプリングにより前記プランジャを前記マグネット吸着状態から離反させる離反力が大きく設定されると共に、 前記コントロールユニットは、前記プランジャが前記マグネットと近接したプランジャ吸着状態において、前記第一所定電圧に対して絶対値で小さく、且つ正負において同一の第一微小電圧を前記コイルに印加せしめると共に、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向に移動駆動させる際に、前記第一微小電圧の印加を解除すると共に、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向とは反対方向に移動駆動させるまで前記コイルに電圧を印加しない状態にする事により、前記プランジャを介して前記弁体を作動させた後、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向とは反対方向に移動駆動するまで前記コイルに電圧を印加しない状態を維持する事を特徴とした電磁弁装置。
前記離反力に対し、前記マグネットによる前記マグネット吸引力と前記第一微小電圧を前記コイルに印加せしめる事により生じた前記コイルによる微小吸引力との和が上回る事を特徴とした請求項1記載の電磁弁装置。
ボビンに対して上下方向に伸びる中心軸周りに導線が巻かれることによって構成されるコイルと、前記コイルの径方向内方において、中心軸方向に沿って移動可能に配置され、少なくとも一部に磁性体部を有するプランジャと、 前記コイルの径方向内方に固定され、前記プランジャの磁性体部と中心軸方向に対向して配置され、前記プランジャを中心軸方向に移動可能に支持する円筒部を有するコア体と、 前記中心軸方向で前記プランジャに対向し、前記プランジャを吸引したラッチ状態と前記プランジャが離反した解放状態を形成するマグネットと、前記マグネットの磁界の影響により、前記プランジャが前記コア体に対して磁気吸引される力に反発する離反方向に、前記プランジャを押圧するスプリングと、 前記コア体よりも軸方向下側に配置され、流体の入路となるインポートと流体の出路となるアウトポートと前記インポートと前記アウトポートとの間に配置され、前記入路と前記出路との間を開閉する弁体とを備える弁本体と、 前記コイルに所定の電圧を印加し通電せしめるコントロールユニットと、 前記コントロールユニットは、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向とは反対方向に移動駆動させる際に、正、または負の第一所定電圧をコイルに印加せしめ、前記プランジャを前記中心軸方向に移動させる事に伴い前記プランジャを介して前記弁体を作動させ前記入路と前記出路との間を開閉せしめる電磁弁装置であって、 前記プランジャが前記マグネットと近接したプランジャ吸着状態において、前記マグネット単体が前記プランジャを吸着するマグネット吸引力に対し、前記スプリングにより前記プランジャを前記マグネット吸着状態から離反させる離反力が大きく設定されると共に、 前記コントロールユニットは、前記プランジャが前記マグネットと近接したプランジャ吸着状態において、前記第一所定電圧に対して絶対値で小さく、且つ正負において同一の第一微小電圧を前記コイルに印加せしめると共に、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向に移動駆動させる際に、前記第一微小電圧の印加を解除して、前記第一所定電圧よりも絶対値で小さく、正負において逆の第二微小電圧を前記コイルに印加せしめ、 前記コントロールユニットは、前記プランジャが前記マグネットと最も離反した離反状態であって前記プランジャを前記スプリングによる離反方向とは反対方向に移動駆動させるまで、前記第一所定電圧よりも絶対値で小さく、正負において逆の第二微小電圧を前記コイルに継続して印加する事を特徴とした電磁弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、電気的な製品に対して消費電力の低減が強く求められているため、電気信号により作動される電磁弁に対しても同様の要求が高まっている。その中において、弁を開閉する際にのみ通電し、開閉後は通電を遮断しても、その状態が維持されるラッチ式の電磁弁は、電磁弁の中でも消費電力の観点から非常に有効であり、需要が高まっている。
【0004】
この点に関して、特開2002−250457号公報のラッチ式電磁コイルでは、永久磁石の磁束と同じ方向に磁束を発生するように、コイル部材に通電することにより、プランジャを吸引子に吸着させることで弁開し、弁開後は通電を遮断しても、永久磁石の吸着力が、付勢部材より強く設定されているので、弁開位置を保持するように設定されている。また、永久磁石の磁束と逆方向に磁束を発生するようにコイル部材に通電することによって、プランジャが吸引子から離反する方向に電磁力を発生させ、付勢部材によってプランジャを吸引子から離反する方向への付勢力と相まって、永久磁石による吸着力よりも離反する力が大きくなり、プランジャを弁閉方向に駆動し、弁の弁閉後は、コイル部材への通電を停止し、付勢部材による弁閉状態を維持している。
【0005】
従って、特開2002−250457号公報のラッチ式電磁コイルでは、弁を閉じている状態を維持する際や弁を開けている状態を維持している際には、コイルへの通電を停止し、消費電力を抑える事は可能となるものの、弁閉状態や、弁開状態では永久磁石による吸着力、あるいはスプリング等による付勢部材による付勢力のみで保持しているため、特に車両用自動変速機の油圧回路などに採用される電磁弁装置の場合には、車両に強い振動が伝わった場合などには瞬間的に弁が開放してしまったり、永久磁石によってプランジャを吸着したラッチ状態が振動により解除され、スプリングの付勢力をもって勝手に弁閉してしまう虞が有った。
【0006】
このため、付勢部材による付勢力を高める事や永久磁石の磁力を高める事で、耐振動性を高める事が考えられるが、その場合は、コイルに通電する電流値を高めるなどしてプランジャの移動時の消費電力が増大する事や、マグネットの大型化を招くという課題が有った。
【0007】
本発明の目的は、弁の弁開維持状態と弁閉維持状態を安定させると共に、弁の切り替え時における消費電力を抑えた電磁弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の例示的な第1発明は、ボビンに対して上下方向に伸びる中心軸周りに導線が巻かれることによって構成されるコイルと、前記コイルの径方向内方において、中心軸方向に沿って移動可能に配置され、少なくとも一部に磁性体部を有するプランジャと、前記コイルの径方向内方に固定され、前記プランジャの磁性体部と中心軸方向に対向して配置され、前記プランジャを中心軸方向に移動可能に支持する円筒部を有するコア体と、前記中心軸方向で前記プランジャに対向し、前記プランジャを吸引したラッチ状態と前記プランジャが離反した解放状態を形成するマグネットと、前記マグネットの磁界の影響により、前記プランジャが前記コア体に対して磁気吸引される力に反発する離反方向に、前記プランジャを押圧するスプリングと、前記コア体よりも軸方向下側に配置され、流体の入路となるインポートと流体の出路となるアウトポートと前記インポートと前記アウトポートとの間に配置され、前記入路と前記出路との間を開閉する弁体とを備える弁本体と、前記コイルに所定の電圧を印加し通電せしめるコントロールユニットと、
前記コントロールユニットは、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向とは反対方向に移動駆動させる際に、正、または負の第一所定電圧をコイルに印加せしめ、前記プランジャを前記中心軸方向に移動させる事に伴い前記プランジャを介して前記弁体を作動させ前記入路と前記出路との間を開閉せしめる電磁弁装置であって、前記プランジャが前記マグネットと近接したプランジャ吸着状態において、前記マグネット単体が前記プランジャを吸着するマグネット吸引力に対し、前記スプリングにより前記プランジャを前記マグネット吸着状態から離反させる離反力が大きく設定されると共に、前記コントロールユニットは、前記プランジャが前記マグネットと近接したプランジャ吸着状態において、前記第一所定電圧に対して絶対値で小さく、且つ正負において同一の第一微小電圧を前記コイルに印加せしめると共に、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向に移動駆動させる際に、前記第一微小電圧の印加を解除すると共に、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向とは反対方向に移動駆動させるまで前記コイルに電圧を印加しない状態にする事により、前記プランジャを介して前記弁体を作動させた後、前記プランジャを前記スプリングによる離反方向とは反対方向に移動駆動するまで前記コイルに電圧を印加しない状態を維持する事を要旨としている。
【発明の効果】
【0009】
本願の例示的な第1発明によれば、少なくとも弁の開放または閉鎖を維持している一方の弁維持状態において、その状態を維持すべく微小な電圧印加に基づく微弱な電流による電磁吸着力をアシストとして活用し、一方の弁維持状態の耐振動性を向上させると共に、弁状態を切り換えるためのスプリングによる付勢力をその分強く設定出来るので、弁の状態を切り替える際の弁切換がスプリングによる付勢力によりスムーズに対応可能となると共に、弁の状態を維持する圧が増し、弁状態の維持において耐振動性能が向上する。また、他方の弁維持状態における印加電圧を無くすることにより消費電力を抑えたため、全体としての消費電力も抑えることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、プランジャの中心軸Xに沿う方向を「中心軸方向」、中心軸Xに直交する方向を「径方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向等の定義により、本発明に係る電磁弁の製造時および使用時の向きを限定する意図はない。また、離反方向とは、反発して距離的に離れる方向を意味し、離反するとは、反対側に離れるという動作を意味し、電圧の印加を解除するとは、変化前が正電圧であれば、0Vや負電圧を含み、0Vや負電圧の方向に電圧値を変化させることを意味し、変化前が負電圧であれば、0Vや正電圧を含み、0Vや正電圧の方向に電圧値を変化させる事を意味する。
【0012】
<1.第1実施形態>
本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0013】
図1は、実施形態に係る電磁弁の一例を示す断面概略図であり、電磁弁2は、プランジャ1を内蔵し、後述する弁の開閉操作を行うソレノイド6と、弁を内蔵する弁本体3と、ソレノイド6のコイル4に流れる電流の向きや、電流値を変化させるべくコイル4に印加する電圧を制御するコントロールユニット5を備える。尚、コントロールユニット5とコイル4とはコイル用リード線16で接続されている。
【0014】
一方、弁本体3の中心軸下方向端部には、テーパー状に広がったインポート8を備え、図示しない流体が供給される管が接続される。また、弁本体3の径方向側面には穴状のアウトポート9が中心軸方向に向かって開口しており、内部でインポート8と連通している。更に、弁本体3のインポート8とアウトポート9との間にはボール弁10を中心軸方向Xに沿って移動可能に収容する弁室11が設けられ、ボール弁10がプランジャ1により中心軸下方向Zに移動すると、インポート8からアウトポート9に至る流路を閉鎖(弁閉)し、逆にプランジャが中心軸上方向Yに駆動されるとボール弁10がインポート8側の流体の圧力により中心軸上方向Yに移動する事により流路が開放(弁開)させる。尚、弁本体3の中心軸上方向側には、プランジャ1の先端を収容する上方向側に開口が広がった漏斗状のプランジャ収容部22が設けられ、その奥端たる中心軸下方向側は弁室11に連通し、プランジャ1が中心軸下方向Zに移動すると先端がボール弁10に当接する様にプランジャ1の中心軸とボール弁10の中心軸とが図中の中心軸Xに沿って配置されている。従って、プランジャ1が中心軸下方向Zに移動した場合にプランジャ1の先端がボール弁10に当接し、ボール弁10を中心軸下方向(弁を閉じる方向)に押圧する様に構成されている。
【0015】
他方、ソレノイド6は、中心軸Xの中心軸部分を円筒状に中空としたボビン12と、このボビン12の外周面に沿って巻回されたコイル4と、ボビン12の径方向内側に嵌合して配置され、中心軸X上方向Y端側が開口し、中心軸を軸とする中空の磁性材から成る円筒状のコア体13と、コア体13の径方向内側に中心軸X方向に摺動可能に支持され中心軸Xの下方向に先端を突出し、中心軸下方向Zへの摺動に伴いボール弁10を押圧し、中心軸上方向Yへの摺動に伴いボール弁10から離反する少なくとも中心軸X上方向Y端側が磁性材から成るプランジャ1と、プランジャ1の中心軸X上方向端部が開口し、後述する吸引座15と中心軸X下方向Z端側の壁部分とによりスプリング14を中心軸方向に圧縮して収容する収容部15と、ボビン12の径方向内側に嵌着され、プランジャ1の中心軸X上方向Y側のプランジャ1端面に対向し、プランジャ1の摺動に伴いプランジャ1と密着あるいは、近接する様に配置された磁性体から成る吸引座15と、この吸引座15の更に中心軸X上方向Y側に密着してボビン12内側に嵌着配置され、吸引座15を磁化する永久磁石17と、コイル4を径方向外方から覆い、コイル4、ボビン12,コア体13,吸引座15,永久磁石17を収容固定する磁性材から成るカバー18から構成される。
【0016】
具体的には、円筒状のカバー18の内側にはコイル4が巻回されたボビン12が嵌着され、このボビン12の中空状内面にはコア体13と吸引座15と、永久磁石17が嵌着されている。また、吸着座15は中心軸部分にネジ穴が切られており、カバー18の中心軸X方向端外側から永久磁石17の中心軸の貫通穴を通過して、ネジ19によって、永久磁石17を挟持するように吸引座15をカバー18に固定している。また、カバー18の中心軸X下方向側であってコア体13の中心軸下方向Z側には、プランジャ収容部22がプランジャ先端を収容すべく大きく開口形成された弁本体3のフランジ部分3aがコア体13端部の周縁角部分と、カバー18内側との間に嵌合するように固定されている。
【0017】
尚、プランジャ1は、コア体13の中空部中心軸X方向において摺動可能に配置されている。移動範囲としては、まず上方向移動に伴いコア体13がスプリング14の付勢に反して圧縮し、プランジャ1の中心軸X上方向Y端部が吸引座15に接するまで移動する。一方、プランジャ1の中心軸X下方向Zへの移動に関しては、まずプランジャ1の下方向Z先端がボール弁10に当接し、更にボール弁10を中心軸X下方向Zに移動させてインポート8側に強く押圧して弁閉するまで移動する。ところで、プランジャ1は、中心軸部における円筒状の中空部分にスプリング14が内蔵され、常時吸引座15に対し、中心軸Xの下方向、つまりボール弁10側に付勢されておりプランジャ1の先端はスプリング14の付勢力により安定して弁閉状態を維持する。また、スプリング14が最も圧縮された状態、つまりプランジャ1が吸引座15に当接、乃至最近接している状態において中心軸X下方向Zに離れようとする離反力が、永久磁石17によって磁化された吸着座15がプランジャ1の中心軸X上方向端部を吸着する吸着力を上回るよう設定されている点に本発明の一つの特徴を有している。
【0018】
コイル4への通電によって生じる磁束は、コイル4外周側から中心軸Xに近いコア体13を通り、コイル4の反対側から外側のカバー18側に戻る磁気回路を構成し、コイル4に通電される電流の方向、つまり正電流か負電流かにより磁束の方向が逆となる。また、永久磁石17によって生じる磁束は、永久磁石17がコイル4によって生じる磁気回路中に配置されているため、永久磁石17によって生じる磁気回路もコイル4によって生じる磁気回路と同様に、永久磁石17の中心軸Xの上方向からカバー18、コイル4上側を通り、カバー18外周面を通り、コイル4の反対側から中心軸Xに近いコア体13、吸引座15を通り、永久磁石17に戻る磁気回路を形成し、磁気回路効率に優れている。
【0019】
図2は、
図1を用いて説明した実施形態に係る電磁弁2が採用された電磁弁装置のシステムブロック図であり、主に車両に搭載された電動ポンプ23と自動変速機などの油圧被供給ユニット24間をつなぐ油路25に電磁弁2のボール弁などの弁体を介装させ、車両のメインコントロールユニット27からの指令信号や電動ポンプ23側の油路25に配置され油路25の油圧を拾う油圧センサ28等のセンサ信号に基づき予め設定されたアルゴリズムに従って演算回路5aが電磁弁2のコイルに印加する電圧を決定し、駆動回路5bを介して電磁弁2のコイルに4に所定の電圧を印加してコイル4に所定の値、所定の方向の電流を通電する様に構成されている。
【0020】
次に、
図3、
図4、
図5に基づき第1実施形態、第2実施形態、並びに第3実施形態に係る印加電圧・電流の変化制御について説明する。尚、
図3以降、各図上段のグラフは、横軸時間に対する縦軸の電圧値変化を示し、下段は横軸の時間に対する縦軸の電流値変化を示している。
【0021】
図3は、一例として
図1に示す様な電磁弁2のコイル4に印加する電圧と電流の変化の状態を示し、
図1のボール弁10を弁開状態とする際には、コントロールユニット5により横軸50msのタイミングでコイルに比較的高い正の電圧、例えば10Vを印加、つまり十分な正の電流を通電し、コイル4により発生した磁束の方向と永久磁石17による磁束の方向を一致させる事によりプランジャ1に対し、吸引座15方向に大きな吸引力を発生させ、スプリング14の離反力に対し、吸引座15側に吸引する吸引磁力が上回り、プランジャ1が中心軸X上方向Yに摺動して、永久磁石17で磁化された吸引座15に吸着される。但し、本実施形態による電磁弁2はプランジャ1が吸引座15に吸着された際に、永久磁石17のみによる吸引磁力よりもスプリング14による離反力の方が大きく設定されているため、一旦プランジャ1が吸引座15に吸着された後、
図3横軸150msのタイミングで微弱電圧、例えば2.5Vを印加し、コイルに微弱電流を通電することを継続する。この場合、コイル4により発生されたプランジャ1を吸引座15側に吸着する方向の磁力と、永久磁石17によりプランジャ1を吸引座15に吸着させる方向の磁力との和が、スプリング14による離反力を上回るように設定されているおり、プランジャ1は吸引座15に吸引された状態、つまり、弁開状態を微弱電流により維持する。
【0022】
ところで、プランジャ1が吸引座15に吸引された弁開状態を維持する為には、プランジャ1を移動させる際の電圧値(電流値)を維持しても良いが、消費電力、発熱面より本実施形態では、電磁弁に振動が加わっても安定的に弁開状態を維持できるのに足りる必要最小限な電圧の印加に設定し、プランジャ1の移動時よりも低い電圧、電流値でプランジャ吸引状態を維持するようにしている。
【0023】
続いて、
図1のボール弁10を弁閉状態とする際には、コントロールユニット5により
図3中、横軸550msのタイミングでコイルに比較的高い負の電圧、例えば−10Vを印加、つまり十分な負の電流を通電し、スプリング14による離反力と同じ方向にコイル4により発生した大きな磁力を加え、この合成磁力が永久磁石17によるプランジャの吸引力を大きく上回り、瞬時に弁閉状態を完了する。因みに、弁閉レスポンスをさほど求めないのであれば詳しくは後述する様にプランジャ1の弁閉方向移動に際して、大きなマイナス電流を通電しなくても、通電を止めるだけで、スプリング14による離反力が永久磁石17による吸引力を上回るので、プランジャはスプリング14による離反力のみで弁閉状態に移動可能である。
【0024】
続いてプランジャ1の先端が、スプリング14の付勢力とコイルの電磁力で弁閉状態に成された後は、
図3の横軸650msのタイミングで、コイル4への負電圧印加は停止され、スプリングの付勢力のみで、弁閉状態が安定的に維持される。
【0025】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について
図3を用いて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図4はこの弁閉状態においても、コイルへの負電流を微弱に通電継続する第2の実施形態によるもので、
図4中横軸650msの弁閉完了のタイミングから次の弁開タイミング、
図4中左側に戻り50msまでの間は、僅かな負電圧、例えば−2.5Vをコイルに印加し、コイル4による磁束方向をスプリング14による離反力方向と一致させ、プランジャ1がボール弁10を押圧する力を強固とするものである。特に、電磁弁を
図2に示す様な車両の自動変速機などの油圧回路に採用する際には、車両の振動発生時にも弁閉状態を安定的に維持出来る為、有用となる。
【0027】
図5は第3の実施形態によるもので、弁を閉鎖状態から開放状態に切換駆動する時のみ比較的大きな正の起動電圧を印加し、その後の弁開までの弁閉維持状態は、比較的低い電圧を印加し続け、弁閉に切り換える際に、正の低電圧印加を停止し、0Vとすることによりバネの離反力のみでプランジャを中心軸Xの下方向Zに移動させる第3実施形態に係る印加電圧・電流の変化を示す例である。
【0028】
図5に示されるように、弁を開放維持している横軸150msから2.5Vの正の低電圧を印加し、正の微弱電流により永久磁石17による磁力の方向とコイル4の正の電流通電による磁力の方向を一致させ、それらの総和がそれらと反対方向に作用するスプリング14の離反力を上回り、プランジャ1を吸着座15に吸着させた状態を維持する。
【0029】
続いて、弁を閉鎖駆動する際には、この2.5Vの正の低電圧の印加をストップし、
図5中、横軸550msのタイミングで印加電圧を0ボルトに変化せしめると、永久磁石17の磁力をスプリング14による離反力が上回り、プランジャ1と吸着座15との吸着が解かれ、プランジャ1がスプリング14の離反力により吸着座15から離れ、プランジャ1の先端がボール弁10に当接、押圧し、ボール弁10が弁室11内を中心軸X下方Zに移動し、閉弁されると共に、スプリング14の離反力で安定的に弁閉状態が保たれ、図中横軸50msに示される10Vの弁開起動電圧が印加されるまで弁閉状態に維持される。
【0030】
尚、
図6は第4の実施形態によるもので、
図5の弁開に切換えた後、横軸50msから弁開維持状態終了の横軸550msまでは同様であり、弁開維持状態から弁閉に駆動切り換える際の
図6中、横軸550msのタイミングから次の弁開駆動する
図6中、左に戻り50msのタイミングまでの間、電磁弁のコイルに負の微小電圧たる−2.5Vを印加するものである。つまり、正の微弱電流により弁開状態が維持されている状態において、図中横軸550msのタイミングで、負の微小電圧、例えば−2.5Vを印加し、負の微電流に伴う中心軸下方向Zへのコイルによる磁力に、スプリングの離反力を加え、より俊敏にプランジャ1と吸着座15との吸着を解き、閉弁状態に切換、弁閉状況においても、コイルへの負の微小電流の通電を維持し、スプリング力とコイルへの微電流による磁力とを合わせ、安定して弁閉状態を維持する例であり、省電力と弁閉状態における耐震動性能を両立させた例である。
【0031】
また、発明が適用される具体的な電磁弁構成については、
図1に示された構成と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよく、例えば、プランジャは、全体が磁性材料で構成されず、中心軸下方向Zは非磁性材としたり、吸引座15がプランジャ1に作用する磁力方向が実施的に変わらなければ永久磁石17も吸引座15の径方向外側に配置しても良い。
【0032】
ところで、上記実施例や変形例では、プランジャ1を吸着座15に吸着維持させる際の電圧(微少電流)とボール弁10を弁開状態とする際の駆動電圧(起動電流)との比を、起動応答性と耐震動安定性面より大凡2.5Vと10Vとして1:4程度にて最適状態にバランスさせたが、1:3から1:5程度の範囲に設定することにより、ほぼ同等な最適状態を保持できる。しかしながら、省電力性と、弁開状態の安定性の要求度合いに応じて、1:10から10未満:10程度の範囲で適宜変更し、弁開時の起動応答性と弁開時の安定性、並びに省電力性とのバランスを変更する事も可能である。
【0033】
他方、上記実施例や変形例では、プランジャを軸方向下側に移動駆動させる際に、第一所定電圧とは正負において逆であって絶対値が同等の10Vである第二所定電圧をコイルに印加しているが、プランジャを前記軸方向上側に移動駆動させる際の第一所定電圧に対し、プランジャを軸方向下側に移動させる際の第二所定電圧を絶対値で小さく設定し、具体的には絶対値で10V未満に設定し、スプリングによる離反力を僅かにアシストするようにしても良い。
【0034】
更に、プランジャをボール弁に押圧弁閉維持させる際の第二微弱電圧はプランジャをマグネットから離反させる際の第二所定電圧と同等に維持しても良く、また絶対値で第一微弱電圧未満に設定し、省電力と弁閉状態の安定化を高い次元で両立させる事も可能である。